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[6474] 《習作》遊戯王GX 現実→オリ主『○○○使いのGX世界放浪記』 また間違えてage
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:a7e4b7e3
Date: 2011/07/13 00:23
先ず始めに、このssは遊戯王GXの現実→オリ主のものです。そういうものが苦手な人はあらかじめご了承下さい。

自身初ssな上、所々原作を見ていなかったため、TSUTAYA等で見ながら書くということになりそうです。そのため、更新が遅かったり、内容に矛盾があったりするかもしれません。その点もご了承下さい。内容やキャラの口調の違和感に関しては感想等で知らせて頂ければ幸いです。直ぐに修正します。

この作品は完全なキャラクター視点の作品です。その為、所々誰のセリフか分かりにくい場面があるかもしれません。その時はお知らせください。修正いたします。

基本的にはアニメ版の流れに沿って色々デュエっていきます。目指せメインキャラ入り。あと、カードの効果は基本的にアニメ版のものになります。(ただし、主人公の使う可能性がある物はOCG及びゲーム版になります)

ネタばれ注意。ストーリーは……多少知っておいた方がいいかも?

では、愚作ですが、御目汚しでなければ是非末永くお付き合い下さい。

ps,色々なパロネタ多めです。

全体的な修正が終わったので板移動しました。前後編あった話も統合しました。これからも宜しくお願いします。

……改正してたらまた間違えてageしてしまいましたorz……申し訳ありません!



[6474] 第一話 気付いたらそこは見知らぬトイレでした
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:a7e4b7e3
Date: 2011/07/12 23:07
朝の瞑想……テーマ『何故今自分はここにいるか』……3秒でやめた。

気付いたら見知らぬトイレの中。

そして左腕にはデュエルディスク。

……つーことは?

「……遊戯王の……世界?」

しかも、さっきから出たり入ったりとせわしない緑髪の眼鏡君からしてGXのデュエルアカデミア入学試験だろう。翔君普通の制服だし。

さて、そうなると何がなんでも受からなければならない。落ちてしまったら帰る所などありはしないのだから。元の世界に戻る云々の前に先ず身の安全の確保だろう。

……案外冷静な自分の図太さに苦笑しつつ、先ずは受験番号をチェック。

……121番。

筆記試験の順位が受験番号だから……十代君(110番)や翔君(119番)より成績悪いんかい……

続いて……最も重要なデッキの確認。

皆デュエルディスクをしているということはおそらく筆記は運良くパスしたことになっているようだ。あとは実技のみ。

……確認してみると、何故か幾つかなくなっていたカードがあったものの、僕の使っていたデッキそのものであった。

……果たして、自信作のデッキが原作の世界で通用するのか否か、期待と不安を共に抱き、僕は試験場に向かった。



「くらえ!『スカイスクレイパーシュート』!」

「マンマミーア!我が『アンティーク・ギア・ゴーレム』がぁ!?」

結論、どうやら僕がいても歴史の大元の流れは変わっていないようだ。安心した。

原作通り十代君はクロノス教諭に『フレイム・ウィングマン』で勝っていた。

さて、次は僕の番……



「……はぁ、では、これにて試験を終了するノーネ……」

……ってちょ!?

「待って下さい!まだ僕が受けてませんよ!?」

「……?そんなハズないノーネ。これで全員なハズなノーネ」

「いえ、クロノス教諭、確かに受験番号121番、まだ受けていません」

「あら本当なノーネ。ごめんなさいーノ。余りにも貴方の陰が薄かったからなノーネ」

失敬な、どこかの空気君と僕を一緒にしないで頂きたい。

……どこかでくしゃみが聞こえた気がした。

それにしても焦った、どうやら僕はかなり乱暴にこの世界に放り込まれたようだ。

「……そうなノーネ、では教諭、後はお願いしまスーノ」

十代君負けたせいか、クロノス教諭は足速に去ってしまった。……僕のデュエル見ないノーネ。

さて、これでやっとデュエルができる。



「受験番号121番!朝倉和希!よろしくお願いします!」

「全力で掛かってきなさい!」

「「デュエル!!」」

……とゆーかさっきのやり取りのせいで、クロノス教諭とやった十代君程ではないにしろ結構注目されてるし…結構緊張してきた。

「私のターン、ドロー!」

デュエルモンスターズでは、まず毎ターンの最初、ドローフェイズにデッキからカードを1枚ドロー出来る……ってこれって先行後攻速いもん勝ちなの!?手札を確認している間にあっちは勝手にやってるし!?

そして、ドローフェイズの後、スタンバイフェイズを経て、モンスターの召喚と表示形式の変更、各カードの効果発動と魔法・罠カードのセットを行うメインフェイズ1へと移行する。

「私は『漆黒の豹戦士 パンサーウォーリア』(攻撃力2000)を攻撃表示で召喚!」

城之内君御用達の豹戦士が現れる、流石本場のソリッドビジョン、今にもこちらに襲い掛かってきそうなリアルさだ。息遣いまでも感じられる。

……この後、本来ならばモンスターが戦闘を行うバトルフェイズがあるのだが、先攻1ターン目は攻撃が出来ず、バトルフェイズに入る事が出来ない。それに伴い、バトルフェイズ後にあるメインフェイズ2も存在しない。

そして、試験管の教諭はターンエンドをするエンドフェィズへと移行した。

「ターンエンドだ!」

……というかリバースカード無しって、確かに『パンサーウォーリア』は攻撃力高いけど……無防備すぎやしませんか?

……デュエルモンスターズには大きく分けて3種類のカードが存在する。主に戦闘を担当するモンスターカード。条件さえ揃えば、メインフェイズ中に何枚でも使用可能な、サポート的な効果の多い魔法カード。そして主にフィールド上にセットして使い、相手の行動を妨害する物が多い罠カードの3種類だ。

つまり、今の相手フィールド上は、戦闘担当のモンスターだけという、かなり手薄な状態なのだ。モンスターには特殊効果のあるものもあるが、『パンサーウォーリア』の効果は、攻撃時に自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げないといけないというもの。特に問題はない。

「僕のターン!ドロー!」

……正直、手札は最高にいい。よし、ライフ4000だし、上手くいけばワンターンキルが狙えるかな?

「手札から魔法カード発動!『手札抹殺』!互いのプレイヤーは手札をすべて墓地に送り、その枚数分だけデッキからカードをドローします!」

周りのギャラリーがどよめく、そりゃそうだろう、1ターン目から、それもいきなりの『手札抹殺』である。でも、これも布石の一つ。

「そして永続魔法『ミイラの呼び声』発動!」

永続魔法、通常の魔法カードの大部分が、使用された後に墓地に送られ、再び手札かデッキに戻さないとその効果を発動する事が出来ないのに対し、発動後もフィールドに残り続け、その場から離れるまで効果を発揮し続ける魔法カードだ。

「この効果により、自分の場にモンスターが存在しない時、手札からアンデット族のモンスターを特殊召喚出来ます!手札から『ワイトキング』を攻撃表示で特殊召喚!」

ローブを纏う骸骨……『ワイトキング』が召喚される。

そう、僕のデッキは『ワイトキング』『ワイト』を始めとする低レベルのアンデット族中心のデッキ。

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、墓地にある『ワイト』『ワイトキング』の枚数×1000ポイントです!」

「! そのための『手札抹殺』か!?」

「先程の『手札抹殺』により、『ワイト』が2枚、そして『ワイト夫人』が1枚墓地に送られました!」

因みに他のカードは永続罠『王宮のお触れ』と『馬頭鬼』であった。

永続罠も、永続魔法の罠カード版だ。『王宮のお触れ』、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする、は少し痛いが、『馬頭鬼』は、墓地のこのカードを除外すれば他のアンデット族を1枚蘇生出来る。よって仮に『ワイトキング』がやられてもすぐに蘇生出来る。

……しかし、新たに引いた手札を見てみると、その効果を使う必要もなさそうである。

「『ワイト夫人』は墓地にある時、『ワイト』として扱われます!よって『ワイトキング』の攻撃力は3000ポイント!更に手札から『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!」

場に闇に染まった黒いマッチョな剣士が現れる。……普通、1ターンにモンスター
を召喚(通常召喚)出来るのは1体だけだが、さっきの『ワイトキング』は永続魔法『ミイラの呼び声』の効果での特殊な召喚である為、このモンスターを通常召喚出来る!

「『ダーク・グレファー』の効果発動!手札から闇族性モンスターを1枚墓地に送る事により、デッキから闇属性のモンスターカードを更に1枚墓地に送ります!僕は手札から闇属性の『ゾンビ・マスター』を墓地に送り、デッキから『ワイト』を墓地に送ります!よって、『ワイトキング』の攻撃力は4000!」

『ワイトキング』を纏う闇のオーラが増大する。

……この状態で攻撃表示の『パンサーウォーリア』(攻撃力2000)を攻撃すれば、攻撃表示同士のバトルの為、攻撃力の低い『パンサーウォーリア』を戦闘破壊出来、その攻撃力の差、2000ポイントのダメージを与えられる。

まぁ、ライフポイントは4000ポイントの為、それでも十分なんだけど……

「更に装備魔法『光学迷彩アーマー』を装備!」

装備魔法、条件の揃った1体のモンスターに効果を与え、発動後もフィールドに残り続ける魔法カードだ。

「このカードは星1のモンスターにのみ装備可能!装備した星1のモンスターは相手に直接攻撃が可能になります!」

「な!?攻撃力4000のダイレクトアタックが可能なモンスター……だと!?」

「『ワイトキング』(攻撃力4000)でダイレクトアタック!」

……ヤバイ、攻撃名どうしよう……適当でいいか。

「『ホーンテッド・ナイトメア』!」

……某鼠の国のお化け屋敷が元ネタである。自分のネーミングセンスの無さに少し泣けた。

『パンサーウォーリア』の眼前まで迫った『ワイトキング』の姿がぶれ、消えた。

次の瞬間、『ワイトキング』が試験官の前に現れ……

「うわぁぁぁ!?」 敵残ライフ0

身に纏ったオーラで試験官を包み込んだ。

うわ、あれ大丈夫なのかな?

幸い、いくらリアルでもビジョンはビジョン、試験官の身体には特に影響はなかったようだ。ソリッドビジョンが消え、五体満足の試験官が現れた。……気絶はしていたけど。

……と、ともかく、後攻ワンキル達成!……正直なところ、かなり手札が良かったんだけど。

……どうやら、これからもこのデッキで何とかいけそうである。

『……』

……あれ?周りが妙に静まりかえっている?調子に乗ってやり過ぎたかな?

あ、そうか、万丈目君達もこれを見ているんだよなぁ……これで睨まれてしまったかなぁ……

……うん、大丈夫だろう!多分!根拠はないけど!

僕は一抹の不安と、これなら絶対に受かっただろうという充実感とともに、試験を終えた。



後書き
…とゆーわけで、ワイトデッキでした。よーし、カッコイイゾ!ハズカシイゾ!因みに実際に使ってます。『ワイトキング』をずっと使い廻しするデッキです。除外されたらオシマイです。

改正、旧一話と二話を統合しました。



[6474] 第二話 こんにちは相棒さん達
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:a7e4b7e3
Date: 2011/07/12 23:42
「でもおかしな話だよねー、あんなに華麗にワンターンキルしたのに、和希君もオシリスレッドなんだから」

「本当だよなぁ」

「はは、しょうがないよ、筆記が落ちるスレスレだったからね」

翔君と十代君の言葉に苦笑で返す。

そう、僕は晴れてオシリスレッドの生徒となった。

……まぁ、受験番号が十代君や翔君よりも低い時点でなんとなく予想はできていたけど……

本場のこの世界の人達とカードについての知識が同レベルな訳がないだろうし、妥当ではある。

これでオベリスクブルー……は流石に無理だろうがラーイエローになろうものなら恐らく即落第であろう。

そう考えれば寧ろオシリスレッドに入れたのは僥倖だろう。

「ま、いいさ。僕には上の2つの寮よりこっちの方がのんびりしてて合ってるさ」

「お!気が合うな和希。そうだよな、のんびり楽しく行こうぜ!……っつーことで早速デュエルしようぜ!」

「……いや、全然のんびりしてないし」

「はぁ、二人ともお気楽っス」

翔君が盛大に溜息をする。隼人君も苦笑していた。



さて、ここで現状について色々考えてみよう。

先ずは元の世界に戻る方法。

……手掛かり0。

この世界に来た前後の事もあやふや。

よって何とも言えない。寧ろ戻れない可能性が高いというのが現状だろう。

……正直あちらの世界の身内や知人等の事を考えると多少悲しい。

携帯は勿論繋がらない。

しかし、まだ会えないと決まった訳ではない。とりあえず物語に沿っていくのが無難であろう。

幸い、デュエルエリート校とだけあり、学費は要らないらしい。……正直1番の懸念要素だっただけあり助かった。

また、自分の銀行口座(これもあちらの世界と同じで助かった)には信じられない程の金が何故か入っていた。この分なら余程無駄遣いしない限りはカードを買ったり等の問題ないだろう。

……という訳で、今現在、1番の懸念要素は……




それは入学試験の日に遡る。

僕はデュエルを終えた後、偶然、十代君と翔君に会った。

「よぉ!すげぇデュエルだったな!見ててゾクゾクしたぜ!」

「ありがとう、十……110番君、僕は朝倉和希、宜しく」

……危ない危ない、うっかり十代君と呼んでしまうところだった。……まぁ、クロノス教諭とのデュエルの時名乗っていたから呼んでも問題なかったのだろうけど。

「おぅ!オレは遊城十代!宜しくな!和希!」

「僕は丸藤翔っス。宜しく、和希君」

と二人と自己紹介したところ……

「な……なぁ、和希?」

……よく見ると十代君の顔が妙に引き攣っていた。

「お、お前の後ろのソレって……」

後ろ?……そう言えばさっきからカタカタカタカタ聞こえていた。

振り向いてみると……

……カタカタ鳴っている骸骨が3体。

「うわぁ!?」

「?」

思わず悲鳴。翔君は一人『?』を浮かべていた。



……というわけで、なんと僕も精霊を所持していた。

勿論、ワイト、ワイト夫人、ワイトキングの3体だった。

……いや、正直嬉しいけど。この3枚はお気に入りのカードだったし。

しかも、見た目に反して陽気な連中で、僕とは気が合った。

ハネクリボーも、最初は恐がっていたが、今ではすっかり打ち解けていた。

ただ、この事により、僕の動きが物語に影響する事がほぼ確定的になった。

……正直世界の平和こうたら僕には荷が重過ぎる。

……でも十代君達のサポートとかなら出来る筈だ。

彼等も、この世界で会った大切な仲間だ。それを助けるのは当たり前だろう。

……僕は彼等と戦う事を決意した。

「だから宜しくね、相棒達」

三人(?)は頷いてくれた。うん頼もしい限りだ。

あ、でも夜ふざけて隼人君の枕元で騒ぐのはやめれ?うなされてるし。



今日のカード(ワンコに非ず)

和希「……というわけで、和希最弱にして時々最強な精霊達と出会うの回でした~」

ワイト「カタカタカタ!」

夫人「カタカタカタ!」

王「カタカタカタ!」

和「ぎゃー、ごめん、ごめん、冗談……じゃないけどちゃんと意味があるから噛まないでー、歯型が残るぅー」



和「……というわけで、相棒達を始め、色々カードを紹介します。先ずは『ワイト』」

ワ「カタカタ」

和「ご存知弱いカードの代表的存在、星1、攻撃300守備200、効果無し!」

ワ「……カタカタ(悲)」

和「しかし、『ワイトキング』を強くしたりと、僕はかなり重用している陰の主力であります」

ワ「カタカタ♪」



和「機嫌が直ったところで次は『ワイト夫人』」

夫「カタカタ」

和「星3で攻撃0守備2200。下級モンスターで最高の守備力を持ち、さらに、フィールド上に存在する限り、『ワイト夫人』以外の星3以下のアンデット族の戦闘破壊を防ぎ、魔法、罠の効果も無効化する、まさに出来る奥様です。更に、墓地に行くと『ワイト』として扱われるため『ワイトキング』の強化も可能。旦那さんをも凌ぐ大活躍が期待できます」

和「欠点としては、効果モンスターの効果は防げず、また相手のアンデットにもこの効果が有効なこと。完璧マイナスワン、ちょっと移り気なジャジャ馬さんです」

ワ「カタカタ(泣)」

和「……苦労しているんだね」



和「最後は『ワイトキング』」

王「カタカタ」

和「星1、攻撃?守備0、墓地にある『ワイト』『ワイトキング』の数×1000が元々の攻撃力となります。さらに戦闘で破壊された時、墓地にある『ワイト』『ワイトキング』を除外すれば復活可能。欠点はその効果上、復活するたびに攻撃が1000下がる事、また、魔法、罠、効果の破壊には復活は出来ず、そして、墓地に『ワイト』がなければ攻撃が0なところです」

王「カタカタ……(不満)」

和「しかし、最高攻撃力はなんと8000!更に『ワイト夫人』がいればモンスターの効果以外はシャットアウト出来、アンデットは蘇生カードが豊富な為、その復活効果を使わなくても蘇生が容易。そして、星が1なので『光学迷彩アーマー』を付ければダイレクトアタック可能。間違いなく強力なカードです」

王「カタカタ(喜)」



和「何より大切なのは、この3枚が揃って初めて強力な効果を発揮するということ。まさに三位一体、最弱だけど最強といのはそういう意味です」

3ワイト「カタカタ(納得)」

和「これからも期待してるよ?」

3「カタカタ!(応)」



後書き

というわけで、ワイト精霊化です。如何でしょうか?賛否両論な気がしますが、こんな感じで行きます。

……とゆーかクロノス教諭難しい……



[6474] 第三話 翔君誘拐事件?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:a7e4b7e3
Date: 2011/07/12 23:54
『SLASH!!』

「だー!?汚ねぇぞ!エ○ィのガード不能起き攻め!」

「ふ、勝負の世界は常に非常なのデスヨ」

デュエルアカデアに入学してから数日後の夜、僕と十代君は『ギル○ィギア』で対戦していた。

驚いた事に、こういったデュエルモンスターズに関連がない物は現実世界と殆ど変わりがなかった。……殆どの会社が海馬コーポレーションの傘下になっていたが。特にゲーム関係。

そんなこんなで、僕と十代君は対戦中、翔君は外出中、隼人君は既に就寝中、精霊達は僕らの観戦中である。

なお、ワイト達はテスタ○ントが気に入ったようだ。しきりに使うように言ってきた……僕の持ちキャラ、ア○セルなんだけどなぁ……

「そーいえば翔君遅いね?随分長い間外出してるけど?」

「あー、なんかオレが風呂上がったた頃からずっと居ないんだよなぁ。どうしたんだろうな?」

「ふーん」

……何か忘れてる気がするけど……ま、いいか

「さーて次のキャラは……あー、はいはいテス○メントね」

『『『カタカタカタ♪』』』

「よし!ならオレらはこいつだな!相棒!」

『クリクリ~♪』

ハネクリボーは翼繋がりでディ○ィーが気に入ったようだ。

「ふふふ、またゼ○ネストで嵌め殺してくれる」

「なにおー、こっちこそガード不能イ○ペリアルレイで返り討ちにしてやる!」

僕達二人の腕は互角。翔君曰く……

「着いていけないっス」

……だそうだ。

「いくぜ!」

「おうよ!」

今ここに、また熱いバトルが繰り広げられる……寸前であった。

ピッピー、ピッピー、ピッピー

熱い空気に水を差す電子音……あー成る程。

「そうか、そーゆーことか」

通りで今日の翔君は妙に挙動不振だった訳か。

「? どうしたんだ?」

「……いや、何でもない、メール来てるよ?」

「? ああ」

十代君が生徒手帳を手にする。

余談であるが、アニメで使われていたあの画像付きの通信機である。無論、海馬コーポレーション製。

「マルフジショウヲアズカッテイル、カエシテホシクバ、ジョシリョウマデコラレタシ」

ボイスチェンジャーを使ったんだろう、電子音に近い声がした。……つーか多分、原作の流れ通りなら明日香さんだよねこれ。

「なんだ……これ?」

「翔君が誘拐された、もしくは女子寮に侵入して捕まったってところかな?」

「翔がそんなことするかよ!」

残念、しちゃってるんだなぁこれが。

「女子寮に行くぞ!和希!」

「はぁ、しょうがないか」

全貌を知っている僕としては余り行く気がないんだけどなぁ、十代君やる気だし、ま、行くしかないか。



そして二人してえんやこらとボートをこいで、やってきましたブルー女子寮。

そこには明日香さんと枕田ジュンコさん浜口ももえさん、そして両手を縄で繋がれている翔君がいた。

「あら、朝倉も来たのね、丁度よかった……」

「?」

明日香さんが何か呟いたみたいだったけど生憎聞こえなかった。

「アニキ~」

「翔!これはどういうことなんだよ?」

「それが……話せば長いような、長くないような」

「コイツがねぇ、女子寮のお風呂を覗いたのよ!」

短!

「なんだって?」

「覗いてないって!」

「……翔君、欲求不満だからって幾らなんでもそれは……」

「だから違うって!」

ごめん知ってる。

「それが学校にばれたら、きっと退学ですわ」

「……翔君、短い付き合いだったけど君の事は忘れないよ」

「そ、そんな~」

……ヤバイ、ちょっと面白いぞこれ。

「ねぇ、あなた達、私達とデュエルしない?もし私達に勝てば、風呂場覗きの件は大目に見てあげるわ」

「だから覗いてないって言ってるのに!」

「なんだか良くわからないけどまぁいいや、そのデュエル受けて立つぜ!」

……今のやり取り聞いてても良くわからないんだ……ってゆーかちょっと待った。

「あなた『達』って事は、もしかしなくても僕もですか?」

「ええ、こっちは三人、そっちも三人、三対三、ニ本先取のチーム戦といきましょう。」

「ええー!?」

翔君が絶句している。かくいう僕も驚いた。

「……強い人代表で十代君とあなたじゃ駄目ですか?」

「それでもいいけど、入学試験でワンターンキルを見せてくれたあなたのデュエルも見てみたいの。調度いいでしょ?」

「……さいですか」

あーもう、やっぱり調子に乗ってワンターンキルとかしなければよかった!

「……因みに拒否権は?」

「別にいいけど、その場合不戦勝として私達に一勝ね」

「じゃ、十代君、翔君、後は頑張ってね」

「薄情者~!」

「まぁ待てって」

僕が回れ右すると、翔君は半泣き状態、十代君は冗談だとわかっているのか苦笑しながら腕を掴んできた。

「あーはいはい、冗談ですよ、やりますよ」

「顔がにやけてるぜ?って言うか、お前なんかキャラ変わってないか?」

おや失敗失敗。



「うう、酷いっス」

「だからごめんってば。……とゆーか、そもそもどう考えても僕達が君に巻き込まれてる形じゃない?」

「うう……」

「ま、これでチャラという事で……」

「……和希君、結構酷い人っス」

「帰る!もう帰る!泳いででも帰る!」

「わー、ごめんっス!」

……さて、翔君弄りもここまでにして、僕はワイト達に一言二言言って散らさせた。

「? どうしたの?」

「いや、ちょっと害虫捜査をね」

「?」

「……そろそろ始まるみたいだよ」

「あ、うん」

「いくわよ!」

「おう!来い!」

先ず初戦は原作通り十代君と明日香さんだ。

「「デュエル!!」」



「一気に決めるぜ!『サンダ-・ジャイアント』の特殊効果発動!『サイバー・ブレイダー』を破壊!そして相手プレイヤーにダイレクトアタックだ!『ヴォルティック・サンダー』!」

「ああぁぁぁ!!」

「明日香さん!」

「大丈夫でございますか?」

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

原作通り、やはり十代君が勝った、そしてどこかで形容しがたい悲鳴も聞こえた気がした……つーか社長さん、これ本当にソリッドビジョンですか?マジで湖面に電気走ってたぽかったし。

……ま、そんなツッコミを頭の隅でしつつ、僕はというと……

「なーにが『僕の事はどうでもいいんだ、僕何もしてないし』ですか。現に女子寮侵入して僕達に迷惑かけてるのは何処の誰かなー?何処の誰かなー?何処の誰かなー?」

「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!」

翔君のカッコつけた台詞に対して折檻していた。ほっぺをぐにーとひっぱって。

「っ!明日香さん、仇はアタシが討ちます!」

「おっと出番ですか」

枕田さんが鼻息も荒く立ち上がって来たのを境に折檻を中断した。

「ナイス」

「おう、決めて来い!」

「出来ればね」

十代君とハイタッチして選手交代。

「? 翔どうした?そんなにほっぺ腫らして」

「ううぅ、ジンジンするぅー」

「おいおいしっかりしろよ、もし和希が負けたら、勝ち負けお前次第なんだぜ?」

「あー!?そうだったー!どうしよう!」

「おーいそこー、何を不吉なこと言っちゃってくれやがっちゃってますかー」

全くしょうがないな。

「おーい!明日香さーん!」

「? 何?」

「ここでもし僕が勝ったらこっちの勝ち決定ですよね?」

「っ!」

枕田さんの表情が歪む。しかし明日香さんの目配せにより黙っていた。

「それがどうしたの?」

「だからその場合、翔君がデュエルしなくてもいいですよね?」

「……そうね、本来なら容疑者である彼がデュエルしないのもおかしい話だけど、負けは負けね。いいわ、あなたが勝った時点で、彼は許してあげる」

「「明日香さん(様)!?」」

あっちのニ人は驚いているが、だろーなとは思っていた。

原作通りならば、彼女の目的はこの騒動を利用して十代君や僕とデュエルし、実力を計るというもの、翔君の退学云々等どうでもいい筈なのだ。翔君とはデュエルする必要はないのだ。

「ただし、あくまでもそれはあなたが勝った場合の話、負けたら勿論、彼はももえとデュエルしてもらうわ」

「ま、それは当たり前ですね」

……ま、気が強く、負けず嫌いそうな彼女の事だ。その事とは別にこの団体戦を完全な勝利で飾りたいのだろう。

「……だそうだよ翔君。少しは僕を応援する気になった?」

「和希君……」

「ほんじゃ、行ってきまーす」

……さて、翔君の為に頑張りますかね。



「グダグダしてないで、さっさとしなさいよ!」

「ははは、ごめんなさい。ウチの最終兵器とだべっていてつい……」

「最終兵器って僕なの!?」

「……まぁ、旧日本帝国の本土決戦作戦並みに頼りないけど」

「あんまりだー!」

「ははは、ほら、こんな風に」

「……アンタさっきの提案といい、アタシの事なめてるでしょ!?」

「いや、なめてはいないですけど、翔君が構ってあげないと死んじゃいそうで……」

「僕はウサギじゃなーい!」

いやー、翔君素直をからかうのがほんと面白くてしょうがない。

……あれ?なんかどこからか『ゴゴゴ……』って地獄の底から響くような……ワイト達も裸足で逃げ出しそうな効果音が……

「……いい度胸ねアンタ、そう、アタシ相手なら余裕ってわけね……」

……目の前にそのままダークサイドに落ちそうな程オーラを放っている人が居ました。

「い、いや、だからそういう意図は……」

「問答無用!さっさと構えなさい!!」

「……人の話は最後まで聞きましょうよ~」

「アンタにだけは言われたくないわ!!」

「……それはごもっとも」

「っっっっっ!!いくわよ!!」

「……はーい」

「「デュエル!!」」

「……本当にマイペースだなぁ、和希君」

「まぁ、そこがいいところでもあり悪いところでもあるんだけどな。ほんと、面白い奴だよなあいつ」

……あんまり君にも言われたくないですよ。十代君。



「……完全にあっちのペースね」

「そうでございますわね」

「厄介な相手ね、果して天然なのか意図的なのか……」



「アタシのターン!ドロー!」

余談ではあるがこの世界ではマジで先攻後攻が早い者勝ちである。よって最近は手札の確認が速くなってしょうがない。5枚ドロー→チラ見→即判断みたいな感じである。

そして、今回の手札は微妙……寧ろやや先攻有利かなとも思えた。しかし、僕には確かめたいことがあった。

「『海神の巫女』(守備力2000)を守備表示で召喚!ターンエンド!」

彼女の出方を見て、僕は思わずガッツポーズをしそうになった。

そう、僕が確かめたかったのは彼女のデッキのコンセプトである。

彼女はpspのゲーム、『タッグフォース』シリーズと原作とではまるで強さが違う人の一人だ。

原作版では、浜口さんとのタッグでほんの一瞬しかデュエルをしているの見たことがなかったが、確かその時のフィールドには『レスキューキャット』と『マーメイド・ナイト』が出ていた筈だ。

それがゲーム版では何を間違ったのか『ハーピィ・レディ』を始めとする鳥獣族デッキを使うのだ。

そして、このデッキが僕は苦手である。

上級モンスターはあまり居ないものの、『ハンター・アウル』が2体出ていて攻撃が出来ない、なんてケースがザラだ。『ハンター・アウル』は、このカードが場にあり、他に鳥獣族がいる限り、このカードを攻撃対象に出来ない、という効果を持っているからだ。火力も、元々の攻撃力の1000+このカードを含める自分フィールドの鳥獣族×500と高い。

……仮に『ワイトキング』で直接攻撃しても、罠カードも豊富なため破壊されるケースが多い……と攻守にバランスがとれた、確実に明日香さんよりも強いデッキを使ってくる。

しかし今彼女は『海神の巫女』を出してきた。

『海神の巫女』……場に出ている限りフィールドが『海』になるカード。フィールド魔法『海』と違って攻撃力守備力アップは無いものの、フィールドが『海』の時特殊能力を発揮するカードと相性がいいカード。

周りを見渡すと、今まで湖の真ん中にいた筈なのにいつの間にか大海原の真ん中にいる。……すごいですね社長さん、ほのかに潮の香りまでしますよこれ。

つまり彼女のデッキは、原作で使っていた『マーメイド・ナイト』を始めとする水属性モンスターのデッキ!

……よし!イケる!

「……へぇ、早くもガッツポーズ?とことん嘗めてくれるわね」

「……あ」

しまったついうっかり。

「上等……!完膚なきまでに倒してあげるわ!」

「……ああ、怒らせてしまった……」

「挑発するからっスよ!」

某仙人と某霊獣のやりとりをする僕と翔君。挑発するつもりなかったんだけどなぁ……

「さっさとドローしなさい!」

「……ドロー!」

……正直今回手札は悪い。ワイト達が出払っているせいか、彼らのカードが来ない……ならば、

「モンスターを1体、裏側守備表示でセット!ターンエンドです!」

……元の世界では、モンスターを通常召喚扱いで守備表示で召喚する時、このように裏側守備表示でセットしなければならないのだが、これは原作の世界、原作同様、表側守備表示でも召喚出来るのだ。

彼等が戻るまで耐える。

「アタシのターン!ドロー!『マーメイド・ナイト』(攻撃力1500)を攻撃表示で召喚!」

やっぱり来た。『マーメイド・ナイト』。

「『マーメイド・ナイト』はフィールド魔法『海』が出ていれば2回の攻撃が可能!更にフィールド魔法『海』発動!これで『マーメイド・ナイト』の攻撃力200アップ!(攻撃力1500→1700)」

フィールド魔法、専用のフィールドカードゾーンに置かれる、フィールド全体に効果をもたらす魔法カード。永続魔法同様、発動後もフィールドに残り続ける。

……と言うか……

「……『海神の巫女』意味ないじゃないですか?」

……表側表示で存在する限り、フィールドを『海』として扱うこのモンスターの効果と被ってるし……

「っっ!しょうがないでしょ!?今『海』を引いたんだから!文句ある!?」

いや、文句はないけどさ……

「……正直手札の無駄な気が……」

「和希君!声!声にでてるっス!」

「……あ」

……こいつはヤバイバ……

プッツン……!

あ……なんか切れた音が……

「殺す!絶対に殺す!肉片も残さないんだから!」

「お、落ち着きなさいジュンコ!」

「しとやかさに欠けますわ!」

……あー、なんかあっちのボートすごいことになってるなぁ。明日香さんが羽交い締めして枕田さん止めてるよ。……止めなきゃボートから落ちるしね。そして浜口さんは微妙にずれてる気がする。

「『マーメイド・ナイト』!アイツの壁モンスターを粉砕した後、アイツにダイレクトアタック!」

『マーメイド・ナイト』(攻撃力1700)がこっちの裏側守備表示モンスター……紫のフード付きローブを着て大鎌を持ったアンデットモンスターに攻撃を仕掛ける。

……が、その攻撃はモンスターをすり抜け、モンスターは無傷である。

「ちょ、ちょっと!なんでよ!?」

「守備モンスター『魂を削る死霊』(守備力200)は戦闘では破壊されません。よって何回攻撃ができても無意味です」

そう、僕の壁モンスターは『魂を削る死霊』、戦闘では破壊されず、更にこのモンスター直接攻撃が決まれば、相手の手札をランダムに1枚破壊出来る、アンデットデッキでなくても入れる人が多い優秀なカードである。

そして、守備表示ならば、こっちの守備力が相手の攻撃力よりも低くても、普通はダメージを受けない。

「くっ……ターンエンドよ!」

自分の迂闊な攻撃に反省したのか、今の攻防で彼女は多少クールダウンしたようだ。……まだ、それだけで人が殺せそうな眼差しでこっちを睨んではいるが……

「僕のターン、ドロ……ォ?」

「カタカタカタ」

ここでワイト達が戻ってきた。僕に探査報告をする。どうやら害虫は感電した後も復活。依然、このデュエルを観戦中だそうだ。恐らく、このデュエルが終わるまでこの場を離れないだろう、とも。

任務御苦労ワイト08小隊!褒美として今夜隼人君の枕元で騒ぐことを許す!

『カタカタ!』

全員敬礼のポーズをとる。うむ、ノリの良い奴らよ。……そしてごめん隼人君。

では諸君、見ての通り、帰還早々悪いが戦闘が発生した。総員!第一戦闘配備!ミ○フスキー粒子散布!敵にジ○ットストリームアタックをしかける!

『カタカタ!』

そして、僕の側に一列に並ぶワイト達。それにしてもこのワイト達ノリノリである。

「僕はリバースカードを1枚セット、そして『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)を攻撃表示で召喚!『マーメイド・ナイト』(攻撃力1700)に攻撃!」

「ちょっと本気?攻撃力の低いモンスターで攻撃なんて」

「『ピラミッド・タートル』は戦闘で破壊された時、デッキから守備力2000以下のアンデットモンスターを特殊召喚出来ます!」

「なんですって!?」

『ピラミッド・タートル』が『マーメイド・ナイト』に一刀両断にされる。 自残ライフ3500

「特殊効果発動!デッキから守備力2000の『真紅眼の不死竜(レッドアイズ・アンデットドラゴン)』(攻撃力2400)を攻撃表示で特殊召喚!」

「攻撃力2400ですって!?」

「レ……レッドアイズ?違う、これは……」

『真紅眼の不死竜』を召喚すると、枕田さんだけでなく、明日香さんも驚いていた……そういえば彼女のお兄さん、吹雪さんって『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』使うんだよなぁ。まずかったかな?

……でも『真紅眼の黒竜』自体、確かにレアではあるけど世界に何枚とかそんな感じのカードではなかった筈。おまけに、このカードは言わば真紅眼亞種のカード。多分大丈夫だろう。

「『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)で『マーメイド・ナイト』(攻撃力1700)に攻撃!『アンデット・メガ・フレア』!」

……相変わらずの自分のネーミングセンスの無さに泣けてきた。その内、某凡骨さんのように『朝倉ファイヤー』とか付けそうな自分が不安だ。

……ともかく、『真紅眼の不死竜』の吐いた黒い火球が『マーメイド・ナイト』を粉砕した。 敵残ライフ3300

「ターンエンドです!」

「くっ……アタシのターン!ドロー!……リバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!」

……今の僕の手札にはリバースカード除去のカードはない。……でも仮に『真紅眼の不死竜』が破壊されても、僕の場には戦闘で破壊されない『魂を削る死霊』が居る。多分大丈夫だろう。

「『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)で『海神の巫女』(守備力2000)に攻撃!『アンデット・メガ・フレア』!」

と、枕田さんの口が吊り上がった。

「罠カード発動!『炸裂装甲』!相手モンスターの攻撃宣言時、そのモンスターを破壊!『真紅眼の不死竜』を破壊するわ!」

! やはり来た。

『真紅眼の不死竜』が突如現れた装甲に身を包まれ、その装甲ごと爆砕された。

「ザマを見なさい!」

大喜びしているけど……明日香さんが少し悲しそうな表情しているの気付いてるのかな……

「僕は『終末の騎士』(守備力1200)を守備表示で召喚します!このカードが召喚、反転召喚、特殊召喚された時、デッキから闇属性モンスターを1枚墓地に送ります。『ワイト』をデッキから墓地に送り、ターンエンドです!」

「お得意のパターンってわけね……でもそんな暇与えないわ!アタシのターン!ドロー!装備魔法『早すぎた埋葬』を発動!ライフを800ポイント払い、墓地の『マーメイド・ナイト』(攻撃力1500→1700)を特殊召喚するわ!そして更に装備魔法『メテオ・ストライク』を装備!」 敵残ライフ2500

……拙いな、『メテオ・ストライク』は装備したモンスターに貫通能力、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える効果、を持たせるカード。『魂を削る死霊』は破壊はされない能力はあってもダメージを0にする能力はない。よって『メテオ・ストライク』による貫通ダメージで大ダメージを受けてしまう。

「『マーメイド・ナイト』(攻撃力1700)で『終末の騎士』(守備力1200)と『魂を削る死霊』(守備力200)に攻撃!」

『マーメイド・ナイト』の剣が2体を攻撃し、その剣圧の余波が僕を襲ってきた。……いや、マジで痛いんですけど社長さん!?もはや闇のゲームの域まで達してないですかこれ!? 自残ライフ1500

「更にフィールド魔法を『海』から『ウォーターワールド』に変えるわ!これでターンエンドよ!」

……新たなフィールド魔法が発動すると、古いカードは自動的に破壊される。

……拙いな、『ウォーターワールド』、全ての水属性モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせ、守備力は400ポイントダウンさせるフィールド魔法。締めに入ってきた。

これで2回攻撃がなくなったものの、『マーメイド・ナイト』の攻撃力は2000。次のターンで決めるか『魂を削る死霊』を生贄にして高レベルのモンスターを召喚するなりしないと負ける。ここにきて『真紅眼の不死竜』を破壊されたツケが回ってきた。

……しかし、僕のデッキにはもうほとんど高レベルモンスターがない。つまり次のターンで決めるというのが妥当になってくる。

幸い、このターンで決めることができる布石のほとんどは揃っている。あと1枚、あのカードさえこれば……

「か、和希君……」

翔君が心配そうにこっちを見上げてくる。

「……大丈夫大丈夫、まだ手は残されてるよ。このボートを泥船と思って安心してくれたまへ」

「それじゃ沈没しちゃうじゃないっスか!」

おっと失敗失敗。

「……随分余裕ね、それとも自分の境遇もわからないほど馬鹿なわけ?」

「いやいや、もう一杯一杯ですヨ」

「全然説得力無いわよ!いいからさっさとドローするなりサレンダーするなりしなさい!」

「では、お言葉に甘えて……ドロー!」

はてさて、鬼が出るか蛇がでるか……

「……引いちゃったよ」

なんと、その逆転のカードが出ました。

……十代君と行動しているからメインキャラ補正でもついてるのかな?

「『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)を召喚!効果により手札からモンスターカードを墓地に送り、墓地より星4以下のアンデットモンスターを召喚します!僕は『ダーク・グレファー』を手札から墓地に送り、墓地の星1の『ワイト』(攻撃力300)を攻撃表示で特殊召喚します!」

「はぁ?こんな時にそんな雑魚モンスター召喚して何になるのよ?」

「更に罠カード『同姓同名同盟』を発動!フィールドに星2以下の通常モンスターが存在するとき、デッキから同名のカードを可能な限り特殊召喚します!デッキから、残り2体の『ワイト』(攻撃力300)を攻撃表示で特殊召喚します!」

これで、僕のフィールドに『ワイト』が3体揃った。……縦隊で。

「だから!こんな時にそんな雑魚揃えても意味ないでしょ!無駄な足掻きは止めて……」

「更に、手札から魔法カード『トライアングルパワー』を発動!」

そう、僕がドローしたのはこのカードだった。

「『トライアングルパワー』の効果により、このターンのエンドフェィズ時に破壊される代わりに、自分のフィールド上の、全ての表側表示の星1の通常モンスターの元々の攻撃力と守備力は2000ポイントアップします!星1の『ワイト』3体の攻撃力は2000ポイントアップ!(攻撃力300→2300)」

「な、なんですって!?」

これにより、僕の場には攻撃力2300の『ワイト』が一気に3体出現した。

「3体の『ワイト』(攻撃力2300)で攻撃!」

『ワイト』達は縦隊のまま、『マーメイド・ナイト』(攻撃力2000)を吹き飛ばしつつ突進していった。……よし、技名は……

「『ホーンデット・ジェッ○ストリームアタック!!』」

「きゃー!!」 敵残ライフ0

……しかし君達ほんとノリノリね。



「約束通り、翔は連れて帰るぜ?」

「どうぞ、約束は守るわ、今日の事は黙っててあげる」

「ぅぅぅぅ……」

……なんか唸ってる唸ってる。

「今日のはマグレ、いいえ大マグレよ!アンタ達!いい気になるんじゃないわよ!」

「ちょっとジュンコ」

「でも明日香さん~」

「負けは負けよ、見苦しいマネはしないでね」

「いや、ソイツの言う通りかもしれないぜ?あんたら強いよ」

「「!」」

「そうだねー、僕も十代君も最後のドローがなければ負けてたしねー」

「ホントホント、ドローする時なんてワクワクヒヤヒヤしたぜ。それにしても、和希のあのコンボ凄かったな!あれをずっと狙ってたのか?」

「ま、まぁね、狙いすぎてちょっと危なかったけど。ま、負けても翔君が被害被るだけだったけどねー」

「酷!?」

「ま、成功したんだし、勝てたんだからいいじゃない」

「……釈然としないっス」

「「あはははは……」」

「……グスン……」

……はい?

「うわーん!」

……何事ですか?

「こんな、こんな奴等に負けるなんて、うわーん」

な、なんか号泣しだした?

「……僕なんか悪いことしちゃった?」

「……ええ、おそらく無意識のうちにね」

「……謝った方がいい?」

「やめておきなさい。余計に泣くわ。いいからこの子の事はこっちに任せておいて」

「……お願いします」

……彼女とは一生仲良くなれない気がする。

「あ、そういえば発端の偽ラブレターとかいうの、まだあります?」

「? ええ、それがどうかしたの?」

「いや、ちょっとやりたいことがあるので貸して貰いたいなーっと」

「……悪用しないでしょうね?」

「しませんよー。ちょっとしたいたずら程度には使うかもしれませんけど。主に翔君に」

「やっぱり僕なの!?」

「……いいわ、そのかわり、なるたけ早くその用とやらを終わらせて、私に返すか私の前で処分すること」

「了解です」

「期限は?」

「早くて明日、遅くても3日後」

「いいわ。期間厳守ね、延滞料は高いわよ?」

「……善処します」

寒気がするようなニッコリ笑顔で言ってきた……くわばらくわばら。



そして、ブルー女子寮入口前、再び監視に当たらせていたワイト達が帰ってきた。どうやら害虫さんが移動開始したようだ。

「あ、ごめん、僕ちょっと用事思い出した」

「? こんな時間に?」

「いや、翔君救出に向かう途中でカードが1枚風で飛ばされちゃってね」

「あー、だから探させてたのか?」

「そーいうこと」

「?」

「だから先に帰っててくれない?すぐに帰るからさ」

「わかった。行こうぜ翔」

「う、うん。和希君、悪いことしちゃ駄目だよ?」

「やらないよー、翔君じゃあるまいし」

「……もう良いっス」



さて、それじゃぁ、ちょっと害虫をたしなめに行きますかね?



今日のカード

和希「今日は、僕が使った主なカードを紹介しますよー。」

3ワイト「カタカタカタ」

和「まずは『同姓同名同盟』、通常罠カード。星2以下の自分の場の表側表示通常モンスター1体を選択して発動、デッキから同名のモンスターを可能な限り特殊召喚。弾圧される民等守備力の高いモンスターを揃えてそのまま生贄にするもよし、シンクロの素材にするもよし、フィールド魔法等で一気にパワーアップさせるもよし。『コストダウン』等を使えば星が少し高めのモンスターにも使用可能となかなか使い勝手がよいカードです。通常モンスターでなければいけないため、僕は勿論『ワイト』に使います」

ワイト「カタカタ」

和「そして僕がよくこれと併用して使うのが『トライアングルパワー』。通常魔法、自分場に表側表示で存在する、全ての星1の通常モンスターの元々の攻撃力と守備力は2000ポイントアップする。エンドフェイズ時に自分フィールド上に存在する星1の通常モンスターを全て破壊する。場合によっては攻撃力3000オーバーを一気に3体作れる一撃必殺のカード。これに『リミッター解除』等を一緒に使えば一気に勝負を引っくり返せる、正に魔法のカード。僕のデッキの場合なら『ワイト』がこのカードの効果でエンドフェイズ時に破壊されても、それが『ワイトキング』のパワーアップに繋がるため無駄なく利用できます」

ワ・王「カタカタカタ♪(肩を組んで)」

和「この2つはワイト専用というわけではなく、低レベルの通常モンスターならなんでもいいので汎用性が高いです。是非使ってみてください」




後書き

早くもネタが……(汗 翔君弄りにたよりがちになってきました。

自分の勘違い分を改正、koyama様本当にありがとうございます。

改正、前後編を統合



[6474] 第四話 月一試験 
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/13 00:15
「お願いします~、デュエルの神様、今日の月一テストの成績次第で、このオシリスレッドからラーイエローに昇格することが出来ます。これはまさに、『死者蘇生』!」

「……したいんならそんな祈ってないで寝るか勉強するかしようよ。……試験中眠くなるよ?」

「この翔を、墓場から御救い下さい頼みます~」

……聞いてないし。……つーか月一って頻繁にやってるんだからもっと気楽にいけばいいのにね。

かく言う僕は必要最低限だけさっさと丸暗記してpspをやってたりする。ちなみにソフトはTOD2、ただいま『「ぶるぁぁぁぁぁ」の人』戦である。もうすぐこの声が生で聞けると思うと楽しみでしょうがない。……つーか何この無理ゲー?アイテム位使わせてくださいよ……

ジリジリジリ!!

「うわわわ!……なんだ目覚ましか」

「起きない時点で『目覚まし』になってないけどね……」

……結構御近所迷惑なほどの音が、それも十代君の耳元で鳴っているのに起きないとは……

「……和希君もヒトの事言えないっス」

「……まぁね」

ぶっちゃけ僕も過眠症気味でいっつも翔君に起こしてもらってるんだけどね。

「……でも十代のアニキは余裕だなぁ、試験勉強全くやらないで大鼾かいて寝てるんだから……」

「余裕というより……むしろ問題視してないだけじゃない?」

……まぁ実際彼は昇格なんて眼中にないし。

「……そういう和希君も随分余裕だね」

「んー?僕はちゃーんと勉強したし?」

「……前日に数時間ノートをパラパラ眺めるだけを試験勉強と言わないっス」

「要点は覚えたんだからいいんですぅ」

「……はぁ……」

盛大に溜息された。そして翔君は十代君を揺する。

「アニキー、テストに遅れちゃうよ?アニキ!」

「……むにゃ、ぅおれのたぁん!どろぉ!」

「うわぁ!」

十代君の拳が翔君の顎にクリーンヒットした。

因みに、原作知識でこうなることはわかっていたけど、面白そうだったので勿論黙って見ていた。

「もう!ターンエンドだよ!テストに遅れちゃうんだってば!」

ここで隼人君と翔君のやり取りがある筈なんだけど……

「……うーん……うーん……」

隼人君は只今ライブでうなされております。勿論ワイト達に。……昨日翔君が

「隼人君、なんか最近ちょっとやつれたね?」

と聞いていた。……ごめん僕のせい。

「じゃ、行きましょうかね?」

「でもアニキが。」

「大丈夫だって。目覚ましそのまま鳴らしておけばそのうち起きるって、それに夢の中で実技のイメトレしてるのかもしれないしね」

「でも……」

「じゃ、僕は先に行くよ?……あ、そうそう、翔君?君はあんなカードに向かって祈ってたの?」

「へ?……あー!こらー!」

「あはははは……」

祭壇モドキには『死者蘇生』……ではなく、僕がすり替えた『墓場からの呼び声』が祭られていた。




「そして、原作通りトメさんを手伝っていた十代君が終了ギリギリに到着、万丈目君と一悶着の後、全生徒の冷たい視線を浴びつつ試験開始、1分後翔君と共に居眠り開始、僕もその1分後に一応全部埋めたので居眠り開始、試験終了後、空気君……もとい三沢君に起こされ、『今のデッキを信頼している』という空気君らしくからぬカッコつけ発言を聞いた後、新しいカードが未確認生命体『な・ノーネ』の魔の手により買い占められたであろう購買部に急いで移動、原作通り、翔君が残りの1パックを、十代君がトメさんからの『だってぇ、オシリスレッドのアンタじゃレアカードの1枚もないとさ』という余計なお世話と共にお礼のカードを入手。そして現在に至る」

「?和希君どうしたの?一人でブツブツと」

「いや、ちょっと現状の説明をね」

「?」

主に読者の方々にね!やってる途中で二回ほどくしゃみが聞こえたけどね。

ちなみに万丈目君との悶着の時、試験官の大徳寺先生に向かって「先生!彼カンニングしています!」と叫びたかったのは内緒である。



そして実技試験、僕の番になり……

「ふん!オシリスレッドのドロップアウトなど瞬殺してくれる!」

「……お手柔らかにお願いします」

僕の相手は万丈目君……ではなかったもののオシリスレッドの生徒ではなくオベリスクブルーの生徒だった。無論クロノス教諭の独断である。

……ああ、流石にあれは拙かったかな?



あれは翔君誘拐事件直後の事。

「おやクロノス先生、奇遇ですね?」

「ギクリンチョ……こ、これはシニョール和希、もう門限ンーは過ぎてるーノ、こんなところで何をしてるーノですか?」

……ギクリって口で言ってるし。

因みに勿論偶然ではない。ワイト達の情報をもとに、十代君達と別れた後、先回りしていたのだ。

「いえ、今日突然こんなものを頂きましてね……」

そう言って明日香さんから借りた偽のラブレターを見せる。

クロノス教諭は何か言いたそうだったが言えなかった。当然だ、このラブレターの事を知っているのは十代君、翔君、明日香さん、枕田さん、浜口さん、僕、……そして書いた本人以外にいないのだ。そして、クロノス教諭は今日の騒動を全て目撃している。自分が書いたとバラす事は出来ない筈だ。

「すっぽかすのも失礼ですし、流石に女子寮に入るわけにはいかなかったので近辺で待ってみたのですが、残念ながら……」

と肩をすくめてみる。

「そ、そうなノーネ。それは残念なノーネ」

「それで、ひょっとしたら誰かの悪戯、最悪僕を貶めるための罠なんじゃないだろうかとやっと考えつきましてね」

クロノス教諭の顔が青ざめる。ここでトドメだ。

「それだったら許せないですよねー?人を罠に貶めるなんて。幸いこの手紙の筆跡、そしてキスマークの唇の跡を調べれば犯人を特定できそうです。……知ってますか?口紋も指紋みたいに犯人特定に役に立つんですよ?」

意図的に口に手を当ててクククと暗く笑ってみる。前髪を垂らしてみたり。

クロノス教諭がアワアワ言いながらガクガク震えだした。……ヤバイ楽しいなこれ、ワイト達が隼人君うなしてるのもわかる気がする。……そのワイト達も横で震えているのが若干気になるけど。

「ま、でも」

ここで前髪を掻き上げていつもの調子に戻す。

「何かの勘違いかもしれませんしね、それに僕も若干遅刻してしまいましたし、もう帰ってしまったのかもしれませんね。書いた人の特定はやめておきましょう。遅れた僕が悪いんです」

「シ、シニョールはとても優しいーノ、そ、その優しさに免じて門限ンーの件は大目に見るノーネ」

「ありがとうございます」

よく言いますよ。

「で、では私は用事がありますーノで、これで失礼するーノデス」

あ、逃げた。回れ右してぎごちなく歩きだした。

「はい、おやすみなさい」

ちょっと物足りないけど、ま、こんなとこで勘弁してあげますか。僕は笑顔で見送った。

クロノス教諭が帰った後、僕は何故か眼を合わせてくれないワイト達と共に寮に帰ったのだった。どっとはらい。



んー、流石にあれは拙かったかな?

因みにあの後から何故か数日間ワイト達がいやに大人しくなってしまった。最近元に戻ったけど。あとハネクリボーも何か吹き込まれたのか僕を怖がっていた。

そんなこんなでクロノス教諭を懲らしめようとしたのだが、逆に睨まれる結果となってしまったようだ。……ちょっと浅慮すぎたかな?

……まぁ、そんなこんなで名もなきオベリスクブルーの生徒と相対する事となった。万丈目君じゃないのがせめてもの救いか?

「何をボーっとしている!」

「……ああ、すいません」

おっとっと、とりあえず目の前の敵に集中すべきか。

「いくぞ!」

「よろしくお願いします!」

「「デュエル!!」」



「……相変わらずのんびりしてるね」

「すげぇな和希!オベリスクブルーの生徒と対戦するなんて!」

「……アニキの番も次でしょ?緊張しないの?」

「ああ!緊張して、胸がワクワクしてしょうがないぜ!」

「……はぁ、なんで僕の周りの人ってこんなに緊張感ないんだろう……」

「和希ー!頑張れよー!」



5枚ドロー!手札チラ見!即判断!

「僕のターン!ドロー!」

……最近気づいた、この作業のために、体育授業の野球とかで動体視力鍛えるんだね。

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果により、手札、デッキより墓地に『ワイトキング』を1枚ずつ送り、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「俺のターン!ドロー!手札より魔法カード『打ち出の小槌』を発動!」

来た!『打ち出の小槌』!流れからして恐らく万丈目君みたいにクロノス教諭からカードを貰っているのではないかと思ってはいたけど……あたりのようだ。

『打ち出の小槌』……手札から任意の枚数デッキに戻しシャッフル、その枚数だけまたドローする手札交換のカード。原作版では更にこのカード自体も一緒に戻す為、結果的に手札1枚損するOCGと違い、手札に損のない、正にチートなカードとなっている。これをデッキに入れれば、デッキがなくなっても『打ち出の小槌→打ち出の小槌→打ち出の小槌×∞』という悪あがき無限ループができる。ある意味『ずっと俺のターン』カードのひとつである。……恐ろしい。

「俺は、このカードと、手札のカード2枚をデッキに戻し、シャッフル。そして、デッキからカードを3枚ドロー!」

手札を3枚も変えてきた。……いいなぁ、あのカード欲しいな……

「更に『甲虫装甲騎士』(攻撃力1900)を召喚!攻撃表示!」

身体を鎧で固め、右手が剣と一体化している昆虫騎士が召喚された。うわぁ……名無しキャラらしからぬ攻撃力1900の無難に強いカードだ。ライフ4000だとこういった地味だけど攻撃力の高いモンスターが驚異となってくる。

「『甲虫装甲騎士』(攻撃力1900)で『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)に攻撃!」

『ダーク・グレファー』が『甲虫装甲騎士』と鍔迫り合いをするものの、力負けし袈裟掛けに真っ二つにされ、その剣圧の余波がこっちまで襲いかかってきた。……勿論痛い、痛いけどもう何も言うまい社長さん……いい加減驚くのも飽きましたよ…… 自残ライフ3800

「ターンエンド!」

「僕のターン!ドロー!」

どうやら相手のデッキは純粋にパワーで押してくるデッキのようだ。それも昆虫族使いだろうか。

……まさか、所謂『デミスドーザー』だろうか?

『デミスドーザー』、儀式モンスター『終焉の王デミス』と、超重量昆虫モンスター『デビルドーザー』を組み合わせた協力なコンボ。

儀式モンスター、特定の儀式魔法カードと、一定の条件を満たすモンスターカードを生け贄に捧げることによって特殊召喚するモンスター。

そして『終焉の王デミス』、儀式魔法『エンド・オブ・ザ・ワールド』による星8儀式モンスター、攻撃力2400と低火力ながら、ライフ2000を払うことにより、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する、という恐ろしい除去能力を誇るカード。

その効果発動後、この儀式の生け贄なり、除去能力を利用して墓地に送られるなりした墓地の昆虫族通常モンスターを2枚除外して特殊召喚する攻撃力2800の『デビルドーザー』を更に特殊召喚し、一気に勝負を決める……という恐ろしいコンボ。勿論、ライフが4000のこの世界では容易くワンターンキルを狙える。

仮に『終焉の王デミス』が召喚された瞬間、罠カードで『終焉の王デミス』を破壊しても、召喚された瞬間に効果を発動され、僕のフィールドがガラ空きの中、『デビルドーザー』で直接攻撃……大ダメージを受けてしまう。

拙い、この2枚のカードはメインキャラの使うカードではなく、しかも相手はクロノス教諭から色々カードを貰っている。このコンボが『絶対に来ない』と否定が出来ない。

そして、僕のデッキにはこのコンボを止める手立てが『手札抹殺』で『終焉の王デミス』ないしその儀式魔法『エンド・オブ・ザ・ワールド』を捨てさせるぐらいしかない、『ワイト夫人』も、効果までは無効化にできない。

幸い、相手の手札にはまだこのコンボのパーツが揃っていないようだ。揃っていたらこのターンで負けていた。

ならば……

「『魂を削る死霊』(守備力200)を守備表示で召喚!更にリバースカードを2枚セットしターンエンド!」

相手のカードが揃う前に……素早く体勢を整え、速攻で一気に攻める!

「ふん!守りに入ったな、だがそれが命取りだ!」

……っ!来るか!?

「俺のターン!ドロー!手札から魔法カード『地割れ』を発動!相手フィールド上に表側表示で存在する攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊する!『魂を削る死霊』を破壊!」

『魂を削る死霊』が地面の亀裂に飲み込まれ、消滅した。拙い、相手のデッキはパワー重視のデッキ。これで攻撃力1900以上の低級モンスター、昆虫族なら『電動刃虫(チェーンソー・インセクト)』(攻撃力2400)やもう1体『甲虫装甲騎士』(攻撃力1900)を更に召喚されたら負け……ではないが速攻コンボを崩さなければならない。……そうなってしまったら、そのうち『デミスドーザー』のコンボの餌食になってしまう恐れが高い。

『地割れ』を使ってきたので十中八九ないだろうが。無論、この場で『デミスドーザー』で来られたら堪ったものではない。その場で試合終了である。

「俺は、更にこのモンスターを召喚!」

……良かった。どうやら儀式モンスターではないようだ。

ほっとしたのも束の間、召喚されたモンスターは、鋭い顎を持つ巨大な異形の甲虫だった。

……『電動刃虫』か!?

敵のモンスターが完全に姿を表すまでが僕には妙に長く感じられた。

現れたのは『電動刃虫』……ではなく『ネオバグ』(攻撃力1800)だった。危な!

「2体でダイレクトアタック!」

「くっ!……っつぁ!」 自残ライフ100

『甲虫装甲騎士』(攻撃力1900)の剣と『ネオバグ』(攻撃力1800)の鋭い顎でⅩの字に切り裂かれる。流石に一気に3000以上のダメージを受けると結構痛い。

「更に1枚リバースカードをセットしてターンエンド!どうした?その物々しくセットしたリバースカードは飾りか?」

相手はもう勝った気でいる。だが……賭けに勝ったのは僕の方だ。自然と笑みがこぼれた。

「どうした?絶望のあまり、本当におかしくなったか?」

「……残念ですが、このデュエル、次のターンで決着のようですね」

「オシリスレッドでもそれぐらいはわかるようだな。その通りこのデュエル貴様の負け……」

「いいえ、その逆ですよ!僕のターンです!ドロー!『ワイト』(攻撃力300)を攻撃表示で召喚!そしてこの瞬間、罠カード『同姓同名同盟』を発動!自分フィールド上に表側表示で存在する星2以下の通常モンスター1体を選択し、自分のデッキから選択したカードと同名のカードを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する!デッキから更にワイトを2体(攻撃力300)を攻撃表示で特殊召喚!更に『ワイト』が2体特殊召喚された瞬間、罠カード『激流葬』を発動!フィールド上のモンスターを全て破壊!」

「何!?」

フィールドにポン!ポン!ポン!とコミカルな音と共にワイトが3体現れ……あーれーとばかりにあっという間に濁流に飲み込まれた……ごめん、正直ちょっと面白かった。

更に、相手フィールドのモンスターも津波に呑まれ、流されていく。

「くっ……だがやはりオシリスレッドだな!『ネオバグ』が召喚された時に『激流葬』発動すればよかったものを。これでは貴様のモンスターも破壊されてフィールドがガラ空きではないか!」

「ふふふ、これも作戦の内ですよ!更に魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動!自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外する!あなたの墓地の『甲虫装甲騎士』をゲームから除外し、僕の墓地から『ワイトキング』を特殊召喚します!」

「何ぃ!?まさかこのために自分のモンスターごと!?」

「そういうこと。僕の墓地には『激流葬』の効果で『ワイト』が3枚、『ダーク・グレファー』の効果で送った『ワイトキング』が1枚。よって、墓地の『ワイト』と『ワイトキング』の合計枚数×1000の『ワイトキング』の攻撃力は4000!」

「な、なんだと!?」

「『ワイトキング』(攻撃力4000)でダイレクトアタック!『ホーンテッド・ナイトメア』!」

「くっ、させるか!罠カード発動!『聖なるバリア-ミラーフォース-』!相手モンスターの攻撃宣言時、相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊……!」

「残念、それにチェーンして、永続罠カード『王宮のお触れ』発動!このカードにより罠カードは全て無効化します!」

「く、くそ!……くそぉぁぁぁ!!」 敵残ライフ0

相手が闇に包まれ、デュエルの決着を報せる断末魔が響いた。



「残りライフ100かよ!全くヒヤヒヤさせやがってこいつ!」

「そうだよ!相手は無傷だったし。息が苦しかったよ!」

「……いや、月一テストぐらいで呼吸困難になられても……」

毎月人工呼吸が必要そうである……

「明日香さんあたりに頼む?」

「ちょ、ちょとやめてよ!そんな……」

「じゃ、トメさんの方がいい?」

「もっとやめて!」

「……わがままだなぁ」

「そーいう問題じゃないの!」

……明日香さんにって提案した時ちょっとまんざらでもなさそうな顔したくせに。


「さぁ、次はいよいよオレの番だな!くぅ~!待ちくたびれたぜ!」

「……アニキ、更にやる気満々っスね」

「おう!あんなスリルあるデュエルを見た後なんだぜ?身体が『デュエルやりてぇ』って疼いてしょうがないんだ!」

「……アニキ、新手の変態みたいっス」

「むしろ中毒じゃないかな?デュエルジャンキー」

これ以上なく生き生きしている十代君を見て、僕と翔君は『どっちも否定できないなぁ』と笑い合った。



「万丈目!」

「!」

「これでお互いライフは1000ポイントずつ!でもここでオレが攻撃力1000以上のモンスターを引いたら面白いよな!?」

「何を戯言を!そう簡単に!」

「でも引いたら面白いよな!オレのターン!ドロー!……!……俺はこのカード、『フェザーマン』(攻撃力1000)を召喚し、プレイヤーにダイレクトアタック!」

「うわぁぁぁー!?」

「やったぁ!やったぜアニキ!」

「うーむ、連邦軍……じゃなかった、十代君の引きの強さは化け物か?」

いやー、いつ見てもあの引きの強さには脱帽する。寮で練習デュエルとかしてみても、あと一歩というところであの引きにやられてしまうというケースがしばしばあるからねー。

あちこちからの歓呼に応える十代君、そして……

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

決め台詞も忘れない。……僕も何か考えとこうかな?でもやられたら結構嫌味だよなあれ。

「おーい!おーい、アニキー!」

感極まったのかデュエル場に乗り込む翔君。僕もそれを追いかける。

「全く、人の事言えないくらいギリギリなデュエルだったねぇ」

「何だ心配したのか?」

「んー?あんまり、多分勝つかなーとは思っていたしね」

多少『もしかしたら原作と違って負けるんじゃないかな?』とか思うときはあるものの、原作を知っている以上、事実上勝つ場面では八割がた勝つと思っている。

「この野郎!嬉しいこと言ってくれるぜ!」

「……あははは……」

……なんか勘違いされてる気がするけど。……まぁ、彼の実力も勿論信頼してるので間違ってはいないかな。

「……あ、三沢君居たんだ?」

「いや、結構前から居たぞ……」

いやこの場面でいるのは知ってたんだけど、意識しないと全然気付かなかった。しかも一番影が濃かったこの辺りでこれなんだからこの先どうなっちゃうんだろう?

「見せて貰いましたよ、遊城十代君」

なんて要らん心配をしていると、鮫島校長のアナウンスが聞こえてきた。

「君のデッキへの信頼感、モンスターとの熱い友情、そしてなにより、勝負を捨てないデュエル魂、それはここにいる全ての者が認めることでしょう。よって勝者遊城君、君はラーイエローへ昇格です」

歓声が爆発する。ここにいる全ての生徒達(一部のオベリスクブルー以外)が十代君を称賛している。……少し羨ましく思えた。

「すごいよ!やっぱりすごいよアニキ!感動しちゃったよ!」

「だろだろ?」

「そして……朝倉和希君」

「ふぇ!?」

突然の名指しに間抜けな声を出してしまった。

「遊城君に勝るとも劣らないデッキへの信頼感、卓越したタクティクス、ピンチの中でも自分を見失わない冷静さ、しかしそのクールさに内包された熱いデュエル魂、どれをとっても遊城君に劣るものではない、よって、君もラーイエローに昇格です」

「は、はぁ」

あまりに突然なことに脳がフリーズしてしまったようだ。僕は茫然と答えるしかできなかった。

しかし、我に返ると、さっきまで十代君を称賛していたみんなが、今度は僕に称賛を浴びせてくれていた。

これだけの称賛はかつて受けたことがなかった。見渡す限り、遠くの人も、近くの人も、同級生も、先輩も、男性も、女性も、みんなが僕を祝福してくれていた。そして、そのどれにも口や態度だけでなく、心が籠っていた。

……ヤバイ、不覚にも……目頭が……熱……く……

「すごいや!オシリスレッドから一気に二人昇格なんて前代未聞だよ!おめでとう!和希君!」

「……ありがと……」

こんな顔は見せられないと、慌てて顔を逸らして、何とかそう答える。

「?……あー」

その様子を見て、最初は疑問に思ったようだが、すぐに合点がついたようだ。意地の悪い笑みを浮かべて……いつもの意趣返しをしてきやがりました。

「あれあれ?和希君泣いちゃってるんスか~?意外と感激屋さんなんだね~?」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさーい!!」

「いひゃいいひゃいいひゃいいひゃい!!」

僕は羞恥のあまり、翔君のほっぺを思いっきり引っ張ってやった。……千切る!今日こそはこの『マシュマロン』みたいにプニっとしたほっぺを千切ってやるぅぅー!

「やったな和希!オレが昇格したのに、お前は昇格しないなんて変だなーって思ったんだよなー」

「……ありがと……」

また目を逸らして礼を言う。……ヤバイ、顔が滅茶苦茶熱いんですけど。

「遊城十代、朝倉和希、おめでとう。そして、ようこそ!ラーイエローへ!」

「ああ!」

「……ありがと……」

「和希君さっきからそれしか言ってない……ぅぁいひゃいいひゃいいひゃい!」

……気分も静まって来たので、手を放してやると、翔君は嬉しいような寂しいような複雑な表情をしていた。僕は苦笑して、

「大丈夫、またすぐに一緒になれるよ」

「へ?それって一体……?」

「さぁね」

そう、すぐにまた一緒になれるよ。

すぐに、

すぐに……



「ほらね」

「うぃーっす!」

「ってアニキ!?和希君!?どうしてここに!?」

「どうしてって、ここがオレの部屋だからな。オレがオレの部屋に帰ってきて何が悪い?」

驚愕している翔君と隼人君の前で、さも当然のように言う十代君。僕は苦笑して聞いていた。

「そうだ!オレはここが気に入っている。燃える炎!熱い血潮!熱血の赤のオシリスレッドが気にいっている!離れる気なんて更々ないぜ!」

「……全く、熱血バカだよねぇ」

「そのバカにノコノコ付いて来て帰って来たバカは何処のどいつだよ!?」

「僕ですよ!悪い!?」

「いーや!最高だぜ!」

「うぇーんアニキ~!、和希く~ん!」

イェーイ!とハイタッチをする僕達に、翔君がマジ泣きしながら駆けよってくる。僕は『ヒーローバリア』ならぬ十代バリアを展開する。

「わぁ!離れろ翔暑苦しい!和希!オレを盾にすんな!」

「いやー、仲がよろしいようで。……なるほど、二人にはそんな趣味が……」

「お前なぁ!」

「僕うれじいよ~!またふだりと一緒だなんてぇ~」

「お、おい……」

「今日だけは泣かせてくれよ~」

「何ですと!?『今日だけは寝かせないでくれよ』!?まさかいつの間にそんな関係まで!?」

「ちがーう!!」

……ごめん、一瞬マジでそう聞こえた。

「あーもう!くっつくなぁ!」

「うー、アーニーギー、僕ずっと付いで行ぐぜ~、和希君とも絶対に離れない~うぇ~ん」

「着いて来るのは構わないがくっつくな~!」

「はは、翔君って、本当に寂しいと死んじゃいそうだね」

「だから僕はウサギじゃない~、そういう和希君だって泣き虫……」

「うるさいうるさーい!」

「いひゃいいひゃいいひゃい!うぇ~ん」

「ははは、これも『情熱の赤』ってやつかな?」

「むしろ『熱愛の赤』じゃない?」

「だからちっがーう!!」

「ア~ニ~ギ~、が~ず~ぎ~ぐ~ん」

僕たちは泣いて抱きつきながら、それをひっぺがそうともがきながら、茶化しつつ若干赤面して泣きっ面のほっぺを引っ張りながら、それをちょっと離れたところからその揉みくちゃになった様子を見ながら、みんなで笑った。



『そうだ!オレはここが気に入っている。離れる気なんて更々ないぜ!』

十代君のこの言葉は、僕の気持ちも雄弁に代弁してくれていた。

正直、こっちの世界に来た時、自分でも気づいてなかったんだろうけど、僕は心細かったんだろう。

『彼等を守りたい』と決心したものの、この世界に無理やりに連れてこられた事を理不尽にも思えた。

でも、こうやって彼等と笑っていると、そんなことはどうでもよくなってしまう。

むしろ、こんな素敵な仲間……いや、こっちに身内のない僕には『家族』かもしれない……に出会えたことを感謝したくなった。

……でも物語は始まったばかりだ。これからは比べ物にならないぐらいの困難が待ち受けているだろう。

でも今日、僕は頑張ろうと再決意した。

……こんな風に、いつまでも『家族』と笑いあっていたいから……




今日のカード

和希「今日の和希君模様はダークサイドのち若干ツンデレ、のち所によりシリアスでしたー。因みにまだ最終回じゃーありませんので御安心をー。最終回であって欲しかった方々、ぶっちゃけもう終われって思っていた方々、申し訳ありませんがまだまだ結構続く……かもしれません」

3ワイト「「「……」」」

和「今日のキーカードは……皆さん御存じ『激流葬』と『生者の書-禁断の呪術-』でーす」

3「「「……」」」

和「まずはほとんどの人が入れているであろう通常罠カード『激流葬』、モンスターが召喚、反転召喚、特殊召喚されたとき、フィールド上のモンスターを全て破壊します。ポイントなのは、自分が召喚した時でも使えるというところ。だから罠カードの効果を受けない『E・HERO ワイルドマン』等を召喚したときに使えば相手のモンスターのみを破壊することも可能。僕は今回みたいに『ワイト』をまとめて墓地に送るときや、『ワイト夫人』が出ていてこっちのモンスターが罠の効果を受けない時等に使います(後者の場合、ワイト夫人は破壊されてしまいますが。)」

3「「「……」」」

和「続いて通常魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』です。相手の墓地のモンスターカードを1枚ゲームから除外し、自分の墓地のアンデット族のモンスターを1体特殊召喚する、簡単に言えばアンデット族専用で更に除外効果を持っている死者蘇生というところでしょうか?死者蘇生みたいに制限がないので、デッキに何枚も組み込めるのも特徴です。ただし、このカードの除外効果は『できる』ではなく『する』なので相手の墓地にモンスターカードが1枚もない場合は使えません」

3「「「……」」」

和「……まぁ、1枚もないという場面はデュエル序盤でない限り滅多にないでしょう。『ネフティスの鳳凰神』や『ヴァンパイア・ロード』等、倒しても倒しても墓地から復活してくる厄介なモンスターや、『ゼーター・レティキュラント』のように墓地にあるときに効果を発揮するモンスターの対策にもなるので、アンデット族を使うなら1枚は入れておいた方がいいんじゃないかなー、というカードです」

3「「「……」」」

和「……どうしたの?今日は静かだけど?」

ワイト「カタカタカタ」

和「へ?『今回、出番が震えているのと流されているの以外ほとんどなかった。』?」

夫人「カタカタカタ」

和「『描写はなかったけど、ハネクリボーは召喚されただけであんなにキャーキャー言われていたのに?』」

ワイト王「カタカタカタ!?」

和「『ぶっちゃけ今回マスターの一人勝ちでさぞ気持ちがいいでしょう!?』?い、いや、そんなつもりは……」

3「「「……(ムスー)」」」

和「いや、だからね?……」

ワ「……!(プイ!)」

和「ごめんよ……」

夫「……!(フン!)」

和「悪かったよ……」

王「……!(ツン!)」

和「ほ、ほら、感想にも『ワイト分が足りない』ってあったから、新しく某有名シーンのパロディも改正版で書かれたし……」

3「「「……(ジトー)」」」

和「ごめん!ゆるして!この通り!一生のお願い!」

ワ「カタカタ(ごめんで)」

夫「カタカタ(済むなら)」

王「カタカタ(警察は)」

3「「「カタカタ!!(いらない!!)」」」

和「……」

3「「「……(ムスー)」」」

?「……………クッ」

3「「「?」」」

黒和希「クッ、ククククク、へぇ、そーいう態度をとるんだね?」

3「「「!?(ビクッ)」」」

黒「僕はこれでも誠心誠意、真心を込めて謝っているんだけど……許してくれないのかなぁ?」

3「「「……!(ガタガタブルブル!)」」」

黒「それとも、こんな大罪を犯した僕は……死んじゃったほうがいいかな?」

3「「「……!(ブンブンブン!)」」」

黒「……じゃぁさぁ、どうしたら許してもらえるのかなぁ?」

黒「ねぇ?」

ワ「……!(ガタガタ!)」

黒「ねぇ?」

夫「……!(ブルブル!)」

黒「ねぇってば?」

王「……!(ガクガク!)」



黒「ああ、そうか」

3「「「!?」」」

黒「何でこんな簡単な方法を思いつかなかったんだろう……そう、どうしても許せないなら……君たちが『許す気持ちになる』ようにすればいいのかー♪」

3「「「!!!???」」」

黒「幸い時間なら有り余っているし……ここは一つゆーっくりと話し合いを……そう、『話し合い』をしない?」

和「……ありゃりゃ、逃げられちゃった。……ではまた次回お会いしましょう。さようならー」



後書き

……和希のキャラが四方六方八方と手裏剣みたいに迷走しだしました。これは設定の再考が必要か?

……因みに「今夜寝かせないでくれ」はアニメ見てて僕には本当にそう聞こえました。

改正 ワイト分補給+感想を基に改正、X様、本当にありがとうございました。



[6474] 第五話 廃寮探検隊
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:a7e4b7e3
Date: 2011/07/12 23:55
「さぁ、お前のターンだ……おっと、この娘が気になるようならお前の目に入らぬようにしてやる」

気絶した明日香さんが入っている棺桶の蓋がひとりでに閉まり、地中に沈んでいった。……ふむ、本当にどういう仕組みになってんだろアレ。

「明日香!」

「汚いぞ!」

「卑怯者!」

「そうだそうだ!汚いぞ!アナタさっきさりげなーく股間掻いていたでしょ!?」

「「そういう意味じゃない(んだなぁ)!!」」

只今若本……もとい自称闇のデュエリストのタイタンと十代君が目下デュエル中である。



まずはこうなった経緯を話そう。

そう、先程まで僕は……

「あははは、ファラオ~♪」

「ほぁら……」

「ほほほ、和希君は猫が好きなのにゃ」

大徳寺先生の部屋でファラオと戯れていた。

ファラオは嫌そうな顔をしていたものの、僕がコッソリ残しておいた夕食のエビフライをあげると……

「物を貰ったら等価交換で返さないと駄目なのにゃ」

と、錬金術師らしい理論を先生から言われ、渋々僕にされるがままになっていた。

ここのエビフライは抜群に旨いのだが、……ファラオと戯れられるならこんなの安いもんである!僕の中ではファラオのモフモフプニプニ>エビフライなのである!

いや~、こういうデブっちょい猫は僕的にど真ん中直球どストライクなのだ。正直『お持ち帰りぃ~』して抱き枕にしたい。

因みにワイト達は初対面で食べられそうになったので目の届かない所へ避難。……幽霊を飲み込むのは知ってたけど精霊まで食べれるの君は?

「あはは、モフモフプニプニでかぁいいですね~チミは」

「……ほぁら」

「……試験の時とは偉い違いなのにゃ」

先生が苦笑いするなか、僕は心行くまでファラオをモフモフプニプニした。



…んで、至福の時を過ごした後、部屋に戻ると鍵がかかっており、開く気配がしなかった。

疑問に思い、合鍵で開けてみると、部屋は真っ暗で、そして誰もいなかった。

ふと見ると、僕の机にメモがあった。

『和希へ。俺達は廢寮に探検に行ってくる』

惜しい!廢じゃなくて廃だよ……つーかそっちの方が若干難しくないかい?

生憎、一昨日の夜に徹ゲーしていた影響で昨日は夕食後すぐに寝てしまった。どうやらその時に例の怪談をしていたようだ。

……拙い。

僕は急いで持ち物を整えて廃寮に向かった。

……急げ、急げ!……

……このままでは!……

……あの『ぶるぁぁぁ』な声を聞き逃してしまう!



……幸い、十代君達が中に入る直前で追いつけた。ふ、元の世界で陸上部都大会出場はダテじゃない!

……因みにこの陸上部時代、よく更衣室でサボって友達とデュエルしてて顧問の先生に怒られたのは懐かしい思い出だ。……僕よく都大会までいけたな……

ま、ブランクが長かったから脇腹が死ぬほど痛くなったけど……あの声が聞けなきゃ死んでも死に切れない!

話しを戻すけど、残念なことに、既に明日香さんとは別れた後だった、明日香さんには怖い目にあってもらうしかないけど……しょうがないか。

そして僕たちは探索を開始した。



「埃は被ってるけどオシリスレッドの寮とは大違いだなー、いっそオレ達ここに引っ越さねぇか?」

「お、いいね、シャンデリアとかもあって豪華だしね。大徳寺先生に相談してみる?」

「ちょっと二人とも本気!?」

「本気と書いてマジ」

「あの寮も気に入ってるけど、何事も広くて豪華なことにこしたことはないだろ?」

「やめてよ二人共、僕は絶対いやだからね!」

「俺も……」

「ああ、二人共埃が苦手?大丈夫だって、これくらいレッド寮全員で掃除すればすぐに綺麗になるって」

「「そーいう問題じゃない(んだなぁ)!!」」

「あー、でもここからだとデュエルアカデミアから遠過ぎるか?」

「あー、確かにねー、通学までに時間がかかるのは痛いねー、朝弱い僕達としては」

「「もうその話はいいから!!」」

いやー、二人とも必死必死、面白くて堪らない。

そーいえば……

「隼人君どうしたの?必要以上に青ざめてる気がするけど?執拗に背後気にしてるし?」

「な、なんか聞こえるんだなぁ。まるで骸骨がカタカタなりながら俺の背後に迫ってるような……」

……納得、背後には……やっぱりワイト達。廃寮の雰囲気が居心地いいのか当社比2倍くらいに騒いでる。……あんまり変わってない?だっていつも騒がしいし……

「気のせいじゃない?」

「だといいけど……うう、最近悪夢ばっかり見るし、お払いでもしてもらおうかな?」

りょ、良心が!数少ない僕の良心が痛いぃぃ!?



……気を取り直して探索再開。闇のゲームの研究をしていたと思われる壁の壁画を調べている。

「ほ、本当にここで闇のゲームを?」

「そ、そんなの迷信だってば……」

……べちょり

「$%¥@&¢§£!?」

翔君形容しがたい悲鳴をあげる。大・成・功!

「……和希、何なんだなぁそれは」

「何って……オヤツ?」

「ど、どこの世界に紐に吊したコンニャクをオヤツにする人がいるんスか!?だ、大体なんでそのオヤツを僕の首筋に!?」

「いやー、ちょっと味付けしようと思って……」

「どんな味!?」

「ふーむ?……」

パクッ

「食べた!?」

「……微妙に甘い?」

「意味がわかんないよ!」

そんなコントをしながら探索を進める。

「ふーん、千年アイテムっていうのは7つあったんだ……!これって……」

十代君が懐中電灯で照らす先にはブッキーこと吹雪さんの写真が……10JOINとかぱっと見テンジョインって読めませんて……



キャーーー

その明日香さんの悲鳴が響く。

「!遊城軍曹殿!今の悲鳴は!?」

「ああ、間違いなく天上院上等兵のものだ。行くぞ!朝倉伍長!」

「イエッサー!」

「バカヤロウ!」

「ぐは!?」

「イエッサーの前にはサーを付けろ!」

「サ、サー・イエッサー!」

それにしてもこの十代君ノリノリである。……っつーかノリで十代君案外本気で殴りましたね?……親父にもぶたれたことないのに!

「き、緊張……」

「できないんだなぁ……」

「ボヤボヤするな!前田一等兵!丸藤三等兵!」

「お、おう!」

「僕だけなんか微妙に低い!?うわーん、アニキが和希君に毒されてるっスー!」

失敬な、人を毒電波みたいに。



「こ、これは、上等兵の『エトワール・サイバー』!?」

「上等兵……殉職したか、君の死は無駄にはしない。」

「縁起でもないこと言っちゃ駄目っス!っていうかまだ続いてたの!?」

「何かを引きずった跡があっちへ……!」

「何!?軍曹殿!まだ彼女が生きている可能性があります!」

「でかしたぞ一等兵!」

「ハッ」

「……隼人君まで」

「……こうなったらヤケなんだなぁ」

人それを堕落と呼ぶ。

「よし行くぞ!」

「「「サー・イエッサー!」」」

翔君もヤケになったのか一緒に応えた後、緊張感皆無のなか僕達は明日香さんを救援に行った。

「緊張感がないのは誰のせいっス!」



「まぁ、そんなこんなで只今若本……タイタンと遭遇。クロノス教諭の依頼なのか、『遊城十代の次はキサマだ』みたいな感じの流れになり、十代君がタイタンとデュエル開始。今に至る…っと。っつーかクロノス教諭、報酬に二人合わせて給料半年分払うとか……どんだけ~?」

「……また何をブツブツと言ってるんスか伍長殿?」

「……うわ、翔君てばそんな軍隊物の趣味が?」

「酷!?」

「……やっぱり緊張感ないんだなぁ」



……念願の若本さんである。

バルバ〇スである。セ〇である。ジ〇ニーである。

『アイテムなんぞ使ってんじゃねぇぇぇ!』である。『吸収してやるぅぅぅ!』である。『ミィィストファイナー!』である。『ぶるぁぁぁ!』である!!!

……不謹慎にも顔がにやけてしまった。

……だって毎ターン毎ターンあの独特のラ行が聞けるんだもの……『ドるぉぉー』って。

「……キサマ余裕だな、遊城十代がを闇に葬った後はキサマの番だというのに」

僕のにやけ顔を不審に思ったのだろう、タイタンが僕に声をかけてきた。……まぁ、罠カードの『異次元トンネル-ミラーゲート-』が『ジェノサイドキングデーモン』の効果、このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、
その処理を行う時にサイコロを1回振り(この場合はルーレットだった)、2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する効果、によって、タイタンのイカサマのルーレットで無効化され、『インフェルノクイーンデーモン』の効果で攻撃力+1000され、攻撃力3000となった『ジェノサイドキングデーモン』に『フェザーマン』(攻撃力1000)がやられて十代君のライフがいきなり2000まで下がった場面だからね。…つーか技名が『炸裂ゥ!五臓六腑ゥ!』って……やるほうが痛そうな名前である。

「生憎、無駄な心配はしない質なんです。ねぇ?十代君」

「……言てくれるぜ!罠カード発動!『ヒーローシグナル』!このカードはモンスターが戦闘で破壊された時、デッキか手札から『E・HERO』と名のつくモンスターを特殊召喚する!出でよ!『E・HERO クレイマン』(守備力2000)!守備表示だ!」

「よっしゃ!」

「なんとか追撃を凌いだんだぞ!」

「ふふふ、それはどうかな?小僧!これを見てもまだ無駄な心配などと軽口が叩けるかな?」

と、タイタンが千年パズル(偽)を掲げ、光を放つ。

「消えてゆく……お前の体が、ライフポイントとともに徐々に消える……」

ワン、ツー、ジャンゴ!……と心の中で叫んだのは秘密である。

「十代!」

「アニキ!」

「俺の体が……!」

十代君の体の一部が消えている。うわ、凄いなこれ。……とゆーか闇のデュエリストとかしなくても十分に食べて行けるんじゃないかなコレ?

「ふふふ、小僧、言っただろう?闇のゲームは、既に始まっていると!」

『嘘だぁ!』と叫びたかったのを自重……ワイト達、頼むから微妙に錆びついたなたを持たないで、目に怪しい光ともさないで、微妙に首傾けてカタカタ笑わないで、マジで怖いから!

ここから偽闇のゲームについてを長ったらしく講釈するタイタン。……とゆーか彼の言う通り息苦しいし、足は動かない、動かないけどさ……上半身は動くわけで、足だけっつーのが微妙である。

……そんな中、十代君は笑う、ワクワクしてしょうがないと。

全くたいしたものだ。あの闇バクラでさえ闇のゲームで体が消えた時は青ざめてたっていうのに。僕も前もって知ってなかったら間違いなくビビっていただろう。なのに……

「こんなゾクゾクするデュエルは初めてだ!燃えてきたぜ!」

全く君って奴は……

「おっそろしいバカですよ!君は!」

「オイコラ!バカとはなんだバカとは!」

「褒め言葉だよ!有り難く受け取っとくんだね!」

「……へ!おう!サンキュー!」

「っ!キサマら!」

「負ければ消える 、それならば十代君が勝てばいいまでのこと!心配する必要など端っからないんですよ!」

「おう!その通りだぜ!ますます燃えてきたぜ!俺のターン!ドロー!」

益々気合いが入る十代君。デュエルはまだ始まったばかりである。



その後も、デュエルは原作通りに続いた。

十代君はフィールドの『E・HERO クレイマン』と『E・HERO スパークマン』を融合モンスター、『E・HERO サンダ-・ジャイアント』を融合召喚し、その原作版の効果、融合召喚に成功した時、このカードよりも元々の攻撃力の低いカードを破壊する効果、で『ジェノサイドキングデーモン』を破壊しようとするが再び仕組まれたルーレットで不発、なんとか対象を選ばない罠カード『聖なるバリア-ミラーフォース-』により、タイタンのモンスターを全滅させるが、タイタンはすかさず手札の『デスルークデーモン』を捨てることにより『ジェノサイドキングデーモン』を復活、再び攻撃、かろうじて速攻魔法『非常食』により、手札補給が済んで用済みとなった永続魔法『悪夢の蜃気楼』を破壊してライフを1000回復、何とかこれを凌いだ。

凌いだものの、これで十代君のライフは残り1000、身体が益々消えてゆく。

「あぁ!アニキの右腕が!?」

「え?右脚、だろ?」

「「え?」」

「二人とも何を言ってるんだい」

「和希君も違うの?」

「消えたのは……十代君のライフでしょ?」

ズコーッと二人ともズッコける。うわ~ベタベタだー、でもこういう昭和時代のノリダイスキ。ワイト達もカタカタ大爆笑。フム、君達も通だね。

「あ、当たり前なんだなぁ!」

「和希君呑気すぎ!」

「そんなこと言われてもな~」

展開を知っている上、十代君のやる気にあふれている表情を見いれば呑気にもなるよ。ホント。

「……和希君はアニキが心配じゃないっスか?」「全然」

コンマ数秒、改行も許さずに即答する。

「……ま、強いて言うなら……」

「言うなら?」

「十代君が勝っちゃって僕の出番がないなーっていうのが心配」

「……はぁ……」

「どこまで呑気なんだぁ……」



その後、十代君も『フレイム・ウィングマン』を融合召喚し、反撃、効果も相まって一気にタイタンのライフを1900まで減らした。

そして、タイタンの体も消える、全く手の込んでいることだ。

「消えたの、右手だよね?」

「左、だろ?」

「だから消えたのはライフ……」

「さっきから見えてるもの違くないっスか?」

「どういうことだ?」

「おーい、スルーですかー?、三沢君扱いですかー?」

「……さりげなく酷いこと言ってるっス」



「へくしっ!……おかしいな、ここ最近よくクシャミがでるような。……夜遅くまでのデッキ研究のし過ぎで風邪でもひいたか?」



その後、タイタンはすかさず再び『デスルークデーモン』を捨て(おそらく、フィールド魔法『万魔殿』の効果で『インフェルノクイーンデーモン』が『ミラーフォース』で破壊された時に手札に加えたものだろう)、『ジェノサイドキングデーモン』を復活、十代君は『ダーク・カタパルター』を守備表示で召喚し、このターンを終えた。やっぱこの世界便利だな……表側守備表示。

タイタンはその『ジェノサイドキングデーモン』を生け贄に、『迅雷の魔王-スカル・デーモン』を召喚、『フレイム・ウィングマン』を粉砕した……それにしても技名が『怒髪天昇撃』って……

「……今のは……効いたぜ……」

僕の腹筋にもね。一々笑える技名をあの声で聞かされるのはある意味拷問である。

そうしてる合い間にもまた千年パズル(偽)が光り、十代君は蹲ってしまった。

「十代!しっかりしろ!」

「アニキ!」

「ぅぅ……」

「ふふふ、間もなく遊城十代は闇に堕ちる。どうだ小僧?約束通り次はキサマの番だ。恐ろしいか?」

ぼんやりしていた僕の表情を何を勘違いしたのか、そう語りかけてくるタイタン、僕はそれに向かって思いっっっ切り盛大に溜息をついてみせた。

「……はぁ、全くもう勝った気でいるんですか?詰めが甘いというか何というか、また同じようなことを言わせる気ですか?」

「何だと?」

「あなたにもわかるように要点だけ言いますよ。十代君は負けない、だから僕が戦う必要はない、ほら、これのどこに僕が恐ろしがる要素があるんですか?」

「き、貴様!まだそんな戯言を……」

「戯言……ですか。僕は何かおかしなことを言ってるかな?十代君?」

すると、十代君がふらつきながらも立ち上がる。

「な、何だと!?」

「……全く、少しは心配してくれてもいいんじゃ……ないのか?」

ジト目で僕に訴えかけてくる十代君

「だから言ったでしょ?『余計な心配はしない質だ』ってさ。それとも、立場が逆だったら、君は僕を心配するのかい?」

「……違いないな。隼人!奴の左手は消えてるよな?」

「……いや、逆だと思うけど?」

「えぇ?」

「因みに僕には両腕とも上腕部辺りが消えて見えているよー」

「「ええぇ?」」

「……成程、そういうことか」

「そういうこと……みたいだね」

「「?」」

「オレのターン!ドロー!」

おっとっと、そろそろ例の物を……パクリと

く~~っやっぱり効くなーこれ。

「?どうしたの和希君?」

「いや、ちょっときつけをね。ほら、二人とも口を開けて」

二人とも?を浮かべながら口を開ける。

「元気のもとだぁぁ!」

と僕はそれを放り込む。

「「?」」

二人とも何が何だかわからない顔をしたが次の瞬間……

「「!?$%¥@&¢§£!?」」

またもや形容しがたい声をあげる二人、火を吹かんばかりに口を開けている。

放り込んだものは僕特製の『激辛丸』、ワサビ、ラー油、タバスコ、ハバネロ粉末、トウガラシ等々、身の回りにある辛いものを混ぜてその辛さを凝縮させたものである。

多分測ったら数十万スコヴィルはいくんじゃないかな。スコヴィルとは辛さの単位で、ししとうで0、タバスコで2500ほどである。因みに一般の催涙スプレーが2000000スコヴィルである。そりゃ、涙も止まらないって……ワイト達、それ古いから、その『へぇ~』っていうの一昔前に終わったから、頭外してボタン代りにしてもカタカタしか鳴ってないし。

ツッコミもそこそこに、用意した僕は水筒の水を二人に渡す。

「「!!」」

二人とも奪うようにしてそれを飲む。……因みに辛さの成分は冷水では溶けず、むしろ口の中に広がる、そして、水筒の中には氷も入っており、勿論キンキンに冷たい。

「「$%¥@&¢§£!!??」」

……だから余計に辛く感じるのも当然なわけで。……もう『へぇ~』はいいから、でも80へぇ超えたから後で粗品頂戴。

「な、なにそれ?」

翔君が聞いてくる。声はかすれ、目は涙目、唇はタラコのように腫れている。

「なにって、オヤツその2」

「「それが!?」」

「美味しいでしょ?」

といいつつもう1つパクリ……っっっ!この意識が一瞬白むような辛さがまたなんとも……

「い、異常な味覚なんだなぁ……」

「……でも夕食のエビフライも美味しそうに食べてたし。……ということは好み?」

「……どっちにしても異常なんだなぁ……」

「もう1つどう?」

「「いらない!!」」

「それは残念、それよりもどう?効き目は?」

「え?……あぁ!アニキの身体が元に?」

「……どういうことだ?」

「ま、見てればそのうちタネがわかるって。十代君にも何か狙いがあるみたいだし」

そう言ったものの、実は説明がめんどくさいだけの僕であった。



「『ダーク・カタパルター』の特殊能力を発動する!このカードが守備表示でいたターンの数だけ、墓地からカードを除外することで同じ数のフィールドの魔法、罠を破壊することができる。オレは『フェザーマン』を墓地から除外し、フィールド魔法『万魔殿』を破壊!『フォーリンシュート』!」

『ダーク・カタパルター』から発射された光弾が万魔殿を破壊し、周りが元の廃寮に戻る。

「クソ!これを見ろ!」

「お前には、除外したカードを確かめて貰うぜ!」

そう言って十代君が投げた『フェザーマン』のカードは見事千年パズル(偽)の目の部分に突き刺さった。……ってあれ?この世界でもカードって紙製なんだけど?

一応自分のカードを確かめる。……うん、ちょっと硬いけど紙だ。それが千年パズルに、しかもキ―ンなんて硬質な音をたてて……刺さった?

ハ!?まさか波○!?○紋なのか!?カードに植物油を塗って波○を流したのか!?第二部のファンとしては見過ごせないんだけど!?

……ま、そんなわけないよなーと思いつつこっそりとワイト達を見た……君達まさかス○ンドじゃないよね?……それっぽいポーズとらなくていいから……っていうかなぜにク○スファイヤーハリケーン?

「しまった!」

「思った通りだ!こいつの闇のゲームはインチキだ!多分こいつはマジシャンかなにかでオレ達はこいつの催眠術に引っ掛かっていたのさ」

「あのパズルから出た光が僕たちの目から脳を刺激して幻覚を見せていたっ……てとこかな」

「ああ、だから身体が消えたのは本当じゃない」

「おまけにその腕は三流、消えて見えるのが一人一人バラバラだったってわけね」

ま、消えて見える時点で十分凄いと思うけど。

「それっぽく見せるために、多分そのコートやルーレットには仕掛けがしてあるんだろうぜ」

「何をほざく、私は本当に闇のゲームを……」

「なら当然知ってるよな?あんたが持つ千年アイテム、それが幾つあるのか」

「千年アイテムの数だと?」

「勿論所有者なら、知ってますよね?」

「答えてみろよ」

「それは……な、7……」

思ってた以上に自信なさげだ!

「!」

それに反応する十代君……駆け引き弱!

「……ふふふ、な~なだぁ」

「当たりだ……」

……さっきので二人共信じるの!?

「ふふふ、どうだこれでわかったか?私は本当に闇のゲームを……」

「では、7つ全部集めると何が起こるのかも、勿論御存じですよね?」

「な、何だと!?7つ全部集めると……だと!?」

「和希!?」

「和希君!?」

なにか言いたそうな三人を目でけん制しつつ、更に追いつめる。

「さぁ、どうなんですか?」

多分今タイタンは某黒魔術師使いの奇術師みたいに『し、知らねぇぇぇ!?』ってなってるんだろうなぁ。

「せ、千年パズルを7つ集めると……」

「はい、ドボン、あなたは答える以前に失格ですよ。回答権なし」

「な、何ぃ!?」

「千年アイテムは確かに7つあります、けど……」

「そういうこと!千年パズルが7つあるわけじゃない!」

あ、締めとられた……ま、いいか。

「ぐぐぐ」

「墓穴を掘ったな!」

「これでハッキリしましたね、あなたは……大嘘つきだ!」

ナ○ホド君のように人差し指を突き付ける。……結構気持ちいいなこれ、将来弁護士も悪くないか?

因みに今のところ第一志望は勿論プロデュエリスト、この世界の学生のなりたい職業第1位である。ついでに2位は海馬コーポレーション本社の正社員、ま、絶対に破産とかしなさそうだしね。

「ぐぬぬ、私の仕掛けが効かない以上、貴様とデュエルを続けるなど無意味な事!」

と、タイタンは煙幕で逃げようとする。

「やはり偽物の千年パズル、待て!」

「ちょっと十代君!深追いは危険だって!」

十代君は耳も貸さず、追いかけようとする。ああもうしょうがない。

「和希君!?」

「お、おい!?」

「連れ戻してくる!」

僕は駈け出した……間に合うか?



「十代君!」

「和希?」

「何かやな予感がする、罠かもしれないしここは……」

なんとか追いつき、十代君の腕をつかんだが、手遅れだったようだ。

床に千年アイテムのマークが浮かびだし、闇があふれ出してきた。それはワイトキングが纏うオーラとは全くの別物であり、冷たく、邪悪さ以外の何物も感じられなかった。

「な、なんだこれ!?おわ!?」

「ぬ!?ぬおおお!?」

「くっ……遅かった!?」

そして僕たちは闇に包まれた。



見渡すかぎりの闇、闇、闇、まさしく闇で出来たドームの中に僕達はいた。

「うわ~」

「な、何なんだこれは?」

声が少し反響している。ドームというよりは大きなトンネルだろうか。声以外はまさしく無音であり、異様な雰囲気が感じられた。……これが、闇のゲーム……

ただただ圧倒されている僕をよそに、二人は会話を続けていた。

「お前!まだ性懲りもなく……!」

「違う!私は何もしていない!」

その時、無音の筈の空間に雑音が混じって来た。うめき声のような何かが……

見れば得体のしれないナニカが大量に降ってきた。

見た目はコミカルだったが、僕にはソレらが何なのか何となくわかってしまった。

アレは闇。この世にあるものを全て覆い尽くし、食らい尽くし、無に帰す闇そのもの。

ここに来るまで『闇のゲームが見られるかも』と多少期待していた僕はここにきて後悔し始めた。

アレは……ヒトの手に負えるものなんかじゃない……!

なまじ知っている分、恐怖が大きかったようだ。

恐い怖い恐い怖い恐い怖い!

ニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロ!

鈍い筈の僕の本能的な警笛が僕に逃走を促す。

……でも何処へ!?辺りは見渡す限りの闇、闇、闇。逃げ場なんてありはしない。

そう、まさしくここは死地……!

「くくく、来るなぁ!、ぬわぁぁ!助け……」

「お、オイ!?」

「……」

僕はタイタンが襲われるのをただただ呆然と見ていた。それはおぞましいものだった。身体中を蹂躙し、果ては口から体内にまで侵入してくる。あれでは正気など保てるはずがない。

嗤えてくる、『闇のゲームがみれるかも』?ふざけている。そんな軽い気持ちでよくもまぁ……

……と、その闇であろうナニカが僕たちにも迫って来た。

拙い、ハネクリボーは十代君で手一杯だろうし……このままでは……

そうしてる合い間にも、ハネクリボーに阻まれて諦めたのか何体……匹?……個?数え方なんて知る訳もないけど、とにかくいくつかが僕に襲いかかって来た。

「和希!?」

「……っ!」

悲鳴も出ない。自分は意外と意気地がないんだなと、麻痺した頭で他人事のように思えた。

そして、一際大きな奴が僕の目の前に迫って来た時……

そいつは真横に吹っ飛ばされた。

「!?」

何事か、麻痺した頭で理解するには数秒かかった。

そして理解した時……一気に張りつめた空気がダルくなった。

……ええと、とりあえず現状を説明すると……

ナニカを追い払ってるのはワイト達……うんこれはいい。

で……肝心のどうやって追い払っているかというと……

パラリラパラリラ♪ブオーンブオーン!

