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少年事件の裁判員裁判 県内初の判決

2011年07月09日

 今年1月の専門学校生暴行死事件をめぐり、傷害致死と暴力行為法違反などの罪に問われた小諸市の無職少年(19)の裁判員裁判の判決が8日、長野地裁であった。高木順子裁判長は、懲役5年以上7年以下(求刑懲役5年以上8年以下)の不定期刑を言い渡した。
 少年事件の裁判員裁判は県内では初。高木裁判長は「少年法の精神に思いを致したとしても、犯行の悪質性や結果の重大性からすれば、人ひとりの命が奪われたことへの責任を果たさせるべきだ」と述べた。
 弁護側は、一連の暴行は同市西原の土木作業員高柳誠被告(34)=暴力行為法違反罪で公判中=の支配下で行われたと訴えていた。これに対し判決は「粗暴性に染まっていった事実は否めないが、被告は19歳で年少の少年と異なり、相応の判断能力を持っていた」と指摘。「高柳被告に逆らえなかったゆえの犯行とは言えない」と判断した。
 判決によると、少年は昨年12月上旬〜今年1月3日、群馬県伊勢崎市の専門学校生角田翔さん(当時19)に多数回にわたり殴る蹴るの暴行を加え、多発性外傷でショック死させた。

■ 審理に難しさも ■
 少年は人付き合いが苦手だった。中学では不登校、高校は中退、入り直した定時制高校もすぐやめた。
 「信じてもらったり頼りにされたりした経験が、あまりなかった」(法廷での供述)という少年は、2年と少し前に高柳被告と知り合い、「信頼されている」との錯覚に陥った。
 被害者を疎んじる高柳被告に気に入られたいという一心から、暴行を重ねるようになった――。弁護側は公判を通じて、少年の精神的な未熟さが犯行に及ぼした影響を主張した。
 しかし、判決は「少年法の精神に思いを致したとしても」と断ったうえで、悪質性や結果の重大性を重く見た。判決後の会見に参加した裁判員は、少年法について一様に「縛り」と表現し、10年以下の中で刑を選択しなければならなかった難しさを口にした。
 果たして、少年法は縛りなのか。もちろん被害者を死なせた事実は重い。だが、少年事件の裁判の目的は犯した罪を裁くことだけにあるのではない。
 少年事件は周りの大人や社会のひずみが生んだという側面もある。だから社会全体で少年の更生を支える。国親(くに・おや)思想と呼ばれるそんな理念が、少年法にはある。少年の裁判では、この基本に立ち、少年を立ち直らせるための処方箋(しょ・ほう・せん)を考えなくてはならない。
 それを数日間の審理で行うのは可能か。弁護人は「限られた時間の中では事件の凄惨(せい・さん)さばかりに目を奪われてしまう。少年の幼さを理解してもらうのは難しかった」と振り返った。
 また、公判ではプライバシーへの配慮から、家裁の調査官が生い立ちや性格的な傾向をまとめた社会記録を十分調べられないという問題点も浮かんだ。
 海外では、少年事件の特性を理解する教育や心理学の専門家が裁判に立ち会う国もある。審理が非公開のところも多い。制度の見直しまで、1年。日本でも、もっと少年に寄り添う努力が必要ではないか。
(二階堂友紀)

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