セシウム汚染牛「やむを得ない嘘」が招いた影響
2011/07/12 21:59更新
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福島県南相馬市の畜産農家から出荷された肉用牛から国の基準値を超える放射性セシウムが検出された問題の波紋が広がっている。出荷時の検査や自治体のサンプル検査をすり抜け、一部が市場に回っていた事実は、関係者に大きな衝撃を与えた。
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記事本文の続き 問題の農家は緊急時避難準備区域にあり、原発事故前に刈り取った稲わらを屋外で保管。汚染された稲わらを餌として牛に与え、牛が内部被曝(ひばく)した。農家は県の聞き取りに対し、屋外にあった稲わらを使ったと伝えておらず、県も虚偽の申告を見抜けなかった。
原発事故後、南相馬市は燃料不足や避難などで大混乱し、現地のあらゆる物流は停滞した。牧草や配合飼料も入らなくなり、汚染牛を出荷した農家は「震災後に配合飼料が不足し、やむなく与えた」としている。
「周囲が避難する中で、何とか頑張ろうとしていた」「福島の畜産業を立て直すために頑張っている仲間。責めることなんてできない」。汚染牛を出荷した農家に対し、周辺農家などは同情的だ。しかし、「やむを得ない嘘」が招いた影響は大きい。
11日に福島県本宮市の県家畜市場で開かれた県産子牛の競りでは、平均落札価格が1頭当たり約32万円と、前年同期に比べ2割減。事故の風評被害で価格が下落していた現状に追い打ちをかけ、会津地方のJA関係者は「福島の牛全体が信頼を失った。底が見えない」と話した。
一方、放射性物質と食の安全をめぐる消費者の不信は根強い。「検査していない野菜は仕入れない」と生産者に自主検査を求める小売業者もいると聞く。しかし、国や自治体の検査体制には限界がある。
今回の問題を受け、政府は福島県の計画的避難区域などから出荷される肉用牛の「全頭検査」を検討しているが、自治体は「不眠不休で検査しても無理だ」と反発している。
食の安全を守るためには、生産者が最低限のルールを守ることはもちろん、風評被害に苦しむ農家への適切な補償や不正を防ぐチェック体制の整備が求められる。(長島雅子)
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