……ええと歌で表すなら……『盗んだバイクで走りだす』?

お友達のスカルライダー君からパク……もとい借りたバイクに三人乗りし、僕の周りをグルグル回り、近づくヤツ等を悉く跳ね飛ばしていた。因みにバイクの後ろにおったてたのぼりには『倭偉徒参上!決闘上等!』と書かれていた。

因みにそのスカルライダー君は、マスターが精霊が見えない例であり、更に彼もかなり内気なため滅多に姿を見せず、十代君も彼の事は知らない。

「……」

呆然としている僕に、三人はサムズアップしてきた。

苦笑した。……なんだ、僕にはこんなに心強い『家族』がいたんじゃないか。それを忘れてたなんて。

どうやら、初めて目のあたりにした闇のゲームに少々呑まれていたようだ。

改めて見てみれば、先ほどよりも恐怖は薄れていた。まったく現金な自分である。

「……よーし!ワイト特攻隊!ガンガンブッコミ夜露死苦!」

「「「カタカタ!(夜露死苦!)」」」

……本当にありがとう。

……あー、でもノーヘル3ケツは流石に危ないゾー?



その後、目に怪しい光を灯したタイタン……おそらく操られているのだろう……と十代君がデュエルを再開した。

今迄僕が心で社長さんに愚痴っていたのを謝りたいくらい、それは真に迫るものであった。これでダイレクトアタックでも受けたらどうなってしまうのだろう……

僕は今まで以上に、この世界の歴史の根本が変わっていないことを祈った。



「いけ!『エッジマン』!『パワーエッジアタック』!」

「うんぬぅぅぅ!?」

……よかった。十代君が勝った。さっきまでは心配してないなんて言ってはいたが、今回は心配せざるをえなかった。……相変わらず十代君ギリギリなんだもの。

「ぬおおぉぉ、何をする!?馬鹿な!?本当に闇のゲームがあるというのか……!?」

ヤツらがタイタンに群がり、やがてタイタンは見えなくなった。

「うっわー、すげー、どうなってんだアレ?すげぇなぁ和希……和希?」

「……」

正直気が重い、僕はこうなることを知っていた。でもタイタンを見捨てた。もし、ここでタイタンを助けようとすれば僕や十代君も巻き添えになる可能性があるからだ。

……割り切るしかないか、僕は神様じゃない、全ての人を助けるなんて出来やしないか……

「おい、どうしたんだ和希!気分でも悪いのか?」

「……いや、なんでもない」

「クリクリ~」

見ればハネクリボーが示す先には出口らしき光があった。

「あそこへ行けってんだな!?」

「みたいだね、ワイト特攻隊!殿を夜露死苦!」

「カタカタ!(夜露死苦!)」

と、ワイト達はバイクをウィリーさせ、迫ってくるヤツらに向かって乗り捨てた……ちょ!?それ借り物……

ヤツらに飲み込まれていくバイク……僕は何も見なかった、見なかったことにしよう、見えなかったことにしょう、おっけー?よしおっけー、これで万事解決。ありがとう神北○毬さん。

そんな一人小○マジックをしつつ、僕たちは間一髪脱出した。



外に出てしばらくすると、明日香さんが目を覚ました。

そして、『エトワール・サイバー』と吹雪さんの写真を渡す十代君。

「ごめんな、これしか手がかりが見つけられなかったんだ。兄さんの話を聞いて少しは役に立てるかなって思ったんだけどさ」

「それじゃあなた、態々その為に?」

コケコッコー

「ヤバ!おい!皆が起きだす前に戻ろうぜ!」

「明日香さん」

「それじゃ」

「またな」



「遊城十代……お節介な奴」

「まったくですよねー」

「……!あ、あなたは戻らなくてもいいの?」

「あ、お構いなく、大丈夫です。今日は授業サボりますので」

「……それは大丈夫と言わないんじゃ?」

「大丈夫なんです。ま、とりあえず1つ言いたいのことがあったので……」

「? 私に?」

「ええ、あなたの今回の迂闊な行動について……ね。なんで一人であんなところにいたんですか?」

「そ、それは……」

「お兄さんの行方の手がかりを探したいなら誰かに協力を仰ぐべきなんじゃなかったんですか?それこそ探検に来た十代君とかに。十代君が帰れって言われて帰る人じゃないのはわかるでしょうに」

「でも、それじゃあ……」

「もしもの時にみんなに迷惑になる、ですか?でもそれで明日香さんが行方不明にでもなったら、枕田さんや浜口さんをはじめ、みんなが悲しみますよ。今回みたいに、団体で行動すれば危険になっても助け合えるでしょうに。なにより、多人数のほうが探し物は早く見つかるでしょう?」

「……」

「以上です。今度からは単独行動は避けるべきですよ。明日香さんに何かあって、誰も悲しまないなんてことはないんですから。それじゃ、おやすみなさい」

黙り込んでしまった明日香さんに踵を返して十代君達に追いつくべく僕は駈け出した。

「……あなたも、負けず劣らずお節介ね」

なんて苦笑が背後から聞こえた気がした。



「和希君!何してたの?」

「いや、ちょっと野暮用をね」

「……そう言えば和希?千年アイテムを7つ集めると何が起きんだ?」

「そう言えば……と言うか何で知ってるんだぁ?」

「そんなの決まってるでしょ?千年アイテムを7つ集めると……」

「「「集めると?」」」

「神龍が現れてなんでも願いを……」

「それはド○ゴンボールっス!」

「ははは、知るわけないでしょ?そんなの」

「「「何ぃ!!!???」」」

いや、ホントは知ってるけどね。

「あんなのはブラフ、つまりひっかけさ。第一君達あんな自信なさげな7に反応するなんて、全く修行が足りない足りない。勝負の世界は騙し合いなんだから」

カラカラと笑う。

「……和希君の方が悪者っぽいっス」

「「……確かに」」



その後、布団に入った後……

「……うーん、オヤシロサマが~」

ワイト達は僕にやった雛見沢なネタが気に入ったのか、それで隼人君をうなしていた。

近々隼人君が転校生の金属バットで素振りをし出さないか心配だ。



今日のカード改め、今日のワイト

夫人「カタカタカタカタ(切り札出しても)」

王「カタカタカタタ(即破壊され))」

ワイト「カタ!カタ!カタカタカタ!(ハイ!ハイ!ハイハイハイ!)」

3ワイト「「「カタカタカタカータ!カタカタカタカータ!(廃寮探検隊!廃寮探検隊!)」」」

和希「あー、お楽しみの所申し訳ないけど重大発表がありまーす。ちゅーもーく。」

3「「「?」」」

和「なんと筆者がこの辺からデスデュエル編までアニメを見ていません」

3「「「!?(ガビーン)」」」

和「幸いYTが頭文字の某無料動画サイトにて万丈目君対三沢空気……もとい大地君のところまでは見つけたのですが……それ以降が外国語の物しか見つけられなくて……」

3「「「……」」」

和「某レンタルビデオで借りるのが妥当なのですが……それだと懐事情がかなり厳しーくなってしまいます。なので、もしよろしければ感想の方にお勧めの動画等を御教え下さい。よろしくお願いします……だって」

3「「「!!(怒)」」」

和「わ-ん、しょうがないでしょ!?当時大学移行が決まるか否かの大事な時期だったんだから~!ってゆーか僕にじゃないし―!」

ワ「カタカタカタ!(問答無用!)」

3「「「カタ!・カタ!・カタ!(悪!・即!・斬!)」」」

和「わ-ん、ぼーりょくはんたーい!力で培った正義なんて長続きしないんだからぁー(フェードアウト)」


後書き

事実です(爆)蔦谷で全巻借りたらいくらになるんでしょう……(滝汗)

幸い、ゲーム等によって大まかな内容の目星はついていますので辞める気はないです。

では、時間とお金はかかるかもしれませんが、頑張りたいと思います。できればご協力お願いします。

改正、前後編統合しました。



[6474] 第六話 月夜の晩に返り討ち
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:44
目の前には漆黒の海

背に寄り掛かっている灯台の光、そして燦然と輝く満月の光のみがそれを照らしている。



ああ……気がつかなかった

こんやはこんなにも……つきがきれい……だ……



「は……ははは……あれは彗星かな?……ははは……」

「か、和希君しっかりするっス!ア、アニキ!和希君がショックの余り、どこぞの眼鏡の殺人貴君やキレ気味ニュータイプ君みたいになってるっス!」

「……まぁ、あれじゃぁ、なぁ?」

「か、掛ける言葉が見つからないんだなぁ……」

只今絶賛壊れ中な僕であった。なんでかって?ではこうなった経緯を振り返ろう……



寮探検から帰って来てやっと寝床についてからから数時間後、僕達はアカデミア倫理委員会の人たちに叩き起こされた。

……因みに僕は本当に叩かれるまで起きなかった……割と痛かった、だって眠かったんだもの

そして自衛隊が乗ってそうな車で連行された。……というかなんなんですかこのGの口内に坑核バクテリア打ち込んで「薬は注射より飲むのに限るぜ……ゴ〇ラさん」みたいな方々は?

そして連行先の査問委員会で、立入禁止の廃寮に入ったということで制裁タッグデュエルをすることが決定した。……寝起きでクロノス教諭のどアップはホントにキツかった。

クロノス教諭は十代君に焦点を絞ったのか、最初は十代君と翔君のタッグを指名してきた。

そこを僕がごねて、なんとか僕と十代君がタッグをする流れにした。

クロノス教諭は散々渋っていたけど、ここで寝起きだった僕が暴走、その場にいた人たちをみんな青ざめさせた……のは後から聞いた。この後すぐに二度寝に入ってしまったので、正直十代君とのタッグを提案した後の記憶がない。

その時の事を十代君に聞いたところ、引き攣った笑いをしただけで答えてくれなかった。……一体何をしたんだ僕?

因みに倫理委員会委員長だけは眉一つ動かさなかったそうな。……だから何者なのさあの人?



その後、十代君と隼人君に起こされた。

彼らが言うには、あの後十代君と翔君が手合わせにデュエルをしたところ、例の『パワー・ボンド』封印の件が発生、自分を不甲斐なく思った翔君が置き手紙を置いてどこかに行ってしまったようだ。……つーか置き手紙にあった『さよならだけが人生だ』って……どんだけ寂しい人生なのさ……

そんなこんなで、翔君を捜す羽目になった。

外に出る際、ふと部屋の壁を見ると見慣れない貼紙があった。

『寝起きの和希に触るべからず』

……だから僕は何をしたのさ?



外に出ると、辺りは夕焼けで赤く染まっていた。

「その日は朝から夕だった〜♪」

「……歌ってないで真面目に捜せよ」

「そうなんだな、早く翔を見つけないと晩御飯終わっちゃうんだなぁ」

……隼人君の中では晩御飯>翔君なのね……

「ま、落ち着こうよ二人共、闇雲に捜しても見つかりっこないって」

今にも走り出しそうな二人を呼び止めた。

「……じゃぁ、どうすんだよ!?」

「うーん……果報は寝て待てって言うし、三度寝にでも入りますかね?ファ〜……」

と欠伸しながら回れ右する僕……まだ眠かったりする。

「和希!お前……!」

「……あらら、寝る暇もなかったみたい、ほら、『果報』が来たよ?」

「え?」

と……僕が示す方向からワイト達が戻ってきた。繋がり眉毛で拳銃乱射して御用だ御用だ!……ってさっきの歌聞いてたのね……

『『『カタカタカタ』』』

「ふむふむ」

僕は翔君がいかだでこの島を出ようとしてたのは知っていたが、どこの海岸から出るかはわからなかった。そこで話を聞いてからワイト達に捜索を頼んだのだ。

「二人とも、こっちみたいだよ」

「な、何なんだなぁ急に?」

「風の報せですヨ、ほら、行くよ」

「お、おう」

「ま、待ってくれぇ!」

僕達は報告にあった場所に急いだ。

でも十代君は憮然とした表情のままだった。

「十代君?」

「……なんだよ?」

「怒った?」

「……別に怒ってねぇよ」

「はは、友達想いでアツくなるのもわかるけど、たまには冷静になんなきゃね?見えるものも見えなくなっちゃうよ?」

「……はぁ……」

あ、溜息つかれた。

「ったく、ホント敵にまわしたくないヤツだぜ」

「僕が十代君達の敵になる訳無いでしょ?……よっぽどのことがなきゃね」

「ぜ、絶対じゃないのかぁ!?」

「ふふふ、いやーそれは君達次第、デスヨ?」

「ぷっ、ははは、気が抜けないな」

あ、機嫌治った?つーか呆れられた?

「いやいや、十代君程じゃないっしょ?さっきみたいに突っ走りそうだし?」

「なんだとー?そういうお前こそちょっと冷たいんじゃねぇか?」

「ま、それなら君と僕、混ざり合ってちょうどよく中和……ってことで」

「ははは、そうだな」

ふむ、とりあえず機嫌は完全に治ったようだ。

「じゃ、急ぎますか」

「おう!」

僕達は走る速度を上げた。

「……俺からすればどっちとも気が抜けないんだなぁ……って二人とも早過ぎるんだなぁ!待ってくれぇ!」



その後、なんとか翔君に追い付いた。

因みに止める際、十代君がいかだに飛び乗って転覆するのは勿論止め……なかった、おもしろそうだったし。……というか良く見たら底見えるぐらいな浅さじゃないっすかここ。

そして、翔君のお兄さん、カイザーこと丸藤亮さんが現れ、帰ると言って聞かない翔君への『餞別に』と、十代君がデュエルを申し込んだ。

そして、原作通り、亮さんの勝利に終わった。

十代君は負けはしたが、やはりあのどこまでも諦めない姿勢は見応えがあった。

亮さんも、正直かっこよかった。リスペクトデュエルかぁ……さすが亮さんだ!そこにシビれる!憧れるぅ!………って感じ?

どうやら翔君も二人のデュエルを見て踏み止まる気になってくれたようだ。

ここで終わっとけばめでたしめでたし……だったのになぁ……

この後、僕は亮さんに頼み込んでデュエルしてもらったのだ。

まぁ、単純に亮さんとデュエルしたかったんだけどね。

最初は亮さんは渋っていたのだが、その場にいた明日香さんの助言もあり、デュエルして貰えた。

……して貰えたのはよかったのだが……

「『エターナル・エヴォリューション・バースト!』」

「ちょ!?」

あぼーん!!

「あじゃぱぁ!?」

……あっさりやられました。そして冒頭に至る。



「ふふふ……酷い、酷過ぎる……寧ろ非道い、非道いよぅ……ははは……」

「ああ、ますます酷い事になってるっス」

……酷くもなるよ、あんな内容じゃ……

まず、僕の先攻、『ワイト夫人』(守備力2200)を守備表示、リバースカードに『聖なるバリア−ミラーフォース−』、とまずまずの出だしであった。

……しかし……

「はは、最初の手札が『サイバー・ドラゴン』が3枚、『パワー・ボンドが』1枚に『大嵐』って……どんだけですか?」

そう、まず『大嵐』で『ミラーフォース』を破壊され、『パワー・ボンド』で攻撃力8000、貫通ダメージの『サイバー・エンド・ドラゴン』を融合召喚され、一気にあぼーん、以上で終わりである。……どないせいっちゅうんですか?

……因みに、残りの手札を見せてもらうと『サイバー・ジラフ』、リリースすることによって『パワー・ボンド』等の効果のダメージをエンドフェイスまで0にするカードである……イヂメですかコレ?

そして、亮さんはどこかすまなそうな表情をしながら、明日香さんは助言したことに少々責任を感じている表情をしながら去っていった。



「……有り得ないでしょあんな手札、マンボウの子供が大人になれる確率くらいありえないでしょ……」

「3億分の1っスか!?」

「……知ってる?30万分の1以下なら数学的に0%って見なしていいんだよ?」

「ドッポちゃん!?」

「……はぁ……」

「……壊れてるな」

「……案外いつもと変わんない気もするんだなぁ」

「か、和希君は悪くなかったっス!悪かったのは和希君の運だけっス!」

「……」

翔君の、ほぼお約束的な慰めになっていない慰めを聞いた時、僕の中でカチリとスイッチが入った気がした。

「……僕達は……どうして……こんなところに……来てしまったんだろう……」

「だから、またそんなネタを……」

「……本当に、どうしてだろうね?」

「へ?」

「ククク、そうそう、確か誰かさんが置き手紙を置いてどっか行っちゃったせいだったような……」

「あ……」

「はは、それなのに『悪いのは運だけ』だなんて、許しがたいよねぇ?」

「あ……ああ……」

「フフフフ、はははははは、あははははははははは、あっはははははははははは……」

「あわわわわわ……」

「……」

「か、和希君?」

「……少し、頭冷やそうか……」

「うわーん!?」

脱兎の如く逃げ出す翔君。

「……あー、スッキリした」

今のでやーっと気が晴れた。

「……まったく、お前からデュエル頼んだんだろ?質が悪いぜ?」

「ははは、いやー誰だってあんなお約束に慰めになってない慰めされたらちょっとはムッとしますヨ」

「やり過ぎだっつーの。翔のヤツ半泣き入ってたぞ?」

「あははは、あれ?そういえば隼人君は?」

と、辺りを見渡すと……

「……コアラ?」

「……隼人じゃねーか」

いやまぁ、わかってたけどさ……ホントそっくり。隼人は近くにあった木に張り付いて震えていた。

「……どうしたの?」

「あ、悪夢がぁ……悪夢がフラッシュバックしてきたんだな!」

……つまりワイト達の悪夢レベルってこと?

「……そんなに怖い?」

「怖いというより禍々しいんだよ……心臓に悪ぃ」

「……なるたけ自重します」

「マジで頼むぜ」

なんて馬鹿言ってると……

ぐぅ〜

「……はは……くぅくぅお腹が空きました……っと、んじゃ戻りますかね?」

「っておい!翔はどうすんだ?」

「ま、島に残る気になったんだし、そのうち帰ってくるでしょ?」

「……それもそうか。んじゃ、夕食でもこっそりとっといてやるか」

「そだね。んじゃ、今日は歩いて〜帰ろう♪」

「古!……ま、その曲は嫌いじゃないけどな。じゃ隼人、先に行ってるぜ?」

「早くしないと夕食終わっちゃうよー?」

「あ!待つんだな二人共……うわぁ!?」

背後で響いたドスンという音に笑いながら、僕達は寮に戻った。



「……どうだった?」

「ふ、いいアニキ達を持ったな、翔は。」

「アニキ『達』?遊城十代はわかるけど……でも朝倉は……」

「奴の実力は前回のテストで既に知っている。今回は単に俺の手札が良すぎたまでだ。それより……」

「それより?」

「十代とのデュエル中あいつと翔のやりとりを見てな、今まで翔はあの性格上、虐められることはあってもあんな風に楽しそうにからかわれることはなかったからな……」

「……成る程、あなたじゃ出来ないわねそんなこと」

「む、俺も兄として少しは見習った方がいいだろうか?」

「それは……止めといたほうがいいと思うわ」



「……そーいやワイト達……さっきから何してんだ?」

「いや、まぁ……ははは……」

何をしてるかと言うと……

……ワイトとワイトキングはさっきのデュエルで機嫌が最悪なワイト夫人を宥めるのに四苦八苦していた。

ま、あの負けかたじゃあね……あ、2の身体のパーツが吹っ飛んできた……

「ま、痴情の縺れってやつ?」

……多分間違ってるけど。

「……よくわかんねぇけど……女って怖ぇな」

「……一部の人はねー」

僕達は二人に向かってそっと手を合わせた。南無阿弥陀物。

このあと寝床に入った隼人君が巻き添えになったのは言うまでもないだろう。



今日のワイト

和「……ごめんなさい」

3「「「……」」」

和「更新が遅れたのは謝りますから……だから硬質ゴムのツボ押しマットの上に正座させないで下さい、膝に重しを乗っけないで下さい、あんよが痛いです」

3「「「カタカタ?」」」

和「何で遅れたかって?えーと、『また書いてる途中、僕の不在中に父親がヤフオクのためにパソコン使いだして……保存しないままシャットダウンされました。それでマンネリ化回復に少々時間がかかった』そうです」

3「「「……」」」

和「あ、あのー、なんでワイトと夫人はキングにオーラを送ってるんでしょうか?キングは何故『オラにみんなのマイナスエネルギーをわけてくれぇ!』みたいな感じなの?」

ワ+夫「「カタカタカタカタ!(必殺必誅!)」」

王「カタカタカタカターカターカータ!(マイナスエネルギーパワーボール!)」

和「うわわわ、膝蹴りで僕のプラスエネルギーで中和しながら跳ね返……って膝動かないって!……」

あぼーん!

和「つーか僕じゃないのに〜」




後書き

本当に申し訳ありません、遅くなりました。

次はタッグデュエルを……書きたいなぁそろそろ



[6474] 第七話 十代&和希 タッグデュエル
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:44
「ではこのデュエル、僭越ながら私、大徳寺がつとめさせてもらうニャ、前田熊蔵さん、もしこのデュエルに負けたら、隼人君がこの学校に残ることを許して頂けますかニャ?」

「よか、男に二言は無いでごわす」

「うん、隼人君、もしこのデュエルに負けたら、潔く退学して御実家の造り居酒屋を継ぐこと、いいかニャ?」

「俺は……構わないんだなぁ」

「うーん、宜しい、では、悔いの無いように思う存分戦うニャ!」

「いざデュエル!……と、その前に……」

「「「「その前に?」」」」

「……気が散るので、あの壁際に寝転んでいる大猫熊を黙らせてもよかか?」

「「「「………」」」」

「は〜、畳だよ〜♪気持ちいいよ〜♪」

いや〜、このイグサの匂いがなんともまた……最近流行っている合成繊維の畳など畳に非ず!

嗚呼、畳は日本人の偉大な発明の1つだよぅ、この香、この肌触り、この風情……

嗚呼、なんという至福、このまま時が止まってしまえばいいのに……

「ごぉっつい!タイガーバズーカでごわす!」

「みぞ〇ちくん!?」

……んで、結局止まるのは、僕の息の根みたいだ……

「チェストォ!チェストォ!チェストォ!チェストォ!」

「あうあうあうあう……」

……空中での4連蹴り、そして……

「つうぅ〜てんさいぃ!」

「うべべベベベベベ……」

回転しつつ飛び上がり、その勢いで何度もアッパーを放つ、神竜けn……もとい通天砕までしっかり決められた。……あなた何者ですか……?

「今は『しりあす』な場面でごわす!空気を読むでごわす!」

……まずは口で言って下さいよ、なにもいきなりファ〇ターズヒストリーの即死級コン叩き込むことないじゃないですか……

「す、凄ぇ、あれが薩摩次元流……」

「いやいや、刀使ってないっスよ、アニキ」

「……だから言ったんだなぁ。父ちゃんは怖いって……」

「ほほほ、猫にマタタビ、和希君にファラオと畳なんだニャ」

……誰か最初に放った虎の形の気の塊とかにツッコみましょうよ……あぁ意識が……ワイト達がおいでおいでって……あぁもぅダメぇ……ガクッ……

チーン……

「フム、この程度で気絶とは、情けなし!」

「だ、誰でも落ちると思うんですけど……」

「つーか和希、生きてるか?」



結局、僕はそのデュエル、隼人君とそのお父さんの熊蔵さんによる、隼人君の退学を賭けたデュエルが終わり、熊蔵さんが帰るまで気絶していた。

因みにこのデュエルに際して、隼人君のオーストラリアデッキ構築には僕も参加した。

そして、翔君が『デス・カンガルー』を、十代君がそれと『ビッグ・コアラ』の融合モンスターで攻撃力4200の『マスター・オブ・OZ』をあげたので、僕も余っていた『デス・カンガルー』を1枚あげた。流石に融合素材が1枚しかないのはキツイだろうしね。

出来れば、融合素材1体の代わり出、尚且つ手札から捨てることによりデッキから融合もサーチ出来る、通称『最強のE・HERO』こと『沼地の魔神王』とかの融合補助系もあげたかったけど、今はまだ、こっちの世界に来た時に持っていたワイトデッキとサイドデッキ以外は、こっちの世界に来てから手に入れたカードは少ししかない。……と言うか、あれは今は僕も欲しい。

そして、十代君達が言うには、僕がKOされた後、デュエルは原作通りの流れで行われたようだ。

……と言うか、なんなんだろうねこのバーンデッキ親子。隼人君の『デス・コアラ』といい、熊蔵さんの『ちゃぶ台返し』と『お銚子一本』のコンボといい。

……そもそもなんで隼人君は『デス・コアラ』3枚も入れて勝てないのさ?

『デス・コアラ』、相手に相手の手札×400のダメージを与えるリバース効果モンスター。……ライフ4000ならそのダメージは甚大な筈なのに。……いやまぁ、今回みたいに『デス・コアラ』攻撃表示で召喚したりなんかしたらそりゃ負けるけどさ。

……と言うか、こんな使い方しててどうやってアカデミアの入学試験通ったんだろう?……色々謎だ。

ちなみにデッキ構築の際、『デス・コアラ』中心のフルバーンデッキも提案してみたが『卑怯じゃね?』と却下された。

……まぁ、僕も個人的にフルバーンは2番目ぐらいに嫌いだから気持ちはわかる。(フルバーン使いの方ゴメンナサイ)

因みに1番嫌いなのは、どっかの誰かさんのデッキみたいに、特定のデッキ相手じゃないと効果がないデッキである。『ウォーター・ドラゴン』とか『ウォーター・ドラゴン』とか『ウォーター・ドラゴン』とか?

デュエル後、熊蔵さんは船で帰っていったそうだ。僕にも『気絶させた詫びに』と酒を1瓶置いてってくれた。隼人君曰わく、結構上物らしい。現金にもサバサバとしたいい人だと思ってしまった。

勿論、まだ未成年なので大徳寺先生が卒業まで預かるという形になったが……

折角なので、大徳寺先生に頼み込んで、先生が他に熊蔵さんから貰っていたのを一口だけ飲ませてもらった(いいのか?)……造った人に似てさっぱりとした味でおいしかった。

……一瞬、隼人君に継いでもらいたいなと思ってしまったのは秘密である。



数日後……

いよいよ制裁タッグデュエルの日となり、僕らは最終調整をしていた。

「いよいよ今日だなぁ」

「おう、楽しみだな和希!初めてのタッグデュエル、ワクワクするぜ!」

「……まぁ、否定はしないけどさ」

「これに負けたら退学だってのに、お前って本当にデュエルを楽しむことしか考えてないんだなぁ?」

「当たり前だろ、デュエルは楽しいんだからよ」

「それがお前の強さの秘密なのかもしれないな」

「確かにある種強さではあるけどね」

「む?なんだよ『ある種』って?」

「そういうのは確かに勇気とかに繋がるけど、行き過ぎると油断とかに繋がるって事さね」

「はは、でも今回はそれも大丈夫だろ?」

「へ?」

「今日お前がいるんだからよ?」

「……はい?」

「ははは、確かにオレは深く考えんの苦手だからさ、考え無しに突っ込む事もあるさ」

……人それを猪と呼ぶ。と言うか自覚あったんだ……

「でもさ、今日はお前がいてくれるからさ。安心して背中を任せられるぜ」

「そ、そう?」

う、う〜ん、頼られるのは嬉しいだけどさ。……なんと言うか、僕の存在ってばもしかして逆効果なのか?そっち方面では。

「俺も、観客席から応援してるぞ」

「おぉ!?隼人君とうとうヒッキー脱却!?」

「お、俺はヒッキーじゃないんだなぁ!」

……ロクでもない結論に行き着きそうだったので隼人君が切り出したのを皮切りに、無理矢理その考えを振り切った。

「えー?でもご飯の時以外ほとんど外に出てないしー?」

「はは、ヒッキーとはいかなくても予備軍だったりしてな」

「……応援、行きたくなくなったんだなぁ……」

「「あははは」」

……いや〜それにしてもやっぱり緊張感ないなぁ。……もしかして僕のせいでもあるのかなこれ?



タッグデュエルにおいて重要なことの一つは二人のデッキのコンセプトを同じないし似たコンセプトにしてお互いにサポートし合うことである。よって僕も十代君に合わせて融合系を入れるのが1番いい……のだが……

しかし、ワイトを始め、アンデット族には使える融合モンスターは少ない……『ワイト』と『格闘戦士アルティメーター』の融合の『アンデット・ウォーリア』とかネタ以外のなんでもない。……因みに星3攻撃力1200効果無しである。

よって、今回はアンデットデッキをちょっと崩し、サポートカードや罠カードを多目に入れてみた。

なので、速攻性のある十代君のデッキをメインに、今回僕はサポートに回ることになっている。

……コンビネーションと言うには若干不安を感じるが、まぁ、この辺が妥当だろう。



……それはさておき……

「うぅ……神様……」

なんで君は僕達よりも緊張してるかな?

翔君はさっきから深呼吸……らしきものを繰り返していた。……全く……

「……僕のこの手が光って唸るぅ〜、翔君起こせと輝き叫ぶぅ〜」

「……」

翔君はよっぽど追い詰められているのか僕の殺気に全く気付いてない。

「必っっっ殺!」

「へ?」

翔君の顔に手をヒタリと当てると、翔君は漸く気付いたようだ。でももう遅い!

「カズキフィンガァァァ!」

「うぎゃー!?」

……いや、単なるアイアンクローだけどね!?

「全くなんで君は僕等よりも緊張してるのさ?」

「だ、だって負けたら退学なんだよ!?そうしたら二人共……」

「ほほぅ?それはつまり『二人共、特に和希君は頼りないから心配でしょうがない』って捉えてもいいのかな?かな?」

「そんな事言ってない……いぎっ!?、ず、頭蓋メキョって……あが……が……」

「じゅ、十代!和希の背中に……!」

「あ……あれは鬼……じゃなくてワイトの顔が!?」

……いや、僕ってばどんな打撃用筋肉なのさ?

「デェェッド、エェェンド!」

「……!」

僕が少々本気で握ると、僕の腕を弱々しく握っていた翔君の腕がダラリと下がった。

「ししょぉ〜〜!!」(し、翔ぉ〜〜!!)

……そして十代君はノリノリであった。



その後、気絶した翔君を隼人君に任せ、僕らは会場に向かった。

会場に着くと、若干ふらついている翔君を連れた隼人君が来たのが見えたので、十代君と一緒に手を振っておいた。

見渡すと、亮さん、離れた場所には明日香さん、ついでに三沢君もいたので手を振っておいた。亮さん以外は振り返してくれた。



「……あれだけ、ペナルティーを楽しんでいるタッグも前代未聞だろうな」

「……と言うか、知らない人が見たらこれがペナルティーだって絶対思わないでしょうね」



「ではこれより、タッグデュエルを始めるーノデスネ!」

「それで、対戦相手は?教員かオベリスクブルーの生徒かね?まさか、また君が相手をするのかね?」

校長先生が楽しそうに尋ねる。……いいな、あなたは気楽そうで。

「いいえ、これは彼らが立入禁止区域に入った校則違反の罰則を審議するためーノデュエルですーノ。相手はそれ相応ゥーのデュエリストでなければ意味ありませんーノ」

……あなたは『それ相応』じゃありませんーノ?

「うん、それで?」

……校長先生の顔が期待で輝いている。いいなぁ、あんな子供の心を忘れない歳のとり方したいよ。……というか何だろこの既視感?

「不心得者を叩きのめすべく!ん〜パルメザンチーズ、伝説ゥーのデュエリストを呼んでありますゥノ」

と僕らを指差すクロノス教諭。……途中で入った固有名詞の意味を小1時間問い詰めたい。

「「とう!!」」

「なんだ?」

わー変態さんが飛んで来たー。……やっぱりこの二人なのね……

二人のハゲちゃびん(死語)がバク宙で回る回る。シュールである。

「「とう!!」」

そして最後に飛び上がって着地をキメる……ところで。

ズルッ

「「ぬぁ!?」」

ゴン!!

「「……!!?」」

……あーあ、痛そう。

まぁ、今のを順序良く説明するならば。

①着地予定地に、僕が、用意した要らないカードをばらまく(意図的)

②着地際踏む。

③あんだけ回転してたので勢いでこける。

④回転の勢いのまま頭と頭がこんにちわ。

⑤悶える。

……うむ、流れるような寸劇。ワイト達大爆笑。

『………………』

あーあ、会場が静まり返っちゃったよ。

「あー、スイマセン、カードばらまいちゃって」

あははと笑いながらカードを回収する僕。

……あ、なんか会場中から心の声が聞こえた気がした。曰く……

『わ、わざとだぁー(汗)』

……うん、よくわかっていらっしゃる。



……数分後、復活した。

「……我等流浪の番人」

「迷宮兄弟」

……カッコついてない。うん、禿頭にたんこぶがシュールだ。

「……新喜劇?」

「「違ぁーう!!」」

……うん、十代君ナイス。

「……先生、どなたです?このチャイニーズキン〇マンは?」

「「誰がキ〇肉マンか!!」」

……いや勿論知ってるけどさ。額に漢字でハゲだし……

「か、彼等はあのデュエルキング武藤遊戯と対戦したこともあるという、伝説のデュエリスト……の筈なのーネ」

微妙にしどろもどろだー。

……しかし流石に二人とも有名なだけあって、静まり返っていた周りがざわめきだした。……某漫画風に『ざわざわ……ざわざわ……』って感じだろうか。……ワイト達がノって例の漫画っぽい顔になってるし。

「お主らに恨みは無いが……」

(長いので省略)

「「いざ、勝負!!」

「これはまた随分思い切ったことを……本物だ本物だぁ」

……どこのミーハーファンですか校長先生。

「しかし校長……」

クロノス教諭が校長先生に近付いて『こうでもしないと示しがつかない』と何とかか言っていた。

「面白ぇ!あのデュエルキングと闘った伝説のデュエリストと闘えるなんて!」

うわぁ、期待に輝いてるなぁ十代君。……あぁ、さっきの校長先生の顔見た時の既視感はこれか。あ、クロノス教諭が渋い顔してる。

「まぁ、いいでしょう。では両者位置について!」

ここで、クロノス教諭の軽いルール説明。

助言不可。パートナーのフィールドを自分のフィールドとして使用可能。ライフは8000。

「では!」

「「「「デュエル!!」」」」

そして、十代君との初タッグが始まった……うん、ぶっちゃけ僕もかなり楽しみだったりする。



「私のターン、ドロー!『地雷蜘蛛』(攻撃力2200)を攻撃表示で召喚!ターンエンド!」

「僕のターン、ドロー!『ワイト夫人』(守備力2200)を守備表示で召喚!ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!『カイザー・シーホース』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!ターンエンド!」

「オレのターン、ドロー!『E・HERO バーストレディ』(守備力800)を守備表示で召喚!ターンエンド!」


……ここまでほぼ原作通り。ということは……

「手札から魔法カード発動!『生け贄人形』!このカードは自分の場のモンスターを生贄に捧げるることにより発動する。『地雷蜘蛛』を生贄に、手札より星7のモンスターを特殊召喚する!出でよ!『風魔神-ヒューガ』(攻撃力2400)!」

やっぱり来た!フィールドに風が吹き荒れ、『風』という文字を額に付けた魔神が姿を表した。

雷、風、水の3魔神、古くからデュエルモンスターズをやる人なら誰でも知っているだろう。

最初期のカードとしては『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』に次ぐ強さを誇っていたカード達であった。当時、これらのカード、そしてその合体である『ゲート・ガーディアン』は羨望の的であった。

そして、最近になって何故か効果が変更になり、属性縛りのデッキならば今でも使えるカードになっている。

登場初期は、『召喚してから1回だけ、相手ターン中のこのカード及びコントローラーへのダメージを0にする』……つまりは相手の攻撃を1回だけ無効にするというものだった。

……それが最近になり何故か『このカードを攻撃するモンスターの攻撃力を1回だけ0にする』という恐るべき能力に変更になった。

……ぶっちゃけ、時間をかけて『ゲート・ガーディアン』に合体するよりそのまま使った方が強かったりする。合体したらこの効果使えないしね。

……と言うかそのことわかってんのかね?この人達。まぁ、アニメでは確か『ダメージを1回0にする』という前者に近い効果ではあったが……

「すまない兄者」

「何、お前の為なら犠牲にもなろう」

「いや、礼をせねば私の気が済まん、魔法カード『闇の指名者』、このカードは指名したモンスターが相手のデッキにある場合、そのカードを相手の手札に加える事が出来る」

……いや、それは知ってるんだけどさ。闇バクラもマリク戦で使ってたしさ……

「私が指名するのは、『雷魔神-サンガ』!」

「ふふふ、有り難い、勿論我がデッキに『サンガ』はある」

……このカードでタッグパートナーを相手にするのっていいんだろうかね?こればかりはホント謎過ぎる……

「お前達に!」

「タッグデュエルの真髄を!」

「「教えて差し上げよう!!」」

……一々ハモらないで頂きたい、正直キショいです。

「僕のターン!ドロー!『ワイト夫人』を生贄に捧げ『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を召喚!『真紅眼の不死竜』は星7ですが、生贄のモンスターがアンデット族の場合、生贄が1体で召喚できます!そして、『地雷蜘蛛』が生贄になり、フィールド上ににモンスターのいない迷宮兄弟(兄)にダイレクトアタック!『アンデット・メガ・フレア』!」

「う、しまった!」

……なーにが『しまった』ですか、どうせ止めるくせに……

「ふん、そうはいかぬ!」

「『風魔神-ヒューガ』の特殊能力!『リフレクション・ストーム・バリケード』!」

案の定、『真紅眼の不死竜』が放った火球は、『ヒューガ』の風によって掻き消されてしまった。

「『風魔神-ヒューガ』の特殊能力は、相手モンスターからのダメージを1回だけ0にする!」

……ま、流石に2400の直接ダメージは避けますか。

「惜しかったな和希」

「……ま、どうせ1回は0にされるんだしね。僕はリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

「私のターン、ドロー!魔法カード『死者蘇生』!相手または自分の墓地のモンスターを復活させる!墓地から呼び出すのは『地雷蜘蛛』!更に魔法カード発動!『生け贄人形』!このカードの効果で『地雷蜘蛛』を生贄として『水魔神-スーガ』(攻撃力2500)を特殊召喚!」

……また事故率高そうなデッキだこと、『生け贄人形』あんなに積んじゃって。

「これで終わりではない、今度はお前の力、借り受けるぞ」

「いいとも、兄者」

「『カイザー・シーホース』を生け贄に捧げる!」

「『カイザー・シーホース』は光属性モンスターを召喚する時、1体で2体分の生贄とする事が出来る!」

「『雷魔神-サンガ』(攻撃力2600)召喚!」

……味方のモンスターを生け贄に生け贄召喚をするのもありなんだろうか?……イマイチこの変則タッグマッチのルールが把握できない。

……というか弟の『カイザー・シーホース』を生贄にしたってことは弟のデッキにも『サンガ』ありますよね?

そして他の属性の生贄2体分のモンスターや他の魔神も多分積んでいる筈……

……考えれば考える程事故り易そうなデッキである。

「ふふふ、これで揃った」

「今見せてやろう、究極のモンスターを!」

……究極なのは召喚しづらさだけかと。

「『水魔神-スーガ』『雷魔神-サンガ』『風魔神-ヒューガ』がフィールドに揃った時、3体を生贄に捧げ、『ゲート・ガーディアン』(攻撃力3750)を特殊召喚する!」

3体の魔神が光を放ち、3体が合体した巨大な魔神が現れた。

「『ゲート……ガーディアン』」

「こ、これは……」

僕と十代君は呆然としていた。

こ、これは……

想像以上にカッコ悪い!

……な、なんだろうねこの裏切られた感!?昔このカードに憧れていた自分の立場が……

「行け!『ゲート・ガーディアン』(攻撃力3750)!『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を攻撃!『魔神衝撃波』!」

なんてショックを受けている間に雷、風、水の属性を持った奔流が『真紅眼の不死竜』を粉々に粉砕した。 自残ライフ 6650

……くぅ、格好悪いとはいえ流石、『青眼の白龍』を凌ぐ攻撃力3750、迫力が凄い。

「見たか!」

「これぞ我等のタッグデュエル!」

全く、亮さんといいこの人達といい手札揃い過ぎでしょうに……悪態の1つも付きたい気分だ。

「すっげぇな!初めて見るモンスターだ!これがデュエルキングと闘ったモンスターなのか!こんな相手と闘えるんだぜ?ワクワクするよな?」

……あとこのデュエルおバカもいい加減1発殴りたくなってきた。

「更にリバースカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

……原作の流れから考えて、多分あれはカウンター罠カード『アヌビスの裁き』だ。

カウンター罠、基本的にカードの発動に対して発動する罠カードだ。

『アヌビスの裁き』、手札を1枚捨て、こちらの『フィールド上の魔法、罠カードを破壊する魔法カード』の発動と効果を無効にし、こちらの表側表示モンスターを破壊、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与えるカード。

……まぁ、十代君のタッグパートナーが僕、という点を踏まえると過信か?ならば……

「この瞬間リバース罠発動!『砂塵の大竜巻』!相手フィールド上の魔法・罠を1枚破壊!このカードにより、そのリバースカードを破壊します!」

「何ぃ!?」

エンドサイクならぬ、エンド砂塵!

『アヌビスの裁き』は魔法カードにのみカウンター出来るカード、罠の砂塵の大竜巻ならばその効果は発動しない。……まぁ、どっちにしろ、罠カードはセットされたターンは発動不可能だが。

破壊されたカードは、案の定『アヌビスの裁き』!

「ナイスだ和希!よし、今度はオレの番だ!ドロー!……よし!オレは手札から『E・HERO クレイマン』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!更に魔法カード『融合』を発動!『バーストレディ』と『クレイマン』を融合!出でよ!『E・HERO ランパートガンナー』(守備力2500)!」

右腕にミサイル、左腕に楯を装備したヒーローが現れた。

「『ランパートガンナー』の特殊効果発動!このモンスターは守備表示のまま相手プレイヤーにダイレクトアタックできる!」

「「なにぃ!?」」

「いけ!『ランパートガンナー』(攻撃力2000)!『ランパート・ショット』!」

「うわぁ!?」

「うぉわ!?」

発射された2発のミサイルが相手に直撃した。

「この効果では、攻撃力の半分のダメージだけどな……」 敵残ライフ 7000

おー、当たってから言う辺りがカッコイイ。

因みに、OCGの『ランパートガンナー』は、『このカードが直接攻撃可能な状況の場合、表側守備表示で攻撃宣言出来る』という効果だ。やはり、原作版は強い。

「くぅ……」

「なかなかやるな……」

「よし、あのコンビネーションを崩すぜ!オレはカードを1枚伏せてターンエンドだ」

「ふん、やれるものならやってみろ!私のターン、ドロー!私は装備魔法『メテオ・ストライク』を発動!『ゲート・ガーディアン』に装備する!このカードを装備したモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を越えていればその数値だけ相手にダメージを与える!」

……ここで、原作では翔君がこれを『サイクロン』で破壊をしようとして『アヌビスの裁き』をカウンターでくらってしまったのだ。

「そして『ディフェンス・ウォール』(守備力2100)を守備表示で召喚!この『ディフェンス・ウォール』が守備表示で存在する限り、相手モンスターは全て、このモンスターを攻撃対象とする!私のターンは終わりだ」

「……僕のターン、ドロー!……僕は『ワイト』(攻撃力300)を攻撃表示で召喚してターンエンド!」

「攻撃表示だと?……成る程、どうせ『メテオ・ストライク』の効果でダメージを受けるのだから少しでも数値の高い攻撃表示という訳か」

「だが、このタイミングでそのような弱小モンスターしか手札にないとはな。私のターン、ドロー!行け!『ゲート・ガーディアン』(攻撃力3750)!『ワイト』(攻撃力300)に攻撃!『魔神衝撃波』!」

……確かにコレが通れば大ダメージだろう。

……ま、通ればの話だけどね。

「罠カード発動!『ジャスティブレイク』!このカードは自分フィールド上に表側表示の通常モンスターが攻撃を受けた時に発動!フィールド上に存在する表側表示の通常モンスター以外のモンスターを全て破壊!」

「な、何ぃ!?」

「しかし、それでは貴様らの『ランパードガンナー』も……」

「へへへ、そうはいかねんだな〜、チェーンして速攻魔法発動!『融合解除』!このカードで『ランパードガンナー』を融合デッキに戻し、融合素材にした、通常モンスターの『バーストレディ』(攻撃力1200)と『クレイマン』(攻撃力800)に戻すぜ!」

「「な、何だと!?」」

速攻魔法、相手ターンで発動する場合はあらかじめ魔法&罠カードゾーンにセットしておかなければならず、セットしたターンに発動する事が出来ないが、基本的にどんなタイミングでも発動可能な魔法カードだ。

『ワイト』が天に手をかざすと、その手に雷が落ち、その雷がフィールド全体を襲い、『ゲート・ガーディアン』と『ディフェンス・ウォール』を粉砕した。

しかし、『ランパードガンナー』は当たる寸前に『バーストレディ』と『クレイマン』に分離し、間一髪それを避けた。

「ぬぅ、我等の『ゲート・ガーディアン』が……」

「破壊されるとは!?」

……あ、『ワイト』がびっくりしてる。なに?『感電して骸骨が透けて見える!?』……あ、そう。



「す、凄い、凄い過ぎるっス!流石アニキと和希君っス!」

「やった!やったんだなぁ!」(

「……なんというコンビネーションだ。互いのリバースカードを完全に把握できていないと不可能な連携だ」

「……本当に、あの二人タッグ初めてで、しかも即席のタッグだと言うの?」

「……成る程、そういうことか」

「?どういう事ですか?カイザー?」

「……見ていればわかる」



気付けば、周りからは歓声があがっていた。まぁ、あれだけ華麗にコンボがきまったからね。正直僕もテンション上がりまくりデスヨ。

「やったぜ!やっぱりお前最高だな!和希!」

「あはは、まさかこんなに綺麗に決まるとは思わなかったけどね」

……正直自分でもビックリです。

「よし、このまま一気に行くぜ!オレのターン!ドロー!魔法カード『強欲な壷』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!そして『E・HERO スパークマン』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!そして全モンスターで総攻撃だ!」

『スパークマン』(攻撃力1600)の『スパークフラッシュ』、『クレイマン』(攻撃力800)の『クレイ・ナックル』、『バーストレディ』(攻撃力1200)の『バースト・ファイヤー』が迷宮兄弟に命中した。

「「ぐぁぁぁ!!?」」 敵残ライフ 3400

「オレは更にリバースカードを2枚セットし、ターンエンドだ!」

「……少し、油断したようだ」

「まさか彼らに『ゲート・ガーディアン』を破壊された上、ここまで追い込まれるとは……」

「「だが」」

「我らの無敵の連携はここからだ!」

「私のターン、ドロー!私は手札より、魔法カード『強欲な壷』発動!デッキからカードを2枚ドロー!そして更に魔法カード発動!『ダーク・エレメント』!」

……っ、原作では兄がこのカードを使っていたが、やはり弟の方もこのカードを入れていたか……!

「このカードの効果は、『ゲート・ガーディアン』が墓地にある時発動する!ライフポイントを半分払い、デッキから『闇の守護神-ダーク・ガーディアン』(攻撃力3800)を特殊召喚する!」 敵残ライフ 1700

フィールドに現れたのは、『ゲート・ガーディアン』に勝るとも劣らない巨体、足は多脚、腕に戦斧、顔の上半分を隠す仮面、その仮面から爛々と光る赤目、そして、その身を全て包む闇、と、とんでもない形相のモンスターだった。

……出たなアニメオリジナル。攻撃力3800、戦闘では破壊されないモンスター。

「行け!『闇の守護神-ダーク・ガーディアン』(攻撃力3800)!『ワイト』(攻撃力300)を攻撃!『ダーク・ショット・エア』!」

ヤバい!『ワイト』がまだ攻撃表示のままだ。このままでは大ダメージを受ける……!

……ここで大ダメージを受けてしまうのは拙い。あの人達の手札には確か互いのフィールド上の攻撃力が1番高いモンスターを強制戦闘させる原作オリジナルの罠カード、『一騎打ち』があった筈。

『ダーク・ガーディアン』の振るった戦斧から放たれた衝撃波が『ワイト』を襲う!

ワイトは目を飛び出さんばかりに驚いている……『私……目ありませんけどね〜!』ってこんな状況で某音楽家風なスカルジョーク!?

「リバースカードオープン!罠カード『ヒーローバリア』!このカードはフィールド上に『E・HERO』と名のつくモンスターがいる時発動!相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!」

十代君が発動した『ヒーローバリア』の障壁が『ダーク・ガーディアン』の放った衝撃波を食い止めた。

障壁で弾かれて分散した衝撃波が会場中に吹き荒れた。

……あ、危なかった、額を拳で拭って『フ〜、ヤレヤレ』……って余裕だねワイト……

「ご、ごめん。ありがとう十代君」

「何、そう簡単にお前の大切なカードを傷付けさせたりはしないさ」

「あの攻撃をかわすとは……」

「なかなかやる、しかし『ダーク・ガーディアン』は戦闘で破壊されない無敵の守護神!」

「この最強の『ダーク・ガーディアン』がいる限り、今度こそお前達に勝機はない!」

「更に魔法カード発動!『死者蘇生』!これにより墓地に眠る『雷魔神-サンガ』(攻撃力2600)を兄者の場に特殊召喚する!」

……っ!確かにさっき死者蘇生を使ったのは兄の方。これで迷宮兄弟兄へのダイレクトアタックも阻まれてしまったか。

……ライフではこちらが大分有利だが、フィールドの状況からして一歩間違えればすぐにひっくり返されてしまう。

ここは慎重にじっくり回すべきか?

「和希!」

「!?」

「どんなに強くても倒せないモンスターは存在しないぜ!あのモンスターも叩き潰そうぜ!」

「……」

「ほぅ?勇ましい事だ」

「その意気は良しとしておこう。私のターンは終了だ」

……成る程、そういうことか。

よし、イケる!

「僕のターン!ドロー!手札から魔法カード『深淵の指名者』を発動!ライフを1000払い、種族と属性を1つずつ宣言し、相手はその両方を満たすモンスターを手札またはデッキから1枚墓地に送ります!」 自残ライフ 5650

そう、このカードは相手の『闇の指名者』に対抗して入れておいたカード。

「僕が宣言するのは……十代君!君のデッキの戦士族、地属性のカード!」

勿論、元の世界ならばタッグパートナーを対象にこのカードは使えない、しかし、こちらの世界では迷宮兄弟もパートナーを対象に『闇の指名者』を使っていたのだから、このカードも使える筈!

「おう!オレは『E・HERO エッジマン』をデッキから墓地に送るぜ!」

「味方のモンスターを墓地に……だと?」

「血迷ったか?」

「更に魔法カード『二重魔法』発動!手札から魔法カードを1枚捨てる事により、相手の墓地の魔法カードを使用できます!僕は手札から魔法カード『手札抹殺』を墓地に送り、あなた方の墓地の『死者蘇生』を使用!『エッジマン』(攻撃力2600)を攻撃表示で特殊召喚!」

「「何ぃ!?」

このカードも、もしかしたら『闇の指名者』のように味方を対象に出来るのではないかと入れておいたカードだ。……まぁ、結局普通に使ってしまったが……

「……だが、今更そのようなモンスターを召喚してどうするつもりだ?」

「そのようなモンスターではせいぜい『サンガ』と相打ちがいいところ!」

「しかも、『サンガ』は特殊能力によってダメージを1回0に出来る!」

「いずれは『ダーク・ガーディアン』の餌食ではないか!」

「勿論、何の意味も無しに召喚する訳がないでしょう?」

「「何!?」」

「十代君!」

「おう!この時を待っていたぜ!リバースカードオープン!罠カード『エッジ・ハンマー』!自分フィールド上のエッジマンを生贄に捧げることにより、相手モンスターを1体破壊する!」

「そして、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

「オレ達が選ぶのは……」

「勿論!」

「「『ダーク・ガーディアン』!!」」

「「何だと!?」」

「戦闘では破壊されなくても、効果ならば破壊が出来る!」

「行け!『エッジマン』!」

長柄の戦鎚が現れ、それを振りかぶった『エッジマン』が光を放ちながら上空高く飛び上がる。

「「『ゴルディオンハンマー』!!」」

「「ぐわぁぁぁ!!」 敵残ライフ 0

『エッジマン』が振り下ろした戦鎚が『ダーク・ガーディアン』に命中した瞬間、2体を中心に大規模な爆発が起こり、跡形もなく消え去った。



「やったな!和希!お前のおかげだぜ!」

「いやいや、どっちが欠けても、この勝利はなかったよ!」

「ああ、そうだな!……勝ったぜ?これで文句ないだろ?」

「いいデュエルを見せて貰った。勿論、君達の退学は取り消そう」

……校長先生、デュエル見てる時と全然雰囲気が違う……

「よっしゃ!……と忘れてた」

「あー、あれね、僕もやっていい?」

「おう!勿論。一緒にやろうぜ」

「やた!」

これやりたかったんだよね。

「ガッチャ!」

「楽しいデュエルでしたよ!」

十代君は右手、僕は左手を迷宮兄弟に指し、キメた。うーん、カ・イ・カ・ンだねこれ。

「またやろうぜ!」

……あ、十代君!それは自爆フラグ!

「ふむ、そんなに元気が余っているなら宿だ……」

「ほ、ほら十代君!みんなこっちに来てるよ!行こう!」

「お、おい引っ張るなよ!」

冗談じゃない、レポート30枚なんて誰がやりたいものですか。僕は慌てて十代君を引っ張った。

「……ふむ、感づかれたかね」

「ほほほ、まぁ、今日の所はさっきのデュエルに免じて、許して欲しいですニャ」

「ふむ、そうしてあげましょうか」

後ろから聞こえてくる話を聞いて一安心、大徳寺先生、ありがとうございます。

ふと見ると、クロノス教諭が何か言いたそうな顔をしていたが、ファラオが怖くて何も言えないでいた。うん、ファラオもありがとう、よし、今度エビフライを1個あげよう。

「凄いんだなぁ二人とも!」

「うわぁ〜ん、アニキ〜!、和希君〜!」

「……翔君てばまた泣いちゃって……」

「だって、だって、まだアニキ達と一緒にいられると思うと、嬉しくて嬉しくて……」

「……ったく、いつまでたっても成長しない奴」

「おめでとう、二人共」

……と、三沢君と明日香さんも祝いに来てくれた。

「安心したわ、これでもし退学にでもなったら、私のせいで退学になったようなものだもの」

まぁ、どっちにしろ十代君達は探検してたとは思うんだけどね。……まぁ、言わない方が吉かな。

「ん?なんで明日香のせいなんだ?」

……そして明日香さんのせいだなんて微塵も思ってないのが一人。
「……なんでもないわ」

あ、明日香さんが呆れた。

「ちょっといいか二人共」

「あ、三沢君居たんだ」

「……今回、どうしてあんなコンビネーションが出来たんだ?二人はタッグを組むの初めてなんだろう?」

あ、スルーされた。まぁ、いいか。

「簡単さ、タッグデュエルにおいて、1番コンビネーションで重要なのはリバースカード。だからいくつかの罠、速攻魔法をセットした時にサインを出していたんデスヨ」

「……ちょっと待て、サインなんて出していたか?」

「ふふふ、ま、今回出していたのは結局十代君だけだったけどね」

「そうだったな〜、折角覚えたのにな〜」

「「……?」」

「……ま、わかんないっスよね」

「俺達も、うっかり聞き逃す所だったんだなぁ」

「『聞き逃す』?」

「十代君、『融合解除』をセットした時は?」

「『あのコンビネーションを崩そうぜ。』」

「『エッジ・ハンマー』は?」

「『あのモンスターを叩き潰そうぜ。』」

「……まぁ、こんな具合にね」

「……成る程、そういう事か」

そう、今回、僕達は予め何枚か主要なリバースカードをセットする時の掛け声を決めていたのだ。

「いや〜、あんなに上手くいくとは思わなかったな」

「ホントホント。十代君も死に物狂いで覚えたもんね」

「ま、その分キマった時物凄く気持ち良かったけどな」

「しかし、そんな付け焼刃なコンビネーションでよく伝説のデュエリストに勝てたな」

「だって、『伝説』とかいってるけど実際、武藤遊戯に勝ったわけじゃないんでしょ?」

「それはそうだが……」

「勝ったならともかく、『デュエルしたこともある』なんて、ルール覚えたての子供だってそれじゃあ伝説になっちゃうよ」

「おう!それに強いなら強いで燃えるってもんだぜ!」

「ほら十代君、皆拍手してるよ!」

「サンキュー皆!イェーィ!」



「……結局、コンビネーションが上手くいったのは、あのの傍若無人さのおかげかもしれないな」

「「「確かに」」」

僕と十代君は、そんな生暖かい眼を向けられているのにも気づかず、歓呼に応えるのだった。

こうして、僕と十代君の初タッグは大勝利に終わった。



今日のワイト

和「お久しぶりです!忘れられたころに更新です!」

3ワイト「「「カタカタ」」」

和「今日のカードは罠カード『ジャスティブレイク』。フィールド上の表側表示の通常モンスターが攻撃された時に発動、フィールド上の表側攻撃表示の通常モンスター以外のモンスターを全て破壊します。『フェザーマン』や『ネオス』等、効果のを持たない『E・HERO』を使う場合にも活躍します。しかし、攻撃を受けたのが表側表示モンスターでなくてはならず、攻撃を受けたモンスターが表側守備表示だった場合も、そのモンスターも破壊されてしまうという使いどころが若干難しいカードでもあります。今回は『ワイト』と『E・HERO』という通常モンスター繋がりで使ってみました。しかし、僕のデッキ単体では『ワイト』以外に該当がないので使っていません」

王「カタカタ!(怒)」

和「へ?今回全く出番無かった?うーん、今回は十代君とのタッグだったからね、ごめんね、次は絶対に活躍させるから」

王「カタカタ?(本当?)」

和「ホントホント。じゃ、また(出来れば)近いうちにお会いしましょう。さようなら~」

3ワイト「「「カタカタ~」」」



あとがき

『ダーク・ガーディアン』の技名ってこれで合ってますか?……これだからアニメオリジナルは困ります。

今回は独自的な解釈が多かったのでいくつか説明(という名の弁解)をば。

『深淵の指名者』→『闇の指名者』と対を成すカードなので、こんな使い方をしてみました。

『死者蘇生』で迷宮兄弟弟が兄のフィールドに『サンガ』を召喚した→序盤に弟の『カイザー・シーホース』を生贄に『サンガ』を自分の場に召喚し、なおかつ『パートナーのフィールドも自分のフィールドとして使ってもよい』というルールだったのでねじ込んでみました。因みに、この時『ゲート・ガーディアン』を召喚しなかったのは、『ダーク・ガーディアン』は『ゲート・ガーディアンが墓地に存在しなければ破壊される』んじゃないだろうかというこれまた勝手な独自解釈です。勿論、『ゲート・ガーディアン』を召喚しても結果は変わらないので、『変えて欲しい』という御意見があれば変更します。

『ゴルディオンハンマー』→勿論元ネタはガ○ガイガーです。アニメでハンマーをだしていなかったのは不発だったから、と考え、こんな風にしてみました。

ではまた次回お会いしましょう。



[6474] 第八話 ○NE ○UTS……って伏せ字になってない!
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:45
『かっ飛ばせー!十代!』

「アニキー!頼んますよー!」

「頑張れー!花は桜木、男は遊城!」

「おおしっ、任せとけ! またここで一発打てば一気に決まりだぜ!」

只今体育の時間、オシリスレッド1年生チーム対ラーイエロー1年生チームで野球の試合をしていた。

……勿論、隼人君はさぼっている。

そしてスコアは我らオシリスレッドが3対0でリード、現在9回表2アウト1・2塁、追加点のチャンスで、バッターは今日ホームランを打っている4番ピッチャーの十代君である。

……因みに今日の僕は1番セカンド、成績は4打数1安打1盗塁とまずまずだった。

……まぁ、盗塁したすぐ後に四球で塁が埋まって、更に十代君がホームラン打っちゃったからほとんど盗塁した意味なかったんだけどね……

そして、ここまで十代君は3打数1本塁打2三振。

驚いたことに、他の試合でも、十代君は殆どの打席が三振か本塁打かという大物ぶりだ。葉っぱを銜えたら似合いそうである。

「おお~い、待てー!その試合待った~!」

……と、ここでグラウンドに息を切らして駆け込んできた影が薄いのが一人……

「すみません、遅れて。ついデッキ構築論に夢中になっちゃって……」

そして、マウンドに上がってきたのは、原作通り三沢君だった。

……成程、今日は三沢君がクロノス教諭に目を付けられる日か。

「ついに出てきたな、三沢!しかし、お前の球もあそこに叩きこんでやる!」

と、バットを掲げてホームラン予告をする十代君。……ここで某宇宙人がオールスターでやったみたいにセーフティバントしたら面白いのに。

「いや、俺の球は打たれはしない。なぜなら、君の攻略法は既に計算済みだからだ!」

君はどこぞのデータテニスマンか?

……やはりと言うべきか、普通はキャッチャーが出すサインを三沢君が出している。三沢君が配球をリードするようだ。……ここは彼の計算の結果とやらを見させてもらおう。

「いくぞ!『方程式バージョン1』!」



「ストライク!バッターアウト!」

結局、十代君は三振に終わった。

……成程、良く考えられた投球だ。

十代君は長打を欲しがるため、下から上へ極端なアッパースイングをしている。そこで、三沢君は普通強打者に投げるのは危険なインコース高めを突いてきたのだ。……それも十代君のスイングでは絶対に当たらない所にピンポイントで。

「くやしー!」

「ドンマイドンマイ!キッチリ締めていこう!」

……とは言ったものの、多分このままでは済まさないだろうな十代君。



「ボール!フォア!」

「ボール!フォア!」

「ボール!フォア!」

案の定、9回裏2アウトを取った後、十代君は3者連続の四球。無論、三沢君と勝負するためだろう。

「タイム!」

堪らず、キャッチャーの翔君がタイムをかけ、それに伴い、内野陣がマウンドに集まった。

「えーっ!?アニキは、三沢君と勝負したくてわざと三人も歩かせたんすか!?」

「あぁ、借りはキッチリ返さないといけないからな!」

……うーむ、十代君ちょっと自分勝手すぎない?翔君を初め、内野陣の皆呆れちゃってるし……

「……ま、やっちゃったものはしょうがないか……」

「お、和希、話がわかるな」

「た・だ・し!」

と、嬉しそうな笑顔を浮かべた十代君の鼻先に、僕は人差し指を向けた。

「こんな事は今回だけ。野球はチームプレーが大事なんだから。ましてや君はピッチャー。君の自分勝手がそのままチームの皆に迷惑をかける!そのことを自覚するよーに!わかった?」

「お、おう」

僕の指摘で少しは自責の念が浮かんだのか、神妙に頷く十代君。うむ、こういう素直なところはよろしい。

「皆も、それでOK?」

内野陣の皆も、それで納得してくれたのか、頷いてくれた。

「よーし、それじゃ、奥の手を使いますか」

「「「「「奥の手?」」」」」

「ん、ちょっと十代君と翔君、ベンチまで来て。……審判さん、もうちょっとタイムお願いします」

……と、ベンチに引っ込む僕たち。

……数分後。

「よっしゃー!いくぜー!」

気合十分、いち早くマウンドに駆けて行く十代君。

「待たせたな三沢!今度こそお前を打ち取ってやる! 」

「それも出来ない事だな。君を打ち崩す方程式も、もう既に出来ている。俺はその数式にのっとり、お前を叩くまでのこと!そして、負けたお前は俺の言いなりとなれ!」

……無茶苦茶言うなぁ。

「ふふふ、じゃあその方程式に、不確定要素を加えたらどうなるかな?」

「何!?」

と、キャッチャーの位置につくのは翔君……ではなく、僕、朝倉和希。

そして、僕の代わりに翔君がセカンドの位置に入る。

「ふふふ、僕のリードは、そのバットに書かれた数式に組み込まれているのかな?」

僕はこれまでの試合でキャッチャーをしたことがなかった。

よって、僕の配球パターンなどのデータはない。これは計算できない筈。

因みに、今までの試合の配球のリードは勿論ピッチャーの十代君がしていた。……本来翔君がやる筈なのに……

「……成程、これは油断できないな」

三沢君の顔から余裕が消えた。

「だがいいのか?負けたらお前も俺の言うことを聞いてもらうぞ?」

「ふふふ、そんなことは百も承知」

「……というかそもそもキャッチャーをしたことがあるのか?」

「いや、ないけどさ、三沢君、キャッチャーに1番必要なものって知ってる?」

「『キャッチャーに1番必要なもの』?」

「ふふふ、打者の嫌がるところを見抜き、そこを突く、いやらしさデスヨ」

「……成程、天職かもしれないな」

「ははは、余計なお世話デスヨ」

よし、これで少しだけ残っていた良心も消えた。……と言うか、相手に合わせてデッキを変える君に言われたくない。

ふふふ、ここで打ち取って出番減らして、薄い影を更に薄くしてやるぅ~

審判に守備位置交代を告げ、内野陣に向けて掛声を出した。

「しまっていきましょー!」

……と、ワイト達が応援のつもりなのか何か踊っていた。

……何を踊ってるんだろ?耳を澄ましてみると……

♪ドロドロドロロン シュリシュリシュリケン dance dance♪

ってカク○ンジャー!?野球関係無!そして古!

……いや、君達がそれを踊るの物凄く似合ってはいるんだけどさ……

因みに個人的には同じエンディングならカーレ○ジャーの方が好み……っといかんいかん、集中集中。

「勝負だ!」

「こい!1番!」

うわー、燃えてるなぁ二人共。さながら十代君が竜、三沢君が虎、龍虎が相対するという表現がよく似合う。……つまりは置いてきぼり。

……サインを出し、頷いた十代君は投球モーションに入る。

「いくぞ~、2番!くらえ、オレがヒーローだー!」

……と振りかぶった瞬間。

「……インコースストレート」

「っ!?」

僕がボソリと呟いた言葉に、三沢君がピクリと反応した。

シュッ!

スパーン!

「ストライク!」

来た球は……ど真ん中。

「くっ!?」

僕の一言に集中力を乱した三沢君は甘い球だったのに見逃してしまった。

ふふふ、竜は天に昇り、風雲を起こすといわれる。さながら僕は竜が身を隠すために身に纏った霞……なんつって。

「OK!ナイスボール!」

と十代君にボールを返す。

「……ささやき戦術か」

「ふふふ」

三沢君が渋い顔をする。まぁ、質悪いよねこれ。

ピッチャーがボールを投げてからキャッチャーにボールが届くまでの時間は0.5秒ぐらいしかない。

なので、少しでも集中力が乱れると打つのが困難になる。

そこで、バッターにささやきかけ、バッターの集中力を乱すテクニック、それがささやき戦術である。

楽天の野村監督や、元広島の達川監督の得意技である。

因みに長嶋監督には効かない。ささやき返される。

そして、第2球振りかぶった瞬間。

「……真ん中高めのストレート」

「……っ!」

シュッ!

ブン!

スパーン!

「ストライクツー!」

今度は宣言通りの真ん中高めのストレート、三沢君はまたも惑わされ、空振りした。

「……」

よし、この調子ならば打ち取れる。

運命の第3球。

十代君が振りかぶったところで三度、ささやいた。

「さて、次はアウトコース……」

「確かに厄介だ。……だが!」

「え……」

……と、三沢君の顔にはいつの間にやら最初の余裕が戻っていた。

「来るところが分かっていれば……関係ない!」

キィン!

金属バット特有の澄んだ音が響く。

ジャストミートした打球は……1塁側ファールグラウンドに痛烈なライナーとなって飛んで行った。

まさか、たった2球で配球を計算された!?

……確かに、配球が読めていれば、いくらささやいても効果がない。

……影が薄いと少々なめていたようだ。考えてみれば各地から集まってくるアカデミア入学生の中で、彼は筆記テストでトップだったのだ。

「悪いな朝倉、データは嘘をつかないんだ」

……だから君はどこぞのデータテニスマンかっつーの。

……と、十代君と翔君が慌てた様子で1塁側ファールグラウンド、つまりボールが飛んだ方へ走っていく。三沢君も気になったのか、審判にタイムをかけて走って行った。

……嫌な予感を感じ、僕も後に続いた。

すると……

案の定、ボールが飛んだ方向、1塁側ベンチより少しライトスタンド側にある、ボール等の道具をしまっておく倉庫には、左目にボールをめりこませて十代君と翔君に怒り狂っているクロノス教諭がいた。……あのボール硬球なんだけどな……

……そういえば原作でも『クロノス教諭に当たったのがホームランの球だった』っていう描写なかったか。三沢君も自分が打ったとしか言ってなかったし。

そして、三沢君も謝りに行くと、クロノス教諭は十代君と翔君を追い出し、何やら三沢君と話していた。おそらく原作通り、オベリスクブルーへの昇格試験の話でもしているのだろう。

……あー、もう、折角三沢君の影を更に薄くしようかと思ったのに!



その後、やる気を削がれた僕と、今のトラブルで調子を崩した十代君のバッテリーはあっさりと三沢君に打たれてしまった。

負けた結果、僕達は三沢君の部屋の『ビッグバン』……つまり掃除、そして壁のペンキ塗りを手伝うこととなった。

そして、三沢君の部屋へ向かう途中……

「……ごめん、十代君。」

「ん?どうしたんだ?和希?」

「いや、あんなに偉そうなことを言いながら打たれちゃって……」

「はは、打たれちまったもんはしょうがないさ。それに、お前ははこうしてちゃんと逃げずに罰を受けるじゃないか。何も無責任なことはないぜ」

「そうそう、それに僕とアニキのバッテリーのままでも多分打たれてたっスよ。あそこは素直に三沢君を褒めるしかないっス」

落ちこむ僕に、それを慰める十代君と翔君、という珍しい構図となっていた。

……まぁ、考えてみればこの出来事がなかったら、万丈目君が三沢君に負けてサンダーに覚醒する事も無かっただろうし、ある意味結果オーライだったのかもしれない。

「いや、正直苦しかった。あのままのバッテリーだったら100%打てていた計算式だったんだがな、また計算し直す羽目になってしまった」

と、案内の為、先頭を歩いていた三沢君もそう言ってくれた。

「……三沢君もごめんね」

……影薄くしようとしちゃって。

「? 何のことだ?」

「いや、こっちの話」

「?」

見ると、ラーイエローの寮が見えてきた。

さてそれじゃ、『ビッグバン』を頑張りますかね。



その後、僕らは『ビッグバン』を開始した。

確かに三沢君の部屋の壁、床、更には天井にまでもたくさんの数式が書かれていた。

……『シュレディンガーの猫』や『アボガドロの分子説』ならわかるけど、『風が吹けば桶屋が儲かる確率式』って、……今時桶屋なんて殆どないんじゃないかな?

そのことを指摘すると、

「ああ、だから書いてみたはいいが、結局のところ、ほぼ0に近い確率だった」

……納得。

因みにワイト達はさっきの僕らに触発されたのか、その間野球をしていた。

ワイトが投げた。

ワイトキングが打とうとスイングする。

ボールが上下2つに割れる。

バットがその間を通る。

キャッチャーのワイト夫人がキャッチする時にまた1つに戻ってストライーク!

……ってスモールエッグボ○ル!?またネタが古い!確かラッキ○マンじゃないそれ?つーかマンガ読んでいても多分そのネタわかる人少ないよ?

……どうせなら大○く振りかぶってとかM○JORとかにしておきなよ……へ?作者がその辺わからない?……ダメじゃん。

「……三沢君?」

「なんだ?」

「この中に、影の濃くなる方程式は……」

「……いい加減に怒るぞ?」



その後、三沢君に食事を奢ってもらった

食事の際、明日のオベリスクブルーへの昇格テストの話がでた。

十代君と翔君は祝福していたが、三沢君本人は微妙な顔をしていた。

その後、部屋が使えない三沢君を連れてオシリスレッドの寮に戻った。

十代君と三沢君は疲れたのか、部屋に入った途端、大鼾をかいて眠ってしまった。

因みに隼人君は……まだ寝ていたりする。

「……というか、なんで和希君はどこも汚れてないんスか?」

……まぁ、みんなふざけてペンキまみれになっていたしね。

「翔君や、あーいう場面で何をするのが1番面白いか知ってる?」

「……あんまりいい予感がしないけど……何?」

「高みの見物」

「最悪だこの人!」

……いいじゃない、その分君たちがふざけてる間もやってたんだから。

……あー、そう言えば今頃万丈目君が三沢君の『調整用の寄せ集め』のデッキを捨てているころか。

……止めておいた方がよかったかな?

……ダメ、今日はもう疲れた。野球した後、三沢君の部屋の大掃除、もうクタクタです。

まぁ、放っておいても、ここは原作通りに進むだろうから大丈夫だろう。

「じゃ、僕も寝るわ、翔君。お休み」

1,2,3,……グー

「早!?の○太君っスか!?」

と、翔君のツッコみを遠くに聞きながら、疲れ切っていた僕は意識を手放した。

「うーん、今何時なんだなぁ?」

「……隼人君、もう夜だよ」

「ん?な、何だぁ?この人は?」

「ラーイエローの三沢君。部屋がペンキ塗りたてで寝るところがないんだよ」

「にしても、格下の寮に平気に泊まりに来るなんて……」

「……和希君辺りなら平気でやりそうっス」

「……寧ろ毎日泊まりに来そうだなぁ」

「……でも、だからかな、三人共すごく気が合うみたい」

「そうだなぁ」

「……ふぁ~、僕も今日は疲れちゃった」

「……俺も、まだ眠いんだなぁ」

「あれだけ寝てたのに?まぁいいや、お休み隼人君」

「ああ、お休み」



翌日早朝、トメさんの報せで、海に捨てられた三沢君のカードを回収した後、三沢君と万丈目君のデュエルが始まった。

……と言うか、このころの万丈目君マジで外道だなぁ。相手のカードを海に捨てて、その上『負けたら退学』なんて……やっぱ三沢君に打たれといてよかった。万丈目君がこのままなのは正直我慢ならない。気にくわなすぎる。

……ま、三沢君の相手に合わせたデッキの使い方も正直気に食わないが、ここは三沢君を応援しておくか。



「『ウォーター・ドラゴン』の攻撃!『アクア・パニッシャー』!」

「うわー!?」

『ウォーター・ドラゴン』が放った水の奔流が万丈目君のモンスター、『炎獄魔人ヘル・バーナー』ごと万丈目君を飲み込んだ。

……のはいいんですけど、ちょっとちょっとー?デュエル場が水浸しなんですけどー?冷たいんですけどー?ワイト達がうつ伏せに浮かんで『私が水上警察隊隊長、海野土左ェ門』とかやってるんですけどー?ド○フィン刑事か!?

「万丈目!カードを大切にしない奴はデュエリストとして失格だぞ!」

……ついカードに数式をメモしちゃったのは大切にしてないんじゃないのかな?

「うぅ、まだ俺には……」

「シニョール三沢。ユーのオベリスクブルーへの編入を認めるのーネ」

「いえ、そのお誘いはお断りします」

「オゥ!?何故なのーネ!?」

「俺は、オベリスクブルーに入るなら、この学園でナンバー1になった時と、入学式の時決めたんです。……十代!そして朝倉!」

「ふ!?」

……突然のことに自分でも意味がわからない声が出た。

「オベリスクブルーに入るのはお前らを倒してからだ!」

「よし!」

「って僕も!?」

……なんか自分でも知らないうちに高評価を受けてるんですけど……

「それなら今すぐデュエルをやろうぜ!オレもお前と闘いたくてウズウズしていたところだ!」

「残念ながら、今は駄目だ」

「え?なんでだよ?」

「ここにあるデッキはまだ完成していない。ここにある6つのデッキは、お前らのE・HEROデッキ、ワイトデッキを研究するための試作デッキにすぎない」

……ってことは原作では使ってなかった対僕用のデッキも作っているってことかな?

うわー、自分のデッキだけに弱点がわかっているからなぁ。正直嫌だな。

「多分、新しく塗った部屋の壁が数式で埋め尽くされる頃にはできるだろう。お前らのデッキを負かす俺の7番目、そして8番目のデッキが!」

「オレらを負かすデッキだと?おもしれー!その時こそお前と勝負だ!来い2番!」

「ああ、いくぞ。1番君」

……なんだろこのデジャブ、つまりは置いてきぼり。……まぁ、実は僕も若干楽しみではあったりするんだけどね。

まだ見ぬ僕封じのデッキ、果たしてどのようなデッキだろうか。



今日のワイト

和「今日は……どうしよっか?紹介すべきカードもないし……」

3ワイト「「「カタカタ」」」

和「……じゃぁ、裏話でもしますか」

3ワイト「「「……?」」」

和「前回のタッグデュエル、実は最初、迷宮兄弟の代わりにグールズの光の仮面、闇の仮面タッグを出すつもりだったんだって」

3ワイト「「「カタカタ?」」」

和「なんでやめたかって?まず、犯罪組織のグールズをどうやってあの場に出すかが思い浮かばなかったから。それと、彼らのキーカード、生贄封じの仮面が僕と十代君のデッキに効果が薄かったから。両方ともあまり生贄召喚しないデッキだしね」

3ワイト「「「……」」」

和「……ということで、原作通り迷宮兄弟に登場して頂きましたー。もし余裕があったら光の仮面、闇の仮面タッグバージョンも書いてみたいと思います。期待しないで待っていてください」

3ワイト「「「カタカータ(くださーい)」」」

和「……では、また次回お会いしましょう~さよ~なり~」

3ワイト「「「カタ~カタ~」」」



あとがき

……なんで野球で真っ先にラッキー○ンが浮かんだのか自分でも謎でしょうがありません。

さて、三沢君にはワイト封じのデッキを作って頂きましょうか。

……どんなのにしょうかな……



[6474] 第九話 動物に襲われた時は……
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:21
……さて、三沢君が万丈目君を負かした翌日。

「アニキアニキアニキ!」

授業の始まる2分前……といったところで翔君が慌ただしく走ってきた。

……因みに僕と十代君は授業が始まるまで『戦争』というローカルなゲームをしていた。……左手を繋ぎながら所謂『グリンピース』をやって自分のターンにあいこになったら相手のその左手の甲を叩くアレである。

因みに、『グリンピース』のグー、チョキ、パーの時の『グリン、チョリン、パリン』のところがこのゲームでは『軍艦、朝鮮、ハワイ』となっている。……誰が考えたか知らないが、とんでもないブラックジョークだよなぁこれ。

3本先取等のローカルルールが色々あるが、僕と十代君がやっていたのはどちらかが降参するまで続くデスマッチである。無論、二人の左手の甲は真っ赤だ。

……因みに、机には僕たちの真似をしていた連中の文字通り見た通りの『屍』があった。……ワイト夫人以外の

……と言うか、なんでワイトとワイトキングの顔に手の痕があるんだろう?

「ふ、ふふふ、ほら十代君?翔君が呼んでるよ?いい加減にサレンダー(降参)したら?」

……と言うかしてください。そろそろ左手の感覚が……

「へ、へへへ、甘いぜ和希、オレはどんなことがあってもサレンダーはしないぜ!そっちこそ、そろそろ余裕がないんじゃないのか?」

「……言ったね?生憎、僕も人並み以上に負けず嫌いなんだよね」

「おう!勿論知ってるぜ!」

不敵な笑みを浮かべ、睨み合う僕と十代君、左手の痛みのせいか、二人してテンションが高い高い。

「よし、いくよっ!この命尽き果てるまで!」

「よっしゃー!」

「「せーん……」」

「だーかーらー!アニキ!和希君!そんな事してる場合じゃないっスよ!あと和希君!それは死亡フラグっスよ!」

……と、翔君の必死の横槍に、僕たちは再び目を見合わせ、渋々繋いでいた未だ真っ赤な左手を同時に離した。……折角盛り上がってたのに。

「おぅ、どうしたぃ丸藤の?」

「大変でやんす親びん!……ってだからそんな場合じゃないってば!」

……翔君も段々ノリがよくなってきたな。……僕のせいか。

「どうしたよ翔?」

まぁ、予想はつくけど。

「大変だよ!万丈目君が行方不明になっちゃったんだって!」

「な……」

「なんだってぇぇぇぇ!?」

「ふざけてる場合じゃないっスよ!」

お約束じゃない、M○R。

……オベリスクブルーの生徒、確かゲームでの名前は取巻君だったか、達数人が『ダッセー』とか『負け犬』とか笑ってた気がするけど無視。十代君、彼らに対する『金魚のフン』って例えナイス。

「……まさか、デュエルに負けたのを苦に、岸壁から身を投げる……なんてことないよね?」

「バッカ野郎!そんなことある訳ないだろ!……ある訳ないよな?」

……なぜ僕に振る。

「……まぁ、投身するなら、あそこの人達が言ってたように、わざわざ荷物を纏める必要ないからね。それは多分ないんじゃないかな?」

「そ、そうだよな?」

「……まぁ、あくまで『多分』の域を出ないけどね」

「……よし!連れ戻しに行こうぜ!」

「あ!アニキ!授業はどうするっスか!?」

「そんなもんサボるに決まってんだろ!?」

決まってるんだ。

二人は教室を飛び出した。

うーん、でも万丈目君、まさか原作と違って本当に投身したりしてないよね?

……ちょっと心配になってきた。ここは早く大徳寺先生に確認をとるため、十代君たちに付いて行くかな。

僕も、十代君たちに追いつくべく、駈け出した。……ワイト達も若干1名以外、ふらつきながらも着いてきた。

「……とっと、三沢君!」

「? なんだ?」

ラーイエローの席に居た三沢君に声をかけた。

「できれば代返ヨロ」

「よし、任せろ……って出来るか!」

「ははははは」

まぁ、これもお約束ってことで。



僕たちはアカデミア校舎の塀の穴から外に出た。……というかこの穴直しましょうよクロノス教諭。

そして外に出ると……

「授業をサボってどこに行くつもりかしら?」

「「うわぁ!?」」

……予想通り明日香さん、枕田さん、浜口さんの三人がいた。……あなたたち、僕が教室出る時まだ居ましたよね?

「……」

……枕田さんが睨んできている。……どうやらこの前のデュエルのことをまだ根に持っているようだ。

「万丈目の奴をさがしに行くんだよ。このままほっとけないだろ?いいか、先生たちには内緒だぞ?」

「いいけど、1つ条件があるわ」

「条件?」

「私たちも一緒に行くわ」

「は?なんで?」

「あなた今言ったでしょ?このままほっとけないって」

……と、枕田さんが僕に指を突き付けてきた。

「言っとくけど!別にアンタを手伝うわけじゃないんだからね!?」

「は、はぁ」

……いや、それはいいんだけどさ。

「あの、明日香さん、ちょっといいですか?」

「ちょっと!無視しないでよ!」

……だってまともに話せそうにないんだもの。

「何?」

「どうやってここまで来たんですか?」

……確か校門には、数人の警備員が入れ替わりに居て、授業時間中の校内からの外出を厳禁していた筈だ。

「さて、そろそろ行きましょうか」

「そうですわね」

「あんなのほっときましょう」

あ、はぐらかした。……ということは?

「……あの穴から?」

「「「……」」」

踵を返した三人がピタリと止まった。……もしかして図星?

……匍匐前進で塀の穴から外に出ようとしている三人を思い浮かべる。

「……くっ、はははは、あははははは……」

……ヤバい、ツボに入った。

「ちょ……ちょっと……」

「しかたないでしょう!?他に方法がなかったんだから!」

「そうですわ!それを笑うなんて最低ですわ!」

「い、いやそういうことじゃなくて、ははは……な、なんというか、くくく……三人とも意外とやんちゃなんだなって、ははは……」

「「「なっ!?」」」

三人の顔がボッと赤く染まった。それがまたツボに入ってしまい、僕の笑いは止まらなかった。

「……っ!」

「ちょ、ちょっとヤバいっスよ和希君!」

「よくわかんねぇけど、ジュンコの肩が震えだしたぞ」

「へ?」

ふと見ると、右目には『抹』、左目には『殺』の字の炎を灯した修羅が一人。……1歩でも動いたらその文字が実行されそうである。

「……ははは、オレ知~らね」

あ……逃げよった。

「……どうするんスか?」

……翔君、一見心配してくれてるみたいだけど、ジリジリ僕から距離とっているのバレバレだから。

「……大丈夫、こういうときの為に、たった1つだけ残った策があるよ」

「……まさか?」

……まぁ、これしかないよね。いくぞ、ジョ○スター家秘伝!

「逃げるんだよぉ!」

「待ちなさい!こらぁ!」

「ごめんなさーい!」

僕は今までにないほど全速力で逃げ出した。

……うん、今回は完全に自業自得でしたね!



「……ジュンコってあんなに走るの速かったかしら?」

「……ですわね」

「……明日香さんたちは追いかけないんスか?」

「怒ると言うより、拍子抜けしてしまいましたわ」

「……実はあれって朝倉なりの褒め言葉だったのかしら?」

「? 『やんちゃ』って元気って意味の褒め言葉じゃないのか?」

「……捉え方はそれぞれよ」

「ふーん、それにしてもとことん相性悪いのな、あの二人」

「「……」」

「……と言うか僕達何をしに来たんっスっけ?」



数分後、不毛な追いかけっこは、明日香さん達が枕田さんを宥め、僕が徹頭徹尾低姿勢で謝ったところでようやく治まった。

……まだ全然許してくれてないっぽいけど。

……ワイト達は笑いながら見ていた。『高みの見物』だそうだ。……一昨日の翔君の気持ちがわかった。ごめん、これからはちょっと自重するよ。

そして、皆忘れかけていたが、万丈目君の捜索を漸く始めた。

「お~い!万丈目~!」

「万丈目く~ん!」

「お~い!万丈目~!」

「……ふぅ、全く……」

……っと、明日香さんは呆れた表情を浮かべると、大きく息を吸い、手をメガホンのように口に添えて……

「出てきなさーい!!デュエルに負けたぐらいで雲隠れなんて情けないわよー!!」

……と、さっきの十代君と翔君の声を足して2を掛けたような大声で叫んだ。

「……相変わらずキツいなぁおまえ」

「あら、当然よ、最近は軟弱な男子ばっかり」

……明らかに僕を見て、ジュンコさんが言う。……一応僕、あなたに勝ちませんでしたっけ?

「でも、きっと万丈目さんは違いますわ。だってイケメンなんですもの」

「何それ……」

……翔君が呆れてる中、僕は『人それを面食いという』とか、彼の昨日早朝の小者じみた悪行とかツッコみたかったが、また枕田さんの不興を買いそうなので黙っていた。

「アンタこの前は『三沢さんが素敵』って、顔が良ければ誰でも」

……また僕を見て言うし、そんなに僕のことが嫌いですか?

「!?」

「どうした?」

「あそこ!今何か動いた!」

「「「「え?」」」」

明日香さんが指した方向を見ると、確かにガサガサと蠢く茂みがあった。

「万丈目君だ?」

……いや、明らかに人間にしては大きさが小さい気がするんだけど?

「おい、万丈目か?オレだ、遊城十代だ。イジケてないで出て来いよ」

「ちょ、ちょっと待って、何か嫌な予感がするよ」

……というかあれ多分『SAL』ことサルだよね?原作通りなら。

「はぁ?そんなの当たるわけないでしょ」

いやいやいや!原作通りだと多分あなたが1番酷い目に合うから!

と、

「ウキィー!」

「「「「「うわー!!!!!????」」」」」

……やはり出てきたのは頭部、胴、背中、各関節に機械を、左腕にデュエルディスクをつけたサルであった。

……というかデカ!人間の子供くらいの大きさがあるんだけど!?

皆が呆然としている間に、近づいてくるサル。……あー、もうこれしかないか!?僕は覚悟を決めた。

僕らのところに来たサルは、身軽なのを活かし、僕たちの足元、肩、頭等、縦横無尽に動き回り、皆を撹乱した。

そして、やはり、人質にと枕田さんを狙ってきた。

「ウキャー!」

「きゃー!」

……悪いけど、いくら撹乱しても、来るところがわかっていれば関係ないよ!

「せい!」

「ウギ!?」

僕は、威嚇の為か大きく開けられた口に手を突っ込んだ。

……っ!反射的に噛まれた。早くしないと本気で噛まれる……!

僕は急いで、つっこんだ手でサルの舌を思いっきり摘まんだ。

「ウギャー!?」

よし!怯んだ!手の拘束が緩んだ隙を見て、更にサルの舌をしっかりと掴み直し、引っぱった。

「ウギャギャー!?」

……サルは逃げて行った。

……よかった、上手くいったみたいだ。……右手痛いけど。

「……大丈夫?」

「……」

枕田さんは驚きの余り声こそ出さなかったが、頷いてくれた。

「大丈夫か!?和希!」

皆が呆然としている中、いち早く再起動した十代君が声を掛けてきた。

「うん、大事はないよ」

「サル……だったよね?」

「野生……ではなさそうだけど、よく撃退できたわね?」

「基本的に舌は動物の急所なんデスヨ。野生動物に襲われた時、思いっきり引っ張ると痛さで怯むそうですよ?」

「へぇ……」

「……って、結構昔のどう○つ奇想天外でやってた」

「そ、それで実際にやるのもすごいわね……」

「でも実際にクマに襲われて、この方法で助かった人もいるそうですよ?」

……案外役に立ったなど○ぶつ奇想天外。……どうでもいいけど鈴○蘭々とか○藤晴彦とかどこ行っちゃったんだろう……

……ワイト達がお互いの口に手を突っ込んで試しているけど……あなたには舌がありませぬぞ!ゲ○ツ様!

『『『!!!』』』(うっかり!!!)

……すると、麻酔銃を持った黒スーツサングラスの男、大柄にメガネの男、確かタテワキさんっていってたかな、そして、いかにも性格の悪そうな、小柄な髭もじゃメガネの博士がサルが出てきた茂みの奥から出てきた。……この茂みは四次元○ケットだろうか?それともど○でもドア?

……と、サルが木々を渡るときの木の葉の擦れるカサカサ音が遠ざかっていく。

「あそこだ!」

「追え!捕まえるのだ!」

……と、その三人が追いかけていく。

「どういうこと!?」

「わかんねぇけど、とにかく追うぞ!」

枕田さんが人質になるのは阻止できたけど。……まぁ、サルも仲間と離れ離れだとかわいそうだし、行きますか。



その後、追いついた僕たちは今にも麻酔銃を撃とうとしていた博士達から事情を聴き、説得し、原作通り十代君とサルのデュエルに漕ぎ着けた。

……博士も面白いデータが取れると思ったのか、承諾した。

そして十代君は『勝ったら大人しくいうことを聞く、負けたら自由になっていい』という条件をつけ、デュエルを開始した。

……それにしてもサルが機械を通して喋るのは本当に奇妙だった。初めて聞いた時、わかっていても驚いた。……甲高い機械の声と、あの頭部の前後に長い機械が相まって新手のエイリアンのようだった。

デュエルのさ中、たくさんのサルの仲間たちが悲しそうに見つめていた。

……大丈夫、彼はもうすぐ戻ってくるよ。

……そして……

「いくぞサル!『E・HEROクレイマン』でダイレクトアタックだぁ!くらえ!『クレイナックル』!」

「ウギィー!」

永続罠『DNA改造手術』によって獣族となり獣化した『クレイマン』の拳がサルを直撃した。……こっちの方が元のより強そうなんですけど?

「更に、『捨て身の突進』の効果で、クレイマンの守備力2000がダメージにプラス!」

「ウキー、ウキキ、ウッキッキ~……」

「アニキが勝った!」

「……でも、あのサルまた研究所に連れて行かれるのね……」

枕田さんは、サルの仲間達を見ながら、悲しそうに言った。

「ふふふ、それはどうかな?」

「え?」

「よくやった!あとは我々に任せろ!」

「「ちょーっと待ったぁ!」」

と、僕と十代君が三人の前に立ちはだかった。

「勘違いしちゃーいけませんよ?」

「別に、オレは『デュエルに勝ったら大人しくオレのいうことを聞く』とは言ったが、『研究所に戻す』とは言ってねぇぜ?」

「「「何?」」」

「勿論、この場合は十代君に決定権はありますよね?」

「あのサルは、仲間と一緒にこのまま森に帰す!」

「ウキィ!?」

「よ!そうこなくっちゃ二人共!」

「あなた達らしい決論ね」

「案外、お二人共いいところありますわね、ジュンコさん?」

「……ふん!」

……約1名以外は喜んでくれた。

「邪魔だぁ!どけ!」

と、黒スーツとタテワキさんが迫ってきた。やはり力ずくで来た。

そして、力ずくで退かされ、サルは網で絡めとられてしまった。……大人って汚い。

「サル!……おい!」

「約束を破るんですか?」

「……ふん、約束?何のことだ?約束した証拠でもあるのか?」

「「……っ!」」

あー、駄目だ。この人ホント腐ってる。

『『『カタカタ?』』』

……いや、君たちのことじゃなくて!この人の中身が!

「ふん、そんなに仲間と一緒にさせたいならそうしてやってもいいぞ?ただし私の研究所でな。」

「何!?」

「他のサルどもも皆捕まえるんだ!実験動物は多いに越したことはないからな」

……かつてここまで人を殴りたいと思ったことないよ。

黒スーツがサル達に麻酔銃を向け、僕の堪忍袋もそろそろ限界に近づいた時……

「うにゃー!」

と、何か丸っこいのが黒スーツの顔面に直撃し、黒スーツは堪らず麻酔銃を落とした。……でもサングラスは落とさない。

「流石ファラオ、お手柄ですニャ」

「「「「「大徳寺先生!」」」」」

……遅いですよ。……でもありがとうございます。そろそろ限界でした。

……ファラオも僕の代わりに1撃ありがとう。今度エビフライをあげよう。

……最近エビフライを食べる量が少ないなぁ……



その後、大徳寺先生の説得、と言うか脅しでサルはめでたく自由の身となった。博士達はいつの間にか退散していた。正直2度と会いたくない。

機械を外され、嬉しそうに仲間の元に戻るサル、そしてそれを迎える仲間たち。……うん、さっきまで荒んでいた心が癒される。

「へへ、皆嬉しそうだね」

「良かった」

「またデュエルしようぜ~!」

「今度は僕ともね~!あと、舌引っ張っちゃってごめんね~!」

……機械を外して通じない筈だと言ってから気付いたが、彼は嬉しそうに手を振ってくれた。……もしかしたら十代君の言うようにデュエルで解り合えたのかもしれない。

……そうだといいな。

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!もう捕まるなよ~!」

「またね~!」

そして、彼らは森に帰って行った。



その後、灯台に移動した後、大徳寺先生から、万丈目君が無事この島を出たことを聞いた。

……よかった、もし本当に投身でもされたらどうしようかと思った。

「そうだったのか」

「万丈目君、島を出て行っちゃったんだ……」

「……万丈目さん……」

「大丈夫!あいつはまたきっと帰ってくるさ!」

「……だよね」

他の皆も頷く。

「きっと万丈目も、この空を見てるぜ!」

「……アニキ、それはカッコつけ過ぎだよ」

「あ、そうか?」

……というかその言い方だと万丈目君お亡くなりになったみたいだよ十代君。

皆でひとしきり笑った後……

「うわぁ!?和希君!血!血ぃ出てるよ!」

「……ありゃホントだ」

どうやらサルに噛まれた時、少々犬歯だけ深く刺さっていたようだ。少々血が出てる。

「……まぁ、これぐらいなら放っておいても大丈夫……」

「何横着してるのよ!動物の歯なんてバイ菌の塊じゃない!それで病気にでもなられたらアタシの責任じゃない!」

……なんかまた怒られた。

「ほらとっとと医務室に行く!」

「い、いや一人で……」

「黙って付いてきなさい!」

……何なのさ!?

……売られていく子牛の気持ちを知りながら、僕は拉致された。……ワイト達!ド○ドナ歌わなくていいから!



「……全く、ジュンコも素直じゃないわね」

「本当ですわね」

「……どうなってんだ翔?」

「……ははは、とりあえず和希君がこれ以上血を流さないことを祈りましょうアニキ」

「はぁ、青春なんだニャ~」

「……先生、年寄り臭いっス」

「ガーン!?まだそんな歳じゃないのニャ~!」



その後、医務室まで強制連行された僕は、鮎川先生に傷を診てもらった。

……何故か枕田さんも「責任がある」と付き添ってきた。

流石は保健体育の先生、一目見てこの傷が動物の噛み傷だとわかってしまった。

経緯を問われた僕は掻い摘んで成り行きを話した。

……なにやら一瞬先生が含みのある笑みをした……気がした。

……と、先生は消毒液、ガーゼ、包帯等の治療道具や薬を出して……

「あら、どうしましょう!?そういえばこれから会議があったんだわ」

「「え?」」

「じゃあ、薬は出しとくから、あとはお願いね」

「ちょ、ちょっと先生!」

枕田さんが止めるのも間に合わず、鮎川先生は出て行ってしまった。

……ついでに、ワイト達も妙なサムズ・アップをしながら出て行ってしまった。

「「……」」

き、気まずい!

僕はさっさと終わらせて帰ることにした。

……しかし、消毒はできたが、利き手の右手に巻くので、包帯が巻きづらい。

悪戦苦闘していると……

「あー、もう!イラつくわねぇ!貸しなさい!」

……奪い取られた。

ま、確かに自分でやるのは一苦労なのでお願いした。

「……変なことしたらどうなるかわかってるんでしょうね」

「あのねぇ……」

……僕はどんな風に見られてるんだろう?

「……」

「……何見てんのよ?」

「目と口と鼻と……」

「っ!」

「痛たた!」

だって他に何を見ろと!?

「……ねぇ」

「?」

……枕田さんが真面目な表情で聞いてきた。

「何でアタシを助けたの?」

「はい?」

「……だって自分が大ケガするところだったじゃない」

……まぁ、野生のサルが子供の指を噛み切った、なんてニュースも聞いたことがるしね。

……いや、理由なんて……

「うーん、ノリ半分、正義感半分?」

「……はぁ?」

……だってこれぐらいしか思いつかないし。

「……なんでアタシはこんなのに助けられたのよ……」

枕田さんが頭を抱える。

「……ま、いいんじゃない?得したと思えば?」

「っ!」

「痛い痛い痛い!」

だからどうしろと?



そんなこんなで包帯を巻いてもらった。……意外と上手かった。

「ありがとう」

「べ、別にアタシには責任が……」

「責任とかに関係なく、やってもらことは事実でしょう?」

「っ!」

……なんかまた爆発しそうだったので退散することにした。

「それじゃ」

「あ、ちょっと……!」

「?」

「……何で止まるのよ!」

……だーかーらー、どないせいと?

「あ……あ……」



「あー、もう!これで貸し借りは無しだからね!」

「か、貸し借りって……」

「それと!その他人行儀な言葉使いやめなさい!不愉快だわ!」

……そうかな?……ま、そう感じるならそうなんだろうな。

「……それだけよ!とっとと行きなさい!」

「……はいはい、それじゃね、ジュンコさん」

「!? ちょ、ちょっと!何で名前で呼ぶのよ!?」

「いやだって、他人行儀はやめろって……」

「……っ!あーもう!早く行きなさい!」

「?」

……結論、とことん相性悪いな、あの人とは。



「……それで、『ありがとう』も言えなかったワケ?」

「ううう」

「まぁ明日香様、ジュンコさんにもとうとう春が来ましたわね」

「……いい加減に怒るわよ?ももえ」

「……ホント、素直じゃないんだから……」

「明日香さんまで……」

「「ふふふ」」

「あー、もう!二人共その含みのある笑みはやめてー!」



今日のワイト

和「今日は……十代君が使っていたアニメオリジナルの魔法カード『捨て身の突進』ですね!ライフポイントを1000払い、フィールド上のモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた時、その守備力の数値のダメージを相手に与える。僕のデッキでは……『ワイトキング』の守備力が0なので使いどころがないでしょうか……攻撃力0の『ワイト夫人』が戦闘ダメージを与えるケースも少ないですし……」

3ワイト「「「……」」」

和「な、何さその生暖かい眼は?」

3ワイト「「「……」」」(フルフルフル)

和「……ま、いいか。それじゃーまた次回お会いしましょ~」



あとがき

……なんだこの甘いのは!?

うわ-んごめんなさいふざけ過ぎましたー!もうしません!

……というか何このツンデレ?こんなの考える自分が気持ち悪い!

……樹海逝ってきます。



[6474] 第十話 『赤、がんばれ。青、がんばれ。黄色、まけるな』  
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:56
唐突だが問おう、体育祭において何が1番激しいだろうか?

綱引き?うーん、確かに競技人数は多いかもしれないが、激しさからは程遠い……

棒倒し?まぁ、確かに激しい、同立で1位をあげてもいいぐらいに。怪我の起こり安さだったら文句なしの1位だろう。

……でも、1番激しいのは、やっぱり騎馬戦だろう……

……特に……

きゃー!きゃー!

「……女子のはね……」

「……確かに凄いなこりゃ……」

「あぁ!あそこ!今帽子取るフリして髪の毛引っ張って引きずり落としたっスよ!」

「……道連れに落とされたけどね。……揉めてるけど、どっちもどっちだよネ」

「……なんで女子はブルーしかないのにやるんだろうな?」

「……得点とか関係ないですしね……」

「「「……」」」

「……怖いね……」

「……怖ぇな……」

「……怖いっスね……」

因みに、やっぱり明日香さん、ジュンコさん、浜口さんの所の騎馬が最後まで残っていた。……そして、四人一組なので、数合わせでそのグループになったのであろう、疲れきって今にも泣きだしそうな一人の女子、君に幸あれ。



アカデミアの1学期は10月の為、1学期の次に冬休みが来る。

その冬休みもあっという間に過ぎてしまった。

冬休みは、オカルト研究会がウィジャ盤で半復活させてしまったサイコ・ショッカーの精霊の件以外はこれといった出来事はなかった。

……と言うかウィジャ盤で呼び出すなら普通『ダーク・ネクロフィア』じゃないのかな?……来られたら堪ったもんじゃないけど。下手したら闇バクラとか出てきそうだし……

まぁ、ここは下手に手を出して誰かが生贄になってサイコ・ショッカーが復活したりしたら堪ったもんじゃないので余計な手出しはせず、原作の流れに任せた。

そして、ここまで来れば誰でもわかると思うが、今日は体育祭である。

原作では描写がなかったので、もしかしたらないのかと思いきや、普通にあった。

基本的に3つの寮対抗であり、競技は学年ごとに別れて行われる。

……因みにここまで様々な珍プレーがあった。

隼人君が障害物競争の網に引っ掛かって出られなくなり、救出されたり……

徒競走の時、三沢君が選手紹介の際、呼び忘れられたり……

棒倒しの時、翔君の眼鏡が割れたり……

これまた棒倒しの時、棒にしがみついた隼人君がコアラにしか見えなかったり……

ハードル走の時、翔君がハードルを全部倒してしまったり……

……なんか殆ど知ってる人のばかりだな……

そして今、最後の1つ前の競技である、壮絶な女子騎馬戦が終了した。

得点は、図ったかのように3つの寮とも全くの同点である。

そんな最高潮のボルテージの中、最後の種目、寮対抗の学年別リレーへと突入した。

まずは我ら1年生から、ここで勝って、勢いをつけたいところだ。

ワイト達の応援にも力が入る。

……時代遅れな学ランに鉢巻き、サングラスをかけて『ドンドン、ドンドンドン、ドンドン、ドンドンドン』って……それはお笑い芸人のオ〇カミ少年ね、学〇へ行こう!とかに出てた……

そして僕達は配置に付く前に、円陣を組んだ。

「和希!アンカー頼むぜ?」

「十代君も!トップランナーは任せた!」

「よっしゃー!皆気合い入れていくぞ!」

「僕達でいい流れを作るよ!」

『おー!!!!』

「よーし!じゃー例のやついくよ!」

「ほ、本当にやるっスか?アレ」

「今更苦情は受け付けないよ!よし、いくよ!」

……ま、円陣で掛け声といえばこれだよね。

僕は大きく息を吸い、叫んだ。

「ぶっ殺す!!」

『YEAHー!!!』



「……どこかのアメフト漫画か?」

「ははは」

配置につくと、ラーイエロー1年生チームのアンカーである三沢君にツッコまれた。

「悪いが、また勝たせて貰うぞ」

「ふふふ、こればっかりは簡単には負けられないよ」

僕達で流れを悪くする訳にはいかないからね。

『さー、3チーム同点で迎えた最後の種目、寮対抗学年別リレー、まず初戦を征するのはどの寮なのかニャ?実況は私、大徳寺がお送りしてまいりますニャ』

……する必要があるのかな?というか珍しくノリノリですね先生。オベリスクブルーを贔屓しまくりそうなクロノス教諭よりはよっぽどマシだけど……

『……と、言ってる合間にも準備が整ったようですニャ』

早!もっと何か言いましょうよ解説者!

スタート位置を見ると、十代君が僕の方を見てニカッとサムズ・アップをしてきた。

……うん、頼んだ、結構君にかかってる。

『いちについて……よーい……』

パーン!

始まった。

十代君は、期待に応え、見事1位で第2走者の隼人君にまわしてくれた。

「隼人!」

「おう!」

……さて隼人君、うまくやってくれるかな……

……

よし、隼人君それでOK!

言っては悪いが、正直な所、隼人君の足は遅い。……まぁ、あの体型だしね。

そこで、隼人君に少しコースの外側を走らせるようにしたのだ。

このトラックは1周400m、よって第2走者の隼人君が走るのは長いカーブである。

こういったオープンコースのリレーでは普通、インコース側から無理矢理抜くことは反則になる。

だから、横幅のある隼人君に人一人がギリギリ入れないぐらいにインコースを空けて走って貰ったのだ。

これにより、後ろの走者は更に大外から抜かなければならないのだ。

……流石に抜かれるのを防ぐまでには至らなかったが、それでも後ろの走者が、抜くのに若干手こずってくれたようだ。

因みに、かなり足の速めな十代君をトップにしたのも、確実に1位で隼人君にバトンを渡す為である。

……その事もあってか、中盤以降、我らオシリスレッド1年生チームは1位であった。

しかし、2位のラーイエローが後にピッタリと付いて来ていた。

……このチーム、いやにバトンの受け渡しがスムーズだ。

おそらく、三沢君が理想的なバトンパスの練習をさせていたのだろう。……陸上の大会とかに出てもおかしくない程うまい。

……確かにリレーにおいてバトンパスはかなり重要になってくる。これだけ人数が多ければ尚更だ。

単純に計算しても、バトンパスで1秒違う場合、第12走までには12秒、つまり、男子一人が100m走る分ぐらいまで違ってくる。

……因みに、その違いが顕著に出たのがオベリスクブルーだった。

この寮、纏まりがなさそうだからなぁ。何気に運動も出来たらしい万丈目君がいなくなった穴も大きいらしく、断トツでビリであった。

……まぁ、僕らもバトンパスは練習したので、イエローには劣るがバトンの受け渡しは結構しっかりしていた。

……と、そろそろ出番かな?

……おそらく、僕の方が三沢君より少し速い。パワー系統の種目では敵わないがスピード系統ならばやや僕の方に分がある。

このまま来てくれれば……

『おーっとオシリスレッドの丸藤翔選手、ここで痛恨のバトンミスだニャ』

「って、ちょ!?」

……やっちゃったよ……

緊張のせいか、数人前の走者の翔君がバトンを取り落としてしまった。

……あんなに練習したのに……

当然だが結果、ラーイエローに抜かれてしまった。

「……勝負あったな」

「?」

「俺らのチームは後半追い上げ型だからな、これからお前らのチームが追い付くことは100%ない」

「……」

確かに、差がじわじわと広がっている。

「惜しかったな。計算では勝てる確率は五分五分だったんだがな」

「……」

……しょうがない。

……本気の本気を出しますか……

『おーっとオシリスレッドチームアンカーの朝倉選手、なんと靴を脱いで裸足になったニャ』

「裸足だと?」

「ふふふ、三沢君、これがどういう意味だかわかる?」

「?」

「ボクサーがグローブを外したのと同じデスヨ」

「……お前はどこぞの水上を走る中国拳法家か?」

「ふふふ」

いやー、足が軽い軽い。

元陸上部ではあるが、僕は実は裸足が1番速かったりする。

……勿論、陸上の大会を裸足で出場出来る訳もなく、こういった非公式オンリーだが……

……と、前の走者が迫って来た。

1位と2位の差、約8m程。

アンカーは200mなのがよかった。多分100mじゃこの差は無理だ。

そして、三沢君が走りだした0.5秒後……

「衝撃の……」

パシッ!

「ファーストブリットォ!!」

僕は追撃を開始した。

……くっ、流石に三沢君も速い……

じりじり追い付いてはいるが、ゴールまでに追いつけるかは正直微妙だ。

……残り100m……

……50……

……25……

……並んだところで、胸に軽い感触、どうやらゴールテープを切ったようだ。

……ど、どっちが勝った?

……あれ?結果が放送されない?

「スッゲェ!速かったぜ和希!」

「お疲れ、和希君」

「なんだなぁ」

……と、三人が来た。

「翔く〜ん?」

「ご、ごめんっス……」

「……で、どっちが勝ってた?」

「うーん……」

「見た感じじゃ……わからなかったなぁ……」

「それだけ微妙だったんだなぁ」

『えー、只今審議が終わりましたニャ』

……と、大徳寺先生の放送が入った。……というか審議?

『えー、見た感じではどっちが勝ったかハッキリしなかったので、写真判定による判定になりましたニャ』

高校の体育祭で!?

『その結果……』

……その結果?

……誰かがゴクリと生唾を飲み込んだ。

『なんと、全くの同着でしたニャ』

「「「「えぇ〜!!?」」」」

マジですか!?

「……でも、こういう場合ってどうするんでしょうねアニキ?」

「……どうするんだろうな?」

「……」

……なんか猛烈に嫌な予感が……

『えー、なので、本校に相応しく、デュエルで勝敗を決定してもらうニャ』

「……やっぱり……」

……なんでもかんでもデュエルで解決しようとするのやめましょうよ。と言うかもうリレー関係ないじゃないですか……

『では、両チームアンカーの三沢大地選手、朝倉和希選手、前に出て下さいニャ』

「ちょ!?」

しかも僕!?

……もう疲れたよ。……十代君じゃ駄目なのかな?

「かー、和希!羨ましいぜ!三沢とデュエル出来るなんてよ!」

「は、ははははは……」

「か、和希君、大丈夫?笑い声が渇いてるっスよ?」

「あはははは、どの口が言うかな?どの口が言うのかなー?」

「いだだだだ……!」

君が落としたりしなければ!(泣



「……走った直後で疲れてるでしょうに……」

「ふん、哀れな奴」

「あら、ジュンコさん、彼が心配でして?」

「ちょっ!?だからどうしてそんな風に……!」

「ふふふ、彼が倒れたら、また医務室まで連れてってあげたら?」

「だからなんでアタシが……!」

「だって、あなた医務委員じゃない」

「あー!アタシのバカバカバカバカ!どうして医務委員になんてなったのよ!」



トラックのど真ん中、僕と三沢君は相対した。

このデュエルに勝った方が優勝に大きく近づく。皆の注目も集まる。

……なんと言うか、物凄い重圧を感じる。

背景に擬音が付くとしたら……

『プレッ プレッ プレッ プレッ プレッ プレッシャァーッ』

……みたいな感じだろうか?

……あー、ワイト達、ライフルの弾を飛ばして三沢君の頭狙うなら、この距離だとスライダー気味に浮上するから1センチ下を狙うんだよー?

「ふ、丁度よかった」

「?」

「昨日、ちょうど対ワイト用のデッキが完成した所だったんだ」

……体育祭前日に何をしてるのさ……

……と言うか、対十代君用の融合封じデッキに比べて随分完成が早くない?

……あれかな?僕のデッキ攻略はそんなに簡単だと?

……オーケィ、プレッシャー気にならなくなった。ワイト達!あの影薄いのをぶちのめすよ!

「……なんか殺気立ってないか?」

「フフフ、キノセイデスヨ、フフフ……」

ふふふ、某北斗4兄弟の3男が4男にやられたぐらいにフルボッコにしてあげるよ……!



「……なんか久々に黒くなってるっスね和希君」

「どうしたんだろうな?あいつらも震えてるし……」

「……疲れてて気が立ってるんじゃないのかぁ?……というか『あいつら』って誰なんだなぁ?」



「「デュエル!!」」 ※2009年9月1日時の禁止・制限カードリスト適用

「僕のターン!ドロー!『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果によりデッキと手札から、闇属性の『ワイト夫人』を1枚ずつ墓地に送り、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「やはりそう来たか!その手は予測済みだ!俺のターン!ドロー!俺は魔法カード、『天使の施し』を発動!デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚墓地に送る。そして手札から永続魔法、『次元の裂け目』を発動!このカードがフィールド上にある限り、墓地へ送られるモンスターは墓地へは行かずゲームから除外される!」

……やはりそういうデッキか……

「そして手札からフィールド魔法、『フュージョン・ゲート』を発動!このカードがフィールド上に存在する限り、『融合』魔法カードを使用せずに融合召喚をする事が出来る!その際の融合素材モンスターは墓地へは行かず、ゲームから除外される!俺は手札の『闇魔界の戦士 ダークソード』と『漆黒の闘龍』をゲームから除外し、『闇魔界の竜騎士 ダークソード』(攻撃力2200)を融合召喚!『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)に攻撃!」

闘龍に跨った『ダークソード』が、『ダーク・グレファー』に肉迫し、すれ違いざま、真っ二つに切り伏せた。 自残ライフ3500

「『闇魔界の竜騎士 ダークソード』の特殊効果を発動!相手に戦闘ダメージを与える度に相手の墓地から3枚までのモンスターカードをゲームから除外する!今墓地に送ったワイト夫人を2枚ともゲームから除外し、更に永続魔法『次元の裂け目』の効果により、今破壊した『ダーク・グレファー』も除外させて貰おう!」

……やはり、三沢君はカード除外系のデッキを組んだようだ。

「お前の切り札、『ワイトキング』は墓地に『ワイト』、『ワイトキング』があればある程強くなる。しかしそれを除外してしまえば全くの無力となる!更に俺は魔法カード、『封印の黄金櫃』を発動!自分のデッキからカードを1枚除外し、発動後2回目のスタンバイフェイズにそのカードを手札に加える!俺が選ぶカードは、『ネクロフェイス』!」

……出た、このコンボ。

「『ネクロフェイス』はゲームから除外された時、互いのデッキのカードを上から5枚ずつ、ゲームから除外する!」

「……」

僕の除外されたカードは……『ワイトキング』、『馬頭鬼』、『光学迷彩アーマー』、『ワイト』、『ピラミッド・タートル』。

一方三沢君は……『霊滅術師カイクウ』、『サイクロン』、『魂吸収』、『闇の誘惑』、そして……

「……よし!更にこの効果で、もう1枚、『ネクロフェイス』が除外された。これにより、更に互いのデッキの上から5枚をゲームから除外する!」

……またよく来るよなー。準制%



[6474] 第十一話 僕の夏休み
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:22
2学期の後、夏休みに入り、半分程が経過した。

デュエルアカデミアには春休みというものがなく、(その代り、3学期の後に秋休みがある)2学期が冬休みの後、5月まで続き、その後、6月と7月は夏休みになる。

……なんで原作には冬休みの描写があったのに夏休みの描写がなかったのか?

知っている人は知っていると思うが、こういった長期休暇になると、アカデミアの島から諸々の家に帰る為の定期的なフェリーが出ている。

短い期間の冬休みならともかく、長い夏休みともなると、大低の生徒は帰ってしまい、残る生徒は稀である。

……それは十代君他、主要なメンバーも例外ではないようだ。

……つまり、描写がなかったのはそれぞれの家に帰ってしまっていて、特に大きな出来事がなかったからのようだ。

……ま、何が言いたいかと言うと……

「……暇だ……」

僕一人だけになってしまった寮の部屋で、僕はそうぼやいた。

十代君、翔君、はては今年に限って隼人君まで実家に帰ってしまった。

……島を出たくても勿論僕には実家なんてないし……

フェリーは大体半月に1回程度往復する程度なので日帰りに遊びにも行けない。

……そんな何日も彼らの家に泊まることなんて迷惑かけられないし……

……つまりどうしようもないのである。

……話相手といえばワイト達と大徳寺先生くらいだし……

……こんなに新学期が待ち遠しい夏休みは初めてだ。

「……」

……それにしてもやる事がない。

ゲームやマンガも、流石に飽きてしまった。

……因みにその分多めに夏休みの宿題を進める、なんてのは勿論却下、この暇を退屈なことで埋めるなんて、それこそ鬱に成り兼ねない。

……ワイト達も、流石に騒げるテンションではないらしく、最近はデッキのカードに引きこもっている。

……しかたない、久しぶりに陸上部の時を思い出してランニングでもしようか。……一人で走るってのもかなりさびしいけど……

……と、部屋を出ようとし……

あれ?ドアが勝手に開いて……

「いだ!?」

……顔面強打。

「おっとこれは失礼……」

「……先生、ノックぐらいしましょーよ。」

「ご、ごめんなさいですニャ、つい帰った生徒の部屋のチェックの時のノリだったニャ……」

……おでこ痛いです……

「……何か用ですか?」

……ま、この際何か雑用を任されるのもいいか。

「あ、そうそう、十代君からお電話ですニャ。」

「十代君から?」

……何だろう?



大徳寺先生の部屋に行き、保留状態だった電話にでる。

「もしもし?」

「おう和希、久しぶりだな。元気か?」

「……暇に殺されそうだよ……」

……もうライフポイントは0よー?

因みに十代君の御両親は宇宙開発関係の仕事をしており、夏休みぐらいしか家に寄り付かないそうだ。

「はは、ソイツはちょうどよかったぜ。」

「?」

「今度皆で隼人ん家に宿題合宿しに行くんだよ、行かねぇか?」

「隼人君ん家に?」

……いや、そりゃ行きたいけどさ……

「……でも、それじゃフェリーが……」

……数日泊まったところでフェリーが来るのは半月に1回、残りの日を何処で過ごせと?

因みに十代君達には『ちょっと事情があって家に帰れない』と半ば嘘で半ば本当の事を言ってある為、その事は知っている筈である。

「ははは、大丈夫だって。」

「……何が?」

「泊まんの半月だから。」

「は、半月ぃ!?」

いいの!?そんなに泊まっちゃって。

「……ご迷惑じゃない?」

「だからさ、俺達は代わりに隼人ん家の造り酒屋の仕事を手伝うんだよ。」

「あー。」

成る程、そういうことね。

「どうすんだ?」

「いやそんなの……」

……決まってるでしょ?



数日後、僕はフェリーに乗り、童美野町に向かった。

待ち合わせの空港には、早くも十代君と翔君の姿があった。

……会った瞬間にこれまでの暇さ加減について長々と愚痴ったのは……ま、しょうがなかったということで……マジで辛かったんだもの。……ワイト達もハネクリボーに愚痴ってるし……

そして出発を促すと、十代君曰く、まだ行くメンバーがいるらしい……まだいるんだ。

……すると……

「お待たせ。」

「明日香さん!?」

……これには正直驚いた。

「明日香さんも行くんですか?」

「ええ、十代に誘われてね、丁度暇だったし、お酒造りっていうのもなんだか面白そうだしね?」

「ふーん……ジュンコさんや浜口さんは?」

「ももえはちょっと用事があって……ジュンコは……」

「?」

……なんで僕を見る?

「最初は来るつもりだったみたいだったんだけど……あなたが来ると知ってやっぱり来ないって……」

「……なんでさ……」

……僕の事そんなに嫌いか!?

「……ジュンコが来なくて残念?」

「え?あー、いや、男子率高いし、あの二人がいなくて明日香さん大丈夫かなって……」

……というかなぜにジュンコさん限定?

「そ、そう。ありがとう……これはあの子も苦労しそうだわ……」

「?」

意味がわからない。

「……そういえば翔君、亮さんとか誘わなかったの?」

「何を言ってるの、お兄さんは今年卒業だよ?」

「あー……」

……成る程、プロテストに向けて勉強中……と。そりゃ来れるわけないか。

「よっしゃ、そろそろ行こうぜ。」

……と、これで全員なのか、十代君が出発を促した。

……その時、

「ちょっと待てぇ〜!」

「あ、三沢君。」

……猛スピードで駆け込んで来た。

「あ、ワリー三沢、すっかり忘れてたぜ。」

「はぁ、はぁ、さ、誘った本人が、はぁ、忘れるな!」

……いとあわれ。



その後、ピ○チュウジェット……ならぬ青眼ジェットに乗り、目的地に向かった……凄いな青眼の白龍の人気っぷりは、ロビーから見ていたちびっ子達大喜びですよ……あと十代君も。



……その後、駅から電車に乗り換え(やっぱり青眼のペイント、社長、どんだけですか?)、揺られる事数時間……



「よく来たんだなぁ。」

「やほー隼人君、久しぶり〜」

「おーい隼人!」

電車を降りると、迎えの改札には隼人君の姿があった。

……それにしても結構な田舎だ……褒め言葉で。空気が美味しい。

「……というか大丈夫なの?こんなに大人数で。」

「心配ないんだなぁ。ウチには薩摩次元流の道場もあるから、そこで寝たりすればいいんだなぁ。」

「……明日香さんは?」

「私の部屋はまた別に用意してくれるみたい。」

「昔俺が使ってた部屋、もう使ってないからなぁ、俺の私物も移動させたし……」

「ほほぅ?」

……お、いい事を聞いた。ワイト達も目をキュピーンと光らせている。おそらく僕も同様だろう。

「じゃぁ着いたら早速、隼人君の私物チェックだね!」

「え、え〜!?」

「フフフ、何かいかがわしい物はあるかなぁ〜?」

「そ、そんな物はないんだなぁ……」

「じゃぁチェックしても大丈夫だよね?」

「そ、それは……」

「という訳で……」

「か、勘弁してくれぇ〜。」

「あはははは……」



「……和希君、テンション高いね。」

「結構長い間一人みたいだったからな。」

「……移動中のテンションも半端じゃなかったわね……」

「なぁ、いかがわしい物って……具体的になんなんだろうな?」

「「「……」」」



その後、バス(これまた青眼の以下略)に揺らされること数十分、辺りの景色がだんだん町から村に変わり始めたところで、ようやく隼人君ん家に着いたようだ。

「着いたんだなぁ。」

「「「「おぉ〜………」」」」

隼人君の家は……ま、当たり前だが酒屋であった。

軒先に造り酒屋の目印である、すっかり枯れた杉玉、『前田酒造』と書かれた歴史の感じる看板、そして暖簾、横開きの格子戸と、いかにも『老舗』といった感じのお店である。

……ただやはりと言うべきか……飾ってある信楽焼のタヌキの置物がどう見てもコアラにしか見えない……

因みに隣には『薩摩次元流 前田道場』と書かれた道場があった。

「これは……すごいね。」

「造り酒屋はその地域の名士的な存在らしいからな。」

「おぉ、流石我らがウィキペディア三沢君。」

「……人をネットのフリー百科事典あつかいするな。」

「まぁ、遠慮せずに入ってくれ。父ちゃん!母ちゃん!皆が来たんだなぁ!」

……と、格子戸を開き、御両親を呼ぶ隼人君。

「あらあらあら、わざわざ遠くからいらっしゃい。」

……と、隼人君に近いイントネーションで応えたのは……隼人君のお母さんらしき人であった。

……なんというか、隼人君と瓜二つである。

隼人君に似たポッチャリした体型、顔立ち、おっとりした雰囲気など、熊蔵さんの遺伝であろう鼻と髪型以外は隼人君そのままだった。隼人君が魔法カードの『治療の神 ディアン・ケト』に似ていると言っていたのもわかる気がする。……間違いなく隼人君はお母さん似だね。

「おー、よく来たでごわす。」

……と、隼人君のお父さん、熊蔵さんも顔を出した。

「これから半月間、宜しくお願いします。」

「「「「宜しくお願いします。」」」」

主催者である十代君が代表して挨拶し、それに皆で続いた。

「うむ、礼儀正しくて結構。では早速、皆の寝床がわりとなる道場に案内するでごわす。隼人。」

「わかったんだなぁ。明日香は母ちゃんに着いてってくれ。」

「わかったわ、宜しくお願いします。」

「はい、宜しくお願いします。あらあら、これはまた美人さんだこと……」

「い、いえそんな……」

「さ、行くんだなぁ。」

……と、再び外に出て、隣の道場へと入る。

板張りの道場には、既に人数分の布団が用意されていた。

「今日は移動で疲れただろうからって、仕事の手伝いは明日からでいいそうなんだなぁ。」

「お、いいのか?」

「ああ、何もないけど、ゆっくり寛いでくれ。」

……確かに疲れた。こんなに長時間乗り物に乗ったのも久しぶりだ。

……それにしても道場なんて何年ぶりかな?

実は僕も昔、剣道を少しかじっていたりする。

……小学校に入ってから5年間ぐらいやってたけど、中学を受験することにしたので、途中から受験勉強との両立が難しくなり、結局、型を習っただけであり、面や胴などの防具をつけることもなく、泣く泣くやめてしまったのだ。

……因みに、昇級の試験にもあまり行けなかったため、やってた年月の割に級も低く、師範からは『ベテラン』なんていう全く嬉しくないあだ名を付けられていたりする。

……ま、それでも無心に竹刀を振るのは楽しかった。

流石に剣道と剣術では多少の違いが見られたが、この道場は、そんな楽しい思い出を蘇らせてくれた。

……暫く休んでいると、隼人君が夕食に呼んでくれた。

夕食は賑やかだった。前田夫妻が隼人君の学校生活について質問すれば、(主に僕が)隼人君の学校生活の失敗談や恥ずかしい話を切り出し、十代君や翔君がそれに乗り、隼人君が慌ててそれを止める……とても楽しい夕食だった。

……そういえばウチの家族はどうしてるのかなと、少々ホームシックっぽい感覚を覚えた。



翌日、まず僕らは熊蔵さんに酒蔵の中を色々と教えて貰った。

TVや写真でしか見たことのないような酒蔵の中は、とても面白かった。

……しかし見たところ麹作りなど、熟練を要する仕事が多く、とても僕達が手伝えるようなものはなかった。

そのことを聞くと、熊蔵さんは笑って……

「おはんらの仕事は、また別にあるでごわす。」

……と、案内されたのは、さっき案内された酒蔵の裏手にあった、比較的新しい感じのするもう1つの酒蔵だった。

中には、さっきの酒蔵とはまた違う香が漂っていた。

「昨今の時勢では焼酎だけでは厳しいでごわすからな、最近は同じ蒸留酒であるビールなんかも造ってるでごわす」

……成る程、この香は麦の香という訳か。

「おはんらの仕事はここにあるでごわす」

……果たして、どんな仕事だろうか。



「よいしょぉ!」

「おりゃぁ!」

「ふん!」

「えっさ!えっさ!」

ビールに使う麦は、まず水に浸け発芽させ、それを乾燥、焙煎し、粉砕する。

三沢君曰く、これにより麦芽に貯蔵されたアミラーゼ等の酵素を利用するのだそうだ。

……因みにこの説明をした時、熊蔵さんから正式に働かないかとスカウトされていた。

……まぁ、そんな訳で、僕らは木臼や石臼で麦芽の粉砕をしていた。これがまたキツい。因みに明日香さんは乾燥された麦芽の焙煎にあたっていた。

一見、見ているだけなので楽そうに見えたが、何しろ焙煎している周りは暑い。夏の気温も重なってかなりの暑さの筈だ。

……という訳で、終る頃には皆クタクタになっていた。

「かー、きっちぃなー」

「ははは、もう腰痛いデスヨー?」

「僕も、腕が痛いっスよ」

「……機械化とかすればもっと効率的なんだがな」

「まぁ、それはしょうがないんじゃない?」

なんでも、『全手作業』が売りらしいしね。

「機械の調子を見るだけなんて、手伝いにならないしね」

「……確かにな」

「……」

「お〜い、明日香〜?大丈夫か〜?」

……明日香さん、軽い脱水症状になってないだろうか?

「……なんとかね。なんだかこれ、いいダイエットになりそう……」

「売り場の整理とかにまわして貰ったら?」

「……そうさせて貰おうかしら……」

「皆、お疲れなんだなぁ」

……と、隼人君が美味しそうなスイカを持ってきてくれた。

「お、サンキュー隼人」

「いただきま〜す」

……うん、甘くて美味しい。

特に水分不足だった明日香さんは一際美味しそうに食べていた。

「……そういえば隼人君は何をしてたの?」

「俺は多少勝手がわかってるから、焼酎の方の手伝いに狩り出されてたんだなぁ」

「ふーん」

いや、それにしてもこんなに大変だったとは……

……以前、こっそり大徳寺先生に飲ませて貰ったのは確かに美味しかったが、これだけ手間隙をかけて造るんだから、そりゃ美味しいだろう。機械なんかで造るのより、造り手の気持ちが篭っている感じがする。

と、ワイト達を見ると……

……酔いどれタイガーや酔いどれエンジェルと一緒に酒盛りをしていた。

隼人君が熊蔵さんとのデュエルで彼らの声を聞いたように、熊蔵さんのあのカードにも精霊が宿っているようだ。熊蔵さんには見えないようだが……

……と、酔いどれエンジェルがワイトに酒を注いで、それをぐいっと……

ボムッ!!

……なんか爆発した。……飲んだワイトは勿論粉々。……もしかしてあの酒を注いだ銚子って、魔法カード『お銚子一本』の銚子だったの?

……なんか残りの連中大爆笑してるし。……君達気が合いそうね……



その後も、仕事といえば大体この作業だった。なんでも、この先の工程はアルコール分が発生するため、未成年には任せられないのだそうだ。

道場のある日には薩摩次元流剣術の稽古も体験させて貰った。

前述の通り、剣道をかじっていたので多少は勝手がわかる……と思いきや、やはり、競技的な剣道と実戦的な剣術では違いがあり、寧ろ慣れた剣道の動きが癖で出てしまったりして、結局終止ぎごちなかった。

運動神経のいい十代君、三沢君、明日香さんは飲み込みもよく、熊蔵さんを感嘆させた。

翔君はまぁ……眼鏡を割らなくてよかったね、って感じだろうか?

両方が休みの日には、熊蔵さんも参加で皆でデュエルをした。

……なんと言うか、十代君の言う通り、『ちゃぶ台返し』って反則ギリギリのリセット技だよなぁ……

『ちゃぶ台返し』、原作オリジナルカードで、自分のフィールドのこのカード以外のカードを全て破壊し、その破壊した枚数分だけ、相手のフィールドのカードを選択し、破壊する永続魔法。

この効果を使用する時、通常召喚できないデメリットがあるが、重要なのはこのカードが永続魔法であり、好きな時に毎ターン使えるということ。

このカードと、『ちゃぶ台返し』で破壊されない効果を持つ『酔いどれエンジェル』、永続魔法の効果でフィールドから墓地に送られた時、自分のスタンバイフェイズ時に墓地から特殊召喚する『怨念のキラードール』(このカードもなぜか酔っ払っていた)、セットされたこのカードが破壊された時、相手に500ポイントのダメージを与える『お銚子一本』などとのコンボはなかなか手強かった。

そして、驚いたことに、隼人君のお母さんともデュエルをした。

隼人君いわく、『デュエルなら父ちゃんより強い』らしいのだが……

……本当に強かった。

隼人君のオーストラリアデッキに影響を与えたであろう『元祖・コアラデッキ』だったのだが……

リバースで相手の手札×400ポイントのダメージを与える『デス・コアラ』、それを中心に、フィールド上のカードを裏守備表示にする速攻魔法の『月の書』、お互いの墓地にあるカードを1枚守備表示でセットする魔法カード『浅すぎた墓穴』、フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にし、そのターンのエンドフェイズ時に相手フィールド上の裏側守備表示のモンスターを全て表側守備表示にし、その枚数分だけ相手のデッキからカードをドローさせる『皆既日蝕の書』などによる『デス・コアラ』の効果の使い回し、その他、毎ターンスタンバイフェイズにライフを100払い、攻撃力1500以上のモンスターの攻撃を禁止する『平和の使者』によるロック等。

……正直ライフ4000じゃ勝てる気がしないんですけど。



そして、あっという間に日にちが過ぎ、翌日帰る日となった。

一段と豪華な夕食を皆で囲った。

「寂しいんなぁ……」

「半月後には新学期だし、暫くの辛抱じゃない」

「と言うか、和希もあと半月大丈夫なのか?」

「ま、今回のでストレス発散出来たし、多分大丈夫だよ」

考えると結構憂鬱だけど……

「それでは、皆の今後の学業成就、並びにデュエルの向上を願って、乾杯でごわす!」

「「「「「乾杯!」」」」」

……と、熊蔵さんの顔が悪戯っぽく笑った気がしたが、気のせいだろうか?



……数十分後、

「うう、どうせオレなんて……デュエルしか能のないダメ人間なんだぁ……」

「わかるぞ十代!俺だって、数式なんて大嫌いだぁ!」

「あっはははは……」

……温かい団欒はカオスと化していた。因みに上から十代君、三沢君、明日香さんである。……かく言う僕も、なんとか意識は保っているものの、ふらふらである。

……どうやら熊蔵さんが悪戯で皆のコップに焼酎割りの飲み物を注いでいたようだ。……知られたら退学ものですよ?

……その熊蔵さんは隼人君のお母さんにくどくどと説教を受けている、結構凄い剣幕で。……凄いな、熊蔵さんが小さく見えるよ……そう言えば隼人君が「普段は優しいけど、本気で怒ったら父ちゃんも敵わない」ってお母さんとデュエルした時に言ってたっけ……

「あ〜さ〜く〜ら〜?」

「は、はい!?」

……なんか目が据わっている明日香さんが絡んできた。

ヤバい、頭の中で警笛が鳴り響いている。

……というかつい最近これに似たような体験をしたような……あー、あれだ、タイタン戦の闇のゲームで『ナニカ』に迫られた時のような……

「あなら、ジュンコのころどーおもってるのよ〜?」

「ど、どうって、何が?」

……というかなんでここで彼女の名前が?

「おとこならはっきりし〜な〜さ〜い〜!」

「だから何をデスカー!?」

勘弁してー!助けて、正義のHERO・十代マン!

「ぅぅ、ュベルゥ〜、ごめんよぉ〜」

……駄目だこりゃ、このままじゃ悲しみの余り、覇王に覚醒しちゃうんじゃないか?……というか今なんかヤバイ固有名詞出てなかった!?

……因みに翔君と隼人君は既にダウンしている。いいな君達は気楽に寝てて!

ワイト達は……やっぱり酔いどれ達と飲んでるし!ハネクリボーが飲んで目を回してるのを見て笑ってる。

「ちょっと!きいれるの!?」

あー、もう!誰かタスケテー!



……結局、その直後、明日香さんが眠ってしまった為、助かった。

それに前後して、十代君や三沢君も眠ってしまった。

……とりあえず、明日香さんを隼人君のお母さんに任せ、僕と熊蔵さんで皆を運んだ。

直後、流石に限界だったので、着替えもせずに眠ってしまった。

翌日、運よく二日酔いになったメンバーがいなかった為、前田一家の見送りの中、帰路についた。……誰かが二日酔いだったら、下手したら一人で帰る羽目になっていたな。……皆の回復を待ってたらフェリーを乗り越しちゃうし……

……ついでに、土産にと今回は皆が焼酎を頂いた。……まぁ、皆は御家族に、僕は……大徳寺先生やファラオにでいいか。



「そういえば、結局皆で宿題はできなかったわね」

「「「あ」」」

因みに明日香さんと三沢君は何気に一人でやっていたようだ。……ずるい……

……残りの夏休みは暇の余りに鬱になる心配はないようだ。……別方面で鬱になりそうだけど……



今日のワイト

和「今日は……原作オリジナルだったので知らない人も多いであろう、熊蔵さんの酔いどれカードシリーズですね」

3ワイト「「「カタカタ」」」

和「『酔いどれタイガー』、星4、地属性、獣戦士族、攻撃力1800守備力600、このカードが攻撃したリバースモンスターの効果を無効にする。なにげに『メタモルポッド』や『人喰い虫』など、低級リバースモンスター殺しとして優秀なカードです。『酔いどれエンジェル』、星4、地属性、天使族、攻撃力1800守備力400、『ちゃぶ台返し』の効果では破壊されない。こっちは完全に『ちゃぶ台返し』とのコンボ専用もカードですね」

3ワイト「「「カタカタ」」」

和「『ちゃぶ台返し』、永続魔法、自分のフィールドのこのカード以外のカードを全て破壊し、その破壊した枚数分だけ、相手のフィールドのカードを選択し、破壊する。因みにPSPのタッグフォース版のは更に『酔いどれ』と名のつくモンスターがいなければ発動できない、という制限がかかります。『お銚子一本』、魔法カード、セットされたこのカードが破壊された時、相手に500ポイントのダメージを与える」

ワイトキング「カタカタ!(父ちゃん)」

ワイト「カタタ!(飛○馬)」

ワイト夫人「カタタ……(○雄馬)」

和「はいそこ!ちゃぶ台返しにちなんで今やったらDVで確実に捕まるようなジャイアンツズスターな一家のモノマネしなくていいから!……ではまた次回お会いしましょう。さようならー」

3ワイト「「「カタカタ~」」」


あとがき

次のサイコ・ショッカー戦がいきなり冬休みに飛んでしまうので入れてみたオリジナルなんですが……いらんことしましたかね?

十代君の両親の職業や隼人君のお母さんの描写はなかった(と思う)のでこんな感じに……十代君はこの御両親の影響もあってネオスを考えたんじゃないのかなと……

……じつは酔っぱらった明日香さんを書きたかっただけという罠。

追伸、感想でもちょこっと書きましたが、オリカ……つまりオリジナルカードを使うことについての御意見が欲しいです。よろしくお願いします。




[6474] 幕間 前回あとがきであんな事書いたのに突発的に書いてしまった幕間
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/15 22:59
※注意、今回は完全にギャグ回です……へ?いつも通り?



3学期、早い物でもう入学してから早1年が過ぎようとしていた。

……と言うか、この短い3学期の間に対抗戦やら文化祭やらセブンスターズやら……色々と急がしそうだな……

「ボケッとしてるんじゃないわよ!」

「へ?」

ドッ!

「ひでぶ!?」

……眉間にテニスボールが直撃し、そのまま吹き飛ばされた。

「……大丈夫か?」

「……めがっさ痛い」

どこぞの王子様ばりの顔面へのドライブボレーでしたよ?

「……ジュンコさん、下手したら失明物デスヨ?」

「アンタがボケッとしてるのが悪いんでしょ!?」

……そうなんだけどさ……

今は体育の時間、テニスの授業中。

原作通り、十代君と翔君でダフルスを組んでいたのだが、翔君が『さ〇まのからくりTV』で中〇玉緒さんがやってたみたいに正面にラケットを構えて来た球を打つ、というか当てる感じのテニスしかできなかった。

流石にこれだと実質2対1同然なので、僕が翔君と交代することになった。正直、僕もあんまりテニス出来ないんだけど、元の世界で友達から基本を教わったぐらいだし、あと漫画知識、主に王子様の。

おまけに相手がジュンコさん、浜口さんの女子のペアということで、こっちはシングルスのコート内にしか打てない変則ルールだ。これが初心者、でもないけど初級者な僕には相当キツい。……二人共、普通に僕より上手いのに……

……僕が相手って事でジュンコさんは例のごとく殺気立ってるし。……あの人、僕が相手の時だけスペック以上の能力を発揮してる気がするんだけど……

そのジュンコさんは、からかわられたのか、浜口さんに突っ掛かっていた。

……浜口さんが「愛情の裏返し」とか言ってた気がしたけど。……さっきのドライブボレーに愛情を1nannoも感じなかったし、何かの聞き間違いだろう。うん。

因みにワイト達は……さっきから『猫駆除だぜ〜』とかネタをやってたりする。そんなニコ動ネタ誰もわかんないって。

……まぁ、なんだかんだ言ってはいるが、現在のスコアは5−4、因みに1セットマッチ、つまり6ゲーム先取である。

と、言うのも……

「一・球・入・魂っ!っと」

ドッ!

「っ!」

ガッ、パサッ

「ネット。40−15(フォーティ−フィフティーン)。マッチポイント、遊城・朝倉ペア」

……とまぁ、何故か僕はサーブだけは人並に出来たりするからだ。……物凄い我流だけど。教えてもらった友達からも「サーブ『だけ』は上手いな」と、あまり嬉しくないお墨付きである。

……まぁ、サービスゲームはそれでキープし、あとは足使って拾いまくって、相手がミスしたら十代君が決める、といった感じだ。

……おかげでもうクタクタデスヨ……

「……ったく、テニスがデュエルと何の関係があるっていうんだよ……」

「タッグデュエルのコンビネーションを高めるため、とか?」

「……だったら普通にタッグデュエルの実習をすりゃいいじゃねぇかよ?」

……確かに。

「鮎川先生も、本当はバレーボールがやりたかったそうですわ」

「……どっちもあまり関係ねーじゃねーか」

「寧ろテニスのダブルス以上にデュエルと関連ないね。……まぁ、いいんじゃない?佐藤先生の授業よりはよっぽど楽しいし」

「……それもそうだな」

佐藤先生、自分の理論を延々と喋るだけだし。……原作3期で十代君が授業を崩壊させたとか言ってたけど、正直あっちの教え方にも問題があると思う。

「いいからとっとと打ちなさいよ!」

と、一人会話に参加してなかったジュンコさんが催促してきた。

「負けそうだからってそんなにカリカリしなくても……」

「うるさい!」

……もうちょっと気楽にやりましょうヨ……

「……和希君も結構本気だったじゃない……」

「僕は基本的に遊びでも全力を尽くすの。と言うか外野はシャラップ!」

……というか手を抜いたら、なんかジュンコさん怒りそうだし。……本気出しても結局怒られそうだけど。……どうしろと?

「いいからさっさと打ちなさい!」

「はいはいっと、それじゃ……ウォーターフォール!っと」

スパンッ!

お?いい手応え。そう言えば、『人間、疲れていると1番自然な動きをする』とかなんとかアバ〇先生も言ってたっけ。

そんな訳で今日1番のサーブが出た。

「くっ!?」

ポンッ!

ジュンコさんはまたもやそれを捕らえきれず、打球は高く跳ね上がった。

「よし!チャンスボール!いくぜ和希!」

「オッケー!」

「……また何かやる気っスか……」

僕は仰向けになり、足の裏を上に向けて折りたたみ、そこに十代君が乗っかった。

「いくぞぉ!俺達の……」

「新空中技ぁ!」

旧はないけどね!

十代君がジャンプするのと同時に僕も足を伸ばし、二人分の脚力で十代君が高く飛び上がり、打ち下ろす!

……これぞ、新旧ジャンプの代表的なスポーツ漫画の技が合体した奇跡の大技!

「ス○イラブ……」

「ダ○クスマッシュ!」

「いやいやいやいや!物理的に有り得ないっスから!」

そこを気にしちゃいけない、基本的にこのSS、デュエル以外は御都合主義!……というかぶっちゃけデュエルも御都合主義!

「なんかメタな発言も出てるし!?しかもぶっちゃけた!?」

あーもう、じゃ、単純に僕の足を足場代わりにしただけ、ってことで宜しく!

「なんか訂正も投げやりだー!?」

因みに、サッカーのルール上、スカイ○ブはレッドカード物の反則です!

「あんまり関係のない豆知識も飛び出した!?というかこの間何秒っスか!?」

とにかく!そんな感じで十代君が打ち下ろしたボールは、真っ直ぐ相手コートに向かっていった。

原作だと、ここで十代君が打ち損じたボールが明日香さんの方に飛んじゃって、テニス部の綾小路先輩が打ち返したそのボールががクロノス教諭の顔面に当たって、罰として何故か十代君がテニス部に体験入部することになり、その後、明日香さんのフィアンセの座を賭けて先輩が十代君にデュエルを申し込む羽目になるんだよなぁ。……十代君はフィアンセの意味も知らずに……

……この分ならそれが回避出来るかも?

ガッ!

……あれ?

ところが、ジュンコさんと浜口さんのど真ん中を通ったボールは、地面に着いた瞬間、何故かあらぬ方向に跳ねた。

見ると、着球したところには小石があった。そのせいでイレギュラーしたらしい。

そのボールは、やっぱり明日香さんの方へ向かっていった。

「やべっ!避けろ明日香!」

「?」

視界の隅には、これに反応して勢いよく飛び出してきた綾小路先輩が。あー、やっぱり面倒臭いことに……

ククッ……

……あるぇ?

ドッ!

「ぐほっ!?」

ドサッ……

……ボールは、イレギュラーバウンドのせいで回転がかかっていたのか変化し、勢いよく飛び出ていた綾小路先輩の顔面に直撃した。

……まぁ、あんなエ○ー・ケイみたいに跳びながら打ちに行ったら、避けられないよね……

……うん、今のをあえて一言で表すなら……

……

…………

……………………

……駄目だ、『カッコ悪い』しか思い付かない。

そのカッコ悪かった先輩は、さっきの僕みたいにボールの勢いに吹っ飛ばされ、伸びている。

「あ、あの……」

……すると、明日香さんが声をかけた瞬間、復活した。顔を赤くして。……よかったですね先輩、明日香さんに声かけてもらって。

あっちはあっちで会話が弾んでいるようだが、まぁ、クロノス教諭にボール当たんなかったし、これで面倒なことには……

「アンタねぇ……!」

……なりそうですね、ハイ。

疲れてはいるが、この後に起こることに備えて屈伸を始めた。いっちにーさんしー……さて、そろそろか。

「明日香さんに……なんてことするのよ!」

「今のどう見ても不可抗力でしょー!?」

……また不毛な鬼ごっこが始まった。……いや不毛でもないか、捕まったら喰われそうだし……

「うるさい!今日という今日は許さないんだから!」

「そんな理不尽なー!?」

「……また始まりましたっスね」

「……また置いてきぼりだな、俺達」

キーンコーンカーンコーン

「あ、チャイム……」

「授業終わっちまったな……」

「……いいんスか?あの先輩に謝りに行かなくて……」

「……いいんじゃねぇか?なんか元気そうだし……」

「……そういう問題じゃない気が……」

「「……」」

「帰るか」

「そうしましょうか」



数日後……

「うわーん!デュエルなんか大嫌いだぁ!」

と夕日に向かって叫ぶ先輩がいたそうな。

……ありゃナチュラルにフラれたな。多分、「私はデュエルに恋してます」とか言われて。……こっちの方がダメージでかそうだなぁ。

……流石に同情の念が湧いてきた。……哀れだ。



今日のワイト

和「今日はカットされた……もとい不慮の事故でデュエルする機会を逃してしまった綾小路先輩のアニメオリジナルカードを御紹介!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「まずは『サービスエース』、通常魔法、自分の手札からこのカード以外のカードを1枚選択し、相手にそのカードの種類(魔法、罠、モンスター)を当てさせ、当たった場合はそのカードを破壊し、ハズレの場合はそのカードをゲームから除外し、相手に1500ポイントのダメージを与える。……ライフ4000だとかなりチート気味なカードですね。次は『スマッシュエース』、通常魔法、デッキの一番上のカードをめくり、そのカードがモンスターカードだった場合、相手に1000ポイントのダメージを与える。そしてめくったカードは墓地に送る。……うーん、ぎりぎりでワイトデッキに使えるかも?『レシーブエース』、通常罠、相手モンスター1体の直接攻撃を無効にし、相手に1500ポイントのダメージを与える。その後、自分はデッキの上からカードを3枚墓地に送る。……これは普通に使えますね、今度入れてみる?」

3ワイト「「「……(フルフルフル)」」」

和「……えー、『猫駆除ネタに飽きたので入れるな』だそうです。次、『デュース』、永続魔法、自分と相手のライフポイントが1000ポイントのときに発動可能。お互いのプレイヤーはバトルフェイズに1体のモンスターでしか攻撃できず、以後、ライフポイントに関係なく相手に2回連続でダメージを与えたプレイヤーが勝者となる。この効果はターンを挟んでも有効とし、相手にダメージを与えられた時点で連続ポイントは無効となる。このカードが場にある限り、ライフポイントが0になっても負けとはならない。……ややこしいなぁ、というかお互いにライフが1000の時って発動条件が難しすぎない?『隼の騎士』や『不意打ち又佐』の2回攻撃モンスターや『バーサーク・デット・ドラゴン』や『E・HERO ワイルドジャギーマン』等、相手モンスター全てに攻撃ができるモンスターがあれば……というかまず発動が出来ないか……」

3ワイト「「「カタカタ(コクコク)」」」

和「えー次、『伝説のビッグサーバー』、星3、地属性、戦士族、攻撃力300守備力不明、このカードは相手プレイヤーを直接攻撃することができ、このカードが相手にダメージを与えたとき、自分のデッキから魔法カード『サービスエース』1枚を手札に加えることができる。その後、相手はデッキからカードを1枚ドローする。……相手をロックしながらこのカードと『サービスエース』でじわじわと……考えただけでいやらしーコンボですねこれは。最後、『デカラケ』、装備魔法、このカードを装備したモンスターが相手モンスターの攻撃対象になった場合、1度だけ攻撃を無効にすることができる。……ビミョーですね、名前も『デカいラケット』の略だし、見た目もモンスターがデカいラケット背負うだけでカッコ悪いし……」

3ワイト「「「カタカタ(コクコク)」」」

和「では今日はこの辺で、また次回も、良かったら見てね。見て下さい。見やがれーっ!! ま、いっか…。じゃあね~」

3ワイト「「「カタタ カタタ カタカタカタカタカタタ♪(キ○ロちゃん キ○ロちゃん キ○ロキ○ロキ○ロキ○ロキ○ロちゃん)」」」



後書き

……本当に申し訳ありません、前回の後書きであんな事をかいていたのに……レイ君への期待の声が多かっただけに本当に申し訳ありません。

……しかも、もしかしたら次に大山君の話で幕間2連発で書くかも……

その次には……その次には絶対にレイ君書きますから……



[6474] 幕間 食べれないものは食べれないんだからしょうがない
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/15 23:00
キーンコーンカーンコーン

「……では、今日の授業を終了しますニャ」

……ふぃ〜、終わった〜。

昼食前の、大徳寺先生の錬金術の授業が終わった。

因みに、この授業は僕がまともに受けている数少ない授業の1つである。授業内容もなかなか面白い上に、大徳寺先生の教え方も面白いのだ。……先生よく実験をミスるし、絶対日常生活で使わなさそうな上に、イマイチデュエルとの関連性が見当たんないんだけどね。

……さて、昼食にしますか……

基本的に、僕は昼食はレッド寮の食堂に戻って食べている。まぁ、所持金が限られているので、不測の事態に備えてちょっとは節約しとかないとね。

……普通にカードは買っているんだけどね。

十代君達も、その事は知っているので、あまり無理には誘ってこない。

……まぁ、もっとも……

「ほら翔!早くしろよ!」

「あ、待ってよアニキ!じゃ和希君、また後でね!」

「?」

……流石に、ここまで慌ただしいと気になる訳で。

何かあったのか気になるし、今日は気分を変えて購買にしようかな。

僕は慌てて教室を出た二人の後を、やや早足気味に追いかけた。



「ドロー!あむ……うえぇ、甘栗パンだ……」

「これで10回連続ハズれちゃいましたね。どうしたんです?アニキ」

……成る程、ドローパンね。

ドローパン、中の具がわからないように包装された購買の名物パン。

この中に、デュエルアカデミアの鳥小屋にいる黄金の鶏が1日に1個産む黄金の卵を使った黄金の卵パンが1日1個ずつ混ざっており、皆それを狙っているのだ。

……というか逆に考えたら黄金の卵パンが引かれた時点で、もうその日は皆買わなくなっちゃうんじゃないのかなこれ?そうしたら大量に余っちゃうんじゃ……

……余った分はトメさんやセイコさんの賄いなのかな?

因みに僕はこれを買わない、何故なら……

「あれ?和希君?珍しいね」

「……いや、あれだけ慌ただしかったら気にもなるって。どしたの?」

「最近、卵パンがあたらなくてな」

「アニキ、最高で連続20回も当たってたのに、ここ10回はハズれっぱなしなんだよ」

ふーむ、つまりターザン君……いや大山君が卵パンを盗んでいる頃か。……ワイト達、『ムササビ飛び〜』とか懐かしのジャングルの王者のモノマネしなくていいから。

「十代まで外しちゃうとはね」

と、ここで現れたのは……

「明日香さん?」

そう、明日香さん、それもドローパンを両手に2つも持っている。

「明日香、お前も卵パン好きだったのか?」

「バ、バカ言わないでよ!私はただドローの練習を……」

顔を赤くして否定する明日香さん。……説得力が皆無デスヨー?

「へー?、どーだか?♪」

「ほ、本当よ!」

「はは、2つってことは、『強欲な壷』発動の時の練習ですか?」

余りの必死さ具合に、僕は苦笑しながら冗談混じりに聞いた。

「べ、別にいいでしょ!?そんなこと!」

ありゃりゃ、更に機嫌を損ねてしまったようだ。明日香さんは更に顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。

……別にそんな恥ずかしがる事じゃないと思うんだけどなぁ。女子も皆普通買ってるし……

……まぁ、それはそうと……

「う〜……」

……その後ろでドローパンと睨めっこしてるジュンコさんはどうしたんだろう?

十代君達がトメさんから事情を聞いてる間に、そっちの方に行ってみた。

「もしもーし?ジュンコさん?」

「うー……」

……反応無し。僕なんかはアウト・オブ・ガンチューっと……

「……どしたの?この人?」

傍らでずっと苦笑していた浜口さんに聞いてみた。

「どうやら、激辛カレーパンを引いてしまったようで……」

「……辛いの駄目なの?」

「ジュンコさん、激が付く程の甘党なんですの」

……成る程、それで進退きわまっていると。

「……まだ一口も食べてないみたいだけど?」

「先ず切れ目から中身を確認して、それからずっと睨めっこですわ」

……そんなに辛いのか?そしてそんなに辛いの駄目なのか?

……ま、ちょうどいいか。

「よっと」

「あ……」

僕はジュンコさんの手からパンを掠め取り、

「あむ……」

「あー!?」

大口開けてがぶりと1口。うん、辛旨。

「ちょっと!何よいきなり……!」

「はいこれ」

「え……」

そして、空いたその手にドローパン1個分の代金を乗せた。

「もう1回、頑張ってね?」

……卵パンはないだろうけど。

「和希ー!お前も今日から張り込みなー!?」

「拒否権無し!?て言うか説明ぐらいしてよ!?」

……知ってるけどね。

僕は十代君の所に戻った。



「……何よ、意味わかんないわよアイツ……」

「ふふふ、一口食べておけばよかったですわね?」

「ももえー!」

「きゃ〜♪」



その日の夜、僕達は購買の従業員室で張り込む事になった。

原作と同じで、一週間前から卵パンのみが盗まれているそうだ。

……と言うか大山君、普通に買いにくりゃいいじゃん。別に盗まなきゃいけない訳でもないでしょうに……

「へへへ、そりゃ!……よっしゃぁ!1抜け!」

「ふ〜、やっぱアニキの引きはすげーや、っと……やったぁ!2抜けた!」

……ま、まだ時間が早いので、今は皆でババ抜きに興じている訳で。因みに隼人君は観戦、明日香さんは本を片手に優雅に読書中。

「……しかし、なんで俺までここに居なきゃいけないのかなぁ?」

……隼人君が尤もな事を聞く。

「トメさんの為だ」

……50%はね、あとの半分は卵パンの為でしょうに……

「でもよ、隼人は呼んだけど、なんでお前らが居るんだ?」

「暇だから」

素っ気なく答える明日香さん。

「……卵パン泥棒が許せねぇんだよ」

「聞こえるよアニキ!」

「……そうなの?ジュンコさん?」

「……いいからさっさと引かせなさいよ!」

……ついでに何故かジュンコさんも居るという謎。

因みに浜口さんは「お馬さんに蹴られてしまいますわ〜♪」と来なかったそうだ。……馬?

「……それにしてもそんなに卵パンって美味しいの?」

普通の卵パンと違いがあるのだろうか?

「ああ、濃厚な黄身と、プルンプルンな白身のコラボレーションは堪んないぜ?」

「僕も、アニキのをわけて貰ったんだけど、あの卵パンを食べちゃったら普通の卵パンなんて食べられないよ」

ふーん、確かに美味しそうといえば美味しそうだなぁ……

「今度当たったら少し食べさせてくれない?」

「おう、その為にも犯人を捕まえなくっちゃな」

……正直そっちの方はかったるいんだけどなぁ……

「さっさと引かせなさいって言ってんでしょ!」

「……どうぞ」

只今僕の手札はジョーカーとスペードのエースの2枚。ジュンコさんの手札は1枚。

……僕は適当にシャッフルしてテーブルにカードを伏せた。

「……なんで見ないのよ」

「いや、見たら表情に出ちゃいそうだからね」

こうすればは完全に運任せである。

「……」

「いや、ここはそんな悩むような所じゃ……」

「黙りなさい」

「……はい」

散々悩んだ末、ジュンコさんは僕から見て右側のカードを選んだ。

僕の手札に残ったカードは……スペードのエース。

「っ!」

「……ドローパンといい、今のといい、くじ運ないねぇ……」

「大きなお世話よ!」

苦笑しながら言った僕に一喝しながら、乱暴に手札をシャッフルした。

「さっさと引きなさ……「はい、こっち〜」……え……」

僕はさっさと当たりと思しき方を引いてしまった。

「はい3抜けっと。ふふふ、目の前で、それもそんなに雑にシャッフルしたらバレバレですヨー?」

ジュンコさんが僕からジョーカーを引いた時点で、どっちがどのカードかわかっているしね。

「も、もう一回よ!」

「えー、次は7並べやらない?」

「あれだと和希君の独壇場になっちゃうじゃない」

まぁ、あーいういやらしさを競うゲームは得意だしね。

「じゃ神経衰弱?」

「それだとアニキの独壇場でしょ?」

十代君はカードの位置を記憶しないでも当ててくるからなぁ……

「ダウト」

「いつまで経っても終わらないだろ?あれ」

「ポーカーやブラック・ジャック……は賭けるものがないとつまらないか、じゃ、無難に大貧民?」

無難かどうかはわからないけど。

「……アタシ、ルールわかんないわよ」

うわー、そこは盲点だった。

「じゃジュンコさんは観戦で」

「却下」

「どっちにしろ三人じゃつまんないでしょ?」

……確かに。富豪と貧民がいないし。

「……今からルール覚える?」

「嫌よ、面倒臭い」

うん、教えるこっちも面倒臭い。……ってことは……

「……結局またババ抜き?」

「若しくはジジ抜きとか?」

大差無いし。UN○でも持ってくれば良かったなぁ……

(……なんでデュエルをしないのかしら……)(明日香)

「皆ご苦労様、夜食だよ」

と、トメさんが大量のおにぎりを持ってきたので一時中断。

「美味そう!」

「中の具は何なのかなぁ?」

「梅、おかか、シャケの3種類だよ。精をつけて頑張って。今夜は私も泊まるから」

「ありがとうトメさん」

「シャケはどれかなぁ?」

隼人君、よだれよだれ。

「そこの……」

「待った、ききおにぎりだ、オレもシャケが好きだぜ。順番で引こう」

「えー、皆でわければいいんだなぁ」

「でも面白そう」

「くだらなそう」

「じゃ、明日香さんはナシということで……」

「だ、誰も食べないとは言ってないでしょ!?」

「ははは……」

「本っ当、悪趣味な奴ね……」

「ふふ、果たしてくじ運の悪いジュンコさんは何を引くのか!?」

「余計なお世話よ!」

「ふふふ、十代ちゃんがそう言うと思って、中にあたりを1つ入れておいたよ」

「「「「「あたり?」」」」」

「そう、とっておきのやつを入れておいたから、楽しみにしてね」

……ふむ、何だろう?

「じゃ早速、オレのターン、ドロー!。あむ……ちぇ、シャケ召喚」

「本当アニキの引きは凄いなぁ」

「でもあたりじゃなかったな。うーん、やっぱりちょっと鈍ったか?」

「あむ……やったー、僕もシャケだ」

「あむ……俺はおかかなんだなぁ……」

……さて、注目のジュンコさんは……

「……梅……」

やっぱりハズしたようだ。甘党なだけに梅も苦手みたいだ。

「なんと言うか、期待を裏切らないね」

「うるさい!」

「まぐっ!?」

口封じに僕の口に違うおにぎりを突っ込んできた。

……これって僕が引いたことになるのかな?

……あれ、このおにぎり……

「……トメさん、とっておきって……」

「あら、もう出ちゃったかい?トメさん特製、自家製明太子のおにぎりだよ」

……やっぱり……パタリ……

「和希!?おい!しっかりしろ!」

「ちょ、ちょっとどうしたのよ急に!?」

「和希君、魚の卵系統はアレルギーなんスよ!」

「えー!?」

ふ……ふふふ、ピンポイントで当ててくるとは……ジュンコさんの引きの悪さ……恐る……べし……ガクッ……



「……知らない天井だ」

「……何よそれ」

「お約束」

翌日の昼休み、目が覚めた時には医務室のベットにいた。

なんでも、事件解決後、大山君が運んでくれたそうだ。……確かに彼、体格がいいしね。

……つまり解決までほったらかしかい。……しょうがないと言えばしょうがないけど……

「……にしても情けないわね、あれぐらいで」

「体質なんだからしょうがないでしょうに」

アレルギーなんて頑張りようがないし。

……因みに、僕がドローパンを買わない理由もこれである。明太子パンや子持ちのメザシパンなんかは食べれないからだ。

「と言うか、なんで居るの?」

「……別に居たくて居る訳じゃないわよ」

……あー、そう言えばジュンコさん医務委員だっけ?

「……またアタシの責任だし……」

「?」

なんかポツリと呟いた気がしたけど、気のせいか?

「……で、具合はどうなのよ?」

「いや、それがどうにも……」

「え……」

「お腹が空いちゃって……あたっ」

「紛らわしいこと言わないでよ!」



その後、鮎川先生に大丈夫な事を伝え、購買に向かった。

鮎川先生の話によると、ジュンコさんは休み時間ごとに様子を見に来てくれたようだ。

「ありがとうね」

「だ、だから別にそんなんじゃ……」

……そんなのってなんだろ?

……と、購買に着くと……

「当ったぁ!卵パン!やったぁ!」

と、呆然とする十代君と大山君の前で狂喜乱舞している明日香さんが居た。……明日香さん、キャラ変わってるって……

あー、なんというか……

「KY?」

「アンタ人の事言えないでしょ!」

「む、僕は読めないんじゃない、あえて読まないだけだよ?」

「同じでしょ!?と言うか、余計達が悪いわよ!」

「あら、朝倉、具合は大丈夫なの?」

僕らに気付いた明日香さんが上機嫌に聞いてきた。

「あー、大丈夫。大山君はじめまして、あと運んでくれてありがとうね」

「あ、ああ」

……どうでもいいけど、そのオカッパの方の髪型似合わないなぁ……

「見てジュンコ、当たったわよ」

「おめでとうございます、明日香さん」

「ありがとう。じゃ、はい」

……と、明日香さんは3分の1程ちぎってジュンコさんに渡した。

「ありがとうございます!」

「?」

「ああ、私達の三人のうち誰かが当てたら三人で分ける約束だったのよ」

「成る程ね」

こうでもしなきゃジュンコさんは食べれそうにないもんなぁ……

「……また失礼な事考えたわね?」

「……別に」

……サトリか?君は。

「じゃ、私はももえにも渡してくるわね」

と、明日香さんは終始上機嫌で立ち去り、対照的に十代君と大山君は肩を落として帰ってった。……ドンマイ二人とも。

……と、食べようとしていたジュンコさんと目が合った。

「……何よ」

「いや、別に」

特に思うところもないんだけど?

「……」

と、ジュンコさんは僕と卵パンを交互に見た後、散々迷った揚句……

「……ほら」

と、一口大にちぎって差し出して来た。

「いいの?」

「……昨日言ってたでしょ?食べてみたいって」

そういえば、言ったような言わなかったような?

「じゃ遠慮なく」

「……アンタってこういう時遠慮しないわよね」

「変に遠慮しちゃうのも好意を踏みにじるようなものだしね。ありがとね」

「……ふん!」

と、ジュンコさんはそっぽを向いてしまった。……微妙に顔が赤いのは気のせいか?

「それじゃ、いただきます。あむ……」

……むむむ?

「……どうなのよ?」

……いや、どうしたもこうしたも……

「……白身の味しかしないんですけど……」

「っ!十分踏みにじってるわよこの馬鹿!」

「ぐほっ!?」

……結局、病み上がりでくらったこの一撃で、また医務室のお世話になったのだった。



今日のワイト

和「今日は大山君のカードを御紹介!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「まずは『ドローラー』、星3、地属性、攻撃力?守備力?、このカードの攻撃力・守備力は召喚時に手札からデッキの一番下に戻したカードの枚数×500ポイントの数値になる。このカードが戦闘で攻撃表示モンスターを破壊した場合、そのモンスターは墓地には行かずデッキの一番下に戻る。……デッキの大半を通常モンスターにして『凡骨の意地』で手札を大幅に増やしてから出せばかなりの攻撃力を得ることが可能、しかも、『クリッター』等のフィールドから墓地に送られるとき効果を発動するカード封じにも使えます。」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「永続罠『奇跡のドロー!』、自分のドローフェイズの前にカード名を1つ宣言する。ドローしたカードが宣言したカード名と一致した場合、相手に1000ポイントのダメージを与え、違った場合は自分が1000ポイントのダメージを受ける。……『大王目玉』の効果を使えばほぼ5000のダメージが確定!……それ以降は毎ターン自分に1000ダメージがほぼ確定ですけど……」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「『カードローン』、通常魔法、自分のデッキからカードを1枚ドローする。相手は1000ポイントのライフを回復し、自分は1000ポイントのダメージを受ける。この効果でドローしたカードはエンドフェイズにデッキに戻す。その後デッキをシャッフルする。……デッキからカードを引ける上、そのカードが魔法カードだったら使った後に墓地からデッキに戻せるという、使いようによってはかなり強いカード、魔法カードをデッキの一番上にサーチしてから使いたい。カードです。『ドローボウ』、通常魔法、カード名を1つ宣言し、相手にデッキからカードを1枚ドローさせる。宣言したカード名と同じカードをドローした場合、相手は手札と自分の場のカードを全てデッキに戻しシャッフルする。……当たりさえすればほぼ勝利を決定的にできるカード、しかもリスクなし!……チートですね」

3ワイト「「「カタカタカタター(ア○ホ○サッサー)」」」

和「……それはド○ンボー一味ね。じゃ、今回はここまで、次回もむし○パワーで……」

3ワイト「「「カタカタター!(ジャバラ○テー)」」」



後書き 

順番めちゃくちゃだけど書いちゃいました。

アレルギーの人にはドローパン怖いですよねー、そば粉アレルギーの人なんか命に関わりそうだし……




[6474] 第十二話 男装少女君の純恋歌
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:22
3学期に入って半ば程になった。

先日、十代君が遊戯デッキを盗んだ神楽坂君とデュエルした。

正直僕も遊戯……この世界じゃ年上だから『さん』か……遊戯さんのデッキとデュエルしてみたい気もしたが、正直なところ、『混沌の黒魔術師』や『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』なんかを普通に使うデッキにまともに勝てる気がしないのでパス。

『混沌の黒魔術師』、星8、闇属性、魔法使い族、攻撃力2800守備力2600、このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地から魔法カード1枚を選択して手札に加える事ができ、このカードが戦闘によって破壊したモンスターは墓地へは行かずゲームから除外される。このカードがフィールド上から離れた場合、ゲームから除外される。……勿論、『マジシャン・オブ・ブラックカオス』のリメイクである。

元の世界ではこのカードの魔法カードを使いまわす効果を使い、『カタパルト・タートル』や『キャノン・ソルジャー』等で相手のライフを削りつつこのカードをリリースし、効果によって除外させた後、永続魔法『魔力倹約術』でライフコストがかからなくなった『次元融合』によりその除外された『混沌の黒魔術師』を特殊召喚、更にその効果により『次元融合』を手札に戻し、またこのカードをリリース……といったような無限ループ、【混黒1キル】がこのカードが禁止カードになるまで猛威を奮った。

流石にこんなコンボは使ってこないだろうが、それでも、戦闘破壊したカードを除外する効果はやはり僕のデッキにとっては天敵である。

……因みに技名が『滅びの呪文』とかなりダサかった。リメイク前の『滅びの呪文-デス・アルテマ』は個人的に遊戯王の技名の中で一番カッコよかったのに。……ちょっとFFチックで。

そして、『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』、星8、光属性、戦士族、攻撃力3000、守備力2500、このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性モンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚する。自分のターンに1度だけ、次の効果から1つを選択して発動する事ができる。●フィールド上に存在するモンスター1体をゲームから除外する。この効果を発動する場合、このターンこのカードは攻撃する事ができない。●このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃を行う事ができる。……比較的簡単な特殊召喚にノーコスト除外、更に2回攻撃も可、というまさにチートとしか言いようのないカードである。

……ライフ4000でこんなのにどう対応しろと?……十代君よくこんなのに勝ったな……

……因みにこっちの技名は『開闢双破斬』と『時空突刃・開闢双破斬』。……なぜにこっちはテイルズチック?

……と言うか、こんな強い人のデッキをそのまんま使って勝てても嬉しいのかな?ストラクチャーデッキそのまま使ってるよーなものじゃない?

……そして、そのデッキを使いこなしたからって彼を大目に見ようとする皆は甘すぎると思う。……この場に社長や城ノ内……さんが居たら多分神楽坂君フルボッコだって。

……まぁ、『遊戯さんモノマネ劇場』が面白かったからいいか、風貌が似てる分そっくりだったし……

因みに、翌日の十代君のモノマネ……というかコスプレを見た時には腹筋が崩壊した。凄いな彼、こっち方面でも絶対食べていけるって!

……思い出したらまた笑えて来た。

「どうしたんだよ和希、ニヤニヤして」

「……またロクでもないこと考えてるっスか?」

「ははは、いや~、十代君の『ガッチョ』は最高だったな~……ってね」

「だー!もうそれ恥ずいから引っ張るな!つうかそれやったの神楽坂だ!」

「いやー、ごめんごめん、あんまりにもそっくりだったからつい十代君がやった錯覚に……折角だからやってみてくれない?ほら、右手の人差し指と小指を立ててコメカミに当てて、ちょっと舌出して……」

「……絶対やんねー」

「えー、絶対似合ってるって。ねぇ?丸藤『僕~、アニキには勝ってもらいたいけど~、彼女だけは応援しちゃおうかな~』翔君?」

「な、なんスかその呼び方!?」

「ふふふ、色気に惑わされて相手を応援しちゃおうとするようなはくじょー者君には、こんな呼び方で十分でしょ?」

「うぅ……そんなぁ」

「いやー、『ブラック・マジシャン・ガール』がやられた時の翔君の悲しそうな顔ときたら、そして十代君の顔で『明日香ちゅわぁ~ん』だって、あっははは……」

「わ、笑っちゃ悪いんだなぁ……」

「くっくっくっ、そういう隼人君だって……」

「だ、だって、ぷっ、ははははは……」

「あははははははは……」

「「だー!もう笑うなぁ!」」

……今日もレッド寮の僕達の部屋には笑いが絶えない。……主に僕の。



その後、夕食の時まで僕は笑いっぱなしだった。

「ったく」

「笑いすぎにも程があるっスよ」

「はは、ごめんごめん」

「お食事中申し訳ないですけど、ここで皆さんに紹介したい人が居ますのニャ」

お?このタイミングで来ると言えば……

「ニャ、編入テストを受けて、この度オシリスレッドに入ってきた、早乙女レイ君だニャ」

「……」

来たか男装少女君。

……と言うか凄いな、パッと見、本当に小柄な男の子にしか見えないな。……やっぱりなんかそういう補正でもついてるのかな?もしくは海馬コーポレーション製の変装グッズとか?

……なんかどっかのドイツ軍人みたいに『海馬コーポレーションの科学力は世界一チィィィィ!!』と高笑いする社長が見えました。

「女の子みたいに綺麗な子なんだなぁ」

……そりゃあ女の子ですから。

「編入先がオシリスレッドなんで落ち込んでるのかな?その気持ちわかるなぁ……」

……来年、そのオシリスレッドに敢えて入ってきますから彼女。

「……よし」

「アニキ?」

「フレー!フレー!レーイ!」

「……?」

……あーあ、レイ君唖然としちゃってるし……

と、止める間もなくレイ君の所に行く十代君。

「なぁーに、成績悪くても気にすんな、オレ達と一緒に楽しくやろうぜ」

……と肩に腕をまわし、ポンポン肩を叩きながら励まそうとする十代君。

「……何を勘違いしてるんだニャ?」

「心痛めてる編入生に……」

「……!」

「……慰めの言葉を掛けてるんじゃ……」

顔を赤くしながら十代君から逃げるレイ君。うん、見ていて微笑ましいね。

「早乙女君は、成績が悪くてオシリスレッドに入ってきたわけじゃないのニャ」

「え?」

「途中編入生は、まずこの寮に入るんだニャ。早乙女君の成績なら、近いうちにラーイエローに移るのニャ」

「え……いやー、はは、とにかくオシリスレッドの仲間が増えるのは大歓迎だぜ。なぁ?翔、隼人、和希?」

「「うん、勿論」」

「特に異議なーし」

「いやー、良かったニャ、部屋が足りなくてどうしようかと思ってたニャ」

「「「?」」」

「しばらく、十代君たちの部屋を使わせて貰いなさい」

「はい」

さて、また面白いことになりそうだ。



……いやまぁ、気付いてはいたけどさ……

「部屋狭!」

……流石に五人が寝るには無理あるって!

「……確かに」

「足の踏み場もないね」

「……ごめんなさい」

「ま、こういうのもいいじゃん」

「修学旅行みたいだしね」

「そうそう」

「……それにしても十代君ったら早とちりなんだから……」

「いやあれは翔が……」

「ははは、また笑えるネタが増えたネ。あと、過度のボディタッチはセクハラで訴えられるヨー?レイ君に」

「……男同士でセクハラも何もねぇだろうが」

「それもそうか、あっはははは……」

「ったく」

「……随分と仲がいいんだな」

「この二人はいつもこんな感じだよ」

「……ふーん」

「さぁ、皆で風呂行こうぜ?男同志裸で背中を流し合えばもう仲間だぜ」

……と、制服を脱ぎ、上半身裸になりかける十代君。

「きゃぁ!?」

顔を真赤にしながら慌てて顔を手で覆いながら背けるレイ君。……なんと言うか、お約束だね。

「い、いや、……げふんげふん、ボクちょっと風邪気味で……」

「?」

「まま、いいんじゃない?編入早々風邪を悪化させちゃっても悪いし……」

「……それもそうか、じゃぁ行くか和希?」

「あー、僕もちょっと喉が痛くて……」

「……それは散々笑ってたからっスよ……」

「ははは、ま、この際、レイ君にアカデミアについて色々と教えておくから、後で入るヨ」

……と言うか、原作でこの時に風呂場で遭遇していた熊の口の中には、流石に手を突っ込む勇気がないよ……

「そっか、わかった。じゃ、行ってくる」

「ごゆっくり~、熊に遭わないようにね~」

「……んな事あるわけないでしょ」



皆が行った後、レイ君に色々とアカデミアについて話した。

購買ではあれが美味しい。佐藤先生の授業はつまらない。クロノス教諭の贔屓っぷりは酷い。etc

……最後のは微妙に愚痴っぽかった気もする……

話が一段落したころ、僕は切り出した。

「……で、どういうつもりなんだい?女の子がオシリスレッド男子寮なんかにさ」

「!?ど、どうして……」

「……いや、十代君の裸見て『きゃぁ!?』とか言っといてどうしても何もないでしょうに……」

「うぅ……」

その時のことを思い出してか、顔を赤くするレイ君。

……正直『知って』なかったら気付いたかどうか怪しいものだけどね。凄いな男装少女補正。

「あれかい?高価な壺を割っちゃってその借金帳消しの代わりに……」

「……何処の高校のホストクラブだよ」

むむ、鋭いツッコミ、この子、育てれば伸びるぞ?

「理由は……言えない」

「ふーん」

「……」

「……」

「……追及しないのか?」

「? してほしいの?」

「い、いや……」

「……女の子の言いたくないことを無理に聞き出すほど無粋じゃないよ」

……ま、『知って』るから聞く必要もないんだけど……

「もっとも、十代君達に危害を加えようってなら話は別だけどね……」

「……」

……99,9%そんなことはないだろうけど、ま、念には念を入れておく。

「勿論、そんなことは考えてないでしょ?」

「……」

コクリと頷くレイ君。

「じゃ、万事問題なし。ようこそ我らがレッド寮へ」

……多分すぐにさよならになるけど。

「……」

「……皆いないんだし、洗面台で髪ぐらい洗ったら?」

「……」

レイ君はコクリと頷き、洗面台の方に向かった。

「シャンプーとかは?」

「……自分のがあるからいい」

まぁ、女の子だし、そりゃそうか……

そして帽子とバンダナを取り、結っていた長い髪を解いて洗いだした。

「……」

「……」

その後、熊に遭遇した十代君たちが慌てて帰ってくるまで終始無言だった。

……ジュンコさんといいこの子といい、二人っきりだと会話が弾まないよなぁ。……やっぱり相性悪いのかな?



その後は原作通り、レイ君が亮さんの部屋に忍び込み、それを十代君が目撃、女の子だということがわかり、何故こんなことをしたのか事情を聴くためにデュエルすることになった。

「……あのさ、なんでこんなデバガメみたいな……」

「し、しぃー!聞こえちゃうっスよ!」

……別にいいじゃない。

因みに、僕たちは崖の上から観戦中である。……顔だけ覗かせながら

「それにしてもレイが女の子だっただなんて……」

「昼間の事って言ってたけど、何なのかなぁ?」

「いつものことだけど、いきなりデュエルって……」

……それには激しく同意。

「十代らしいやり方ね」

……と、亮さんと明日香さんが来た。

「デュエルには人となりが現れる。その人間の心の有り様までもな」

……つまり、『サイバー・ドラゴン』で力押しな亮さんもそれだけ強引な性格ってこと?……まぁ、『グォレンダァァ!!』だし、なんか納得。

「事情を聴く必要もなくなるって訳よ」

「へぇー、デュエルってそんな奥深いものなのか」

……多分、それ一部の人だけだと思うんだけど……

「ボクが勝ったら、事情を聴かずに黙ってるって言うのか?」

おっと、会話が再開してる。

「ああ、その必要もなくなるからな」

「……全く、お前といい、あの朝倉和希といい、意味が分かんないな……」

「? 和希がどうした?」

「あいつ、初日でいきなりボクが女だって見破ったのに、事情は何にも聞いてこなかったんだ。……興味が無いのか、それとも優しさからなのかは知らないけど……」

「ふーん、そうなのか」

「和希君気付いてたの!?」

「……と言うか、散々『女の子みたい』とか言ってたのに、何で『実は女の子だった』って発想に辿り着かないかな」

「普通そんな発想しないよ!」

……失礼な、人を普通じゃないみたいに。

「……」

「……明日香さんもなんでそんな意外そうな顔してるんですか?」

「あ、いや、あなたが気付いてた事が意外で……」

「……重ねて失礼な」

……まぁ、しつこいようだけど『知って』なかったら気付いてたか怪しいけど……

「「デュエル!!」」

お?始まった。

……恋する乙女デッキ、見せてもらいましょうか。



「いっけぇ!『フレイムシュート』!」

『きゃぁぁぁぁ!』

「うわぁぁ!?」

デュエルは原作通り、E・HEROのコントロールを奪われて苦戦しつつも、なんとか十代君が勝った。

いやー、『恋する乙女』に翻弄されているHERO達は面白かったなぁ。スパークマンとか『惚れたぁ!』って……

……と言うか『バースト・リターン』でHEROを手札に戻して『HEROの絆』って言ってたけど、絶対『バーストレディ』の迫力勝ちだって。……つーかマジに怖いっす、バーストレディ姐さん……

その後、僕達と一緒に駆け付けた明日香さんや亮さんの説得により、レイ君は帰ることとなった。明日香さんをライバルと勘違いして突っかかったレイ君が見物だった。亮さんもカッコいいね。『今の俺には、デュエルが全てなんだ。』って、ニクいねこの色男さん!

因みに、十代君は……

「……」

「おぉ、固まっとる固まっとる」

レイ君が小学5年生であることを告げられ、真っ白になっていた。

「何なんだよ!?オレってば小学生に苦戦したのかよぉ!?」

「ごめんね♪ガッチャ!楽しいデュエルだったよ!」

「ズコー!」

あ、十代君がずっこけた。

「ははははは、最高だ!これだからデュエルは楽しいんだよ!はははは……」

「……笑い声が若干渇いてるよ」

……まぁ、無理もないか……



さてと、

「十代君、デュエルディスク貸して」

「ん?どうすんだ?」

「いや、そうと決まったらレイ君がまたすぐにアカデミアに入学してこれるように、餞別に特訓してあげようと思ってね」

「特訓?」

「そ、ハッキリ言って、君のデッキにはちょっと穴があるからね」

「な!?」

「手っ取り早くそれを教えるためにね。どう?」

「……上等よ!今度こそ恋する乙女は強いってことを見せててあげる!」

「よしきた」



「……なんと言うか、なんでこう、女の子を怒らせるのが上手いのかしら」

「……まぁいいだろう。レイにとっても、いい経験にはなるだろう」

「和希の奴、オレが苦戦したあのデッキにどう立ち向かうんだろうな?こいつは面白そうだぜ」

「まぁ、和希君、人の弱点を見抜くのは上手いから……」

「そうだなぁ」



「ボクのターン!ドロー!ボクは『恋する乙女』(攻撃力400)を攻撃表示で召喚!ターンエンド!」

む、早速来たか。

「僕のターン!ドロー!」

……と言うか、手札にいるワイトとワイトキングが攻撃させてくれってさっきからうるさいんですけど。……そんなに乙女カウンター乗っけて貰いたいんかい……

でもね、ワイト。君は攻撃力300、攻撃力400の彼女より攻撃力低いから、どの道自滅するだけだよ?

『!』

まぁ、そういうわけで……

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果により、手札とデッキから闇属性の『ワイト』を1枚ずつ墓地に送るよ」

……後ろでワイトが『の』の字を書いてるけど無視、今回は巡りが悪かったって思ってね。

「ふーんだ、そんな可愛くないガイコツを墓地に送ったってどうってことないんだからね!」

……泣いちゃ駄目だワイト!気持ちは痛いほど解るから!

「……これで、ターン終了だよ」

「え」



「あれ?攻撃しない?攻撃力で上回っている『ダーク・グレファー』がいるのに、なんでだろ?」

「……あれが、『恋する乙女』封じになっている」

「え?どういう事?お兄さん」

「『恋する乙女』は、攻撃された時、相手に乙女カウンターを乗せる効果を持つカード」

「そうか!でも、自分から攻撃しても乙女カウンターは乗せられない。つまり攻撃さえしなければ、カウンターが乗っかる心配はない訳だな」

「……単純だけど、有効な手ね」



そう、『恋する乙女』はこちらから攻撃しなければ全く怖くないカードなのだ。

つまり、僕や亮さんみたいに一撃必殺の攻撃が可能なデッキや、攻撃の必要のないデッキ破壊やライフポイントへの直接ダメージに弱い。

「さ、君のターンだよ」

「くっ、ボクのターン!ドロー!……ターンエンド」

「そ、君のデッキは、攻撃回数の少ない相手に弱い、まずそれが1つ」

「『まず』?」

「僕のターン!ドロー!『ワイトキング』を攻撃表示で召喚!」

待ってましたとばかりにワイトキングが出てきた。

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は墓地にある『ワイト』『ワイトキング』の枚数×1000、よって今の攻撃力は2000。『ワイトキング』(攻撃力2000)で『恋する乙女』(攻撃力400)に攻撃!『ホーンデット・ナイトメア』!」

『きゃぁぁぁ!』 敵残ライフ 2400

「くっ、でも、これで乙女カウンターが乗ったよ!」

ワイトキングは、『恋する乙女』が飛ばしてきたハートを……嬉々として受けていた。後でワイトにお裾分けしてあげなよ?

「ん、これでターンエンド」



「今度は敢えて、乙女カウンターを乗せられたっスね?」

「しかも、今のターンで奴は勝利をほぼ確実にできたのに、敢えてそれをしなかった」

「え?」

「……そういえば和希、『ダーク・グレファー』で攻撃しなかったんだなぁ」

「あ……」

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)で攻撃すれば、更に1300ポイントのダメージ、レイの残りのライフは1100だな」

「確か、装備魔法の『キューピッド・キス』は相手のモンスターのコントロールを得る為に、乙女カウンターの乗ったモンスターに攻撃して戦闘ダメージを受ける必要があるわね。だから……」

「そうか、『恋する乙女』でどっちのモンスターを攻撃しても……」

「ライフは0ってことか……」

「守備表示にした時点で、『恋する乙女』の戦闘で破壊されない効果も発動しない。ほぼ奴の勝利だったとみて間違いないだろう」



そう、『恋する乙女』の弱点、ダメージを受けすぎるということ。

ライフが8000ならばまだしも、4000のこの世界では、攻撃力400の『恋する乙女』では相手のモンスターのコントロールを得るまでにダメージを受けすぎてしまう。

それが弱点その2。

「くっ、余裕でいられるのも今のうちよ!ボクのターン!ドロー!手札から装備魔法『キューピッド・キス』を発動!『恋する乙女』に装備!」

装備魔法『キューピッド・キス』、装備したモンスターが、乙女カウンターが乗ったモンスターを攻撃してダメージを受けたとき、そのモンスターのコントロールを得るカード……

「『恋する乙女』(攻撃力400)で『ワイトキング』(攻撃力2000)に攻撃!『一途な想い』!」

『ワイトキング様~』

ワイトキングは、駆け寄ってきた『恋する乙女』を……ひしっと抱きとめた……『我が人生に一片の悔いなし!』という表情だ。 敵残ライフ 800

「戦闘ダメージを受けたことにより、『ワイトキング』のコントロールはボクに移った。そのまま攻撃力2000の『ワイトキング』で『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)に攻げ……」

「はいストップ」

「え……」

「その前に、よーくフィールドを見た方がいいよ?」

「え?」

装備魔法『キューピッド・キス』でレイ君にコントロールが移った『ワイトキング』……メ○ンパンナの○ロ○ロパンチを喰らったみたいに、目がハートマークだ……の攻撃力は……0

「ウソ!?なんで!?」

「『ワイトキング』の攻撃力はコントローラーの墓地にある『ワイト』『ワイトキング』の枚数×1000、そして、現時点でのコントローラーである君の墓地にある『ワイト』『ワイトキング』の枚数は0、よって、『ワイトキング』の攻撃力も0」

そう、これが最後の弱点、と言うより相手モンスターのコントロールを奪うデッキに共通して言えることだが、こういった特殊な攻撃力や効果を持つモンスターはコントロールを得ても、使い物にならなくなることがある、ということだ。

「だから、さっき十代君戦で使っていた、相手からコントロールを得たモンスターの攻撃力分、装備モンスターの攻撃力をアップする装備魔法『ハッピー・マリッジ』も意味がないよ」

「そ、そんな……」

「そろそろ決めさせてもらうよ!ボクのターン!ドロー!」

……因みに、僕の横では、さっきのバーストレディに負けずとも劣らない迫力のワイト夫人がいる。……正直怖い。

それに気づいたのか、ワイトキングの顔色が見る見るうちに青ざめた。……元々だけど。

……ワイトキング、こっちに救いを求めるような眼差しを向けないで。……ごめん、ムリ♪

……こりゃデュエルが終わったら、血の雨が降りそうだなぁ……

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)で『恋する乙女」(攻撃力400)に攻撃!』

「うわぁぁ!」 敵残ライフ 0

……うん、『ダーク・グレファー』は女性モンスターを襲うのが絵になる。流石、一部で『獣族(ケダモノぞく)』とネタにされるだけあるね。

「以上、レクチャー終わり」

「うぅ……」

「すげぇ和希!オレがあんなに苦労したデッキをパーフェクトに抑えちまった!」

「……と言っても、単にデッキの相性が良かっただけだけどね」

「……」

「どう?これで課題が見えてきたんじゃない?相手が攻撃してこなかったらどうするか、ダメージをどう軽減するか、コントロールを得ても意味のないモンスターだったらどうするか」

「うー……」

と、涙目になりながら睨んできた。

うーむ、盛大に泣かれるよりはマシだけど、その眼差しは応える。

……しょうがないか。

僕は用意していたカードを取り出した。

「……と、言う訳で、このカードをあげよう。さっきみたいにいらないモンスターのコントロールを得た時、生贄にできるしね」

「え……」

と、僕が出したのは、最近当てた『守護天使ジャンヌ』

『守護天使ジャンヌ』、星7、光属性、天使族、攻撃力2800守備力2000、戦闘によって破壊し、墓地に送ったカードの元々の攻撃力分ライフを回復する。……因みに原作でレベッカさんが使っていたカードだ。……ライフを消費しがちな『恋する乙女』との相性もそれなりにいいだろう。

「……いいの?」

「ま、持ってたって使わないから、宝の持ち腐れだしね」

どっちにしろあげるつもりだったし。

「あとはライフ回復系のカードを沢山入れることだね、あとごめんね、肝心の相手の攻撃を強制させるカードは無くてね」

タニヤさんが使う『アマゾネスの弩弓隊』とか、孔雀舞さんが使ってた原作版『誘惑のシャドウ』とかあればよかったんだけど……

「……うんうん、ありがとう」

と、花のような笑顔で礼を言ってくれた。

……良かった、機嫌はなおってくれたようだ。

「偶にははいい事するな」

「ありゃ?いつも僕は自分の良心の赴くままに行動してるんだけど?」

「……どれだけネジ曲がった良心を持ってるっスか……」

「「「「「ははははは」」」」」

……因みに、只今絶賛折檻中のワイト達は意図的にスルーの方向でヨロシク。



翌日、レイ君はフェリーで帰ることになった。

「来年小学校を卒業したら、またテストを受けて、入学するからねー!」

と、フェリーから手を振るレイ君に、僕達も手を振り返した。

「待っててねー!十代様ー!」

「な!?」

口をあんぐりと開ける十代君。……うん、面白い。

「な、なんでオレなんだよー!?」

「きっと、あなたのデュエルに惚れたんでしょ?ふふふふ」

……つまり、僕のデュエルには惚れなかったと。……なんか残念。

「後は任せた」

と、踵を返す亮さん。……亮さんもさり気にヒドい。

「じゃ、アニキ、先に帰るねー」

「ゆっくり見送ってあげるんだなぁ」

「船が見えなくなるまで、見送ってあげなきゃね~♪」

皆踵を返してしまった。……皆ヒドいなぁ……

尤も、僕も焚きつける気満々だけど……

「レイくーん!頑張ってねー!あんまりモタモタしてると、明日香さん辺りに先にとられちゃうかもよー?」

「その時は、先輩に乗り換えてあげるー!」

……反撃された。

「……そういうのはもっと歳をくってから言いなさーい!」

「あー!ヒッドーい!」

と、ベー、と舌を出しながらも、笑顔で手を振ってくれた。

むむ、あの歳であの妖艶さ。……レイ君、恐ろしい娘!



……さて、十代君は復活までもうちょっとかかりそうだし、僕も帰って二度寝……

「あ~さ~く~ら~?」

……出来そうにありませんね、はい。

背後には、青筋をたてながら満面の笑みをした明日香さんがいた。

「……さっきのはどういうつもりかしら?」

……どうやらさっきのが聞こえていたらしい。

「い、いや、さっきのは言葉の綾というもので……」

一応『明日香さん辺り』って言ったし。

「あらそう。でも覚えといた方がいいわよ?女性に対して、そういう冗談は命取りだってことをね……」

「……肝に命じておきます」

「あら、その必要はないわ。この場で体に覚えこませてあげるから」

わーい、明日香さん、これまでにないぐらい御立腹だぁーい。

……流石に命の危険を感じたので逃げ……れなかった。

「……質問質問!なんでここにジュンコさんがいらっしゃるのでしょう!?」

「あら、アタシは『偶々』朝の散歩でここを通りかかっただけだわ」

ゴッド、僕が何か悪いことしましたか!?今回比較的にいいことした気がするんですけど!?

僕の逃走経路は、何故かいつも以上に御立腹なジュンコさんに阻まれた。

「質問その2!なんでジュンコさんはそんなに御立腹なんでしょう!?」

「……さぁ?自分でも良くわからないわ。強いて言うなら……」

と、ここで初めてお目にかかる満面の笑み(青筋付き)を浮かべ……

「アンタがここに居るからよ!」

なんて理不尽極まりないことをのたまって下さいました。

……ジリジリと距離を縮めてくる前門の虎、後門の狼。

「……最後の質問、……許してくれませんか?」

「……それは、」

「あなたが一番よくわかってるでしょう?」

「……ははは……」

無理ですね!コンチクショウ!

ワイト夫人も何故か助ける気ないみたいだし!こうなったら言いたいこと言っちゃる!

「……女性二人で男一人をリンチってのも、珍しい画ですよねー」

「……そうね」

「辞世の句はそれで終わり?」

「……はい」

……あぁ、もしここで死んだら元の世界に戻れるのかな?どっちにしろさよなら十代君、翔君、隼人君、ワイト達……その他諸々。

ぎにゃー



今日のワイト

和「……大丈夫~?二人共~?」

ワイト・王「「……(シクシク)」」

和「……女性って、理不尽だよね……」

ワイト・王「「……」」(コクコク)

和「えーと、今日は勿論、アニメオリジナルの『恋する乙女』シリーズの紹介でーす……」

ワイト・王「「……」」

和「ほら、辛いのはわかるけど、一昔前のパンダみたいにタレていないで頑張るよ、『恋する乙女』、星2、光属性、魔法使い族、攻撃力400守備力300、このカードは表側攻撃表示でフィールド上に存在する限り、戦闘で破壊されず、このカードを攻撃した相手モンスターに乙女カウンターを1つ乗せる」

ワイト・王「「カタカタ……」」

和「攻撃表示の時、戦闘によっては破壊されないため、自分の場にモンスターが存在する限り、コントローラーへの戦闘ダメージが0になる永続罠『スピリットバリア』と相性がいい……かと思いきや……」

ワイト・王「「?」」

和「次のカードが問題、装備魔法『キューピッド・キス』、乙女カウンターが乗ったモンスターを攻撃してダメージを受けたとき、そのモンスターのコントロールを得る。つまり、『スピリットバリア』で戦闘ダメージを0にしちゃうと、『恋する乙女』デッキの要であるこのカードの意味がなくなってしまうんだ。」

ワイト・王「「カタカタ(成程)」」

和「装備魔法『ハッピー・マリッジ』、自分の場に相手からコントロールを得たモンスターがいるとき発動可能。そのモンスターの攻撃力の数値分だけ装備モンスターの攻撃力をアップする。……これは『恋する乙女』だけでなく、そのコントロールを奪ったモンスターにも装備可能、つまり、『キューピッド・キス』や『洗脳-ブレインコントロール-』なんかでコントロールを得たモンスター専門の攻撃力倍増装備魔法ですね。このカードは地味に強いので、PSP版のタッグフォースなんかでは制限カードになってました」

ワイト・王「「カタカタ」」

和「最後、『ディフェンス・メイデン』、永続罠、相手モンスターが自分のモンスターに攻撃したとき、自分の場に『恋する乙女』が表側表示で存在していれば、攻撃対象を『恋する乙女』に移し替えることができる。……うーん、これだったら装備魔法の『レアゴールド・アーマー』の方がいいんじゃないかな……」

ワイト・王「「カタカタ」」

和「以上です。では、次回も見てくれるかな!?」

ワイト・王「「……」」

和「……空しい……」



後書き

最初、レイ君に『スピリットバリア』をあげようかと思ってたんですが、調べたらそれだと『キューピッド・キス』が発動できないことに気付きました(涙)

……あと、くれぐれも、レイ君の本命は十代君ですので……そこのところを宜しく……



[6474] 第十三話 アカデミア代表決定戦前日
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:22
「え?オレ?」

「と僕?」

「そうなのニャ、十代君と朝倉君、そして三沢君でデュエルして、勝った人がノース校との友好デュエルに出場出来るのニャ」

驚いた。なんと、僕もノース校とのデュエルに推薦されていたようだ。

恐らく、というか絶対亮さんか校長先生の推薦だろうな。クロノス教諭が僕を推薦する訳無いし……

……あれ?でもちょっと待った。

「大徳寺先生、代表は一人なんですよね?」

「そうなのニャ、本当は去年みたいに3年の丸藤亮君が出る予定だったニャ、でも、今年のノース校の代表が1年生らしいのニャ、だから、君達に白羽の矢がたったのニャ」

……どうやらあちらでは万丈目君が無事代表になるようだ。

「……僕達三人でバトルロイヤルですか?」

「あー、いや、実はもう一人推薦された人がいるのニャ、だから、十代君と三沢君、朝倉君とそのもう一人がデュエルして、その勝った方同士がもう1回デュエルするのニャ、最後まで残った一人が代表になるのニャ」

ふーん、もう一人ねぇ、恐らく、僕と十代君のオシリスレッド二人が亮さんと校長先生から推薦されたから、それを阻止する為にクロノス教諭が推薦したんだろうな……

「で、もう一人って誰なんですか?」

「それが、ここにはいないのニャ、なんでも、この島のどこかに、彼専用の特別な寮があって、そこに居るそうなのニャ」

「専用の特別な寮?」

……あ、もしかして……

「……因みに、その人の名前は?」

「多分、知ってる人はいないのニャ、彼の名前は、茂木もけ夫君というニャ、オベリスクブルーの生徒だニャ」

……彼か。シ○バー・チャリオッツ・レクイエムのスタンド使い……もとい、『もけもけ』を使った脱力デュエルをするデュエリスト。茂木もけ夫君。

3年前、彼は1年生ながら、アカデミアでNo.1のデュエリストだったそうだ。しかし、彼が『もけもけ』を使うようになってから、彼や彼と対戦したデュエリスト、そのデュエルを見ていた人の皆が脱力してやる気をなくしてしまい、対戦したデュエリストがアカデミアを止めてしまうという事態になってしまい、隔離された特別な寮に住んでいるのだ。

……つまり、その後の3年間、授業に出てないので、オベリスクブルーじゃ進級出来なかった為、まだ1年生、ってことか。

……大丈夫なのかな?彼をあんな観客の多い所でデュエルさせて、……結構被害が出そうだよなぁ……クロノス教諭も、段々と手段を選ばなくなってきたなぁ……

「いいデュエルを期待してるニャ」

……彼とで出来るのかなぁ……



授業後、

「凄いよ二人共!学園の代表なんて!」

「オシリスレッドから代表が選ばれたことは無いんだなぁ」

「へへへ……」

「うーん、でも正直、僕は代表とかにはあんまり興味ないかなぁ……」

「「え?」」

万丈目君とのデュエルはやりたいけど、だって、両校の校長先生の『トメさんのキス争奪戦』の為に利用されるような物じゃない。腹立たしい。

「まぁ、でも……」

……そう、僕の今回の1番の目的は……

「……こういう舞台で、1度十代君とデュエルしたかったんだよね」

「そうだな、何気にこういう大舞台でデュエルした事なかったしな」

「……あのな十代、先に俺とやるのを忘れ……」

「ふふ、勿論、友達だからって手加減はしないよ?」

「当たり前だろ?もし手加減なんかしたら本気で怒るからな?」

「……だからな十代、先に俺とのデュエルを……」

「よーし!そうと決まったら……」

「早速デッキの調整……」

「お前ら人の話を聞け!」

「うわ!?三沢君!?」

ごめん!意図的。

「はは、そうだよな三沢、やっとお前とも闘うことが出来るな」

「……ああ、この前の朝倉との敗戦を経て、俺は更に研究を続けている。お前のE・HEROデッキに対抗できる、7番目のデッキをな!」

「出来たのか!?」

「いや、だが、デュエル迄には間に合わせるさ」

……また随分と時間が掛かってるな……

「そして朝倉、十代を倒した後は、お前へのリベンジだ。俺の……9番目のデッキでな!」

……今、使うデッキが多過ぎてどのデッキだかちょっとこんがらがったでしょ。

「おっと、まだそれには気が早いんじゃねぇのか?」

「……そうだったな。今は目の前の敵に集中するとしよう」

「楽しみにしてるぜ」

「そだね」

と、十代君、そして僕と拳を合わせた後、三沢君は立ち去った。

「7番目のデッキ、一体どんなんだろう」

「……8番目のデッキよりも完成が遅いってのも変な話だけどね」

「でも、凄いデュエルになりそうなのは間違いなさそうなんだなぁ」

「よし!早速帰って、デッキの調整だ!」

「そだね」

僕たちは教室を後にした。



レッド寮へ戻る途中。

「……それにしても、誰なんだろうな?和希の相手」

「確か、茂木もけ夫って名前でしたっけアニキ?」

「聞いたことない名前なんだなぁ」

……まぁ、そりゃ知らないよなぁ……

「和希君は……」

「知ってると思う?」

「……だよね」

知ってるけど。流石に何故知ってるかが説明できないし。

と、歩いていると……

「あれ?」

「お兄さん?」

「カイザー?」

そう、亮さんが歩いていた。

あちらも今の声に気付いたのか、立ち止まり、こちらに振り返った。

「よう、カイザー」

「この度は推薦して貰ってありがとうございます」

「え?」

「どういうことなんだなぁ?」

「……なんのことだ?」

またまたとぼけちゃって。

「大徳寺先生が『本当は亮さんが出る予定だった』って言ってました。……って事は亮さんが僕らを推薦してくれたんでしょう?」

「あ、成る程」

「そうなのか、サンキュー、カイザー」

「……悪いが、覚えがないな」

むぅ、飽くまで謙遜しますか。まぁ、それはいいか。

「それはそうと、亮さん、僕の相手の茂木もけ夫って人、知ってます?」

まぁ、聞く必要はないけど、一応『知っている』というフラグは立てておくべきか。

「そうか、同じオベリスクブルーのお兄さんなら知ってるかも……」

……あれ?ちょっと待った。確かもけ夫君が活躍してたのは3年前。ってことは亮さんも入学前で知らないか……

「知っている」

おろ?

「奴は3年前、アカデミアでNo.1のデュエリストと呼ばれていた」

「「「えぇ!?」」」

「元アカデミアNo.1デュエリスト!?」

「それも3年前の!?」

「どういう事なんだなぁ?」

驚愕の声をあげる三人。……それも当然か。

その後、亮さんに彼について説明して貰った。ある日、突然彼のデュエルが変わり、彼とデュエルした人が何故かアカデミアを辞めてしまった事、その事が原因かは不明だが急に休学し、今まで行方不明だった事。

「あくまで噂だったがな。俺は当時中等部だったからな、話には聞いていたが詳しくは知らん」

あー、成る程、だから彼の事を知ってたんだ。

……けど、さっきの説明で脱力デュエルについては触れられてなかったけど、脱力デュエルの事は知らないようだ。詳しい事は知らないみたいだし。

「……と言う事は、言わば『先代カイザー』……って感じですか?」

「……恐らく、そう言っても過言ではないだろうな」

……目茶苦茶過言だと思う。いや、『もけもけ』を使う前はどうだったかは知らないけどさ……

「わかりました。どうもありがとうございます」

「礼には及ばない。……健闘を祈る」

と、さりげなく激励してくれた後、亮さんは立ち去った。

「ど、どうするの和希君?そんな人相手に……」

「いや、どうするもこうするも、やる以外に選択肢はないでしょーに」

「そ、それはそうだけど……」

棄権でもしよう物ならそれこそ物笑いのタネだろうし、主にオベリスクブルーの連中の。

「……迷宮兄弟の時もそうだったけど、なんでそんなに余裕でいられるんスか?」

「……だって相手がそれだけ強いなら負けたって恥ずかしくないじゃない?勝てれば大金星だし。……まぁ、尤も……」

僕はくすりと笑い、言ってやった。

「負けるつもりも、さらさらないけどね」

「……その自信はどこから来るんだなぁ……」

「別に自信がある訳でもないよ。ただの心構えの話さ。それに特に今回は……」

僕はそのまま十代君に向かって悪戯っぽく片目を閉じてみせた。

「君との決勝戦が掛かってるしね」

十代君は驚いた顔をしていたが……

「はは、なんだよ。てっきりオレとデュエルする気ないのかと思っちまったじゃねーか。ホッとしたぜ」

と、笑いながら返してきた。

「何言ってるのさ。僕がこんな楽しそうな事を逃すと思う?」

「だよな。……よし、その為にも、早くデッキの調整しようぜ」

「そだね」

「……この二人だったら、カードさえあれば無人島とかでも楽しく暮らしていけそうだね」

「そうだなぁ……」



その後廊下で、オシリスレッドの生徒に変装した為、オベリスクブルー生やラーイエロー生に相手にされてなかったジャーナリスト、国崎さんに会い、万年落第生と勘違いした十代君は彼を無理矢理レッド寮に連れて来た。

……国崎さん、変装するならせめて髭ぐらい剃らないと。

因みに、デッキ調整の前に食べた夕食のおかずのメザシは十代君にあげた。食べれないし。

「あむあむ、うめー、ガツガツガツ……」

「ここのご飯をそんだけ美味しそうに食べるのはアニキだけだよ」

「はむはむはむはむ……」

「……そして和希君、よくおかず無しでご飯が食べれるね」

「お米大好きだからね」

「……そういえば冬休みの時も、餅に何も付けずに食べてたんだなぁ」

……と、国崎さんがいつまでも食べようとしなかったので……

「食べないんですか?」

「い、いや、ちょっと疲れてて、食欲がなくてな」

……そういえば原作で見たのより気持ち疲れているような?

……

あ、アレが原因か?



話は少し遡る。

腕は立つが気が弱いせいで負けたりしていたラーイエローの生徒、小原君が、大柄な友人の大原君に『闇の巨人デュエリスト』として、自分を馬鹿にした生徒達への報復デュエルをさせ、その生徒達のレアカードを奪っていた。

その時は原作通り十代君が勝利し、小原君を改心させた。

原作ではその後、奪われたレアカードは小原君が校門にある彫刻の台座の所に置き、持ち主の所にそれぞれ戻った。

だが、僕は少し考えがあったので小原君からレアカードを預かり、クロノス教諭に直接渡したのだ。

「『闇の巨人デュエリスト』は外部の人間だった」として。

「が、外部の人間でスゥと!?」

「ええ、レアカードはなんとか取り戻しましたが、隙を見て海に逃げられてしまいました。素顔も見ましたけど、全く知らない顔でしたので」

端から聞いたら嘘臭い話ではあるが、『闇の巨人デュエリスト』が正体不明であった以上、否定できる要素もない筈。

「……では約束通り、レポートは免除という事で……」

「ま、待つノーネ。犯人を捕まえた訳では……」

「でも先生は言ってたじゃないですか。『事件を解決に導いたらレポート免除』だって。一言も『犯人を捕まえたら』とは言ってなかったじゃないですか」

「う……」

「レアカードはこの通り取り戻しましたし、アカデミア側で警備を強化すればもう『闇の巨人デュエリスト』ももう侵入してこない。ほら、解決じゃないですか」

「うぐぐぐ……」

そう、この為にレアカードを預かっておいたのだ。

原作では「『闇の巨人デュエリスト』なんて居なかった」なんて事にした為、十代君と翔君は報酬であるレポート免除にならなかったのだ。

ふふふ、骨折り損なんて真っ平ゴメンですよ。デュエルしたのは十代君だけど。

……あぁ、ワイト達、骨って君達の事じゃないから。ワイト夫人、ワイトをサバ折りにしないように。ホントに骨折り損になっちゃうから。

「あぁ、でも翔君はどうしてもレポートをやりたいみたいなので……」

「ちょっと!?」



……なんて事があったのだ。

その結果、島の警備、特に海岸周辺のが少しばかり厳重になったのだ。……トメさんは喜んでいたが、『船からの荷下ろしの手伝いが増えた』って。

……恐らく、国崎さんも島に侵入してくのに苦労したのだろう。……罪悪感を感じるよーな、そうでもないよーな物凄く微妙な感覚だった。



その後は部屋に戻り、僕と十代君はデッキの調整をした。

国崎さんは『用事を思い出した』と出て行った。十代君が吹雪さん達『生徒の失踪』について廃寮の事を口走った為、恐らくその事を調べに行ったのだろう。

……まぁ、あの人は多分ほっといても大丈夫だろう。明日の十代君のデュエルを見て改心するだろうし。

……確かに、十代君のどんなピンチでも諦めない姿勢と、それが呼び寄せるあの引きは、見ていて心揺さぶられるからなぁ。

そんな十代君と、こんな大舞台でデュエル出来るとなると、俄然やる気が出る。

……まぁ、それも次のデュエルに勝てたらの話だ。今はその事に集中するべきか。

もけ夫君のもけもけデッキ。メインとなるのはやはり『もけもけ』だろう。

『もけもけ』、星1、光属性、天使族、攻撃力300守備力100、単体では役に立たない通常モンスター。しかし、サポートカードが豊富であり、その点はワイトに似ている所がある。

サポートカードとしてまず挙げられるのが、専用サポートカードである『怒れるもけもけ』だろう。

『怒れるもけもけ』、永続魔法、『もけもけ』が自分フィールド上に表側表示で存在している時、自分フィールド上の天使族モンスターが破壊された場合、そのターンのエンドフェイズまで自分フィールド上の『もけもけ』の攻撃力は3000になる。

低レベルの天使族モンスターを召喚し、自爆特攻、その後、攻撃力の上がった『もけもけ』で攻撃し、減ったライフは速攻魔法『神秘の中華なべ』で攻撃力3000のままの『もけもけ』を生け贄にし、その攻撃力分3000ポイントのライフを回復させ、永続罠『人海戦術』で自爆特攻した分のモンスターをエンドフェイズに特殊召喚して壁ないし次の『もけもけ』の起爆剤にする。……と、何気にしっかりしたコンボを組んでくる。

1番手っ取り早いのは『怒れるもけもけ』を破壊してしまう事だ。しかし、そう都合良く罠・魔法破壊カードが来るとは限らない。

……と、なると、いかに早くワイトキングの攻撃力を早く上げるかか。

攻撃力4000以上ならば『怒れるもけもけ』でパワーアップした『もけもけ』も手出しができない。

……なんだ、ようするにいつも通りか。

……と言うか、寧ろ問題なのは彼や『もけもけ』の特殊能力の方か。

何せ、一応冷静な三沢君やクールビューティーで通っている明日香さんも虜にし、来年度に行われるであろうのジェネックスで、対戦相手のプロデュエリスト、サンブレ・ゲレロも棄権負けに追い込む程の脱力さだからなぁ……

……とは言ってもこればかりは対策なんてしようがない。十代君みたいに自分には効果が無い事を祈るばかりだ。

と、もうこんな時間か。

今頃、三沢君がパソコンの前で「十代、お前の融合HEROは俺の前に姿を現す事は無い!ふはははは……」って社長みたいに高笑いしてる頃か。……どっからどう見ても三下中ボス乙。例えるなら初登場時のハドラ○

十代君も寝ちゃってるし、僕もそろそろ、つーかそろそろ今回はネタが……

「……メタ発言は駄目っスよ」

「ありゃ?翔君起きてた?」

「はは、緊張して寝れなくて……」

……なんで君が?

「……あのさ、和希君?」

「んー?」

「お兄さんが言ってた事って、本当なのかな?」

「亮さんが言ってた事?」

「ほら、茂木もけ夫って人とデュエルした人がアカデミアを辞めちゃったって話」

「あー、どうだろうね?」

クロノス教諭もそう言ってたし、多分本当なんだろうけど。

「……和希君は、辞めちゃわないよね?」

「……」

そんな本気で心配してくれているように見える翔君を見て、僕は……

「ぶっ、ははははは……」

「ちょ!?」

盛大に吹き出した。

「わ、笑い事じゃないっス!もし和希君が負けたら、もしかしたらその後対戦するかもしれないアニキだって……」

「……まーた不吉な事を言いやがりますかこのお口は?」

「いだだだだだ……」

頬っぺを引っ張ってやる。

「……辞めるわけないでしょうに」

「え……」

「ったく、僕や十代君がこんな楽しい所をどうして辞めなきゃならないのさ?」

「和希君……」

「それに、やめちゃったらもう翔君を弄れないじゃない。折角増えた僕のライフワークなのに」

「……何か心配して損した気分っス」

「実際損してるって。そもそもがラーイエローへの昇格まで蹴ったぐらいにここに愛着ある二人なんだからさ」

「はは、そうだよね。和希君なんか退学にされてもここに居着いてそうだもんね」

「そうだね、意地でも残ってやるさ」

……まぁ、尤も……

「? どうしたの?急に変な顔して」

「……いや、なんでもない。じゃ、僕はそろそろ寝るから」

「?」

……いつか、元の世界に戻らなければならない時が来るかもしれない。その時は……

……柄にもなく、目先の不安に憂鬱を感じながら、僕はそれを出来るだけ考えないようにしながら明日に備えて眠った。



※今日のワイトはお休みです。



後書き

書いていてアカデミアの新学期が10月から始まってたことに気づいた。……一段落したらちょっと時系列をちゃんと整えないとなぁ……



[6474] 第十四話 準決勝 最弱(さいきょう)の死者 対 最弱(さいきょう)の天使
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:45
翌日、いよいよアカデミア代表決定トーナメントが始まった。

先に行われたのは十代君対三沢君戦。

『決勝で待ってるぜ』と十代君は言ってデュエルに臨んだ。

しかし三沢君は原作と違い、僕との敗戦を経ている。

もしかしたら三沢君がその敗戦を糧に、十代君に勝ってしまうんではないだろうか……

「『サイクロン・ブーメラン』の効果発動!装備モンスターと、このカードが墓地に置かれた時、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊し、その1枚につき500ポイントのダメージを相手プレイヤーに与える!」

「ぐ……うぁ……」

……と心配したが杞憂だったようだ。と言うか三沢君、僕とのデュエルを全然糧に出来てない。

原作通り、『融合』を封じただけで、E・HEROの対処はやっぱりおざなりだし……

……しかも、考えてみれば、『融合』が無くても、十代君は『ミラクル・フュージョン』や『フュージョン・ゲート』で融合E・HERO出せるし。

何と言うか、穴ありすぎ。

……余談だが、最後の『サイクロン・ブーメラン』だが、元の世界では確か、魔法・罠を破壊するのは戦闘ではなくカードの効果による破壊の時だけで、与えるダメージも枚数×100だった筈だ。

……基本的に十代君が使うカードってこっちの世界だと強いよなぁ。いいなぁ。……E・HEROの要である『E・HERO プリズマー』が星5になってるけど……

見ると、十代君の勝利に、国崎さんも歓喜に叫んでいた。あれなら大丈夫だろう。

……さて、次は僕の番だ!



「えー、では、これより、続いて代表決定トーナメント第二試合を始めるのーネ」

あ、汚!クロノス教諭、自分だけ防護服着てるし!

「オベリスクブルーからは、茂木もけ夫!」

……

…………

……居ないんですけど?

「……あー、シニョールシニョーラ、少々待つのーネ」

……と、控室の方へ走っていくクロノス教諭。……多分、控室で寝てるな、彼。

……間もなく、クロノス教諭がもけ夫を連れて来た。

「お待たせしたのーネ。では改めて、オベリスクブルーからは、茂木もけ夫!」

観客がざわめく。まぁ、誰も彼の事知らないだろうし、当然か。

「……えー、そして、オシリスレッドからは、朝倉和希……と」

やる気のないクロノス教諭の紹介の後、主にオシリスレッドからは応援の声が、オベリスクブルーからはブーイングが上がった。

「和希ー!頑張れよー!」

「頑張ってー!」

「気張れー!」

……と、後ろの方で応援してくれている十代君達三人を見つけたので手を振った。

「へー、君が朝倉和希君か。君の精霊、面白いねー」

……と、もけ夫君が、傍らのワイト達を眺めながらのんびりと話し掛けて来た。どうやらクロノス教諭から僕の事は聞いているようだ。

……それにしても、小柄な体にボサボサな髪、眠そうな眼、ボロボロなTシャツにズボン、これまたボロボロなオベリスクブルーの制服を肩に掛け、足はサンダル。……とても亮さんより歳上に見えないんですけど……

「うーん、それにしてもここ、やっぱり騒がしいねー」

「じゃ、なんで来たんですか……」

……多分、十代君とデュエルした時と同じ理由だろうけど……

「クロノス教諭から君や遊城十代君って人の話を聞いてね、君達の精霊達をデュエルから解放してあげたいんだ。のほほんとさせてあげた方が、精霊達にとって幸せだからね。」

……やっぱりか。

「うーん、でも、そういうのって個人差がないですか?、決め付けたら駄目ですよ」

「えー、そうかなー?」

「そーですよー。のほほんとしてるのもいいですけど……」

……と、エレキギターを弾いて『ホネホネ・ロ○ク』を歌っているワイト達を指差す……つーか懐かしいなソレ。

「こんな風に賑やかなのもいいんじゃないですか?」

「うーん、そうかなー?」

「いつまで喋ってるのーネ!」

……む、あちらに釣られてついつい喋ってしまった。

デュエル中は気をつけないと……。

「では、始めるのーネ!」

「「デュエル!」」

「僕のターン、ドロー!」

とりあえず、『もけもけ』と戦うには、大量展開で一気に決めるか、ワイトキングに一撃必殺の攻撃力が備わるまで守備表示で待つか、2つに1つ。

生憎と大量展開が出来る手札ではない。よって……

「『ピラミッド・タートル』(守備力1400)を守備表示で召喚、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

僕が選んだのは後者。

『もけもけ』デッキのコンセプトは、永続魔法『怒れるもけもけ』の効果を使った自爆特攻による攻撃力の底上げ。

……ならば、こちらのカードを守備表示で出しておけば自爆特攻は出来ない。

……それにしてもこの手札。ワイト達や、ワイト達を墓地に送るカードが手札になく、要の魔法、罠破壊カードもない。かなり厳しい立ち上がりとなってしまった。

「僕のターン、ドロー。僕は『もけもけ』(守備力100)を守備表示で召喚するよー」

『もけもけ〜』

ポンッと気の抜けた音と共に、『もけもけ』が召喚された。

……途端に、

『きゃ〜』『カワイイ〜』

……と女子の黄色い声が上がった。……可愛いのか?アレ?

『もけもけ~』

う、でも確かにアレを見ているとなんか悪い意味で緊張感が抜けてくる。

……あー、でも、この強烈なアルファ波っぽいので、ちょっと怒りっぽい人とかも落ち着くんじゃないかな?ジュンコさんとかジュンコさんとかジュンコさんとか。



「……!」

「どうかしまして?ジュンコさん?」

「……なんか、またアイツが失礼な事考えてる気がするわ」

「あら〜♪以心伝心ですわね〜♪」

「っ!だからなんでそう……!」

『もけもけ〜』

「きゃ〜♪もけもけちゃ〜ん♪」

「うぅ、なんなのよ、この自然と沸き上がってくる『どうでもいいか』感は!?どうでもよくなーい!」



うぅ、やりづらいなぁ、最近お馴染みに成りつつある殺気も感じるような気もするし。……若干弱い気もするけど……

「更にリバースカードを3枚セットして、ターンエンドだよ」

リバースカードが3枚か。多分、あの中の1枚は永続罠、『人海戦術』だろう。

……『大嵐』で一掃してしまいたいが、生憎、手札にはない。

ここは守備を固めておきたい。

「僕のターン!ドロー!『ダーク・グレファー』(守備力1600)を守備表示で召喚。効果により、手札から闇属性の『真紅眼の不死竜』を墓地に送り、デッキから闇属性の『ワイトキング』を墓地に送る!更に罠カード『針虫の巣窟』を発動、自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送る!」

……だが、これでもワイト達を墓地に送れなかった。

「……ターンエンド!」

だが、このターン、『ダーク・グレファー』を引けたので、とりあえず『ワイトキング』を1枚だが墓地に送れた。それにデッキも圧縮できた。

この後、ワイト達が引ければ、そのカードとデッキのワイト達を墓地に送り、墓地にはワイト達が3枚、とりあえずボーダーラインか。

「あれ?攻撃しないの?」

「ふふふ、何やら罠カードがひしめいてそうですしね。それに、もけもけは怒らせたら怖いですしね」

「へー、もけもけの事知ってるんだ、物知りだねー」

……ヤバイな、やっぱり気を抜くと僕もこのペースに乗せられそうだ。ぼーっとしてしまう。

「でも残念、僕のターン、ドロー。リバースカード発動、永続罠『最終突撃命令』」

うわっ、やっば!

「このカードの効果により、フィールド上で表側表示で存在しているモンスターは全て攻撃表示になるよ」

フィールド上の『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)、『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)、そして相手の『もけもけ』(攻撃力300)が攻撃表示になった。

……って事は……

「そして、『ハッピー・ラヴァー』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚して、永続魔法『怒れるもけもけ』を発動」

やっぱりキター!

「更に永続魔法『弱者の意地』を発動して『ハッピー・ラヴァー』(攻撃力800)で『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)に攻撃、『ハッピー・バーニング』」

『ハッピー・ラヴァー』が口から炎を吐くも、『ピラミッド・タートル』には全く効かず、逆に突っ込んで来た『ピラミッド・タートル』に体当たりを喰らい、粉砕された。 敵残ライフ 3600

「この瞬間、永続魔法『怒れるもけもけ』の効果が発動。『もけもけ』が自分フィールド上に表側表示で存在している時、自分フィールド上の天使族モンスターが破壊された場合、このターンのエンドフェイズまで自分フィールド上の『もけもけ』の攻撃力は3000になるよ」

もけもけの頭の?マークが!マークに変わり、その四角い体が怒りで赤く膨れた。

くっ!?、なんてパワーだ……これがもけもけの『怒りのスーパーモード』か!?

……また所々で『カッコイイ〜』とか声が上がる。今度は男子の声も聞こえる。……四面楚歌ってこういう事を言うんだね……。

「『もけもけ』(攻撃力3000)で『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)に攻撃、『もけもけウェーブ』」

『もけもけ〜!』

『もけもけ』の放つ超音波で、『ダーク・グレファー』が粉砕された。 自残ライフ 2700

うぎゃー、耳が、耳がぁ!?(某大佐風)

うぅ、耳やられたせいかなんか平衡感覚もおかしくなってきたし、何この擬似ペガサスフォーム現象?ワイト達、五代○介みたいにイイ笑顔でサムズアップしなくていいから!

「この瞬間、永続魔法『弱者の意地』の効果が発動。自分の手札が0枚の時、自分フィールド上に存在する星2以下のモンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキからカードを2枚ドローするよ。更に僕はリバースカードの速攻魔法『神秘の中華なべ』を発動、自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げて、生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復するよ。僕は『もけもけ』を生け贄に捧げて、その攻撃力、3000ポイントのライフを回復するよ。」 敵残ライフ 6600

くっ!?ライフの差が一気に倍以上にひらいてしまった。

「更に永続罠『人海戦術』を発動してターンエンド。『人海戦術』の効果により、各ターンのエンドフェイズ時、そのターン戦闘によって破壊された自分の星2以下の通常モンスターの数だけ、デッキから星2以下の通常モンスターを選択して自分フィールド上に特殊召喚するよ。僕は『ハッピー・ラヴァー』(攻撃力800)を特殊召喚するよ」

「……僕のターン、ドロー!」

……拙いな。『最終突撃命令』か。

このカードがある限り、裏側守備表示でセットしても、攻撃されて表になった瞬間、その効果により強制的に攻撃表示になり、バトルが行われてしまう。自爆特攻を止められない。

……つまり、守備表示で相手の自爆特攻を防ぎつつ墓地を肥やす戦法が使えなくなってしまった。

ならば……

「『針虫の巣窟』で墓地に送られた『馬頭鬼』の効果を発動!墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する!墓地のアンデット族の『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を特殊召喚!」

防御が駄目なら攻撃あるのみ!……ですよね城之内さん!

幸い、相手の『ハッピー・ラヴァー』も『最終突撃命令』の効果で攻撃表示だ。

「『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)で『ハッピー・ラヴァー』(攻撃力800)に攻撃!『アンデット・メガ・フレア』!」

「うわっ!?」 敵残ライフ 5000

『真紅眼の不死竜』の吐いた火球に向かって『ハッピー・ラヴァー』も炎を吐くが、敵う筈もなく、そのまま火球に飲み込まれ、爆砕された。

「更に『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)でダイレクトアタック!」

「うわぁ!?」 敵残ライフ 3800

『ピラミッド・タートル』の体当たりがもけ夫君に直撃する。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「うぅ、じゃあ、永続罠『人海戦術』の効果でデッキから『もけもけ』を特殊召喚するよ」

……キツイな、ここで『ピラミッド・タートル』がやられたら僕のライフは残り900ポイント、もう崖っぷちだ。

しかも、僕のデッキのもう1枚の『真紅眼の不死竜』はさっきの『針虫の巣窟』で墓地に行ってしまっており、『ピラミッド・タートル』がやられても特殊召喚出来ない。

……ヒジョーにキビしー状態だ。

「僕のターン、ドロー。僕は魔法カード『闇の量産工場』を発動。自分の墓地から通常モンスター2体を選択して手札に加える。僕は『もけもけ』と『ハッピー・ラヴァー』を1枚ずつ手札に加えるよ。そして魔法カード『融合』を発動」

まさか!?

「手札の『もけもけ』2枚とフィールドの『もけもけ』1体を融合して『キング・もけもけ』(攻撃力300)を融合召喚」

『キングもけもけ〜』

凄く、大きいです!?

つーか本当にデカ!何この大きさ!?

原作では確かにデュエルアカデミアの校舎と同等の大きさだった気がするけど、三幻神や三幻魔、地縛神並か?この大きさは。

……因みに、そのままだとデュエル場の天井に着いてしまうのでその巨体を屈めているのが少し面白い。

「更に『ハッピー・ラヴァー』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚。そして『キング・もけもけ』(攻撃力300)で『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)に攻撃、『キング・もけもけウェーブ』」

『もけもけ〜!』

うぎゃー、またか!つーかさっきより強力だし!

こ、鼓膜が破れるって!破れたら訴えて多額で勝ちますからね社長さん!?

ワイト達もアパ○チのおたけびを喰らったサ○シャインみたいに砂化してるし!大丈夫!?

……つーか早く反撃お願い『ピラミッド・タートル』、そろそろマジで耳がヤバイ……

……『ピラミッド・タートル』は亀らしくそのピラミッド状の甲羅に首を引っ込める事で音波をシャットアウトし、そのまま体当たりをした。 敵残ライフ 2900

……あのデカさなら音波とか出さずにそのまま倒れ込んで来た方が強くないか?多分。

「『キング・もけもけ』の効果により、『キング・もけもけ』がフィールド上から離れた時、自分の墓地に存在する『もけもけ』を可能な限り特殊召喚する事が出来るよ」

『『『もけもけ〜』』』

っく!相手フィールド上に『もけもけ』が3体と『ハッピー・ラヴァー』!決めに掛かって来たか!

「『ハッピー・ラヴァー』(攻撃力800)で『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)に攻撃、『ハッピー・バーニング』」

先程と同じ様に、『ピラミッド・タートル』は『ハッピー・ラヴァー』を返り討ちにした。 敵残ライフ 2500

が、

「この瞬間、永続魔法『怒れるもけもけ』の効果により、フィールド上の『もけもけ』の攻撃力は3000になるよ」

っく!?スーパーモードの『もけもけ』が3体も……トリプルガイア○ラッシャーでも飛んでくるか!?

「『もけもけ』一号(攻撃力3000)で『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を攻撃。『もけもけウェーブ』」

『もけもけ〜!』

「いぎぎぎ……」

『真紅眼の不死竜』が火球を吐いて応戦するが、『もけもけ』の発する音波に掻き消され、そのままその音波で粉砕された。 自残ライフ 2100

……と言うか、もう耳が本格的にヤバイ。頭もガンガンしてきた。

「この瞬間、永続魔法『弱者の意地』の効果により、デッキからカードを2枚ドロー、更に『もけもけ』二号(攻撃力3000)で『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)に攻撃、『もけもけウェーブ』」

『もけもけ〜!』

「くぁwせdrtfgyふじこlp!?」

『ピラミッド・タートル』は先程の様に首を引っ込めたが、今度はそれも効果無く、その甲羅ごと音波で粉砕された。 自残ライフ 300

……こ、これ以上喰らったら、難聴になる……

「ピ、『ピラミッド・タートル』の効果発動、このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスターを特殊召喚……」

……くっ!これしかない!

「『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)を特殊召喚……」

「最後に『もけもけ』三号(攻撃力3000)で『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)に攻撃。『もけもけウェーブ』」

「くっ!?」

『もけもけ』の発した音波が『ゾンビ・マスター』を粉砕。……する瞬間、『ゾンビ・マスター』の目の前に障壁が現れ、音波を防いだ。

「あれ?」

「……墓地にある『ネクロ・ガードナー』の効果を発動。墓地にあるこのカードをゲームから除外することで、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にします……」

……さっきの罠カード『針虫の巣窟』によって墓地に送られていたこのカード……使ってなくて良かった……

……だが、絶対絶命なのには変わりない。

「僕は速攻魔法『非常食』を発動、このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送り、墓地へ送ったカード1枚につき、1000ポイントライフを回復するよ。僕は永続魔法『弱者の意地』と永続罠『人海戦術』を墓地に送り、ライフを2000ポイント回復するよ。これでターンエンド。」 敵残ライフ 4500

……成る程、永続罠『最終突撃命令』の効果で強制的に攻撃表示になってしまうこの状況だと、『人海戦術』でモンスターを特殊召喚しても攻撃表示になってしまい、先に『もけもけ』を攻撃された後にそのモンスターを攻撃されて余計にダメージを喰らってしまう。

ならば、『人海戦術』を破壊してフィールドのモンスターを『もけもけ』だけにする方が受けるダメージも少ない、という訳か。

……それは同時に、今、もけ夫君の手札に自爆特攻用のモンスターがあるという事でもある。

……将に絶対絶命。

そして一瞬、「もう無理だ」と諦めてしまった。

「そうだよ。デュエルなんてどうでもいいじゃない」

『もけもけ〜』

……あ……

僕の頭に生まれたその隙に、もけ夫君達の言葉によって「どうでもいい」という感情が芽生え、頭をじわじわと侵食してくる。

……そうだ、もうどうでもいいじゃないか。

……早くデッキの上に手を置いてサレンダー(降参)するんだ。そうすれば楽になる……

そんな衝動に駆られ、デッキの上に手を置こうと……

「和希ぃ!」

「!」

……と、後ろの観客席から聞こえた。

振り返ると、十代君が大声を上げていた。

「オレと決勝で戦うんだろ!?最後まで諦めんな!」

「……」

はは……

ははははは……

「あっははははは……」

笑いが込み上げてくる。

今のは効いた。最高の気付けだ。

僕はもけ夫君に向き直りながら、後ろの十代君に見えるように親指を立てた。

「あれ?おかしいな。何でまだそんなにやる気なの?」

「この先に、楽しい事が待ってるからですヨ!僕のターン!ドロー!」

……そうだ、この先には十代君が待っててくれてるんだ。待たせちゃあ悪いよね!

……よし!イケる!

「『ゾンビ・マスター』の効果により1ターンに1度だけ、手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、自分または相手の墓地に存在する星4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する事が出来る!僕は手札の『ゾンビ・マスター』を墓地に送り、そのままその『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)を特殊召喚!更にその『ゾンビマスター』の効果により、手札の『魂を削る死霊』を墓地に送り、墓地の『ワイトキング』を特殊召喚!そして罠カード『連鎖破壊』を発動!攻撃力2000下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時発動、そのモンスターのコントローラーの手札とデッキから同名カードを全て破壊!」

これにより、デッキから墓地に『ワイトキング』が2枚送られ、『ワイトキング』の攻撃力は2000。

「でも、そんなにモンスターを並べても意味がないんじゃない?」

そう、このまま攻撃しても、1体目の『もけもけ』を破壊した時点で永続魔法『怒れるもけもけ』の効果により、残りの『もけもけ』の攻撃力は3000になり、残りのモンスターが攻撃出来ない。……そう、このままならね!

「更に手札から、フィールド魔法『アンデットワールド』を発動!」

「え……」

フィールドの背景が墓場へと変わり、様々なアンデットモンスターが……てんやわんや騒いでいる。……流石ワイト達のお友達……

「ははは、楽しそうだね。それで?どうなるの?」

「『アンデットワールド』がフィールド上に存在する限り、フィールド上及び墓地に存在する全てのモンスターをアンデット族として扱い、更にこのカードがフィールド上に存在する限り、アンデット族以外のモンスターを生け贄召喚をする事はできない。よって、君のフィールドのモンスター、及び君の墓地のモンスターもアンデット族になる!」

「え……」

『『『もげもげ〜』』』

アンデット化し、半ばゾンビと化した『もけもけ』達だが、『もけもけ』達も騒ぎに加わり、何やら楽しそうだ。

「もけもけが、あんなに生き生きと楽しそうに……」

……アンデットになったのに生き生きとはこれ如何に。

「『怒れるもけもけ』は天使族モンスターが破壊された時に効果が発動する。よって『アンデットワールド』によってアンデット族になった『もけもけ』が破壊されても効果は発動されない!」

「そんな……」

ふふふ、怒りでは駄目なのデスヨ!怒りでは!

「『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)2体で『もけもけ』(攻撃力300)2体に攻撃!」

「うわっ!?」 敵残ライフ1500

『ゾンビ・マスター』達が手から放った怪念波により、『もけもけ』達は粉砕された。

「そして『ワイトキング』(攻撃力2000)で最後の『もけもけ』(攻撃力300)に攻撃!『ホーンテッド・ナイトメア』!」

「うわぁぁぁ!?」 敵残ライフ 0



な、なんとか勝てた。『もけもけ』恐るべし。

「ありがとうございました」

デュエルが終わり、もけ夫君と握手する。

「君の言う事も一理あるみたいだね。あんなに楽しそうなもけもけは初めて見たよ」

……アンデット化しちゃったけどね。

「ふぁ、でも今は疲れて眠くなってきちゃった。お休み……。」

と、横になり眠ってしまうもけ夫君。……どんだけマイペースなのさ。

「やったぜ和希!」

と、十代君が観客席からデュエル場に降りて来た。

「さっきはありがとうね、十代君」

「へへ、いいって事よ。お前との決勝の為だからな」

いよいよ十代君との決勝か。ヤバイな、武者震いが止まんないや。

「あれ?他の人達は?」

「あー、それがな……」

……そう言えば、やけに静かなような……

辺りを見回すと……

「……あらららら」

皆ことごとく寝息をたてていた。翔君達や、あの亮さんまでも同様のようだ。……流石に亮さんは『もけもけ〜』とはならなかっただろうけど……つーかなってたら見てみたい。

……やっぱ凄いなシルバー・チャリオッツ・レ○イエム……もといもけもけの力は。……あのまま続いていたら魂が入れ代わったり、『別のもの』に変化しちゃうんじゃないの?

……あまりのもけもけの力に、防護服のマスクが壊れたクロノス教諭も寝ちゃってるし……

やっぱり十代君には効かなかったようだが。

「……どうする?」

いや、どうするって言われても、実は……

「ふぁ……」

「和希?」

……僕も限界な訳で……

「……ごめん、あとはよろしく……」

「ちょ!?おい!?」

その場に座り込み……

「お休み〜」

「えー!?」

……結局、決勝は後日に延期となった。

……余談だが、近くの海岸では多数の魚が『キング・もけもけウェーブ』の音波で気絶して水面に浮いていたそうだ。……やはりもけもけ、恐るべし……



今日のワイト

和「参りましょう、今日のワイトひとーつ!」

3ワイト「「「カタ・カタ・カタータ!(トン・トン・ワシ○トン)」」」

和「『もけもけ』、星1、光属性、天使族、攻撃力300守備力100、効果無し、……単体では役に立たないが、サポートカードによって化けるカードですね。『ワイト』の天使族版とも言えますか。……今日のワイトふたーつ!」

3ワイト「「「カタカタカタカタ カタカタタ!(母ちゃん父ちゃん ロド○ゲス)」」」

和「その専用サポートカードである永続魔法『怒れるもけもけ』、『もけもけ』が自分フィールド上に表側表示で存在している時、自分フィールド上の天使族モンスターが破壊された場合、このターンのエンドフェイズまで自分フィールド上の『もけもけ』の攻撃力は3000になる。……『もけもけ』を使う上では要のカード。
このカードと相性がいいのが永続罠『人海戦術』、各ターンのエンドフェイズ時、そのターン戦闘によって破壊された自分の星2以下の通常モンスターの数だけ、デッキから星2以下の通常モンスターを選択して自分フィールド上に特殊召喚し、その後デッキをシャッフルする。……自爆特攻が必要な『怒れるもけもけ』とは相性が抜群。更に、その他のデッキでも、このカードは相手のエンドフェイズ時にも発動する為、毎ターン高確率で壁や生け贄を確保出来るので、使えなくもない。
同様に相性がいいのが速攻魔法『神秘の中華なべ』、自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げ、生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する。……『怒れるもけもけ』の効果はそのターン内のみなので、このカードで自爆特攻の分のライフを回復させれば無駄がありません。……今日のワイトラストー!」

3ワイト「「「カタカタカタカタ カタカタカタカタ(ち○うだいちょ○だい 魂ちょう○い)」」」

和「『キング・もけもけ』、星6、光属性、天使族、攻撃力300守備力100、融合『もけもけ』+『もけもけ』+『もけもけ』このカードがフィールド上から離れた時、自分の墓地に存在する『もけもけ』を可能な限り特殊召喚する事ができる。……破壊されたら一気に『もけもけ』が3体揃い、永続魔法『怒れるもけもけ』の効果が発動すればそのことごとくが攻撃力3000、更に、自分フィールド上に同名通常モンスターが3体存在する時、発動ターンのみ、そのモンスターが直接攻撃できる魔法カード『デルタ・アタッカー』を使えば、ライフ8000でも1ターンキルが可能、将に脅威!……今日のワイトおまけ!」

3ワイト「「「カタタタ!(フ○ッシュ!)」」」

和「ちょ!?それ違……ま、いいか、永続魔法『弱者の意地』、自分の手札が0枚の場合、自分フィールド上に存在する星2以下のモンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキからカードを2枚ドローする。……サポートカードで強化しやすい『ワイト』や『もけもけ』の為のようなカードですね。永続罠『最終突撃命令』、このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に存在する表側表示モンスターは全て攻撃表示となり、表示形式は変更できない。……裏守備表示のモンスターも、強制的に攻撃表示でのバトルとなる為、自爆特攻がメインなデッキには欠かせないカード。因みに社長が使っていた原作版は更に『デッキの枚数が残り3枚になるようにデッキからカードを選んで墓地に送る』というトンデモな効果もありました。では最後に……君達は駄目だ!」

3ワイト「「「!?」」」



あとがき

どうも、最近十日に一話更新が目標の八王夜です。

……つーか幕間含めてもう二十話なのにまだ一年目とは……

……二年目三年目の内容が薄くならないかかなり心配だったりします。

早速改正、TUNE様、132+123様、遼様、鴉様、御指摘ありがとうございます。



[6474] 第十五話 決勝 正義のHERO vs 最弱(さいきょう)の死者
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:36d75b5d
Date: 2011/07/12 23:42
「……」

「……」

「……」

「……」

もけ夫君とのデュエルから数日後、いよいよ十代君との決勝を翌日に控えた。

僕達は今、それぞれのデッキの調整をしている。

お互い、相手のデッキが見えない様に、床に背中合わせに座りながらである。

翔君や隼人君も、黙ってそれを見守っている。

……まぁ、こんな所かな。

「……よし、こんなものか」

……どうやらあちらも調整が終わったようだ。

「出来はどう」

「へへ、バッチリだぜ。お前は」

「まぁ、ぼちぼちかな」

「……」

「……」

さ、流石に口数が少ないッス……

無理も無いんだなぁ。明日の決勝の対戦相手だからなぁ……

「……んじゃ、ゴー○デンアイでもやろっか」

「おう、いいぜ」

「「ズコー」」

……リアクションが古いよ二人共。

「な、何でそんな和気藹々としてるんだなぁ」

「……別にいつもと変わんないだろ」

「それがおかしいっス二人とも明日の対戦相手同士でしょ」

「そんな気にする事でもないじゃない」

「そうだぜ別に対戦相手になったからって、もう仲間じゃない、なんて事ないだろ」

「そ、それはそうだけど……」

……さりげに『仲間』って言って貰えて物凄く嬉しかったりする。

「……全く、こっちはどっちを応援しようか迷ってるっていうのに……」

また無駄な心配してるし。

「うーん、ベタだけど、『どっちも頑張れ』でいいんじゃないの」

「そうだよな、どっちが勝っても、オレらの仲間の内の一人が代表だしな」

「……はは、確かに、違いないんだなぁ」

「隼人君まで……」

「翔、この二人なら多分心配いらないんだなぁ。どっちかが勝って、どっちかが負けたりしても、そのせいで遺恨なんかが残りっこないんだなぁ」

「……」

「……あ、でも若干僕の方に応援強めでヨロ」

「あ、ずりーぞ」

「はは、考えておくんだなぁ」

「おい」

「十代、和希はそれだけ自信がないんだなぁ」

むぅ、隼人君も言うようになったな。

「……本っ当に緊張感ないんだから……」

「はは、二人もやんないゴ○ルデンアイ」

「おう」

「……いいけど、グレネードランチャーはやめてね」

「えーなんでよー」

何処ぞのトマトちゃんも大絶賛じゃんグレラン。

「だって和希君曲がり角の先から反射させて当ててくるし。あんなの避けられないっス」

「ふふふ、修練の賜物と言ってくれ給へ」

「……物凄い無駄な修練っスね」

翔君も苦笑しながらコントローラーを握った。

……さて、明日の為にもモチベーションを上げますかね。



ズガガガガ………

ダラッタラ〜♪

「はーっははは、見ろ、人がゴミのようだ〜」某大佐風

ズカーン

ダラッタラ〜♪

「だートイレん所にモーションセンサーしかけんなー生き返った瞬間死亡確定じゃねーか」

「……流石にここまで緊張感がないのはどうかと思うっス」



翌日、いよいよその時が来た。

「ではこれより、代表決定トーナメント決勝戦を行うのニャ」

……なんでクロノス教諭じゃなくて大徳寺先生が

「なお、クロノス教諭が急病の為、今回は私、大徳寺が代わりを務めさせて貰うのニャ」

……オシリスレッド二人が勝ち残っちゃったからか仮病なのか、はたまたショックで本当に寝込んでいるのか。

「オシリスレッドから遊城十代選手。同じくオシリスレッドから朝倉和希選手」



「……いよいよ始まるんだなぁ」

「うぅ、緊張してきた……」

「面白いデュエルになりそうだな」

「あ、お兄さん。それに明日香さんも」

「カイザー、あなたはどちらが勝つと思いますか」

「あれ三沢君居たんだ」

「……ずっと居たぞ」

「……正直な所、どちらとも言い難いな」

「「「「え」」」」

「……カイザーともあろう者が、やけに曖昧な言い方をするのね」

「あの二人の腕はほぼ互角だ。強いて言うならば、短期戦ならば速攻性のある十代に、長期戦ならば潜在パワーの高い朝倉にそれぞれ分がある、と言った所だろう」



「それでは早速、決勝戦を始めるのニャ」

「いくよ」

「おう」

「「デュエル」」

「僕のターンドロー」

十代君のデッキで怖いのは、やはり『融合』を使った速攻。特にライフポイントが4000であるこの世界において、下手にモンスターを召喚して『E・HERO フレイム・ウィングマン』でやられたりしたら目も当てられない。

『E・HERO フレイム・ウィングマン』、言わずと知れた初期の十代君のフェイバリットカード。星、風属性、戦士族、攻撃力2100守備力1200、『E・HERO フェザーマン』『E・HERO バーストレディ』の融合モンスター、このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

攻撃表示のモンスターを戦闘破壊すれば、戦闘ダメージと効果のダメージとで事実上2100ものダメージを相手に与える。ライフ4000のルールにおいては中々脅威のカードだ。

……ここは……

「モンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド」

とりあえず、様子見だ。

「オレのターンドロー魔法カード『強欲な壷』を発動デッキからカードを2枚ドローそして早速いくぜ魔法カード『融合』を発動手札の『E・HERO フェザーマン』と『E・HERO バーストレディ』を手札融合『E・HERO フレイム・ウィングマン』攻撃力2100を融合召喚」

いきなりキター

「更に『E・HERO ワイルドマン』攻撃力1500を攻撃表示で召喚そして、『フレイム・ウィングマン』攻撃力2100で裏側守備表示モンスターに攻撃『フレイム・シュート』」

ふふふ、甘いよ

「僕の守備表示モンスターは、ワイト夫人守備力2200だよ」

「げっ」

『フレイム・ウィングマン』が炎を放つも、『ワイト夫人』は手に持つ扇を仰ぎ、その烈風で炎を掻き消した。凄ぇそんなん出来んの芭蕉扇それ 敵残ライフ 3900

……守備表示モンスターの守備力の方が攻撃モンスターの攻撃力よりも高い場合、攻撃モンスターは破壊されないが、その差の数値分、攻撃側はダメージを受ける。

「フフフ、慌てちゃ駄目だよ十代君。デュエルはまだ始まったばかりだよ」

「ちぇ、オレはリバースカードを2枚セット、更に永続魔法『悪夢の蜃気楼』を発動してターンエンドだぜ」

「……いきなり全開だね……」

1ターン目から手札全部使ってるし。

「お前相手に、出し惜しみはしてられないからな」

「ふふふ、それはどうも。僕のターンドロー」

「この瞬間、永続魔法『悪夢の蜃気楼』の効果発動相手のスタンバイフェイズ時に、自分の手札が4枚になるようにカードをドローする」

……そして自分のスタンバイフェイズ時に、その効果でドローした枚数分だけカードを手札からランダムに捨てるのだが……

おそらく、あのリバースカードの内の1枚は速攻魔法『非常食』、このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送り、墓地へ送ったカード1枚につき、1000ポイントライフを回復するカード。

このカードで『悪夢の蜃気楼』を墓地に送り、手札を捨てるデメリットを回避する上、ライフを1000ポイント回復させる、なかなか厄介なコンボである。

因みに、元の世界では『悪夢の蜃気楼』は禁止カードである。良い子の皆、このコンボを真似しちゃダメだぞお兄さんとの約束だ。

……まぁ、ここはスルーしかないか。

「『ワイト夫人』を生け贄に捧げ、『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を攻撃表示で召喚『真紅眼の不死竜』攻撃力2400で『フレイム・ウィングマン』攻撃力2100に攻撃『アンデット・メガ・フレア』」

「くっ、リバースカード発動『非常食』このカードの効果により、『悪夢の蜃気楼』を墓地に送り、ライフを1000ポイント回復する」 敵残ライフ 4900

やっぱりか。だが、戦闘はそのまま行われる。

「う……ぐ……」 敵残ライフ 4600

『フレイム・ウィングマン』の炎と『真紅眼の不死竜』の火球は一時拮抗していたが、やがて、『真紅眼の不死竜』の火球が押し勝ち、『フレイム・ウィングマン』に命中した。

……よし、ここで『フレイム・ウィングマン』を倒せたのは大きい。『フレイム・ウィングマン』は効果は強いが、融合モンスターとしては攻撃力が2100と弱冠低い。『ジャイアント・オーク』星4、攻撃力2200にも負けてしまう。

しかし、それが『摩天楼スカイスクレイパー』で強化された時、本当に脅威となってくる。

『摩天楼スカイスクレイパー』、これも言わずと知れた十代君の使うフィールド魔法、『E・HERO』と名のつくモンスターが攻撃する時、攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。

しかも、原作では相手から攻撃を受ける時も攻撃力がアップしていた。おそらくこちらの世界でも同様だろう。

これで強化されれば、『フレイム・ウィングマン』の攻撃力は3100、そして勿論、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えるその効果も健在である為、事実上、攻撃表示のモンスターを戦闘破壊されれば、戦闘ダメージと効果のダメージで3100ポイントのダメージ。一発で勝負を決められかねない。

「……罠カード発動『英雄変化リフレクター・レイ』自分フィールド上に存在する『E・HERO』と名のついた融合モンスターが戦闘によって破壊され墓地に送られた時に発動破壊された融合モンスターの星×300ポイントダメージを相手ライフに与える」

げっ

「『フレイム・ウィングマン』の星は6。よって1800ポイントのダメージだぜ」

「のわっち」 自残ライフ 2200

未だ轟々と燃え盛る火球の炎の中から、その炎を纏った『フレイム・ウィングマン』が跳び上がり、特攻してきた。

「へへへ、やられっぱなしはごめんだからな」

「あちち……そう簡単にはいかせてくれないか。リバースカードを1枚セットしてターンエンドだよ」

だが、『フレイム・ウィングマン』を破壊出来たのには変わり無い。取り敢えず損得ゼロって所か。……微妙に損してる気もするけど……

「オレのターンドローフィールド魔法発動『摩天楼スカイ・スクレイパー』」

周りがアメコミさながらの高層ビルに囲まれた。……ワイト達が某蜘蛛男みたいに飛び回っているけど今はスルー。……スルーもツッコミの内。

「『ワイルドマン』攻撃力1500で『真紅眼の不死竜』攻撃力2400に攻撃『スカイ・スクレイパー』の効果により、『真紅眼の不死竜』より攻撃力の低い『ワイルドマン』の攻撃力は1000ポイントアップし、攻撃力は2500」

……どうでもいいけど、E・HEROなのに『スカイ・スクレイパー』とマッチしないなぁ、『ワイルドマン』。

「いっけぇ『ワイルドマン』『ワイルド・スラッシュ』」

「させないよリバースカードオープン」

「『ワイルドマン』には罠カードは通用しないぜ」

「ふふふ、わかってるよ。僕が発動するのは速攻魔法『サイクロン』フィールド魔法『スカイ・スクレイパー』を破壊するよ」

「何」

発動した僕も眼が開けられない程の暴風が吹き、それが鎮まると、周りの高層ビルが跡形も無く消え去っていた。。

「そして戦闘を続行」

「くっ」

『ワイルドマン』攻撃力1500が肉薄し、手にした剣で『真紅眼の不死竜』攻撃力2400に切り付けた。……が、『真紅眼の不死竜』はその剣を噛んで受け止め、そのまま『ワイルドマン』を真上に投げ飛ばし、空中で身動きが出来ない所を追撃の『アンデット・メガ・フレア』で爆砕した。 敵残ライフ 3700

……あ、そういえばさっき、『悪夢の蜃気楼』の効果が発動する前に『サイクロン』で破壊出来てたな、ミスった。……でも『スカイ・スクレイパー』破壊出来たし……ま、いいか。

「くっ……オレはモンスターを1体守備表示でセット。ターンエンドだ」

「僕のターンドロー」

よしここで一気に畳み掛ける

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚効果により手札とデッキから『ワイト』を1枚ずつ墓地に送るよ。そして『真紅眼の不死竜』攻撃力2400で守備表示モンスターに攻撃『アンデット・メガ・フレア』」

火球が守備表示モンスター、機械化された犬のモンスターを飲み込んだ。

「『フレンドッグ』守備力1200の効果発動このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地から『E・HERO』と名のついたカード1枚と『融合』の魔法カード1枚を手札に加える。オレは『ワイルドマン』と『融合』を手札に加えるぜ」

……さっきまで手札が0だったのに、もう手札が5枚、そして『融合』まで。……この膨大な手札消費に見合うだけの豊富な手札補充も十代君のデッキの特徴、気は抜けないな。

「更に『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)でダイレクトアタック」

「う……」 敵残ライフ 2000

……守備表示モンスターが守備力2000の『E・HERO クレイマン』辺りだと思ったが、これだったら『ダーク・グレファー』から先に攻撃した方がよかったな。……まぁ、これはしょうがない。

「ターンエンド」

「……流石に強ぇな、面白くなってきたぜオレのターンドロー手札から魔法カード『融合』を発動『E・HERO ワイルドマン』と『E・HERO エッジマン』を手札融合『E・HERO ワイルドジャギーマン』攻撃力2600を攻撃表示で融合召喚」

来たか『ワイルドジャギーマン』、単純なE・HERO2体の融合のモンスターの中では最高の攻撃力2600、そして相手のモンスター全てに1回ずつ攻撃できる全体攻撃能力……

「いっけぇ『ワイルドジャギーマン』『インフィニティ・エッジ・スライサー』2連斬」

『ワイルドジャギーマン』攻撃力2600は『真紅眼の不死竜』攻撃力2400を袈裟掛けに切り倒し、返す剣で『ダーク・グレファー』攻撃力1700も切って落とした。 自残ライフ 1100

「ターンエンドだぜ」

……流石だ、一気に戦況をひっくり返して来た。

……でも、僕のデッキのこのカードを忘れて貰っちゃ困るよ

「僕のターンドロー『ワイトキング』を攻撃表示で召喚」

「遂に出やがった」

「今僕の墓地には『ワイト夫人』が1枚と『ワイト』が2枚、よって『ワイトキング』の攻撃力は3000だよ」

「く『ワイルドジャギーマン』を上回ってやがる……」

「『ワイトキング』攻撃力3000で『ワイルドジャギーマン』攻撃力2600に攻撃『ホーンテッド・ナイトメア』」

「うわ……」 敵残ライフ 1600

……よし、強敵『ワイルドジャギーマン』も倒せた。このデュエル、イケる

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド」

「……くオレのターンドロー『E・HERO クレイマン』(守備力2000)を守備表示で召喚、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド……」

……ここで攻撃力1600以上のモンスターを引ければ勝てるかもしれないのだが……

「僕のターンドロー」

……僕が引いたのは……

「モンスターを裏側守備表示でセットそして『ワイトキング』攻撃力3000で『クレイマン』守備力2000に攻撃」

「リバースカードオープン罠カード『ヒーローバリア』自分フィールド上に『E・HERO』と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を度だけ無効にする」

『ワイトキング』の『ホーンテッド・ナイトメア』が『クレイマン』の前に現れた障壁に掻き消された。

……成る程、だから表側守備表示で召喚したのか……

「……粘るね。ターンエンド」

「オレのターンドロー魔法カード『ホープ・オブ・フィフス』を発動自分の墓地に存在する『E・HERO』と名のついたカードを5枚選択し、デッキに加えてシャッフル、その後、自分のデッキからカードを2枚ドローするオレは『フェザーマン』『バーストレディ』『フレイム・ウィングマン』『エッジマン』『ワイルドマン』を戻し、シャッフル、そして2枚ドローそして『E・HERO スパークマン』攻撃力1600を攻撃表示で召喚」

こ、攻撃表示

「更に装備魔法『スパークガン』を装備このカードは『スパークマン』にのみ装備可能自分のターンのメインフェイズ時に表側表示モンスター1体の表示形式を変更する事ができるオレは『ワイトキング』を守備表示に変更」

……成る程、守備表示になった『ワイトキング』の守備力は……0

「『クレイマン』を攻撃表示に変更して攻撃力800で『ワイトキング』(守備力0)に攻撃『クレイ・ナックル』」

『クレイマン』の拳の一撃により、『ワイトキング』が粉砕された。

「……く『ワイトキング』の効果を発動このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地の『ワイトキング』または『ワイト』体をゲームから除外する事で、このカードを墓地から特殊召喚する『ワイト』を除外して、『ワイトキング』攻撃力2000を攻撃表示で特殊召喚」

「まだだ『スパークマン』攻撃力1600で守備表示モンスターに攻撃『スパークフラッシュ』」

「守備表示モンスターは『魂を削る死霊』守備力200戦闘では破壊されないよ」

「何」

『スパークマン』が9



[6474] デッキ紹介(随時更新)
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:e8e8d0c6
Date: 2011/06/10 09:44
和「今日は僕が使うデッキのベースをご紹介~」

3ワイト「「「カタカタ」」」

和「因みに、多少ネタバレになってしまうので紹介するのは既出のカード+αのみ。未出のカードは?となっています。ご了承下さい。その編は本編(?)で登場次第更新していきます」



デッキ



上級モンスター 2枚

真紅眼の不死竜×2

下級モンスター 25枚

ワイト×3
ワイト夫人×3
ワイトキング×3
ダーク・グレファー×2
ゾンビマスター×2
馬頭鬼×2
デス・ラクーダ×2
ライトロード・ハンターライコウ×2
魔導雑貨商人×2
ピラミッド・タートル×2
魂を削る死霊×1
メタモルポット×1

魔法 13枚

強制転移×2
月の書×2
おろかな埋葬×2
大嵐×1
手札抹殺×1
サイクロン×1
光学迷彩アーマー×1
生者の書-禁断の呪術-×1
アームズ・ホール×1
異次元からの埋葬×1

罠 5枚

聖なるバリア-ミラーフォース-×1
激流葬×1
グラヴィティバインド-超重力の網-×1
リビングデッドの呼び声×1
光の御封壁×1



和「続いてサイドデッキ(予備カード)。こちらの方も登場したカードから段々と増やしていきます」



サイドデッキ(気分によってデッキのカードと交換)

上級

龍骨鬼

下級

終末の騎士
ネクロ・ガードナー


魔法

トライアングル・パワー
ミイラの呼び声
下克上の首飾り
アンデット・ワールド



同姓同名同盟
連鎖破壊
針虫の巣窟



あとがき

感想に『レシピを教えて欲しい』とあったのでこんな感じで。因みに作者は基本的に『真紅眼の不死竜』の代わりに龍骨鬼を、『アンデットワールド』の代わりに『下克上の首飾り』を入れてます。

『龍骨鬼』の方が、ダブった時片方を『ダーク・グレファー』の効果で捨て、『ダーク・グレファー』を特殊召喚、その『ダーク・グレファー』を生け煮えにもう1枚の『龍骨鬼』を召喚……と言った風な事が出来るので。

真紅眼を使ってるのはただ単にその方がカッコイイから!(オイ)真紅眼を使うならと、『アンデットワールド』も投入。

……でもこれから先、真紅眼が『龍骨鬼』に場所を取られそう。恐竜君に場所取られたどっかの誰かみたいに……頑張れ真紅眼!

……因みに、ルール上、本来サイドデッキは15枚なんですが、多分軽くオーバーします。その辺も御容赦を。


7/25 更新 『針虫の巣窟』は博打要素が高いのでサイドにしました。あと、『アームズ・ホール』よりも『光学迷彩アーマー』を増やした方が数体の『ワイトキング』に装備出来たりするので、その方が良ければそちらも良し

9/3 更新 新しい制限・禁止に伴って内容を変更。それに伴い『真紅眼の不死竜』と『ピラミッド・タートル』をサイドに。その結果フィールドにモンスターがかさばりやすくなったので『光学迷彩アーマー』も増やしました。

11/3 再び更新。やはり『光学迷彩アーマー』2枚は事故の元っぽいので……なんか枚数が段々増えてきたorz



[6474] 幕間 グ○ンダ-和希 レボリューション
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:46
「あー、どうしよう。……こいつを入れるならこいつはいらないし、こいつを入れるなら勿論こいつはいらない。……はぁ……」

「いやいや、ここは『ウォーター・ドラゴン』を入れよう。炎属性には圧倒的に有利だ」

「『エトワール・サイバー』も入れるべきよ、直接攻撃の破壊力が違うわ」

「『デス・コアラ』もいいんだなぁ」

「あの、僕の『パワー・ボンド』も……」

……皆無茶苦茶言ってるな。……あ、十代君の肩が震えだした。

「だー!うるさい!邪魔すんなよ!」

お気の毒に。でも面白いので放置。

「何も邪魔をしているわけじゃない。今度のデュエルは学園の名誉を賭けた戦いだ。だから俺達も一緒に戦うつもりで……」

「そうよ。学園の為なんだから」

……言ってる事は立派だけど、どこからどう見ても邪魔だし私利私欲の為です。本当にありがとうございました。あと三沢君、実際に賭けられているのはトメさんのキスだから。

「冗談じゃない!学園の為になんかにデュエルするかよ!これはオレのデュエルなんだ。オレは楽しむためにやってるんだよ!」

「ふふふ……」

「? どうしたの和希君?」

「あーいや、十代君らしいなと思ってね」

……この純粋にデュエルを楽しむ姿勢を、なんとか失って欲しくないな。

「わかるぜその気持ち。デュエルは他人の為にやるんじゃない。自分の為にする物だもんな」

「ええ」

「だが十代!……俺の『ウォーター・ドラゴン』も入れてくれないか?」

「僕の『パワー・ボンド』も」

「『ブレード・スケーター』も」

「『デス・コアラ』もいいんだなぁ」

……全然わかってないし。

「だー!うるさいうるさい!」

……ははは、取り敢えず今は、そろそろ皆を止めてあげるべきかな。

「はーい、皆ストーップ」

「「「「あ」」」」

僕は、皆が十代君に提示していたカードを素早くひったくった。

「全く、アカデミア対抗デュエルで自分のカードを使って貰いたい気持ちもわからないでもないけど、皆ちょいと勝手過ぎないかい?」

「べ、別に自分のカードを使って貰いたい訳じゃ……」

「あ、ああ。俺は本気で『ウォーター・ドラゴン』を……」

「別に相手が炎属性使いとは限らないでしょ?それに、最低でも他に『ハイドロゲドン』2体に『オキシゲドン』1体、そして魔法カード『ボンディング-H2O』がデッキに必要でしょ?速効性が売りの十代君のデッキを重くしちゃ駄目でしょうに」

「そ、それは……」

「『デス・コアラ』は効果は良いけど、融合デッキ向きのカードではないし、『エトワール・サイバー』や『ブレード・スケーター』は……戦士族だし、融合すれば『サイバー・ブレイダー』になるから他のカードよりは良いけど、E・HERO専用のサポートカードが多い十代君のデッキにはやっぱり入れるのは難しいよ」

「う……」

「確かに……」

「ぼ、僕の『パワー・ボンド』は?」

「……戦士族の融合デッキに機械族専用の融合カード入れてどうするのさ」

「あ」

論外である。……つーか何で言われなきゃわかんないかなぁ。

「大体、さっき『学園の名誉が賭かっている』って言ってたでしょーに。十代君はそんな事気にしちゃいないけど、そんなデュエルに、使い慣れてないカードを使うのもどうかと思うよ?」

「「「「……」」」」

「……と、静かになった所で、真面目に考えようか十代君」

「はぁ、やっと集中してデッキを組めるぜ。……つーかもうちょっと早く止めてくれても良かったんじゃねぇか?」

「はは、で、今現在の問題は?」

「そうだな、こいつとこいつ、どっちを入れた方がいいと思う?」

「うーん、寧ろ、両方入れて、フィールド魔法を『スカイスクレイパー』か『フュージョン・ゲート』のどっちかにするとか?個人的には『スカイスクレイパー』を推すけど?」

「うーん、それもなぁ……」

あーでもないこーでもない……



「……まさか、朝倉から正論を諭されられるとはね」

「和希君、変な所真面目だから……」

「「「「……」」」」

「……僕も、ちゃんと協力しよう。アニキが勝つ為に」

「……そうだな」

「ええ」

「だなぁ」



「……よし、ここで隠し味に『ワイト』を1枚……」

「「「「ちょっと待て(待ちなさい)!」」」」

「お前なぁ……」

「ははは、冗談冗談」



と、そんなこんなで行われた数日後のアカデミア対抗デュエル。

相手側の代表は、やはり万丈目君。無事万丈目サンダーへと覚醒して来たようだ。

デュエルは、万丈目君の『アームド・ドラゴン』のパワーに押されつつも、辛くも十代君が勝利した。

……いやはや凄かった、『アームド・ドラゴン』の迫力も結構凄かったが、何より凄かったのは……

『うおぉぉ!サンダー!』

『万丈目サンダー!』

『万丈目サンダーに栄光あれぇ!』

……ノース校の生徒達の応援だった。……ホームの筈なのに何このアウェイ感。

凄いよなぁ、万丈目君が負けた時、ノース校の応援の皆泣いてたもの。万丈目君、サンダーに覚醒するついでに、固有スキル『カリスマ』でも手に入れた?

なんか声援の一部がおかしい気もしたけど。……あぁ、『七光りだと思われたくない』って繋がりか?元ネタは親でこっちは兄だけど。……だったら負けた時に『我らの愛した万丈目サンダーは負けた!何故だ!?』とかやって欲しかったなぁ。

……あー、因みに、『結果が全てだ』と負けた万丈目君の胸ぐらを掴んだ万丈目君のお兄さんに、『だが過程を経ずして結果は出〜ぬ。結果だけを論ずるアホのする事よ〜』と某仙人の台詞を言いたかった、けど流石に自重しました マル



まぁ、そんなこんなで万丈目君も無事アカデミアに戻り、更に数日が経ち、現在に至る。

今日はというと、十代君達は課外授業に行っている。恐らく今頃、異世界で十代君が『墓守りの長』と闇のデュエルをしている頃だろう。

因みに、僕は今回は留守番をする事にした。というのも、何かの間違いがあって僕がデュエルするようになったらマズいからだ。

普通のアンデット族デッキ程ではないにしろ、墓地からの蘇生を結構多用する僕のデッキにおいて、墓守りの長が使ってくるフィールド魔法『王家の眠る谷-ネクロバレー』による墓地のカードへの魔法・罠・効果モンスターの効果の無効効果は結構厳しい。

……このデュエルは闇のデュエル、僕が負ければ僕の命はない。それだけでなく、十代君達も生きたまま棺に入れられてしまうだろう。分の悪いデュエルは避けたい。

そして、例え十代君がデュエルする事になっても、十代君が苦しむのをただ見ているだけというのも忍びない。

と言うわけで、僕は今回は留守番をしている。大徳寺先生もこの課外授業は自由参加って言ってたし。

あー因みに、十代君達を止めるのも考えたけど、それだと十代君がサラさんから首飾りの片割れを貰えないし、そうすると吹雪さんがダークネスから解放されないかもしれないのでやめた。

で、今現在一人の僕が何をしているかと言うと……

「いっけぇ!スケ○トンG!」

……ビニールシートで地面に腰を下ろしながら、のんびりと釣りをしている。因みに場所は大山君が修行していた滝の近くの渓流である。

暇潰しにもなるし、晩のおかずを手に入れられるし一石二鳥だろう。特に十代君は疲れきって帰ってきそうだし、それでおかずがメザシだけとかは流石に可哀想だし。

カサゴの唐揚げとか美味しいんだけど、海釣りは苦手なので渓流釣りに。マス辺りを塩焼きにするつもりだ。

ピクンッ

! 来た!

「フィ〜ッシュ!」

「……何?言わなきゃいけないルールでもあるの?それ」

「ふぇ?あ……あー」

一瞬、背後の声に気をとられてしまい、バレて(逃げられて)しまった。

「むぅ、ジュンコさーん?」

「な、何よ。アタシのせいだって言うの?」

「……別に。……はぁ……」

僕は声の主、ジュンコさんをジト目でちょっと睨んだ後ため息をつき、釣りを再開した。

まぁ、いくらジュンコさんを責めても、バレた魚が帰って来る訳でもなし、しょうがない。

「……で、何してるの?こんな所で」

「……別に、ただの散歩よ。悪い?」

「……別に何も言ってないでしょうに」

「そう言うアンタは何してんのよ?」

「? 見てわかんない?」

「わかるわよ!何でそんな事してんのって聞いてんの!」

「何でって、暇潰し以外の何でもないんだけど?あと晩のおかずの確保?」

「……じゃ何で課外授業行かなかったのよ」

「うーん、なんとなく?」

「……相変わらず訳わかんないわ」

まぁ、本当の理由を言う訳にはいかないし。適当にはぐらかしとく。

その後、僕は釣りを再開。ジュンコさんは……

「……」

僕の隣に腰を下ろし、それを見ていた。彼女も暇らしい。

「……アンタ、魚食べれないんじゃなかったの?」

「魚の卵は駄目だけど魚自体は大丈夫なの……っと、来た!フィ〜ッシュ!」

「……それやめてくれない?」

「じゃゲェェットォ!」

「それもやめなさい!」

と、言ってる間に魚は目の前まで来ていた。

「よっと」

そこを素早く網で掬い上げる。……ふむ、良いサイズのニジマスだ。

釣れた魚から針を外し、持参のクーラーボックス、はなかったから発泡スチロールの箱に氷を入れた代用品に入れた。

「……こんな玩具みたいなのでも釣れるものなのね」

玩具?あぁ、ルアーね。

「昔、釣り好きな人が川にスプーンを落として、そのスプーンに魚が食い付いたんだって。それがルアー、これの始まりらしいよ?」

「ふーん」

今でも『スプーン』というルアーがあるが、ちょうどスプーンの柄を取ったような形をしているのだ。

「……という訳でやってみる?」

「……何がという訳なのよ。いいわよ別に」

「まま、そう言わずに。何事も経験だよ?」

「……わかったわよ」

と、意外な程すんなりとロッド(釣竿)を僕から受け取るジュンコさん。……どうやらちょっとはやってみたかったらしい。

「……で?」

「……で?」

「……どうやって投げるのかまず教えなさいよ」

「あー、そうか」



その後、数回実演を混ぜて投げるのを教えてから約十分後……

「全然釣れないじゃない!」

「さっきまで普通に釣れてたのになー?」

それも、ジュンコさんがやってるみたいにタダ巻き(ただ巻くだけ)してただけで、特別な動きとかさせてなくても釣れてたんだから、ジュンコさんにも釣れてもおかしくはないんだけどなぁ……?

「……ジュンコさん、魚に嫌われてるんじゃないの?」

「どういう意味よそれ!この……『るあー』?って奴がいけないのよ!」

「……あー、確かにそれはあるかも」

「え?」

「つまり、魚が完全にこのルアーに飽きちゃったのかもしれないって事。それに魚にだって学習能力はあからね。これが偽物だってもう見破っちゃってるのかもしれないね。ちょっとルアーの換え時かもね」

「……じゃあさっさと換えなさいよ」

「ははは、まぁ、釣れないからってそうイラ立たつに……」

「うるさい!」

と言うか勧めといてなんだけど、ジュンコさんって釣りするのにむいてる性格じゃないよなー。当たりをじっくり待つとかできなさそうだし。……流石に叩かれそうだから言わないけど。

「……なんで骸骨のばっかりなのよ」

僕のルアーケースを覗いてそうツッコむジュンコさん。……まぁ、ス○ルトンシリーズで統一してるし、ワイト達の要望で。

因みにそのワイト達は……どこかに行ってしまった。まぁ、釣りをしてる人をただ眺めるだけってのは退屈だからなぁ……

……気持ちはわかるけど、今頃お友達のスカル・ライダー君にまた迷惑かけてないかなぁ。……ごめん、スカル・ライダー君。

……さて、そんな思考を斜め45度に放っぽいて、ルアーをチョイスする事にする。

んー、ここの深さじゃスケル○ンキングを使うには浅すぎるから……

……よし、スケルト○ミノー、君に決めた!

「じゃ、これで」

「……また変なのばっかりね。アンタの使う骸骨そっくりじゃない」

……今頃ワイト達、くしゃみの一つでもしてるんだろうなぁ。



それから更に数分後……

「……やっぱり釣れないじゃない」

「うーん、これも駄目か……」

一応魚が追いかけてるような気配はあるんだけどなぁ……

そして、またルアーを換える事をジュンコさんに提案しようとした……その時。

「き、来たー!」

「嘘!?って言うか釣れたら『フィ〜ッシュ』って……」

「言わないわよ!……というか重っ!?何これ、どうするのよ!?」

「……あー、ちょっと貸してみて」

なーんかおかしいと思って、弓なりにしなっているロッドをジュンコさんから受け取ってみると……

「あー、こりゃ駄目だ」

「なんでよ!?物凄く重いのよ!?大物でしょ!?」

「大物も大物、地球釣ってるよ。これは」

「……は?」

「根掛かり。つまり、岩に挟まったか藻に引っ掛かったりしたかって事」

……やっぱり、引いてみても全く動かないし。こりゃ魚じゃないな。

「ん?」

「……っ!」

……と、肩を震わせているジュンコさん。……あー、ヤバいなこりゃ。

「あー、なんと言うか……次、頑張ろ?」

「次なんてやんないわよ!全然楽しくないじゃない!こんなの!」

ドげし!

「ぐふぉぁ!?」

え、延髄ぃ!?

……座っていた僕の首筋に爪先を叩き込んだ後、肩を怒らせながらジュンコさんは立ち去った。

「さ、流石にこれは……八つ当たりでしょうに……ゲホッゲホッ……痛ぅ……」

僕は生理的に零れた涙を拭いながら、息も絶え絶えに一人ごちた。……やっぱり彼女は釣りにむいてないなぁ。

……全く、別に根掛かりなんて恥ずかしくないのに。僕だって魚と間違えることだってあるし。

……楽しくなかったってのも、釣れたって勘違いしてた時物凄く活き活きしてたのになぁ……

まぁ、いいや。あと数匹頑張るか……って根掛かりしたまんまだし……

……厄日か?今日は。



「ただいま」

「あら、お帰りなさい。どうでしたか?朝倉さんとのデートは?」

「ちょっ!?何でそれを……ってデートって何よももえ!?」

「フフ、ごめんなさい。わたくし、お散歩で小川の辺りを通った時、お二人が中睦まじく談笑してらっしゃるを……」

「中睦まじくなんかなかったし、そもそもデートでも何でもなかったわよ!」

「本当、絵になるようなロマンチックな光景でしたわ……」

「だから違うったらー!」



……翌日、顔を合わせるなりいきなりジュンコさんに殴られた。

……何この理不尽……



※今日のワイトはお休みです



後書き

幻魔編に入る前に幕間をば。

次回は……ダークネスブッキー飛ばしてカミューラ姉さんまで飛びます。ブッキーとの対戦を期待していた人たちには申し訳ないですが。



[6474] 第十六話 はじめてのやみのでゅえる
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:23
……いよいよ、『幻魔』を巡る戦いが始まった。

数日前に遡る。

僕は十代君達と共に三幻魔を封印している七星門の鍵の守護者に選ばれた。

原作では、この守護者は十代君、万丈目君、明日香さん、亮さん、三沢君、クロノス教諭、大徳寺先生の七人だったが、原作では『数合わせ』として選ばれていた大徳寺先生の代わりに僕が選ばれたのだ。

三幻魔、この学園に封印されており、世界を破滅させる程の力を持つと言われる3枚のカード、『幻魔皇ラビエル』『降雷皇ハモン』『神炎皇ウリア』、言わば、三幻神と対となるカードだ。

このカードを狙うデュエルアカデミア理事長、影丸さんが送り込んでくる七人の刺客達、『セブンスターズ』から、7つ七星門の鍵を僕達七人が死守しなければならないのだ。

そしてこの日の夜、早速『セブンスターズ』の一人、失踪したと思われていた明日香さんの実の兄、ダークネス・吹雪さんが襲来して来た。

そして、翔くんと隼人君を人質に取り、十代君と闇のデュエルを繰り広げた。

最初、僕がデュエルする事を申し出たが、受け入れられなかった。十代君と吹雪さんの持つサラさんの首飾りの片割れ同士が共鳴し、ダークネスがそれに興味を持ったからだ。

……結果、十代君は勝ち、吹雪さんをダークネスから解放したが、闇のデュエルにより、ダメージを受けてしまった。

……明日香さんとそれを見守るしか出来なかった事は少々不甲斐なく思ったが、課外授業に行かず、あの首飾りを手に入れなかったのだからしょうがなかった。あの首飾りは十代君がいつも首に掛けていたので、こっそり持ち出す訳にもいかなかったし。

更に、その2日後、セブンスターズの二人目の刺客、吸血鬼(ヴァンパイア)のカミューラさんが襲来して来た。

彼女との初戦は、多分負けてしまうとは思ったが、やはり原作通りクロノス教諭にやって貰った。

クロノス教諭には悪いが、このデュエルにおいてクロノス教諭が、最後まで自分を信じ続け、熱い声援を送り続けた十代君に対する考えを改める、というイベントがあるのだ。

このイベントは、今後のクロノス教諭の教師としての成長において、重要なフラグとなって来る。

……よって、『クロノス・デ・メディチ育成計画』に基づき、クロノス教諭にはカッコよく敗北して貰ったのであった。南無。

……しかし、亮さんがいつになくクロノス教諭の雪辱に燃えてしまってしまい、彼を止められなかったのは誤算であった。

デュエルは、やはりカミューラさんの持つ原作オリジナルの魔法カード『幻魔の扉』、相手のフィールドに存在するモンスターを全て破壊し、更に相手か自分の墓地からモンスターを1体、召喚条件を無視して召喚出来る、という『サンダー・ボルト』+『死者蘇生』というようなこのチートカードの前に、亮さんは負けてしまい、クロノス教諭と同じ様に人形にされてしまった。

それも、まだ逆転のチャンスはあったのに、『幻魔の扉』に必要なコストである『発動したプレイヤーの魂』として、闇のアイテムにより代わりに翔くんの魂を身代わりにされてしまい、言わば人質を取られた上での、不本意な敗北であった。

……これも、僕がどうにかすれば回避出来たのかもしれない。……ごめんなさい。亮さん。十代君。僕のミスのせいで……

……でも、ミスした分は、絶対取り返すから!



「……などと意気込んだものの、どうするかな〜?」

只今部屋……は亮さんがやられたショックで翔君がちょっと塞ぎ込んでしまっているので、隼人君に慰めるのを任せ、レッド寮の食堂で対策を考えている。

因みに、ワイト達に探らせた所、さっきまでは居たようだが、今の所はカミューラさんの偵察であるコウモリは居ないようである。今のうちに対策を練るべきか。

……まぁ、『取り返す』というなら具体的に言うなら、十代君に闇のデュエルの負担を掛けないように、僕がカミューラさんとデュエルして勝ち、亮さんやクロノス教諭を助ける、と言うのが妥当だろう。

だが、デュエルをする場合、ここで1つ問題がある。やはり、あの魔法カード、『幻魔の扉』の存在だ。

あのカードを使われ、亮さんの時同様に、闇のアイテムで十代君達が、このカードのコストである魂の身代わりにされてしまったらどうしようも無くなってしまう。仮に、僕がその後勝っても、『幻魔の扉』のコストとなった魂は、このカードを使用したプレイヤーが敗北した瞬間、幻魔に飲み込まれてしまう。

……今から僕一人だけであのカミューラさんの城に乗り込めればいいんだけど、デュエル中に皆が来てしまう事だって有り得る。

もしかしたら、駆け付けてきた十代君の闇のアイテム、吹雪さんの片割れと合わせた完全な首飾りにカミューラさんの闇のアイテムの効果を打ち消して貰えるかもしれないが、十代君自身がデュエルする訳ではないので、それも希望的観測の域を出ない。頼るのは危険だ。

くっ、考えろ、どうすればいい?ゼ○、僕に勝利を見せてくれ……

……なんか、このカードに対する画期的なカードがあったような……それもつい最近、誰かが使っているのを見た……

……うー、思い出せそうで思い出せない。……何故だ?

「あれ?和希?」

「ん?」

……と、隼人君が食堂に入って来た。

「翔君の様子はどう?」

「何とか少し落ち着いたんだなぁ。だから食事を持ってってやろうって思ってなぁ」

流石隼人君。優しいね。

「……それにしても、嫌な天気なんだなぁ」

「そうだねー、空気が澱んでるよね」

二人して外を見ながら溜め息をつく。

……

待てよ。僕は今なんて……

『空気』が澱んでいる?

……

……そうか!

「これだ!」

「うわぁ!?な、何なんだなぁ?」

確かあのカードは……最近当てた筈。

「ど、どうしたんだなぁ?和希」

「ありがとう隼人君!流石我等が癒し系!」

「い、癒し?お、おい?」

よし!そうと決まったら行動あるのみ!……あぁ、念の為『アレ』も用意しなくちゃ……

僕は食堂を飛び出した。



「闇のデュエルは、闇のアイテムを持っている十代に任せるしかないわ」

「任せろ!」

「……仕方がないな」

「今回だけは譲ってやる」

「でも十代君、無理はしちゃ駄目なのニャ」

「ヘヘ、サンキュー、三沢、万丈目、先生」

「『さん』だ」

「ア、アニキ……」

「心配するなって翔、カイザーやクロノス先生は絶対、オレが助け出してみせるぜ」

「……うん」

「よし、そろそろ行くぜ!」

「……ところで、朝倉の姿が見えないみたいだけど?」

「え?」

「そう言えば……」

「和希ならちょっと前、食堂で会ったんだなぁ」

「食堂って、レッド寮のか?」

「あぁ。途中で何か閃いたって飛び出して行っちゃったんだなぁ」

「……! まさかあいつ!?」

「ア、アニキ!?」

「十代!?」

「皆急げ!もしかしたらあいつ……!」



「……まさか、一人で乗り込んで来るなんてね。勇気があるのかしら?それとも、ただ無謀なだけかしら?」

「さぁ?それは捉えように寄るんじゃないですか?」

肩を竦めて見せる。正直な所、自分に勇気があるだなんて到底思えないし、かと言って無謀でもないとは思うんだけど。ただ危機感がないだけと言うか……

「それに、今回は一人の方が都合が良いですしね」

「……! 成る程、惚けてるようで一筋縄ではいかないようね」

……彼女も流石に頭が切れる。今の言葉だけで僕の言いたいことを理解したようだ。

「……気に入ったわ。おまえも私の人形のコレクションに加えてあげるわ」

「ははは、生憎、人を玩ぶのは大好きですけど、玩ばれるのは大嫌いなんですヨ。全力で遠慮しますよ」

「「デュエル!!」」

「僕のターン。ドロー!」

……よし、狙い通りの手札!

「モンスターを1体、裏側守備表示でセット、更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

と、

「和希ー!」

……あちゃー、もう来ちゃったか。

十代君を先頭に、皆が城内に走り込んできた。

「和希、お前……」

「……全く、何で来ちゃうかなー?」

「「「「「「「はぁ?」」」」」」」

「ふふふふ、折角の計画も水の泡……って所ね」

「……全くデスヨ」

「どういう事だ?」

「だーかーらー、僕一人だけで挑んでいれば、『幻魔の扉』で誰かの魂が人質にならずに済んだでしょーに」

「あ……」

「それは……」

「……確かに」

正直、『幻魔の扉』の効果自体は……それだけでもかなりキツいっちゃぁキツいけど、全く対応出来ない訳でもない。

それよりも、誰かの魂が人質になってしまうと、こうなると手も足も出せなくなってしまう。

「……今すぐにでも外に出て貰いたい……んだけど……」

「ふふふふ、あら、私がそれを許すとでも?」

カミューラさんがパチンと指を鳴らすと……

「あぁ!扉が……」

……翔君が言う通り、今皆が入ってきた扉がひとりでに閉まった。

「……でしょうね」

「ふふふふ、折角のお客様ですもの。ちゃんともてなさなくちゃ私の主義に反するわ。私のターン、ドロー!『ヴァンパイア・レディ』(守備力1550)を守備表示で召喚!更にリバースカードを1枚セットして、ターンエンドよ」

……やはり、作戦プランA『皆が来る前に倒す』は無理だったか。

……ならば、これより作戦プランBに移行!『普通に倒す』!

「僕のターン、ドロー!僕は裏側守備表示のモンスターを反転召喚!」

現れたのは、アンデットと化した駱駝。

「『デス・ラクーダ』(攻撃力500)の反転召喚に成功した時、このカードのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローします。カードをドロー!……そして『デス・ラクーダ』の効果で、このモンスターを再び裏側守備表示に変更、更にモンスターを1体裏側守備表示でセットして、リバースカードを1枚セット、ターンエンド!」



「……朝倉の奴、いつになく慎重だな」

「あのインチキカード(『幻魔の扉』)に怖じ気ついてるんじゃないのか?」

「……でも、いくら慎重にいっても、いずれはあのカードは発動されてしまう。どうするつもりかしら……」

「ア、アニキ……」

「……心配すんな翔」

「え」

「あいつの目は、怖じ気ついてなんかいない」



「ふふふ、そんな亀みたいに閉じ籠っても無駄よ。私のターン、ドロー!『ヴァンパイア・レディ』を生け贄に『ヴァンパイア・ロード』(攻撃力2000)を召喚!更に『ヴァンパイア・ロード』をゲームから除外し、『ヴァンパイア・ジェネシス』(攻撃力3000)を特殊召喚!」

……出たよ。進化しない方が強いカードが。ぶっちゃけ蘇生能力のある『ヴァンパイア・ロード』の方が使いやすいし。

と言うか、あの美形モンスターである『ヴァンパイア・ロード』がどう進化したらこんな風にゴツくなっちゃうんだろう?いや寧ろ退化か?『ジェネシス』って起源って意味だし。

「更に永続魔法『ジェネシス・クライシス』を発動!自分のフィールドに『ヴァンパイア・ジェネシス』が存在する時、1ターンに1度、自分のデッキからアンデット族モンスターを手札に加える事が出来る!私はデッキからアンデット族モンスターを手札に加え、更に『ヴァンパイア・ジェネシス』の効果を発動!1ターンに1度、手札からアンデット族モンスターを墓地に捨てる事により、その捨てた星以下のアンデット族モンスターを自分の墓地から特殊召喚するわ!今『ジェネシス・クライシス』手札に加えたアンデット族モンスター、『龍骨鬼』(星6)を墓地に捨て、私の墓地の『ヴァンパイア・レディ』(星4、攻撃力1550)を攻撃表示で特殊召喚!」

……展開して来たナ、来るかな?

「攻撃!……の前に目障りなそのリバースカードを退かさせて貰おうかしら。魔法カード『ハリケーン』を発動!フィールド上の魔法、罠カードを全て持ち主の手札に……」

おっと、それは困る。

「戻させませんよ。カウンター罠『魔宮の賄賂』を発動!相手にカードを1枚ドローさせる代わりに、相手の魔法、罠カードの発動を無効にし、破壊します!」

「なんですって!?」

城内で今にも吹き荒れそうであった風が止んだ。



「あれ?アニキ、和希君、あんなカード使ってましたっけ?」

「そう言えば、初めて見たな、あんなカード使うの」

「そもそも、あいつのデッキには罠カードはかなり少なかった筈だ。特に、今みたいなカウンター罠はな」

「……どういう事なんだなぁ?」



「……そんなカードはコウモリの情報には……」

「……『魔宮の賄賂』の効果でカードを1枚ドローして下さい」

「くっ、ドロー!……!」

と、ドローしたカミューラさんの口がにやりと笑った。……いよいよ来たか!?

「ふふふ、坊や!素敵な送り物を感謝するわ!」



「まさか、とうとうあのカードが!?」

「あのバカ!みすみすあのインチキカードを相手に引かせやがった!」



「ふふふ、魔法カード『幻魔の扉』を発動!」

カミューラさんの背後に、あの禍々しい扉が出現した。

「ふふふ、説明するまでもないわよね?このカードが発動された時、相手フィールド上のモンスターを全て破壊し、更に墓地からモンスターを1体、召喚条件を無視して特殊召喚出来る!そして、このカードの発動後、デュエルに負けた場合、自分の魂は幻魔の物となる!……でも私、慎み深いから、また生け贄の役をお前の仲間に譲ってあげる!」

……そして、軋みながらゆっくりと、扉が開き始めた。

「ふふふ、これでお前は負けるしか無くなる!もし私に勝てば、生け贄になったお前の仲間の魂は二度と戻ってこない!……惜しかったわね。さっきのカウンター罠、折角、コウモリからの情報から漏れていた無警戒のカードだったのに、使い所を誤ったようね!」

「『コウモリからの情報』……だと?」

「クロノス先生とのデュエルの時もおかしいと思ったけど、お前まさか!?」

三沢君や十代君が指摘すると、カミューラさんの目が赤く光だした。……怖。

「ふふふ、この赤い目を通して、私の可愛いコウモリ達が全てを報告してくれたわ!ふふふ、卑怯なんて言わないでね?戦いはデュエル以前から始まっているのよ!」

「……」

「さぁ、そろそろ生け贄を決めるわよ。なんなら、ここに居るお前の仲間全員を……」

「くっ……」

「何?」

「ふふふ、ははははは……」

ふふふ、カミューラさん、やっと使ってくれましたね。それを。

「何がおかしい!?」

「ふふふ、カミューラさん?まさか、『一人でここに来る事』だけが、僕の『幻魔の扉』封じだと思ってません?」

「何ですって!?」

「カウンター罠発動!」

「あ!またカウンター罠!?」

「しかもあれは、俺が十代とのデュエルで使った……」

そう、このカードはアカデミア代表決定戦で三沢君が対十代君に使い、『融合』を完封したカウンター罠、『封魔の呪印』!

「手札から魔法カードを1捨て、魔法カードの発動と効果を無効にし、そのカードを破壊!更に相手はこのデュエル中その破壊されたカード及びそれと同名のカードは発動出来ません!」

「何ですって!?ぐあぁぁ!?」

開きかけていた『幻魔の扉』に無数の亀裂が入り、砕け散った。

「くっ!?さっきのカードといい今のといい、お前まさか!?」

「ええ、対あなた用にデッキを改造しました。勿論、コウモリに見つからないようにコッソリと」

……いくら効果が凶悪でも、魔法カードは魔法カード、テキストに『このカードの発動は無効化されない』とあるわけでもない、ならばカウンター罠で封じてしまえばいい。

そう考えた僕が今回組んだのがカウンター罠を多めに入れたパーミッション風ワイトデッキ、ワイト達を墓地に送るギミックを若干弱くし、主戦力の『真紅眼の不死竜』も今回は外し、代わりにカウンター罠、それやワイト達を引く為の『デス・ラクーダ』によるドロー強化、更に攻撃力守備力が低く、戦闘破壊されやすい『デス・ラクーダ』を守る為のロックカードに力を入れたデッキだ。

……正直、原作知識のある僕がこんな対策デッキっぽいのを組んだりするのは反則っぽくって嫌なのだが、まぁ、相手も反則っぽいカード使うし、今回は特例という事で。

「お前!コウモリ達のことを!?」

「ええ、あなたがこの島に来てから、よくそのコウモリ達を見掛けるようになりましたからね。コウモリが吸血鬼の僕だなんてお伽噺でよくある話じゃないですか。その事と、先日のあなたのクロノス教諭や亮さんとのデュエルを見て、推測しました」

……嘘でーす!長々と語りましたけど、本当は只の原作知識でーす!

「『戦いはデュエルの前から始まっている』、でしたっけ?ふふふ、なんだ、それも僕の圧勝じゃないですか」

「ぐぐぐ……」



「まさか、あのカミューラまでも手玉に取るとは……」

「おまけに、闇のアイテム無しであのカードを封じ込めるなんて……」

「はは、翔!やっぱり凄ぇなあいつ!」

「ははは、でも、何て言うか……」

「……つまり奴は、敵に廻ればカミューラ以上に質が悪い、って事になるな」

「……彼が味方で良かったのニャ〜」



「ふふふ、これで『幻魔の扉』は封じましたよ。どうします?」

「くっ……!『ヴンパイア・ジェネシス』(攻撃力3000)で守備表示モンスターに攻撃!『ヘルビシャス・ブラッド』!」

おお〜、今技名叫んだ時、ヨ○ン君の声そっくりだったなぁ……って聞き惚れてる場合じゃなかった。

『ヴァンパイア・ジェネシス』の攻撃目標は後から出した裏側守備表示のモンスター、つまり、この後、『ヴァンパイア・レディ』で『デス・ラクーダ』を戦闘破壊する気なのだろう。

……それは困る。

「リバースカードオープン!罠カード『グラヴィティ・バインド-超重力の網-』!フィールド上の全ての星4以上のモンスターは攻撃する事が出来ません!よって『ヴァンパイア・ジェネシス』(星8)及び『ヴァンパイア・レディ』(星4)は攻撃出来ません!」

「何ですって!?」

『ヴァンパイア・ジェネシス』は体を無数の血の瘴気と化し、襲ってきたが、僕とカミューラさんの間に現れた網に引っ掛かり、その攻撃は無効化された。

「くっ!?何処までも姑息な真似を……!」

……あなただけには言われたくないデスヨー?

「僕のターン、ドロー!『デス・ラクーダ』を反転召喚し、カードを1枚ドロー!更にもう1体の裏側守備表示モンスター、もう1体の『デス・ラクーダ』も反転召喚!更にカードをもう1枚ドロー!」

「! もう1体も、ですって!?」

……よし、これで守りはほぼ完璧!

「リバースカードを1枚セットして、『ダーク・グレファー』(星4、攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果により、1ターンに1度、手札から闇属性モンスターを墓地に送ることにより、デッキから闇属性モンスターを1枚墓地に送ります。闇属性の『ワイト』を手札とデッキから1枚ずつ墓地に送り、更に『デス・ラクーダ』2体をその効果により裏側守備表示に変更、ターンエンド!」

「くっ!私のターン、ドロー!永続魔法『ジェネシス・クライシス』の効果により、デッキからアンデット族モンスター『ヴァンパイア・バッツ』を手札に加え、その『ヴァンパイア・バッツ』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!」

……『ヴァンパイア・バッツ』、原作オリジナルなので確証はないが、その能力から推測して、おそらく星は3、『グラヴィティ・バインド』を突き抜けて来る……取り敢えず、『デス・ラクーダ』を破壊しに来たか。

「『ヴァンパイア・バッツ』がフィールド上に存在する限り、私のフィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力は200ポイントアップするわ!『ヴァンパイア・バッツ』、あの忌々しい駱駝を破壊しなさい!舞え!『ブラッディ・スパイラル』!」

『ヴァンパイア・バッツ』(攻撃力800+200)が群を成し、『グラヴィティ・バインド』の網を突き抜け、僕の裏側守備表示モンスター、『デス・ラクーダ』(守備力600)に襲い掛かって来た。

……させませんよ!

「リバースカードオープン!永続罠『光の護封壁』!発動時、ライフポイントを1000の倍数払い、このカードが存在する限り、その数値以下の攻撃力の相手のモンスターは攻撃する事が出来ません!僕はライフポイントを2000払い、『ヴァンパイア・バッツ』の攻撃を阻止します!」 自残ライフ2000

「! 何処までも邪魔を……!」

『ヴァンパイア・バッツ』の突撃が、光の壁に阻まれた。

……よし、『グラヴィティ・バインド』と攻撃力2000までの『光の護封壁』、これで大方の攻撃は封じ……た……

……って、あ……れ?

……安心した瞬間、目眩に襲われた。

……それだけじゃない、身体中の体力の半分がごっそり吸い取られたみたいに身体がダルい……

……成る程、これが闇のデュエル、キッツいなぁ……

……でも、十代君や亮さん、クロノス教諭までも頑張ったんだ、僕も泣き言なんて言ってられない!

「僕のターン!ドロー!更に2体の『デス・ラクーダ』を反転召喚し、更に2枚のカードをドロー!そして『ダーク・グレファー』の効果により、手札の『ワイトキング』とデッキの『ワイト』を1枚ずつ墓地に送り、ターンエンド!」

「いつまでもコソコソと!私のターン!ドロー!……!」

と、ドローしたカミューラさんの顔が歪んだ。……あーこれは……

「ふふふ、もう使えないカードでも引いちゃいました?」

「ぐ……」

……そう、恐らく彼女が引いたのは、『封魔の呪印』でもう使えなくなった『幻魔の扉』。

「ふふふ、ここでそんなカードを引いてしまうようでは、どうやら、そろそろ勝負の行方も見えてきましたね」

「まだ勝負は着いてないわ!永続魔法『ジェネシス・クライシス』の効果により、デッキからアンデット族モンスター『闇より出し絶望』(星8、攻撃力2800)をデッキより手札に加え、更に『ヴァンパイア・ジェネシス』の効果を発動!手札からその『闇より出し絶望』を墓地に捨て、それよりも星の低いアンデット族モンスター、『龍骨鬼』(星6、攻撃力2400)を墓地より攻撃表示で特殊召喚!」

……『闇より出し絶望』、万丈目君やカミューラさんにコストとしてしか使われてないよなぁ。結構強いアンデット族なのに。

……ともかく、これでカミューラさんのモンスターゾーンは全て埋まったか……

「さぁ、決められるなら決めてごらんなさい!お前がもたついてる間に、その忌々しい罠を破壊して、地獄を見せてあげるわ!」

むむ、確かに、『グラヴィティ・バインド』で僕自身も上手く身動きが取れない上、『デス・ラクーダ』のドロー強化と『ダーク・グレファー』によるデッキからの墓地肥やしにより、結構デッキを消耗した。長期戦になれば、デッキ切れで負けるのは濃厚。そろそろ本当に決めておきたいところだ。

「僕のターン、ドロー!更に2体の『デス・ラクーダ』を反転召喚し、更にカードを2枚ドロー!」

……これは、終わった……かな?

「『ダーク・グレファー』の効果により、手札から闇属性の『ゾンビ・マスター』を、デッキから同じく闇属性の『ワイト夫人』を1枚ずつ墓地に送り、魔法カード『生者の書-禁断の呪術』を発動!自分の墓地からアンデット族モンスターを1体特殊召喚し、相手の墓地のモンスターを1体ゲームから除外!。あなたの墓地の『闇から出し絶望』を除外し、僕の墓地の『ワイトキング』を特殊召喚!」

『カタカタ!』

……待たせたねワイトキング、出番だよ!

「僕の墓地には『ワイト』が3枚に『ワイト夫人』が1枚、よって『ワイトキング』の攻撃力は4000!更に、『ワイトキング』は星1なので、『グラヴィティ・バインド』に関係なく攻撃が可能!」

「な!?」

「更に魔法カード『アームズ・ホール』を発動!このターン通常召喚を行わない代りに、デッキの一番上のカード1枚を墓地に送り、デッキまたは墓地から装備魔法を1枚手札に加えます!僕はさっきのカウンター罠『封魔の呪印』のコストにした装備魔法、『光学迷彩アーマー』を墓地から手札に加え、それを『ワイトキング』に装備!『光学迷彩アーマー』により、星1の装備されたモンスターはダイレクトアタックが可能!」

「なんですって!?」

「宣言通り、これで終わりです!『ワイトキング』(攻撃力4000)でダイレクトアタック!」

「させないわよ!罠カード『妖かしの紅月(あやかしのレッドムーン)』を発動!手札のアンデット族モンスター1体を墓地に捨てることにより、相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復させ、バトルフェイズを終了させる。私は手札の『不死のワーウルフ』を墓地に……」

「言った筈です。これで終わりだと!カウンター罠発動!『神の宣告』!」

「ま、またカウンター罠ですって!?」

「ライフポイントを半分払い、魔法・罠の発動、召喚、反転召喚、特殊召喚のいずれか1つを無効にし、そのカードを破壊します!」 自残ライフ1000

……く!疲労感が一気に上がったが、今は我慢だ!

『ワイトキング』は……何故か左腕を外し、くの字に固定した。

ま、まさか、それはあの某『自分の顔を飢えている子供達に分け与えるヒーロー』のアニメで、ホラ○マンが初登場時の1話だけ披露したことがあるというあの幻の技!?

「『骨ブ○メラン』!?」

『ワイトキング』が投げた骨ブー○ランは、相手モンスター達の頭上を弧を描いて飛び越え……

「うわぁぁ!?」 敵残ライフ0

……カミューラさんに直撃した。

あー、何と言うか……

光学迷彩一切関係neeeee!?



……なんとか、闇のゲームに勝利した為、人形と化した亮さんとクロノス教諭は元に戻った。

「お兄さん!」

「カイザー!」

「ノーネ!?何が一体どうなっているノーネ!?」

「ええい!離せ!」

……うむ、良かった。何とか原作通り、皆助かったようだ。

……唯一違う事、それは……

「そんな、誇り高きヴァンパイアであるこの私が……人間なんかに……」

『幻魔の扉』を無効化した為、幻魔の生け贄とならず、闇のデュエルのダメージ以外は無事なカミューラさんが項垂れていることだ。

「……こうなったら……」

……と、カミューラさんが例の赤い光を目に灯しながらガバッっと跳ね起きた。

「力尽くでも七星門の鍵を奪い取るまで!」

「和希!?」

顎が外れたかのように口を裂けさせ、襲い掛って来ようとするカミューラさん。……なまじ、元々が美人さんなだけに、そのギャップもあり、その形相は凄まじかった。……つーか怖!

……だが、闇のデュエルのダメージがあるのか、その動きはヨロヨロとふらついていた。

ふふふ、苦し紛れの行動とみたーーーッ!

……ここで波紋肘支疾走でも叩き込んでやりたかったけど、勿論そんな事できる筈がないので……

「そら!」

「!?」

僕は、その大きく開かれた口に『用意していたもの』を放り込んだ。

ガリッ!

『それ』を噛み砕く良い音が聞こえた。

その瞬間……

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

……声にならない悲鳴を上げ、蹲り、咳き込みだした、こうかはばつぐんだ。

「和希!大丈夫か!?」

「ふふふ、無問題だよ十代君」

「……何を奴の口に放り込んだんだ?」

「ふふふ、これだよ、これ」

三沢君の質問に対して、僕はそれを出した。

「……ニンニク?」

「そ、ニンニクの欠片、生の」

かの完全無欠な白いアーパー吸血姫も苦手なニンニクでーす。

「……よくもまぁ、またそんなベタな方法を……」

「……効かなかったらどうするつもりだったんだ」

明日香さんや万丈目君には呆れられたけど、まぁ、生のニンニク丸齧りは吸血鬼じゃなくてもキツいだろうし、なんとかなったでしょ。

「……という訳で、三沢君に万丈目君、あの人の取り押さえ宜しく」

「わかった」

「万丈目『さん』だ。……なんで俺がこんな事を……」

……だって君達何もやってないんだもの。

……カミューラさんは少し抵抗を見せたが、やはり闇のデュエルによる消耗が激しいのか、二人に両腕を捩じり上げられる形となった。

「……で、こいつはどうするんだ?」

「そうだねー、とりあえず、校長先生に話して、この戦いが終わるまでどこかの部屋に軟禁させて貰う、ってのは?」

「……それが一番無難でしょうね」

「おのれ、覚えておきなさい!」

「ははは、しばらくは覚えておきますよー。さーて、凱旋しますか……」

あ……れ……地面……が近……く?

バタッ

「和希!?」

「和希君!?」

「は、ははは、なんか猛烈に疲れましたヨー?」

……デュエル中から感じていた疲労感が一気に噴き出してきた……も、もう立てない……



「大丈夫か?」

「ははは、なんとかね」

……結局、十代君に肩を貸して貰う羽目になってしまった。

「……闇のデュエルって、キッツイね~……」

「……だろ?」

……全く、十代君ってば、こんなのを連戦しようとしてたの?信じ難い。

「……つーか、ありがとうな、和希」

「ふぇ?」

「この間の闇のデュエルのダメージ、実はまだ残ってたからな~、正直、今日もやるのはちょいとキツかったからな」

……やっぱり無理してたんだ……

「……今日みたいに、ちょっとは任せてくれてもいいんだよ~?仲間なんだし?」

「……そうか、そうだよな、仲間だもんな」

「うん、仲間なんだから……」

……これからも、十代君や皆の為にも、頑張ろうと思った。



今日のワイト

(今日はNGシーン)

「あなたがたに、セブンスターズと戦う覚悟を持って頂けるなら、どうか、この七星門の鍵を受け取って欲しい」

校長先生がそう言って鍵を示すと、十代君を先頭に、皆続々と鍵を受け取った。

「……」

「……朝倉君、君は受け取ってくれないのかな?」

「おい和希!何でこんな楽しそうなこと断っちまうんだよ?」

「ふん、今の話を聞いて、怖気ついたか?」

「何も無理にとは言わない、もし駄目ならば……」

「……校長先生」

……僕は、鍵に手を伸ばした。

「おお、受け取ってくれるのかね?」

「……デュエルで死守なんかするよりも、もっと簡単かつ手っ取り早い方法がありますよ?」

「何?」

……僕は隠し持っていたペンチで……

「うりゃ!」

バキッ!

「「「「「「「何ぃ!!!???」」」」」」」

「な、何てことを!!??」

……真っ二つにしちゃいました。テヘッ♪

「ハハハ、開けるカギがなければ開く門はないですよ。これで万事解決ですよ」



……かくして、一人の青年の機転により、幻魔の復活は阻止されたのである。



「And then , he became legend(そして、彼は『伝説』となった。)」

『アイ・アム・レジ○ンドか!』

(没の理由=あなたが見た感想がそれです)



後書き

……アイ・アム・レ○ェンドの英語版のラストってこんな感じでしたっけ?何か間違ってる気がする。

……次回は、試験やレポートを挟むのでちょっと更新が遅れます。悪しからず。

ミスを改正、科蚊化様、御指摘ありがとうございます。



[6474] デッキ紹介(特別編)
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:ecbf4609
Date: 2011/06/10 09:44
和「今回は、感想で『気になる』と言われたので、カミューラさん戦で使ったパーミッション風ワイトデッキのレシピでーす」



下級モンスター×18

ワイト×3
ワイト夫人×3
ワイトキング×3
デス・ラクーダ×3
ダーク・グレファー×3
馬頭鬼×2
メタモルポット×1


魔法×9

平和の使者×2
レベル制限B地区×1
手札抹殺×1
光学迷彩アーマー×1
アームズ・ホール×1
大嵐×1
サイクロン×1
異次元からの埋葬×1

罠×13

魔宮の賄賂×3
封魔の呪印×3
アヌビスの裁き×3
神の宣告×1
聖なるバリア-ミラーフォース-×1
光の護封壁×1
グラヴィティ・バインド-超重力の網-×1



和「……正直、いつも使うのよりもガチ臭いデッキですね。因みに、今回、『幻魔の扉』対策として『封魔の呪印』を組み込みましたが、実際は『天罰』ないし『サンダー・ブレイク』『トラップ・ジャマー』辺りがお勧め、手札増強に『生還の宝札』を仕込むのもグーです。また、『ワイト夫人』の効果で『デス・ラクーダ』が効果以外の破壊耐性を持つので、多少ロックカードは外してもOK、その場合、『デス・ラクーダ』が効果発動後に攻撃表示になってしまう場合が多いので、戦闘ダメージを0にする『スピリット・バリア』が欲しい所。また、ワイト夫人が表側表示だと、要である『ワイトキング』+『光学迷彩アーマー』も使えなくなってしまうので、『ワイト夫人』を裏側守備表示にする為の『月の書』も必須です」



後書き

レポートの息抜きにチョロッと、これ書く時4000字なんてあっという間なのに……

11/3 更新 『神の宣告』制限化に際して更新



[6474] 第十七話 前略、露天風呂の下より(露天じゃないけど)
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:56
カミューラさんとのデュエルの後、僕は丸一日寝込んでしまった。どうやら、闇のデュエルの疲れが思っていた以上に大きかったようだ。

……まぁ、ダメージが全部自分で払ったライフコストだけだったせいか、ダークネスと戦った時の十代君と違い、丸一日眠っただけで回復しちゃったけど。

……因みに、相手のカミューラさんはとりあえず、三幻魔を巡る戦いが終わるまで空き部屋に軟禁される事になった。

……あの人(?)も可哀想な人だからなぁ。……一族を人間に滅ぼされ、絶望の内に眠っている所を、影丸さんの『ヴァンパイア一族を復活させないか?』という甘言に唆された訳だからなぁ……

正直、自己中なあのお爺さんがそんな事をしてくれるとは思えないし、幻魔を手に入れた時点で、約束を反故にされるのが関の山。最悪、原作同様に幻魔の生け贄にされる可能性もなきにしもあらずだ。

そう考えると、僕の選択は一見正しかった……ように思える。

……だが、彼女を生かしてあげた事により、これから先、彼女がどういった行動を取るのかが全く読み取れないのも事実。今後彼女が、また一族を復活させる為、敵になってしまうかもしれない。

……それでも、例え今後彼女が敵になってしまったとしても、ここで死ぬ筈だった彼女を生きさせたのは間違いではなかったと、今はそう信じたい。

……話を戻すが、当然、次の日の授業は全休みしてしまい、勿論、その日の宿題も出来なかった。なので、クロノス教諭がその宿題の分を補習課題として僕にやらせたのだ。……助けてあげたんだから免除にしてくれたっていいのに……ヲノレ……

まぁ、しかしカミューラさんとのデュエルを経て、クロノス教諭も少し教師として成長したようだ。オシリスレッドの生徒達の事を『ドロップアウト』と呼ぶ事や、オベリスクブルーの生徒を贔屓するのが少なくなったみたいだ。……補習の量もなんかオマケしてくれたっぽいし。

……と言う訳で、補習を終え、レッド寮の部屋に帰ってきた僕であった。

が、

ガチャッ

「あ?」

部屋には鍵がかかっていた。

……この状況に激しくデジャブと嫌な予感を感じながら、鍵を開けると……

案の定、部屋には誰も居ず、置き手紙が一通……

『和希君へ、皆で温泉に行ってます』

「またこのパターンかコンチクショー!」

おのれ未確認生命体ナ・ノーネ!こんなタイミングの悪い時に……! あんたって人はぁ!

僕は廃寮探検の時同様、皆を追い掛けるべく、全力で走り出した。



「はぁ、はぁ……病み上がりでこの距離は……キツかとです……」

……温泉と言い、廃寮と言い、なんで島のレッド寮の逆側にあるかなぁ……

……キリキリ痛む横腹を押さえながら、僕は温泉に入った。

……因みに、ワイトとワイトキングは当然のように女湯に入ろうとして、当然のようにワイト夫人に折檻されていた。……懲りないねぇ君達。



中に入り、無駄に広い温泉、というより温水プールか? を探し回ったが、十代君達三人及び万丈目君は見つからなかった。

ヤバいな、もう皆精霊界に行っちゃったのかな、だとしたら早くしないとデュエルが終わっちゃうじゃん。

……社長マンの『強靭!無敵!最強!粉砕!玉砕!大喝采ィー!』が聞けないじゃん!

因みに、このフレーズ、中国語版の字幕だと最初が『狂人』になってたりして笑える。……あながち間違いじゃない気もするけど。……漫画の遊戯王Rで社長が青眼ジェットの上に立って見栄切っている様なんてまさにアレだったし。……つーかあのジェットって確か飛行中だったよね?

……って、思い出し笑いしてる場合じゃなくて!早く穴を探さないと!ほら!ワイト達も、のんびり浸かってないで!探すの手伝って!

……つーか、何でワイト夫人がこっち(男湯)に居るんだろう?あと、君達が浸かっていると、何か地獄の釜茹でみたいだよ?人骨って出汁取れるのか?

……良く考えたらツッコミ所満載だったりする。


そして、探し始めてから数分後……

「! あった!」

漸く見つけた。水面で光が反射していて分かりづらいが、底に穴らしき物があった。

……よかった、間に合ったか!?ほらワイト達!何処ぞの大型クイズ番組みたく、温泉でダルマさんが転んだしてないで!行くよ!

見つけた事に安心しきっていた僕は早々にそれに近付き……

……あれ?精霊界の入口ってこんな真っ暗だったっけ?

そう疑問に思った時には、僕はもう、そこに足を踏み入れていた……



「え……?」

気付けば周りは闇、闇、闇……

ここって精霊界……じゃないよね……

……精霊界なら社長マンの高笑いが響いてる筈だし……

でも、十代君達が原作で精霊界に迷い込んだ時のように、やっぱり服は着ており、左腕にはデュエルディスク、そして、ワイト達もちゃんといる。そこは精霊界と同じみたいだけど……

……ワイト達に聞いてみたが、皆カタカタ首を横に振るだけ……

……今まで経験した中で、ここと似たような場所はあった。タイタン戦の時の、闇のデュエルの空間だ。

……でも、それとも少し違う、あの時感じた禍々しさがない。

最初、僕はこれを『闇』って表現したけど違う。これは、言うなれば……『虚無』?

光も闇も、何もない空虚な空間……

と、僕は気付いた。

少し先に、何もない筈のこの空間に、誰かが座り込んでいる?

「……こんな所に客人たぁ、珍しい事もありやがるな」

……俯いてたその人物が、顔を上げた。

……整っており、しかしそれでいて禍々しい表情。その中でも、一際禍々しく、鋭い目。そして、背中まで届き、所々尖っている白髪……

こ、この人は……!?

「バ、バクラ……?」

……そう、闇バクラそのものであった。

何故!?彼、千年輪の闇の意思は、闇遊戯、アテムとの戦いで消えた筈じゃ……!?

「……ほう?その名前を知ってるたぁ、貴様、何者だ?」

「……!」

しまった!動転のあまり、思わず……!

「……まぁ、そんな事はどうでもいい。折角、生身の人間がノコノコ迷い込んで来やがったんだ。たっぷりと歓迎してやるぜ。……その代わり、代金としてその身体を貰うがなぁ!フフフ、ヒャハハハハハハハハ!!」

「……っ!?」

……状況の把握は出来ない。でもこれだけはわかる。

僕は、かつて無い程の窮地に立っている……!

「オラ、さっさと構えやがれ!」

見ると、何処から取り出したのかデュエルディスクを構える闇バクラ(?)。……精霊『人造人間サイコ・ショッカー』みたいに、闇のデュエルで僕の体を奪うつもりか?

……やるしかないのか、真の命懸けのデュエルを!



「「デュエル!!」」

「オレ様のターン!ドロー!魔法カード『悪夢の鉄檻』を発動!」

い、いきなり!?僕の周りを漆黒の鉄檻が覆った。

「ククク、これでテメェのモンスターは2ターンの間攻撃できねぇ!精々恐怖に震えてな!更に永続魔法『凡骨の意地』を発動!」

『凡骨の意地』、ドローフェイズにドローしたカードが通常モンスターだった場合、そのカードを相手に見せる事で、カードをもう1枚ドローする事ができるドローエンジン。

……確かに彼のデッキには『首なし騎手』や『死霊伯爵』等、悪魔族通常モンスターは多い。入れていても、おかしくは……

「ターンエンドだ」

「え……」

「何度も言わせるんじゃねぇ。ターンエンドだっつってんだよ!」

……『悪夢の鉄檻』があるとは言え、モンスターもリバースカードも無しにターンエンド?

……何を狙っている?『ウィジャ盤』の『死のメッセージ』で手札事故でも起こしたのだろうか?

「ぼさっとしてんじゃねぇ!さっさとドローしやがれ!」

「……僕のターン、ドロー!」

……今手札に魔法・罠除去カードは……無い。

「……『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚、効果により手札とデッキから『ワイト』を1枚ずつ墓地に送り、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「オレ様のターン!ドロー!オレ様が引いたのは通常モンスター『地縛霊(アース・バウンド・スピリット)』、よってデッキからもう1枚カードをドロー!」

……『地縛霊』、守備力2000の壁モンスター、召喚してくるか?

「……ターンエンドだ」

……何故?さっきのは『手札事故だった』って説明がつく。……でも今回は通常召喚が出来るモンスターがいるのに……何を狙っている?

「……僕のターン、ドロー!」

……よし!

「速攻魔法『サイクロン』を発動!『悪夢の鉄檻』を破壊します!』」

暴風により、僕の周りの鉄檻が吹き飛ばされた。

「チィッ!」

よし、今バクラさんのフィールドはガラ空きだ!

「更に『ピラミッド・タートル』を攻撃表示で召喚!『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)と『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)でダイレクトアタック!」

「ぐっ!?」 敵残ライフ1100

「『ダーク・グレファー』の効果により、手札からもう1枚の『ダーク・グレファー』とデッキから『ワイト』を1枚ずつ墓地に送り、ターンエンド!」

……一体、彼は何を狙っているんだろう?さっき引いた『地縛霊』を出しておけば、こんな無駄なダメージは受けなかった筈だ。

「チィッ!オレ様のターン!ドロー!ドローしたカードは通常モンスター『死霊伯爵』!よって永続魔法『凡骨の意地』の効果によりもう1枚カードをドロー!更に、今ドローしたカードも通常モンスター『夢魔の亡霊』!更にカードを1枚ドロー!」

……これで、彼の手札は9枚、なんであんなに手札を貯めて……

待てよ…… !まさか!?

「フフ、どうやら気付いたようだな。オレ様の狙いによぉ!」

…… !やっぱりバクラさんの狙いは……!

「ヒャハハハッ、今更気付いても遅ぇんだよ!手札から魔法カード発動!『最終戦争』!」

……っ!やっぱり、あの最悪のリセットカードを!

「手札5枚をコストに、フィールド場のカードを全て墓地送りだぜ!消えな雑魚ども!フフフフフ、ヒャハハハハハ!」

「うわぁ!?」

フィールドの中心で大規模な爆発が起こり、『ダーク・グレファー』と『ピラミッド・タートル』、バクラさんの『凡骨の意地』、そして僕のリバースカード、『グラヴィティ・バインド-超重力の網-』の全てが吹き飛ばされた。

ヤバい!これでフィールドががら空きになっただけでなく、バクラさんの墓地に大量のモンスターカードが……ってことは……

「ククク、まさかこれで終わりなんて思っちゃぁいねぇよなぁ?オレ様は墓地の『地縛霊』『死霊伯爵』『夢魔の亡霊』の3枚の悪魔族モンスターをゲームから除外し、『ダーク・ネクロフィア』(攻撃力2200)を手札から攻撃表示で特殊召喚!」

壊れた人形を手に持った不気味なモンスターが現れた。

来た!バクラさんのオカルトデッキのエースモンスター!

「『ダーク・ネクロフィア』(攻撃力2200)でプレイヤーにダイレクトアタック!『念眼殺』!」

「ぐっ!?」 自残ライフ1800

『ダーク・ネクロフィア』の眼が光った瞬間、物凄い衝撃が僕を襲ってきた。

「ククク、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドだ。さぁ、貴様のターンだぜ?」

「くっ、僕のターン!ドロー!」

……『ダーク・ネクロフィア』、元の世界では、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンのエンドフェイズ時に装備カード扱いとして相手モンスター1体に装備され、その装備モンスターのコントロールを得る、とい効果だった。

……だが、原作では、この効果が無い代わりに、もっとえげつない効果になっていた筈。正直、破壊するのは得策では無い気がする。

……だが、このまま『ダーク・ネクロフィア』をフィールドに残しておくのも拙い。ライフが少なくなっている今、受け身になってしまっては、そのまま押しきられるか、『ウィジャ盤』の餌食になるのが関の山……

……虎穴に入らずんば虎児を得ず。危険だとわかっていても、ここは踏み出すしかない!

「魔法カード発動!『死者蘇生』!このカードの効果により、僕の墓地の『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)を攻撃表示で特殊召喚!『ダーク・ネクロフィア』(攻撃力2200)に攻撃!」

『ピラミッド・タートル』が体当りを仕掛けようとするも、『ダーク・ネクロフィア』の一睨みにより返り討ちにされた。 自残ライフ800

「たかが攻撃力1200の雑魚で『ダーク・ネクロフィア』に攻撃とはな!何をトチ狂ってやがる!」

「……『ピラミッド・タートル』が戦闘によって墓地に送られた事により、その効果により、デッキから守備力2000以下のアンデット族モンスターをデッキから特殊召喚します!」

「チィッ!そいつが狙いか……!」

「僕は守備力0の『ワイトキング』をデッキから攻撃表示で特殊召喚!」

「『ワイトキング』?ケッ、『ワイト』の王サマだぁ?んな雑魚の親玉に何ができる?」

「……『ワイトキング』の攻撃力は自分の墓地の『ワイト』『ワイトキング』の枚数×1000です」

「何だと!?」

「僕の墓地に『ワイト』は3枚、よって『ワイトキング』の攻撃力は3000!」

「チィッ!オレ様の『ダーク・ネクロフィア』(攻撃力2200)を上回ってやがる……!」

「『ワイトキング』(攻撃力3000)で『ダーク・ネクロフィア』(攻撃力2200)に攻撃!『ホーンテッド・ナイトメア』!」

「ぐっ……あぁぁぁ……」 敵残ライフ300

……『ワイトキング』の攻撃が『ダーク・ネクロフィア』を粉砕した。

……だが、

『カタカタカタ……』

……その手にした人形は暫く消えず、不気味に口をカタカタと鳴らしていた。

『カタカタカタ……』

……いや、ワイトキング、君も負けじとやんなくていいから。……え?違う?普通に震えてるだけ?……うん、気持ちはわかる。

「クククク……」

……と、やがて人形が消えると、突然バクラさんが笑いだした。

「フフフ、ヒャハハハハッ!面白ぇ!テメェもオレ様と似たようなデッキ、墓地のカードが増えれば増える程強くなる死霊デッキのようだな!気に入ったぜ!」

うぅ、それは嬉しいような嬉しくないような……

「……だがよぉ、ならわかってるよなぁ?オレ様達のデッキ相手に、不用意にモンスターを墓地に送るとどうなるかよぉ!」

……! やっぱり来るのか!?『アレ』が……

「『ダーク・ネクロフィア』が墓地に送られた事により、その効果により、デッキからフィールド魔法『ダーク・サンクチュアリ』を発動!」

……周りが、無数の眼と口に覆われた異界へ変貌した。……中には、その口の中から眼が覗いている物まである。

来た!バクラさんのカードの中でも一番反則臭いカード!

「その様子だとこのカードの効果を知ってるみてぇだな。御察しの通り、今テメェのフィールドには『ダーク・サンクチュアリ』の効果によって出現した怨霊が彷徨っている。そして、テメェのモンスター1体に装備カードとして憑依するのさ。……最も、テメェにはどのモンスターに装備されているかわからないだろうがな!」

「……そして、装備されたモンスターが攻撃した場合、その怨霊が代わりに僕を攻撃し、そのモンスターの攻撃は無効、僕にそのモンスターの攻撃力の半分のダメージを与え、更にあなたのライフをにそのダメージ分回復させる……ですよね?」

「フフフフフ、御名答。精々自滅しねぇように気をつけな!」

……おまけに、自分のモンスターゾーンにも魔法、罠が置けるようになるというトンデモな効果まで付いている。毎ターンモンスターを1体生け贄にしなくてはならない事を差し引いても、おそらく、アニメオリジナルのフィールド魔法の中では『オレイカルコスの結界』に次ぐトンデモカードだろう。

「……ターンエンド」

「オレ様のターン!ドロー!」

……そう言えばあのリバースカード、『ウィジャ盤』かと思っていたけど違うようだ。

『ウィジャ盤』、永続罠、相手ターン終了時毎に『E』『A』『T』『H』の順に永続魔法『死のメッセージ』カードを手札またはデッキからフィールド上に出し、全てのカードが自分のフィールド上に揃った時勝利が決定する特殊勝利カード。

……その効果上、普通このカードは相手ターンのエンドフェイス直前に発動する。発動した瞬間、1枚目の『死のメッセージ』をすぐ出せるからだ。

……つまり、それをしなかったって事は、あのリバースカードは『ウィジャ盤』では無い、って事だろう。

「魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!更に永続魔法『暗黒の扉』を発動!」

……『暗黒の扉』、お互いに1ターンに1体しかモンスターを攻撃できなくする永続魔法。『ダーク・サンクチュアリ』の欠点である、フィールドの無防備さを補うカードだ。

……すると、あのリバースカードは罠カード、『沈黙の邪悪霊(ちんもくのダークスピリット)』か?

……『沈黙の邪悪霊』、攻撃モンスター1体の攻撃を無効にし、他の相手表側表示モンスター1体をかわりに攻撃させる罠カード。強力だが1ターンにモンスター1体にしか装備出来ない『ダーク・サンクチュアリ』の怨霊と抜群の相性を持つカードだ。

……マズい!どんどんオカルトコンボに嵌まっていってる。

「更に『クリッター』(攻撃力1000)を攻撃表示で召喚!エンドフェイスで『ダーク・サンクチュアリ』の維持コストとして『クリッター』を生け贄に捧げ、更に『クリッター』がフィールドから墓地に送られた事により、デッキから攻撃力1500以下のモンスターを手札に加える!デッキより『キラー・スネーク』(攻撃力300)を手札に加えるぜ!」

……『キラー・スネーク』、墓地にある時、毎ターンのスタンバイフェイズ時に墓地から手札に戻す事が出来るカード。毎ターンの『ダーク・サンクチュアリ』の生け贄にする気か……!

「クククク、ターンエンドだ」

「……僕のターン!」

……拙い、攻撃を躊躇っていたらそれこそじり貧。『ウィジャ盤』にやられるのを待つだけだ。

……このままじゃ、負ける。

……そうしたら僕は……消えてしまう……?

……嫌だ!

僕は……まだ皆と笑いたい!皆と楽しみたい!

ワイト達、君達とだってまだ別れたくない。お願い……力を貸して!

「ドロー!」

……!

……ありがとう、ワイト達!

「僕は、『ワイト夫人』(守備力2200)を守備表示で召喚!」

「ケッ、また『ワイト』か?」

「……『ワイト夫人』がフィールド上で表側表示で存在する限り、『ワイト夫人』以外の星3以下のアンデット族モンスターは戦闘で破壊されず、魔法・罠の効果も受けません!」

「何!?」

「……よって、装備カード扱いの『ダーク・サンクチュアリ』の怨霊の効果も受けません!」

……そして、あのリバースカード、『沈黙の邪悪霊』の効果も受けない!

「行きます!『ワイトキング』(攻撃力3000)のダイレクトアタック!」

……これが通れば、僕の勝ち……!

「フッ……」

……だが、目の前の悪魔は笑う。

「ヒャッハハハハハ!なかなかやるじゃねぇか!だが惜しかったなぁ!リバースカードオープン!罠カード『メタル・リフレクト・スライム』!」

「な!?」

『沈黙の邪悪霊』……じゃない!?

「このカードは発動された後、守備力3000の壁モンスターとなる!」

……相手のフィールドに、銀色に鈍く光る流動体が出現した。

「クククク、今の攻撃は巻き戻されたが、どうするよぉ?攻撃してもどうせ、同じ攻撃力と守備力でなんにもねらねぇぜ?」

「……ターンエンドです」

……だが、この後、1枚でもワイト達が墓地に送れればまだ……

「フフフ、ヒャハハハハハ!久しぶりになかなか楽しいデュエルだったぜ」

「っ!?」

「その礼と言っちゃぁなんだが、見せてやるよ。あの武藤遊戯にも使わなかった、オレ様の真の切り札をよぉ!」

真の……切り札……?

「オレ様のターン!ドロー!儀式魔法『闇の支配者との契約』発動!」

! あ、あの儀式魔法は……!

「手札かフィールドから合計星8以上になるようにモンスターを生け贄に捧げる!オレ様はフィールドの『メタル・リフレクト・スライム』(星10、守備力3000)を生け贄に、出でよ!『闇の支配者(ダークマスター)-ゾーク』!」

ゾ、ゾー……ク……!

……僕を絶望に追い込むべく、最悪の悪魔が降臨された。

「『闇の支配者-ゾーク』の効果を発動!1ターンに1度、このダイスを振ることができる」

……と、取り出したのは、出目が千年アイテムのマーク、ウジャト眼のダイス。

「ダイスの目が1・2の場合、相手フィールド上のモンスターを全て破壊、3・4・5の場合、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。6の場合、自分フィールド上のモンスターを全て破壊する!」

あのダイス、まさか洗脳ダイス……じゃないよな?

「ククク、安心しな!こいつはイカサマ無しの普通のダイスだ」

……そんな僕の心を見透かしたかのように説明をするバクラさん。

「さぁ!このダイスが地に着いた瞬間!貴様の命運が決する!精々祈りな!ダイスロール!」

……文字通り、賽は投げられた。



カラン……カラン……

……無音の空間に、ダイスの音がいやに大きく響く。

カラン……カラン……

……『ワイト夫人』はモンスターの効果に対する破壊を阻止できない。1か2ならばその場で僕の敗北が決定、3・4・5でも、『ワイトキング』が破壊され、絶対絶命、だが6ならば……!

……カラン。

……だが無情にも出目は……

「フフフ、終わったな。出目は1!スーパークリティカル!貴様のモンスターを全て破壊する!『ゾーク・インフェルノ』!」

「ぐっ、ぁぁぁぁ……」

……ワイトキング達が業火に焼き尽くされる。それは恰も、亡者が灼熱地獄に落ちた様その物だった……

「フフフフフ、ハハハハ、ヒャッハハハハハハハ!!これで貴様の敗北は決まった!お前はこれから消えてなくなる!さぁ怯えろ!泣き叫べ!恐怖にその顔を歪ませろ!ヒャハハハハハハハハ!」

「……っ!」

ガクガクと恐怖で膝が笑う。歯もガチガチと噛み合わない。

……十代君、これは君がそのうち、デュエルを純粋に楽しめなくなってしまうのもわかるよ……

……でも、やっぱり、デュエルは本来楽しいものだって、僕も信じてるから……

……震える手を叱咤し、人差し指と中指で相手を指さす。

……合わない歯の根を無理やり噛み潰す、唇を噛んで血の味がしたけど無視。

そして……

「……ガッチャ、楽しいデュエルでしたよ」

「……っ!チィッ!『ゾーク』でダイレクトアタック!『ダークフェノメノン』!」

……『ゾーク』の口から放たれたレーザーのような閃光に、僕の意識は断ち切られた…… 自残ライフ0



「チィッ、や…り千年………が無…と無…か。」

……?

「……まぁい…、だ…た…こう…るまでよ」

……何か聞こえる?

「……あばよ、あ……し……ドヌ……マよぉ」



「…ズキ君!和希君!」

「へ?」

……と、僕は翔君に頬を叩かれ気が付いた。

「……どうしたの?翔君」

「どうしたの?じゃないっスよ!和希君が温泉で倒れてたの!覚えてないの?」

「……」

そう言えばここは、温泉の脱衣所内のベンチか?

……えーと、確か補習を受けて、皆がもう行っちゃったことに気付いて、慌てて温泉まで来て……

……それからどうしたんだっけ?

「……思い出せない」

「……温泉で僕達を探しているうちに、のぼせちゃったんじゃないの?」

「……」

……なんか違う気がする。なんか恐ろしい目にあってた気がする。

「今、アニキ達が医務室まで先生を呼びに行ってるよ」

「いや、もう大丈夫……」

「駄目だよ!和希君、この間の闇のデュエルで疲れてるんだから。ちゃんと休まないと!」

……そうかもしれない、確かに、まだ闇のデュエルのダメージが残ってて、温泉の中で気絶してしまったのかもしれない……

「……わかったよ、じゃぁ、何か飲み物持って来てくれない?」

「うん、わかった」

……翔君が出て行ったあと、ワイト達に聞いてみたが、彼等も覚えてないとのこと。……本当に何があったんだろう?

……唯一つ確実なのは……

……社長マンを見れなかったなぁ。……ちぇ。



今日のワイト

和「さて、今日のカー……」

ズビー!ズカーン!

3ワイト「「「……!?」」」

社長マン「ふぅん、今日は特別に俺が貴様等凡骨にカードの解説してやる。ありがたく思え」

究極竜「「「ギシャー!」」」

社「……なお、決っして『出番が欲しかったから』ではない!何処ぞの馬の骨が『運悪く』アルティメットの攻撃を受けてしまったのでな、『仕方なく』だ。そこを勘違いして貰っては困る!」

3「「「……」」」

社「……何だ?何か文句でもあるのか?」

究「「「……(ギロリ)」」」

3「「「……!(ブンブンブンブン)」」」

社「……いいだろう、今日のカードはまず『ダーク・ネクロフィア』、星8、闇属性、悪魔族、攻撃力2200守備力2800、このカードは通常召喚出来ず、自分の墓地に存在する悪魔族モンスター3体をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンのエンドフェイズ時に装備カード扱いとして相手モンスター1体に装備され、この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターのコントロールを得る。……ただし、この話でもある通り、原作(アニメ)では相手モンスターのコントロールを得る効果は無く、「このカードが墓地に送られた時、デッキまたは手札からからフィールド魔法『ダーク・サンクチュアリ』を発動する」というものになっている。……もっとも、このようなオカルトカード、俺の青眼の前では雑魚も同然だがな」

社「更に、アニメオリジナルのフィールド魔法『ダーク・サンクチュアリ』、毎ターンのエンドフェイズ時、モンスターを1体生け贄に捧げる。捧げなかった場合、このカードを破壊する。また、自分の墓地に『ダーク・ネクロフィア』が存在しない時、このカードを破壊する。このカードのコントローラーは以下の効果を発動できる
・このカードが存在する限り、相手のモンスター1体に怨霊を装備させることができる。(この怨霊は1ターンに1度装備対象を変更することができ、どのカードに装備しているか相手は認識できない。)装備モンスターが攻撃した時、その攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力の半分の数値のダメージを相手プレイヤーに与え、 その数値分自分のライフポイントを回復する。
・自分フィールド上のモンスターカードゾーンを、魔法・罠カードゾーンとしても使用できる。
……ふぅん、なかなか強力なカードではあるが、所詮は受け身のカード、そのような装備カード、俺の『ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者』で無効にしてくれる!」

社「最後に、『闇の支配者-ゾーク』、星8、闇属性、悪魔族、攻撃力2800守備力1500、儀式魔法『闇の支配者との契約』により、手札またはフィールドから合計で星8以上になるようにモンスターを生け贄に捧げて降臨。1ターンに1度だけダイスを振る事ができる。ダイスの目が1・2の場合、相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。3・4・5の場合、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。6の場合、自分フィールド上のモンスターを全て破壊する。……ふぅん、所詮は何処ぞの凡骨デュエリストお得意のギャンブルカード、くだらんな」

社「以上だ。これを参考に、各々がデュエル道を極めるがいい凡骨ども!果てしなく続く戦いのロードを突き進め!ハハハハハ、ハーッハハハハハ!」

3「「「……」」」

後書き

私は帰ってきたぁ!そして帰ってきて早々やっちゃった感……

……僕達の闇バクラさんは顔芸なんてしないやい!(違

この数話後に、アビドス君が(過去でですが)『キラー・スネーク』を使っていたので、この時点ではまだ禁止ではなかった……筈

他のカードが基本アニメ版効果なのに、何故か『メタル・リフレクト・スライム』だけOCG効果……ごめんなさい、これしか思い浮かびませんでした。

あと、「『ゾーク』で『ワイト夫人』攻撃した方が無難じゃん」というツッコミもあるかと思いますが、一応、バクラさんの最後の一枚の手札が『死者蘇生』だった……つまり、『外れても保険がある状態だった』という設定だったので。

……では、また次回

追伸

そろそろチラ裏からその他に移ろうかな~……でも文章に自信無いしな~……というわけで御意見願います



[6474] 幕間 リバーサルトライアル
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/15 23:11
……さて、先日、アカデミア買収を目論んだ万丈目兄達対万丈目君のデュエルと、三幻魔のカードを得るための『闇』のデュエルを『海』のデュエルと勘違いした面白デュエリスト、世界一の商人ことアナシスさん対十代君のデュエルが行われたんだけど……

「……おい」

「いやー、面白かったなーアナシスさん、語尾が『だっちゅーの』って、何処ぞのテツワン探偵の支店長代理みたいだったなー」

「おい!」

「……そう言えば、何か忘れてるような……」

「あーさーくーらー!」

「およ?三沢君、どうしたん?」

「……お前わざとやってるだろう……」

「ふふふ、勿論!」

「勿論……どっちなんだ」

「御想像にお任せしますヨ。……で、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも無い!タニヤとのデュエルはどうした!」

「……あー」

「あー、じゃ無い!本来セブンスターズである彼女とのデュエルの方が重要だろ!」

「いやー、十代君とタニヤさんのクロスカウンター、見事だったなー」

「そっちじゃ無い!」

「……でも十代君も甘いなぁ、こう、コークスクリューにすれば拳の速度が上がって相打ちになんてならなかったのに……」

「人の話を聞け!その前の、俺とタニヤのデュエルの事だ!」

「……そんなんあったっけ?」

「無かった事にするなぁ!」

「……えー、その方がいいと思うんだけど?」

「……何が言いたい?」

「ふふふ、三沢君、初志貫徹って言葉知ってる?」

「ぐっ!?」

「ははは、『女の子に感けていて、セブンスターズの奴等に勝てると思っているのか!』……か。いやー、名言だね。事実そうなったしねー♪」

「お・ま・え・なぁ!!」

「ヒラリっと。むぅ、暴力ハンターイ」

「うるさい!今日という今日は許さん!そこに直れ!」

「ははははは、言ってる事はそれっぽいけど、本当の事を言われて怒ってたんじゃ『ラスト・サムライ』の名折れだゾー?三沢っち」

「その呼び方で呼ぶなぁ!待てー!」

「あっははははは……」



……まぁ、そんなこんなで、今何をしているかと言うと……

「鍵を盗んだ犯人は、この中に居る!」

「「「「「「「「「「え〜〜!!?」」」」」」」」」」

「この事件はこの俺が解決してみせる!名探偵万丈目サンダーの名にかけて!」

「おー、なんかカッコいいぞ」

「よ!金○一君!ジッチャンの名にかけろー!」

「あ、アニキ、和希君……」

「外野は黙ってろ、あと○田一じゃない、万丈目さんだ!」

万丈目少年の事件簿を堪能していた。

ま、つまりは原作通り、セブンスターズの一人、デュエルの精霊、首領・ザルーグ扮するマグレ警部と、数年前からアカデミアに侵入していたその仲間である黒蠍盗掘団の面々によって七星門の鍵が盗まれてしまった訳だが……

ぶっちゃけ、三幻魔復活にはデュエリストの闘志を蔓延させ、更にカードの精霊の力を吸収する必要があり、七星門の鍵を盗んだだけでは全く意味が無いの。つまりは彼らの行動全く意味なし。……影丸さんも教えてあげればいいのに……

……と言うか、この人達と言い、今後来るであろうアビドスさんと言い、なんで影丸さん、こんなビミョーな人達を選ぶかなぁ。……面白いから良いけど。

「俺は皆が集まる前に全ての犯行現場を廻ってきた」

「そうか、犯行現場には幾つもの証拠が残っている」

因みに、鍵の隠し場所は、それぞれ原作通りに、明日香さんの部屋の宝石箱、十代君の机の引き出しの中、万丈目君の部屋の流しの下、そして、「同じ部屋にあるのは危険だ」という提案の元、僕の鍵は原作で大徳寺先生が隠していた会議室の金庫に入れられていた。

「そう言えば、床に付け爪のような物が落ちてたわ」

「え……あ……」

明日香さんの指摘に、オベリスクブルー女子寮の女医さんに成り済ましていた棘のミーネが自分の爪を見て動揺する。

……だが、それを見逃してこそ我らがサンダー。

「天上院君、真剣に犯人を探す気があるのか?部屋はこまめに掃除しろ」

「ま、毎日してるわよ」

「そんな物は俺が捨てておいた」

「ご、ごめんなさい……」

……流石サンダー、見事なズレッぷりである。……と言うか、女性の部屋の物を勝手に捨てるのは流石にどうかと思うよサンダー。

「そう言えば、会議室の金庫の前にも足跡が……」

「あ……」

大徳寺先生の指摘に、警備員に成り済ます罠はずしのクリフがまたもや動揺を見せるが、やはり見逃す我等がサンダー。

「学園内は土足厳禁、ちゃんと上履きを履く!足跡なら俺が拭いておいた」

「そ、それはすまなかったのニャ……」

真面目過ぎるぞサンダー。……絶対彼は血液型A型だなと確信した。

「そう言えば、オレ達の部屋の壁にも穴が……」

「そうそう」

「借りた部屋にキズをつけるな。敷金戻ってこないぞ」

「敷金って……」

「穴なら俺が埋めておいた」

「わ、悪いな万丈目」

「『さん』だ」

妙な所親切過ぎるぞサンダー。つーかどうやって埋めたんだサンダー。

「……!」

レッド寮の生徒に成り済ました逃げ足のチックが手にした手動式ドリルを背に隠すが、勿論気付かない以下略。

「万丈目君……」

「何だ」

「『現場保存』。捜査の鉄則だよ?」

「う、うるさい!そんな事わかっている!」

……言葉と行動が一致してないよサンダー。

……なんで万丈目君ってアニメ版だとこんな面白キャラなんだろう。漫画版だとあんなシリアスなキャラなのに。……三沢君もこれぐらい面白いキャラならもうちょっと影濃いだろうに。漫画版だと逆にアニメ版万丈目君みたいな性格だから余計可哀想だよなぁ。……いや、可哀想って……

「でも、犯人は誰なのニャ?」

「犯人は……お前!お前!お前!そしてお前だ!」

「「「「!」」」」

……と、万丈目君がくクリフ、チック、レッド寮の管理人に成り済ましていた強力のゴーグ、そしてミーネの四人を指差す。

「な、何を証拠にそんな事を……」

「そうよ!犯人扱いするなら、証拠が有るんでしょうね?」

「……有るとも」

「何!?」

「しかし、証拠らしき物は全て君が……」

「ふふふ、証拠は……これだ!」

『『『イエーイ!』』』

……と、取り出したのは、彼の精霊、おジャマ3兄弟のカード。

「それぞれの鍵を隠した時、俺は密かにこいつらを鍵と一緒に置いてきた。そして、俺の部屋には大勢の目撃者が居る!」

……と、続いて取り出したのは、万丈目兄とのデュエルの際、古井戸でゲットした攻撃力0の精霊達のカード。

「こいつらは、お前達の犯行の一部始終を目撃していた!」

『間違いない!』

『こいつらだ!』

『おいら達は見たわん』

『おうおう、おめぇらにはこの十手が……!』

『桜吹雪が……!』

『紋所が見えねえのか!」

……おジャマ達とワイト達って相性良さそうだよなぁ。いろんな意味で。

「そしてマグレ警部!あなたがこの一味の黒幕だ!」

「何ぃ!?」

「あなたは俺達に鍵をわざと保管させ、手下にその場所を教えていた!そして……」

異議あり!!

「な、何ぃ!?誰だ!?他人が推理してる途中で……」

「ふふふ、万丈目君、決めつけは良くないヨ?」

「か、和希君?」

「貴様、どういうつもりだ!?」

「いや〜、ハジメちゃんの論証をちゃんと聞きたいだけですヨ〜?もし間違ってでもいたら警部さん達に失礼だし?」

「ハジメちゃんじゃない!万丈目さんだ!……いいだろう、ならば聞かせてやる!」

「……また始まったわね……」

「和希の悪い癖なんだなぁ……」

「ま、いいんじゃねーか?なんか面白そうだし」

「うぅ、アニキが和希君に毒されていくっス……」

「……あの、我々は一体どうすれば……?」



追究開始!!



『この事件の黒幕はそこのマグレ警部だ』

待ったぁ!!

「前置きはいいからさっさとその証拠を示して下さいな」

「喧しい!焦るな!これからその根拠を話す。黙っていろ!」

『……確かに、警部が直接関与していた証拠は無い』

待ったぁ!!

「……結局証拠は無いんじゃん!」

「う、うるさい!だが、マグレ警部が怪しい根拠はある!」

「マグレ警部が怪しい根拠?」

「ああ」

『そもそも、鍵を隠すように指示したのはマグレ警部だ』

待ったぁ!!

「……それが根拠?」

「ああ、奴が隠すように指示された晩、その隠し場所から鍵が盗まれた。……怪しく思うのが当然だ」

「……大徳寺先生、彼は先生の部屋に泊まっていました。彼のアリバイは?」

「それが、眠ってしまっていたのでわからないのニャ。……ただ、騒ぎを聞いて起きた時には部屋のベッドに居たのニャ」

「……つまり、彼のアリバイは無い訳ですね」

「ふん、そもそも奴のアリバイ等関係無い。実行犯はこの四人な訳だからな」

「だからどうしてそんな……!」

「往生際が悪いぞ!目撃者が居る以上、言い逃れは許さん!」

『『『そうだそうだ〜。』』』

「……明日香さん、目撃者って誰っスかね?」

「……さぁ?」

……精霊の証言って言っても絶対信じて貰えないよなぁ。……と言うかこれを証言と言い切る万丈目君の神経はある意味凄いと思う。

『奴らは最初からこの犯行を計画していた。これは計画的な犯行だ』

待ったぁ!!

「マグレ警部は昨日島に来たばかり、他のメンバーとどう計画を練るって言うんだい?」

「別にそんな物は直接会う必要など無い。電話や手紙で事足りる」

「……成る程」

……無駄な所鋭いな、本当。

『……直接的な証拠は無いが、以上が警部が怪しい根拠だ』

待ったぁ!!

「……結局、直接の証拠は無いんじゃん」

「う、うるさい!」

「それはそうだよ和希君」

「証拠は全部、万丈目君が片付けてしまったもの……」

「え、ええい!あれだけ散らかっていたら人として片付けるだろ普通!」

……探偵としてそれはどうなのさ?

「ふふふ、ごまかしは駄目デスヨ?ちゃんとその事も証言して下さい?」

「チッ、一々細かい事を……」

……君には言われたくないヨ……

『証拠は……俺が捨ててしまった……』

異議あり!!

「ふふふ、万丈目君?なんで捨てちゃったのかな?」

「だ、だから何度も言わせるな!」

「和希君?うっかりっスようっかり」

「う、うるさい!」

「ふふふ、果たして本当にそうかな?」

「何!?」

「……どういう事なの?」

「ふふふ、『名探偵』ともあろう者が普通、証拠を『うっかり』捨ててしまった、なんて事有り得る?」

「それは、確かに……」

「う、うるさい!俺だって……たまにはうっかりもする!」

「ふふふ、そこで僕は思うんだ。もしかしたら、万丈目君は意図的に証拠を捨てたんじゃないかなってね」

「なんだと!?」

「ちょ、ちょっと待って!意図的にって、一体何故……!?」

「ふふふ、証拠を意識的に捨てる理由なんて、1つしかないよね?」

「ま、まさか……」

「そう、その証拠が自分に不利になるからさ!」

「な、なんだとぉ!?」

「つ、つまり……」

「ま、まさか……」

「万丈目、お前……」

「ち、違う!俺はやってない!」

「確かに、これも証拠は無いけど、君だって警部さんと同じぐらい怪しいのも事実だよ?」

「くっ!?だ、だが、こいつらの目撃証言も……!」

『そ、そうだわん!和希の旦那!』

『確かに、おいら達あの警部は見てないけど……』

『あの連中が盗み出した事には間違いない!』

「ふふふ、どうかな?その証言、万丈目君が容疑者である以上、信憑性は低い。……庇っている可能性もあるからね」

『そ、そんな〜』

『お、俺達嘘なんてついてないぞ!』

『アニキは本当にやってない!』

……係官、彼らを摘まみ出して。

『『『カタタ!』』』

『ちょ、ちょっと〜』

『『は、離せ〜!』』

……おジャマ達は法廷係官の制服を着て敬礼を決めたワイト達に連れていかれた。……あ、夫人がイエローがあんまりにもうるさいから実力で黙らせたら、他のおジャマ二人がおとなしくなった。

「ふふふ、何か申し開きはある?」

「お、おのれ、貴様!」

「ちょ、ちょっと待てよ!万丈目はそんな事する奴じゃ……」

「ふふふ、でも十代君?万丈目君が全く怪しくない訳でもないよね?」

「そ、それは……」

「ち、違う!俺は何もしていない!」

「いい加減に認めるんだね。万丈目君、今の時点では、君はこの事件の最有力容疑者だよ!」

「う、うおぉぉぉ!!」



「ち、違う、俺じゃない……」

「さて、それでは……」

……と、警部さんが手錠を出す。

「ま、待て!待ってくれ!万丈目はそんな事する奴じゃ……」

「そ、そうっスよ!何かの間違いっス!」」

……実際、原作だと鍵盗んじゃうけどね、片想いの相手、明日香さんとデュエルする為に。

「残念ですが、彼が容疑者である事はそこの彼が証明しましたな」

「そ、そんな……」

「……では、御同行願いますかな?」

待ったぁ!!

「……警部さん、人の話はちゃんと聞きましょう?」

「何!?」

「警部さん、僕は『今の時点では』と言ったんですよ?」

「和希、お前……?」

「裁判長!」

「え?わ、私がですかニャ!?」

「ここで証拠品を1つ提出したいと思います」

「じゅ、受理しますニャ」

「し、証拠品?」

「一体どんな……」

「ふふふ、勿論、犯人がわかる、決定的な証拠品ですよ!」

「な、何だと!?」

……示すんだ!警部さんに証拠品を……

くらえ!!

「それは……」

「……なんスかそれ?」

「何かの、スイッチみたいだけど?」

「ふふふ、このスイッチを押した時、真犯人がハッキリとわかりますよ」

「な、なんのスイッチなんだなぁ?」

「ふふふ、それは押してからのお楽しみ〜。では早速」

ポチッとな……

「ぎゃーっ!?」

「な、何だ何だ!?」

「ど、どうしたんだよマグレ警部!?」

「……何なの?そのスイッチ?」

「ふふふ、僕の鍵に仕掛けておいた、ビリビリマスィーンのスイッチですよ」

……因みにKC製、ボタン電池一つでしかも無線なのに、効果はご覧の通りである。……何に使うんだこんな物……

「ふふふ、どうしました?警部さん?」

「ち、違う!い、今は小指を角にぶつけただけ……」

はい、ポチッと♪

「いぎゃー!!」

ははは、面白いなぁこれ。

「くっ!見破られたのならば仕方がない!野郎ども!」

『おう!』

……と、皆が変装を取り去り……

『我ら!黒蠍盗掘だ……』

はい、ポチッと♪

「みぎゃー!?」

『親分!?』

ははは、いやー、人が決めようとしているところを邪魔するのは本当に楽しいなぁ♪

「……なんか可哀想になってきたっス……」



その後、散々スイッチで遊んだ後、デュエルの方は万丈目君に任せてあげた。

「あー、面白かった」

結局、万丈目君がカードに戻ってしまった彼らを引き取ってあげたようだし、めでたしめでたし……

「……待て!」

「?」

と、後ろを振り向くと……

「貴様~、何で最初からあのスイッチを出さなかった!」

と、額に青筋をたて、指を何やら恨めしげにウネウネさせた万丈目君が一人。

……いやそんなの、決まってるじゃない。

「ははは、だってそっちの方が面白そうだったんだもの~♪」

「貴様~!」

「はははは、また会おう明智君!」

「明智君じゃない!万丈目さんだ!待てぇ!」

「あっははははは……」



「……何か彼、ますます性格悪くなったんじゃない?」

「うーん、何かこの間温泉で倒れてから更に酷くなったような……」

「ま、まぁ、解決できた事だし、いいんじゃないかニャ?」



今日のワイトはお休みです

後書き

うぅ……段々と更新が遅くなってしまう今日この頃、本当に申し訳ない。

……本当は『バーサーク・デット・ドラゴン』辺りで黒蠍を全員撃破!的なものも考えていたんですけどねぇ。……『黒蠍団撤収』を『王宮のお触れ』で阻止しながら悪魔のように……

さりげなく万丈目君と初絡み。……つーか彼はキャラが濃すぎて絡ませるのに逆に苦労します。……面白いけど。



[6474] 第十八話 古代最強(自称)……よりも色々な意味で強い人
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/07/12 23:52
ある日の夕暮れの事……

「全く、何で僕まで、いい迷惑だよ本当!」

「だって万丈目がさ」

「貴様のせいだっつーの!」

「うぎゃー!ギブギブ!」

「おーっと!ここで万丈目選手の会心のコブラツイストが決まったぁ!遊城選手悶絶だぁ!」

「……嬉しそうにシュートサインしてないで。……と言うか、更に煽ってたのは和希君でしょうに」

……まぁ、授業中に万丈目君が十代君をからかおうとして逆にからかわれて逆ギレし、僕がそれを煽る(そして、翔君がそれを宥めようとする)……という黄金パターンが発動し、僕達四人は仲良く居残り掃除をさせられていた訳だ。



「これが、生涯無敗の伝説を残し、デュエルの神と言われた少年王、『アビドス三世』なんだニャ」

「生涯無敗!?……って事は一度も負けた事が無いって事か!?すげぇな!オレ、その神様とデュエルしてみたかったぜ」

「フン、どうせ、神の1ターンでライフポイントが0になるに決まっているがな」

「へへ、大丈夫大丈夫、お前の仇は、ちゃんとオレが取ってやるからさ」

「ぐっ、貴様の事だ!貴様の!」

「でもさ、お前なら神様相手でも、結構いい線いくんじゃないの?」

「貴様の事だと言ってるだろうが!人の話を聞かないのはこの耳か!?え!?」

「痛ててて……『あー、でもそもそも、対戦相手のデッキを海に捨てちゃうようような奴と、神様はデュエルしてくれねぇよなぁ』っておい!?」

「何だと!このっ!このっ!」

「痛ててて!い、今のはオレじゃ……ち、千切れる!耳千切れるって!」

「……和希君……」

「にははは、どうどう?十代君の声真似、神楽坂君と練習してみました」

「……また無駄な努力を、と言うか、そろそろ先生に……」

「その通りニャ。そこの四人、居残り掃除なのニャ」



……まぁ、こんな感じである。

「このっ!このっ!」

「痛ててて!か、和希!助けてくれぇ……」

「よし来た。……とりゃ!」

僕は寝技に移行した二人をてりゃっとひっくり返した。

「き、貴様何を……うが!?」

……足四の字固めは裏返すと技をかけてる方が痛い不思議な技です。

「ナイスだ和希!うりゃ!うりゃ!参ったか!」

「き、貴様ら卑怯だぞ……ぬおぉぉぉ!?」

「おーっと、万丈目選手遂にギブアップかー!?」

「……はぁ、可哀想な僕」

「ねぇ翔君?今気付いたんだけど……」

「……何スか?」

「『万丈目サンダー』って、なんだかリングネームっぽいよね?」

「……果てしなくどうでもいいっス」

……そんな緩ーい空気が……

「きゃーっ!?」

「「「「!」」」」

一声の悲鳴で全て吹き飛んだ。

……やっぱり今日か。

さっきの授業の内容からして、今日はあの『デュエルの神』が来る日だとは思っていたけど……

近くの崖から声のした灯台の方を見ると、どこぞのショッピングモールのような光景が……

「カイザー!」

「天上院君!」

「お兄さん!」

……まぁ、要するに、ゾンビ……じゃなくてミイラ達に囲まれている亮さんと明日香さんが見えた。

取り敢えず、救出に向かおうとするが……

「来るなぁ!」

亮さんの叫び声を引き金に……

「「「!」」」

僕達の周りの地面からもミイラが湧いて出てきて、囲まれてしまった。

……て言うか実際に見ると怖っ!

「カギヲ……モツモノォ……」

「こ、こいつら……」

「セブンスターズか!」

「ヤバ、今日は5○1ワクチン持ってきてないよ」

「いつもは持ってるんスか!?というかそれは対吸血鬼用でしょ!?そもそもなんでそんなに落ち着いてるんスか!伏せ字にもなってないし!」

「をぉ!?四連ツッコミ!?……ふふ、翔君、成長したね、今こそ君は真のキング・オブ・ツッコミ……」

「し、師匠ぉ!!って君はいつから僕の何の師匠になったのさ!?」

「えぇい!いい加減にしろ愉快なKY共!」

「僕も!?」

「おい、あれ……」

……と、十代君が指差す方には、遥か天空から金色の船が……

「……マ○シム?」

「限りない大地にでも行く気っスか!?」

「貴様一人で行っていろ!」

……そんないつも通り緊張感皆無な中(因みに、ワイト達も『へそ!』をしている)、僕達は船から発せられた光によって意識を絶たれた。

「「貴様(君)のせいだろうが(でしょうが)!!」」



……ま、その後は原作通り……

「ガッチャ!本気で楽しかったぜ!王サマ!」

「!……ふふ」

「いっけぇ!HERO達!ダイレクトアタック!必殺!『ヒーローフラッシュ』!」

「うわぁー!?」

僕達は船の中に連れて来られて、セブンスターズの一人、アビドス三世とのデュエルを十代君が『ヒーローフラッシュ!!』を決めて勝利した。

……それにしても、十代君もよくこんなカードを入れるよなぁ……

『ヒーローフラッシュ!!』、通常魔法、 自分のデッキから『E・HERO』と名のついた通常モンスター1体を特殊召喚し、発動したターン、自分フィールド上の『E・HERO』と名のついた通常モンスターは相手プレイヤーにダイレクトアタックをする事ができる。……と、効果自体は中々強力なカード。……だが、発動条件として、自分の墓地の通常魔法『H-ヒートハート』『E-エマージェンシーコール』『R-ライトジャスティス』『O-オーバーソウル』が揃っている時、この4枚をゲームから除外しなければ発動出来ない、という厳しい条件がある。

おまけに、十代のデッキに、E・HEROの通常モンスターで最高の攻撃力(攻撃力2500)の『E・HERO ネオス』がまだ無い今、特殊召喚出来る最高の攻撃力を持っているのは『E・HERO スパークマン』(攻撃力1600)、そこまで脅威ではない。

このように、ただでさえ発動条件が厳しく、E・HEROデッキでも採用が難しい『ヒーローフラッシュ!!』なのだが、駄菓子菓子、今回は十代君の鬼引きにより、『E・HERO フェザーマン』(通常魔法『O-オーバーソウル』により墓地から蘇生)『E・HERO バーストレディ』(『ヒーローフラッシュ!!』によりデッキから特殊召喚)『E・HERO クレイマン』(通常召喚)『E・HERO スパークマン』(前のターンからの生き残り)のE・HERO通常モンスター4体が1ターンで勢揃いし、『ヒーローフラッシュ!!』の効果で揃いも揃ってダイレクトアタック、一気に4600ポイントのダメージであぼーん……である。

翔君が「アニキらしいコンボだ」と洩らしていたが、将にその通りだと思う。つーか十代君じゃないとこんなカード使いこなせないって。

「おーい!大丈夫か王サマ!?」

その十代君が、アビドス三世に声を掛けた。

「……何故、余(よ)が闇のデュエリストになったのか……」

「え……」

「一度でいい、そなたみたいな男と、こんなデュエルがしてみたかった」

……『生涯無敗の少年王』『古代エジプトのデュエルの神』アビドス三世。その『生涯無敗』の伝説は、真実であり、また偽りでもあった。

彼の相手をしていた家臣達は、自分達の王(ファラオ)に勝つ訳にもいかず、気付かれないようにわざと負けていたのだ。

彼に本当にデュエルの才能が無かったのであれば、それでも満足出来たのかもしれない。だが、そこそこに才能があった彼は薄々気付いてしまった。……接待デュエルだと分かっていて、勝って喜ぶ人などいるだろうか?

「……楽しかったろ?」

「……ああ」

……生まれて初めてかもしれない、全力のデュエルができ、負けたアビドス三世の顔にも満足感が満ちていた。

……僕もデュエルしたかったが、やはり、対戦してみて楽しいのは十代君の方だし、今回は譲って良かったと思う。……『バカって言った方がバカなんだぞ!』『おう!オレはバカだ!』の名やり取りも見れたし。……つーかこの法則って古代エジプトにもあったんかね?

と、十代君を天に連れて帰りたいと言い出したアビドス三世に『百年後な』と約束し、帰ろうとした所……

「そこの者達!今暫く待て!」

……と、涼やかな声が響いた。

声のした方に顔を向けると……

あのイシズさんの着ていたような服に多数のアクセサリーをあしらった感じの服に身を包み、顔を、先ほどアビドス三世が付けていた物に似た黄金の仮面を付けた女性が、苛ただしげに腕を組んでいた。

「ア、アンケ!もう良いのだ。余はもう……」

と、その言葉が終わらないうちに、その女性は仮面を外し、アイシャドーで彩られた美麗な素顔を外にさらしながら、アビドス三世につかつかと歩み寄って……

「そなたはそれでも王(ファラオ)か!王家の者として、やられたままで黙って帰ると言うのかそなたは!」

「う……」

口付けでもせんばかりに顔を近付け、二の句を継げさせない激しさで糾弾する。アビドス三世も、その勢いに飲まれてしまい、口ごもるだけであった。

……なんか、見た事、と言うか、体験したことあるなぁ、こんなの。

「誰かしら?」

「す、凄いっスねあの人、王様相手にあんな叫んでるっスよ」

つーか僕も知らん。あんな人、多分原作にいなかったよな。……何となく予想は出来るけど……

「貴様等!口を慎め!」

……と、周りの兵士達が声を荒げる。

「あの御方こそ、我等がファラオ、アビドス三世様の妃、アンケセナーメン様なるぞ!」

あー、やっぱりお妃さんか……

『えー!!?』

……って、何で皆驚いてるの?

「……なんでそんなに驚いてるのさ?」

「だ、だってアビドス三世って、僕達とそんな年変わらないよね!?」

あー、そっち?

「翔君、古代エジプトじゃ、ファラオが十代前半で結婚するのなんて普通なんだよ?」

「そうなの!?」

「因みに近親婚もね。ファラオである父親のお妃になった人だっていたんだよ?」

「嘘!?」

「ホントホント」

かの有名なクレオパトラも、18歳の時、ファラオで10歳の弟の妃になったっていうし。

「と言うか、なんでそんな事知ってるよ……」

「ふふふ、『この地球でムダ知識を増やすことに喜びを感ずるのは人間のみである』、デスヨ明日香さん」

「……ト○ビアっスね」

「アイザック・アシモフの言葉か」

「そうそう、オ○ロラボレアリス!」

「それはクラーケンの海闘士だろうが!」

と、それまで言い争い(9割方アンケさんの勝利)をしていた二人だったが……

「……もうよい、そなたの代わりに、妾(わらわ)が我が王家の誇りの為、戦って参る!」

「ま、待て!」

アビドス三世が制止するのも聞かず、傍の兵士が掲げるデュエルディスクを受け取り……

「そこの者、相手をせよ」

「……って、僕デスカ!?」

御指名入りました〜……じゃ無くて!

「あの、アビドスさんの仇なら十代君じゃ……」

「その者は百年後にファラオとの再戦を約束した。そこに、妾が首を突っ込む余地は無い」

でも、なんで……

「そなた、先程ファラオを、我が夫を愚弄していたであろう!」

ぐ、愚弄って……アレか?



デュエルが始まる直前……

「十代!これは闇のデュエルだぞ!」

「それに、相手は神よ!?」

「無茶だよアニキ〜」

「わかってるって!でも、このワクワクする気持ちは止められないんだ!」

「うぅ、アニキ〜」

「まぁ、大丈夫でしょ。十代君なら」

「またそんなお気楽な事言って、相手は神様っスよ?」

「それは違うよ翔君」

「え……」

「あの人は『神と呼ばれた』デュエリストであって、『神様』そのものじゃない。所詮は同じ人間だよ」

「でも、あの人は生涯無敗だったって……」

「明日香さん、生涯成績1戦1勝0敗だって生涯無敗ですよ?」

「そ、それはそうだけど……」

「それに、あの人がアビドス三世本人だという証拠もないでしょう?」

僕の意見に、亮さんが頷く。

「確かに、そもそも、古代エジプトのファラオ等、俺達には本人かどうか等、確める術はないな」

「成る程、そのネームバリューを利用したニセモノって可能性もあるわけか」

……ぶっちゃけ御本人ですけど。

「まぁ、本人なら本人で面白そうだけどね」

「え……」

「『生涯無敗』っていい気になっている王様の足下を掬うなんて、面白いと思わない?」

「あ、あのねぇ……」

「……仮にも神と呼ばれてる相手に対して、よくそんな暴言を吐けるわね」

「……今にバチが当たるだろうな」



……アレか。

「我が夫への暴言は妾への、ひいては我が王家への暴言も同じ!」

……なんか一人で盛り上がってるし、アビドスさんも首振ってるし、『こうなったらもう余にも止められん』って感じで。

「さぁ!デュエルせよ!万が一、妾に勝った暁には不問に処す!だが負ければ……」

「……八つ裂き、ですか?」

「……何も命までは取らん。天にて、永久に奴隷となって貰おう」

……そっちの方がキツいっす。

……はぁ、なんか僕の相手って、こんな人ばっかりな気がするなぁ……



「……珍しく肩を落としてるっスね」

「は、はは、オレ、王サマとやっといてよかった……」

「どうやら、早速バチが当たったようだな」

「まぁ、これで彼も、口は災いの元って意味を実感出来そうね。ジュンコの為にはなりそうね」



「「デュエル!!」」

「妾のターン、ドロー!モンスターを1体裏側守備表示でセット、更にリバースカードを1枚セットし、ターンエンド」

「……はぁ、僕のターン、ドロー……」

「……そなた、やる気はあるのか?」

出したくても出ないデスヨ!……まぁ、負けて奴隷にされるのもやだし、しょうがないか。

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果により、手札とデッキから闇属性のモンスターカードを1ターンに1枚ずつ墓地に送ります。手札とデッキから闇属性の『ワイトキング』を1枚ずつ墓地に送ります。そして、『ダーク・グレファー』で守備表示モンスターに攻撃!」

『ダーク・グレファー』が裏側守備表示のモンスターに斬りかかる。

が、

「リバースカード発動!カウンター罠『攻撃の無力化』!相手モンスターの攻撃宣言時に発動、相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する」

「……リバースカードを1枚セットしてターンエンドです」

いきなり『攻撃の無力化』。……って事は、あのモンスターを生け贄にでもする気だろうか……

「妾のターン、ドロー!裏側守備表示のモンスターを反転召喚!『スカラベの大群』!」

「げ……」

狙いはそっちか!

「このカードの反転召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する。『ダーク・グレファー』を破壊!」

『ダーク・グレファー』が大量のスカラベ(フンコロガシ)に覆われ、骨も残さず喰われ尽くした。……それなんてハム○プトラ!?

「更に、『スカラベの大群』(攻撃力500)でダイレクトアタック!」

「うぎゃー!?」

痛!地味に噛まれて痛! 自残ライフ3500

「『スカラベの大群』の効果により、このモンスターを裏側守備表示に変更し、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

『スカラベの大群』、あのカードを破壊しなければ、毎ターン僕のフィールド上のモンスターが破壊されてしまう。……あのリバースカードが気になるけどここは……

「『馬頭鬼』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚、そして裏側守備表示のモンスター、『スカラベの大群』(守備力1000)を攻撃!」

『馬頭鬼』が手にした斧で切りかかった。

が、またしても……

「リバースカード発動!永続罠『旅人の試練』!」

「げ……」

また地味に嫌なカードを……

「このカードは相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事が出来る。自分の手札から相手がランダムに1枚カードを選択し、相手はそのカードの種類を当てる。ハズレの場合は、その攻撃モンスターは持ち主の手札に戻る。さぁ、選ぶが良い!」

「……右から2番目、魔法カード」

「ハズレだ」

彼女が見せたカードは『クリオスフィンクス』、モンスターカード。

「よって、『馬頭鬼』はそなたの手札に戻り、攻撃は無効となる!」

「くっ、ターンエンドです」



「……苦戦してるな。和希」

「もしかして、あのお妃様、王様よりも強いんじゃないんスか?」

「……かもしれんな」

「え?」

「王サマ?」

「ファラオ!お止め下さい!」

「そのような下賤な者達と軽々しく口をきくなど……」

「良い。彼の者は、余と本気でデュエルしてくれた友だ。口出しは無用だ」

「し、しかし!」

「構うなと言っている!」

「は、は!」

「へへへ、まさか王サマの友達が出来るなんてな。思ってもみなかったぜ。でもよ王サマ……」

「アビドスで良い」

「なぁアビドス。お前、生涯無敗って事はあのお妃サマにも負けなかったって事だよな?」

「ああ、一度だけしかやらなかったが、アンケとのデュエルは、当時では一番手強く、面白い物であった」

「一度だけ?」

「……そのデュエル、余は辛くも勝利を納めた。だが、その勝利は、間違いなく運良く勝ち取った勝利であった。アンケは、手加減という物が大嫌いだからな。そのデュエルを見ていた家臣達が、慌てて余とアンケのデュエルを禁じてしまったのだ。だから、アンケとのデュエルはその1度きりになってしまったのだ。」

「へぇ……」

「……時にそなた、十代と言ったか。」

「ん?なんだ?」

「あの男、強いのか?」

「おう!勿論だぜ!」

「和希君とアニキの腕はどっこいどっこいっスね」

「……あの者も、余と本気でデュエルしてくれるだろうか」

「ははは、あいつなら多分、『手加減してくれ』って頼んでも手加減してくれないと思うぜ?」

「『遊びでも全力を尽くす』とか、『全力を出さないと相手に失礼』ってのがポリシーらしいっスよ」

「そうか、あの者も、是非天に来て欲しいものだ」

「あー、悪ぃけど、やっぱそれも百年後にしてくんねぇ?あいつが居ねーと寂しいしよ」

「ふ、わかっている」

「……何か早速、和気藹々と話しているわね」

「まぁ、あれが十代の凄い所の一つではあるがな」

「……警戒心という物が無いのか奴には」



「妾のターン、ドロー!守備表示モンスター『スカラベの大群』を生け贄に、『ジャッカルの霊騎士』(星5 攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!ダイレクトアタック!」

「うわっち!?」 自残ライフ 1800

拙い、きつくなってきた……!

「更に永続罠『血の代償』を発動!ライフを500ポイント払う事で、自分のメインフェイズ時又は相手のバトルフェイズ時に、モンスター1体を通常召喚する事が出来る!ライフを500ポイント払い、『ジャッカルの霊騎士』を生け贄に、モンスターを1体、裏側守備表示でセットし、ターンエンド!」 敵残ライフ 3500

……生け贄で裏側守備表示って事は……あー、あれか。まだ『混沌帝龍-終焉の使者-』が存在しなかった時分、昔は代わりにこのカードと『八汰烏』のコンボが恐れられていた……

……って感傷に浸っている場合じゃなかった。

「僕のターン、ドロー!」

……幸い、あのカードへの対応策は手札にある。

「『ワイト』(守備力200)を守備表示で召喚!更に罠カード『同姓同名同盟』を発動!自分フィールド上に表側表示で存在する星2以下の通常モンスター1体を選択して発動。自分のデッキから選択したカードと同名のカードを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚します!デッキから更に『ワイト』を2体守備表示で特殊召喚し、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

僕の予想が正しいなら、あの裏側守備表示のカードは……

「妾のターン、ドロー!裏側守備表示のモンスターを反転召喚!『守護者スフィンクス』(星5 攻撃力1700)!」

やっぱりか……!

「このカードの反転召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターは全て持ち主の手札に戻る!」

……今しがた出した『ワイト』3枚が手札に戻される。

「折角の壁も無意味に終わったようだな。更に『ガーディアン・スタチュー』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!」

……『守護者スフィンクス』と合わせて、2500のダメージか。

「これで終わりだ!2体のモンスターでダイレクトアタック!」

……させませんよ!

「リバースカード発動!永続罠『グラヴィティ・バインド-超重力の網-』!このカードが存在する限り、フィールド上に存在する全ての星4以上のモンスターは攻撃をする事が出来ません!」

「何!?」

『守護者スフィンクス』と『ガーディアン・スタチュー』の攻撃が阻害された。

「くっ、存外にしぶとい。妾は更に、『血の代償』の効果により、ライフを500ポイント払い、『ガーディアン・スタチュー』を生け贄に『ヒエラコスフィンクス』(星6 攻撃力2400)を召喚!そして、『守護者スフィンクス』をその効果により、裏側守備表示に戻し(守備力2400)ターンエンド!」 敵残ライフ 3000



「そんな、反転召喚する度に相手のモンスターを全部戻しちゃうなんて……」

「……しかも、あの『ヒエラコスフィンクス』が自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は裏側守備表示モンスターを攻撃対象に選択する事が出来ん」

「放っておけば、『守護者スフィンクス』の効果で、毎ターンモンスターを戻されてしまうし……『グラヴィティ・バインド』があるとはいえ、絶対絶命っス……!」

「へへへ……」

「アニキ?」

「? 友の窮地に、何故そなたは笑っている?」

「でも、あいつはそんな風に感じちゃいないみたいだぜ?」



「僕のターン!ドロー!」

……よし!これを待っていたんだ!

「速攻魔法『サイクロン』発動!フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊!『旅人の試練』を破壊!」

「何!?」

……そう、あの罠カードが邪魔だったのだ。

「くっ、だが、今更そのようなカードを破壊しても……」

「それはどうでしょう?更にリバースカードを1枚セットして、魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローします!」

「何!?」

……そう、これが僕の狙い!

「更に墓地に送られた『馬頭鬼』の効果を発動!墓地にあるこのカードを除外し、墓地にあるアンデット族モンスター1体を特殊召喚します!『ワイトキング』を特殊召喚!」

『ワイトキング』が現れる。頭の後ろに人差し指と小指を立てた左手を持ってきながら……っていい加減にしつこいから!

「『ワイトキング』の攻撃力は、墓地にある『ワイト』『ワイトキング』×1000、墓地には、『ダーク・グレファー』で送った『ワイトキング』が1枚と、今『手札抹殺』で送られた『ワイト』が3枚!よって、攻撃力は4000!」

「な!?まさかこの為に!?」

「更に、さっき伏せたリバースカードを発動!魔法カード『ダブルアタック』!自分の手札からモンスターカード1枚を墓地に捨て、捨てたモンスターよりもレベルが低いモンスター1体を自分フィールド上から選択。選択したモンスター1体はこのターン2回攻撃をする事が可能!」

「な!?」

「手札から『ワイト夫人』(星3)を墓地に送り、『ワイトキング』(星1)を選択!これにより、『ワイトキング』はこのターン2回攻撃が可能!更に、『ワイト夫人』は墓地に存在するとき『ワイト』として扱われるため、『ワイトキング』の攻撃力は1000ポイントアップ!『ワイトキング』(攻撃力5000)で『ヒエラコスフィンクス』(攻撃力2400)と裏側守備表示モンスター、『守護者スフィンクス』(守備力2400)を攻撃!」

『ワイトキング』が、『右手』での『ホーンテッド・ナイトメア』で『ヒエラコスフィンクス』を撃破し……

「『幻の左』ぃ!」

……続いて左手の『ホーンテッド・ナイトメア』で、『守護者スフィンクス』を撃破した。 敵残ライフ400

「くっ、まだ、負けたわけでは……」

「残念ですが、これで詰みです!永続罠『エンジェル・リフト』発動!自分の墓地に存在する星2以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚します!」

天から、孫○空よろしく天使の輪をつけた『ワイトキング』が降りてきた。天使っつーか、どう見てもエ○ァの使徒だって。

「この特殊召喚された『ワイトキング』には、まだバトルフェイズが残っている!」

「あ……あぁ……」

……ちょっと遊戯さんっぽく言ってみたりする。『青眼の究極竜』を『融合解除』みたいな?

「『ワイトキング』(攻撃力4000)でダイレクトアタック!『ホーンテッド・ナイトメア』!」

「あああぁぁ……!」 敵残ライフ0



「……一つ訪ねたい」

「はい?」

デュエル後、アンケさんが聞いてきた。

「あの『同姓同名同盟』で『ワイト』を並べたのはやはり?」

「あー、はい、あのモンスターが『守護者スフィンクス』じゃないかなーって思って」

『旅人の試練』とか『スカラベの大群』とか『クリオスフィンクス』とか、それっぽいカードもあったし。

「……成程、妾の完敗というわけか」

「あー、いえ、でも楽しかったです。ありがとうございます。あと、なんかアビドスさんを侮辱してしまってごめんなさい」

……と、手を差し出す。

アンケさんは一瞬キョトンとしたが……

「……ああ、礼を言う。百年後、また妾や我が夫の相手をしてくれ」

と微笑んで、握手に応じてくれた。



「待ってるからなー!」

こうして、アビドスさん夫妻は天へと帰って行った。

「二人とも良かったじゃないか、成仏先が決まって」

万丈目君が茶々を入れる。

「お前達も一緒に行こうな!あの王サマ、アビドスにもっとたくさん、本気のデュエルを教えてやりろうぜ!」

「断る。死んでからも貴様らと一緒なんか御免だ」

「いいじゃんか、友達だろ?」

「寧ろ親友と書いてマブっしょ?」

「誰がマブだ!誰が!」

「あれ?万丈目君、天国に行けるの?」

「寧ろ万丈目君、死ねるの?」

「どういう意味だ!特に後の!人を化け物みたいに言うな!」

「はははは、君のトラブルメーカーぶりは、ある意味化け物じみているからねー」

「貴様が言うなぁ!」

「ははははは……」



……翌日。

「……あの、ジュンコさん?」

「……ヒトヅマニテヲダシタ……」

ひぃ!?目が逝ってらっしゃる!?

よくわからないけど、明日香さん何かチクりましたね!?そしてなにか盛大に勘違いしてらっしゃる!?

「……滅……」

「うぎゃー!?」



今日のワイト

和「今日は、このSSのオリキャラ、アンケさんのカードですね」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「まずは『守護者スフィンクス』、星5、地属性、岩石族、攻撃力1700守備力2400、このカードは1ターンに1度だけ裏側守備表示にする事ができ、このカードが反転召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターは全て持ち主の手札に戻る。数少ない、実戦で使える裏側守備表示で出すのが普通なカードですね。その強力なバウンス効果(モンスターを手札に戻させる効果 例『ペンギンソルジャー』『ハネハネ』等)は一時的に制限カードに昇りつめた程、本編中に書いたように、『混沌帝龍-終焉の使者-』が登場するまでは、『八汰烏』を利用したロックデッキ、【八汰ロック】では中心カードでした。いや~、あれはキツかった!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「続いて、永続罠『旅人の試練』、永続罠、相手モンスターの攻撃宣言時に発動、自分の手札から相手がランダムに1枚カードを選択し、相手はそのカードの種類(モンスター・魔法・罠)を当てる。ハズレの場合、その攻撃モンスターは持ち主の手札に戻る。……これも正直ウザい!これで上級モンスターや儀式モンスターなんかを戻されたらもう泣くしかないです。……まぁ、相手の手札がわかる利点もありますけど……」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「そして、『ヒエラコスフィンクス』、星6、地属性、岩石族、攻撃力2400守備力1200、このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は裏側守備表示モンスターを攻撃対象に選択する事ができない。大抵はステータスの低いサイクル・リバースモンスター(反転召喚することで効果を発動し、1ターンに1度裏側守備表示に表示変更できるモンスター 例『デス・ラクーダ』『スカラベの大群』『守護者スフィンクス』等)を守る為のモンスターカード、攻撃力も、上級モンスターとしてボーダーラインの2400と優秀ですね」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「最後に、名前しか出ませんでしたが『クリオスフィンクス』、星6、地属性、岩石族、攻撃力1200守備力2400、このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上のモンスターが持ち主の手札に戻った時、そのモンスターの持ち主は手札からカードを1枚選択して墓地に送る。前述のバウンス中心のデッキに組み込めばなかなか強力。ただし、手札を破壊できるのは1回戻すごとにに1枚なので、上の『守護者スフィンクス』で数枚を戻しても破壊できる手札は1枚です。……まぁ、1ターンに1枚手札を破壊できるだけでも十分強力ですが……上の『旅人の試練』と並べれば、相手は更に攻撃しづらくなるでしょう」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「……では、今日はここまで。次回も、チョーおもしろカッコイイぜ!」

3ワイト「「「カタカタカター!(龍神○ー)」」」



後書き

……申し訳ない、20日ぶりの更新です。……最近、高校の合宿(OB)やら夏風邪やらスランプやらで……

因みに今回出ましたオリキャラのアンケさん、多分今後ストーリーに一切出てきません!(オイ!

うぅ、だってアビドスさんとデュエルさせたらほとんど十代君のデュエルと内容変わんなかったんだもの。……『スピリッツ・オブ・ファラオ』はコンボを組むの難しい。組んでもワイトと被るし……

因みに、『アンケセナーメン』というのは、かのツタンカーメンの王妃の名前です。……妾って一人称のキャラが欲しかったんだよー!一発キャラになちゃったケド……頑張って『スフィンクス』を始めとしたエジプト風デッキを作ってみました。(『光のピラミッド』系のスフィンクスは劇場版のボスなので没)

……今更だけど、このデッキに『縮退回路』入れても良かったかなー。……いや、それだとエジプトっぽくないし、なによりアビドスさんが勝てないか……



[6474] 第十九話 学園祭……になると妙にテンション高くなるヤツ(自分)
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:26
「……何処に行っちゃったんだろうな?大徳寺先生」

「まさか、闇のデュエリストにやられたりしてないわよね?」

「それは考えにくいだろうね」

「吹雪先輩を闇の世界に放り込んだのは、大徳寺先生な訳だからな」

「だからと言って、敵側と決め付けるべきではない」

「オレは信じるぜ、大徳寺先生の事……」

「あぁ!?和希君なんスか!その所々捻っただけバルーンアートは!」

「何って……チェ○ンマイン?」

「またガン○ムネタっスか!?」

「ははは、違うよ。は○ひちゃんネタだよ」

「大元はこっちでしょ!そんなの駄目!早く片付けて!」

「はーい」

「ちょ、ちょっと!なんで僕に巻きつけるんスか!」

「いや、チ○ーンマインだし?」

「……別にこんな小さな風船、割れてもどうってこと……」

「ははは、因みに、中には君がさっきぶちまけたライン用の石灰が……」

「ちょっと!それって始めからこうする積もりだったでしょ!?……わー!やめてー!」

パンッ!

「……なーんつって。ははは、流石にそんなの入ってないよー」

「こらー!」

「あっはははは……」

「「「「「……」」」」」

「る〜るるる、る〜るるる、ほら猫じゃらしだぞー、デブ猫出て来ーい、大徳寺はどこだー?る〜るるる、る〜るるる……」

「「「「「……」」」」」

「……オレ達も準備手伝うか」

「……そうね」

「……だな」



先日、セブンスターズの一人となったタイタンと明日香さんとのデュエルが行われた。

まぁ、このデュエルは吹雪さんの完全復活のきっかけとなるので、流石に僕が代わる訳にもいかず、原作通り事が進んだ。

結果、明日香さんは勝利し、ブッキーは完全復活を遂げた。

……グッバイ若本さん、永久(とこしえ)にー。

……てな訳で、今日は待ちに待った学園祭である。

原作通り、オベリスクブルーは喫茶店、ラーイエローは屋台、そして、我等がオシリスレッドはコスプレ喫茶ならぬコスプレデュエルである。

まぁ、男ばかりのコスプレデュエルなんざ面白くもなんともなさそうだけど、そこは翔君の必死の土下座により、明日香さんの参加を勝ち取った。……と言うかなんか女子がいるオベリスクブルーはこういう時ずるいよなぁ……。そして翔君の異様なテンションになんかドン引きです。

その後、トメさんのブラックマジシャンガールのコスプレにいろんな意味で悶絶した後……

「はい?僕が頼んで来いって?」

「ええ」

……何故かジュンコさん達を勧誘する係に選ばれたりする。

「さっき私が頼んだんだけど、逃げられちゃって」

そう言う明日香さんは、既に『ハーピィ・レディ・SB(サイバー・ボンテージ)』のコスプレをしている。……ちょっと目のやり場に困る。

「だよな。三人揃えば『ハーピィ・レディ三姉妹』だしなぁ」

そう言う十代君は……原作通り、帽子は『闇・道化師のサギー』、肩当てとマントが『エルフの剣士』、盾が『鉄の騎士 ギア・フリード』、胸当てが『魔導戦士 ブレイカー』に……と、色々混ざっている格好をしている。

「……僕が頼んでも来る訳ないでしょうに」

「あなただからいいんじゃない」

「「うんうん」」

……なんでさ?明日香さんに出来なくて僕に出来る要素が見当たんないんですけど?……と言うか吹雪さんの方が適任のような気が……

「まぁ、どうしても来ないようなら、こう言ってみて」

と、明日香さんが僕に耳打ちする。

「……そんなので来ます?」

「大丈夫、絶対来るわ」

まぁ、あの二人、原作で後夜祭の時は確かやってたから、可能性は0って訳じゃなさそうだし……やってみますか。

と、

ガチャ……ガチャ……

何かこっちに来る音がした。

……めくるめく予感に期待しながらそっちを見ると……

『よ!万丈目サンダー!』

『日本一!』

「世界一と言え」

『男前〜』

「当たり前だ」

と、おジャマ達におだてられて(いや、本心か?)いる……

「『XYZ−ドラゴン・キャノン』かよ!」

「それ、素人の仕事じゃ無いんだなぁ」

……一人のコスプレイヤーの姿があった。

って言う、か……

「ぷ……あっはははは!ちょ、ちょっと万丈目君!それ張り切りすぎ!ははははは!」

なんと言うか、『Y−ドラゴンヘッド』の部分なんてギリギリだし!

「……」

はははは……あれ、今回は万丈目君怒らな……

ドンッ!

……

……轟音の後、目の前の地面には拳大の2つの穴。

そして、万丈目君の肩のキャノン砲からは煙が……

「……えっと、じゅーとーほーいはん?」

「安心しろ、特注のエアガンだ。次は外さん」

キラーンって爽やかに笑ってるけど!この威力シャレにならないって!

「は、ははは。じゃ、じゃぁ僕、ジュンコさん達勧誘に行ってきまーす!」

戦力差を見越した戦略的撤退ぃ!

「……勝った!」

「何にっスか」



「絶・対・嫌!」

……やっぱりね。

オベリスクブルーの喫茶店で二人を見つけたのはいいけど、この調子である。

「大体、なんでアタシがそんな事しなきゃならないのよ」

「ええと……」

うーん、てこでも動きそうにないなぁ……

……仕方ない、こうなったら最終兵器だ。

「その、僕もジュンコさんのコスプレ見てみたいなぁって、似合ってそうだし。」

「な!?」

……こう言えば来てくれるって明日香さんに言われたんだけど、こんなお世辞みたいなので本当に来てくれるのか?……まぁ、見たい事は見たいけど。

「……」

……あれ?なんか知らないけど効果あり?微妙に顔が赤い気もするけど……

と、テーブルの上の伝票が目についた。……そうだ。

僕はそれを手に取り……

「さしあたっては、奢るよ」

「あ……」

まぁ、出費は痛いけど、参加して貰えるなら……

「……ケーキ」

「え?」

「……あとケーキ1つプラスで、手をうってあげるって言ってんの!」



因みに、このやり取りを終始キャーキャー言いながら見ていた浜口さんは……

「明日香様やジュンコさんが参加すらならば、わたくしも参加しなくてはなりませんわね」

と、案外あっさりと受けてくれた。

「勿論、わたくしの分も奢って頂けますわね?」

……抜け目無い。



「……と言うわけで、二人に参加して貰える事になりましたー」

「「「おー」」」

ジュンコさんや浜口さんも加わり、めでたく『ハーピィ・レディ・三姉妹』が完成した。

「やったじゃねぇか和希」

「たまには役に立つな」

万丈目君たまにはって……

「やるじゃない。朝倉」

と、妙に嬉しそうな明日香さんが小声で話しかけてきた。

「ま、まぁ、でも明日香さんに言われた事言っただけだし……」

「でも、奢ってあげたのはあなたの判断でしょ?」

「それは……まぁ」

あれぐらいは頼む上では礼儀かなーって。……財布は結構軽くなったけど、ぼったくりだってあの値段!

「いいじゃない。男らしいわよ」

「そうだね。胸キュンポイント1ポイントだよ。朝倉君」

「って兄さ……!?」

パシャッ

「いやー、ちょっと見ない間に、妹がこんな美人になってくれて、兄さんは嬉しいよ」

「兄さん!その写真!」

「明日香のファンクラブのメンバーに配ろうと思ってね」

「兄さん!」

「おっと!」

「待ちなさい兄さん!写真を渡しなさい!」

逃げながらも明日香さんの写真をパシャパシャ撮る吹雪さん。

……あーいうのをいうんだろうなぁ、駄目兄貴って。……そして、後であの写真を貰える事を、涙を流して喜んでる万丈目君は……ストーカー予備軍?

「……吹雪さんってあんなキャラだったのか」

十代君もびっくりしてるし。まぁ、ダークネスとのギャップが凄いからなぁ……

「そう言えば、和希君はコスプレどうするっスか?」

「僕?僕はもう準備OKだよ?」

僕は用意していた仮面を付け……

「さぁ!今日も元気に悪徳政治家と一緒にGO TO HELL!」

「それはア○メツの仮面っス!」

「どこからそんな物持ってきた!」

「じゃ、手始めにクロノス教諭と一緒に校舎屋上からダイブしてくるよ」

「「やめぃ!」」



「……ホントバカね」

「あら、そのおバカさんに頼まれて、コスプレを引き受けたのは何処の誰でしょう?」

「う、うるさいわね!」

「ふふふ、折角そんな扇情的な格好をしているのですから、もっとアピールなさっては?」

「か、格好はアンタも同じでしょ!?だったら、アンタがしてくればいいじゃない!」

「では、そうしましょうか」

「え!?」

「……ふふふ、どうしましたか?そんなに慌てて」

「っ!? は、嵌めたわねももえ!?」

「ふふふふ……」



こうして、コスプレデュエル大会がスタートした。

……だが、僕はジャンケンに負け、唯今ビラ巻き中である。

早いところやっちゃわないと。原作にあった、十代君対ブラック・マジシャン・ガールの精霊のデュエルが終わっちゃいそうだし。

と、ワイト達がある朗報を報せてくれた。

本当?ふふふ、チャーンス!

僕はワイト達が教えてくれた場所に急いだ。

と、見覚えのある後ろ姿を見つけた。

僕は気付かれないように近づき、その低い肩をトントンと叩いた。

「?」

その子は振り返り、僕を目にし……

「……」

その目を点にした次の瞬間……

「きゃー!?」

ふふふ、大成功。びっくりしてくれた。

「あははは、僕だよ」

「え?」

と、僕は被っていたマスクを取った。

「って和希先輩!?」

「ははは、久しぶりだね。レイ君」

そう、以前、男装してアカデミアに来ていた早乙女レイ君であった。

「もう!相変わらず意地悪なんだから!」

「あははは、ごめんごめん。よく来たね」

「はい!来ちゃいました!」

「おー、結構背が伸びたね」

「はい!明日香先輩に負けないスタイルを目指して頑張ってます!」

えへへと可愛らしく笑い……

「……その格好は?」

と、漸くツッコんでくれた。

「あー、これ?どう?」

まぁ、ここまでくればわかるかもしれないが、僕はそう、ワイトのコスプレをしている。

中々凝った造りをしており、イメージとしてはボロボロのローブを着た理科室の骸骨模型である。

因みに、仕込んであるカスタネットでカタカタ音もする。ワイト達からもお墨付きの出来である。

「ふふふ、良く似合ってるよー」

「……それは誉めてるの?貶してるの?」

「御想像にお任せします」

むむ、相変わらず手強い。

「今さ、オシリスレッドでコスプレデュエルってやってるんだけど」

「あー、それでそんな格好してるんだ」

「良かったらどう?」

「……そうだね。面白そうだし。十代様にも会いたいし。行くよ」

「OK。じゃ、一緒に行きますか」

「うん!」

僕はビラ巻きを終了し、レイ君とオシリスレッド寮に向かった。



道すがら、レイ君と色々と話をした。

嬉しいことに、僕のあげた『守護天使ジャンヌ』は愛用してくれているらしい。

オシリスレッド寮に着くと、十代君対ブラック・マジシャン・ガールのデュエルも佳境だった。

幸い、凄い盛上りで誰も気付いてなかったので、僕達は十代君達を驚かせようと、バレないように、こっそりと寮内に入り、レイ君に衣装を渡した後、僕はデュエル観戦に戻った。

原作では、女性物の衣装は明日香さん達のハーピィー・レディのしかなかったが、流石にそれだけでは何なので、僕が色々と手配したのだ。



デュエルは十代君が勝った……が……

「あー、負けちゃった。でも最高!楽しかったよ!」

『ありがとう!いいデュエルだったよー!』

まるでブラック・マジシャン・ガールが勝ったかのような騒ぎだった。

と言うか、彼女結構言動がウザいなぁ。……言ったら袋叩きにされそうだけど。

「参ったなぁ、これじゃオレ、悪役じゃん」

「そんな事無いんじゃない?楽しいデュエルだったんでしょ?」

「ああ、最高!」

「きっと、彼女もそう思ってるさ」

「正体は謎だがな」

「よっす!お疲れさん」

「お、和希、戻ってたのか?」

「まぁね、それよりも十代君、君にスペシャルゲストが来てるよ」

「え?」

「十代様ー!」

「おわ!?レ、レイ!?」

「来てたの!?」

「と言うか、その格好……」

そう、今レイ君が着ているのは……

「『恋する乙女』?」

そう、彼女のデッキの象徴的モンスター『恋する乙女』のコスプレをしているのだ。

「えへへ、どうどう十代様!亮様!似合ってる?」

「あ、ああ、いいんじゃねぇか?」

「む、似合っていると思うが……」

「ありがとう!さっきの十代様もカッコ良かったよー!」

「ぐぇ!レイ!首!首絞まってる!」

「あの服も、あなたが?」

「うん、あの黒髪に似合うかなーって……」

ゲシッ!

「おふっ!?な、何するのさジュンコさん!?」

「……フン!」

……なんか蹴られた。



と、

ボカッ!

「いったーい!?」

歓呼に応えていたブラック・マジシャン・ガールが頭を押さえて踞った。その背後には……

「……何をしているのだお前は!」

黒い、と言うよりは紫に近い衣装、今しがたそれで殴ったであろう杖、そして殴られて涙目になっているブラック・マジシャン・ガールと似た尖っている帽子……って……

「こ、これは……」

「ブブブ、ブラック・マジシャン!?」

……そう、解説の万丈目君や実況の翔君が言うように、ブラック・マジシャンその人であった。

ざわざわとギャラリーが大騒ぎになっている中……

「わかっているのか!我々は軽々しく『こちら』に干渉してはならないのだぞ!」

「うぅ、ごめんなさいお師匠サマ。なんか面白そうだったからつい……」

「……もういい、帰るぞ」

「……はぁい……」

項垂れる弟子を連れて立ち去ろうとする所を……

「あの、すいません!」

僕は追い縋った。

「……何か?」

振り向きもせず、ブラック・マジシャンは応える。

「あの、良かったら……デュエル「断る。」……」

……言い切らせても貰えず、拒否された。

「えー!やりましょーよお師匠サマ!久しぶりにお師匠サマのデュエル見たいですよ!」

「……」

ボカッ

「いったーい!」

……しょうがない、本日二度目の最終兵器だ。

「そこをなんとか!お願いしますよ。……マハードさん?」

「な!?」

小声で言ったその名前に、驚きに目を見張りながらブラック・マジシャン……マハードさんが振り返る。ブラック・マジシャン・ガール……恐らくマナさんも口に手を当てて、分かりやすい『びっくり』の表情をしている。

「何故、その名前を?」

「ははは、そうですね。僕にデュエルで勝ったら教えてあげマスヨ?」

「……」



「……よく承知してくれたな。あいつ」

「ははは、これぞ!朝倉家に代々伝わりし交渉術!」

「しかし、大丈夫なのか朝倉?この状況で……」

……三沢君が言うように、凄いことになっていた。

対面で腕を組みながら目をつむり、静かにただずんでいるマハードさん。……それに対して……

「きゃー!」

「カッコいい!」

「頑張ってー!」

と、周りから黄色い声援が飛び交う。

「……さっきのブラック・マジシャン・ガールの時以上の声援ね」

「まー、確かにあの人カッコイイからなぁ。あ、でも十代様や亮様の方がステキだよ?」

因みに、

「きゃー!ブラック・マジシャン様ー!頑張ってくださいませー!」

「そこの骸骨!ブラック・マジシャン様に手を出したら承知しないわよ!」

……当然の如くあちら側サイドについている面食いが二人。

「……完全にアウェーだな。大丈夫か?」

「ふふふ、十代君。こういう時はね……」

ゴニョゴニョゴニョ……

「お、お前……マジか?」

「ふふふ、大マジだよ。……さて、待たせちゃ悪いし、そろそろ行きますか。……あーそう言えば三沢君?」

「? 何だ?」

「……そのコスプレ、泣けるなぁ。……グスン……」

「今更な上に大きなお世話だ!」

……彼の『アマゾネスペット虎』のコスプレには涙が止まりませんでした。



「さて皆さん!お待たせしました!本日のメインイベント!」

「2回目のな、それも飛び入りの」

「ワイトVSブラック・マジシャンのコスプレデュエルを行います!」

『わー!』

「実況は引き続きこの私、丸藤翔が。そして解説には……」

「はーい!」

「先程感動の大健闘を見せてくれたブラック・マジシャン・ガール!」

「皆ー!楽しんでいこうねー!あと、お師匠サマの応援、よろピクでーす!」

『はーい!』

……『おか○さんといっしょ』に出てる歌のお姉さんと子供か? つーか、これで残りの男性陣も敵に回ったくさいな。

「あ、あとそれからXYZ−ドラゴンキャノンさん」

「思い出したように紹介するな!」

……あの二人のコンビネーション、さりげに悪くないなぁ……

「赤コーナー、最弱のアンデットモンスター、ワイト選手!」

『引っ込めー!』

『骸骨なんてお呼びじゃ無いわよー!』

……こちらに飛んでくるのはブーイングのみ、か。

……ふふふ、そっちの方が都合がいいや。

さて、始めますか。

「おっとー、早速ブーイングの嵐だ……」

「キ……」

「え……」

「キキ……キキキキキキ!!」

……ギャラリーが沈黙する。僕が甲高い笑い声をあげたからだ。

「キキキキ……嗚呼……見ルモ無惨ナ悲シ嬉シ!謳エ汝ラ蝿ノ如ク!木ッ端芥ノ華ノ生命(イノチ)ヨ!キキキ、キキキキキキ!」

……因みに地声じゃありません。阿○博士……もといKC製の超小型ボイスチェンジャーを使っています。

ついでに、セリフでわかると思うが、声のイメージは増○康紀さん(裏声ver)である。カットカットカットォ!



「……本当にやりやがった」

「十代、さっきあいつはなんて言ってたんだ?」

「……こういう時は、完全に悪役になっちまうんだと」

「……理にかなっているような、そうでもないような」

「でも……」

「なんと言うか……」

「「「「なんというハマり役」」」」



「……え、えーと気をとりなおして……」

「全然とりなおせてないけどな」

「青コーナー、デュエルモンスターズ最高の魔術師、ブラック・マジシャン!」

「……」

相変わらず静かにただずんでいるマハードさん。

「お師匠サマー!頑張ってー!」

……マナさんの声援を皮切りに、再びマハードさんに対する大声援が始まった。いや、さっきの僕のアレがあったせいか、一段と声援に力が入っている。

ふふふ、いいさいいさ、今の僕は『ワイト』なんだから。とことん悪役に徹しますよ!

「さぁ!盛り上がって来た所で早速始めましょう!」



「「デュエル!!」」

「さて、先攻は……」

「私ノターン!ドロー!」

「おっと!ワイト選手!無理矢理先攻を奪ったぁ!」

『卑怯者ー!』

『外道ー!』

ふふふ、いい感じだ。

「キキキキキ……私ハリバースカードヲ2枚伏セ、モンスターヲ1体裏側守備表示デセットシ、ターンエンドダ」

「私のターン、ドロー、私はリバースカードを2枚セットし、『熟練の黒魔術師』(攻撃力1900)を召喚。守備表示モンスターに攻撃!『魔封波』!」

ぶ……危ない危ない。吹きそうになった。電子ジャーにでも封印しそうな技名を真顔で言うんだもの。

『熟練の黒魔術師』の杖から発せられた波動が僕の裏側守備表示のモンスター、壺に潜んでいる一つ目のモンスターを撃破した。

「キキキキキ……『メタモルポット』(守備力600)ノリバース効果ヲ発動!互イノプレイヤーハ手札ヲ全テ墓地ニ送リ、ソノ後、デッキカラカードヲ5枚ドロースル!」

「む……」

「おーっと!ワイト選手!いきなり悪どいカードを仕掛けていたー!」

「奴のデッキは墓地にモンスターが増えれば増える程力を発揮する。成る程、墓地と手札、両方を補充できるこのカードは、将にうってつけなカードって訳だ」

……地味にちゃんと解説をしてるな万丈目君。

ギャラリーのブーイングが響く中、手札を交換する僕とマハードさん。

……『熟練の黒魔術師』って事は当然、あのデッキは『ブラック・マジシャン』デッキなんだろうな。

「……更に、フィールド魔法『魔法族の里』を発動!」

げ……

「あちゃー、これはお師匠サマも本気ですねー」

「ブラマジガールさん、あのカードは?」

「はーい!自分フィールド上にのみ魔法使い族モンスターが存在する場合相手に魔法カードを発動する事ができなくして、自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在しない場合は自分が魔法カードを発動することができなくなるカードでーす!」

「ワイトのデッキは勿論アンデット族中心だ。魔法使い族は精々あったとしても1〜2枚だろう。事実上、これで奴の魔法カードは封印された訳だ」

……周りに、『魔法族の里』のイラストに描かれているような不思議な木々が茂る。

また地味に厄介なカードを……

「流石は我等がブラマジガールのお師匠様!この強さは本物だぁ!」

また『わー!』と沸くギャラリー。……つーかあっちの方が『メタモルポット』なんかよりも数倍悪どい気がするんですけど。

「……ターンエンド」

「私ノターン!ドロー!モンスターヲ1体裏側守備表示デ伏セ、更二リバースカードヲ1枚セット、ターンエンドダ……」

「おーっと!ワイト選手!防戦一方だぁ!」

「『メタモルポット』が完全に裏目に出たようだな。みすみす『魔法族の里』を引かせたようなものだからな」

……まぁ、そうなんだけどね。取り敢えずはあのフィールド魔法をどうにかしたい所だ。

「私のターン、ドロー、手札から魔法カード『魔力掌握』を発動、フィールド上に表側表示で存在するする魔力カウンターを乗せる事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置き、更にデッキから同じ『魔力掌握』を1枚、デッキから手札に加える」

「おーっとこれは!?」

「ブラック・マジシャンのフィールド上のモンスター、『熟練の黒魔術師』は魔法カードが発動された時、魔力カウンターが1つ乗る、これで、さっきのターンの『魔法族の里』で1つ、このターンの『魔力掌握』でモンスター効果と魔法の効果で1つずつ、合わせて3つの魔力カウンターが乗った事になるな」

「魔力カウンターが3つ乗った『熟練の黒魔術師』を生け贄に捧げる事で、手札・デッキ・墓地から最上級の黒魔術師を特殊召喚するんだよ!」

「それってもしかして!?」

「『熟練の黒魔術師』を生け贄に、デッキから『ブラック・マジシャン』(攻撃力2500)を攻撃表示で特殊召喚!」

『おー!』

『きゃー!』

『ブラック・マジシャン』が特殊召喚された途端、今日一番の盛り上がりを見せるギャラリー。まぁ、このカードも、男女関係無く人気がありそうだからなぁ……ワイト達、イジケないよーに。君達も僕みたいなコアなファンの間には(多分)結構人気なんだから。え?慰めになっていないって?

「更に魔法カード『黒・魔・導』を発動!」

「来たー!お師匠サマの必殺技!」

「『ブラック・マジシャン』が自分フィールド上に存在する時、相手フィールド上の魔法・罠を全て破壊するカードだ」

「よーし!それじゃ皆いくっスよ!1!」

「2!」

「3!」

『黒・魔・導(ブラック・マジック)!』

ギャラリーの大声援に後押しされて放たれた魔導の波動が、僕の魔法・罠ゾーンを直撃した。

「やったぁ!これでワイト選手の魔法・罠カードは全滅だぁ!」

「……いや、よく見ろ。『黒・魔・導』が破壊できたのは3枚中1枚だけだ」

「え……」

「キキキキキキ、罠カード『針虫の巣窟』ヲ2枚発動!デッキノカードヲ上カラ5枚×2、合計10枚ノカードヲ墓地ニ送ル!」

「『黒・魔・導』にチェーンして発動する事により、破壊を免れたようだ」

「うーん、相手も中々やりますねー」

……まぁ、もう1枚のリバースカード、速攻魔法『月の書』は破壊されてしまったが、まぁ、どうせ『魔法族の里』の効果で発動出来ないし。

「うぅ、皆ー!気をとりなおしていくっスよ!1!」

「2!」

「『さん』だ!」

『バトル!』

……万丈目君、ホント美味しいキャラしてるよ君は。あとマナさん、さっきから「2!」の時、一々ウィンクしながら某セーラー戦士みたいなピースしなくていいから。……あれ?ピースなのってちびな方だっけ?

「『ブラック・マジシャン』の攻撃!『黒・魔・導』!」

『ブラック・マジシャン』の攻撃が僕の裏側守備表示モンスター、甲冑を着けた純白の獣を撃破した。

「キキキ、キキキキ!カカッタナ!我ガモンスターハ『ライトロード・ハンターライコウ』(守備力100)!リバース効果ニヨリ、フィールド上ノカードヲ1枚破壊デキルノダ!』

「む……」

「あぁ!それじゃあ……」

「……『ブラック・マジシャン』が破壊されてしまうな」

「そ、そんなぁ……」

『汚ねーぞ!』

『私達のブラック・マジシャン様を破壊しないでー!』

……言われなくても!

「キキキ、『ライトロード・ハンターライコウ』ノ効果ニヨリ、フィールド魔法『魔法族の里』ヲ破壊!」

周りの木々が枯れ果た。

「おーっと?ワイト選手、『ブラック・マジシャン』を完全に無視だぁ!?」

「……確かに、あのフィールド魔法はワイトのデッキには天敵だろうが、敵のエースカードを破壊するチャンスをむざむざ逃すか?」

「キキキ、更ニ『ライトロード・ハンターライコウ』ノ効果ニヨリ、デッキノ上カラ3枚カードヲ墓地ニ送ル!」

「……リバースカードを1枚伏せ、モンスターを1体裏側守備表示でセットし、ターンエンド」

「……コノ程度カ?」

「何?」

「キキキキキ!最上級ノ魔術師ガ聞イテ呆レル!ツマラナイツマラナイツマラナイツマラナイ!破滅シロ破滅シロ破滅シロ破滅シロ!ツマラナイナラ破滅シロォ!キキ、キキキキキキ!」



「……なんか完全にスイッチが入っちゃったみたいね」

「悪役に向かって一直線、って感じだな」

「……十代様、あの人、あんなキャラだったっけ?」

「は、ははは……多分……」



「私ノターン!ドロー!私ハ『ゾンビマスター』(攻撃力1800)ヲ攻撃表示デ召喚!ソノ効果ニヨリ、1ターンニ1度、手札カラモンスターカードヲ1枚墓地ニ送リ、墓地カラ星4以下ノアンデット族モンスター1体ヲ特殊召喚スル!手札カラ『ダーク・グレファー』ヲ墓地ニ送リ、出デヨ!我ガ分身、『ワイトキング』!」

「おーっと!ここで両者のエース対決だぁ!負けるな『ブラック・マジシャン』!」

「……いや、『ワイトキング』の攻撃力は墓地の『ワイト』『ワイトキング』×1000。『メタモルポット』や『針虫の巣窟』、『ライトロード・ハンターライコウ』の効果で、奴の墓地は十分に肥えている!」

「キキキ、ソノ通リ!我ガ墓地ニハ既ニ『ワイト』ガ2枚、墓地デ『ワイト』トシテ扱ワレル『ワイト夫人』モ2枚!ヨッテ、『ワイトキング』ノ攻撃力ハ4000!」

……よし、ワイトキング、『アレ』よろしく。

「『ワイトキング』(攻撃力4000)デ『ブラック・マジシャン』(攻撃力2500)ヲ攻撃!『ナイトルーラー・ザ・ブラッドディーラー』!」

……ワイトキングはローブを刃のように回転させ、『ブラック・マジシャン』を切り刻む。

「開幕直後ヨリ鮮血乱舞、烏合迎合ノ果テ名優ノ奮戦ハ荼毘(だび)ニ伏ス、回セ回セ回セ回セ回セ回セ回セェ!キキ……キキキキキ!」

「ぐ……」 敵残ライフ2500

「キキキキキキ!マダダ!更ニ『ゾンビマスター(攻撃力1800)デ守備表示モンスターニ攻撃!」

『ゾンビマスター』の攻撃が相手の守備表示モンスター、ハチマキをした魔法使い族モンスターを撃破した。

「キキキキキキ!魂魄(こんぱく)ノ華爛ト枯レ、杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟ヲ謳イ例外ナク全テニ配給、嗚呼、是即(これすなわち)無価値ニ候(そうろう)……!キ……キキキキキキ!」

「あぁ、『ブラック・マジシャン』が……」

「……エース対決は『ワイトキング』に軍配があがったか」

「お師匠サマ……」

「キキ……キキキキキキキキ!」

「ぐ……ぅぅ……」



……ドクン……

「……所詮ハソノ程度カ?魔術師野郎!」

「!?」



……あ……れ?今一瞬、なんか意識が飛んでいた……ような?

「……『見習い魔術師』(守備力800)の効果を発動、このカードが戦闘によって破壊された時、デッキから星2以下の魔法使い族モンスターを1体裏側守備表示でセットする」

……いけないいけない、集中しないと……

「……つまらなかったか?」

え……?

「つまらなかったかと聞いている。……謝罪しよう。貴様を多少侮っていたようだ」

あーいや、さっきのはネタだったんですけど……つーかなんか知らないけど……スイッチ入った?……そう言えば案外マハードさんって熱血っぽいんだよなぁ。普段は冷静なのに……

「望み通り、我が本気、披露しよう!私のターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!更に裏側守備表示モンスター、『水晶の占い師』(攻撃力100)を反転召喚!リバース効果により、自分のデッキの一番上のカードを2枚めくり、その内1枚を手札に、1枚を墓地に送る!」

……めくって手札に加えたのは、『カオス・マジシャン』、墓地に送ったのは魔法カード『千本ナイフ』か。

「そして『水晶の占い師』を生け贄に、『カオス・マジシャン』(星6 攻撃力2400)を召喚!更に永続罠『漆黒のパワーストーン』を発動!」

「XYZ−ドラゴンキャノンさん、あのカードは?」

「発動後、あのカードに魔力カウンターを3個乗せ、1ターンに1個、その魔力カウンターを他の魔力カウンターを乗せられるカードに移らせる事ができるカードだ」

「え?でも今は魔力カウンターを乗せられるカードが……」

「大丈夫!」

「え……」

「お師匠サマにはちゃんとした狙いがあるから!」

「更に罠カード『奇跡の復活』を発動!自分フィールド上の魔力カウンターを2個取り除き、自分の墓地の『ブラック・マジシャン』か『バスター・ブレイダー』を1体特殊召喚する!『漆黒のパワーストーン』の魔力カウンターを2個取り除き、『ブラック・マジシャン』(攻撃力2500)を墓地から特殊召喚!」

「なんとー!?この為の『漆黒のパワーストーン』だったぁ!流っ石ぁ!」

……『ブラック・マジシャン』の復活に、またも沸くギャラリー。

「……妙だな」

「へ?」

「『ブラック・マジシャン』を蘇生できる手段があったのなら、何故さっき『千本ナイフ』を手札に加えなかったんだ?」

「あ……」

……そうなのだ。

さっきの『水晶の占い師』でデッキに戻した魔法カード『千本ナイフ』、自分フィールド上に『ブラック・マジシャン』が存在する時、相手のモンスターを1体破壊できるカード、このカードで『ワイトキング』を破壊すれば……

「言った筈だ。我が本気を披露すると!」

「!」

「……でも、『ブラック・マジシャン』(攻撃力2500)でも『カオス・マジシャン』(攻撃力2400)でも『ワイトキング』には敵わないっスよね?」

「……『カオス・マジシャン』は効果を無効化する能力があるが、それはこのカードを対象とする効果だけだ。『ワイトキング』の効果は無効にできん。……なぜ『千本ナイフ』じゃなくて『カオス・マジシャン』を選んだんだ?」

「ふふふ、それはねー……」

「ブラマジガールさん?」

「『ブラック・マジシャン』を超える、究極の魔法使いを召喚する為だよ!」

……『ブラック・マジシャン』を超える?

……待てよ、『ブラック・マジシャン』と『カオス・マジシャン』……

まさか!?

「そして、この2体の魔術師を生け贄に、『黒の魔法神官(マジック・ハイエロファント・オブ・ブラック)』(攻撃力3200)を特殊召喚!」

おぉ!?キター!ハイエロファント!お仕置きの時間だよベイビー!って、お仕置きされる!?

「『黒の魔法神官』、星6以上の魔法使い族モンスターを2体生け贄に捧げる事によってのみ特殊召喚できる、お師匠サマの切り札だよ!」

「す……凄い」

「これが……」

……成る程、だから星6の『カオス・マジシャン』を選んだのか。

……だが、『黒の魔法神官』の攻撃力は3200、『ゾンビマスター』(攻撃力1800)は倒せるものの、『ワイトキング』(攻撃力4000)には及ばない。

その効果も、罠カードの発動を無効にし、破壊できるというもの。リバースカードが1枚もない今は効果はない、どうするつもりだ?

「更に罠カード『ミス・リバイブ』を発動!相手の墓地からモンスター1体を選択し、相手フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する!貴様の墓地の『ワイト』(守備力200)を守備表示で貴様のフィールド上に特殊召喚する!」

「ナンダト!?」

「えぇ!?相手のモンスターを蘇生しちゃうんスか!?」

「そうか!これで墓地の『ワイト』が減り、『ワイトキング』の攻撃力が3000に下がる!」

「やっちゃえー!お師匠サマー!」

……ふふふ、甘いな。僕のフィールドには『ゾンビマスター』がいる。このターン、『ワイトキング』が破壊されても、次のターン『ゾンビマスター』の効果で蘇生、更に『ワイト』を攻撃表示にして自爆特攻すれば、また『ワイトキング』の攻撃力は4000になる!……大ダメージはくらうけど。

「……まさか、我が本気がこの程度で終わりだと思っていないだろうな?」

「!?」

まだ何かあるのか!?

「更にフィールド魔法『古の森』を発動!このカードの発動時に、フィールド上に守備表示でモンスターが存在する場合、そのモンスターを全て表側攻撃表示にする!」

くっ、これで『ワイト』を攻撃表示に変更させられたか!

……だが、『黒の魔法神官』(攻撃力3200)で『ワイト』(攻撃力300)を破壊されたとしても、僕のライフは残る。

更に、フィールド魔法『古の森』の効果で、攻撃を行ったモンスターはバトルフェイズ終了時に破壊される。『黒の魔法神官』も……

……待てよ、『バトルフェイズが終了したら』?

……もし、このバトルフェイズ中に勝負を決められるとしたら……

まさか!?

「……気付いたようだな」

「キ……」

そうか、やはり『あのカード』か!

「幕だ。魔法カード『拡散する波動』を発動!ライフポイントを1000払い、自分フィールド上の星7以上の魔法使い族モンスター1体を選択する!このターン、選択したモンスターのみが攻撃可能になり、相手モンスター全てに1回ずつ攻撃する!」 敵残ライフ1500

「キキ……キキキキキキ、キキキキキキキキ!」

……堪らないね……やっぱりカッコいいわ。

「『黒の魔法神官』(攻撃力3200)で『ワイトキング』(攻撃力3000)、『ワイト』(攻撃力300)、『ゾンビマスター』(攻撃力1800)を攻撃!『超・魔・導・波・動・神・弾』!」

「グギャァァー!?」 自残ライフ0



『演劇!?』

「そ、皆折皆コスプレしたんだからさ。やってみない?」

デュエル後、僕は皆にそう進言した。

「で、でも、台本とか……」

「あるよ?はい」

「いつの間に……」

「そう言えば最近、なんか授業中とかにに書いてたっスね」

「ま、役割分担はさっき決めたんだけどね。皆のコスプレの内容を踏まえてね」

「練習無しで大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。結構短い内容だし。隼人君や亮さんにカンペでも出して貰えればさ」

「……俺も参加するのか」

「何ならコスプレします?」

「……裏方で頼む」

「了解しましたー」

「おぉ!?オレが主役か!」

「まー、ベタな勇者物だしねー」

「僕は、ナレーターっスね」

「私達三人は……勇者の仲間のモンスターね」

「俺様は……ナレーターその2だと!?どういう事だ!?」

「……だってその格好じゃデュエルできないじゃん」

「え!?デュエルするの!?」

「当たり前じゃん。そこに『デュエル』って書いてあるでしょ?」

「……でもそれじゃ、どっちが勝つかわからないんじゃない?」

「大丈夫大丈夫、一応どんなデュエルかはシナリオ作ってるから、あとはそれ通りにデッキを細工すればOKだよ」

「く、仕方がない。今回だけは譲ってやる」

「いいなぁ、ボクも参加したいなぁ……」

「あー、じゃぁ、レイ君は魔王に連れ去られるお姫様役で」

「え!?いいの!?」

「その代わり、ほとんどアドリブになっちゃうけど……」

「全然いいよ!助けてくれる勇者様って十代様なんでしょ!?」

「もち」

「やったぁ!」

「あー、いいなぁ、私も参加したいなぁ……」

「あ、マナ……ブラック・マジシャン・ガールさんもやります?」

「いいの!?あ、でも……」

マナさんがマハードさんの方をチラリと伺うと、マハードさんは溜め息をつき……

「……好きにしろ」

「本当ですか!?わぁ、ありがとうございます!あ、じゃあお師匠サマも一緒に……」

「……やはり帰るか?」

「あー!ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい!」

「……大丈夫なの?」

「まぁ、自由参加枠は何個か作っておいたからね」

「……無駄に凝ってるな。でもデュエルは……」

「あー、僕が相手するから大丈夫。わざと負けるから」

「そう言えば、和希君は?」

「僕?魔王の尖兵その1」

「……自分でシナリオ作ったのに?」

「だって僕ワイトだし」

「なんか面白そうだな」

「そうね、折角だし」

「……付き合ってやるか」

お?皆乗り気みたいだ。

「よーし!隼人君、アレ持ってきて!」

「おう」

……と、隼人君が持ってきたのは、手書きの書き割りが数枚。

「いつの間に……」

「実は、和希に内緒で頼まれてたんだなぁ」

「よーし!それじゃ何回かリハーサルやろうか!」

『おう!』

……こうして僕達はリハーサルを始め……

「ちょっと待て!」

「……どうしたん三沢君?」

「俺の役、『背景のモンスター役』はやめろ!」



何はともあれ、劇はなかなか上手くいった。

……中でも輝いていたのはやはり人気のあったマナさん・明日香さんと……

「ふふふ、いいだろう。この私が直々にお相手しよう」

『キャー!』

……圧倒的に十代君よりも声援を受けている、僕並みにノリノリで魔王を演じる吹雪さん(自作のダークネスコスチューム)と……

「オ……レ?」

「ククク、そう、俺はお前。お前自身の、心の闇の具現だ」

……助っ人ながら、闇十代君を始め、一人四役(内一役が女モンスター役)をこなしてくれた神楽坂君だった。



……こうして、学園祭は終了し、後夜祭になった。

皆がレイ君を見送っている間に、僕はレッド寮近くの森でマハードさんやマナさんに約束通り、僕の事を話した。

「まさか、違う世界の人間だったとはな」

「えーと、それでそっちの世界では、こっちの世界の事がアニメやマンガになってる……んだよね?」

「まぁ、そういう事ですね」

「成る程、ならば君が私達の本当の名を知っているのも納得出来る」

「……簡単に信じるんですね」

「生前、私は千年リングで様々な人間の邪念を感じ取っていたのだ。多少の嘘ぐらいは見分けられる」

「えー!?私もお師匠サマの後を継ぎましたけど、全然わかりませんよ!?」

……それは千年リング云々というより、単に人間性の問題な気が……

「……うーん、これだと望み薄かなー」

「? 何がだ?」

「いやー、もしかしたら元の世界に戻る方法を知ってるんじゃないかなーって思いましてね」

そう、これが僕がマハードさんに挑んだ理由の1つである。……普通にデュエルしたかったのもあるけど。

「悪いが、心当たりはない。そもそも、精霊界以外の異世界の存在を今初めて知ったところだからな」

やっぱりか。千年リングを持っていただけでなく、生前に魔術も極めていたこの人ならもしかしたら、って思ったんだけどなぁ……

「……元の世界に戻りたいの?」

マナさんが心配そうに聞いてくれた。

「へ?あーいや、別に」

「「……は?」」

「こっちに来た最初の方は戻りたいって思ってたんですけど、今は別にこのままでもいいんじゃないかなーって」

この先大変そうだけど、やっぱり十代君達と一緒に居ると楽しいし。

「じゃあ、何で戻る方法を聞いたの?」

マナさんが不思議そうに聞く。

「あーいや、例えば、僕がこの世界に居ると世界が滅亡してしまうような事態なっちゃうとするじゃないじゃないですか。もしそうなった場合とかの為、知っといた方がいいじゃないですか?」

「「……」」

……なんで二人共そんな驚いた表情をするかな……

「……君は随分と突飛な発想をするな」

「そうですか?」

「ふふふふふ、絶対ヘンだよー!」

……あなたには言われたくないっス。



その後聞いたが、デュエルモンスターズの精霊というのは、同じモンスターの精霊であればそれぞれで記憶を共有しているらしい。

この二人は遊戯さんの持つカードに宿るブラック・マジシャンやブラック・マジシャン・ガールとは別らしいが、彼らの記憶、遊戯さんの精霊としての記憶も持っているらしい。

道理でマナさん、ドーマ編のと性格が違いすぎると思ったら。……ドーマ編では猫被ってたのかもしれないけど。

そして、やはり精霊になる前の記憶も皆持っているらしい。

「いやー、それにしても、本当に凄いですね、二人共」

「? 何がだ?」

「だって二人共、生前も、精霊になっても、ファラオ、アテムさんを守っていたんですよね?凄いじゃないですか」

そう、この二人は悠久の時を経て、再びアテムさんの力となったのだ。そう考えると、感動を覚える。

「……それが私達の使命だ。別に凄いことなどではない」

「そうそう!」

「……そんな悲しい事を言っちゃ駄目ですよ……」

「何?」

「悲しい?」

「使命とかそんな役割とかなんかじゃなくて、二人共アテムさんの事を慕っていたから、好きだったから、守りたかったから守ってきた。……それでいいんじゃないんですか?」

「!」

「あ……」

「……違います?」

「……そうだね。私は王子、ファラオの事が大好きだった。……ううん、今でも、大好きだよ!だから……」

「ふ、違いないな」

マハードさんは初めて表情を柔らかく崩して微笑んだ。

と、

「……今日は我が弟子が色々と世話になったな」

マハードさんはどこからともなく、宝石が嵌まったペンダントを取り出し……

「受け取ってくれ」

「これは?」

パッと見、こんな宝石は見たことがない。七色に鈍く光っている。

「君の話によれば、君はこれから先、色々な困難に立ち向かう気なのだろう?いずれ、それが役に立つだろう。さて、そろそろ行くぞ、マナ」

「はーい!えーと、和希君、だっけ?」

「?」

「君が誘ってたハーピィ・レディの吊り目の方の娘、いたよね?」

……ジュンコさんの事か?つーか誘ってたの見てたんだ。

「あの娘の気持ち、いつか気付いてあげてね?」

「はい?」

……意味わからん。

「マナ」

「あ、はーい!じゃあ、またね」

「はぁ……」

……二人は精霊化し、何処ともなく飛んでいった。

……またねって、また会う事があるのかな?



「……」

『所詮ハコノ程度カ?魔術師野郎!』

(……気のせいだろうか?あの時の彼の雰囲気、まるで……)

「? どうかしました?お師匠サマ?」

「……いや、なんでもない」



今日のワイト(後後夜祭)

……マハードさん達が帰り、僕は一人、ぼんやりとキャンプファイア(?)を見ていた。

やっぱり、祭の後のこの寂寥感は嫌いだ。人によっては『終わりがあってこそ始まりがある』みたいな事を言う人がいるけれど……でもやっぱり、楽しい事はいつまでも続いてほしい。飽きて嫌になるまで続いてほしい。

「……なに不景気な顔をしてるのよ」

と、写真撮影して貰っていたジュンコさんが来て、隣にしゃがみこんできた。

因みに、僕も彼女もまだコスプレの衣装を着ているので、傍目からはさぞかし妙な光景だろう。

「いや、祭も終わりなんだなぁってね」

「……なにらしくもない事考えてるのよ」

……違いないや。

「……今日はありがとうね。協力してくれて」

「……奢って貰ったんだから、その分働くのは当然でしょ?」

その割には結構楽しんでた気がするんだけどなぁ、演劇とか。

「むー……」

「……なによ?人の顔ジロジロ見て」

「あーいや、あのブラック・マジシャン・ガールが言ってたんだけどさ、君の気持ちに気付いてやれって」

「え……えぇ!?」

「……ごめん、何の事だかさっぱりわからん」

「……あ、そう!」

「聞いてもいい?」

「知らないわよそんなの!」

……なんか不機嫌になった。

……その後、しばらく黙って火を見ていたが……

「ね、ねぇ!」

「?」

ジュンコさんが突然話し掛けてきた。

「アンタが作った、明日香さんが演劇で使っていたあのハーピィ・レディのデッキ、あったじゃない?」

「? あれがどうかした?」

流石に、ハーピィ・レディ役の彼女達にそれ以外のデッキを使わせるわけにもいかないので、演劇用に作ったのだ。

「あ、あのデッキ、ア、アタシが使ってあげてもいいわよ」

「? 欲しいの?」

「べ、別にそういう訳じゃないわよ!で、でもどうせアンタそのデッキ使わないんでしょ?」

「……まぁ、多分」

「でしょ?もったいないじゃない!だ、だからアタシが有効活用してあげるって言ってるの!」

「……別にいいけど」

デッキを取り出してジュンコさんに渡す。

「……ありがと……」

「え?あ、いや、どういたしまして?……は、ははは……」

……なんか気恥ずかしくてつい誤魔化し笑いをしてしまった。

「……何よ?」

「あーいや、なんか初めて君からお礼言われたなぁ、ってね」

「う、うるさいわね!」

……と、ジュンコさんは一喝して立ち上がり……

「……今日はもう疲れたから帰るわ」

「はいよ、お疲れ様。本当にありがとうね」

「……じゃあね」

寮の方に帰っていった。

……あ、そうか。

……マナさんが言ってた『ジュンコさんの気持ち』って『あのデッキが欲しい』って事だった……のかな?



あとがき

一番書きたかった所オワタ!後は下り坂(オイ

勿論、精霊の設定なんかはオリジナルです。ご了承下さい。

そしてカタカナ読みにく!

……余裕があったら幕間で劇の内容でも書こうかなぁ……

改正、前後編統合しました。



[6474] 第二十話 哀しき決着……?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:26
ある日の満天の星空の下……

「「「「いっただきまーす!!」」」」

「いやー、まさか和希が料理出来るなんてな」

「まぁ、そんなに上手いって訳でもないけどね。作れる物少ないし」

「いや、男でこれだけ出来りゃ十分だろ。寧ろ寮のメシより美味いぞ?全般的に辛ぇけど」

「飯盒の御飯も、いい感じなんだなぁ」

「キャンプするのに中華鍋を食堂から借りて持ち出したのにはビックリしちゃったけどね」

「中華鍋って万能なんだよ?これだけで焼くのも煮るのも揚げるのも出来ちゃうからね。将に『神秘の中華鍋』」

「そのまんまっスね。ところでそろそろ許してあげたら……」

「へ?何を?」

「……いや、なんでもないっス……」

……翔君が憐れみを籠めて送った視線の先には……

「フゴー!フゴー!」

……木の幹にロープで縛り付けられ、猿轡をされた万丈目君が居たりする。



話を少し戻そう。

文化祭の数日後、光雄君ことフリーギャンブラーのボーイがアカデミアに自分を売り込みに来た。……新たな七星門の鍵の守護者として。

彼の小学校時代の同級生であり、彼に大切なスカーフを無理矢理奪われた明日香さんが七星門の鍵を賭け、その挑戦を受け、勝った。

ボーイは『好きだった娘の物だった』と遠回しに告白じみた事を言いながらスカーフを明日香さんに返し、潔く帰ろうとしたところ……

「今度はオレとデュエルやろーぜー!」

……と、その辺を読めない十代君の言葉で、ガックリと項垂れて帰ってしまった。

「あぁ、若いって素晴らしい」

「……シニョール十代に恋のデュエルはまだ早いノーネ……」

……珍しく同感です。クロノス教諭。

「……和希君も人の事を言えないでしょ」

「そうなんだなぁ」

「臭いもの身知らず……ね」

……なんでさ……

こうして、明日香さんの恋のセカンドチャンスは失敗に終わった。

……少し後に、万丈目君が『三度目の正直』でサードチャンスに挑戦して、『二度ある事は三度ある』で散るんだろうなぁ。……今のうちから南無。



翌日、行方不明の大徳寺先生の代わりに錬金術の授業で実験を行い、見事に失敗して額に渦巻き状のミミズ腫れを作ったクロノス教諭を散々笑った後、僕達、七星門の鍵を持つ者達は校長室に呼ばれ、大徳寺先生の行方が未だに掴めない事を校長先生から聞かされた。

その後、僕達四人+万丈目君の五人で大徳寺先生の部屋を捜索した。……万丈目少年の事件簿第二弾である。

いや、ぶっちゃけ証拠らしき証拠を見つけても万丈目君が却下しちゃうんだけどね。日記を「つまらん」とか、手紙の束を「プライバシーの侵害だろうが!」とか。……部屋を捜索してんのにプライバシーも何もないでしょうに……

因みに、こっそり日記を読ませて貰った。……3日分しか書いていなかった。将に三日坊主。でも4日目の所にあったファラオの肉球の跡にちょっと癒された。

その後、錬金術のマーク、アムナエルのマークが付いた地図を見つけ、その地図を元に捜索を開始した。



「! 今悲鳴が……」

「気を付けろサンダー!和希!」

「……でも、なんかいつも聞いてるような悲鳴だった気が……」

「うわぁぁ!アニキー!あっちに蛇がでたっス〜!」

「って貴様達か!」

「やっぱし」

「蛇ぐらいでビビるなよ翔、隼人」

「へ、蛇は大嫌いなんだなぁ!」

ドサドサドサ……

「うわぁぁ!?」

「蛇が沢山降ってきたぁ!?」

「痛っ!」

「うわぁ!?か、和希君が噛まれたぁ!?」

「和希!大丈夫か!?」

「痛つつ……大丈夫だよ」

「だ、大丈夫って……」

「もしかしたら毒が……」

「……あー、それは大丈夫、これは毒蛇じゃないよ」

「な、なんでわかるんスか?」

「見て、歯形が人間のみたいに半円状になってるでしょ?毒蛇の歯形っていうのは毒牙2本しかないんだよ。これだったら消毒液でも掛けとけば大丈夫だよ」

「なんでそんな事知ってるんスか……」

「そりゃ動物奇想……」

「どんだけ好きなんスか!あの番組!」

「と言うか、なんでそんな落ち着いてられるんだ貴様は……」



そして、日中は見つからず、外でキャンプをする事になった訳だが……

「フゴー!フゴー!」

「はははは、そう言えば、さっきから妙な唸り声が聞こえるね?猪か何かかな?」

「「「……」」」

ここで冒頭の部分に戻る訳だ。

僕達が料理の準備をしていた時、万丈目君が木に寄り掛かって座ってサボっていたので、背後にこっそり回り込んでその木に縛り付けてやったのだ。

……因みに、最初は逆さ吊りにしてやろうと思ったが流石に出来なかった。……見たかったな『吊られた男』(ハングドマン)万丈目君。

……言うまでもなく、ワイト達がおジャマ達に現在執行中である。ワイト夫人なんかイエローをサンドバックにしてるし。……おー、凄い縦揺れのパンチ……

「……さりげなく今朝の事、根に持ってたっスね」

「……まぁ、オレ達の今朝のおかず、万丈目に食われちまったからなぁ」

「食い物の怨みは恐ろしいんだなぁ……」

「……三人共、何か?」

「い、いや別に……」

「そ、そうそう、こっちの事こっちの事」

「な、なんだなぁ」

……いや、いいんだよ?万丈目君だって一言謝ってさえくれれば。

「……あの状態じゃ謝るも何も……」

「……翔君?」

「あ、ななななんでもないっス!」

「ははは、さて、そろそろほどいてあげますか」

「あれ?意外に寛大っス」

「ははは、僕だって鬼じゃないよ」

「でもいいのか?今放したら……」

「大丈夫大丈夫。……そうだね、ここで1つ予言をしとこうか」

「予言?」

「この後、万丈目君は、間違いなく僕に頭を下げる羽目になるよ」

「「「……」」」

かくして、この予言は的中する事となる。開放された万丈目君は散々悪態を付いたが、その後、深々と僕に頭を下げた。

……だってこのメンバーで料理、特に飯盒で御飯炊けるの僕だけだもん♪

ははは、兵糧攻めって、効率的だよね?

「ぐ、おのれ……」

「「「お、鬼だ……」」」



その後、焚き火の前で皆で駄弁っていると……

ほぁら……

「「「「「!」」」」」

特徴のある鳴き声が聞こえた。

「今の……」

「ファラオの声なんだなぁ」

「行くぞ!」

僕達は捜索を再開した。

「どこだ〜ファラオ〜!」

「ファラオ〜!」

「おーい!」

「デブ猫ー!」

ほぁら……

「近いぞ!俺はこっちを探す!お前等はそっちを探せ!」

「おう!」

「了解!」

「あいよ」

万丈目君は一人、別行動を取った。



……さて、ここまでは原作の流れそのままに来ちゃったけど、どうするかなぁ……

恐らく、『あの人』は吹雪さん、明日香さん、そして今さっき別れた万丈目君を敗って人質に取ってくる。今度は恐らく、僕の番だろう。

と、ソリッドビジョンによる爆発音が起きた。……やはり万丈目君が負けたようだ。

「万丈目ー!」

近くで捜索していた十代君達の声がその爆発音の方へ向かっていくのが聞こえた。

一瞬、僕もそっちに向かおうとするが、思いとどまる。

……『あの人』は僕が一人になる所を狙う筈、ならば……

……

ブゥン……

……案の定、僕を誘うかのように、アムナエルのマークが出現した。

……いいですよ。ここは誘いに乗りますよ。

僕はそのマークがある方に向かった。



……暫く歩くと、森が開けた場所に出た。

そこには……

「……」

フードを被り、仮面をつけた、セブンスターズの最後の一人が待ち構えていた。

「ふふふ、御指名頂き光栄至極、ですね」

「……」

僕の軽口にノーリアクションでデュエルディスクを構える相手。

……やっぱり、やるしかないのか。……正直な所、こっちの世界に来て、一番心踊らないデュエルだが……



「「デュエル!!」」

「いきます!先攻ドロー!モンスターを1体、裏側守備表示でセットし、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドです!」

「……」

……本来、ライフ4000でこの人のデッキが後攻なのはかなりキツいのだが、手札的に先攻が良さげと判断!

「……」

相手は無言のまま永続魔法『錬金釜-カオス・ディスティル』を発動して来た。

『錬金釜−カオス・ディスティル』、原作オリジナルで、このカードのコントローラーのカードは墓地には行かず、全てゲームから除外される永続魔法。永続罠『マクロコスモス』の微縮小版である。

……因みに、こちらの世界では『マクロコスモス』は除外されるのがこのカードと同じく、このカードのコントローラー側だけなので、『ヘリオス』シリーズやそのサポートカード専用のカードと化している。

これは正直、かなり助かる。……もとの世界での『マクロコスモス』の効果、このカードがフィールド上に存在する限り、自分と相手の墓地へ送られる全てのカードは墓地へは行かずゲームから除外される、というのはハッキリ言って僕のデッキに相性最悪だし。……これのせいで元の世界で何度負けた事か……

「……」

更に、魔法カード『鉄のランプ』、『銅の天秤』、『鉛のコンパス』の3枚を発動して来た。

これ等のカードは、フィールド上に『錬金釜-カオス・ディスティル』が存在する時、それぞれ対応する『錬金獣』をデッキか手札から特殊召喚するカード。

『錬金獣』、通常召喚出来ず、前述通り『錬金釜−カオス・ディスティル』+対応魔法カードの効果でのみ特殊召喚可能、攻撃力は全て500、そして直接攻撃可能の能力を持っている。違うのはそれぞれの属性のみ。

……そして、目の前に並ぶ『錬金獣・鉄のサラマンドラ』(炎属性、攻撃力500)、『錬金獣・銅のウロボロス』(光属性、攻撃力500)、『錬金獣・鉛のレオーン』(地属性、攻撃力500)の3体。

つーかぶっちゃけこのデッキ『錬金釜−カオス・ディスティル』に頼り過ぎな気が……『マクロコスモス』も、こっちの世界だと発動するのに自分フィールド上の『錬金釜-カオス・ディスティル』を除外する必要があるし、最初に引けなかったらかなり悲惨だなぁ。……カミューラさん戦みたくパーミッションで打ち消しまくっても良かったかも……

「……」

……そしてダイレクトアタック……っと。

「リバースカード発動!永続罠『光の護封壁』!発動時1000の倍数のライフポイントを払い、払った数値以下の攻撃力を持つ相手モンスターの攻撃を防ぎます!ライフポイントを1000払い、錬金獣達の攻撃を阻止します!」 自残ライフ3000

3体の攻撃が光の壁に遮られた。

「……」

……更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド……っと。

「僕のターン、ドロー!裏側守備表示モンスターの『デス・ラクーダ』を反転召喚!デッキからカードを1枚ドロー!」

……そう、これが僕が先攻を選んだ理由。

今回の僕のデッキのコンセプトは、相手をロックして、『デス・ラクーダ』で引いて……

「更に『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果により、手札とデッキから1ターンに1枚ずつ闇属性モンスターを墓地に送ります!手札から『ワイト夫人』を、デッキから『ワイト』を墓地に送ります!」

『ダーク・グレファー』で墓地に送る!

「『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)で『錬金獣・鉄のサラマンドラ』(攻撃力500)に攻撃!」

「……」

……ここで相手はリバースカードを発動。永続罠『エレメンタル・アブソーバー』、手札のモンスターカード1枚をゲームから除外し、この効果によって除外したモンスターと同じ属性を持つ相手モンスターはこのカードがフィールド上に存在する限り攻撃宣言をする事ができない……

因みに、もとの世界ではロック出来るのは発動した時に除外した1属性のみであるが、こちらの世界だと、手札から除外する度に何度でも発動でき、しかも効果も勿論、1度除外すればこのカードがある限り永続である。

……まぁ、この場合はやっぱり闇属性だろうか……ちょっと待った。闇属性で除外ってまさか……

「……」

……って、やっぱり『ネクロフェイス』か!

『ネクロフェイス』、この間三沢君が使っていた、ゲームから除外される事により、お互いのデッキの上から5枚を除外するあれである。

うぅ、やっぱりこのカード嫌だ。ほら『馬頭鬼』と『ワイト夫人』除外されちゃったし!

「……こっちの攻撃を防ぎ、デッキも破壊し、除外カードも増やす、一石三鳥とはやりますね。大徳寺先生?」

「……気付いていたか」

相手、アムナエルこと大徳寺先生は、フードと仮面を外す。

……予想はしていたが、やはり変わり果てた姿だった。白髪に紅い目、そして、顔中に走っている血管とも神経ともとれない筋。……分かってはいたが、その姿は見ていて悲しかった。

「……デュエルに戻る前に一つ聞かせて欲しい」

「え……」

「……君は……君は何者なのだ?」

「!」

「この1年間、十代だけでなく、君の事も見てきた。……確かに、君自身の洞察力や観察力が優れているというのもある。だが、それだけでは説明できない所がある。……十代や君の力を試す為に、私が計画したあの遺跡での課外授業、いつも十代と行動を共にしている筈の君が、この時ばかりは来なかった。それに、カミューラにしても、これ以外に無いという方法を取り、誰も犠牲にならない方法を取っている。……恰も、未来が分かっているかのように……」

……驚いた。流石は錬金術師、まさか感付かれていたとは……

「……ふふふ、まぁいい。聞かなくてもここで私が勝って君の鍵を頂き、君に私の研究のサンプルになって貰えばよいのだからな。ふふふふふ……」

恐いからラ○トルさん!狂経脈状態でその暗い笑いヤメテ!

つーかこのデュエル、流れ的に負けても大丈夫……だよね!?負けてホルマリン漬けとか、ワイトの仲間入りとか無いよね!?

「……『デス・ラクーダ』をその効果により、裏側守備表示に戻してターンエンドです」

……これでお互いにロックし合う膠着状態となった。だが、僕のロックでは星の低い錬金獣達のダイレクトアタックを防ぐだけの物でしか無い。

あっちのデッキには『黄金のホムンクルス』や『ヘリオス』シリーズ等、攻撃力がいくらでも上がってくるモンスターがある。……この程度では時間稼ぎにしかならないだろう。

……一方で、あちらの『エレメンタル・アブソーバー』によるロックは隙が無い。僕のデッキは殆んどが闇属性モンスター、そして少しの地属性と光属性モンスターで構成されている。

しかも、先程の『ネクロフェイス』の効果のせいで、僕のデッキにおける数少ない魔法・罠除去カードの1枚。『大嵐』が除外されてしまった。……地味に『サイクロン』や『ライトロード・ハンターライコウ』が来るのを待つしか……

「私のターン、ドロー!リバースカードを1枚セットし、更に魔法カード『黒の過程-ニグレド 』を発動!『錬金釜-カオス・ディスティル』がフィールド上に存在し、このカード以外の自分の手札が0枚のとき発動。自分の場の『錬金獣』と名の付くモンスターを全てゲームから除外し、除外したモンスター1体につき、自分はデッキからカードを2枚ドローする!」

ヤバい、仕掛けてきた!

相手のフィールド上の3体の『錬金獣』が破壊され、大徳寺先生がデッキからカードを2×3で6枚もドローした。

「更に先程セットした魔法カード『白の過程-アルベド』を発動!『錬金釜-カオス・ディスティル』がフィールド上に存在するとき、デッキまたは手札から『黄金のホムンクルス』を1体特殊召喚する!デッキから『黄金のホムンクルス』を特殊召喚!」

……こっちの世界での『黄金のホムンクルス』の攻撃力・守備力は自分の除外されているカードの枚数×300ポイント、もとの世界の、元々の攻撃力が1500あり、枚数×300ポイントアップする、というのと比べるとかなり弱い。……こう見ると、大徳寺先生のカードって原作と比べると結構パワーアップしてるなぁ。あれか?他の『錬金獣』カードをOCG化出来なかった代わりか?

「今、私の除外されているカードは14枚。よって、『黄金のホムンクルス』の攻撃力は4200!『黄金のホムンクルス』(攻撃力4200)で『ダークグレファー』(攻撃力1700)に攻撃!『ゴールデン・ハーヴェスト』!」

『黄金のホムンクルス』が飛ばしてきた無数の黄金の破片が、『ダークグレファー』を貫いた。 自残ライフ500

……今の所は『金剛○破』!って叫んで欲しかったなぁ。どっかの半妖さんみたいに。

「ターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

……よし、ここで『あのカード』を破壊出来れば……

「更に『デス・ラクーダ』を反転召喚!デッキから更にカードを1枚ドロー!」

この1枚に賭ける!

……

よし!

「速攻魔法『サイクロン』を発動!永続罠『エレメンタル・アブソーバー』を破壊!」

「何!?……だが、今更『エレメンタル・アブソーバー』を破壊しても、私の『黄金のホムンクルス』を倒せる手立てがあるのか?」

「ははは、そんなの無理に決まってるじゃないですか」

「何?」

「更に魔法カード『おろかな埋葬』を発動!自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送り、その後デッキをシャッフルする。デッキから『ワイト』を墓地に送り、更に『ピラミッドタートル』(攻撃力1200)を攻撃表示で召喚!」

「ふふふ、得意の自爆特攻か?だが、『黄金のホムンクルス』の攻撃力は4200。自爆した瞬間、勝負は決してしまうぞ?どうするつもりだ?」

「ふふふ、こうするんですよ!魔法カード『強制転移』を発動!お互いに自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターのコントロールを入れ替えます!」

「何!?」

「当然、あなたのフィールド上にモンスターは1体のみ、よってそのモンスター、『黄金のホムンクルス』と僕のフィールドのモンスター、『ピラミッド・タートル』のコントロールを入れ換えます!」

僕の除外されているカードは『ネクロフェイス』の効果による5枚のみ。だが、それでも攻撃力は300×5で1500。『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)を上回る!

「『黄金のホムンクルス』(攻撃力1500)で『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)に攻撃!」

技名は勿論……

「『金○槍破』!」

「ぐ……」 敵残ライフ3700

「更に『ピラミッド・タートル』の効果を発動!このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる!僕は守備力0の『ワイトキング』をデッキから特殊召喚!」

「くっ、『ワイトキング』の攻撃力は墓地に存在する『ワイト』『ワイトキング』×1000……!」

「そう!該当カードは全部で3枚(『ワイト』×2『ワイト夫人』×1)!よって、『ワイトキング』の攻撃力は3000!『ワイトキング』でダイレクトアタック!」

『ワイトキング』が、何処かで見たようなバカでかいブーメランを先生に投げつける。

「『飛○骨』!」

「ぐうぅぅ……」 敵残ライフ700

……毎度の事ながらいつまで続くんかなぁこのネタ……

「更に『デス・ラクーダ』(攻撃力500)でダイレクトアタック!」

「ぐあぁぁ……」敵残ライフ200

「更にリバースカードを1枚セットして、『デス・ラクーダ』を裏側守備表示に戻してターンエンド……」

パキ……

と、乾いた音を立てて、大徳寺先生の頬にヒビが入った。

……大徳寺先生ことアムナエル、アカデミア理事長の影丸の元で不老不死、またそれを生み出す賢者の石を求める研究をしていた錬金術師。

その後、ペガサスさんが運命に導かれるかの如くエジプトでデュエルモンスターズに巡り合ったように、三幻魔のカードという存在に巡り合い、その研究をしていたが、そのエジプトでの旅により、彼の身体は不治の病に侵されていた。

……そして、目の前に居るのは、過去に失われたその肉体の代わりに、錬成した人造人間(ホムンクルス)にその魂を定着させた物らしい。

……なんか話が微妙に『ハ○レン』じみてる気がするけど。……人体錬成とか……

……そして、あの身体も、もう間もなく滅ぼうとしているらしい。

……確かに今、僕はもう一息で勝とうとしている。……だが……

「……何を迷っている和希……」

「!」

「これは、私が君達に課す最終試験だ!確かに君はあと一息で合格の所まできているが、気を抜けば一気に落第するぞ!」

……先生……

「私のターン!ドロー!リバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

「……行きます!僕のラストターン!ドロー!2体目の『ワイトキング』(攻撃力3000)を攻撃表示で召喚!全モンスターでダイレクトアタック!」

「リバースカード発動!永続罠『マクロコスモス』!自分のフィールド上の『錬金釜-カオス・ディスティル』をゲームから除外して発動!デッキまたは手札から『原始太陽ヘリオス』を1体特殊召喚し、引き続き墓地に行く自分のカードは全てゲームから除外される!」

……周りの風景が宇宙空間に変わり、周りの天体状の球体の中には先生に負けた万丈目君や明日香さん、その明日香さんを誘き出す為に拐われたのであろう吹雪さんが気絶していた。

そして、先生のフィールド上に太陽の化身、『原始太陽ヘリオス』が召喚される。

……だが、『原始太陽ヘリオス』の攻撃力は自分の除外されているモンスター×100、先生の除外されているモンスターは10体前後、これでは壁にしかならない。

「更に速攻魔法『惑星直列』を発動!自分のフィールドに『マクロコスモス』が存在するとき、相手の場のモンスターを全て破壊し、相手に300ポイントのダメージを与える!」

……成る程、そういう事か。

『原始太陽ヘリオス』を中心に、周りの惑星が直列に並び、歪んだ重力波が僕のモンスター達を襲い、爆発を起こす。

……だが……

「無傷……だと!?」

……僕のフィールドのモンスターで破壊されたのは『黄金のホムンクルス』と裏側守備表示モンスター、『デス・ラクーダ』のみ。

「……永続罠『リミット・リバース』を発動。自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚します。そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊、このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊、そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊します。……僕が蘇生させたのは、『ワイト夫人』」 自残ライフ200

「……成る程、そういう事か……」

……『ワイト夫人』がフィールド上で表側表示で存在する限り、『ワイト夫人』以外の星3以下の表側表示アンデット族モンスターは魔法・罠の効果を受けず、戦闘でも破壊されない。……仮に、今みたいな全体破壊でも、『ワイト夫人』は破壊されても、その効果を受けている『ワイトキング』は破壊されないのだ。

「ふふふ、完敗だ。最終試験、文句無しに合格だ」

「……最後に、質問してもいいですか?」

「?」

「先生、今までの僕達との学校生活、楽しかったですか?」

「……今更それを聞いて何に……」

『先生の居ないオシリスレッドなんて、オシリスレッドじゃないもんな』

「な!?」

……僕が手にしたボイスレコーダーから、さっき駄弁っていた時の十代君の言葉が出てくる。

……他にも、翔君や隼人君、万丈目君の、この一年間の先生との思い出も出てきた。

「……先生がセブンスターズのメンバーだとか、そんなの関係、無くはないけど、そんなのはどうでもいいんです!」

「……」

「この1年間、先生にとってはどうだったんですか!?それだけを教えてください!」

……もうこれは質問というよりは懇願だ。

……先生は、暴走する影丸理事長を止める手段として、僕達デュエリストの育成をしていた。それはわかっている。

……だが、だからといって、あれだけ笑ったのに楽しくなかったなんて……悲しすぎる!そんなの!

「……」

万感の思いを込めて、先生の返事を待つ。

「……私も……」

「!」

「私も……楽しかった。君達と接するのに、演技は殆んど必要無かった。……仮に、私が三幻魔と、彼と出会ってなかったら、間違いなく、今までの生活を続けていただろう……」

……

……良かった。

この人はセブンスターズ『アムナエル』じゃない。そういう側面を持った、錬金術師で僕達の教師、『大徳寺先生』なんだ。

「……だが、そんな仮定の話はもはや関係……」

「ありますよ」

「何?」

「先生、さっき言ってましたよね?恰も僕に未来が視えてるって。……実は半分正解なんデスヨ?」

「君は……何を……」

「……先生、先生にはもう一人、最終試験をすべき人が居ますよね?教師として、錬金術師として」

「な!?」

……やはり、十代君の成長の為にも、三幻魔を倒す為にも、この人とデュエルして欲しい。

先生も、『融合』を自在に操る最強の『錬金術師』として、十代君とデュエルしたい筈だ。

……という訳で

「はい、ポンッと」

「な!?」

自分のデッキの上に手を置く。サレンダー。降参である。

……ごめんねワイト達。頑張ったのに。

……意識がどんどん遠くなり、その場に座り込んでしまった。

「和希……」

「ははは……じゃ、十代君の方の試験も宜しくお願いします……」

……僕は目を瞑った。



「……さて、そんな訳ですが、先生?」

『な、なんですかニャ?』

……その後、十代君も無事先生に勝ち、先生から、錬金術の全てが書かれているという書物、『エメラルド・タブレット』を入手した。

大徳寺先生の魂も、無事ファラオが回収し、無事ファラオに憑依した、のだが……

「ふふふ、大変だったんですよ?あの後経過を聞いたとき、翔君なんてマジ泣きしちゃったんですからね?」

『そ、それは悪い事をしたのニャ……』

「ふふふ、翔君を泣かせた罪は深いですよー?マリアナ海溝並みに」

『ふ、深いのニャ……』

因みに深さ約11000メートル。大体エベレスト(約8800メートル)+富士山(約3700メートル)ぐらいである。

「と、いう訳で……」

『と、いう訳で……?」

「お仕置きぃ!首筋カリカリ攻撃!」

『ニャ〜!?く、擽ったいのニャ!?ほほほ、ファ、ファラオ、 に、逃げるのニャ!』

「ははは、無駄デスヨー?ファラオは気持ち良さげですもん。ねー?ファラオ?」

「ほぁら♪」

「ははは、可愛いなぁ、次はお腹だ!ウリウリ」

『ニャ〜!』

「ほぁら♪」

「はぁ、ポヨポヨしてて気持ちいいなぁ……」

……まぁ、何はともあれ、丸く収まった、かな?

「これでいいのだ」

『良くないニャ!誰か助けてくれなのニャ~!?』



今日のワイト

和「今日のカードは……」

大徳寺『今回、あまり使わなかった私の『ヘリオス』シリーズですニャ』

ファラオ「ほぁら」

和「おわ!?先生!?」

大『ってニャ〜!?骸骨なのニャ〜!?』

和「……御自分だって同じ様な物じゃないですか」

3ワイト「「「カタカタ」」」(コクコク)

……先生が落ち着くまで今暫くお待ち下さい……

大『いやー、申し訳ないのですニャ。一応デュエルの精霊の事は研究してたけど、やっぱり骸骨は恐いのニャ』

和「……先生、アムナエルモードとの性格のギャップが激しすぎです」

大『えーと、『原始太陽ヘリオス』は登場したので、その進化系『ヘリオス・デュオ・メギストス』ですニャ。星6、光属性、炎族、攻撃力?守備力?、自分フィールド上に『原始太陽ヘリオス』1体を生け贄に捧げる事で特殊召喚可能。このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されているモンスターカードの数×200ポイントになるニャ。このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、エンドフェイズ時に攻撃力・守備力を300ポイントアップさせて特殊召喚されるのニャ。因みに、一応通常召喚も可能なのニャ』

和「原作では『黄色の過程-キトリニクス』(『原始太陽ヘリオス』1体を生け贄に捧げ、デッキまたは手札から『ヘリオス・デュオ・メギストス』を1体を特殊召喚する原作オリジナル魔法カード)の効果によってのみ特殊召喚可能。通常召喚は不可。攻撃力アップの効果も、やられる度に何度も攻撃力が上がっていくカードになっていました。勿論、現実では墓地に送られると一度攻撃力が元の数値にリセットされるので、何度蘇生しても攻撃力の増加は300止まりになります」

大『更にその最終進化系、『ヘリオス・トリス・メギストス』。星8、光属性、炎族、攻撃力?守備力?、このカードは自分フィールド上の『ヘリオス・デュオ・メギストス』1体を生け贄に捧げる事で特殊召喚する事が可能。このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されているモンスターカードの数×300ポイントになるのニャ。このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた場合、エンドフェイズ時に攻撃力・守備力を500ポイントアップさせて特殊召喚されるニャ。相手フィールド上にモンスターが存在する場合、もう1度だけ続けて攻撃を行う事ができるのニャ』

和「こっちの方も、原作では『赤色化-ルベド』(『黄色の過程-キトリニクス』の『ヘリオス・トリス・メギストス』バージョン。勿論原作オリジナル)の効果によってのみ召喚可能。蘇生効果は……発動しなかったので不明です」

3ワイト「「「?」」」

大『おー、ワイトたちは気づいたようですニャ。優秀ですニャ。実はこの2枚、蘇生の条件が『戦闘によって破壊されて墓地に送られた時』なので、実は問答無用で除外してしまう『マクロコスモス』との相性最悪なのニャ』

和「……原作ではお構い無しに蘇生してましたけどね」

大『最後に、速攻魔法『グランドクロス』なのニャ』

和「出ましたね。アバ○流奥義!」

大『(腕を十字にして)確かこんな感じだったよな……って違うのニャ!』

和「ははは、身体がオリハルコンでできてないから、また粉々になっちゃいますね」

大『もう嫌なのニャ~!散々カッコつけていたけど、あの時体中が痛くて泣きそうになったのニャ!』

和「……衝撃のカミングアウトですね」

大『自分の場に『マクロコスモス』が存在するとき発動可能。フィールド上のモンスターを全て破壊し、相手に300ポイントのダメージを与えるカードのニャ』

和「これは現実と同じですね。原作オリジナルの『惑星直列』は相手のモンスターのみを破壊するという疑似『サンダーボルト』という強化なカードでした」

大『……以上で、今日の講義を終了しますニャ』

和「今日の『教えて!大徳寺先生!』のコーナーでした!」

3ワイト「「「カタタ(オイッ)!!!」」」



あとがき

申し訳ない。20日ぶりの更新となってしまいました。

なんせ……大徳寺先生のカードがオリジナルばっかりだから書きづらくてしょうがない!

べ……別にタッグフォース4にはまってたんじゃないんだからね!?

もうカード9割方集めたりなんてしてないんだからね!?



[6474] 幕間 枕田ジュンコの憂鬱
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/15 23:24
SIDE ジュンコ



「う……ん……?」

……瞼越しに目を射すような夕陽に、アタシは目を覚ました。

あれ?アタシどうして……

……そうか、確か吹雪様の輝くスマイルにノックアウトされちゃって……

「あ、起きた起きた」

なんか今、今年になって何度となく聞いた声が……

……瞑っていた目を開けると……

「おいっす」

……頭にバンダナを巻いたいつもの馬鹿が、ウェイターみたいに片手でソフトドリンクを2つ乗せたお盆を持ってきた。……何処の世界に『海の家inデュエルアカデミア』ってロゴのついたTシャツ着たウェイターが居るのよ……

「何やってんのよアンタ……」

「何って、バイト?」

「……なんで疑問形なのよ……」

……よく見たらここ、浜辺にある海の家じゃない。

外を見れば夕方になっており、客もアタシ達以外はいなかった。

「ははは、セブンスターズの騒ぎも収まったからね。暇潰しにね」

「……暇潰しでバイトするなんて聞いた事無いわよ」

「そう?暇潰しになるし、お金にもなるし、一石二鳥だよ?」

……落ち着きの無い奴。

「……て言うか、なんでアタシここに居るのよ?」

「ん?あー、吹雪さんの決めポーズにノックアウトされてた所を僕が運んだんだけど?」

「……ちょっと!まさか変なことしてないでしょうね!?」

「……一応、誰かに変な事されないように運んだんだけどね。まぁ、僕は運び込んだ後は、君の事は店長に任せて外でパラソル立てとかしてたから。……何なら店長に証言して貰う?」

……つまり、運び込んだ後は店長(トメさんの友達のおばさん)さんに任せてたって訳ね。

「……今は働いてないの?」

「客も減ってちょうど休憩に入ったとこ。いやー、ドンピシャだったねぇ」

相変わらず飄々と応えてヘラヘラ笑う馬鹿。

……まぁ、運び込んでくれた事には礼を言うけど。……心の中で。

……ちょっと待って……

「……確認するわ。アンタがアタシを運び込んだのよね?」

「ん?そうだけど?」

……って事は……

「やっぱりアタシの身体触ってるんじゃない!」

「ちょ!?」

午前中海水浴をしていたアタシが着ているのは勿論水着。

要するに、運ぶ時は必然的に肌が触れる訳で……

「この変態!獣!痴漢!」

「ちょ!?待った待った!ちゃんと話を……うわぁ!?」



……その後、手当たり次第に物を投げつけていたアタシを息も絶え絶えに止めながら、アイツは説明した。

どうやら、一緒に気絶して、一足先に気がついたももえが手伝って、コイツの背中にアタシをおんぶさせた様だ。

……それでも釈然としない物があったが、無理矢理納得する事にした。

……因みに、この馬鹿はももえから伝言を預かっていた。

「『二股は駄目ですわよ〜』……だってさ?」

……ももえ、後で覚えてなさいよ。

……ついでに、吹雪様のサインも、ももえが先に持ち帰ったそうだ。

「それにしてもさぁ……」

「……何よ……」

座敷の向かい側に座りながら馬鹿が苦笑しながら話し掛けてくる。

「いやー、将来変な男に引っ掛からないように気を付けなよ?」

「な!?」

い、いきなり何を言い出すのよコイツは!?

「吹雪さんはかっこいいし、性格も善良な人だけどさ、人は見かけだけじゃ判断出来ないんだからね?泣いてからじゃ遅いよ?」

お母さんかアンタは!?

「そんな事、アンタなんかに言われなくったってわかってるのよ!」

「……本当〜?」

苦笑したままジト目で見てくる馬鹿。

「……何よ?」

「いや〜?自分がなんでここに居るのか、よく考えた方がいいと思うよ〜?」

「! 本っ当に嫌味ねアンタ!」

「はははは……」

……腹が立ったので、愉快そうに笑う馬鹿を尻目に、おばさんに注目する。

「すいません!焼きそばとお好み焼き下さい。お代はコイツのバイト代から引いておいてください!」

「あいよ」

「ちょ!?」



「ね、ねぇ?ちょっと……」

「ん?」

半ば強制的に奢らせた食べ物を食べた後、アタシは意を決して聞いてみた。

因みに、アタシが食べている間、コイツは何か考え事をしていたようで、時々、『今夜二人を止めるべきか?……いや、どうせあの二人を止めたとしても……』等と独り言を喋っていた。

「……何独り言言ってんのよ?」

「あーいや、心残りはキャッツアイな吹雪さんが見れないなぁ……ってね」

「はぁ?」

猫の目に……吹雪様?

「……ごめん、何でもない、こっちの話」

「……」

……相変わらず、何を考えてるのか訳わかんないわ。

「……で、何?」

「……アンタ、どういう人が好きなの?」

「……はい?」

「べ、別にアンタの好みなんてどうでもいいけど。……そう、吹雪様の好みを調べるための参考よ」

「……吹雪さんと僕とじゃ趣味趣向がまるで違う気が……」

「いいから!答えなさい!」

「……うーん、好みのタイプ好みのタイプ……」

首を捻って考えてる朝倉の答えを固唾を飲んで待つ。……って、なんでこんな緊張しなくちゃいけないのよ!?

「……そうだね、相性の良い人、かな?」

「は?」

……相性?

「ん、相性。例え、そんなに美人さんで無かったとしても、馬が合うと言うか、一緒に居るだけでも楽しくなるような人、かな?好みとはなんか違う気がするけどね」

「……」

「まぁ、勿論、僕だって男だから美人さんやスタイルの良い人の方が良いけど。やっぱり、優先度が高いのはそっちかな?」

「……」

相、性……

自然と思い出すのは、最初に会った時からコイツに突っ掛かっていた自分の事。

……無性に腹が立ってきた。

「おばさん!かき氷!」

「あいよ」

「ははは、自分から聞いといてなんでそんな機嫌を損ねるかなぁ……」

……何が楽しいのか、クスクスと笑い続ける馬鹿。

「……言っとくけど、これだってアンタの奢りなんだからね?」

「ははは、だろうね」

……それでも笑うのを止めない馬鹿。

「……何がそんなに可笑しいのよ?」

「あー、いや、今改めて考えてみると、こういうことなのかなぁってね?」

「……何がよ?」

「ん?相性が良いって事」

「え……」

ちょ、コイツ何を……

「だって、君と居ると楽しいもの。……退屈しないし、からかい甲斐があるし……」

「ア、アンタねぇ!」

「ははは、まぁ後半部分は冗談として、うん、そうだね」

「な、何頷いてるのよ?」

「ん?いや、改めて、君の事は嫌いじゃないなぁ、ってね」

「な!?」

なななななななななななななななぁ!?

「あ、それじゃ、そろそろ休憩時間終わりだから、ごゆっくりどうぞ」

「ちょ、ちょっと!」

……

……落ち着きなさいアタシ、落ち着いて話を纏めるの……

……アイツの好みは『自分と相性のいい人』。

……そしてアイツ曰く、アイツとアタシは相性がいい……

……そして、極めつけにアタシの事、その、嫌いじゃないって……

……っ!?



SIDE OUT



SIDE 恋愛師弟 in 物影




「おやおや、ショートしてしまったみたいだね。ふふふ、和希君もなかなかやるね。見たかい?万丈目君?」

「……見ました。師匠。御推察、流石です」

「うん、見た感じ、あの二人が君達の中で一番進展しているみたいだったからね。惜しむらくはまだ和希君がその気じゃないみたいだけど、これは何かの弾みに成立してしまうかもしれないね」

「その気じゃないというのは?」

「と言うよりは、好意はあるみたいだけどまだそれが恋にはなってない、或いは恋だって彼自身気付いてない、って所かな?彼もそっち方面は結構鈍そうだからね。恐らく、彼は男女の間に友情はアリで、それが発展して恋になる、って考え方なんじゃないかな?」

「……あいつがそんな上等な恋愛観を持っているとは思えないんですが……」

「ふふふ、万丈目君。恋愛は論理じゃない。フィーリングなんだよ。彼はそのフィーリングを生まれつき持っているんだろうね」

「成る程。流石師匠。勉強になります」

「うーん、だけど、君と彼ではタイプが違うからね。それに、彼女と明日香も気の強い所は似ているけど、やっぱりタイプが違う。あくまでも今のは『こういったのもある』という一例として捉えておくのがいいよ」

「はい!師匠!」



※今日のワイトはお休みです。



あとがき

三幻魔との決着……の前に、ジュンコさんが吹雪さんにノックアウトされるというおいしい場面があったのでカッとなって書いた……後悔はしていない。

……つーか今回ワイトの出番ねー!



[6474] 第二十一話 兆候
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:27
さて、予想通りその夜、恋する万丈目サンダーと愛の伝道師ことアロハ吹雪が七星門の鍵を盗み出した。……万丈目君が明日香さんと、デートを賭けたデュエルをする為に。

止める事も考えたが、そうするとあのおじーさん、影丸理事長がどう出てくるかわかったものではないのでここは黙認した。……あと面白そうだし。

……つーかさぁ、神楽坂君といいこの人達といい、『人の物を盗み出しちゃいけない』っつー道徳は無いんかね?窃盗罪っすよ?10年以下の懲役だよ?……まぁ、いつも通り面白かったからいいけどさ……

つーか今回も万丈目君美味し過ぎ!

結局、明日香さんには負けたが、正気とは思えないセリフの連続だったし。

原作オリジナルの魔法カード『恋文』と『秘めた思い』、そして『ハリケーン』とのコンボの時の……

「天上院君、君は自分の身を削ってもこの僕にライフを……その想い、頂きました!」

……とか、『おジャマ・トリオ』と『おジャマ・キング』で明日香さんのモンスターゾーンが全て埋まってしまった時の……

「君のフィールドは僕のモンスターで満ちている。つまり、君の胸の中も僕への想いに満ち溢れている。……だろう?」

……とか、もはや完全に思い込みの激しいストーカーの域だよなぁ。このデュエルに限定して、一人称が僕になってるし……

「うん、なんとなく、わかる気が……」

……わかっちゃってる空気君もいるけど。ロリ疑惑の次はストーカー疑惑か?

……因みに、『恋文』は自分の場にモンスターが存在し、魔法・罠カードゾーンにカードがセットされているとき発動、●相手は自分の場のモンスター1体のコントロールを得る。●自分の魔法・罠カードゾーンのカード1枚を相手のコントロールに移し、相手の魔法・罠カードゾーンにセットする。のいずれかを選ばせるカードである。

このカードの為、わざと攻撃力0の『おジャマ・イエロー』を攻撃表示で召喚し、後者の能力を発動させたのだが、そこで明日香さんの魔法・罠ゾーンにセットさせられたカードが『秘めた思い』、通常魔法で、このカードが相手の場から自分の手札に戻ったとき、相手に1000ポイントのダメージを与え、自分は1000ポイントのライフを回復する、というカード。

そして、フィールド上の魔法・罠をすべて手札に戻す魔法カード『ハリケーン』で手札に戻させての最初のセリフである。

……翔君も言っていたが、混じりっ気の無い自作自演である。

……と言うか吹雪さん、こんなコンボ性の高過ぎるコンボを薦めるのはどうかと……

「明日香!こんなにカッコいいサンダーに何故惚れない!?」

……吹雪さん、『恋は押し引き』って言ってましたけど、これだったらまだ『VtoZ』や『アームド・ドラゴン』での力押しの方が強いし、カッコいい気が……

……何より明日香さん、こんな回りくどい戦略、逆に絶対に嫌いだと思いますヨ?「何かまどろっこしいわね!言いたい事があるならデュエルで語りなさい!」……ってデュエルの前に明日香さん言ってたし。

……あと吹雪さん、あなたの『カッコいい』の基準はなんかビミョーにずれてる気がします。

「うぅ、デュエルに負けた。恋にも敗れた。……だが俺は……一、十、百、千、万丈目サンダー!」

「……この上無く悲痛だなぁ」

「……そんな楽しそうな顔で言っても説得力無いっス。……と言うか和希君、終始笑いっぱなしだったじゃないっスか」

……だって面白かったんだもの。



その時、異変は起こった。

「え……?」

「な……?」

「これは……?」

島全体が揺れだしたのだ。

……いよいよ始まるのか……

……揺れがおさまると、デュエルアカデミアから緑色の光が一筋、天に向かって飛び出し、七星門の柱が地中からその姿を現した。

すると……

「なんだ!?七星門の鍵が!?うわ!?」

万丈目君が、その首にぶら下げた七つの七星門の鍵に引っ張られて、七星門の柱の方に走り出した。やっぱり美味しいぞサンダー!

「万丈目!?」

「『さん』だぁぁぁ〜……」

ドップラー効果入りのお約束を返しながら森に引っ張られていった万丈目君を、僕達は追跡した。

やがて、七星門の柱に近づくと、万丈目君は柱に向かおうとする首の鍵に引っ張られて、とうとう宙に浮いてしまった。……そのマンガみたいにジタバタする様子を見て、思わず走りながら笑ってしまい、脇腹が痛かった。

……良かったなぁ万丈目君、もし逆向きだったら確実に首絞まってたよ?

「万丈目!」

「うぐぐ、『さん』だ……ぐが!?」

「万丈目!?」

「「サンダー!?」」

……そして、お約束のように木に激突し、頭から墜落して、サンダーは止まった。……車○落ち?

……そんなサンダーを尻目に、僕達は七つの七星門の柱の中央部に出来た盆地に入った。

「あれは……」

「鍵が……」

「吸い込まれた」

「他の柱にも……」

「七星門の鍵が次々と……」

「もしかして……」

「七星門が……」

「開くのかぁ!?」

「「「「「「……」」」」」」

「……あれ……?」

最後の万丈目君の絶叫に、全員(吹雪さん以外)が絶対零度の視線を絶叫した万丈目君に向ける。何処まで美味しいんだサンダー!

と、

「皆さーん!」

「何事なノーネ!?一体全体、どうなってるノーネ!?」

校長先生と、クロノス教諭が走って来た。

「それが、七星門の鍵が……」

「「「「「「「サンダーのせいで!」」」」」」」

十代君の言葉に、皆が声を揃えて万丈目君を指差す。……つーか吹雪さん?あなたが唆したんじゃ……

「そうか、七星門は、俺の愛の力のせいで……」

「何処までプラス思考なんだか……」

「『万丈目君の評価がグーンと下がった』」

「うおぉぉ!?」

「……やめてあげなって。傷口抉るのは……」

「はははは……」

……と、万丈目君をいぢめていると、地響きがして、盆地の真ん中の地面から何やら機械が出てきた後、その機械から3枚のカードが現れた。

「あれが……」

「三幻魔のカード!?」

十代君達が駆け寄るが……

「そのカードを貴様らにやるわけにはいかんな」



……あとの流れは原作通りだった。

敵の首魁、影丸理事長が蜘蛛のようなロボット兼生命維持装置のようなものに乗って飛行機から降下して来た。

そして、七星門の鍵は、デュエリストの闘志が蔓延していれば勝手に七星門を開く仕掛けとなっており、その為にデュエルアカデミアを設立した事も暴露させた。

そして、未だ完全ではない、三幻魔のカードを完全にコントロールする力を得る為、精霊の力を最も強く持つ十代君に闇のデュエルを申し込み、その精霊の力を得ようとしたのだ。

うーん、正直代わってあげたい所なんだけど……

この世界の幻魔は原作の三幻神同様、罠カードが効かず、魔法カードも発動ターンのみしか効果を受け付けない。……正直勝てる気がしない。と言うか、大徳寺先生から『賢者の石-サバティエル』なんてチートカードを貰っている十代君以外は絶対勝てる要素ないって……

『賢者の石-サバティエル』、原作オリジナル通常魔法、自分の場の『ハネクリボー』が破壊されたとき、このカードをデッキから手札に加える。ライフの半分を払うことで、このカードと自分のデッキまたは墓地にあるカード1枚を交換する。交換したカードを使用した後、このカードを手札に戻す。この効果で3度交換した後、自分のモンスター1体を対象とし、対象となったモンスター1体の攻撃力はこのターンのみ、「そのモンスターの攻撃力×相手の場に存在するモンスターの数」の数値になる。……なんていうトンデモカードである。ライフが8分の1になる代わりに、その1ターンやりたい放題出来るカードである。

と言う訳で、大役を十代君に丸投げして、今年一番の勝負所は問題無くしゅ〜りょ〜

……する筈だった。



それは、デュエルの中盤、三幻魔のうち『神炎皇ウリア』と『降雷皇ハモン』がフィールドに揃い、2体が周りのデュエルモンスターの生気を吸い取り、影丸理事長がその生気で若返り、『筋肉筋肉〜』していた時だった。

……因みに、ワイト達は元々生気が無さそうだから大丈夫かな〜って思っていたら、なんか骨粗しょう症になっていた。……代わりにカルシウムを吸い取られていたらしい。……頑張れ。

「来い十代!お前の魂ごと、俺の肉体に吸い取ってやる!」

そんな、何処ぞの槍兵(と書いてアニキとルビれ!)ヴォイスに感動していると……

「これが三幻魔……」

……思いもしなかった声がした。

「貴様は……」

「カミューラ!?」

……そう、軟禁されている筈のカミューラさんが姿を現したのだ。

「どうしてここに!?」

ヤバい、流石にこれは計算外だった!

「あら、ヴァンパイアの力を持ってすれば、あの程度の軟禁、抜け出せないとでも思っていたのかしら?」

……機を伺っていたと言うわけか……!

「……ふん、誰かと思えばカミューラか。負け犬が何の用だ?」

だが、そんなカミューラさんに、影丸理事長は冷淡だった。

「あら、つれないのね。折角、祝儀でも述べてあげようと思ったのに」

「ふん、そんな事を言いに来たのではあるまい」

「ふふふふ、あら、似たり寄ったりよ。お互いにめでたいでしょう?あなたは間もなく三幻魔を手に入れて不老不死に、私も、ヴァンパイア一族の復活に……」

うぅ、やっぱり生かしておくの駄目だったか?この人……

「……くくくくく、ヴァンパイア一族の復活だと?」

「!? 何よ、まさか忘れたなんて言うんじゃないでしょうね!?」

「くくくく、ああ、すっかり忘れていたな、そんな守る気も無い約束があった事などな!」

「な、なんですって!?」

あれ……?

「くくくく、1つ良いことを教えてやろう。あそこの遊城十代の胸にぶら下がっているあのペンダント。あのペンダントは、お前に渡した闇のアイテムの効果を打ち消す力がある物だ」

「なん……ですって?」

……軟禁された際に取り外されたが、カミューラさんの闇のアイテム、チョーカーは、魔法カード『幻魔の扉』のコスト、使用者の魂を、他の人間の魂に代用させる、という物だった。

「そして、俺はあのペンダントが十代の手に渡っている事を知っていた!」

……そうか、あのペンダントの片割れの所有者の吹雪さん、ダークネスが敗れた時点でこちら側が片方を持っている事は知っているだろうし、もう片方も、大徳寺先生を通じて知っていた可能性がある。

「なのに、俺はそれをお前に教えずにお前を送り出した。……この意味がわかるか?」

「あなた、まさか……」

「くくく、そのまま幻魔の生け贄になってくれれば良かったものを」

「……!おのれ!」

怒り心頭のカミューラさんが、影丸理事長に襲い掛かるが……

「ぬんっ!」

「かっ……は……」

理事長の拳がその細い腹にカウンター気味に決まり、カミューラさんは吹き飛ばされた。

「くくく!所詮貴様も、俺の駒の1つに過ぎん!駒なら駒らしく、指し手に使い捨てにされるんだな!ふふふふふ、はーっはっはっは!」

「くっ……お……の……れ……」

吹き飛ばされたカミューラさんは、そのまま気絶してしまった。……目に無念の涙を浮かべて。

「なんて汚い……」

「デュエリストの風上にも置けん奴だ!」

「……」



ドクン……

……? なんだろう、これ……

……確かに、カミューラさんには同情する、影丸理事長も、純粋にムカつく。

……でも、この沸き上がってくる憎悪の量は異常過ぎる……

……別に理事長やカミューラさんに特別な気持ちとか持っていたりとかしていないのに……なん……で……

「っっ!……はぁ、はぁ、はぁ……」

「か、和希君!?」

「どうしたの!?」

「顔色が悪いんだなぁ」

……皆が心配して声をかけてきてくれたが、自分の容量を超える憎悪を抑えるのに必死で、僕はその場に蹲ってしまった。

本当……に……何だって……言う……んだよ……



……その後は……良く覚えてない……

……辛うじて覚えているのは、原作通り、十代君が勝ってくれた事。

……そして、意識を失う寸前……

「わしは若返りたかった。特にお前達のような若者を見ていたらどうしても、もう一度青春を取り戻したくなったのだ……」

……という、敗北して再び老齢化した影丸理事長のこの言い訳じみた言葉に……

僕は最後に、……今まで抑え込んでいた憎悪の蓋が外れた音を聞いた……



今日のワイト

3ワイト「「「……」」」

和「へ?最近出番がない?ははは、御冗談を……」

3ワイト「「「……」」」



[6474] 第二十二話 第一部完
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9766d1b6
Date: 2011/07/13 00:06
……これは……ユ……メ……?

ソイツらは何の前触れもなく、突然やってきた。

そして、親父もお袋も兄弟もダチも赤の他人もジジイもハバアもガキも逆らう者も逃げ遅れた者も命乞いをした者も、皆コロサレタ……

……『俺』らは、何もしていないのに!

ただ、普通に生活していただけなのに!何故!?

……奴らが、親父『だった』モノで、お袋『だった』モノで、兄弟『だった』モノで、ダチ『だった』モノで、赤の他人『だった』もジジイ『だった』モノで、ハバア『だった』モノで、ガキ『だった』モノで、逆らう者『だった』モノで、逃げ遅れた者『だった』モノで、命乞いをした者『だった』モノで、『ナニカ』を作っているのを見た時、『俺』は理解した。

嗚呼、『俺』達はあの『ナニカ』の材料にされたんだ。

……アイツら、こっちの事なんざお構い無しに、自分達の都合だけで、皆殺しやがった!

……許さねえ……

いつか、必ず、復讐してやる……!



……これは夢だ。こんな記憶、『僕』にはない。……ない筈だ。

……だから、例えこの夢で『僕』が『俺』になっていたとしても、何も感慨は湧かない筈……

……なのに……

なんで……こんなに憎くて……

なんで……こんなに悲しいんだろう……



SIDE OUT



SIDE 翔



今ここ、デュエル場で、全校生徒が見守る中、在校生代表と卒業生代表によるデュエルが行われているっス。

勿論、卒業生代表は首席で、しかも卒業試験を満点で合格した僕のお兄さん、丸藤亮。

そして、在校生代表は、なんと我らがアニキ、遊城十代がお兄さんに指名されたのだ。勿論、オシリスレッドから指名されたのは前代未聞っス。

……でも、ここまでのアニキは、なんと言うか、全然アニキらしくなかった。

……いつもと違って、ちゃんとお兄さん対策をして、頭を使って、確かに、今までのアニキと違って準備万端って感じがした。

……でもアニキは、全然楽しそうじゃなかった。頭を使うデュエルなんて、全然アニキのデュエルらしくなかった。そして、お兄さんも、そんなアニキを見て失望の色を隠そうともしてなかったっス。

……でも、アニキが追い詰められ、お兄さんの『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃を辛うじて受けきった時だった。

グゥ〜〜

……なんて、会場全体に響き渡るような音がした。

「いっけね〜、頭使い過ぎて腹減っちまった。トメさ〜ん!メシ!メシをくれ〜!」

なんとアニキは、全生徒が見ている卒業デュエル中だっていうのに、ご飯を食べ始めてしまったのだ。

その様子は、もういつものアニキに戻っていた。

お兄さんもそれを感じたのか、苦笑しながら黙ってアニキが食べ終わるのを待っていた。

アニキがいつものアニキに戻った!……本当の勝負は、ここから始まるっス!

「ははは、それにしても相変わらず良く食べるねー、何合ぐらい食べてるんだろ?」

「和希君もいつも同じぐらい食べるくせに……って和希君!?」

「Yes,I am!チッチッチッ」

声がした後ろの方を見ると、通路に和希君が、左手人差し指を振りながら立っていた。

『……』

すると、周りの皆、明日香さんや三沢君達が、半分気遣うような、半分恐れるような目で和希君を見た。

「? どうしたの?」

「どうしたのって、あなた……」

「まさか、覚えてないのか!?」

「? 何を?」

心底、わからないという顔をしている和希君。

……本当に覚えてないのだろうか……



それは、アニキが影丸に勝って、一人で立てた影丸に、アニキが抱きついた時だったっス……

「うぅぅ……」

「!?か、和希君!?」

「ああああああああああああああああああ!!!!」

……それまで苦しそうに踞っていた和希君が、獣のような叫び声をあげながら一目散に影丸に向かって走り出した。

……その目は、狂気じみた憎悪に彩られていた。

「和希?……うわ!?」

「うぐ……!?」

……そして、アニキを突飛ばし、影丸の、枯れ木のような首に手をかけた。

「和希!?お前、何を!?」

……吹き飛ばされたアニキが混乱しながら問いかけたが、それも、和希君の耳にはまるで届いていないみたいだったっス。

……状況が理解出来ず、呆然とする僕らを無視し、和希君は……

「ぐ……が……?」

……そのまま影丸の首を、思いっきり絞め出したっス。

「和希!?何やってんだ!やめろ!」

すぐにアニキが引き剥がしたが、それでもなお、アニキを振りほどこうと暴れていたっス。

その後、辛うじて、体格で勝るお兄さんと吹雪さんが取り押さえ、和希君はそのまま意識を失ってしまい、影丸も、命には別状がなかったっス。



そして、この数日間、和希君はずっと医務室で眠りっぱなしだったっス。

……あれを、覚えてないのだろうか?

「うーん、辛うじて、十代君が影丸さんに勝ったのは覚えてるんだけどね……」

「じゃ、じゃあ……」

「その後は、気付いたら、日付が数日変わっていてマジビビり……だったね」

『……』

僕達は顔を見合わせた。

(翔君、朝倉ってもしかして二重人格だったりするの?)

(そんな事、聞いた事もないっス)

(だが、あの様子はまるで別人だったぞ?)

「……なーにを内緒話してるのさ」

「な、なんでもないわ」

「か、和希君」

「ん?」

「空気と言えば?」

「三沢君」

「良かった、いつもの和希君っス」

「お、お前らな……」

「……いつもの僕って何さ……」

キュピーン!

「む、来たなプレッシャー!」

「……どこぞの強化人間っスか。君は」

……完全に確信したっス。いつもの和希君っス。

「じゃ、僕はこれからメビウスの宇宙を越えてくるから!」

……意味不明な事を言って、和希君はツッタカターと走っていった。

「はぁ、はぁ、……どこ行ったのよアイツ!」

と、入れ替わりに、ジュンコさんが、肩で息をしながら走ってきた。

「ど、どうしたのジュンコ?」

「あ、明日香さん。あの馬鹿、朝倉を見ませんでしたか?」

「……今さっき、何処かに行ってしまったわ」

「あの馬鹿!医務室抜け出して何やってるのよ!」

……和希君が言ってた『プレッシャー』って、これっスか?

「で、でも和希君、かなり元気そうだったけど……」

「……うなされてたのんですって」

「え……」

「……鮎川先生に聞いたんだけど、アイツ、眠っていた間、時折うなされてたんですって。……身体面は大丈夫でも、精神面で何か……」
%0



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 プロローグ
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:ecbf4609
Date: 2011/07/12 23:48
あーあー、マイクテストマイクテスト。

えー、ただいまより、オシリスレッド生主催の演劇『誰かがためにデュエルする』を始めます。

ナレーションはこの僕、丸藤翔がお送りして参ります。

では、はじまりはじまり~



これは、ちょっと違う世界での物語。この世界では、人間とデュエルモンスターが共存しておりました。

むかしむかしあるところに、フーリンカザン王国とガッチャ王国という、仲のよいふたつの国がありました。そして、それぞれの国には同じ年頃の勇者サマがおりました。

フーリンカザン王国の勇者サマは、ちょっぴり地味だけどでクールで頭の良い勇者サマ。

ガッチャ王国の勇者サマは単細胞で熱血漢、だけど情にはもろい勇者サマ。

ふたりは良きライバルで、デュエルの腕も全くの互角でした。

これは、そんな二人の冒険の物語です。



「いっけぇ!『フレイム・ウィングマン』のダイレクトアタック!『フレイム・シュート』!」

「くっ……罠カード発動!『破壊輪』!フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊し、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける!」

「何!?」

ズカーン!

「「うわあぁ!?」」 両残ライフ0

ここはフーリンカザン王国にあるデュエル場。

ただいまデュエルの真っ最中。

試合を行っているのはこの国の勇者「ミサワ」と。

お隣のガッチャ王国の勇者「ジューダイ」の二人。

二人はお互いに実力を認め合う良きライバルでした。

「……これで56勝56敗56引き分けか。」

「ちぇっ、今日こそは勝ち越すチャンスだと思ったんだけどなぁ……」

「「ハッハッハッハ……」」

爆発に吹き飛ばされた二人が笑いながら体を起こしていると……

「大変だぁぁぁ!」

と、誰かが駆け込んで来ました。

「お前は……」

「木こりのタイザンじゃないか。どうしたそんなに慌てて?」

駆け込んで来たのは、いつもは山に住み、たまにこの城下町に薪を売りに来る『アックス・レイダー』のタイザンでした。

「ああ、今町で聞いた話なんだが、サオトメ王国が、突如現れたナゾの軍団『テンジョーイン』に襲われて占領されてしまったそうだ!」

「「なにー!?」」



絶世の美少女とうわさの高い「レイ姫」が若いながらも治めていたサオトメ王国が、悪の大魔王ダークネス率いる「テンジョイン軍団」に占領されてしまったのです。

さあ大変!ふたりはサオトメ王国を救い、姫を助けるため、サオトメ王国に向けて旅立つのでした。



万「……ちょっと待て。」

何スか?もう一人のナレーターのXYZ-ドラゴンキャノンさん。

万「題名といいストーリーといい、昔、似たようなゲームをやった事がある気がするんだが……」

……奇遇っスね。僕もっス。

万「……いいのか?」

脚本家曰く、「水に落ちてもカエルになったりはしないから大丈夫。」……だそうっス。

万「……そういう問題か?」



あとがき

いつの日か言っていた演劇編です。……多分結構短めなのが数話続くだけだと思いますけど……

あー、知っている人は知っていると思いますが、元ネタはゲームボーイの『かえるの為に鐘は鳴る』というソフトです。勇者物といったら、先ずこれが一番最初に頭に浮かんできました。面白いです。

……まぁ、これからのストーリーにこのゲームのストーリーを絡ませるかは正直微妙な線なのですが……というか絡ませたら何話書かなきゃならないんだろう……

あと、大変勝手ながら、これから更新ペースが大幅に遅くなる或いは暫く停滞してしまうと思います。……就活で。申し訳ありません。でも絶対打ち切ったりはしないので!したくないので!頑張ります!



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第一話 旅立ち 
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9766d1b6
Date: 2011/07/12 23:56
知らせを聞いたミサワは、早速国王サメジマの許しを得て、フーリンカザン王国の港から船に乗り込みました。

「おーいオレも乗せてってくれー」

と、ガッチャ王国の女王トメへと伝書鳩を飛ばしていたジューダイも乗り込もうとしました。

が、

「おっと、あなたが来る必要はないノーネ」

ドンッ

「うわ」

……と、国王の命令により、ミサワについていく事になった近衛隊長、『古代の機械騎士アンティーク・ギアナイト』のクロノスが、船に乗ろうとした彼を突き飛ばしました。

このクロノスは、フーリンカザン王国の近衛隊長である事をとても誇りにしており、そのせいか、友好的な関係のガッチャ王国の事も快く思ってない所がありました。それはジューダイに対しても例外ではありませんでした。

そして彼は、今回の事を自分たちだけで解決する事で、自分たちの方が格上である事を示そうとしていました。

「あ痛てて……なんだよオレも乗せてくれよ」

「……隊長、彼も乗せていってあげませんか」

「ニョホホホホ、駄目なノーネ。足手まといは願い下げなノーネ。カルツォーネ」

「しかし……」

「くどいノーネ、シニョールミサワ。隊長はワタクシなノーネ」

「……」

王国内ではクロノスの方が身分が高い為、ミサワもそれ以上文句は言えませんでした。

「では、出航なノーネ」

「あおい」

「……すまないジューダイ」

……こうして、ミサワ達を乗せた船は出航してしまいました。

「くっそークロノスの奴抜け駆けしやがって」

ガッチャ国に帰っていては時間がかかってしまう為、ジューダイは港で他に船がないかを探しました。

「 あった」

やがて、港の片隅に、一見、海賊船のような船が一隻見つかりました。

ジューダイは乗り込もうとしました。

が、

「他人ひとの船に勝手に乗るんじゃねぇ」

ドンッ

「うわぁ」

またしても、船から押し出されてしまいました。

「あ痛てて、またかよ、なんなんだよお前」

「俺はこの船の主にして世界一の大商人アナシスだっちゅーの」

と、ジューダイを追い出したのは、『強欲ゴブリン』のアナシスでした。



「アナシス役のあの神楽坂という男、本当に似ているな」万

……最近になって更にモノマネに磨きがかかってるみたいっス



「そう言うお前こそ、他人の商船に勝手に乗り込みやがって、何なんだっちゅーの」

「どう見ても海賊船じゃねーか。ま、いいや。頼むおっさんオレをサオトメ王国まで乗せてってくれ」

「おっさんじゃねぇアナシスだっちゅーの……まぁいい。で」

「『で』」

「いくら払うんだっちゅーの。まさかタダ乗りする気じゃねーだろうな」

「あ、あぁ、それなんだけど……」

「あ」

「オレ、ほとんど金持ってねぇんだけど……」

フーリンカザン王国とガッチャ王国は陸続きな為、ジューダイはほとんどお金を持ってきていませんでした。

「かー話になんねーっちゅーの」

「そこをなんとか頼む」

「ダメだダメだ」

と、アナシスは踵を返して船に戻ろうとしました。

「……ならこうしようぜ」

「あ」

「デュエルしようぜ。もし、オレが勝ったらサオトメ王国まで乗せてってくれよ」

「おいおい、それは虫の良い話過ぎるっちゅーの。お前は何も失う物がないじゃねーか」

「ああ、勿論、オレもこいつを賭けるぜ」

「そ、それは」

「ガッチャ王国に伝わる勇者の証、『ハネクリボー』のカードだぜ」



万「……また随分と貧弱な勇者の証だな」

まぁ、珍しいのは事実っスからね。



「くれそいつをくれっちゅーの」

「ああ、お前が勝てば、このカードをやる。どうだ」

「……そうかお前がガッチャ王国最強の勇者、ジューダイか」

「おうでどうする」

「勿論やるっちゅーのあの伝説の『ハネクリボー』のカード、売ればどれだけの価値があるかわからないっちゅーのそれにお前を倒せば名が上がって更に商売繁盛間違いなし一石二鳥だっちゅーの」

「よっしゃぁそう来なくっちゃな行くぞ」

「来いっちゅーの」

こうして、ジューダイはなんとかデュエルするところまで漕ぎ付ける事ができました。



「「デュエル」」

「俺の先攻ドロー『レインボー・フィッシュ』攻撃力1800を攻撃表示で召喚更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドだっちゅーの」

「オレのターンドロー魔法カード『融合』を発動手札の『E・HERO フェザーマン』と『E・HERO バーストレディ』を手札融合来い『E・HERO フレイム・ウィングマン』攻撃力2100」

『ハァ』

『フレイム・ウィングマン』は、ジューダイがデッキのエースと頼っているフェイバリットカードの中の一枚でした。

「『フレイム・ウィングマン』攻撃力2100で『レインボー・フィッシュ』攻撃力1800に攻撃『フレイム・シュート』」

「うげ」 敵残ライフ3700

『フレイム・ウィングマン』が炎を纏った跳び蹴りで、『レインボーフィッシュ』を粉砕しました。

「更に『フレイム・ウィングマン』の効果発動このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える『レインボー・フィッシュ』の攻撃力分、1800ポイントのダメージだぜ」

「うぎゃ〜」 アナシス残ライフ1900

「オレはリバースカードを1枚セットしてターンエンドだどうだ」

「な、なんの俺のターンドロー永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する墓地より『レインボー・フィッシュ』攻撃力1800を攻撃表示で特殊召喚するっちゅーの」

「おいおい、そいつじゃ『フレイムウィングマン』には勝てないぜ」

「そんな事はわかってるっちゅーの更に魔法カード『大波小波』を発動」

「『大波小波』」

「このカードは、自分フィールド上に表側表示で存在する水属性モンスターを全て破壊し、その後、破壊した数と同じ数まで手札から水属性モンスターを特殊召喚する事ができるっちゅーの俺のフィールドには水属性の『レインボーフィッシュ』が1体。これを破壊し、手札から『超古深海王シーラカンス』星7 攻撃力2800を攻撃表示で特殊召喚だっちゅーの」

「な、なんだよこの魚」

「こいつは太古の昔より生きてきた深海の王にして魚の王だっちゅーの更に『超古深海王シーラカンス』の効果を発動手札を1枚捨てる事により、1ターンに1度だけ、デッキから星4以下の魚族モンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する事ができるっちゅーの」

「何だって」

「俺は手札を1枚墓地に送り、デッキから『オイスターマイスター』星4 攻撃力16003体を攻撃表示で、『深海の大ウナギ』星1 守備力1001体を守備表示で特殊召喚するっちゅーの」

「くっ、何だよこの反則的な能力」

「いくっちゅーの『超古深海王シーラカンス』攻撃力2800で『フレイム・ウィングマン』攻撃力2100に攻撃『エンシェント・ウォーター・スパイラル』」

「くっ、リバースカードオープン罠カード『ドレインシールド』相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフを回復する『超古深海王シーラカンス』の攻撃を無効にし、その攻撃力分、2800ポイントライフを回復させる」

「甘いっちゅーの『超古深海王シーラカンス』の効果発動フィールド上に表側表示で存在するこのカードが魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった場合、自分フィールド上の魚族モンスター1体を生け贄に捧げる事でその効果を無効にし破壊するっちゅーの」

「何」

「俺のフィールドの『深海の大ウナギ』を生け贄に捧げ、『ドレイン・シールド』を無効化更に『深海の大ウナギ』の効果発動このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分フィールド上に表側表示で存在する全ての水属性モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで500ポイントアップするっちゅーの」

「水属性……って事は……」

「そう、水属性の『超古深海王シーラカンス』の攻撃力が更にアップだっちゅーのそして戦闘を再開『超古深海王シーラカンス』攻撃力2800→3300で『フレイムウィングマン』攻撃力2100を再び攻撃『エンシェント・ウォーター・スパイラル』」

「うわぁ」 ジューダイ残ライフ2800

『超古深海王シーラカンス』の放った強烈な水の奔流が、『フレイム・ウィングマン』を粉砕しました。

「そして、残りのモンスターで総攻撃」

「くっ」

……

…………

………………

「 攻撃してこねぇぞ」

「あれ……ああ、そうか『超古深海王シーラカンス』の効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃宣言をする事ができず、効果も無効化されるんだったちゅーの」

ズコージューダイはずっこけた。

「あのなぁ自分のカードの効果ぐらい把握しろよというか、さっき『深海の大ウナギ』の効果は発動されてたじゃねぇかよ」

「だははは、悪い悪い 。『深海の大ウナギ』の効果は永続的な効果じゃなくて『フィールドを離れて墓地に送られた後、新たに発動する効果』だから無効にならないんだっちゅーの。俺は更に、リバースカードを1枚セットしてターンエンドだっちゅーの」

「ったく、オレのターンドロー魔法カード『天使の施し』を発動デッキからカードを3枚ドローし、その後手札から2枚カードを捨てる更に今墓地に捨てた『E・HERO ネクロダークマン』の効果を発動このカードが墓地にある時、1度だけ、『E・HERO』と名のついたモンスター1体を生け贄なしで召喚する事ができる手札から『E・HERO エッジマン』星7 攻撃力2600を攻撃表示で召喚」

『フンッ』

「更に魔法カード『融合回収フュージョン・リカバリー』を発動自分の墓地に存在する『融合』魔法カード1枚と、『融合』に使用した融合素材モンスター1体を手札に加えるオレは『融合』と『バーストレディ』を手札に加え、更にこの『融合』を発動手札の『バーストレディ』と『E・HERO クレイマン』を手札融合来い『E・HERO ランパートガンナー』守備力2500」

『フッ』

「いくぜ『エッジマン』攻撃力2600で『オイスターマイスター』攻撃力1600に攻撃『パワー・エッジ・アタック』」

「ぐが」 アナシス残ライフ900

「更に、『ランパートガンナー』はこのカードが表側守備表示の場合、相手フィールド上にモンスターが存在しても、守備表示の状態のまま、攻撃力を半分にして相手プレイヤーを直接攻撃する事ができる『ランパートガンナー』攻撃力2000→1000のダイレクトアタック『ランパート・ショット』これでオレの勝ちだぜ」

「そうはさせんちゅーのリバースカードオープン罠カード『フィッシャー・チャージ』自分フィールド上に存在する魚族モンスター1体を生け贄に捧げる事により、フィールド上のカード1枚を破壊するっちゅーの俺のフィールドの2体の『オイスターマイスター』のうち1体を生け贄に捧げ、『ランパートガンナー』を破壊するっちゅーの」

「何うわ」

特攻してきた『オイスターマイスター』と『ランパートガンナー』が衝突し、消滅してしました。

「『フィッシャー・チャージ』の効果により、俺はデッキからカードを1枚ドロー。更に、『オイスターマイスター』の効果発動このカードが戦闘によって破壊される以外の方法でフィールド上から墓地へ送られた時、『オイスタートークン』1体を特殊召喚するっちゅーのこの効果も、『深海の大ウナギ』同様、『フィールドを離れて墓地に送られた後、新たに発動する効果』。よって、『超古深海王シーラカンス』の効果で無効化にはされないっちゅーの『オイスタートークン』守備力0を守備表示で特殊召喚するっちゅーのぐふふ、大儲けだっちゅーの。」

「くっ、今ので決めるつもりだったんだけどなぁ、ターンエンドだ」

「俺のターンドロー『超古深海王シーラカンス』の効果を再び発動手札からカードを1枚捨て、デッキから『深海の大ウナギ』星1 守備力1002体を特殊召喚」

「くっ、次から次へと出てきやがる……」

「まだまだこれで終わりじゃないっちゅーの更にそのうち1体の『深海の大ウナギ』を生け贄に捧げ、『ジェノサイドキングサーモン』星5 攻撃力2400を召喚」

「サ、サーモンって、シャケなのかこいつ」

「ぐふふ、こいつの卵はキャビアも越える高級品だっちゅーの」

「……いや、そんな禍々しい魚の卵を食いてぇとは思わねえから」

「ふん高級感がわからん若造め」



万「まぁ、奴はキャビアすら食った事なさそうだがな」

……また自分は何回も食べたことあるからって……



「いくぞ『深海の大ウナギ』がフィールド上から墓地へ送られた事により、再び自分フィールド上に表側表示で存在する全ての水属性モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで500ポイントアップするっちゅーの『超古深海王シーラカンス』攻撃力2800→3300で『エッジマン』攻撃力2600に攻撃『エンシェント・ウォーター・スパイラル』」

「ぐわぁぁ」 ジューダイ残ライフ2100

「これでもうお前のフィールドにカードはないっちゅーの『ジェノサイドキングサーモン』攻撃力2400→2900でトドメだっちゅーの『ジェノサイド・スプラッシュ』」

「くっ」

『ジェノサイドキングサーモン』が吐き出した水の奔流が、ジューダイに迫るこれをくらったら一巻の終わりです。



万「……寧ろそのままくらってしまえ」

……起承転結の起の部分で物語を終わらせる気っスか



「何」

『ジェノサイドキングサーモン』の放った水の奔流は、ジューダイの前に現れた障壁によって防がれました。

「ふぅ、あっぶねぇ、墓地の『ネクロ・ガードナー』の効果を発動自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事によって、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする」

「ネ、『ネクロ・ガードナー』そんなカードいつ墓地に」

「へへへ、さっきの『天使の施し』の効果で、『ネクロダークマン』と一緒に墓地に送っといたんだよ」

「ぐぐ、だがそれでも、お前のフィールド上のカードは0、更にお前の手札も0、これでこっちの勝ちはもう決定的だっちゅーのそして、伝説の『ハネクリボー』ももう俺の物だっちゅーのだっははははは」

「おっと、勝ち誇るのはまだ早いぜおっさん」

「おっさんじゃねぇアナシスだっちゅーのなんだまだ諦めねぇのか」

「当たり前だろデュエルは、デッキのカードの枚数だけ可能性があるんだ勝負は最後までわからないぜオレのターンドロー魔法カード『強欲な壺』を発動デッキからカードを2枚ドロー」

「ふん、この後に及んで多少手札を増やしても、俺のこの鉄壁の布陣を破れるものかっちゅーの」

「へへ、そうでもないぜ」

「何」

「魔法カード『O−オーバーソウル』を発動自分の墓地から『E・HERO』と名のついた通常モンスター1体を自分フィールド上に



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第二話 仲間
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9766d1b6
Date: 2011/07/13 00:02
さて、ジューダイは漸くサオトメ王国の港町に着きました。

「やっと着いたぜ。……それにしても、随分荒んだ港町だな」

と、一人の男が話し掛けて来ました。

「おぉ!またしても救いの手が!あなたはあの勇者ジューダイ様!」

「え?あ、あぁ、そうだけど?」

「おーい!皆の衆!勇者様がいらっしゃったぞ〜!」

と、男は町へと走って行きました。

「へぇ、オレってこんな有名人だったんだなぁ……」

町に入ると、人々がジューダイの下に集まってきました。

「えらい事だえらい事だ」

「勇者サマ!我々の話を聞いて下さいませ!」

「サオトメ王国のレイ姫サマの御力で、我々は平和に暮らしておりました」

「そこへ、突然『テンジョーイン軍団』の奴らが上陸して来て、この町にあった全てのモノを奪い去ってしまったのです!」

「だからこんなに寂れていたのか……」

「その上、奴らはサオトメ城に攻めかかり、ついに城を占領してしまいました。姫サマは今も城の奥に囚われの身……」

「そうなのか、噂は本当だったんだな」

「どうかレイ姫サマをお救い下さい!」

「おう!任しとけ!必ず助け出してやるさ!」

「おぉ、頼もしや!御無事をお祈りします!」

やがて、人々は去って行きました。

「へへへ、オレって期待されてるんだなぁ」

すると、さっきとは違う人々がジューダイの下に集まってきました。

「おーっ!勇者ジューダイサマだ!噂通り立派な勇者サマだ」

「ホント。このお方なら『テンジョーイン軍団』なんてイチコロね!」

「きっとこの国に平和を取り戻して下さるに違いない!」

「は、はははは。そうか?やっぱりオレって超有名人?ははははは……」

「……やっぱりクロノス様の仰った通りだな」

「はは……!?クロノスだって!?」

「あ……」

「おい、クロノスがなんて言ってたんだよ」

「はぁ……もしここにまた勇者が来たら、その勇者は……『おだてに乗りやすい単純な奴なノーネ。』……と」

「なにーっ!?」

ジューダイの大声に、人々は蜘蛛の子を散らすように逃げて行きました。

「くっそー!クロノスの奴!またオレの悪口言いやがって!」



万「間違ってはいないがな」

……反論のしようがないっス。



「あ、あの……」

と、怒り狂っているジューダイに、一人の少年が話し掛けてきました。

「なんだよ?」

「俺、オハラっていいます。ミサワ様からあなたへの手紙を預かっています」

「ミサワからの?でもなんでお前が?」

「今回の兵士達の中に、俺の親友のオオハラって奴がいて、そいつ経由で、預かってくれと頼まれました」

「そうなのか、サンキューな」

「はい!勇者サマ、どうかこの国をお願いします!」

「おう!任せとけ!」



「さてと、なになに?」

ジューダイは手紙を読み始めました。

『ジューダイ、まずは抜け駆けみたいな事になってしまってすまない。謝まる。俺はなんとかクロノス隊長を説得し、サオトメ城への東西2つの道のうち東の道をとる事にした。こっちの方が多少遠回りだ。お前は西周りの道をとるといい。追いついて来いジューダイ。追伸、姫を助け出した方を57勝目獲得としようじゃないか』

「……成る程、競争って訳だな!燃えてきたぜ!」

こうして、港町をやる気満々で出発したジューダイ。

……でも、彼には弱点がありました。それは……

「……サオトメ城ってどっちだあぁぁぁぁ!!?」

……致命的に方向音痴な事でした。

「はぁ、港町で地図を買っとくべきだったぜ……」

彼は早速、港町を出た後に差し掛かった森の中で道に迷ってしまいました。

「……まぁ、2〜3日も歩けば、そのうち村か町にでも着くだろ」

その時に道を教えて貰えばいいとジューダイは開き直り、森の中を歩き出しました。



そして、4日が経ちました。

グゥ〜〜

「……腹減ったぁ……」

町は一向に見えて来ません。

手持ちの食料も底を着き、もうフラフラです。

と、歩いていると、森を抜けて高台に出ました。

そこからは……

「うわぁ……でけぇ……」

とても大きな岩山が見えました。そして……

「町だ!はぁ、助かったぜ……」

岩山の麓に町が見えました。

ジューダイは喜んで町へ向かいました。



ところが、町にはいまいち活気がありません。町の人々は、まるで何かに怯えているようでした。

「ここも『テンジョーイン軍団』の被害にあっているのか?」

そう思ったジューダイは、一晩宿屋で休んだ後、町長に会ってみました。

「お待たせしました勇者殿。この町の町長のカグラザカと申します」

と、現れたのは『厳格な老魔術師』のカグラザカさんでした。



万「……着替えるのが早いな」

ジャスト1分で終わってたっス。



ジューダイは自己紹介と自分の旅の目的を話した後、聞いてみました。

「なぁ町長さん?なんでこの町、こんな沈んじまってんだ?」

「それが、最近あの岩山の頂きに3体のモンスターが住み着いて、決まった期間に、食料などを貢ぎ物として要求してくるのです。」

「貢ぎ物だって?」

「ええ。幸い、貢ぎ物の量はそこまで多い訳ではないのですが、何分好戦的な奴らで、以前、町の腕自慢が退治しに向かったのですが、ほうほうの体で帰ってくる始末。奴らがいつ町に襲い掛かってくるのか、皆戦々恐々としているのです」

「成る程な。なぁ、そいつらって、やっぱりあの『テンジョーイン軍団』の奴らなのか?」

「……さぁ?何分最近になって急に現れたので、我々も詳しい事は……しかし、もしそうだとしたら大変な事に……はぁ……」

「ふ〜ん、じゃあさ、オレが退治して来てやるよ」

「……は?」

「なに、『寄りかかった笛』ってヤツさ。じゃ、早速行ってくるぜ」

「あ!ちょっと待って下され……!」

こうして、正義感は強いけどそそっかしいジューダイは、相手がどんなモンスターなのかも聞かず、飛び出してしまいた。



「……と言うか何だ?『寄りかかった笛』って」

……多分、『乗りかかった船』の事っス。

「……バカだな」



さて、ジューダイは岩山の山道を登り、全体の半分辺りまで来ました。

「ふぃ〜、それにしても高っけぇなぁ……」

見下ろして見ると、さっきまで居た町が大分小さく見えました。

「この先に、『テンジョーイン軍団』の奴らが居るのか……」

「失礼ね」

「わたくし達をあんな方々と一緒にしないで下さいませ」

「何!?」

慌てて辺りを見渡しますが、狭い山道には勿論、誰も居ません。

と、ジューダイはある音に気付きました。

バサバサ、バサバサ……

まさしくそれは羽音でした。

それに気付いたジューダイが上を向くと……

「アタシ達の縄張りに無断で入ってくるなんて……」

「いい度胸ですわね」

二人の『ハーピィ・レディ』が居ました。

「お前ら……」

「ふふふ、コイツどうする?」

「そうですわね。ただ追い払うのも面白くないですし……」

「……ウチまで連れて行っちゃう?」

「そうですわね。あそこなら……」

「「煮るも焼くも思いのまま」」

「お、おい!?うわぁぁ!?」

と、二人はジューダイの両腕をそれぞれ掴み、飛び上がりました。

「は、放せ!」

「あら、いいんですの?」

「ここで放したら、地面まで真っ逆さまよ?」

「うわあぁぁぁぁ……」

ジューダイはハーピィ達に連れ去られてしまいました。



万「おおジューダイ、しんでしまうとはなさけない」

……まだ死んでないっスてば。



さて、ジューダイは岩山の頂きにある洞窟まで連れて来られました。

「お姉さまー!」

「不審者を拘束して参りましたわ−!」

「誰が不審者だ誰が!」

「どうしたの?騒々しいわね」

と、洞窟の奥からリーダー格であろうハーピィ・レディが……




万「こらぁ!表現が足りん!あの美しさをもっとちゃんと説明しろ!」

……えーと、リーダー格である、知的で凛々しいハーピィ・レディが現れました。

万「甘い!こうだ!知的で凛々しくて、例えるなら一面の草原に咲く一輪の花のように、派手さはないがそれでいて……」




「この男が……」

「わたくし達の縄張りに侵入して来たんですの」

「お前達だな!町から貢ぎ物を搾り取っている奴らは!」

「……成る程、それで私達を追い払いに来たって訳ね」



万「シカトか!?」

……だから、ナレーター側からの干渉は駄目っスよ。



「町の皆が困ってんだ!貢ぎ物を納めさせるなんて事は止めろよ!」

「この……!」

「ご自分の今の状況がわかっていまして?」

「止めなさい」

「「!」」

怒った二人が襲い掛かろうとしましたが、リーダーの静止の一声で止まりました。

「……あなたはあの町の者じゃないのでしょう?あなたには関係のない事よ」

「そ、それはそうだけどよ、でも、困っている人達を見捨ててなんておけるかってんだよ!」

「そう……ジュンコ、モモエ、下がってなさい」

「「お姉さま!?」」

「さぁ、構えなさい」

と、ハーピィ・レディが構えたのはデュエルディスク。

「あなたが勝ったら、殺すなりあの町に引き渡すなり、好きにしていいわ。その代わり、あなたが負けたら、その命の保障はないわよ?」

「……いいぜ。それで」

同じく、ジューダイもデュエルディスクを構えました。



「「デュエル!!」」

「私の先攻、ドロー!私は『バード・フェイス』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド」

「オレのターン!ドロー!『E・HERO バブルマン』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!『バブルマン』が召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる!更に装備魔法『バブル・ショット』を『バブルマン』に装備!攻撃力800ポイントアップ!(攻撃力800→1600)いくぜ!『バード・フェイス』(攻撃力1600)に攻撃!」

「相打ち狙いですって!?」

「いっけぇ!『バブル・ショット』!」

「迎え撃ちなさい!『ウィンドカッター』!」

水の奔流と、風の刃がぶつかり合いました。

「!?……なぜ『バード・フェイス』だけが……!?」

ハーピィ・レディの言う通り、相打ちだった筈の2体のうち、破壊されたのは『バード・フェイス』だけでした。

「へへへ、装備魔法『バブル・ショット』の効果発動!装備モンスターが戦闘で破壊される場合、代わりにこのカードを破壊し、装備モンスターのコントローラーへの戦闘ダメージを0にする!この効果により、オレの『バブルマン』(攻撃力1600→800)は戦闘破壊を免れたぜ」

「くっ、ならば私も、『バード・フェイス』の効果を発動!このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから『ハーピィ・レディ』を1枚手札に加える事ができる。 私はデッキから、『ハーピィ・レディ1』を手札に加えるわ」

「あれ?なんかちょっとカードの名前違くねぇか?」

「このカードのカード名は、『ハーピィ・レディ』としても扱うのよ」

「へー、面白いカードだな。オレは更にカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動。デッキからカードを更に2枚ドロー!そして私自身、『ハーピィ・レディ1』(風属性 攻撃力1300)を攻撃表示で召喚!」

『フッ!』

「このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上の風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップする!そして、『ハーピィ・レディ1』自身も風属性。攻撃力300ポイントアップ!『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300→1600)で『E・HERO バブルマン』(攻撃力800)を攻撃!『スクラッチ・クラッシュ』!」

「ぐ……!?」 ジューダイ残ライフ3200

『ハーピィ・レディ1』の鋭い爪に、『バブルマン』は切り裂かれてしまいました。


「くっ、罠カード発動!『ヒーロー・シグナル』!自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動!自分の手札またはデッキから『E・HERO』という名のついた星4以下のモンスター1体を特殊召喚する!デッキから『E・HERO フェザーマン』(星3 守備力1000)を守備表示で特殊召喚!来い!『フェザーマン』!」

『ハッ!』

「……私は更に、カードを1枚セットしてターンエンドよ」

「オレのターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!……よし!そっちがエースモンスターで来るなら、こっちもエースモンスターだ!魔法カード『融合』を発動!『フェザーマン』と、手札の『E・HERO バーストレディ』を融合!現れろ!『E・HERO フレイム・ウィングマン』!(攻撃力2100)」

『ハァ!』

「そして、『フレイム・ウィングマン』も風属性。お前の『ハーピィ・レディ1』の効果で、攻撃力アップだぜ!(攻撃力2100→2400)いくぜ!『フレイム・ウィングマン』(攻撃力2400)で『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)に攻撃!」

『フレイム・ウィングマン』は戦闘によって破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える能力があります。この攻撃が通れば大ダメージです。

……しかし……

「罠カード発動!『モンスターレリーフ』!」

「何!?」

「このカードは相手モンスターの攻撃宣言時に発動、自分フィールド上に存在するモンスター1体を手札に戻し、その後手札から星4のモンスター1体を特殊召喚する!フィールドの『ハーピィ・レディ1』を手札に戻し、手札から『ハーピィ・レディ2』(攻撃力1300)を攻撃表示で特殊召喚!」

『フフ……』

「ジュンコ、あなたの力、借りるわ!」

「勿論ですお姉さま!」

「『ハーピィ・レディ』を戻して、違う『ハーピィ・レディ』を召喚した?」

「勿論、これだけじゃないわ。更に、速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!このカードは、相手フィールド上に表側表示モンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動。その特殊召喚したモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する!」

「何!?」

「覚えているでしょう?今手札に戻した『ハーピィ・レディ1』のカード名は『ハーピィ・レディ』としても扱う事を」

「! まさか!?」

「そう、それと同様に、今私のフィールドに出ている『ハーピィ・レディ2』、そして私のデッキにある『ハーピィ・レディ3』もカード名を『ハーピィ・レディ』として扱う事ができるのよ!」

「何だって!?……って事は……」

「私は手札とデッキから、『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)と『ハーピィ・レディ3』(攻撃力1300)をそれぞれ攻撃表示で特殊召喚!モモエ!あなたの力も貸して頂戴!」

「御随意のままに。お姉さま」

『『『ウフフフフ……』』』

これはピンチ、敵のフィールドに『ハーピィ・レディ1・2・3』の三姉妹が揃ってしまいました。『ハーピィ・レディ』達は、単体ではそれほどの能力は持っていませんが、仲間とのコンビネーションは恐ろしく強力なのです。

「『地獄の暴走召喚』の効果で、あなたは自分のフィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名カードを自分の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する。けれど、あなたのフィールドに存在するのは融合モンスター『フレイム・ウィングマン』だけ。『地獄の暴走召喚』で融合モンスターを融合デッキから特殊召喚する事はできないわ」

「くっ、でも、まだ『フレイム・ウィングマン』の攻撃力の方が上だ!巻き戻された戦闘を続行!『フレイム・ウィングマン』(攻撃力2100→2400)で『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300→1600)を攻撃!『フレイム・シュート』!」

炎を纏った『フレイム・ウィングマン』が、『ハーピィ・レディ』を打倒すべく高く飛び上がりました。

しかし……

「罠カード発動!『ハーピィ・レディ-朱雀の陣-』!」

「何!?」

『ハーピィ・レディ』達3体も陣を組み、紅い炎の鳳と化してこれを迎え撃ちました。

両者はぶつかり合い、互いに弾き飛ばされてしまいました。

「『ハーピィ・レディ-朱雀の陣-』は、自分のフィールド上に表側表示で『ハーピィ・レディ』が2体以上存在している時に発動可能。このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、このターン自分モンスターは戦闘では破壊されない!」

「くっ、オレは更にリバースカードを2枚セットしてターンエンドだ」

「私のターン!ドロー!」

「……なぁ、なんでお前達こんな事してるんだよ?」

「? どういう意味?」

「いや、お前達がこんな盗賊じみた事するような奴らとは思えねーんだよなぁ……なんとなくだけどよ」

「と、盗賊ですって!?」

「人聞きの悪いこと仰らないで下さいませ!」

「……いや、どこからどう見ても盗賊じみてると思うぞ?」

「……さっきも言った筈よ。あなたには関係の無い事よ」

「でもよ……!」

「どうしても知りたいなら、私を倒してからにしなさい!私は手札から『暴風小僧』を(攻撃力1500)を攻撃表示で召喚!更に魔法カード『二重召喚(デュアルサモン)』を発動!このターン、私は通常召喚を2回まで行う事ができる!この『暴風小僧』を生け贄に、私は新たなモンスターを生け贄召喚するわ!」

「くっ、上級モンスターかよ……」

「いいえ、更にその上よ」

「何!?」

「『暴風小僧』は風属性のモンスターを生け贄召喚する場合、このモンスター1体で2体分の生け贄とする事が出来るのよ」

「生け贄が2体……って事は最上級モンスターって事か!?」

「私は『暴風小僧』を生け贄に、『ハーピィズペット竜(ドラゴン)』(星7 風属性 攻撃力2000)を攻撃表示で召喚!」

ビュオオォォ……

「うっ……」

『暴風小僧』が生け贄となった瞬間、暴風が洞窟内を吹き荒れました。

目を凝らして見てみると、やがて風が渦を作り出し、その渦から……

『グルルルルル……』

唸り声をあげながら、首に鎖を繋がれた赤い竜が姿を現しました。

「このモンスターこそ、私達ハーピィ・レディがほこる最強の僕、『ハーピィズペット竜』。『ハーピィズペット竜』の攻撃力は、フィールド上のフィールド上の表になっている『ハーピィ・レディ』1体につき攻撃力・守備力が300ポイントアップする。(攻撃力2000→2900)更に、風属性の為、『ハーピィ・レディ1』の効果で、更に攻撃力は300ポイントアップするわ(攻撃力2900→3200)」

「攻撃力3200だって!?」

「『ハーピィズペット竜』(攻撃力3200)で『フレイムウィングマン』(攻撃力2400)に攻撃!『セイント・ファイアー・ギガ』!」

「ぐあぁぁぁ!」 ジューダイ残ライフ2400

さしもの『フレイム・ウィングマン』も、『ハーピィ・レディ』達の力を得た『ハーピィズペット竜』には敵わず、その炎で焼き尽くされてしまいました。

「……さあ、覚悟はいい?私のフィールドには、攻撃力1600(1300+300)の『ハーピィ・レディ』が3体。一斉攻撃で終わりよ!」

「くっ……」

「『ハーピィ・レディ』3体(1600×3)のダイレクトアタック!『トライアングル・x(エクスタシー)・スパーク』!」

「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

『ハーピィ・レディ』達の合体攻撃に、ジューダイは吹き飛ばされてしまいました。

「やりましたわお姉さま!」

「これで私たちの勝ち……」

「く……うぅ……」 ジューダイ残ライフ200

「「「な!?」」」

倒れていたジューダイが、辛うじて起き上がって来ました。

「どうしてまだライフが!?」

「痛てて、危なかったぜ。罠カード『ヒーロースピリッツ』を発動させていたのさ。このカードは、自分フィールド上の『E・HERO』と名のついたモンスターが戦闘によって破壊された場合、そのターンのバトルフェイズ中に発動する事ができる。相手モンスター1体からの戦闘ダメージを0にする。このカードで、『ハーピィ・レディ1』からのダメージを0にしたのさ!」

「それでも、『ハーピィ・レディ2』と『ハーピィ・レディ3』の攻撃力を合わせて、ダメージは3200(1600×2)!あなたのライフはそれで0の筈!」

「へへ……」

「! それは……!」

『ハーピィ・レディ』達の合体攻撃によって舞い上がった砂埃が晴れ、ジューダイが発動させていたもう1枚のカードが現れました。

「速攻魔法『非常食』!このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。墓地へ送ったカード1枚につき、自分はライフポイントを1000回復する。オレはこのカードで、効果が成立された後の『ヒーロースピリッツ』を墓地に送って、ライフポイントを回復させていたのさ!」

「くっ……」

「なんてしぶといの」

「ゴキブリ並みの生命力ですわ」

「ゴ、ゴキブリって……」



万「はっはっは、ゴキブリとは言い得て妙だな」

だーかーらー、ナレーターが勇者を貶してどうするんスか。



「……でも、これであなたのライフは残り僅か、対して私はまだ無傷。あなたのフィールド上にカードは無い。もう勝てる要素は……」

「勝負は最後の最後までわからないぜ!」

「!? まだ諦めないつもりなの!?」

「当たり前だろ!?このデュエルには、町の皆の平和がかかっているんだからな。それに……」

「?」

「お前みたいな強い奴とデュエルするのはワクワクするからな!こんな楽しいデュエル、諦めるには勿体無さ過ぎるぜ!」

「な!?」

「いくぜ!オレのターン!ドロー!……よし!魔法カード『融合』を発動!」

「!? この土壇場で、また『融合』を引き当てたと言うの!?」

「オレは手札の『E・HERO ワイルドマン』と『E・HERO エッジマン』を手札融合!現れろ!『E・HERO ワイルドジャギーマン』(攻撃力2600)!」

『トァッ!』

「くっ……でも攻撃力は『ハーピィズペット竜』(攻撃力3200)の方が上よ!」

「『ワイルドジャギーマン』は、相手フィールド上のモンスター全てに、1回ずつ攻撃できるのさ!」

「何ですって!?……! まさか!?」

「『ワイルドジャギーマン』で、『ハーピィ・レディ1』、『ハーピィ・レディ2』、『ハーピィ・レディ3』に攻撃!『インフィニティ・エッジ・スライサー』三連斬!」

『ワイルドジャギーマン』(攻撃力2600)はまず、『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)を剣で一刀両断にした後、その効果が無くなり、攻撃力の下がった残り2体(攻撃力1600→1300)も同様に粉砕しました。

「くっ……そ、そんな、私達が一気に!?」 ハーピィ残ライフ400

「これで、お前の『ハーピィズペット竜』の攻撃力は元々の2000に下がったぜ!」

「くっ……」

「とどめだ!『ワイルドジャギーマン』で『ハーピィズペット竜』を攻げ……」

シュカカカ!

「何!?」

将にとどめを刺そうとしたその時、無数の羽根が『ワイルドジャギーマン』に刺さり、『ワイルドジャギーマン』の動きが止められてしまいました。

「その羽根針には麻痺性の毒があるのよ。『ハーピィ・レディ3』には、このカードと戦闘を行った相手モンスターの攻撃を、この羽根針で2ターンの間封じる能力があるのよ。残念だったわね」

「……へへへ、そうでもないぜ!」

「え……」

「速攻魔法『融合解除』を発動!」

「な!?」

「『ワイルドジャギーマン』の融合を解除!このカードを融合デッキに戻し、墓地から、その融合素材となった『エッジマン』(攻撃力2600)と『ワイルドマン』(攻撃力1500)を攻撃表示で特殊召喚!こいつらには、羽根針の毒の影響は無いぜ!」

「そ、そんな……」

「今度こそとどめだ!『エッジマン』(攻撃力2600)で『ハーピィズペット竜』(攻撃力2000)を攻撃!『パワー・エッジ・アタック』!」

「ああああ!?」 ハーピィ残ライフ0

「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」



「うぅ……」

「お姉さま!」

「大丈夫でございますか!?」

「ええ……ごめんなさい。あなた達の為にも負けられない勝負だったのに……」

「何をおっしゃるんですかお姉さま!」

「そうですよ!」

「……なぁ、ちょっといいか?」

「! この!」

「よくもお姉さまを!」

「やめなさい二人共」

「「でも……!」」

「負けは負けよ。約束通り、私を殺すなり、町に引き渡すなり好きにして頂戴。……その代わり、二人は見逃して」

「「お姉さま!?」」

「約束の中に、あの二人の事は含まれていなかった筈よ。あれはあくまで、私一人との約束。……勿論、二人にはここを立ち去らせるわ。だからお願い」


万「うぅ、なんて健気なんだ!」

……ナレーターが感動して泣いてどうするんスか……



「駄目ですお姉さま!」

「わたくし達姉妹は、生きる時も死ぬ時も一緒ですわ!」

「いや、『そっちの方』の約束じゃなくてよ」

「「「え?」」」

「ほら言ってたじゃねぇかよ、『こっちが勝ったら事情を説明する』ってよ、聞かせてくれよ。その事情ってやつを」

「「「……」」」



「私たち『ハーピィ』の集落は、元々サオトメ城の近くにあったの。でもこの間、サオトメ城が『テンジョーイン軍団』に乗っ取られて、私たちの集落も襲撃を受けて……私たち以外、皆殺されてしまったの」

「アイツら卑怯なのよ!」

「そうですわ!数に物を言わせて!」

「そんなに大軍勢なのか?」

「……ええ、大半が雑魚ばかりなんだけど、あの軍勢の規模は尋常では無かったわ」

「それでここまで逃げて来たってことか。……でもなんでこんな事をしてるんだよ?あの町にでも住まさせて貰えばよかったじゃねえのか?」

「……今、どこの町でも『テンジョーイン軍団』のせいで戦々恐々としているわ。もし、仲間とでも思われたら……」

「そうだったのか。……よし、わかった!」

「「「?」」」

「オレが町長さんに話をつけてやるよ」

「「「は?」」」



「……という訳なんだよ町長さん!頼む!こいつらをこの町に住ませてやってくれよ!この通り!」

「うむむ、そうは言われましてもな……」

三人を連れて帰ったジューダイは、早速町長の所に向かい、簡潔に説明した後、そう頼み込みました。

「……事情はわかりました。ですが、町の者が、彼女らが本当に『テンジョーイン軍団』でないということを信じるかどうか……」

「そこを納得させられるのが町長さんだろ?頼む!この通り!」

「「「お願いします」」」

「……わかりました、何とか皆を説得してみましょう」

「「「「本当か(ですか・ですの)!?」」」」

「ほっほっほ……この問題を解決して下さった勇者様の頼みを、断る訳にもいきますまい」

「「やったー!」」

「これでベッドで眠れますわ!」

「もう藁の寝床で寝ないで済むのね!」

二人の妹、ジュンコとトモエは抱き合って喜びあいました。

「良かったじゃねぇか、なんとか住めそうだぜ?」

「……ええ」



その翌日、町長とジューダイとハーピィ達は各家を周り、事情の説明と謝罪をしました。

彼女達は、自分たちが生きるために必要最低限な分しか貢ぎ物として要求していなかったので、最初は不満気だった人々も納得してくれました。

こうして、彼女達はこの町に住める事となりました。

ジューダイは町の人々が今回の事で出来る限りの報酬を出したいと言うと……

「あー、じゃあ悪ぃけど、この国の地図くんねぇか?また迷ったりしたら困るしさ」

と言って、皆を笑わせました。



そして、いよいよ出発しようという時……

「あれ?」

町を出たところに、あのリーダー格のハーピィ・レディが居ました。

「来たわね」

「来たわねって……何してるんだ?」

「私も付いて行くわ」

「……は?」

「私も付いて行くって言ってるの。あなたが『テンジョーイン軍団』を倒すのに力を貸す事ぐらいしか、私があなたへの借りを返す事は出来ないから……」

「いや、借りって言われてもよ……そりゃあ、お前強いから心強いけどよ……」

「なら問題無いでしょう?……それに、『テンジョーイン軍団』は私にとっても敵よ」

「そう言えばお前達の集落って……」

「……」

「わ、悪ぃ!……そうか、そういうことなら宜しく頼むぜ。えーと……」

「……アスカ」

「おう、宜しく頼むぜアスカ!」

「ええ、こちらこそ」



こうして、ジューダイは心強い仲間、『ハーピィ・レディ』のアスカを仲間にし、再びサオトメ城への道を急ぐのでありました。

万「ぐぐ、おのれ十代!天上院君と握手するとは!」

はいそこ!密かに中の人の名前言うの禁止!



今日のワイト

和「今日紹介するのも、アニメオリジナルの罠カード『ハーピィ・レディ−朱雀の陣−』、自分のフィールド上に表側表示で『ハーピィ・レディ』が2体以上存在している時に発動可能。このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、このターン自分モンスターは戦闘では破壊されない。……要は発動するのに制限がある『和睦の使者』といったところですね。因みにアニメのドーマ編で舞さんが使っていました」

3ワイト「「「……」」」

和「?なに『ハーピィ・レディ3姉妹』に影響受けてポーズとってるの……ってその構えは!?

黄金聖○士が三位一体となって放つこの技は、究極まで高めたゴールドの攻撃的小宇宙が一点に集中するため、その破壊力は小規模ながら宇宙創造のビッグ・バンにも匹敵する……ゆえに、そのあまりにすさまじい破壊力のため、神話の時代よりア○ナに禁じられた究極の影の闘法……アテ○エクスクラメーション!

って解説してる場合じゃなくて!」

3ワイト「「「……」」」

和「しかもぶっ放す気満々!?なぜに!?」

3ワイト「「「……」」」

和「へ?相変わらず出番がないから憂さ晴らしに……って、憂さ晴らしにそんな物騒なことするな……うぎゃー!?」


あとがき

なんとか頭の部分はまだ『カエル』っぽくできた……これからは独自路線です。

……因みに、岩山で『ハーピィ』に襲われるのはGBAの『ブレス・オブ・ファイア2』をビミョーにモチーフにしていたり……因みに筆者はニーナよりもリンプー派(どうでも良

それでは、また次回



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第三話 仲間2
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9766d1b6
Date: 2011/07/13 00:03
さて、『ハーピィ・レディ』のアスカを仲間に加えたジューダイは、サオトメ城へ向けて森の中を進んでいました。

「ふぅ、もう大分城の近くまで来たんじゃねぇのか?」

「そうね、あと数日も歩けば着くとは思うわ。急ぎましょう」

と、二人が歩くスピードを上げようとしたその時でした。

ガサガサガサ……

「「!?」」

辺りから物音が聞こえました。そして……

ガサガサ、ボコッボコッ。

「うわ!?」

「まずい、囲まれたわ!」

茂みや地中から突如現れてきたアンデット族モンスター逹に囲まれてしまいました。

「こいつら、テンジョーイン軍団の奴らか!?」

「多分。私達の集落を襲った奴らとは違うから確信は持てないけど」

「……アスカ、お前は飛んで逃げろ。こいつらはオレが引き付ける」

「ば、馬鹿言わないで!まだ助けて貰った恩も返してないのに、そんな事出来る訳無いでしょう!?私が活路を開くから、あなたはその隙に……」

「ふざけんな!こういう時は男が敵を食い止めるのが普通だろ!」

「な!?……女の私なんかじゃあてにならないって言うの!?」

「だー!そーいうんじゃねーよ!いいから逃げろってこの分からず屋!」

「分からず屋はどっちよ!」

「「……!」」

と、二人が言い争いをしている合間にもモンスター達は迫って来ていました。



万「……おのれ十代め!天上院君に向かって分からず屋だと!?万死に値する!」

……何処ぞのガ○ダムマイスターっスか君は?



そして、今にも二人に飛び掛かろうとしたその時……

「えーい!『黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)』!」

ズカーン!

『!?』

「「え……」」

囲みの一角が吹き飛ばされました。そして、その先には……

「今のうちだよ!早くこっちへ!」

とーーーーーーーーっても!もんの凄く!可愛い女の子がそこには居ました!

万「誇大表現のし過ぎだ」

自分だってしてたでしょ!

「お前は?」

「話は後!取り敢えず逃げるよ!」

「ジューダイ!今は彼女の言う通りよ!」

「お、おう!」

二人は何とか囲みを脱出し、その女の子と一緒に逃げ出しました。



「……まずいわ、あいつら追いかけて来てる」

「大丈夫。とにかく私の家まで逃げれれば問題無いよ。ほら、見えてきた」

果たして、彼らの向かう先の森が開けた場所に、1つの小屋が見えました。

「お、おい。奴らを連れ来んじまって大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫」

三人は小屋の近くまで逃げ込みました。

「ここまで来れば大丈夫だよ」

「だ、大丈夫って言われてもよ……」

そして、追いかけて来たモンスター達も小屋に近付こうとしました……が、

バチッ!!

『!?』

「うわ!?」

まるで見えない壁がそこにあるかのように、森と開けた場所との境目で弾かれてしまいました。

「この家の周りには強力な結界が張ってあるから、邪悪なモンスターは入って来れないんだよ」

「凄ぇ……」

やがてモンスター達は諦めて去って行きました。

「た、助かったぁ……ありがとうな、助けてくれて」

「ううん、困っている人を助けるのは当然だよ」

「オレはジューダイ、こっちは『ハーピィ・レディ』のアスカだ」

「宜しく」

「うん、宜しくー。私はマナ。またの名を『ブラック・マジシャン・ガール』っていいます」

「『ブラック・マジシャン・ガール』?」

「? 知ってるのかアスカ?」

「いいえ、でも良く似た名前は聞いたことがあるわ。あなたも聞いた事が無い?最強と謳われた、伝説の魔術師の名前を」

「……そう言えば、10年前に現れた邪悪なモンスターを倒したっていう……確か名前は……」

「『ブラック・マジシャン』?うん、私はその弟子だよ。……とは言っても、まだまだ半人前なんだけど。……さて、自己紹介も終わった事だし、立ち話もなんだから、家に入ってよ」

「いいのか?」

「大歓迎だよ」



……羨ましいっス。

万「ナレーターが個人的な感想を入れるな」

だから自分だってさっきしてたでしょ!

万「喧しい!」



「それにしてもびっくりしちゃったよ。薬草を摘んでいたら二人がテンジョーイン軍団のモンスター達に囲まれていたんだもん。ここらはもうあいつらがウヨウヨ居るから危ないよ?」

「……やっぱりあいつらはテンジョーイン軍団の奴らだったのか」

「それだけ、サオトメ城の近くまで来ているという事よ」

「……君達はダークネスを倒そうとしてるの?」

「まぁな。……そうだ、お前の師匠の力とかって借りれないか?」

「確かに、それが出来れば心強いわね」

「お、お師匠サマはその……数年前に、10年前の戦いの傷が原因で……」

「そ、そうなのか……悪い」

「……ごめんなさい」

「ううん、気にしないで。そうだ、じゃあ私が代わりに行くよ!」

「お前が?」

「……確かに、さっきの囲みを破った魔法を見た限りでは戦力になりそうだけど……」

「むー、私の腕を信用してないでしょう?」

「い、いや、そういう訳じゃないけどよ」

「よーし!それじゃデュエルしよう!お師匠サマ直伝の腕前を見せてあげるんだから!」

「ちょ、ちょっと!そんな時間の無駄になるような事……」

「おー!いいぜいいぜ!やろうぜ!」

「ちょ、ちょっとジューダイ!」

「まぁいいじゃんかよ。本当に強いかもしんないしさ」

「……本心は?」

「伝説の魔術師直伝の奴とデュエルしてみてぇ!」

「……そう」

アスカは何やら諦めた表情で溜め息をつきました。



「準備はいい?」

「いつでもいいぜ!」

「「デュエル!!」」

「私の先攻!ドロー!私は『マジシャンズ・ヴァルキリア』(守備力1800)を守備表示で召喚!更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

『ふっ!』

「いくぜ!オレのターン!ドロー!『E・HERO スパークマン』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!」

『ハッ!』

「更に魔法カード『H−ヒートハート』を発動!自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動!選択したモンスターの攻撃力は発動ターンのエンドフェイスまで500ポイントアップする!更に、そのカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える!『スパークマン』(攻撃力1600+500)で『マジシャンズ・ヴァルキリア』(守備力1800)を攻撃!『スパークフラッシュ』!」

『ハァ!』

「くぅぅ……」 マナ残ライフ3700



……スパークマンの攻撃がマジシャンズ・ヴァルキュリアを撃破……

万「えぇい!声が小さい!ナレーターが客に聞こえないように話してどうする!」

……『スパークマン』の放った電撃が『マジシャンズ・ヴァルキリア』を撃破しました。



「よっしゃぁ!」

「やるねー。うーん、面白くなって来たー!罠カード『ブロークン・ブロッカー』を発動!自分フィールド上に存在する攻撃力より守備力の高い守備表示モンスターが、戦闘によって破壊された場合に発動!そのモンスターと同名モンスターを2体まで自分のデッキから表側守備表示で特殊召喚するよ!デッキから『マジシャンズ・ヴァルキリア』(守備力1800)2体を守備表示で特殊召喚!」

『『ふっ!』』

しかし!相手も流石は伝説の魔術師の弟子!すぐさま体勢を立て直しました!

万「……さっきまでとは偉くテンションが違うな。気持ちはわかるがな」

「『マジシャンズ・ヴァルキリア』がフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は表側表示で存在する他の魔法使い族モンスターを攻撃対象に選択する事はできない。そして、『マジシャンズ・ヴァルキリア』自身も魔法使い族。つまり、『マジシャンズ・ヴァルキリア』が2体揃っている今、ジューダイは攻撃が出来ない……」

「大正解!これがお師匠サマから習った技の一つ、『ヴァルキリア・ロック』だよ!」

「くっ、流石だぜ。リバースカードを1枚セットして、ターンエンド!」

「私のターン!ドロー!私は『ホーリー・エルフ』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!そして、『ホーリー・エルフ』(攻撃力800)で『スパークマン』(攻撃力1600)に攻撃!」

「お、おい!それじゃ自殺行為だぞ!?」

「ふふふ、それはどうかなー?」

「何!?」

「罠カード『マジシャンズ・サークル』を発動!このカードは、魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動!お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚するよ!」

「……って、オレのデッキに魔法使い族モンスターなんて無いぞ?」

「その場合、彼女だけが特殊召喚出来るわ」

「なにぃ!?そんなの詐欺だろ!?」



詐欺じゃないっス!

万「……さっきからどっちの味方なんだ貴様は?」

どっちもっス!

万「……尻軽め」



「デッキから、攻撃力2000の私自身、『ブラック・マジシャン・ガール』を特殊召喚!」

『イエイ♪』



いよ!待ってました!

万「ナレーターが合いの手を入れるな!」



「くっ、『スパークマン』!『ホーリー・エルフ』を迎え討……」

「あ、その前に」

ズコー!ジューダイはズッコケた。

「……今度はなんだよ?」

「『マジシャンズ・サークル』で魔法使い族が無くて特殊召喚できない時は、一応本当に魔法使い族がいないかデッキ確認させてね?」

「って、そんな効果まであるのかよ?ったく、しょうがねぇな……」

「ふむふむ、へー、カッコいいデッキ使ってるね」

「へへへ、そうだろ?特にこの辺なんかさ……」

「へー、じゃあ、このカードはどうやって使うの?」

「ああ、こいつはな……」



万「……自分の戦略をばらし始めたぞ?」

……アスカも頭を抱えてるっスね……



「よーし!改めて『スパークマン』!『ホーリー・エルフ』を迎え討て!『スパークフラッシュ』!」

『ハァッ!』

「くっ……まだまだ!『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力2000)で『スパークマン』(攻撃力1600)を攻撃!『黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)』!」 マナ残ライフ2900

『えーい!』

「うわぁぁ!?」 ジューダイ残ライフ3600

『ブラマジガール』の放った魔力弾が、見事『スパークマン』を撃破しました!やったぁ!

「更に『マジシャンズ・ヴァルキリア』2体(攻撃力1600×2)でダイレクトアタック!『マジカル・イリュージョン』!」

『『はぁ!!』』

「ぐわぁぁぁぁ!?」 ジューダイ残ライフ400

「ジューダイ!」

「よーし!ターンエンド!」



ハラショー、マナ!ハラショー、ブラマジガール!

万「貴様は何処ぞのサンボのチャンピオンか?」



「くっ、……ははは、すっげぇなお前!よし!オレも燃えてきたぜ!オレのターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを更に2枚ドロー!更に魔法カード『戦士の生還』を発動!自分の墓地に存在する戦士族モンスター1体を選択して手札に加える!墓地から『スパークマン』を手札に戻し、更に魔法カード『融合』を発動!手札の『スパークマン』と『E・HERO クレイマン』を手札融合!現れろ!『E・HERO サンダー・ジャイアント』(攻撃力2400)!」

『ハァ!』

「そして、『サンダー・ジャイアント』の効果を発動!このカードが召喚に成功した時、このカードより元々の攻撃力が低いモンスター1体を破壊することができる!」

「うーむ、そう来ますか」

「戦闘で破壊出来ないなら、効果で破壊するまでだぜ!『サンダー・ジャイアント』の効果を発動!『マジシャンズ・ヴァルキリア』(攻撃力1600)1体を破壊!『ヴェイパー・スパーク』!」

『ハァァ………ハァ!』

「くっ……!?」

「これで攻撃が出来るぜ!行け!『サンダージャイアント』(攻撃力2400)!もう1体の『マジシャンズ・ヴァルキリア』(攻撃力1600)に攻撃!『ボルティック・サンダー』!」

『ハァ!』

「きゃぁぁ!?」 マナ残ライフ2100

「更にリバースカードを1枚セットして、永続魔法『悪夢の蜃気楼』を発動してターンエンド!」

「くぅぅ……やるねー。こんなに早く『ヴァルキリア・ロック』を突破されたのは初めてだよ。私のターン!ドロー!」

「お前のスタンバイフェイズ時に、『悪夢の蜃気楼』の効果を発動!デッキから手札が4枚になるようにドローする!」

「ふふふ、その手札を使う暇があるかなー?」

「何!?」

「私は『マハー・ヴァイロ』(攻撃力1550)を召喚!更に手札から魔法カード『マジシャンズ・クロス』を発動!自分フィールド上に表側攻撃表示の魔法使い族モンスターが2体以上存在する場合に発動!合体攻撃で攻撃力はエンドフェイズ時まで3000になるよ!」

「攻撃力3000!?」

「いくよ!『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力3000)で『サンダー・ジャイアント』(攻撃力2400)を攻撃!」

「この攻撃を受けたら、ジューダイのライフは0……!」

「くっ……リバースカード発動!速攻魔法『非常食』!このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動!墓地へ送ったカード1枚につき、自分はライフポイントを1000回復する!『悪夢の蜃気楼』を墓地に送り、ライフポイントを1000回復させるぜ!」 ジューダイ残ライフ1400

「やっる~♪それでライフを回復させた上に、『悪夢の蜃気楼』の効果、自分のスタンバイフェイズ時に、その効果でドローした枚数分だけカードを手札からランダムに捨てるのを回避したんだね?よーし、じゃあこっちも攻撃を再開!『黒・魔・導・爆・裂・連・破(ブラック・バーニング・ツヴァイ)』!」

『てーい!!』

「ぐあぁぁぁぁ……!?」 ジューダイ残ライフ800

「ジューダイ!」

「くっ……罠カード『ヒーロー・シグナル』を発動!自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動!自分の手札またはデッキから『E・HERO』という名のついたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する!デッキから『E・HERO バブルマン』(攻撃力800)を攻撃表示で特殊召喚!」

『ハァ!』

「『バブルマン』の召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする!」

「ふふふ、『マジシャンズ・クロス』を発動したこのターン、選択したモンスター以外の魔法使い族モンスターは攻撃する事はできない。私は更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド。さぁ、追い詰めたよ!」



勇者ジューダイ、またしても追い詰められてしいました。

万「いつもの事だがな」

ここで強力なモンスターを召喚しても、彼女がセットしたのは罠カード『魔法の筒(マジック・シリンダー』。相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える必殺の罠カード。もう彼女の勝利は目前です!

万「……何故貴様がそれを知っている……」



「ふ、ふふふふ……」

「え?」

「ははは、あっははははは……」

「……また始まったわね」

「な、何が?」

「いやー、本当に世界は広いぜ!ミサワやアスカだけじゃなくて、お前みたいな強いデュエリストがまだ居るなんてな!おまけにお前のお師匠さんとかはもっと強かったんだろうなぁ。勝負してみたかったぜ」

「……えーと?もう負けそうなの、わかってる?」

「勿論、でも、デュエルは最後までわからないだろ?」

「そ、それはそうだけど……」

「なら最後まで、オレは勝負を諦めないぜ!オレのターン!ドロー!……来たぜ!逆転のカードが!」

「嘘!?」

「オレはリバースカードを2枚セット、更に『E・HERO ワイルドマン』(攻撃力1500)を攻撃表示で召喚!」

『うおぉぉ!』

「更に専用装備カード『サイクロン・ブーメラン』を装備!攻撃力が500ポイントアップ!(攻撃力1500→2000)」

「? それでも良くて『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力2000)と相打ちだよ?」

「まだまだ!更に魔法カード『融合』を発動!フィールド上の『ワイルドマン』と手札の『E・HERO ネクロダークマン』を融合!来い!『E・HERO ネクロイド・シャーマン』(攻撃力1900)!」

『フンッ!』

「えー?でもそれじゃあ攻撃力下がっちゃうよ?装備カードも墓地に送られちゃうし……」

「それでいいのさ」

「え……」

「『サイクロン・ブーメラン』を装備したモンスターが墓地に送られた時、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊して、破壊した魔法・罠カードの枚数×500ポイントのダメージを相手ライフに与えるのさ!」

「嘘!?」

「お前のフィールドにセットされている魔法・罠カードは1枚。そして、オレのフィールドにセットされている魔法・罠カードは2枚。合わせて3枚。3×500で1500ポイントのダメージだぜ!いくぜ!『サイクロン・ブーメラン』の効果を発動!」

ビュオォォ……

「くぅぅ……」 マナ残ライフ600

荒れ狂う竜巻がお互いのリバースカードを全て飲み込み、そのままマナを襲いました。

「そして、『ネクロイド・シャーマン』の効果を発動!『ネクロイド・シャーマン』の特殊召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げ、その後、相手の墓地からモンスター1体を選択し、相手フィールド上に特殊召喚する!」

「え!?……って事は……」

「お前のフィールド上の『ブラック・マジシャン・ガール』1体を生け贄に捧げ、お前の墓地から『ホーリー・エルフ』(攻撃力800)を攻撃表示でお前のフィールド上に特殊召喚!」

「……あちゃー。やっぱりそうなっちゃうかー。」

「これで決まりだ!『ネクロイド・シャーマン』(攻撃力1900)で『ホーリー・エルフ』(攻撃力800)に攻撃!『デストロイ・オブ・ポゼッション』!」

「きゃあぁぁぁ……!」 マナ残ライフ0



「痛たたたた、あー負けちゃった。でも楽しかった〜」

「おう!ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

「うん!……えーと、こう?ガッチャ!」

「おう。くれぐれも『ガッチョ』じゃねぇからな」

「……で、結局どうなったの?」

「どうなったのって……」

「何がだ?」

「何がって、あなた逹何の為にデュエルしてたのよ……?」

「……何の為だっけ?」

「……さぁ?まぁ、楽しかったし、いいんじゃねぇか?」

「はぁ……」

アスカは深ぁい溜め息をつきました。



「じゃあ一緒に行ってもいいんだね!?」

「おう、文句無しだぜ」

「と言うか、元々『連れて行かない』なんて言ってないんだけど」

こうして、マナはジューダイ逹の仲間になりました。

「むー」

「? どうした?」

「いやー、でもそれだと私、お邪魔虫じゃないかなぁってね」

「な!?」

「?」

「な、何言ってるのよ!?私とジューダイは……その、そんなんじゃないわよ!」

「あれ?そうなの?……じゃあ私が貰っちゃおうかなー」

「な!?」

「??」

「うーん、さっきのジューダイ君カッコ良かったし、顔も美形だし、デュエルも強いし、うん文句無しだね」

「か、勝手にしなさい!」

「???」



……なんか今、ダークネスを激しく応援したくなったっス。

万「……奇遇だな。俺もだ」



今日のワイト

和「今日の最初のカードはこちら!『サイクロン・ブーメラン』!装備魔法、『E・HERO ワイルドマン』にのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。装備モンスターが他のカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。破壊した魔法・罠カードの枚数×100ポイントダメージを相手ライフに与える。……というのがカード版の効果、原作ではダメージが×500、更に後半の効果の発動条件が『このカードを装備したモンスターとこのカードが墓地に送られた時』となっているので、自爆特攻や融合素材にしても効果を発動できるという強力なカードになっています」

3ワイト「「「……」」」

和「続いて『E・HERO サンダー・ジャイアント』。融合モンスター、『E・HERO スパークマン』+『E・HERO クレイマン』、攻撃力2400守備力1500、このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。自分の手札を1枚捨てる事で、フィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。……というのがカード版。原作版では『このカードの融合召喚に成功した時、フィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する。』という、連発は出来ないけどその分手札コストがかからない効果となっています」

3ワイト「「「……」」」

和「はいそこ!また三人で構えるんじゃなーい!二度ネタ厳禁!つーか次こそは絶対出番あるから!」

3ワイト「「「カタカタ(本当)?」」」

和「本当本当……中ボス以前の小ボスだけど……」

3ワイト「「「……」」」

和「わー!飛竜の頭蓋骨も粉砕するよーな骨鎚……ぶっちゃけス○ルクラッシュを振り上げるなー!」

3ワイト「「「カタカタタ、カタカタタ(臓物を、ぶちまけろ)!」」」

和「寧ろ脳漿ぶちまくから!『このSSにはグロ表現があります』って説明文が必要になっちゃうから!ネタ元みたいに、ジ○ンプに連載するにはモザイクが必要になっちゃうような状況になっちゃうかーらー!いーやー!最大溜めは止め……」

ズドーン!



あとがき

ごめんなさいorz大分遅くなってしまいました。……一ヶ月ぶりデスネ。皆様あけましておめでとうございます。

さて、皆様に朗報(?)デス。

……演劇編での神楽坂君の役が一人四役になりました(オイ!

と言うか、元々神楽坂君にアナシス役をやらせる予定は無かったんですよねぇ。いきなり明日香さん出すのもなんだったので、無理矢理捻り込んじゃったんですよね……

あと、劇内でのマナさんの十代君への好意は演技です。やっぱりマナさんは王サマ一筋ですよね。

次回は本編の幕間になります。……なるべく早く書きますので。

改正

申し訳ないorz今回ミスまみれでしたので直しました。



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第四話 決戦への序章
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9766d1b6
Date: 2011/06/15 23:31
「二人共、ちょっとこれを見て」

「? なんだよそのボロっちい本は?」

と、マナが一冊の古い本を持ってきました。

「これはね、私のお師匠サマがそのまたお師匠サマから、みたいな感じで私達の魔術に代々伝わっている魔術書なんだよ」

「いいの?そんな秘伝とも言える物を私達に見せても」

「いいのいいの。私達仲間なんだし。でね、この魔術書には過去の邪悪なモンスターとの戦いについても書かれているんだけど、この魔術書にダークネスとの戦いについても書かれているの」

「なんだって!?」

「どういう事?」

「魔術書によると、遥か昔にも、ダークネスは闇のモンスターを率いて世界を支配しようとしてたみたい。そして、私の何代も前のお師匠サマと仲間が封印したみたい」

「でも、再びダークネスが現れたって事は……」

「……封印が解けちまったって事か?」

「そうみたい。それで、ダークネスの封印に『白き翼を持つ黒き精霊』の力が要になったんだって」

「『白き翼を持つ』?」

「『黒き精霊』?」

「そう、その精霊はダークネスの封印が恒久的な物ではないのを察して自らをカードに封印。以来、そのカードは代々、何処かの王国の勇者の証とされているみたい。そのカードをまずは手に入れないと……」

「勇者の証って……」

「ひょっとして、こいつか!?」

ジューダイは慌てて、1枚のカードを取り出した。

「!? そう!その『ハネクリボー』のカードだよ!でもなんで!?」



……驚いてるマナたん萌え~っス。

万「ええい!気色の悪い事を言うな!」



「……つまり、ジューダイ君は丁度その国の勇者だったって訳?」

「偶然だけどね」

「それにしても、このカードが『伝説のカード』なんて言われてるのは知ってたけど、そんなに凄い物だっただなんてなぁ」

「ともあれ、これで回り道はせずに済みそうね」

「そうだね。これもお師匠サマのお導きだね!」

「よし!それじゃ、そろそろ出発しようぜ!」

「ええ」

「おー!」



こうして、三人は小屋を出発しました。

途中、何度か敵に襲撃されたりしましたが、その度に三人は協力して危機を乗り越えました。

そして、三人はとうとうサオトメ城まで辿り着きました。

万「……ちょっと待て。その何度かあった危機の部分はどうした?」

長くなるので省略っス。

万「はしょるなぁ!」



「とうとうここまで来たな」

「いよいよ決戦だね!」

「気を引き締めていきましょう!」

三人は城門の前まで行きました。

「……妙ね」

「? 何がだよ?」

「おかしいとは思わない?ここまで度々敵からの襲撃があったのに、ここに来て敵が居ないなんて」

「あー、成る程」

「……確かにおかしいな。……って言うか、この扉どうする?」

三人の目の前には、大きな城に見合った重厚そうな扉がありました。

「よーし!私の魔法で!『黒・魔・導(ブラック)……』!」

「薮蛇になるからやめなさい!」

「うーん、でも他に方法が無いぜ?」

と、三人が悩んでいたその時……

ドガーン!

「え?」

「扉が!?」

扉が『内側』から破壊されました。

「! 気をつけて!何か出てくる!」

「「!」」

目の良いハーピィであるアスカが二人に注意を促しました。

やがて、中から出てきたのは……

『ギャオオォ……』

「『ウォーター・ドラゴン』!?……って事は……ミサワ!?」

「く……ジュー……ダイか?」

「な……ノーネ……」

身体中傷まみれのミサワ達でした。

「ぐっ……」

そして、力尽きたように倒れてしまいました。同時に、ミサワが召喚していた『ウォーター・ドラゴン』も消えてしまいました。

「お、おい!ミサワ!しっかりしろ!マナ!早く回復魔法を……!」

「は、はい!」

マナが呪文を唱えると、ミサワ達の苦しそうな表情が幾分か安らいでいった。

「も、もういい。ぐっ……力は残しておけ……」

「で、でもまだちょーっと苦しいーノ……」

「……我慢して下さい」

「マ、マンマミーア……」

「……すまないジューダイ。57勝目は……お前が勝ち取って……くれ……」

「ミサワ!?」

「……大丈夫。皆気を失っただけだよ。命に別状無いみたい。取り敢えず結界を張って、そこに寝かしておく?」

「そうね。引き返している暇も無いし、それが一番いいわね」

マナが再び呪文を唱えると、小屋に張られていたのと同様の結界がミサワ逹の周りに張られました。

「……任せろ。オレが絶対、奴らを倒してやる」

ジューダイは決意を新たにしました。



「行くぞ!二人共!」

「ええ!」

「うん!」

三人は城の中に入りました。

「気を付けましょう。何処に敵の罠があるか……」

「ソノ必要ハ無イ」

「「「!?」」」

と、ロビーの奥の影から声がしました。

「我ガ主ハ粋ナ方デナ、罠ヲ張リ巡ラスノハ好ミデハ無イ」

「だ、誰だ!?」

やがて、その影から、1体のモンスターが姿を表しました。

「我ガ名ハ『ワイトキング』。主ダークネスノ力ニヨリ蘇リシ亡者ヲ統ベル王……」

「『ワイトキング』?何処かで聞いた事があるような……」

「……10年前に現れた邪悪なモンスター……」

「! って事は……」

「……お師匠サマの……仇……」

「師匠?……!貴様、アノ魔術師ノ弟子カ!フハハハハハハハ!ソウカ!ソウカソウカソウカ!奴ハ死ンダノカ!キキキキキキ!ナント滑稽ナ!トドメヲ刺サレタ筈ノ敵役ガ生キ返リ、倒シタ筈ノ主役ガ逆二息絶エル!コレ程ノ喜劇(コメディ)ヲ手掛ケルトハ恐レ入ッタ!私ナドヨリモ数段上等ナ脚本家デハナイカ!」

「っ!お前!」

「キキキキ、サテ、次ノ夜会(ソワレ)ノ御相手ハ君カネ?何分、先程ノ参加者逹ハ役不足ナ者バカリダッタノデネ。退屈ヲ覚エテイタ所ダ」

「!? こいつ、まさか一人でミサワ逹を!?」

「望む所だ!オレが相手してやる!」

「待って!ジューダイ君!」

「!? マナ?」

「お願い。ここは私に行かせて。お師匠サマの仇を討ちたいっていうのもあるけど、それよりも、ジューダイ君はダークネスとの決戦まで力を残しておかないと!」

「マナ、お前……」

「大丈夫!絶対に勝つから!」

そう言って、マナはにっこりと笑いました。



うぅぅ、健気っスぅ~。

万「泣くな!」



「キキキ、貴様ガ相手カ。些カ役不足ダガ、成ル程、復讐劇(リベンジ・トラジェディ)トイウノモ一興カ!」

「……お師匠サマ、私に力を!」

「「デュエル!!」」

「私のターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!モンスターを1体裏側守備表示でセット!更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

「私ノターン、ドロー。永続魔法『漆黒のトバリ』ヲ発動。更ニモンスターヲ1体、裏側守備表示デセットシ、リバースカードヲ1枚セット、ターンエンドダ」



「……先ずは双方共に様子見ね」

「……絶対勝てよ、マナ」



「私のターン!ドロー!裏側守備表示モンスター『水晶の占い師』(攻撃力100)を反転召喚!リバース効果発動!自分のデッキの上から2枚をめくり、その内の1枚を選択して手札に加え、残りはデッキの1番下に戻す!……めくった2枚は装備魔法『魔導師の力』とモンスターカード『マジシャンズ・ヴァルキリア』!私は、『魔導師の力』を手札に加え、『マジシャンズ・ヴァルキリア』をデッキに戻します!そして、『マハー・ヴァイロ』(攻撃力1550)を攻撃表示で召喚!更に装備魔法『魔導師の力』を装備!このカードを装備したモンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚につき500ポイントアップ!私のフィールド上の魔法・罠カードは『魔導師の力』とリバースカード2枚の3枚!よって、『魔導師の力』の効果により『マハー・ヴァイロ』の攻撃力が500×3で1500ポイントアップ!更に、『マハー・ヴァイロ』の効果、装備カード1枚につき、攻撃力が500ポイントアップ!(攻撃力1550→3550)」

「ホウ……」

「『マハー・ヴァイロ』(攻撃力3550)で守備表示モンスターに攻撃!『ホーリー・ライトニング』!」

『マハー・ヴァイロ』が放った雷が守備表示モンスター、ピラミッドの甲羅を背負った亀を破壊しました。

「キキキ、『ピラミッド・タートル』(守備力1400)ノ効果ヲ発動!コノカードガ戦闘二ヨッテ破壊サレ、墓地二送ラレタ時、デッキカラ守備力2000以下ノアンデット族モンスターヲ特殊召喚スル!デッキカラ『龍骨鬼』(攻撃力2400)ヲ攻撃表示デ召喚!」

「……ターンエンド」

「フム、少々失望シタ」

「え……」

「奴ノ弟子トイウニ、コノ未熟サ具合ハナンダ?イキナリソノ様ナ主役級ヲ持ッテキテシマッテハ後々マンネリデハナイカ!ツマラナイツマラナイツマラナイツマラナイ!」

「くっ……!?」

「私ノターン、ドロー、永続魔法『漆黒のトバリ』ノ効果ヲ発動。自分ノドローフェイズニドローシタカードガ闇属性モンスターダッタ場合、ソノカードヲ相手ニ見セル事デ、ソノカードヲ墓地ヘ送リ、ソノ後、自分ノデッキカラカードヲ1枚ドロースル事ガ出来ル。私ガドローシタカードハ闇属性ノ『ワイト』。コレヲ墓地ニ送リ、デッキカラカードヲ1枚ドロー、ソシテ永続罠『リビングデッドの呼び声』ヲ発動。墓地カラモンスターヲ1体攻撃表示デ特殊召喚スル。『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)ヲ攻撃表示デ召喚。更ニ『ピラミッド・タートル』ヲ生ケ贄ニ、モウ1体ノ『龍骨鬼』(攻撃力2400)ヲ召喚!1体ノ『龍骨鬼』(攻撃力2400)デ『マハー・ヴァイロ』(攻撃力3550)ニ攻撃!」

「!? 攻撃力が低いモンスターで攻撃!?」

「キキキ、コレ位ノ意外性ノアル演出ガ無ケレバ、脚本トシテ面白クアルマイ?」

「くっ、迎え撃って『マハー・ヴァイロ』!『ホーリー・ライトニング』!」

『マハー・ヴァイロ』の放った雷が再び相手のモンスターを破壊しました。 ワイトキング残ライフ2850

しかし……

『ギャァァアアァ!』

「な!?」

胴体を破壊され、頭だけとなった『龍骨鬼』が『マハー・ヴァイロ』に噛み付き、道連れにしました。

「『龍骨鬼』ト戦闘ヲ行ッタモンスターガ戦士族・魔法使い族ノ場合、ダメージステップ終了時ニソノモンスターヲ破壊スルノダ。キキキ、憶エテオキタマエ、殺戮(ドラマ)ハ筋書キ無シ(アドリブ)ノ方ガ面白イ物ナノダヨ」

「くっ!?」

「サテ、続ケサセテ貰オウ。モウ1体ノ『龍骨鬼』(攻撃力2400)デ『水晶の占い師』(攻撃力100)ニ攻撃!」

「きゃああぁぁ!?」 マナ残ライフ1700



うわーん!マナが、マナがあぁぁぁ!?

万「だー!錯乱するな!いい加減にしないとその眼鏡を粉砕するぞ!」



「更ニリバースカードヲ1枚セットシ、ターンエンド」



「まずいわ。あのモンスターがいる限り、マナのモンスターは効果によって破壊されてしまう……!」

「マナ、負けるなよ……」



「……私のターン!ドロー!『ホーリー・エルフ』(守備力2000)を守備表示で召喚!」

「……フム、前言ヲ撤回シヨウ。些カ以上ニ役不足ノ様ダ。ココデソノ様ナ壁モンスターシカ召喚出来ナイナド……」

「……確かに、私じゃ役不足かもしれない……」

「ム……」

「でも、私は負けられない!お師匠サマの仇討ちもあるけど、何よりも仲間逹の為、負けられない!手札から速攻魔法『ディメンション・マジック』を発動!」

「ナニ!?」

「自分フィールド上に魔法使い族モンスターが表側表示で存在する場合、自分フィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げ、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚し、その後、フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する事が出来る!『ホーリー・エルフ』を生け贄に、手札から『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力2000)を攻撃表示で特殊召喚!そして『龍骨鬼』を破壊!」



「上手い!」

「いいぞ!マナ!」



「更に、フィールドにセットしてた装備魔法『魔術の呪文書』を『ブラック・マジシャン・ガール』に装備!攻撃力が700ポイントアップ!(攻撃力2000→2700)『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力2700)でダイレクトアタック!『 黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)』!」

「グギャッ!?」 ワイトキング残ライフ250



「やるぜ!」

「あと一息で……!」



「……興醒メダ」

「え……」

「貴様ガ復讐トイウ名ノ狂気ニ駆ラレル姿ヲ期待シテイタノニ、『仲間ノ為』ダト?ソノ様ナ陳腐極マリナイ戦ウ理由!コレガ興醒メデ無クテナンナノダ!?無様ナ立チ振舞イハ舞台ノ興ヲ削グノダ!……モウイイ、幕ダ……!」

「!?」

「私ノターン!ドロー!永続魔法『漆黒のトバリ』ノ効果発動!私ガドローシタノハ闇属性ノ『ワイト夫人』!コレヲ墓地ニ送リ、デッキカラカードヲ1枚ドロー!」



「? 奴はさっきから何をやってるんだ?」

「モンスターを……意図的に墓地に貯めている?」



「サァ、終幕ノ準備ハ整ッタ!ツマラナイ舞台ダッタガ、セメテ最後位ハクライマックスデ幕ヲ引コウデハナイカ!」

「くっ!?」

「我ガ分身、『ワイトキング』ヲ攻撃表示デ召喚!」

『キキキ、キキキキキ!』

「ワイト……キング!?」

「『ワイトキング』ノ攻撃力ハ墓地ニ存在スル『ワイト』『ワイトキング』ノ枚数×1000!我ガ墓地ニハ『ワイト』ト、墓地デ『ワイト』トシテ扱ワレル『ワイト夫人』ノ2枚!ヨッテ、『ワイトキング』ノ攻撃力ハ2×1000デ2000!更ニ、『ワイトキング』ガ召喚サレタ瞬間、罠カード『連鎖破壊(チェーン・デストラクション)』ヲ発動!攻撃力2000以下ノモンスターガ召喚・反転召喚・特殊召喚サレタ時、ソノモンスターノコントローラーノ手札トデッキカラ同名カードヲ全テ破壊スル!デッキカラ、2枚ノ『ワイトキング』ヲ墓地ニ送リ、更ニ魔法カード『おろかな埋葬』ヲ発動!自分ノデッキカラモンスター1体ヲ選択シテ墓地ヘ送ル!デッキカラ『ワイト』ヲ1枚墓地ニ送ル!」

「く!?」



「こ、これで墓地に『ワイト』と『ワイトキング』が……5枚!?」

「攻撃力……5000……!」



「キキキキキ!蛮脳ハ改革シ衆生コレニ賛同スルコト一千年。学ビ食シ生カシ殺シ称エル事サラニ一千。麗シキカナ、毒素ツイニ四肢ヲ浸シ汝ラヲ畜生ヘ進化進化進化セシメン……!!キキキ、キーキキキキキ!『ワイトキング』(攻撃力5000)デ『ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力2700)ニ攻撃!」



「マズいわ!マナの残りライフは1700!この攻撃を受けたら負けよ!」

「マナぁ!!」



「『ナイト・オン・ザ・ブラッドライアー』!」

『ワイトキング』が掌を天に掲げると、『ブラック・マジシャン・ガール』の足下から黒い竜巻が起こり、『ブラック・マジシャン・ガール』を覆いました。

「カット!カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットォ!!」

ワイトキングのけたたましい声が響き、それにつれて、竜巻は更に激しくなっていきます。

そして、竜巻が収まった時……『ブラック・マジシャン・ガール』の姿は……ありませんでした……

「そんな……」

「マナ!マナぁぁ!!」

「キキキキ!サテ、第二幕ノ御相手ハドチラガ……ム?」

『クルックー』

「コ、コレハ!?」

と、負けた筈のマナのフィールド上に、1羽の鳩が舞い降りました。

「もう、酷いよジューダイ君。私まだやられてないよ!」

「マナ!?」

竜巻の砂ぼこりが収まると、無傷のマナが姿を現しました。

「速攻魔法『マジカル・ピジョン』を発動!自分のフィールド上に『ブラック・マジシャン・ガール』が存在する時これを墓地に置き、自分のフィールド上に『ハトトークン』(攻撃力0守備力0、星1、風属性、鳥獣族)を2体、表守備表示で特殊召喚する!あなたが攻撃したのは攻撃表示の『ブラック・マジシャン・ガール』じゃなくて守備表示の『ハトトークン』!だからダメージは受けてないよ!そして、『ブラック・マジシャン・ガール』が墓地に送られた事により、装備魔法『魔術の呪文書』が墓地送られ、その効果が発動!、このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、自分は1000ライフポイント回復!」 マナ残ライフ2700

「……永続魔法『レベル制限B地区』ヲ発動、コノカードガ存在スル限リ、フィールド上ニ表側表示デ存在スル星4以上ノモンスターハ全テ守備表示ニナル。……ターンエンド。……不快ダ!吐キ気ヲ催ス程不快ダ!コレ以上コノツマラナイ舞台ヲ続ケロトイウノカ!」

「それはそうだよ」

「ギ!?」

「舞台の最後には、大どんでん返しがあるって決まってるんだから!」

「キキキ貴様ァ!」

「あなたのエンドフェイズ時に『マジカル・ピジョン』の効果を発動!エンドフェイズ時、『ハトトークン』を全て破壊して、墓地から『ブラック・マジシャン・ガール』(守備力1700)を特殊召喚!私のターン!ドロー!『サイレント・マジシャンLV4』(守備力1000)を守備表示で召喚!そして、魔法カード『レベルアップ』を発動!」

「何ダト!?」

「フィールド上に表側表示で存在する『LV』を持つモンスター1体を墓地へ送り発動!そのカードに記されているモンスターを、召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚!『サイレント・マジシャンLV4』をレベルアップ!来て!『サイレント・マジシャンLV8』!(攻撃力3500)」

『……』

「ダガ!『サイレント・マジシャンLV8』ノ星ハ8!『レベル制限B地区』ノ効果デ守備表示ニ……」

「『サイレント・マジシャンLV8』は相手の魔法カードの効果を受けない!よって、『レベル制限B地区』の効果は受けないよ!」

「グ……ダガ!ソレデモ攻撃力ハ我ガ分身(攻撃力5000)ノ方ガ上……!」

「あなた、さっき言ったよね?」

「ギ!?」

「『仲間の為に戦う事』が陳腐だって。そんな事ないよ!仲間との絆はくだらなくなんてない!その事を今証明してあげる!手札から魔法カード『受け継がれる力』を発動!自分の場のモンスター1体を墓地に送り発動!自分の場のモンスター1体の攻撃力は、発動ターンのエンドフェイズまで墓地に送ったモンスターカードの攻撃力分アップする!『ブラック・マジシャン・ガール』を墓地に送り、その攻撃力分、2000ポイントを『サイレント・マジシャン』の攻撃力に加算!(攻撃力3500→5500)」

「ミ、認メン認メン認メン認メン認メン認メン!有リ得ン!私ガ貴様ノヨウナ未熟者ニ敗レルナド!コノヨウナ理不尽、起コリ得ヨウ筈ガ……!」

「『サイレント・マジシャンLV8』(攻撃力5500)で『ワイトキング』(攻撃力5000)に攻撃!」

『……!』

「全・力・全・開!『ス○ーライト・ブレイカー』!」

「『ギー!』」 ワイトキング残ライフ0



やったぁ!マナが勝ちましたぁ!『サイレント・マジシャン』の攻撃により、『ワイトキング』は消滅しました!

万「いや、それよりも今の技名にツッコめ」



「や、やったよ。ジューダイ君……」

「「マナ!」」

激戦を制したマナでしたが、力尽きた様に倒れてしまいました。

「えへへ、ちょっと……疲れちゃった……」

「良かったなマナ、師匠の敵討ちが出来て」

「ううん、それも嬉しいけど、やっぱりニ人の役に立てた事が一番嬉しいよ。お師匠サマからも、この力は相手を打ち倒す為じゃなくて、大切な人を守る為に使えって言われていたから……」

「マナ……」

「ほら、ぼやぼやしてないで先に行った行った!私も少し休んだら後を追い掛けるから!」

「大丈夫なの?」

「大丈夫、私一人分の結界を張るだけの力は残ってるから」

「……わかった。マナの頑張りを無駄にする訳にはいかねぇからな」

「そうね」

「……気をつけてね」

「あぁ!行ってくるぜ!」

「そっちも気をつけて!」



「お師匠サマ……これで少しはあなたに……近付けた……かな」



今日のワイトはお休みです。



後書き

久々の演劇編……相変わらずワ○キア風味+カタカナは面倒臭いったらありゃしない!

改正 はき様、デモア様、Clips様、御指摘ありがとうございました!

装備魔法の『魔術の呪文書』をセットしたのは罠に見せかけるブラフ兼『魔導師の力』の攻撃力アップ分を高める役目ですね。破壊されても1000ポイントライフ回復ですし。



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第五話 決戦への間奏
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:46a4e605
Date: 2011/07/12 23:57
マナと別れたジューダイとアスカは、ダークネスの下へと、先を急いでいました。

「……おかしいわ」

「? 何がだよ?」

アスカがいぶかしげな表情をしました。

「いくら何でも手薄過ぎるわ。ダークネスの居るであろう王座の間まで、もうすぐの筈、ワイトキングが言っていたように、いくらダークネスが罠を用いるのを好まないとしても、それにしても敵が居なさすぎるわ」

「……確かに、ワイトキング以外には目立った敵は居なかったな」

「敵の本拠地だっていうのに、この手薄さは一体……」

「簡単な話よ」

「「……!!」」

と、前方から第三者の声がしました。

前方には1つの扉があり、その前には一人の女性モンスターが居ました。

「今、我らがテンジョーイン軍団の兵士のほとんどが出払っているわ。この大陸全てを征服する為に」

「何だって!?」

「要は競争よ、お前達がダークネス様を倒すのが先か、大陸全てが征服されるのが先か。あぁ、お前達が全滅するっていう可能性が一番高いわね」

「あなたは……!」

「! アスカ、奴を知っているのか!?」

「ふふふ、私は『ヴァンパイア・レディ』のカミューラ。そこに居る『ハーピィ』の集落を滅ぼした、『ヴァンパイア』モンスター一族を統べる者よ」

「な!?って事は、こいつもアスカの仇……?」

「……」



万「……とうとう女役までやりだしたか、神楽坂の奴」

……彼は何処に向かってるんスかね……



「勇者ジューダイ」

「! 何だよ?」

「ダークネス様がお前に興味を持ったみたいなのよ。お前はここを通っていいわ」

「な!?」

「まぁ、そこの『ハーピィ』は私の相手をして貰うけど」

「くっ……」

「……ジューダイ、行って」

「で、でもよ」

「お願い」

「……わかった」



「……どういうつもり?罪悪感を感じて私に復讐させる……なんて訳ないわよね」

「ふふふ、そもそも、どうしてお前達一族を私達は襲撃したと思う?」

「え……」

「お前達の血よ」

「な!?」

「お前達『ハーピィ』の血は我ら『ヴァンパイア』一族の好む所。だから、私はダークネス様に許可を頂き、まずお前達の集落を襲ったのよ」

「……それだけの為に、私の仲間を!?」

アスカは肩を震わせ、ギリッと歯を鳴らしました。

「あの時は失敗したわ。血に酔った一族がお前達を皆殺しにしてしまったんだもの。数匹残して、血袋として飼っておけば良かったわ」

「っ! あなただけは、絶対に許さない!」

「ふふふ、許さなかったらどうするのかしら?」

「ここで、あなたを倒す!私の手で!」

「やれるものならやってみなさい小娘!」



「「デュエル!!」」

「私のターン!ドロー!『バード・フェイス』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「ふふふ、私のターン、ドロー、『不死のワーウルフ』(攻撃力1200)を攻撃表示で召喚!『バード・フェイス』(攻撃力1600)に攻撃!」

「な!?」

「吠えよ!『ハウリング・スラッシュ』!」

「っ!迎え撃ちなさい!『ウィンドカッター』!」

『不死のワーウルフ』がその鋭い爪で斬りかかりましたが、その攻撃が届く直前、『バード・フェイス』の放った風の刃がその体を切り刻みました。 カミューラ残ライフ3600

「……どういうつもり?攻撃力の低いモンスターで攻撃なんて」

「ふふふ、『不死のワーウルフ』は戦闘で破壊された時、デッキから同名カードを特殊召喚出来るのよ!再び現れよ!『不死のワーウルフ』!」

『オオォーン!』

雄叫びと共に、地面に亀裂が走り、『不死のワーウルフ』が再び現れました。

「この効果で特殊召喚された時、このモンスターの攻撃力は500ポイントアップする!」

「何ですって!?」

「蘇りし『不死のワーウルフ』(攻撃力1200→1700)で、『バード・フェイス』(攻撃力1600)に攻撃!『ハウリング・スラッシュ』!」

「くっ!?」 アスカ残ライフ3900

今度は逆に、『バード・フェイス』が『不死のワーウルフ』の爪で切り刻まれてしまいました。

「くっ、『バードフェイス』の効果発動!このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから『ハーピィ・レディ』を1枚手札に加える事が出来る!デッキから、『ハーピィ・レディ』として扱う『ハーピィ・レディ1』をデッキから手札に加える!」

「……ターンエンド。ふーん、なかなか手応えが有りそうね。お前の血は、一段と美味しそうね」

「っ! 嘗めるんじゃないわよ!」



万「行けー!天上院君!神楽坂なんぞに負けるなー!」

ナレーターが中の人の名前言っちゃダメだってば!



「私のターン!ドロー!『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を攻撃表示で召喚!『不死のワーウルフ』(攻撃力1700)に攻撃!『爪牙斬撃(スクラッチ・スラッシュ)』!」



万「よし!『ハーピィ・クイーン』が『不死のワーウルフ』を撃破したぞ!」

ちょっと!僕の役取らないでよ!



「ふふふふ、無駄よ。再び『不死のワーウルフ』の特殊効果発動!デッキから同名カードを攻撃表示で特殊召喚!」 カミューラ残ライフ3400

「でも、デッキから特殊召喚される『不死のワーウルフ』の攻撃力は元々の1200、そこから特殊召喚されてその効果で攻撃力がアップしても、その攻撃力は1700止まり。『ハーピィ・クイーン』には敵わないわ」

「あら、よくわかってるじゃない」

「……ターンエンド」



万「そいつは何か企んでいるぞ!気を付けろ天上院君!」

だーかーらー!



「私のターン、ドロー!『不死のワーウルフ』を生け贄に、『ヴァンパイア・ロード』(攻撃力2000)を攻撃表示で召喚!」

『ふはははは!』

「っ! 上級モンスターの生け贄……!」

「今更気付いたって遅いのよ!『ヴァンパイア・ロード』(攻撃力2000)で『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を攻撃!『暗黒の使徒』!」

「くっ……!?」 アスカ残ライフ3800

『ヴァンパイア・ロード』が繰り出した眷族のコウモリ達が『ハーピィ・クイーン』に襲い掛かり、粉砕しました。



万「……今、舞台裏の馬鹿骸骨が『ナ○トレイド!』とか叫んでいたぞ」

……ヴァ○デモンっスねそれ



「更に『ヴァンパイア・ロード』の効果発動!このカードが相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えた時、モンスター・魔法・罠の中から1種類を選択、相手はデッキからその種類のカード1枚を選択して墓地に送る!私が選択するのはモンスターカード。さぁ、1枚選択して墓地に送りなさい」

「くっ、……『ハーピィ・クイーン』を1枚、デッキから墓地に送るわ」

「ふふふ、どうかしら?自分自身の手で、お友達を墓地に送った気分は。ふふふふふ、ははははは、あーっははは……」

「……っ!」



万「……あの性格の悪さ、まさしくカミューラ本人そのものだな」

……まだ口がパックリ開かないだけ本人よりはマシだと思うっス

万「……そういう問題か?」



「ふふふ、ターンエンドよ」

「私のターン!ドロー!……『ハーピィ・レディ1』(守備力1400)を守備表示で召喚!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「あはははは、もう打つ手無しな訳?笑わせるわね」

「……」

「私のターン!ドロー!『ヴァンパイア・レディ』(攻撃力1550)を攻撃表示で召喚!」

『ふふふふふ』

「!」

「覚悟しなさい!『ヴァンパイア・レディ』(攻撃力1550)で『ハーピィ・レディ』(守備力1400)に攻撃!」

『ヴァンパイア・レディ』が『ハーピィ・レディ1』に襲い掛かりました。

「……掛かったわね!」

「! 何ですって!?」

「私はずっと待っていたのよ!あなたがフィールド上にカードを2枚以上出すのを!罠カード発動!『ゴッドバードアタック』!自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体を生け贄に捧げ、フィールド上に存在するカード2枚を選択して破壊する!」

「な!?」

「『ハーピィ・レディ1』は鳥獣族!このカードを生け贄に捧げ、『ヴァンパイア・レディ』と『ヴァンパイア・ロード』を破壊!」

「くっ!?」

『ハーピィ・レディ1』が特攻を仕掛け、『ヴァンパイア・レディ』と『ヴァンパイア・ロード』を道連れに、消滅しました。



万「成る程、あのカードはフィールド上のカードを必ず『2枚』破壊するカード。相手のフィールド上にカードが1枚以下しか無い場合、足りない分は自分のフィールド上のカードを破壊しなくてはならなくなる。だから、カミューラのフィールドに2枚以上カードが存在する場面である今まで、1ターン目からセットしていたあのカードを温存しておいたのか」

……なんか久しぶりに解説らしい解説を聞いたっス。

万「流石天上院君!ドラマチーック!エスセティーック!ファンタスティーック!ラーンディーングー!」

……そして台無しっス。



「くっ、リバースカードを2枚セットしてターンエンド。……おのれ、よくもヴァンパイア一族の誇りに傷を……!宣言するわ!お前は死ぬまで、私の血袋にしてやる!例え死にたいと思っても殺してやらない。死に絶えるギリギリまで血を奪われ続ける地獄を死ぬまで味あわせ続けてあげるわ!」

「私のターン!ドロー!永続罠『ヒステリック・パーティー』を発動!手札を1枚墓地に送り、自分の墓地に存在する『ハーピィ・レディ』を可能な限り特殊召喚する!そして、このカードがフィールド上から離れた時、このカードの効果で特殊召喚したモンスターを全て破壊する!『ハーピィ・クイーン』はフィールド上・墓地に存在する時、『ハーピィ・レディ』として扱う!よって、墓地から『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)2体と『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)1体を攻撃表示で特殊召喚!」

「一気に『ハーピィ』が3体ですって!?」

「更に、『ハーピィ・レディ1』がフィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上の風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップする!『ハーピィ・クイーン』と『ハーピィ・レディ1』は共に風属性!よって攻撃力が300ポイントアップ!(『ハーピィ・クイーン』×2 攻撃力1900→2200 『ハーピィ・レディ1』 攻撃力1300→1600)」

「くっ!?」

「これで終わりよ!『ハーピィ』達でダイレクトアタック!」

3体の『ハーピィ』がカミューラに襲い掛かりました。

「そんな!?この私が!?」

そして、ダイレクトアタックが決まった……かに見えました。

「……なんてね」

「な!?」

『ハーピィ』達の攻撃は、カミューラに直撃する直前、頭上に骸骨の模様の怪し気な赤い月が現れ、その赤い光が障壁となり、『ハーピィ』達の攻撃を防ぎました。

「罠カード『妖かしの紅月(あやかしのレッドムーン)』を発動!手札のアンデット族モンスター1体を墓地に送り、相手モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分の数値だけ自分のライフポイントを回復、その後、このターンのバトルフェイズは終了となる!」

「何ですって!?」

「よって、最初に攻撃してきた『ハーピィ・クイーン』の攻撃力分、2200ポイントのライフポイントを回復!そして、このターンのお前のバトルフェイズは強制終了。残り2体の『ハーピィ』の攻撃も無効よ!」 カミューラ残ライフ5600

「くっ……ターンエンド」

「私のターン!ドロー!私のスタンバイフェイズに墓地の『ヴァンパイア・ロード』の効果を発動!このカードが相手のカードの効果で破壊され墓地に送られた場合、次の自分のターンのスタンバイフェイズにフィールド上に特殊召喚される!蘇れ!『ヴァンパイア・ロード』!」

カミューラが叫ぶと、地中から棺桶が現れ、蓋が開き、中から『ヴァンパイア・ロード』(攻撃力2000)が再び姿を現しました。

「更に魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!そして、フィールド上の『ヴァンパイア・ロード』をゲームから除外!現れよ!『ヴァンパイア・ジェネシス』!」

『■■■■■■!!』(攻撃力3000)

「こ、このモンスターは……!?」

おぞましい雄叫びと共に、巨大なモンスターがその異形の姿を現しました。

「これこそ、我がヴァンパイア一族最強のモンスター。このカードは通常召喚出来ず、自分のフィールド上に存在する『ヴァンパイア・ロード』1体をゲームから除外した場合のみ、手札から特殊召喚することが出来る!そして、1ターンに1度、手札からアンデット族モンスター1体を墓地に送ることで、そのアンデット族モンスターより星の低いアンデット族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する事が出来る!」

「何ですって!?」

「私は手札から星6の『カース・オブ・ヴァンパイア』を墓地に送り、『妖かしの紅月』のコストで手札から墓地に送った星5の『ノーブル・ド・ノワール』(攻撃力2000)を攻撃表示で特殊召喚!」

『ふはははは!』

「くっ……」

「あら、まさかこれで終わりだなんて思ってないでしょうね?」

「な!?」

「永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動!自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する!今墓地に送った『カース・オブ・ヴァンパイア』(攻撃力2000)を攻撃表示で特殊召喚!」

『ガァァァァ!』

「『ヴァンパイア』が、一気に3体も……!」

「ふふふ、更に絶望を味あわせてあげるわ。魔法カード『威圧する魔眼』を発動!自分フィールド上に存在する攻撃力2000以下のアンデット族モンスター1体を選択して発動!このターン選択したモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事が出来る!私は『カース・オブ・ヴァンパイア』(攻撃力2000)を選択するわ!」

「くっ、1ターンの間に、これだけの事をするだなんて……!」

「さあ、今度こそ覚悟なさい!『ヴァンパイア・ジェネシス』(攻撃力3000)で『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)に攻撃!『ヘルヴィシャス・ブラッド』!」

「くっ!?」 アスカ残ライフ2400

体を血の瘴気と化した『ヴァンパイア・ジェネシス』が『ハーピィ・レディ1』に襲い掛かり、溶殺しました。



万「……骸骨が今度は『紅○陣!』とかほざいているが……」

気にしたら負けっスってば。



「ふふふ、これで『ハーピィ・レディ1』の効果は無くなり、『ハーピィ・クイーン』の攻撃力が元に戻った。『ノーブル・ド・ノワール』(攻撃力2000)で『ハーピィ・クイーン』(攻撃力2200→1900)に攻撃!『オングル・ド・ノワール』!」

「くぅぅ……」 アスカ残ライフ2300

2体の『ハーピィ・クイーン』の内1体も、『ノーブル・ド・ノワール』の鋭い爪で引き裂かれてしまいました。

「まだ大きいのが1つ残ってるわよ!『威圧する魔眼』の効果を受けた『カース・オブ・ヴァンパイア』(攻撃力2000)でダイレクトアタック!『ネイルファングブロー』!」

「あぁぁぁ……!?」 アスカ残ライフ300

最後の『カース・オブ・ヴァンパイア』の鋭い爪による斬撃も、アスカに直撃しました。

「ターンエンド。ふふふ、辛うじてライフポイントは残ったようね。でも、これでお前のライフポイントは残り僅か。それに対して、私のライフポイントはその20倍近く。更に、お前のフィールド上には『ハーピィ・クイーン』が1体のみ。次のの3体の『ヴァンパイア』達の攻撃を凌げるのかしら?」



万「うがー!このままでは天上院君が負けてしまうー!」

……いい加減にもうツッコまないっスよ。



「く……私の……ターン!」

「……はぁ、往生際の悪い小娘ねぇ。いい加減諦めてくれないかしら?」

「まだ……よ!」

ボロボロになりながらも、アスカは立ち上がりました。

「あなた達に、成す術も無く殺された皆や、仲間であるジューダイやマナの為にも、私は絶対に、最後まで諦めない!」

「……全く、面倒臭くてしょうがないわ。さっさとターンを進めなさい」

「……ドロー!……魔法カード『天使の施し』発動!デッキからカードを3枚ドローして、手札からカードを2枚墓地に送る!カード、ドロー!……っ!」

カードを3枚ドローした瞬間、アスカの目が見開かれました。

「……手札からカードを2枚墓地に送る!そして、装備魔法『継承の印』を発動!このカードは自分の墓地に同名モンスターカードが3枚存在する時に発動する事が可能!そのモンスター1体を選択して自分フィールド上に特殊召喚し、このカードを装備する!このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する!」

「はぁ?何言ってるのよ?お前の墓地に同名カード3枚なんて無いじゃない!」

「忘れたの?私の墓地の『ハーピィ・レディ1』はカード名を『ハーピィ・レディ』として扱い、同じく墓地の『ハーピィ・クイーン』も、フィールド上及び墓地では『ハーピィ・レディ』として扱うのよ!」

「それでも、お前の墓地の『ハーピィ・レディ』はその2枚だけの筈……! 『天使の施し』……!」

「そう、私は『天使の施し』で墓地に送った、『ハーピィ・レディ1』と同様にカード名を『ハーピィ・レディ』として扱う『ハーピィ・レディ3』(攻撃力1300)を、『継承の印』を装備して特殊召喚!」

『ハッ!』

「そして更に、手札から速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!このカードは相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動する事が出来る!その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚する!」

「何ですって!?……! まさか!?」

「『ハーピィ・レディ』として扱われる『ハーピィ・レディ3』を対象に発動する事により、墓地で『ハーピィ・レディ』として扱われている『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)と『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)、更にデッキから、『ハーピィ・レディ1』『ハーピィ・レディ3』と同様に、『ハーピィ・レディ』として扱う効果を持つ『ハーピィ・レディ2』(攻撃力1300)を攻撃表示で特殊召喚!」
「一気に4体の『ハーピィ』を特殊召喚ですって!?……でも『地獄の暴走召喚』の効果には続きがあるわ!相手は自分のフィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを自分自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚する!『ヴァンパイア・ジェネシス』は召喚条件を持つモンスター故に、このカードの効果では特殊召喚出来ない。よって、私はフィールド上の『カース・オブ・ヴァンパイア』を選択!デッキから残り2体の『カース・オブ・ヴァンパイア』(攻撃力2000)をデッキから特殊召喚!」

『『ガァァァァァ!!』』

これで二人のフィールドに、それぞれ5体の『ハーピィ』と『ヴァンパイア』が揃いました。

「ふん、何を狙っているかと思えば、確かに、再び『ハーピィ・レディ1』の効果でお前のフィールド上のモンスターの攻撃力は上がっている。(『ハーピィ・クイーン』×2 攻撃力1900→2200 『ハーピィ・レディ1』『ハーピィ・レディ2』『ハーピィ・レディ3』 攻撃力1300→1600)でも、そんな事をしても、我が最強の『ヴァンパイア・ジェネシス』(攻撃力3000)の足下にも及ばないわ!」

「……」

「更に良いことを教えてあげるわ。『ノーブル・ド・ノワール』がフィールド上に表側表示で存在する限り、相手モンスターの攻撃対象はこのカードのコントローラーが選択する。つまり、このカードが存在する限り、お前の攻撃対象は全て私が選んだモンスターになるのよ!『ヴァンパイア・ジェネシス』にね!」

「……」

「仮に、何らかの方法で『ノーブル・ド・ノワール』を破壊しても、お前のモンスターで倒せるのは『カース・オブ・ヴァンパイア』のみ。だが、このカードは戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、500ポイントライフを払う事で次のターンのスタンバイフェイズ時に、このカードを墓地から自分フィールド上に特殊召喚する!そして、この効果によって特殊召喚に成功した時、このカードの攻撃力は500ポイントアップする!ましてや、私の残りライフポイントは5000以上!そんな微量のダメージ、受けたところで何の問題もない!」

「……」

「……悪あがきはおしまいかしら?ならとっとと……」

「……悪あがきじゃないわ。私はこの状況を狙っていたのよ」

「っ! この期に及んでまだ減らず口を!この状況の何を望んでいたとほざく!」

「それは自分の目で確かめなさい!魔法カード『ハーピィ・レディ-鳳凰の陣』を発動!自分フィールド上の『ハーピィ・レディ』の数だけ相手のモンスターを破壊!」

「なっ!?」

「もう説明するまでもないけど、私のフィールド上には『ハーピィ・レディ』として扱うモンスターが5体。よって、あなたのフィールド上のモンスター5体を全て破壊!そして、『ハーピィ・レディ-鳳凰の陣』は破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!あなたのフィールド上のモンスターの攻撃力の合計は……11000!」

「ば、ばかな!?……! 『地獄の暴走召喚』でモンスターを特殊召喚させたのは、まさかこの為!?」

『ハーピィ』達が陣形を組み、飛び上がると、1羽の燃え盛る鳳凰と化しました。

「受けなさい!『鳳凰疾駆(レース・オブ・フェニックス)』!」

鳳凰はカミューラのモンスター達を次々と貫き……

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 カミューラ残ライフ0

そのままカミューラをも貫きました。

「馬鹿……な。この……私……が……こんな……小娘……なんか……に……」

先程のとは違う本当の断末魔の声を上げ、カミューラは消滅しました。

「はぁ……はぁ……やった……」

それと同時に、アスカも崩れるように倒れました。

「ジュンコ……モモエ……皆の仇を……取ったわ……でも……ごめんなさいジューダイ……少し遅れちゃいそう……頑張っ……て……」

前方の扉を申し訳なさそうに見つめると、アスカはそのまま目をつむりました。



今日のワイト

和「えー、本日はアニメオリジナルの魔法カード『ハーピィ・レディ-鳳凰の陣』ですね」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「通常魔法で、自分フィールド上の『ハーピィ・レディ』の数だけ相手のモンスターを破壊し、破壊されたモンスターの攻撃力の合計を相手のライフポイントから引く。更に、このカードが破壊したモンスターの特殊効果は無効化される。……何この強さ!?」

3ワイト「「「…………(ガタガタガタブルブル)」」」

和「言わば魔法カード『滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)』と『黒炎弾』を足して2で割った感じですかね?しかもこういった必殺技カードに有りがちな『発動したターンにそのモンスターは攻撃出来ない』効果も有りませんし……あ、因みに、原作では勿論、舞さんがドーマ編で使っていました」

3ワイト「「「カタカタカタ……」」」

和「へ?自分達も必殺技カードが欲しい?どんなのさ?」

3ワイト「「「カタカタカタ……」」」

和「魔法カード『ホーンテッド・ナイトメア』、フィールド上の『ワイトキング』の元々の攻撃力分のダメージを与える……って、うぉーい!確実に3000~4000ダメージじゃんそれ!」

3ワイト「「「……(コクコク)」」」

和「しかも!今の環境じゃライフ8000でも下手すりゃ即死じゃんそれ!」
3ワイト「「「?」」」

和「だーかーらー!『ワイトキング』の最高攻撃力11000にまで上がってるじゃん!最近出た『ワイトメ……」

3ワイト「「「カタカタカタ(シャラップ)!」」」

和「へぶし!?」

3ワイト「「「……」」」

和「……あれ、僕今何か口走った?」

3ワイト「「「カタカタ……」」」

和「へ?ブロンドおかっぱのワイト?何それ美味しいの?」

3ワイト「「「……」」」

和「あ、もう時間だ。では今日はこの辺で。見てくんないと暴れちゃうぞ?

3ワイト「「「カタカタカタ(スレ○ヤーズ)!?」」」



後書き

どうも、9月の新禁止・制限にショックを隠せない八王夜デス。

『黒薔薇龍』が無制限で『黒穴』が制限に復帰って、なぜにこんなリセットカードばっかり復活するんだぃ……しかも『大嵐』禁止……(涙

……あ、でも『サイバー・ドラゴン』制限解除は嬉しいかも(笑



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第六話 最大の敵、それは……
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/06/15 23:39
マナとアスカ、二人の頼もしい仲間の死力の尽くした戦いの末、ジューダイはとうとう、サオトメ城の最深部である、王座の間の扉の前に着きました。

「ここに、ダークネスが……よし!」

意を決したジューダイは扉に手を掛け、開きました。

と、

パチパチパチパチ……

「!?」

部屋の中は薄暗く、数個の篝火の光で、やっと王座の間のきらびやかな全容を把握出来るぐらいでした。

そしてそんな中、鳴り響く音の先には、薄暗い部屋に溶け込むような漆黒のマスクとマントを身に付けた男が、口元に笑みを浮かべながら王座に優雅に座り、拍手を打ち鳴らしていました。

「ようこそ、私を倒すべく立ち上がった、勇敢なる若き勇者よ」

「お前が!?」

「如何にも。私が君の駆逐すべき対象、ダークネス。以後、見知りおきを」

と、ダークネスは立ち上がり、座っていたのと同様に、優雅な礼をしました。



……と言うか、吹雪さんの格好がリアルダークネスなんスけど……

万「……無駄に芸が細かいな」



「まずはおめでとう、と言っておこうか。よくぞここまでたどり着いた。称賛しよう」

「ふざけんな!この国の人達を散々苦しめておいて、何がおめでとうだ!」

「おやおや、何をそんなにご立腹なんだい?弱者が強者に踏みにじられるのは世の常じゃないか?」

「お前……!」

「ふふふ、折角ここまで来たんだ。私の最高傑作を見ていくといい」

「最高……傑作?」

ジューダイはダークネスの指差す方、さっきまでダークネスが座っていた玉座の隣のもう1つの玉座へと目を向けました。

「! あれは……!」

そこには一人の少女が眠るように座っていました。

「そう、この国の王女、レイ姫だよ」

ダークネスはその傍らに立ち、その綺麗な髪を手で梳きました。

「だが、彼女のこの可憐さも、時を隔てれば失われていく。それはあまりにも惜しい。だから、この可憐さを永遠に私の手中にする為に、こうして、彼女の時を止めたのさ。そうすれば、彼女もこの美しさを、永遠にたもっていられる。悪い話ではないだろう?」

「お前……!どうかしてるぜ!」

「ふふふふ、私は自称芸術家でね、感覚が君達常人と違うのは当たり前の事だよ」

「……お前を、このまま野放しにはしておけない!」

ジューダイはデュエルディスクを構えました。

「ふふふ、いいだろう。この私が直々にお相手しよう……と言いたい所だが、君には最終試験を受けて貰おう」

「最終試験……だと?」

「そう、私と戦う資格のあるかどうかの、ね」

と、ダークネスは虚空から大きな鏡を取り出し、ジューダイをそれに映した。

「な!?」

そこに映し出されたのは、黒い甲冑を着込み、禍々しい目をしたジューダイの姿でした。

そして、ジューダイが動いていないというのに、鏡の中のジューダイが勝手に動き出し、なんと鏡から実体となって出てきました。

「オ……レ?」

「ククク、そう、俺はお前。お前自身の、心の闇の具現だ」

「この鏡は映した者の心の闇を映し出し、実体を持たせる。それも、映る者が光に満ちていれば、それと比例してその闇の濃度を増すのさ。さぁ、君は自分自身を超える事が出来るかな?」

「ククク、俺はお前を殺し、本物となるのだ!」

「くっ……させるかよ!皆の為にも、お前達になんか負けるものか!」



万「……これで神楽坂は四役目か。と言うか、あの黒い甲冑は何なんだ?」

……特注した人は「覇王キター!」とか言って喜んでたっスよ?

万「……いよいよもって意味がわからん」



「「デュエル!!」」

「俺のターン、ドロー!モンスター1体を裏側守備表示でセット、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「オレのターン!ドロー!『E・HERO バブルマン』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に自分のフィールド上に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事が出来る!デッキからカードを2枚ドロー!更に魔法カード『融合』発動!『バブルマン』と手札の『E・HERO フェザーマン』『E・HERO スパークマン』の3体を融合!現れろ!『E・HERO テンペスター』(攻撃力2800)!」

『ハァッ!』

「『テンペスター』(攻撃力2800)で裏側守備表示モンスターに攻撃!『カオス・テンペスト』!」

『テンペスター』が放った風の奔流が闇ジューダイの裏側守備表示モンスターに襲い掛かりました。



万「……なんだその闇ジューダイというのは」

だがしかし……

万「シカトするな!」



「何!?」

『テンペスター』の攻撃を受けても、闇ジューダイのフィールド上の裏側守備表示モンスター、1つの大きな顔だけの体を持ち、その口から幾つもの首が生えているモンスターはビクともしませんでした。


「ククク、『フュージョニストキラー』(守備力1200)と戦闘する融合モンスターの攻撃力は0になる。よって、『テンペスター』の攻撃力は0になり、お前には反射ダメージを受けて貰う」

「くっ!?こいつ、オレが融合モンスターで攻撃する事を……!?」 ジューダイ残ライフ2800

「言った筈だ。俺はお前の心の闇の具現。俺はお前自身だ。お前がどういった手をうってくるかなど、読めて当然だ」

「くっ……リバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!ククク、そのリバースカードで『テンペスター』を破壊から守る気か?」

「っ……!」

「『テンペスター』は自分フィールド上のカード1枚を墓地に送る事により、そのターン、戦闘によっては破壊されない効果を持つ。そのリバースカードを墓地に送って『テンペスター』の戦闘破壊を免れるつもりなんだろう?」

「くっ………」

「ふふふ、なかなかに厄介な物だろう?自分自身を相手にするのというのは」

ダークネスが再び王座に座りながら、楽しそうに言いました。

「速攻魔法『サイクロン』発動!フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する。そのリバースカードを破壊!」

「何!?ぐっ!?」

ジューダイのフィールド上のリバースカードが破壊されてしまいました。

「くっ、罠カード『ダミー・マーカー』の効果発動!このカードが破壊された時、デッキからカードを1枚ドローする!この時、破壊したのが相手の魔法カードの効果だった場合、デッキからカードを2枚ドローする!デッキからカードを2枚ドロー!」

「ククク、転んでもただでは起きないか。ならば、『フュージョニストキラー』(攻撃力1400)で『テンペスター』(攻撃力2800)に攻撃!」

「くっ……」

「当然、『フュージョニストキラー』の効果で『テンペスター』の攻撃力は0になる!」

『グアァァァ!?』

「『テンペスター』!?」 ジューダイ残ライフ1400

『フュージョニストキラー』の無数の顔から放たれた黒いもやが『テンペスター』を無力化し、粉砕しました。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド。ククク、どうした?早くもライフが半分をきったぞ?」

「くっ、オレのターン!ドロー!『星見鳥ラリス』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!このカードの攻撃力はダメージステップ時のみ、戦闘する相手モンスターの星×200ポイントアップする!『フュージョニストキラー』(攻撃力1400)を攻撃!『スターダスト・アタック』!」

『星見鳥ラリス』が翼を振り上げ、頭上で輪を作ると、その輪の中にエネルギーを溜め、そのエネルギーで攻撃をしかけようとしました。

「『フュージョニストキラー』の星は4!よって、『星見鳥ラリス』の攻撃力は4×200で800ポイントアップして攻撃力は1600……」

「ククク、そう焦るな」

「なに!?」

「ダメージステップに入る前に、永続罠『血の代償』発動。自分のメインフェイズ時若しくは相手のバトルフェイズ時、500ライフポイントを払う事で、モンスター1体を通常召喚する。『フュージョニストキラー』を生け贄に『虚無魔人(ヴァニティ・デビル)』(攻撃力2400)を生け贄召喚!」 闇ジューダイ残ライフ3500

『ふははははは!』

闇ジューダイが召喚したのは、黒いマントを羽織った、赤髪の悪魔でした。



万「……誰だ、今ステ○ル=マグヌスとか言った馬鹿は」

……言わなくてもわかるでしょ?



「ククク、『虚無魔人』の星は6。『星見鳥ラリス』で攻撃を仕掛けても、その攻撃力は6×200で1200ポイントアップの2000止まり。それでも攻撃するのか?」

「くっ……攻撃を中断。バトルフェイズを終了……」

「更に、『虚無魔人』は特殊召喚が不可能だが、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、お互いのプレイヤーはモンスターを特殊召喚する事が出来なくなる」

「!? それじゃあ……」

「ククク、その通り、このモンスターが存在する限り、特殊召喚扱いである融合召喚は封じられる。お前の切り札である、『E・HERO』の融合もな!」

「くっ!?」



万「……三沢のなんかよりも、よっぽど十代殺しのデッキとして仕上がってるんじゃないか?」

……それは言わないであげようよ。



「……リバースカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!『サイファー・スカウター』(攻撃力1350)を攻撃表示で召喚!そして『虚無魔人』(攻撃力2400)で『星見鳥ラリス』(攻撃力800→2000)に攻撃!『ヴァニティ・デス・インパクト』!」

「ぐぁぁぁ!?」 ジューダイ残ライフ1000

『虚無魔人』の放った波動が『星見鳥ラリス』を跡形も無く消し飛ばしました。

「これで終わりだ!『サイファー・スカウター』(攻撃力1350)でダイレクトアタック!」

『サイファー・スカウター』がジューダイにとどめを刺すべく、肩のキャノン砲をジューダイに向けました。

「リバースカード発動!速攻魔法『速攻召喚』!手札のモンスター1体を通常召喚する!」

「……」

「手札から『フレンドッグ』(守備力1200)を守備表示で召喚!」

「……ククク、そうか。それはそうだろうな」

「!?」

「さっきのターン、お前は『星見鳥ラリス』で攻撃を仕掛けてきた。だが『星見鳥ラリス』は攻撃した場合、ダメージステップ終了時にゲームから除外され、次の自分のターンのバトルフェイズ開始時に自分フィールド上に表側攻撃表示で戻る効果を持っている。さっきのターン、そのまま『星見鳥ラリス』で『フュージョニストキラー』に攻撃していた場合、『星見鳥ラリス』は除外され、お前は、残りライフが僅か1400だというのに全くの無防備となる。ならば、相手のモンスターを破壊するカードが少ないお前のデッキからして、そのリバースカードは相手の攻撃を防ぐカードか壁モンスターを召喚するカードのいずれか……という訳だ」

「ぐっ……」

またしても、ジューダイは手の内を読まれてしまいました。

「まぁ、『虚無魔人』の特殊召喚封じを越えて壁モンスターを召喚してきた事には驚いたがな。バトル再開だ。『サイファー・スカウター』(攻撃力1350)で『フレンドッグ』(守備力1200)を攻撃!」

『サイファー・スカウター』の肩のキャノン砲が発射され、『フレンドッグ』が粉砕された。

「くっ……『フレンドッグ』の効果発動!このモンスターが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地から『E・HERO』と名のついたカード1枚と『融合』1枚を手札に加える!墓地から『バブルマン』と『融合』を手札に加える!」

「ククク、だが、『虚無魔人』によって特殊召喚を防がれている今の状態で『融合』を回収しても意味は無い!ターンエンドだ」

「くっ……オレのターン!ドロー!魔法カード『天使の施し』発動!デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚墓地に送る!そして、墓地に送った『E・HERO ネクロダークマン』の効果発動!このカードが墓地に存在する時1度だけ、自分は『E・HERO」と名のついたモンスター1体を生け贄無しで召喚する事が出来る!『E・HERO エッジマン』(星7 攻撃力2600)を攻撃表示で召喚!」

『フンッ……トァッ!』

「……」

「この召喚は特殊召喚では無く、通常召喚だぜ!『エッジマン』(攻撃力2600)で『虚無魔人』(攻撃力2400)に攻撃!『パワー・エッジ・アタック』!」

『エッジマン』が突進し、腕の刃で『虚無魔人』を切り裂きました。 闇ジューダイ残ライフ3300

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!どうだ!お前の『E・HERO』封じの切り札を破壊したぜ!」

ジューダイが反撃に転ずるかに思われました。

が、

「……『E・HERO』封じの切り札……だと?ククク、ハハハハハ、ハッハハハハ!」

「!? 何がおかしい!?」

「我ながらおめでたい奴だ。『虚無魔人』が『E・HERO』封じの切り札だとでも思っていたのか?」

「なに!?」

「俺のターン!ドロー!『サイファー・スカウター』(攻撃力1350)で『エッジマン』(攻撃力2600)に攻撃!」

「な!?」

なんと、闇ジューダイは攻撃力がほぼ半分である『サイファー・スカウター』で『エッジマン』に攻撃を仕掛けました。

「この『サイファー・スカウター』こそ、正真正銘の『E・HERO』殺し。勇者を抹殺する為の殺人機械(キラーマシーン)だ。『サイファー・スカウター』は戦士族モンスターとの戦闘のダメージ計算時、攻撃力と守備力がそのダメージ計算時のみ2000ポイントアップする!」

「なに!?」

「よって、『サイファー・スカウター』の攻撃力は3350となる!行け!『サイファー・スカウター』!『ブレイブキラー・キャノン』!」

「ぐぁぁぁ!?」 ジューダイ残ライフ250

『サイファー・スカウター』の発射したキャノン砲が『エッジマン』を粉砕しました。



万「……なんか、今の『サイファー・スカウター』の説明部分に聞き覚えがあるんだが……」

……なんちゃらの大冒険っスよ。多分。

万「……やはりか……」



「くっ……罠カード『ヒーロー・シグナル』発動!自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の手札またはデッキから『E・HERO』という名のついた星4以下のモンスター1体を特殊召喚する!デッキから『E・HERO バーストレディ』(星3 攻撃力1200)を特殊召喚!」

『ハッ!』

「諦めるもんか!オレが必ず、皆を守ってみせるんだ!」

「……リバースカードを1枚セットしてターンエンド。ククク、何故そんなに無駄な事をするんだ?」

「無駄……だと?」

諦めずに抵抗するジューダイを、闇ジューダイが哀れむように嘲りました。

「そう、例えお前がこの国を守ったとしても、それは万物の終焉に待つ『滅び』という運命を先伸ばしにしているに過ぎない」

「……」

「ククク、これを無駄以外の何と言う?この国も、民も、お前の仲間も、いつかは滅び逝く。それを守る為に命を賭けるお前など、道化以外の何でもないじゃないか」

「……るせぇ」

「む?」

「うるせぇ!!!」

「!?」

部屋中に、ジューダイの叫びが響きました。

「オレはこの国を、国の人々を、仲間を助けたいから助けんだ!そんな理屈なんてどうだっていいんだよ!オレのターン!ドロー!魔法カード『バースト・インパクト』発動!『バーストレディ』が自分フィールド上に表側表示で存在する時、フィールド上の『バーストレディ』以外のモンスターを全て破壊し、破壊したカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える!」

『ハァァァァ!』

『バーストレディ』が『サイファー・スカウター』を破壊すべく、掌に炎を溜め出しました。

が、

「それも、『バーストレディ』を特殊召喚した時点で読めているぞ!カウンター罠『魔宮の賄賂』発動!相手の魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する!」

「くっ!?こいつまで!?」

闇ジューダイの発動したカウンター罠により、それも霧散してしまいました。

「ククク、万策尽きたか?」

「……まだだ!『魔宮の賄賂』が発動した時、相手はデッキからカードを1枚ドローする!最後の最後まで、オレは絶対に諦めない!カード、ドロー!」

……このデュエルの勝敗を決するドローがされました。

「手札から魔法カード『O-オーバーソウル』発動!自分の墓地から『E・HERO』と名のついた通常モンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する!墓地から『フェザーマン』(攻撃力1000)を特殊召喚!更に手札から魔法カード『融合』発動!『フェザーマン』と『バーストレディ』を融合!来い!『E・HERO フレイム・ウィングマン』!(攻撃力2100)」

『ウォォォ……ハァッ!』

「ククク、やはり最後はフェイバリットカードか。だが当然、『フレイム・ウィングマン』も戦士族。『サイファー・スカウター』には勝てん」

「……お前に教えてやるよ」

「!?」

「人はなぁ、守りたい物を守る為だったらいくらでも強くなれんだよ!手札から『バブルマン』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!そして、『フレイム・ウィングマン』(攻撃力2100)で『サイファー・スカウター』(攻撃力1350)に攻撃!」

「!? 何を考えている?『サイファー・スカウター』は戦士族モンスターとの戦闘のダメージ計算時、攻撃力と守備力がそのダメージ計算時のみ2000ポイントアップすると言った筈だ!」

「わかってるさ!手札から、速攻魔法『バブルイリュージョン』発動!『バブルマン』が自分フィールド上に表側表示で存在する時、このターン、自分は手札から罠カード1枚を発動する事が出来る!」

「手札から……だと?」

「そう、お前が『魔宮の賄賂』でドローさせてくれた、このカードさ!」

「! 『ヒーローズ・バックアップ』……!」

「このカードはバトルフェイズ中のみ発動可能!自分フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスター1体の戦闘時、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力が1000ポイント以上高い場合、ダメージ計算時自分の墓地に存在する『E・HERO』1体を選択し、その攻撃力分、選択したモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時までアップさせる!オレは『フレイム・ウィングマン』を選択!そしてダメージステップに入り、『サイファー・スカウター』の攻撃力が2000ポイントアップ!そしてこの時点で『サイファー・スカウター』(攻撃力1350→3350)の攻撃力は『フレイム・ウィングマン』(攻撃力2100)の攻撃力を1000ポイント以上上回る!この瞬間、『ヒーローズ・バックアップ』の効果発動!オレが選択する墓地のモンスターは『テンペスター』!よって、その攻撃力分、2800ポイントが『フレイム・ウィングマン』の攻撃力に加算される!」

『ハァァァァ……!』(攻撃力2100→4900)

「攻撃力4900だと!?」

「いけ!『フレイム・ウィングマン』!『フレイムシュート』!」

『ハァァァ……トァァァ!』

「ぐあぁぁぁぁ!?」 闇ジューダイ残ライフ1850

『フレイム・ウィングマン』(攻撃力4900)の放った炎が『サイファー・スカウター』(攻撃力3350)を撃破しました。

「『フレイム・ウィングマン』の効果発動!このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!『サイファー・スカウター』の元々の攻撃力、1350ポイントのダメージだ!」

「ぐあぁぁぁぁ!?」 闇ジューダイ残ライフ500

『フレイム・ウィングマン』が闇ジューダイに追撃の炎を放ちました

「これで終わりだぁ!『バブルマン』(攻撃力800)でダイレクトアタック!『バブルシュート』!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 闇ジューダイ残ライフ0



「はぁ……はぁ……」

デュエルに敗れた闇ジューダイは闇へと還り、跡形も無く消え去りました。

パチパチパチパチ……

「!?」

と、先程のように、ダークネスがジューダイに向かって拍手をしていました。

「ふふふふふ、素晴らしい!君は今、自分という最大の相手を乗り越えたわけだ。認めよう。君は私と対峙するだけの資格がある」

ダークネスが、さも愉快そうに言いました。

「ダークネス……!」

「ではお望み通り、私が直々にお相手しよう」

「くっ……!」

『自分』とのデュエルに見事勝利したジューダイ。しかし、間髪入れずの最終決戦。彼の、そしてこの国の運命や如何に!?



万「……まだ続くのか?この寸劇は」


今日のワイト

和「今日は十代君が使ったアニメオリジナルのカードをご紹介!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「まずは罠カード『ヒーローズ・バックアップ』、このカードはバトルフェイズ中のみ発動可能、自分フィールド上のモンスター1体を選択し、選択したモンスター1体の戦闘時、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力が1000ポイント以上高い場合、ダメージ計算時自分の墓地に存在する『E・HERO』1体を選択し、その攻撃力分、選択したモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時までアップさせる。……場合によっては攻撃力が一気に2000以上発揮するものの、若干発動条件が厳しい。墓地に存在するのが『E・HERO クレイマン』『E・HERO バブルマン』『E・HERO バブルマン・ネオ』『E・HERO アイスエッジ』(全て攻撃力800)『E・HERO クノスぺ』(攻撃力600)だけだと、最低でも攻撃力が1000ポイント以上離れている為殆ど無意味です」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

「このカードよりも、フィールド魔法『魔天楼-スカイスクレイパー-』、『E・HERO」と名のつくモンスターの攻撃時、攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、攻撃モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする。……の方が、爆発力は低いものの、攻撃力アップが一括1000ポイントであるという安定感とフィールド魔法ゆえの持続力、『E・HERO キャプテンゴールド』でサーチ出来る事もあり、カード化されたとしてもおそらくこちらの方が優先されるんじゃないでしょうか」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「続いて、速攻魔法『速攻召喚』、手札のモンスター1体を通常召喚する。……同じく今回登場した永続罠『血の代償』の速攻魔法版。実際にOCGにある魔法カード『二重召喚(デュアルサモン)』、このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。……と比べると、速攻魔法である点では勝っているものの、『手札のモンスター』の召喚である為、『二重召喚』のようなデュアルモンスターのサポートは不可能となってます」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「最後に罠カード『ダミー・マーカー』、セットされているこのカードが破壊された時、デッキからカードを1枚ドローする。この時、破壊したのが相手の魔法カードの効果だった場合、デッキからカードを2枚ドローする。……普通のデッキではあまり役には立たないものの、『スクラップ』系のシンクロモンスターの効果と組み合わせれば結構強力……かも?どちらにしろ、事故の元であることには変わりありませんが」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「それでは今日はこの辺で、Next C○nan 『骸骨一家殺人(?)事件』!」

3ワイト「「「!?」」」

和「Next C○nan's HINT 罠カード『因果切断』」

3ワイト「「「!!?」」」



あとがき

どうも、OOの映画を前回の話を書いた次の日に見て、イマイチスッキリしなかった八王夜です。というか沙慈っちが三沢君にしかみえなかt(オイ
いや、途中までは良かったんですけど、あの終わり方は個人的に好みじゃなかったんですよね(あれが良かったという方はごめんなさい

さて、次回も劇場編の更新を予定です。いよいよクライマックスです!原作ではデュエル方面では三沢君並みに空気だったブッキー無双で行きます!乞うご期待!



[6474] 番外 演劇『誰かがためにデュエルする』 第七話 決戦
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/07/12 23:58
闇ジューダイになんとか勝利したジューダイでしたが、それも束の間、いよいよ最終決戦の時がやってきました。

「……ふむ」

と、ダークネスは王座に腰掛けたまま、指をパチリと鳴らしました。

「!?」

と、突如ジューダイの目の前に、豪奢な椅子が現れました。

「掛けたまえ。このまま始めては君は連戦になってしまう。それは余りにもフェアじゃない。休憩がてら、少し語り合おうではないか」

「……」

しかし、ジューダイは警戒して座りませんでした。

「……ふふふ、案外用心深いようだね。まぁ、それならば立ったままでいいさ」

ダークネスが再び指を鳴らすと、椅子は溶けるように消えました。

「……弱い者が強い者に踏みにじられるのは当然とか言いながら、フェアじゃないとか、よくわかんねえ奴だな」

ジューダイが尚も警戒しながら返しました。

「そうでもないだろう?私は弱肉強食理論者だ。故に、私は強者を愛する。そして、その強者を真正面から打ち倒す事により、私は真の強者であると感じられる。何も矛盾はあるまい?」

「……じゃあ、なんでこの国を乗っ取ったんだよ!?つまりお前の目的は強い奴と戦う事だろ!?そんな事をして、皆を苦しめる必要なんてないじゃねえかよ!」

ダークネスの答えに、怒ったジューダイがそう問い詰めました。

「ふふふ、その答えは、今目の前に居るじゃないか」

「? どういう事だ?」

「つまり、悪の魔王が残虐非道な事をすれば、自然と、君のように腕に覚えのある勇者が私を倒しに来る。そういう事さ」

「な!?」

「ふふふ、まぁ、言うなればそう、娯楽の為さ」

「っ! お前のその馬鹿げた娯楽のせいで、この国の皆は苦しんでいるんだぞ!?」

「残念ながら、他人の事には興味が無くてね。それに何度も言っているじゃないか。弱い者が強い者に踏みにじられるのは当然……とね。自衛の力も持たない彼らが悪いのさ」

「……っ! ふざけんな!」

ジューダイが激昂しました。

「……やっぱり、お前を野放しにしていたら、この国に平和は訪れない!お前はここで、オレが倒す!」

「ふふふ、いいだろう。そちらの体力も回復したようだし、そろそろ決戦と行こうじゃないか」

「望む所だ!」

……この国の運命を決める戦いが始まります。



「「デュエル!!」」

「オレのターン!ドロー!『E・HERO フェザーマン』(守備力1000)を守備表示で召喚!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「私のターン、ドロー!魔法カード『強欲な壺』発動!デッキからカードを2枚ドロー!そして『黒竜の雛』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!」

『ピィィィ!!』

「そして『黒竜の雛』の効果を発動!自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、自分の手札から『真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)』を1体特殊召喚する!現れよ我が分身!『真紅眼の黒竜』!(攻撃力2400)」

と、『黒竜の雛』が炎に包まれ……

『ギャオォォォ!!』

その成長した姿、『真紅眼の黒竜』が現れました。

「『真紅眼の黒竜』(攻撃力2400)で『フェザーマン』(守備力1000)に攻撃!『ダーク・メガ・フレア』!」

「ぐっ……!?」

『真紅眼の黒竜』の放った黒炎が『フェザーマン』を粉砕しました。

「くっ、罠カード発動!『ヒーロー・シグナル』!自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、自分のデッキまたは手札から『E・HERO』と名のついた星4以下のモンスター1体を特殊召喚する!デッキから『E・HERO バーストレディ』(星3 守備力800)を守備表示で特殊召喚!」

「私はリバースカードを2枚セットしてターンエンド」

「オレのターン!ドロー!魔法カード『戦士の生還』を発動!自分の墓地の戦士族モンスター1体を選択して手札に加える!オレは墓地から『フェザーマン』を手札に加える!そして魔法カード『融合』を発動!オレのフィールド上の『バーストレディ』と手札の『フェザーマン』を融合!来い!『E・HERO フレイム・ウィングマン』!(攻撃力2100)」

『フンッ……トァ!』

「ほぅ、いきなりフェイバリットのお出ましとは。だが『フレイム・ウィングマン』では『真紅眼の黒竜』には敵わないが?」

「いつまでも油断していると、痛い目見るぜ?更に魔法カード『H-ヒートハート』発動!このターンのエンドフェイズまで、自分フィールド上のモンスター1体の攻撃力を500ポイントアップさせ、貫通能力を持たせる!『フレイム・ウィングマン』の攻撃力を500ポイントアップ!(攻撃力2100→2600)」

『フレイム・ウィングマン』には戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える効果があります。『フレイム・ウィングマン』(攻撃力2600)で『真紅眼の黒竜』(攻撃力2400)を戦闘破壊した場合、その効果と戦闘ダメージで2600ポイントのダメージを与えられます。

「いくぜ!『フレイム・ウィングマン』(攻撃力2600)で『真紅眼の黒竜』(攻撃力2400)に攻撃!『フレイムシュート』!」

『ハァァァ……!』

『フレイム・ウィングマン』が『真紅眼の黒竜』に向かって炎を放とうとしました。

「ふふふ、油断?何の事だい?」

「っ!」

「これは、『余裕』というものだよ。罠カード発動!『バーストブレス』!」

「なに!?」

「自分フィールド上のドラゴン族モンスター1体を生け贄に捧げ、そのモンスターの攻撃力以下の守備力を持つ表側表示モンスターを全て破壊する!私は『真紅眼の黒竜』を生け贄に捧げる!そしてフィールド上の守備力がその攻撃力、2400以下の表側表示モンスターを全て破壊する!よって、『フレイム・ウィングマン』(守備力1200)を破壊!」

『ギャオォォォ!』

『グアァァァ!?』

「くっ!?」

『真紅眼の黒竜』が自らも巻き込む程の広範囲にブレスを吐き、『フレイム・ウィングマン』と、そして自分自身も粉砕しました。



万「……今度はなんか全身包帯巻きの人斬りっぽいセリフが出たぞ」

……次は『今のはメ○ゾーマではない。○ラだ』とか言いそうっスね

万「……ありうるな」



「くっ……ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!魔法カード『天使の施し』発動!デッキからカードを3枚ドローし、手札からカードを2枚墓地に捨てる!更に魔法カード『手札抹殺』発動!お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする!」

「くっ……」

「更に魔法カード『黙する死者』を発動!自分の墓地に存在する通常モンスター1体を選択し、表側守備表示で自分フィールド上に特殊召喚する!私の墓地から、通常モンスターである『真紅眼の黒竜』(守備力2000)を特殊召喚!」

『ギャオォォォ!』

「……」

「ふふふ、守備表示だからといって、安心してないかい?」

「っ!」

「『黙する死者』の効果で特殊召喚したモンスターはフィールド上に表側表示で存在する限り攻撃する事が出来ない。だが、だからと言って、君にダメージを与える術が無い訳では無い。魔法カード『黒炎弾』発動!このターン、自分フィールド上の全ての『真紅眼の黒竜』の攻撃を封じる代わりに、自分フィールド上に表側表示で存在する『真紅眼の黒竜』1体の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!」

「なに!?」

「『黙する死者』の効果によって攻撃を封じられているとはいえ、私の『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力は2400のまま。よって、君にその数値分、2400ポイントのダメージを与える!」

『ギャオォォォ!!』

「ぐあぁぁぁぁ!?」 ジューダイ残ライフ1600

『真紅眼の黒竜』の放った黒炎がジューダイに直撃しました。

「ふふふ、私は更にリバースカードを1枚セット」

「……へ、へへへ……」

「む?」

と、急にジューダイが笑いだしました。

「余裕だかなんだか知らねえけど、勢いに任せすぎだぜ?見てみろよ。お前の手札、もう0じゃねえかよ」

「……」

ジューダイの言う通り、このターンの猛攻により、ダークネスの手札は0枚になっていました。

しかし、

「……ふ、ふふふふ、ははははは……!」

「!?」

「甘く見られた物だ。このターン、私が何の為に手札交換をしていたと思うんだい?」

「なに!?」

「エンドフェイズ時に、リバースカードを発動!速攻魔法『超再生能力』!エンドフェイズ時、自分がこのターン中に手札から捨てた、または生け贄に捧げたドラゴン族モンスター1体につき、デッキからカードを1枚ドローする!」

「……! まさか!?」

「そう、『天使の施し』と『手札抹殺』によって私が手札から墓地に捨てた5枚のカード、これらは全てドラゴン族モンスター。よって……」

「一気に5枚のドロー……!」

「ふふふ、そういう事だ。『超再生能力』の効果により、デッキからカードを5枚ドロー!ターンエンド」

「くっ……」



流石は敵のラスボス、隙の無い攻めでジューダイをどんどん追い詰めていきます。

万「ラスボス言うな」

だがしかし、

万「……いい加減帰っていいか?」



「くっ……オレのターン!ドロー!……魔法カード『強欲な壺』発動!デッキからカードを2枚ドロー!『E・HERO クレイマン』(守備力2000)を守備表示で召喚!更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

隙の無い攻めに、ジューダイは防戦一方です。でも、その目はまだ死んでいません。

「ふ、ふふふふ、その折れない心。やはり君は素晴らしいよ。良いだろう。そんな君に敬意を示して、私の更なる力をお見せするとしよう」

「な!?」

なんと、まだダークネスは本気では無かったというのです。

「私のターン!ドロー!手札から魔法カード『融合』発動!」

「!? 『融合』……だと……!?」

「ふふふ、なにも君の『E・HERO』だけの専売特許という訳ではあるまい?私はフィールド上の『真紅眼の黒竜』と手札の『デーモンの召喚』を融合!」

ダークネスのフィールド上の『真紅眼の黒竜』が、突如現れた黒い霧に覆われました。

「黒竜と悪魔、今ここに交わる!天地鳴動の力を見るがいい!融合召喚!我が魂!『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!(攻撃力3200)」

『グォォォォォ!!』

「こ、こいつは……!?」

ダークネスが新たに呼び出したモンスター。それは、禍々しい姿をした悪魔竜でした。



万「……あの融合召喚時のセリフは何なんだ?」

脚本家曰く、『未来を先取りしたセリフ』だそうっス

万「……人間語に翻訳してくれ」

……出来ると思う?



「『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』(攻撃力3200)で『クレイマン』(守備力2000)に攻撃!」

『グォォォォォ!!』

「そしてこの瞬間、永続罠『竜の逆鱗』を発動!自分フィールド上の全てのドラゴン族モンスターは貫通能力を得る!」

「なに!?」

「ゆけ!『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』!『メテオ・フレア』!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!?」 ジューダイ残ライフ400

『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』の放った、その名の通り燃える隕石のような火球が『クレイマン』を粉砕し、その余波がジューダイを襲いました。

「更にエンドフェイズ時、前のターンに『手札抹殺』によって墓地に捨てた『真紅眼の飛竜(レッドアイズ・ワイバーン)』の効果を発動!通常召喚を行っていないターンのエンドフェイズ時に、自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地に存在する『真紅眼(レッドアイズ)』と名のついたモンスター1体を特殊召喚する!墓地から、『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』の融合素材に使用した『真紅眼の黒竜』(攻撃力2400)を特殊召喚!」

『ギャオォォォ!』

「くっ!? またかよ……!」

「ターンエンド」

……ダークネスのフィールド上には、永続罠『竜の逆鱗』の効果で貫通能力を得た最上級ドラゴン族モンスターが2体。それに対して、ジューダイのフィールド上にモンスターは居なく、リバースカードが1枚のみ。将に絶体絶命です。

「はぁ……はぁ……」

おまけに、ここまでの激闘のせいでジューダイの体力も限界でした。

しかし、それでも……

「……っ! オレのターン!ドロー!」

やはり、ジューダイは諦めません。皆を、この国を守る為に。

「魔法カード『天使の施し』を発動!デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚墓地に送る!更に罠カード『堕天使の施し』発動!お互いのプレイヤーはこのターン、魔法カードの効果によって手札から墓地に送られたカードを全て手札に加える!『天使の施し』で墓地に送った2枚を手札に戻す!そして『E・HERO スパークマン』を攻撃表示で召喚!」

『トァァァ!』

「更に魔法カード『ミラクル・フュージョン』発動!自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、『E・HERO』という名のついた融合モンスター1体を融合召喚する!墓地の『フレイム・ウィングマン』と『スパークマン』をゲームから除外して融合!現れろ!『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』!(攻撃力2500)」

『フンッ……ハァ!』

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』の攻撃力は、自分の墓地に存在する『E・HERO』と名のついたカード1枚につき300ポイントアップする!オレの墓地には、『フェザーマン』『バーストレディ』『クレイマン』そしてお前の『手札抹殺』によって墓地に送られた『E・HERO エッジマン』の4体!よって、300×4で1200ポイントの攻撃力アップ!(攻撃力2500→3700)」

「……」

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』(攻撃力3700)で『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』(攻撃力3200)に攻撃!『シャイニング・シュート』!」

『ハァァァ……ハァッ!』

『グォォォォォ……!』

『シャイニング・フレア・ウィングマン』の放った光の波動が『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』を粉砕しました。 ダークネス残ライフ3500

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』は戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』の元々の攻撃力、3200ポイントのダメージだ!」

「ぐっ……!?」 ダークネス残ライフ300

「はぁ、はぁ……リバースカードを1枚セットして……ターン……エンド!」

死力を尽くし、ジューダイは見事に形勢を逆転させました。

しかし、

「……ふ、ふふふふふふふふ……」

「!?」

ダークネスはそれでも、楽しそうに笑います。

「ふふ、失礼。どうも駄目だ。君との戦いは心が踊ってしょうがない……いいだろう。ここまで楽しませて貰った礼として、特別に、私の本当の切り札をご覧に入れよう」

「な!?」

なんと、『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』でさえも、ダークネス5切り札では無いと言うのです。

「私のターン!ドロー!『闇魔界の戦士 ダークソード』(攻撃力1800)を攻撃表示で召喚!」

『オォォォ!』

「!? ドラゴン族モンスターじゃない……?」

今まで、融合素材に使った『デーモンの召喚』(悪魔族)以外は全てドラゴン族モンスターだったダークネスが、初めて戦士族モンスターを召喚しました。

「そして儀式魔法『レッドアイズ・トランスマイグレーション』を発動!」

「! 儀式魔法……!」

「この儀式にはフィールド上か手札から『真紅眼の黒竜』と戦士族モンスターをそれぞれ1体ずつ生け贄に捧げなければならない。私はフィールド上の『真紅眼の黒竜』と『闇魔界の戦士 ダークソード』を生け贄に、『ロード・オブ・ザ・レッド』(攻撃力2400)を攻撃表示で儀式召喚する!」

「『ロード・オブ・ザ・レッド』……?」

と、

『オォォォ……!』

『ギャオォォォ……!』

『闇魔界の戦士 ダークソード』と『真紅眼の黒竜』が2筋の闇の奔流となり、ダークネスの周りを覆いました。

「くっ……これは……?」

やがて、覆われた闇が晴れ、ダークネスが再び姿を現しました。

「!? その姿は……!?」

「ふふふ、驚いたかい?これが、私の真の姿、『ロード・オブ・ザ・レッド』だ」

その姿は、まるで人の姿をした『真紅眼の黒竜』でした。

そう、ダークネスの切り札、それはダークネス自身だったのです。

「言っただろう?『真紅眼の黒竜』は私の分身だと。黒竜の化身、それが私の正体だ」

「黒竜の……化身……」

「私は手札から2枚目の『超再生能力』を発動!このターンのエンドフェイズ時、自分がこのターン中に手札から捨てた、または生け贄に捧げたドラゴン族モンスター1体につき、デッキからカードを1枚ドローする!もっとも、今の時点では私自身を召喚する為に生け贄に捧げた『真紅眼の黒竜』1体分のみだがね。更に魔法カード『墓穴の道連れ』を発動!お互いに相手の手札を確認し、それぞれ相手の手札のカードを1枚選択して墓地に捨て、その後、お互いにデッキからカードを1枚ドローする!さあ、手札を見せたまえ」

「くっ……」

ジューダイはダークネスに手札を見せました。

「『E・HERO バブルマン』を墓地に送りたまえ」

「……」

これにより、『シャイニング・フレア・ウィングマン』の攻撃力は更にアップしました(攻撃力3700→4000)

「さて、次は君の番か。と言っても、私の手札はこれだけだが」

今度はダークネスが残った手札、『ミンゲイドラゴン』をジューダイに見せ、墓地に送りました。

「『墓穴の道連れ』の効果により、お互いにデッキからカードを1枚ずつドロー!そしてこの瞬間、私自身、『ロード・オブ・ザ・レッド』の効果を発動!」

「なに!?」

「はぁぁぁぁっ……!」

と、ダークネスの右手に闇のエネルギーを溜め始めました。

「『ロード・オブ・ザ・レッド』がフィールド上に表側表示で存在し、1ターンに2回魔法カードが発動された時、『ロード・オブ・ザ・レッド』以外の全てのモンスターを破壊する!」

「なに!?」

「はぁぁぁっ!『アブソリュート・オブ・ダークネス』!」

『グアァァァァァッ!?』

「『シャイニング・フレア・ウィングマン』!?ぐあぁぁぁぁ!?」

ダークネスが掌から放った闇の波動が、『シャイニング・フレア・ウィングマン』を薙ぎ払い、粉砕し、ジューダイも吹き飛ばしました。

「……これで、君のフィールドにモンスターは居ない」

「ぐぅぅ……」

「名残惜しいが、いよいよフィナーレだ。楽しかったよ、勇者ジューダイ。君は間違いなく、今までで最強の相手だった」

「……」

「私自身、『ロード・オブ・ザ・レッド』(攻撃力2400)でダイレクトアタック!」

先程と同じように、ダークネスの手に闇のエネルギーが収束していきます。

と、

「くっ……罠カード……発動!」

「む!?」

「『ヒーロー見参』!相手の攻撃宣言時、自分の手札から相手プレイヤーはカード1枚をランダムに選択し、それがモンスターカードだった場合は自分フィールド上に特殊召喚、違った場合は墓地へ送る!」

「……『墓穴の道連れ』で確認した時には、他にモンスターは存在しなかった。つまり、その後に『墓穴の道連れ』の効果でドローした1枚がモンスターカードだった……という訳か」

「さあ!選べ!」

ジューダイの手札は3枚。その中でモンスターカードは1枚のみ。ダークネスが選んだのは……

「……私から見て、一番左のカードだ」

「……は、ははははは……」

「?」

「お前、よっぽどこいつと縁があるみたいだぜ?」

「! まさか!?」

「『ヒーロー見参』の効果により、お前の選択したカードを特殊召喚する!『ハネクリボー』(守備力200)をな!」

『クリクリ~!』

ダークネスが選択したカード、それは皮肉にも、以前に彼を打倒した『ハネクリボー』でした。

「くっ……だが、私のフィールド上の『竜の逆鱗』の効果によって、ドラゴン族である私自身、『ロード・オブ・ザ・レッド』は貫通能力を得ている!『ロード・オブ・ザ・レッド』(攻撃力2400)で『ハネクリボー』(守備力200)を攻撃すれば、君のライフは0だ!はぁぁぁぁ!」

ダークネスが掌を『ハネクリボー』に向けました。

「さらばだ!ジューダイ!」

ジューダイにとどめを刺すべく、ダークネスの掌から闇の波動が放たれました。

『クリー!』

「な!?」

と、『ハネクリボー』が眩い光を放ちました。

「これは……あの時と同じ……!?」

「速攻魔法発動!『進化する翼』!」

「な……に……!?」

「自分フィールド上に存在する『ハネクリボー』1体と手札2枚を墓地に送り、『ハネクリボーLV10』1体を手札またはデッキから特殊召喚する!デッキから特殊召喚!現れろ!『ハネクリボーLV10』!(攻撃力300)」

『クリー!』

『ハネクリボー』の羽が大きく拡がり、ダークネスの放った波動を弾きました。

「『ハネクリボーLV10』の効果発動!相手のターンのバトルフェイズ時、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを生け贄に捧げる事で、相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力の合計分のダメージを相手ライフに与える!」

『クリクリー!』

「くっ……」

「いくぜ!相棒!」

『クリ!』

「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!」

『クリィィィィィィィィ!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!?」 ダークネス残ライフ0



「ふ、ふふふふふ、私の、負けか」

負けたというのに、ダークネスの表情は爽やかなものでした。

「見事だジューダイ。君こそ、真の強者だ」

「ダークネス……」

「ふふふ、そんな顔をする必要はない。言っただろう?負けた方が、弱い者が悪いのさ」

そう言っている間にも、ダークネスの体は消えていきます。

「……前回は封印されたのみだったが、今回はそうもいかないか。これも、前回と今回の『ハネクリボー』使いの力量の差か」

「……」

「そんな顔をするなと言っているだろう?私は先程の戦い、満足しているのだ……さらばだ、勇者ジューダイ」

そう言い、ダークネスは消えました。

「ダークネス……」



こうして、サオトメ王国には再び平和が訪れ、人々に笑顔が戻りました。

そして、ダークネスを打ち破ったジューダイは人々から英雄と呼ばれ、その後は平和に暮らしました……

「今日はジューダイ様はボクと過ごすの!」

「むぅ、昨日だってそうだったじゃない!今日は私の黒魔術の修行に付き合って貰う番だよ!」

「ちょ、ちょっと二人共!ジューダイが困ってるわよ!」

「か、勘弁してくれ~!」

……いいえ、ジューダイの苦労はもう暫く続きそうです。

めでたしめでたし。

万「めでたいのか?」



今日のワイト(楽屋裏)



「……」

「ん? どうしたん?三沢君?」

「……結局、俺の出番はあれだけなのか?」

「まーそりゃ、レッド寮生の劇だし?」

「じゃあ神楽坂はどうなんだ!?あいつなんかイエロー寮生なのに3回もデュエルしてるんだぞ!?それに比べて俺のデュエルシーンは0じゃないか!」

「……あー」

「あー、じゃない!納得のいく説明を要求する!」

「……個性の有無?」

「ぬぐ!?……ぬぅぁぁぁぁぁ!!(泣」

「ちょっと!」

「うぇ!?ジュンコさん!?」

「アタシの出番だって殆ど無かったじゃない!」

「あーいや、ジュンコさん最初はコスプレに乗り気じゃなかったし、こういうの嫌かなって思ってあんまり出番のない役に回って貰ったんだけど……」

「え……」

「……ごめん、要らん事した?」

「べ、別に、それならいいわよ。と言うか早くそういう事は言いなさいよ!要らない役をやらさせられてるのかと思うじゃない!」

「うふふふふ……」

「わ、笑うんじゃないわよももえ!」

「?」



あとがき

や、やっと演劇編終わった……
どうも、最近グーグルで『○○○』って入れると検索候補にこの作品があるのを知って驚いた八王夜です。
ブッキーのデッキ、流石に『真紅眼の闇竜』は使わせる訳にいかないのでこんな感じに。因みに『ロード・オブ・ザ・レッド』はアニメ無印版のドーマ編で凡骨君が使っていたアニメオリジナルの儀式モンスターです。ブッキーならば、これぐらいやってくれるに違いない!(オイ

さて、ここで感想に要望のあったデッキレシピを幾つか公開。



まずはレイ君の新デッキから



最上級 4枚

天空勇士ネオパーシアス×2
守護天使 ジャンヌ×2

上級×4

天空騎士パーシアス×2
光神テテュス×2

下級×14

勝利の導き手フレイヤ×3
コーリング・ノヴァ×3
ジェルエンデュオ×3
天空の使者 ゼラディアス×3
ホーリー・ジェラル×2

魔法×15

天空の聖域×3
光神化×2
サイクロン×2
貪欲な壺×2
コート・オブ・ジャスティス×2
強欲な壺×1
天使の施し×1
リロード×1
手札抹殺×1

罠×3

神の恵み×1
?×1
聖なるバリア-ミラーフォース-×1

計40枚

サイド

マシュマロン
ハネワタ


『ヴァルハラ』は流石にパワーバランスを崩してしまう為に入れませんでした。



続いては……厚かましいですが感想にあった、僕自身が使っているワイトデッキを紹介します。

ただ、今後の和希のデュエルのネタバレを多少含んでしまうので、それが嫌な方はご注意ください






















下級×32

ワイト×3
ワイト夫人×3
ワイトキング×3
ワイトメア×3
魔導雑貨商人×3
ライトロード・ハンター ライコウ×3
ゾンビマスター×2
ピラミッド・タートル×2
ゴブリンゾンビ×2
ライトロード・マジシャン ライラ×2
馬頭鬼×1
メタモルポッド×1
ダーク・グレファー×1
カード・ガンナー×1
スナイプストーカー×1
ゾンビキャリア(チューナー)×1

魔法×5

生者の書-禁断の呪術-×2
手札抹殺×1
光学迷彩アーマー×1
ワン・フォー・ワン×1

罠×3

サンダーブレイク×2
リビングデッドの呼び声×1

計40枚

シンクロ×9

デスカイザー・ドラゴン×3
蘇りし魔王ハ・デス×3
アンデット・スカル・デーモン×3

サイド
激流葬
聖なるバリア-ミラーフォース-
針虫の巣窟
闇の誘惑


ややガチ風味(汗 それでも、意地でもアンデット族以外のシンクロは入れませんでした(汗




[6474] 第二十三話 新入生熱烈歓迎
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/07/13 00:10
さて、なんとか一夜漬けで進級試験も合格し、デュエルアカデミア2年目へと突入した。そして、新学期早々のアスラン・ザr……もといエド・フェニックス君と十代君の初デュエルも見学した。

結果としては十代君の勝ち。でもエド君のデッキは、適当に買った売れ残りの8パック40枚で作った寄せ集めのデッキだった、という原作通りの流れになってくれた。

……いや、寄せ集めで『大天使 ゼラート』主軸の光属性デッキが組めるのってどうなのよ

『大天使 ゼラート』、星8、光属性、天使族、攻撃力2800、守備力2300通常召喚できず、フィールド魔法『天空の聖域』がフィールド上に存在し、自分フィールド上に表側表示で存在する『ゼラの戦士』通常モンスター、星4、攻撃力1600、守備力16001体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚可能、と召喚条件は厳しいが、その能力、自分フィールド上に『天空の聖域』が存在している時、光属性のモンスターカード1枚を手札から墓地に捨てる事で相手フィールド上に存在する全てのモンスターを破壊する、という疑似『サンダー・ボルト』的な能力は強力の一言だ。

……おまけに、ちゃんと召喚に必要な『ゼラの戦士』や『天空の聖域』は勿論、それらを手札に揃える為の、手札を全て交換する速攻魔法『リロード』、光属性で、『大天使 ゼラート』の能力のコストになる『おジャマ・イエロー』や『神聖なる球体ホーリーシャイン・ボール』通常モンスター、光属性、星2、攻撃力500、守備力500、それら墓地に送られた光属性のモンスター達を、手札を全て捨てる代わりにその枚数分手札に戻す罠カード『光の召集』等……残り物にも福がありすぎだってヴァ……

……まぁそれはさておき、その数日後、鮫島校長が居ない最中、クロノス『臨時』校長がアカデミアを発展させて『臨時』の二文字を取るべくして始めたスター発掘デュエルで、万丈目君が、中等部をトップで卒業した五階堂君を倒してから更に数日が経って現在に至る。

「以上、近況状況説明終わり」

「……何を一人でぶつくさ言っているんだ」

「気にしたら負けデスヨ三沢君」

……でも、2年目が始まったとは言っても、実は未だに今年度をどう立ち回るかはっきりは決めかねていたりする。

勿論、何もしなくても原作通りに物事が進めば大丈夫なのだが、やはり、何らかの形で十代君の力にはなりたい。

しかし何分、相手は未来を見通す子安……もとい斎王さんである。下手に立ち回れば最悪、レーザー衛星『ソーラ』が、『右の頬を殴られたら、左の頬へパイルドライバー』とばかりにぶっ放されて、世界が焼き払われる可能性だって有り得る。

斎王さんがオージーン王子からレーザー衛星『ソーラ』を入手する事ないし、根本的にデュエルアカデミアに『光の結社』を作らせる事を阻止するのも考えたが……そうすると斎王さんがどう動くかわからない。

そもそも、僕という不確定要素が暗躍する事、考えようによっては存在する事自体が、未来を見通す斎王さんの行動を変えてしまうかもしれない。……ここは余り動かず、様子見をした方がいいか

んー、となると、万丈目君のホワイトサンダー化はほぼ確定かな……まぁ、それはそれでおジャマ達との絆も深まりそうだし、大丈夫かな。

……あれ様子見がメインって事は、僕、ひょっとして誰かさんみたいになっちゃうんじゃ……

「……また何か失礼な事考えていただろ」

「イヤ、マサカ、ソンナコトナイデスヨ」

……まぁ、フェードアウトはしないように頑張ろう。うん。



その後、僕はノートを借りに来たついでに駄弁っていた三沢君の部屋を出て、レッド寮に戻った。

と、部屋の前まで行くと……

「若輩者ですが、宜しくお願いするザウルス」

「……しょうがねぇな」

「アニキの下で、進化するドン」

と、三沢君空気化の原因の張本人の声がした。……あぁ、さようなら三沢君、君の事は忘れないよ。……出来るだけ。

心の中でそう呟きながらドアを開けると、いつものメンバーである十代君、翔君、部屋を改築中で僕達の部屋に居候状態の万丈目君、そして、十代君に向かって下町風な挨拶を切る、黄色い服を着た彼が居た。

「……また一段と人口密度が高いなぁ……」

……レイ君が来た時以来の一部屋五人である。

「あー和希君聞いてよ」

「嫌だ」

「って、こらぁ」

……なんてお約束なやり取りで翔君を弄る。うん、いつもながら面白い。

「……アニキ、誰ザウルスあの人」

「ルームメイトの朝倉和希だよ」

「因みに独身、宜しくね」

「当たり前でしょ」

「ご○せんか」

「宜しくね〜」

「それはトリ○クだ」

「……仲○由紀恵繋がりっスか」

「ははは、イリ○に血ぃ吸われて死んだ人ですネ」

「ガ○ラ」

「どういう覚え方だ」

万丈目君と翔君によるダブルツッコミ。ふふふ、今年もボケ甲斐があるなぁ。

「あ、朝倉和希。噂通りの人ザウルス……」

「「「「噂」」」」

「知らないザウルスアニキが『デュエルアカデミアのカリスマ』って呼ばれてるのと同様に、朝倉先輩にも渾名が付いてるドン」

え、僕もなんかそんな渾名っぽいの付いてんの何だろうビミョーに期待しちゃいますヨ

「……曰く、『デュエルアカデミアの問題児』、ドン」

……どうせそんな所だろうと思いましたヨコンチクショー

「も、問題児……ぷくくくく……」

「ふはははは、全く、上手い事渾名を付けた物だな」

「お、おい、笑っちゃ悪いって……」

……皆、後で私刑決定。

「ま、まぁ、性格はアレだけど、その腕前は『カリスマ』遊城十代に勝るとも劣らないって、専らの噂ザウルス」

性格がアレって……しかも『勝るとも劣らない』って、ビミョーに十代君よりも格下っぽいし……実際負けたけどさ。

「それにしても凄いザウルスこの部屋はビックリ箱ドンプロ級のデュエリストが二人も居るザウルス」

「……待て、この俺様を差し置いて、こんな二人がプロ級とはどういう事だ」

「二人共、去年のここの卒業生にしてあのプロデュエリストの『カイザー』こと丸藤亮相手に互角で渡り合ったって聞いたドン」

え、もしかしてあのデュエル、誰かに見られてたの

「 何言ってるの和希君ならお兄さんに1ターンキルされたんじゃ……」

「あー、いや実は、十代君と亮さんの卒業デュエルを見て、どうしてもリベンジしたくなっちゃって……あの後デュエルして貰ったんだ」

「えー」

「マジかよおい、なんで呼んでくれなかっただよーすっげぇ面白そうじゃんかよそのデュエル」

「い、いやー、なんとなく」

「ふん、どうせまたボロ負けしたに決まっている」

「んーそうでもなかったよまぁ負けはしちゃったけど、なんとか亮さんのライフを500まで減らせたしね」

「なに」

「うっわー滅茶苦茶惜しかったじゃんそれ」

「うーん、攻撃力16000の『サイバー・エンド・ドラゴン』を戦闘破壊した時は『勝った』って思ったんだけどね」

「こ、攻撃力16000だと」

「しかもそれを戦闘破壊したんスか」

「まぁ、実際は相打ちだけどね。ほら、『ワイトキング』って蘇生能力あるから……」

その後、結局僕はそのデュエルの一部始終を話した。

「うわー、本当に惜しかったんだなー」

「……ふん、負けは負けだろうが」

「あははは、それはごもっとも。いや〜、やっぱり亮さんは強いや」

「……その割には全然悔しく無さそうっスね」

「いや、悔しいっちゃぁ悔しいけどさ、前みたいな不完全燃焼じゃなかったしさ」

「あぁ、わかるぜその気持ち。全力を出し尽くせば、例え負けたって、スッキリするよなぁ」

「そうそう、それに、亮さんはまたリターンマッチ受けてくれるって言ってたし、落ち込んでる暇があったらその分精進しないと、亮さんに失礼じゃん」

「ははは、そうだよな。それこそ、カイザー流のリスペクトデュエルだよな」

「はは、和希君らしいっス」

「……ふん」

「……」

「……あれどうしたの剣山君」

「……で、でかいザウルス……」

「「「「は」」」」

「朝倉先輩あんたはなんて器のでかい人なんザウルス」

「う、器って……」

「うおおぉぉなんか今の話を聞いたら燃えて来たザウルス朝倉先輩早速俺に稽古付けて欲しいドン」

「け、稽古って、デュエルの事」

「勿論ザウルスあんたとのデュエルは、十代のアニキとのデュエル同様、俺を進化させてくれそうだドン」

「わ、わかったから少し落ち着こう」

さっきから原作同様に、目が恐竜化してるから結構怖いからそれ



という訳で、なんかよくわからないけど、剣山君とデュエルする事になった。……まぁ面白そうだからいいか。

「宜しくお願いするザウルス」

「オッケー、いいよー」

「二人共頑張れよー」

「「デュエル」」

「俺の先攻ドロー『セイバーザウルス』攻撃力1900を攻撃表示で召喚更にカードを1枚セットしてターンエンドン」

「僕のターン、ドロー」

……さて、どうするか……

剣山君の恐竜族デッキも、十代君や亮さん同様に速攻をメインとしたデッキ。様々な方向から速攻を仕掛けて来る十代君が『柔』の速攻型なら、恐竜族のパワーでドンドン……いやどんどん押してくる剣山君は、亮さん同様、言わば『剛』の速攻型。

対して、僕のデッキはパワーがあるが時間が掛かる。スピード勝負になると分が悪い。

……よし、ここは思い切って……

「手札から魔法カード『手札抹殺』を発動互いのプレイヤーは手札を全て墓地に送り、その後、デッキから同じ枚数カードをドロー」

「い、いきなりザウルス」

「更に『ワイト夫人』守備力2200を守備表示で召喚リバースカードを2枚セットしてターンエンドだよ」



「……成る程な」

「成る程って、どういう事っスかアニキ」

「お前なぁ、さっきのオレと剣山のデュエル見てなかったのかよ」

「……恐竜族デッキを相手にする時、まず『俊足のギラザウルス』星3、攻撃力1400、守備力400の特殊召喚、更にそれを生け贄にして召喚した上級モンスターによる速攻を警戒するのは常識だろうが」

「そうか、『俊足のギラザウルス』は召喚を特殊召喚扱いにする事ができるけど、特殊召喚扱いにした時、相手の墓地にモンスターカードがあったら、相手は墓地からモンスター1体を特殊召喚できちゃうから……」

「まずは手っ取り早く、モンスターを墓地に送っといたって訳だな。流石に抜け目無いぜ」



「俺のターンドロー流石に慧眼ザウルス。でも、俺の恐竜さんはその程度じゃ止まらないザウルス手札から装備魔法『リビング・フォッシル』を発ドン自分の墓地からモンスターを1体選択して特殊召喚し、このカードを装備するドンこのカードを装備したモンスターは攻撃力が1000ポイントダウンし、モンスター効果は無効化され、このカードが破壊された時、そのモンスターは破壊されるザウルス俺は『手札抹殺』で墓地に送られた『暗黒ステゴ』攻撃力1200→200を特殊召喚するドン更に、この『暗黒ステゴ』と『セイバーザウルス』を生け贄に、『ダーク・ティラノ』星7、攻撃力2600を召喚するザウルス」

ヤバい、でかいのが来る……

「『ダーク・ティラノ』は相手のモンスターカードゾーンに守備表示モンスターしか存在しない場合、相手にダイレクトアタックできるドン『ダーク・ティラノ』攻撃力2600で、朝倉先輩にダイレクトアタックザウルス『レックス・ボンバー』」

「ぐえ」 自残ライフ1400

『ダーク・ティラノ』の尻尾の一振りに、僕は吹き飛ばされた。

……いや、ダイレクトアタックなのは知ってるからさ、これ見よがしにスイッと避けないでくれないワイト夫人。



「おいおい、もう決まっちまうんじゃないか」

「いきなりライフポイント半分以上減っちゃったっスね」

「……どうやら、大丈夫みたいだぜ」

「……本当だ。和希君、なんか、『これ位は必要経費だ。』って顔してるっス」

「……あれなんかそのフレーズ、どこかで聞いたことあるような……誰が言ったんだっけ万丈目」

「『さん』だ。……俺が知るか」



同時刻ラーイエロー寮

「ぶぇっくしょい」

「……どうしたんだ三沢お前去年からずっとそんな変なくしゃみしてるよな」

「……ふふふ、どうせまた朝倉辺りがまた俺の事『影薄い』だの『空気』だの言っているんだろ。ふふ、ふふふふふ……」

「そ、そうか」

「……いいよなぁ神楽坂、お前は。このSSじゃ優遇されててさ。俺なんて、俺なんて……はは、ははははは……」

「何だよSSってどうしたんだよおいしっかりしろ」

「はは……もう一足先に全裸で走り回ってしまおうかな……ははは……」

「やめろそれは犯罪だおーいスタッフゥ〜スタッフゥ〜誰か鮎川先生を呼んでくれー」



……なんか今どこかで物凄く面白そうな一悶着が起きてた気がするけど……気のせいか

「……何やってるドン先輩のターンザウルス」

「おっと、ごめんごめん。僕のターンドロー『ワイト夫人』攻撃力0を攻撃表示に表示変更」

「はぁ何やってるドンそりゃ、守備表示のままじゃ『ダーク・ティラノ』のダイレクトアタックをくらうドン。でも、攻撃力0を攻撃表示にしたところで、何の変わりもないザウルス。」

「ふふふ、勿論、意味もなく攻撃表示にした訳じゃないよ」

「え……」

「更に魔法カード『強制転移』を発動互いのプレイヤーは自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターのコントロールを入れ替える……表示形式はそのままでね。」

「 俺と先輩のフィールドにはモンスターは1体ずつしかいない……って事は……」

「当然、自動的に『ダーク・ティラノ』と『ワイト夫人』のコントロールが入れ替わる」

「お、俺の恐竜さんが……」

「ふふふ、ちょいと拝借するよ。更に『手札抹殺』で墓地に送った『馬頭鬼』の効果発動墓地のこのカードをゲームから除外し、墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚僕は、『手札抹殺』で墓地に送った『ワイト』攻撃力300を特殊召喚」

「ワ、『ワイト』う、噂には聞いていたけど、本当にそんなカードをデッキに入れてるザウルス」

「む、そんなカードとは失敬な。僕のフェイバリットの一つだよ」

「う……す、すまないドン」

……見ると、僕の言葉に奮起したのか、やる気満々のワイト。あー、やる気な所すまないけど……

「更に、『ワイト』を生け贄に捧げ、『真紅眼の不死竜』攻撃力2400を攻撃表示で召喚」

『』

ズカーンと効果音が付いていそうな表情をしながら、ワイトは再び墓地に送られた。……ごめん、ちょっと面白かった。

「ちょ、ちょっと待つドンフェイバリットじゃ無かったザウルス」

「ははは、良いのかなそんな事を気にしてて。『ダーク・ティラノ』攻撃力2600で『ワイト夫人』攻撃力0に攻撃」

「くっ……永続罠『琥珀の落とし穴』を発ドン相手モンスターの攻撃時に発動攻撃モンスター1体の攻撃を無効にし、守備表示にするザウルスこのカードがフィールド上に存在する限り、対象となったモンスター1体は表示形式を変更できないドン……『ダーク・ティラノ』を守備表示に変更するドン」

「ふふふ、果たして、そっちでいいのかな」

「え……」

「『真紅眼の不死竜』攻撃力2400で『『ワイト夫人』攻撃力0に攻撃『アンデット・メガ・フレア』」

「うわぁぁ……」 敵残ライフ1600

「そして、『真紅眼の不死竜』の特殊効果発動このカードが戦闘によってアンデット族モンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる再び『ワイト夫人』守備力2200を僕のフィールド上に守備表示で特殊召喚」

「そ、そんな詐欺ザウルス」

「ふふふ、ターンエンドだよ」

と、ワイト夫人がやや怨みがましく見上げて来た。ふーんだ、さっきこれ見よがしに避けたお返しだよーだ。

「くっ……流石はアニキのライバル、どこから何が飛び出して来るかわからないドン。……でも見損なったザウルス自分のフェイバリットを平気で相手にコントロールを移して破壊したり、生け贄にしたりするなんて、アニキのライバルと呼ばれる人がやるような事じゃないザウルス」

むぅ、ワイト達も『そうだそうだ』とばかりに騒いでいるけど……

「むぅ、それは違うよ。寧ろフェイバリットだからこそ、だよ」

「え……」

「彼らは僕のデッキの中核を担う存在だ。主役にも脇役にも、果ては、言い方は悪いけど捨てゴマにだってなる事ができる。このデッキは、彼らがいなければ成り立たない。彼らは……僕の最高のパートナー達さ」

……あ、今度はワイト達感激して泣いてる。……一喜一憂が激しいなぁ……



「和希……」

「なんか和希君が珍しくマトモな事言ってるっス」

「……明日は槍の雨でも降ってきそうだな」

『アニキとの絆なら、おいら達だって負けてないわよぅ〜』

『『そうだそうだ〜』』

「ええ〜い鬱陶しいデッキに戻ってろ」

『『『ひえ〜〜……』』』



「……」

ありゃ剣山君がまた固まっちゃった……

「おーいどうしたー」

「お……」

「お」

「俺は今猛烈に熱血しているザウルス」

見ると、再び恐竜の目となっている剣山君。……というかラ○ネ

「朝倉先輩あんたはやっぱりアニキのライバルたる人ザウルスアニキ同様、あんたとのデュエルはワクワクしてしょうがないザウルス」

……ははは、本当、単純だなぁ。……まぁ、そんな事言われて、内心アツくなっている僕も人の事は言えないけどね

「はははいいよいいよ面白くなってきた」

「いくドン俺のターンドロー魔法カード『強欲な壺』発ドンデッキから更にカードを2枚ドロー……よし『始祖鳥アーキオーニス』攻撃力300を召喚更に魔法カード『超進化薬・改』を発ドン自分の場の鳥獣族モンスター1体を生け贄に捧げ、手札から恐竜族モンスター1体を特殊召喚するザウルス俺は『始祖鳥アーキオーニス』鳥獣族を生け贄に捧げ、『究極恐獣アルティメット・ティラノ』恐竜族、星8、攻撃力3000を攻撃表示で特殊召喚ザウルス」

……ふふふ、この際「鳥から恐竜って退化じゃ」ってツッコミは野暮だろう。それぐらい、今の僕はノリノリなのだ

「はは、いいねそう来なくっちゃ面白くないよ」

「まだザウルス更にフィールド魔法『ジュラシックワールド』を発ドン」

周りが、さながら『リ○ルガーデン』のような景色に変わった。……来たな、OCG版よりも遥かに強いカード。

「このカードの効果により、恐竜族・鳥獣族モンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップするドン更に、恐竜族・鳥獣族モンスターは相手の罠カードの対象にならず、効果も受けないザウルス」

「……そして、自分のコントロールする攻撃表示の恐竜族・鳥獣族モンスターが相手モンスターの攻撃対象になったとき、そのモンスターを守備表示にすることができる……だよね 」

「その通りザウルス……アニキ戦以前は、強力過ぎるこの効果に頼り切ってしまっていたドン……でもこれからは違う俺は、この強力な効果に見合うだけのデュエリストになるザウルスその足8



[6474] 第二十四話 スタート1000 メートルでいきなりの脱落(リタイア)?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:28
……どうも、朝倉和希です。最近身内内で悪い事ばかりが起きて、流石の僕でも胃に穴が空きそうですヨ……

まず、亮さんは原作通り、プロリーグでエド君に負けてしまった。

……あの気高かった亮さんが、これで調子を崩して『最下位ザー』となり、果ては勝利のみをリスペクトするデュエリスト、『ヘルカイザー』と化してしまう。……元の世界で見ていた分にはそうでもなかったが、いざ実際に亮さんの知り合いともなってみると、正直かなり悲しい。十代君や翔君の落胆ぶりがわかる気がした。

……そして……

「……消えろ、雑魚が」

「「「十代!!!」」」

「「アニキ!!」」

「あぁぁ……」

……十代君も、『イヤッッホォォォオオォオウ!!!』と飛行機からダイブしてデュエルアカデミアに戻って来たエド君の『D-HERO』の前に敗れてしまった。

……エド君のデッキを知っている僕は、十代君にアドバイス出来たかも知れない……でもしなかった。

……十代君には負けて貰うしかなかった。……ネオスを手に入れて貰う為に。

今後の展開的に、ここで十代君がネオスを手に入れてくれないと拙い。情けない話だが、僕には『優しき闇の力』なんて物は無い。ただ原作を知っていて、精霊が見れるだけ。斎王さんに取り付いている『破滅の光』を浄化する力なんて無い。……どう転んでも、十代君以上のキーパーソンになんかにはなれやしない。

……なんだかんだ言ったって、結局は十代君に締めて貰うしかないのか……正直、己の無力さが歯痒い。

……そんな訳で、辛いが十代君には負けて貰うしかなかった。

その後十代君は原作通り、エド君のデッキに斎王さんが宿らせていた『破滅の光』の力のせいでカードの絵が認識出来なくなってしまった。ハネクリボーも影響を受けたのか十代君にだけでなく、今は僕にも見えない。

大好きなデュエルが出来なくなってしまい、十代君は塞ぎ込んでしまった。……わかってはいたが、今の彼を見るのはかなり辛かった。

……こんな事で来年度後半の鬱展開とか大丈夫かなぁ……

……そんなこんなで、ここ数日はデュエルアカデミアに入学して以来の憂鬱な日々であった。

……いや、例のスター発掘デュエルの一つ、天上院兄妹のアイドルデュオ結成を賭けた仁義無き兄妹のデュエルは面白かったけどさ。

天井から吊るされて降りてきての登場だった昭和のアイドルみたいなノリのブッキーと、白鳥の乗り物に乗って静々と登場して来た明日香さん、そして……

「L・O・V・E!ラブユー明日香!」

……終始こんな調子だった万丈目君と、それと似たような感じだった相手側のブッキーファンクラブの皆々様。……つーか鮎川先生、あなた入っちゃってていいんですか?

それにしても意外だったのは……

「……何で君はこっちに居るの?」

原作通り、そんな流○楓親衛隊のような集団の仲間に混じっている、と思いきや、こちら側に座っているジュンコさんだった。……物凄く不機嫌そうだけど。

……エド君と十代君のデュエルの時は浜口さん同様に原作通りエド君サイドだったのに……

「……誰のせいだと思ってるのよ!」

「えぇ!?」

何か怒られた!?……って言うか僕のせいなの!?

「アンタの、アンタのせいで、アタシは皆から吹雪様ファン失格の烙印を押されたのよ!」

「え……いやいやいやいや!?僕が何をしたのさ!?」

「うるさい!アンタっていう存在のせいよ!責任取りなさいよ!」

「いやいやいやいや!?」

何この過去最大級の理不尽!?あとどう責任を取れと!?

「……それは多分、いつもこんな調子だからっスよ」

「こりゃ、どう見ても痴話喧嘩にしか見えねぇドン」

「……なんか、微妙に羨ましい気もする……」

「「おいおい……」」

「L・O・V・E!アイラブ明日香!」

「「……はぁ……アニキ……」」

……まぁ、こんな感じで、原作以上にカオスなこの兄妹対決を終えた。因みに、原作通り明日香さんの勝利であった。



そして今現在……

「大変大変!」

「何!?十代が!?」

「何処にもいないっス!部屋の荷物も持ち出されてるし!」

「本当かドン!?」

「……あのバカが!」

失踪した十代君を捜しに、集まっていた食堂を皆が飛び出して行った所だった。

「……無駄だってわかっているんだけどなぁ……」

十代君、モーターボートで沖に出ちゃってるし。……んで、隕石か何かでイオとかいう木星の衛星に飛ばされるんだっけ。そこでネオスやネオ・スペーシアン達を手に入れてるんだよなぁ。

でも、その事を皆に言う訳にもいかないし(つーか信じて貰える訳無いし)、かと言って、流石に皆が必死で捜してる中で僕一人だけ「捜さない」なんて選択肢を取る事は出来ないしなぁ……

……結局、僕は皆が出た後、無人ととなった食堂を出た。

……でも拙い、これで、今この島に来ているであろう斎王さんに会ったりしてしまうのはかなり拙い。

斎王さんは、元々エド君のデッキに宿した力で十代君を洗脳しようとしていた。でも、彼はカードは見えなくなったものの、洗脳はされなかった。

これを、斎王さんは精霊の力によるものではないかと考え、同じく精霊の見える万丈目君を洗脳出来るか試してみた、というのが原作の流れだ。

……そうなると、同じく精霊が見える僕も狙われる可能性がある。

……もしデュエルするような事になって負けてしまったら、僕も洗脳されてしまうかもしれない。そんな事になれば……

……ガチで組んだ『ライトロード』デッキなんかで十代君達を倒してしまうかもしれない。白いし。

仮に斎王さんに勝てたとしても、『正しき闇の力』なんて持っていない僕が斎王さんに勝っても、やはり斎王さんに取り付いている『破滅の光』を浄化するのは不可能だろう。

……これはどう考えてもハイリスクノーリターン。……よし、ここは校舎内を捜す(振り)をしてやり過ご……

? どうしたんだのワイト達、そんなに慌てて……

「そこの君、ちょっといいですか?」

「!!?」

……聞こえてはいけない声が背後からした。……いや、ある意味聞きたい声でもあったけど。

……バカか僕は!オシリスレッドの寮は港に近いじゃないか!考え事をしてる暇があったらまずは早くここを立ち去るべきだっただろう!

……えぇい!後悔先に立たず!取り敢えず成るように成れ!

……意を決めて振り返ると……

「こんにちは。少しお時間を宜しいでしょうか?」

……何もかもを見通し……いや、見透しそうな目をして、口には微笑みを浮かべた男、斎王琢磨その人が居たのだった……



SIDE OUT



SIDE 斎王琢磨(破滅の光)



「少し、お時間宜しいでしょうか?」

「……あなたは?」

「これは失礼。私はあなた達の後輩でプロデュエリストのエド・フェニックスのマネージャーをやらせて貰っている斎王琢磨と申します。この度、エドに次ぐプロデュエリストを発掘する為に、この島に来ました」

私は赤い屋根のアパートの前で考え事をしていた赤い制服を着た少年に話しかけた。

……本来、私の今回の目的の事を考えると、こういった軽率な行動は好ましくは無い。だが、私は彼に話しかけた。これには理由があった。



少し前、自家用機でデュエルアカデミアに到着した時であった。

「到着しました」

「……ああ」

……今回、私がこのデュエルアカデミアに来た目的、それは遊城十代同様に精霊と心を通わすデュエリスト、万丈目準を我が光の尖兵とする事だ。

それは同時に、先のデュエルで遊城十代に私の力が効かなかった原因が精霊の力のせいであったのかどうかを確かめる為でもある。

「……さて、では行くか……」

と、テーブルを立った時であった。

「!? これは!?」

到着した時には窓から島を見ていたので気が付かなかったが、テーブルの横の床には、今まで私が使っていたタロットカードの内の1枚落ちていた。……自家用機が着水した時の揺れでテーブルから落ちてしまったのだろう。

……これは、まだ精霊を宿すデュエリストがこの島に居るという暗示なのか?



そして今、目の前に居るこの少年がそのタロットカードの示す男なのだ。

「時にあなたには、デュエルの精霊と心を通わす力がありますね?」

確認の意味も込めて聞いてみた。

「……何故それを?」

少年は話すべきか話さないべきかを少し考える素振りをした後、答えた。

……やはりこの少年もか。ならば……

「私にはデュエルの精霊は見えません、ですが私は色々な物を見透す事が出来ます。如何でしょう、私とデュエルして、あなたの力を私に見せてくれませんか?もし私の眼鏡にかなえばプロリーグに推薦してあげますよ?勿論、私のマネージメントで」

……さぁ、餌に食いつくか?

「……」

少年は目を摘むって暫く考えていたが……

「……お断りします」

と、意外にも断ってきた。

「ほぅ、それはまたなぜ?」

「いえ、僕は皆とプロデュエリストになりたいですから。一人だけ抜け駆けみたいな事はしたくありません」

「……」

……成る程、もっともな理由ではある。だが、私には彼がまだ何かを隠しているように感じられる。

……私は、相手の未来や過去を『視る』事が出来る。そして、そこから、相手の心理も読み取る事が出来る。

が、何故か、目の前のこの少年の未来や過去については一向に『視え』てこないのだ。ただわかるのは……この少年が先程のタロットカードの示す者であるという事だけ。

……いや、正しくは『視え』てはいる。だが未来の事が『視え』ない。『視え』るのは過去、それもここ1年ばかりの短い期間のみ。

更に、他の者、遊城十代やエド等のこれからの運命にも、彼という登場人物が視えなかったのだ。

……この少年、得体が知れない。よもや、この世界の運命の輪の外から来たとでも言うのだろうか?

……もしそうであるならばこの少年、絶対に我が白の力に染めなければならないが……

「……そうですか、残念ですね」

「……随分とあっさりと諦めますね」

「あなたの意志の強さは目を見ればわかります。これでも占い師の端くれでしてね、人相占いも出来ますから」

……我が同士が増えるまでは出来るだけ秘密裏に行動したい。こんな人目のつく所に何時までも居てはまずい。

それに、ここで時間を使ってしまって本来のターゲット、万丈目準を逃してしまったら元も子も無くなる。ここはやめておく事にした。

彼は、学園内で我等が同士が増えた後、私が直々に白く染め上げるとしよう。

『貴様!また無関係の者を巻き込むつもりか!』

と、我が内なる分身が糾弾して来た。……くくく、いや、正確には我が宿主の人格だが。

『ふふふふ、何を言う、あの者も、遊城十代やエド同様、我等が運命の歯車を回す為の駒と成り得るのだぞ。我等と我等の妹、美寿知の、この力を異端、異能と否定し、受け入れなかったこの世界を破滅させる為の駒に!ふふふ、これは貴様の心の根底にあった願いでもあるのだぞ?』

『ぐっ……それは……』

『ふはははは、最早貴様に私を止める事は出来ん!精々自分の念願か叶うのを指を加えて眺めているのだな!』

『くっ……』

「……そうですか。では、僕はこれで……」

「ああ、最後に1つ宜しいですか?」

「?」

私は宿主の人格を黙らせ、踵を返しかけた彼を呼び止めた。

「あなたは、運命という物をどう思いますか?」

これはただ単なる私の好奇心だ。もし、この少年がタロットカード通りの人物ならば、私はその答えを聞いてみたい。

「私は、運命は選ぶ事が出来ると思っています。だが、一度選んでしまった運命は選び直せない。……丁度このデュエルモンスターズのデッキは、一度シャッフルしたらもうカードの順番を変えられないように」

「……」

彼は暫く考えた後、答えた。

「……否定はしませんけど、完全に賛同も出来ません」

「……ほぅ?それはまたなぜ?」

「確かに、1つの要因から出される結果はいつも1つ、ならば、人があなたの言う所の『選択』という要因を選んでしまえば、その先の『過程』や『結果』という『運命』を逃れる事ができないかもしれません。でも、その『結果』の先にはまたすぐに『選択肢』が待っていますから、人生は、無限に枝分かれしていく『選択肢』と『結果』の連続だと思います。だから、あなたの考えを借りるなら、『運命は1度選んでしまえば変えられない、でも、運命を選ぶ機会はわりと沢山ある』ってところですね」

「成る程、では、あなたにとって、人生とは幾多にも存在する『選択』と、その結果生まれる『過程・結果』という小さな『運命』の連続である……と?」

「はい、ですから、その者の一生を決定付ける程重大な選択をではない限り、その連なりの方向修正は出来ると思います」

「ふむ、しかし場合によっては、その『選択』で決してしまうのはあなたの運命だけでは無いのでは?」

「……」

「こういう例え話はどうでしょう。ある坑道にて、トロッコのブレーキが故障、猛スピードで走っています。そして、その先には2つに分かれたレール、そして、その両方のレールの先にはそれぞれ人がいて、轢かれれば即死です。……そして、そのレールを切り替えるレバーはあなたが握っています。……この場合、あなたの言う『選択』によって、他人の運命が決まってしまわないでしょうか」

「……」

「ふふふ、こんな場合、そう軽々しく『選択』など……」

「……しますよ。勿論、そのどちらでもない選択を」

「……ほぅ?」

私の質問に対し、彼は迷い無く答えた。

「絶望的な2つの『選択』を迫られた時、大切なのはそのどちらかを選ぶかを考えるのではなく、それ以外の『選択肢』を探す事だと思います。差し当って今の例ならば……」

彼は悪戯っぽく笑ってみせた。

「レール上に石でも置いて、トロッコを脱線させてしまいますよ」

「……成る程、いや、長々とお話を伺ってしまって申し訳ありませんでした。中々興味深い内容でした」

「……いえ、こちらこそ」

「では、私はこれで失礼します。何分時間が限られている物ですから……あぁ、私とここで会った事は他言無用でお願いします。エドのマネージャーという事で、自分を売り込んでくる者が殺到してしまいますから」

「……はい」

「では失礼します。……あぁ、あなたの名前は?」

「……朝倉和希です」

「朝倉和希さん、あなたとは、またいずれ会うことになるでしょう」

「……それは『運命』ですか?」

「……はい」


こうして、私は彼と別れた。

ふふふ、それにしても中々興味深い話の内容ではあった。

流石は、このタロットカードに選ばれた者なだけはある。

タロットカード『魔術師』。その持つ意味は……奇抜・独創性。

……だがあの少年、危険な存在ではある。

『魔術師』の持つ他の意味、それは、その独創性から来る無限の可能性。

……彼自身が、破滅へと向かう世界のレール上の小石と成りうるやもしれん。

最後にああは言ったが、未だに彼の運命も見えない。やはり、要注意人物だろう。

……『魔術師』よ、貴様は必ず、我が白の力に染め上げると誓おう。ふふふ……



SIDE OUT



SIDE 和希



「……っ!はぁっ!はぁ!……た、助かったぁ……」

ヤ、ヤバかった!なんとかやり過ごした!

……斎王さんが立ち去った後、僕はへたり込んだ。……うわぁ、今になって汗が出てきた。

……でもこれで、斎王さんに目を付けられちゃったかなぁ。……まぁ、そうなれば十代君たちの負担も減っていいか。

あぁ、それにしても……

あの声、カッコ良かったなぁ……

『『『カタカタ(オイ)!』』』

ははは……

『『『……?』』』

へ?なんか元気が無いって?……うん、さっき斎王さんの例え話の事でちょっと……ね。

『『『……』』』

……さっきの斎王さんの例え話を聞いて、僕は『自分の存在』という物を再確認させられた。

僕には、普通の人には見えない筈の坑道の先がある程度見えている。そして、『運命』というレールを切り替えるレバーも握っている。

……さっきはああ言ったけど、本当は怖いんだ……もし、レールの上に置く小石なんかがどこにもなかったら……本当にどちらかにレバーを倒さなければならない時が来たら……先の道の様子がわかっている分、怖くてしょうがないんだよ……

『『『……』』』

……ははは、ごめん、なんか気が抜けたら愚痴っぽくなっちゃった。

……大丈夫、そんな事にはならないようには、出来るだけ頑張っていくつもりだから。

それにいざとなったら、砕けるのを覚悟で、僕がその小石代わりになるさ。

『『『!?』』』

……ははは、本当にいざとなったらさ。そうならないようにも、今年も頑張んないとね。

……さて、それじゃ、校舎に十代君を探しに行く(振り)をしに行きますかね。



翌日

「万丈目君!心配したんだよ!万丈目君まで居なくなっちゃったのかって……万丈目君?」

「どうしたんだ万丈目その制服は……?」

「ふふふ、斎王様こそ、世界の支配者!デュエルアカデミアは、光の結社によって、やがて白く「うわー、うっかり躓いて熱々の味噌汁がー(棒読み)」染まぁぁあぎゃああ熱つつぁぁぁ!!!」

「……わざとだよね?あれ」

「わざとだな」

「わざとね」

「どう見てもわざとザウルス」

「はっはっはっは……」

やはり、万丈目君はホワイトサンダーへと洗脳されていた。

……これも、僕の『選択』による結果だろう。……万丈目君、本当にすまない。

……これからも、こんな『選択』を迫られるかもしれない。そして、仲間逹が辛い立場に向かうのを、知っていながら阻止しない事もあるかもしれない。

……後々、恨まれるかもしれない。でも、それでも構わない。

僕は……こっちの世界に来たときから、立ち止まらないと決めていたのだから。



今日のワイトはお休みデス。



あとがき

大分間が空いてしまいました。申し訳ありません。……しかも、デュエルもしないエセシリアスパートだし……

本編の方はこの後更にデュエルしないパターンの幕間を2話ばかり続ける予定なのでデュエル分補給の為に次は番外の方を書きます。

ではまた次回。

……というか斎王さん意外にムズいっス



[6474] 第二十五話 真のリスペクトデュエル
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:28
「ふぅ、極楽極楽〜」

僕は今、畳の床に寝っ転がっている。因みに、隼人君がお父さんの熊蔵さんとデュエルしたあの部屋である。

因みにワイト達は『黒蠍盗掘団』の面々と遊んでいる。

……それにしても、十代君が居なくなってからここ数日、べらぼうに疲れた。

イボンコぺっちゃんこな人には目を付けられちゃったっぽいし……

やかんの湯が沸騰する音のモノマネしてた人は何処かの眼鏡かけたシスターみたいなとってもカレーなキャラしてたし。……あれ?あの先生の名前なんだっけ?

翔君と剣山君はどう考えてもそっち方面の人逹としか思えないような台詞連発しながら十代君の舎弟の座を賭けて不毛なデュエルをするし……

『……あんまり凝ったネタばっかり使ってると読者の皆さんがわからないですニャ?』

「デスヨネー」

腕に抱いてモフモフしていたファラオに宿っている大徳寺先生の言葉にテキトーに返す。……と言うかあなたも某しりとりネズミロボットじゃん。

因みに、大徳寺先生には僕の事や未来の事云々を多少話しており、相談役になって貰ってたりする。勿論、他言無用で。

『それにしても、こんなにのんびりしてていいのですニャ?そんな恐ろしい敵に目を付けられて……』

「どっちにしろ、学校に『光の結社』が出来るまではあっちも行動はして来ませんよ。それには、十代君が帰って来ない事には事が始まりませんよ」

『……十代君、本当に島に帰って来ているかニャ?』

「当然。今頃島のあちこちでネオ・スペーシアン逹と出会っていますよ」

『……それは、実際に『識って』いる和希君はそう言い切れるかもしれないですけどニャ……』

「あーいや、それもあるんですけど」

『?』

「だって、あのデュエル大好き十代君が、デュエル不能のまま終わる訳無いじゃないですか」

本当、『識っている』とかそんなの関係無く、『十代は必ず帰ってくる』っていう確信が持てるんだから不思議だ。

『……それは確信というよりも願望ですニャ』

「ふふふ、何か言いましたか〜?」

『ニャ〜!尻尾!尻尾の付け根はダメなのニャ〜!』

「うりうり〜、どうだいファラオ?」

「ほぁら♪」

『やーめーてー!』



ドタドタドタ……!

「かかか和希君!大変だよ!」

そんな僕の至福の時間は、血相を変えた翔君の出現によって終わりを告げた。

「むぅ、どうしたのさ翔君?『三爪跡はいねーがー』って追っかけられてるの?」

「死の恐怖と東北の風習が混ざってるっスよ!ってそうじゃなくて!」

よく見ると、翔君の顔は、ここ最近見れなかった喜色に染まっている。

……この時期に翔君が喜ぶ事ってあったっけ?十代君が戻って来るのはまだな筈。

……あ、もしかして……

「……で、何があったのさ?」

嫌な予感を感じながら翔君に尋ねた。

翔君は満面の笑みで答えた。

「お兄さんがプロリーグに戻ってきたんだよ!」



嫌な予感が当たってしまった。カイザー……いや、勝利のみをリスペクトするヘルカイザーとなってしまった亮さんがプロリーグに帰ってきてしまったようだ。

僕は翔君に連れられるまま、皆が集まってTVを見ていた万丈目君の部屋に来た。

……正直、ヘルカイザーと化してしまった亮さんも、それを見て悲しむ翔君も見たくは無かった。

しかし……



この僕の心配は杞憂となり、同時に僕は驚愕する事となる。



「『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃!『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

「ぐわあぁぁぁ!?」

……違う。ヘルカイザー……じゃない?

確かに、以前の亮さんと違い、オベリスクブルーの制服ではなく、黒を基調としたヘルカイザーの服を着ているし、デュエルにも、ヘルカイザーのような勝利への貪欲さも見れた。

……でも、この亮さんは……相手を見下したりはしていない。リスペクトデュエルの精神を忘れていないのだ。

これは……一体……?

僕が考えている間にも、デュエルは終了してしまった。

解説者は興奮していつまでも叫んでいた。

「凄い!圧倒的強さ!かつて見たこともないパワー!将に圧殺!強い!本当に強い!地獄から舞い戻った丸藤亮!ここに復活!カイザー、いや『ジェヌエンカイザー』亮!この強さは本物だぁ!」

ジェヌエン……カイザー……『真のカイザー』?

「お兄さんが!お兄さんが帰ってきた!」

「それも、明らかに強くなっているようだな」

「将に『ジェヌエンカイザー』。その名の通り『真の帝王』となって帰ってきたわね!」

「良かったドン。丸藤先輩!」

「うん!」

……周りの皆は喜んでいたが、僕は素直には喜べなかった。



SIDE OUT



SIDE 亮



プルルルルプルルルル……

ピッ!

「あっ!亮さん!」

「……朝倉か。」

今日のリーグ戦が終わった後、携帯に朝倉が連絡をしてきた。

「この番号がよくわかったな」

「明日香さんに教えて貰いました!プロリーグ復帰おめでとうございます!」

「ああ。ありがとう」

「今後も頑張って下さい!」

「ああ、そのつもりだ」

「……」

「……何か、俺に聞きたい事があるようだな」

「……はい、その、今日のデュエルを見て、亮さんのデュエルが少し変わったなと思いまして。何かあったのか聞きたくて……」

「……」

「い、いや、話しづらかったら別にいいんですけど……」

「……いや、ここまで立ち直れたのも、一重にお前のお陰だからな」

「え……」

「正直、恥ずべき話なのだがな、お前には聞く権利がありそうだ」



エド戦以降、俺はプロリーグで10連敗と調子を落としマイナーリーグ落ち、更にマイナーリーグでも連敗し、スポンサーからも契約を打ち切られてしまった。

行き詰まった俺は、プロモーターのモンキー猿山の『プロリーグに復帰する切っ掛けを作ってあげたい』という甘言に乗ってしまい、地下デュエルに参加してしまった。

地下デュエル。それはその名の通り地下で行われる非公式のデュエル。デュエリストは檻の中に入れられ、更に衝撃増幅装置を装着させられ、その苦悶の表情を、金持ちの観客共は楽しむ。

要は、俺は動物園の動物と同じ。そんな馬鹿げた場所に、不覚にも俺は足を踏み入れてしまったのだ。

そして、デュエルが始まってしまった。

相手はマッドドッグ犬飼。地下デュエル20連勝中のデュエリスト。

犬飼はスライムデッキを使い、俺の機械族デッキを封殺にかかった。

……恐らく、俺のデッキを研究してきたのだろう。俺は全く手も足も出ず、俺のライフポイントは僅か300、フィールドにはリバースカードが1枚のみ。対する相手はライフポイントが7000、更に攻撃力1500の『マルチプル・スライム』と2枚のリバースカードと、戦況は圧倒的に不利。

衝撃増幅装置のダメージもあり、俺は極限まで追い込まれていた。

「いいリアクションだ。苦悶の表情が実に絵になる。プロリーグのドロップアウト風情がデュエルにしがみ付きたいのなら、こんな役回りしかないのだよ」

そんな俺に、檻の外からモンキー猿山が声をかけてきた。

俺は思わず叫んでしまった。




「俺は、ここまでしてデュエルにしがみ付こうとは思わない!」



……! 今俺は何と言った?

……俺にとって、デュエルとはそんな物だったのか?

……不意に思い出させられるのは二人の後輩の姿だった。

三幻魔との戦いの時も、どんな逆境に会おうとも、決してデュエルを辞めようとしなかった二人。

俺は、その双方共に一回も敗けはしなかった。だが、心の奥底に、この二人には絶対に敵わない部分がある事に気付いた。

それは『気持ち』。『絶対に勝つ』『もっと強くなりたい』という『気持ち』。

……そんな、子供でも持ち合わせている物を欠いていて何が『パーフェクトデュエリスト』だ。

……アカデミアでの最後のデュエルの後、朝倉は言っていた。

『この世に本当にパーフェクトなデュエリストなんて存在しないんですよ』

……ああ、認めよう。俺はパーフェクトなんかじゃ無い。

だが……

『亮さん、あなたにだってまだ可能性はある筈ですよ?』

そう、パーフェクト(完璧)でない以上、俺にもまだ可能性は残されている筈!

そして何より!

『では、次の勝負はプロリーグにて……だな。待っているぞ。……その時には、お互いに今以上に腕を上げてな』

『……!はい!』

あの約束を果たす為にも、俺は……強くならなければならない!!



「だったらどんな手を使ってでも……」

「……だまれ!もう、貴様の言葉には耳を傾けん!」

「な!?」

先程から戯れ言を続けていた猿山を黙らせる。

「さっさとドローしろ。負け犬」

「負け犬……か。確かに、さっきまでの俺は負け犬だった」

「あぁ?」

「『パーフェクトデュエリスト』などと呼ばれて傲り自惚れ、『リスペクト出来れば負けてもいい』等と、信念の欠片も無いデュエルをして来た。……だが、そんな物は真のリスペクトデュエルに非ず!真のリスペクトデュエルとは、相手の力に敬意を払い、全力を持ってそれを粉砕する物!その為には『絶対に勝つ』という気持ちが必要!『負けても』等と負ける事を意識しては断じてならない!」

「何をゴチャゴチャと!いいからさっさとドローしやがれ!尤も、そのドローで貴様の敗北が決定してしまうかもしれないがな!」

……奴が2ターン前から発動させている罠カード『酸のラスト・マシン・ウィルス』。自分の場の水属性モンスター1体を生け贄に捧げる事により、相手の場のモンスター、手札、そして発動後、相手ターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、機械族モンスターを全て破壊する。更にこの効果で破壊した機械族モンスター1体につき、500ポイントのダメージを相手に与えるカード。

このドローで3ターン目のドローになる。もし、機械族モンスターであれば残りライフは0、敗北が決定する。

だが……

「俺のターン!ドロー!」

十代や朝倉から学んだ事がもう一つ!

自分のデッキを信じれば、デッキは必ず応えてくれる!

「俺が引いたカードは魔法カード『パワー・ボンド』!」

「ちぃっ!」

「更に『タイムカプセル』の効果発動!発動後2回目のスタンバイフェイズだ!カプセルに入っていたカードが、手札に蘇る!そして俺は、手札から『パワー・ボンド』を発動!手札又はフィールド上から融合モンスターに必要なカードを墓地に送り、機械族の融合モンスター1体を特殊召喚する!だが、手札とフィールド上にそのカードはない、よって、速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!ライフポイントを半分払い、このカードを身代わりにし、更にデッキ・手札・墓地から融合素材モンスターをゲームから除外する事により、機械族の融合モンスターを召喚する!出でよ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!(攻撃力4000)」 亮残ライフ150

『ギシャー!』

「『パワー・ボンド』の効果により、攻撃力は倍になる!(攻撃力8000)『パワー・ボンド』の発動ターンのエンドフェイズ、プレイヤーは、特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のライフを削る。だが、このターンで終わらせる!」

「ふふふ、ところがそうはいかないんだよなぁ。罠カード発動!『スライム・ホール』!モンスターが特殊召喚された時発動!そのモンスターの攻撃力分のライフポイントを回復!そして、そのモンスターを破壊する!」 犬飼残ライフ15000

『ギャーー!』

「くっ……!」

「万策尽きたな。これで貴様の敗北は確実となった!」

「……ふ、それはどうかな?」

「あ?」

「貴様は俺がこのターンドローした『パワー・ボンド』により、貴様はこのターン、俺が『サイバー・エンド・ドラゴン』を召喚する事を読んでいた筈だ。貴様は俺の手札を全て知っているのだからな!」

「ぐっ……」

犬飼は『酸のラスト・マシン・ウィルス』を発動させた後、魔法カード『手札抹殺』を使い、俺の手札を総入れ換えさせた。その際、新しく引いたカードの中から機械族を確認すると共に、俺の手札を全て確認した。その際、俺の手札に『サイバネティック・フュージョンサポート』が存在する事も確認済みの筈。よって、『パワー・ボンド』を引いた時点で『サイバー・エンド・ドラゴン』の召喚を察知していたに違い無い。

「ちっ、それがどうした!現に『サイバー・エンド・ドラゴン』は破壊されているじゃねぇか!」

「まだ気付かないのか?さっき俺は『このターンで終わらせる』と言った筈だ。だが、攻撃力8000の『サイバー・エンド・ドラゴン』で攻撃力1500の『マルチプル・スライム』を倒してもダメージは6500。貴様のライフ、7000ポイントは削り切れない!」

「な!?貴様、まさか俺のリバースカードを読んで、自分のエースカードを捨て駒にしたのか!?」

「捨て駒等では無い!俺は『サイバー・エンド・ドラゴン』を心からリスペクトしている!そして、カードに対する真のリスペクトデュエルとは、只大切にするだけでは無い!勝利に向かい、最大限に活躍させる事だ!」

これも、朝倉から教えられた事。

あいつは自らカードを墓地に送っているがそれは決してカードを蔑ろにしている訳では無い。あいつはカードを信頼し、リスペクトしてるからこそ、カードを墓地に送っているのだ!

「いくぞ!ここからが、俺の新しいリスペクトデュエルだ!永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動!自分の墓地からモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚!墓地から『プロト・サイバー・ドラゴン』(攻撃力1100)を特殊召喚!更に手札から魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動!」

「な、何故そんなカードが手札に!?」

「貴様が知らなくて当然だ。このカードは今、『タイムカプセル』の効果によって手札に加えたカードだ。『酸のラスト・マシン・ウィルス』の効果では確認されていない!」

「ちぃっ!」

「『オーバーロード・フュージョン』の効果を発動!自分フィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外、闇属性・機械族の融合モンスター1体を特殊召喚する!俺は『キメラテック・オーバー・ドラゴン』を召喚!」

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!?」

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は『サイバー・ドラゴン』を含む2体以上の機械族の融合素材モンスターが必要!そして、『プロト・サイバー・ドラゴン』はフィールド上に表側表示で存在する限り、カード名を『サイバー・ドラゴン』として扱う!更に俺は、墓地に存在する6体の機械族モンスターを全て融合素材とする!」

……すまないサイバー・エンド、どうやら俺は、お前という最高のパートナーに少々頼り過ぎてしまっていたようだ。今はゆっくりと休んでいてくれ。

「出でよ!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』!」

『ギシャー!!!』

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃力は、融合素材にしたモンスターの数×800!よって、攻撃力は4800!」

「攻撃力4800!?」

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』(攻撃力4800)で『マルチプル・スライム』(攻撃力1500)に攻撃!『エヴォリューション・レザルト・バースト』!」

『ギシャー!』

バリバリバリ!

「ぐわあぁぁ!」 犬飼残ライフ11700

犬飼のライフが減るのと共に、先ほどまでの俺と同様、衝撃増幅装置によってダメージを受けていた。

「ぐ……何の!『マルチプル・スライム』の効果発動!このカードが戦闘で破壊された事により、『スライムモンスター・トークン』(水属性・攻撃力500)を3体攻撃表示で特殊召喚!更に罠カード発動!『トラップ・トリップ』!自分の墓地から罠カードを1枚手札に加える!」

「……成る程、『酸のラスト・マシン・ウィルス』か」

「俺のフィールドには、3体の水属性モンスターがいる!1体でも残ればそいつを生け贄に発動!それで……」

「さっきから何度も言っている筈だ。『このターンで終わらせる』と。……最後の忠告だ。サレンダーしろ」

「あぁ?何言ってやがる?」

「貴様も相当な腕前のデュエリストだ。だが、この衝撃増幅装置のダメージを受けてしまえば、貴様は無事では済まなくなる。それは忍びない」

「はっははは!何をトチ狂ってやがる!負けそうなのは貴様だろうが!そもそも、地下デュエルにサレンダーなんて物は無ぇんだよ!」

「……そうか、ならばやむを得ん。バトルを続行する!」

『ギシャー!!!』

「な!?馬鹿な!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』のバトルフェイズは終了した筈!」

「『キメラテック・オーバー・ドラゴン』は、融合素材にしたモンスターの数だけ、攻撃する事が出来る!」

「な、何ぃ!?」

「これでとどめだ!『キメラテック・オーバー・ドラゴン』の攻撃!『エヴォリューション・レザルト・バースト』!!!グォレンダァァァ!!!」

「ぐわあぁぁぁぁぁ!!!」 犬飼残ライフ0



SIDE OUT



SIDE 和希



「……こんな所だ」

「……」

……亮さんの話を聞いて、僕は空いた口がふさがらなかった。

まさか、何にも考えずに言った僕の言葉がそんな効果をもたらすとは……

「恥ずべき話だ。『パーフェクト』『カイザー』等と呼ばれていながら、俺はそんな簡単な事にも気付いていなかった」

「……」

僕の行動が、また原作との相違点を作ってしまった。

……亮さんがヘルカイザーにならなかったのは正直嬉しいが、これで良かったのだろうか?

「……朝倉」

「あ、はい」

いけないいけない。考え事ど亮さんとの通話に全然意識が向いてなかった。

「……改めて、礼を言いたい」

……はい?

「お前の言葉が、俺の迷いを断ち切ってくれた。お前のお陰だ。……ありがとう」

……

…………

………………

あ、もう限界。

「くっ……」

「?」

「ふふふ、ははは、あっはっはっはっは……!!」

「ど、どうした?急に笑い出して……」

「い、いえ。何でも……くふふふふ……」

「?」

あぁ、なんか今はこれからの事なんてどうでもいいや!

だって……

「いや、亮さんの復活が嬉しいなぁと思いましてね。本当におめでとうございます!」

「あ、ああ」

敬愛する亮さんの復活、こんなに嬉しい事は無いもの!



「……そうか、十代もエドに……」

「はい、今は行方不明です」

「そうか。……朝倉」

「? はい?」

「十代が帰って来る迄、翔の事を頼む。心細いだろうからな」

「ふふふ、相変わらず弟思いですね。と言うか、十代君が戻って来るのは確定事項ですか?」

「十代ならば、どんな逆境でも挫けないだろうしな。加えて、あいつがデュエル出来ないまま終わるとはとても思えん。お前も、そう思っているのだろう?」

「ははは、全くの同意見デス」

「……ではな。皆に宜しく伝えておいてくれ」

「はいはーい。亮さんも頑張って下さいね!」

「ふ、善処しよう」



こうして、亮さんは原作とは違う形で復活した。

ヘルカイザー亮では無くジェヌエンカイザー亮。

……この差が今後どう影響してくるのかはわからない。

でも、これだけは言える。

亮さん、今のあなたは、最高にカッコいいです!



今日のワイトはお休みです



あとがき

と言うわけで、ずっとカイザーのターンな回でした。

やっちまったー!カイザーを半オリキャラ化してしまったー!

うぅぅ、僕の中では(カイザー+ヘルカイザー)÷2=最強という方程式が存在するんデスヨー!……いや、ぶっちゃけ八割方カイザーなんですケド……

……というか、また賛否が激しそうな予感が……orz

……反対意見が多かったら、この話無かった事にして普通にヘルカイザーにしちゃおうかな……



[6474] 第二十六話 運命という名の枷
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:28
SIDE エド



ナポレオン教頭からの依頼で、僕はデュエルアカデミアのオシリスレッド寮の廃寮を賭けたデュエルをする事となった。

ナポレオン教頭は、僕がこのデュエルを引き受ける為に、『自分はデュエルの裏社会のボスを知っており、このデュエルに勝てばその人に頼んで僕の探している奴、僕の父さんを殺し、父さんが作った『究極のDのカード』を奪った犯人を探して貰う』という交換条件を提示してきた。

正直、99%眉唾だったが万が一という場合もある。それに、ここで奴らに恩を売っておくのもいいと思った。

だが、デュエルが始まる直前……

「ちょっとまったぁぁ!!」

途中で十代が乱入し、僕は十代とデュエルする事となった。

十代は、同じヒーロー使いである僕も見たことがない新しいヒーロー、『E・HERO ネオス』と『ネオ・スペーシアン』を駆使して僕を追い詰めてきた。

……腹が立った。十代は相も変わらず『憧れ』だけでヒーローを使っているというのに、ヒーローの背負っている運命の重さもわかっていないというのに、何故、こんな奴が……

「きっとまだまだ居るんだぜ、新しいヒーロー達が!」

嬉しそうに話す十代に、僕は叫んだ。

「十代!そんなに自分のヒーローを見せびらかすのが嬉しいか!?だが、運命を背負わぬヒーローなど、僕は認めない!」

だが、返ってきた十代の言葉に、僕は愕然とした。

「……確かに、お前の父さんの出来事は悲しいけどさ、でも、新しいヒーローに出会うのって、凄くワクワクするじゃん?お前ならわかるだろ?エド」

「新しいヒーローとの……出会い……?」

こいつは一体何を……?

「きっとお前の父さんもさ、お前がD-HEROを見て苦しい思いをする為じゃなく、喜んで貰いたくって創った筈だぜ?」

……僕を、喜ばさせる為に……?

……そう、父さんは僕を喜ばせる為に、何体ものヒーローを描いてくれた。なのに今、僕はD-HERO達を見る度に心が痛む。

父さん……

「エド・フェニックス!何ボーッとしてるのでアール!十代の言葉などに惑わされてはならんのでアール!」

「ちょっと待てよ!惑わすなんて人聞きの悪い事言うなよ教頭!」

「十代なんぞ、君の運命を背負うD-HEROで蹴散らすのでアール!」

! 『僕の運命を背負う』?

僕は……僕自身の運命をD-HEROに背負わせ、D-HEROを運命の囚人にしているというのか?



「ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!」

……結果は僕の完敗だった。

だが、十代が召喚した『E・HERO フレア・ネオス』が発した光。あの光は、僕が新しいヒーローの登場の度に心踊らさせられた事を思い出させてくれた。

こんなに心地よい敗北は初めてだった。

「……今日の所は僕の負けだ。だが、D-HEROが負けた訳じゃない。僕のプレイが未熟だっただけだ」

「勿論、誰もD-HEROが弱いなんて思ていないさ。誰の心にもヒーローは居る。自分にとって最強のヒーローがさ」

……『自分にとって最強のヒーロー』……か。

……僕は勘違いしていたようだ。こいつも、僕に負けない程、ヒーローに対する思いを持っているようだ。

「最初の手抜きデュエルはノーカン。これで一勝一敗だな」

「ああ、いずれ決着を付けよう」

そう言って、僕は踵を返した。

途中、ナポレオン教頭、慌てた様子から見て、やはりデタラメだったのだろう、とクロノス臨時校長に、これから暫くこの島に滞在する事を告げた。

……万丈目はさっきのデュエルの直前、僕と十代がデュエルした時、僕のデッキに斎王の力が宿っていたと言っていた。

それが本当ならば、斎王は何かを企んでいる。……信じたくは無いが、そう行き着いてしまう。

外に出て、携帯で電話をするが、やはり斎王に繋がらない。

斎王……



「つっかまえたぁ!」

「な!?」

考え事をしていると、いきなり後ろから誰かに羽交い締めをされた。

「ふふふ、このままタダで帰れると思うなんて、ちょいとスウィートな考えじゃないですか?」

「は、放せ!何をする!?」

「ほら剣山君早く手伝って!君のその逞しい肉体はなんの為にあるんだい?」

「……少なくとも、こんな事をする為じゃないのは確かザウルス」

「じゃあ『やらないか?』ってやる為?」

「余計違うドン!」

くっ!?何だこいつら!?僕をどこかに連れ込んで、報復のリンチでもするつもりか!?

抵抗も虚しく、僕は連れ去られた。



「あー、それではこれより、十代君の復活祝い及び、新入生エド君の歓迎パーティーを始めたいと思いまーす!」

『イエーイ!』

「……」

……右手には無理矢理持たされたジュース。そして目の前には浮かれている面々。

極めつけに、連れて込まれたレッド寮の部屋、ボロいアパートの割りにはそれなりな部屋、の天井からは手書きの垂れ幕が掛かっていた。

『お帰りなさい十代君』

『ようこそエド君』

「って言うか先輩。同じ新入生の俺は祝ってくれないドン?」

「あ、それもそうだね。それじゃ『&剣山君』と。カキカキ……」

「……後付け感が満載ザウルス」

……あろうことか、こいつらはさっきまで戦っていた僕を、こんなヨクワカラナイパーティーに(強制)参加させたのだ。

「ふふふ、十代君を一時的にデュエル不能にしたんだから、お帰りなさいパーティーに参加位はして貰わないとねー?ああ、ついでに君の歓迎会も兼ねちゃおうか。ふふふ、楽しくなりそうだなぁ」

ここに連れ込む時、連れ込んだ張本人、朝倉和希は悪戯、と言うよりは邪悪な笑みを浮かべてそんな事を言っていた。

こいつらの話と万丈目の話を合わせて推測だが、十代は僕とのデュエル後、僕のデッキに宿っていた斎王の力が原因でカードが認識出来なくなってしまったらしい。

斎王、君は一体何を考えている……

「はいはーい!じゃあここで、今回のパーティーの主賓である十代君から挨拶を頂きましょー!」

「お、おい!?いいじゃねーかよそんなの!」

「駄ー目!これだけ皆に心配掛けさせたんだからね?」

「そうザウルス!丸藤先輩なんか、毎日の如く泣いてたドン」

「む、剣山君だって溜め息の連発だったじゃないっスか!」

「いずれにせよ、俺達に言伝て無く姿を眩ますのは感心しないな」

「そうね。それをこの挨拶だけでチャラにしてあげるんだから、寧ろ喜ぶべきよ」

「あ、明日香さん、微妙に言い回しが怖いっス……」

「……ちぇ、しょうがねぇな」

口ではそう言いながらも、十代は嬉しそうな顔をしていた。

「皆、心配掛けてすまなかった。この通り、無事に帰ってこれたし、またデュエルも出来るようになった。これも皆のおかげだ。本当にサンキューな!」

「やふー!遊城十代復活ッッ!!遊城十代復活ッッ!!遊城十代復活ッッ!!遊城十代復活ッッ!!」

「デュエルしてぇ!!」

『ワーーッッ!!』

……と言うか、何なんだこの盛り上がり様は?

「よーし!じゃあカラオケ大会始めるよー!一番朝倉和希、歌いまーす!よーし、一曲目はこいつだ!」

ピッ

『あ○なに一緒だったのに S○e-Saw』

ピッ

『演奏が中止されました』

「ちょ!翔くん、なんで止めるのさ!」

「わかってて言ってるでしょ!?と言うかいつまでこのネタを引っ張る気っスか!」

「ちぇ、しょうがないなぁ。じゃあこの曲で……」

ピッ

『○色 N○NA starring MIKA NAKASHIMA』

ピッ

『演奏が中止……

「も〜翔く〜ん?」

「だ〜か〜ら〜!その『違う色』系の歌は止めてってば!」

「和希!翔をからかうのはそれ位にして早く回してくれよ!」

「あいよー」

「どうだい明日香、次は僕とデュエットしないかい?」

「……遠慮するわ」

「吹雪様!それでしたらわたくしと!」

「ちょっとももえ!抜け駆けは卑怯よ!吹雪様!アタシとデュエットして下さい!」

「あら、駄目ですわよ。ジュンコさんは朝倉さんとデュエットしなくては」

「ちょ、ちょっと!だから何でそうなるのよ!?」

「ふむ、そうだね。これは彼へのいいアピールになるかもしれないよ?」

「ふ、吹雪様まで……あ、アタシは別にあ、あんな音痴の事、何とも思ってません!」

「ふふふ、その割には、さっき朝倉本人からこのパーティーに招待されて、嬉しそうな顔を隠せてなかったけど?」

「明日香さん!!!」

「って和希君が『ゴジ○アイランド』歌ってる!?」

「しかも歌詞見ないで怪獣の名前歌ってるドン!?」

「と言うか、あの記憶力があるなら、もっと成績いい筈なんだがな……」

「ははは、まぁ、そこが和希らしいんだけどな。覚えたい物は覚えて、それ以外は覚えない、ってな」

と言うか、何なんだこの混沌としているパーティーは?このジュース、アルコールでも入っているのか?



「ふぃ〜歌った歌った」

先程の、妙な曲を歌い終えて、朝倉和希は隣に座って来た。

因みに、十代が乱入するまでは、僕はこの男とデュエルする予定であった。

「どう?楽しんでる?」

「……そんな風に見えるなら、眼科に行く事を勧める」

「むぅ、それはいけないな。よし、じゃあ一曲歌おう!」

「断じて断る」

……何故そうなる。

「ちぇ、ノリが悪いなぁ」

そう言って、ジュースを口にする朝倉。……本当にそれアルコールじゃないんだろうな?

「全く、人生今頃が一番楽しい時期なのに、ちゃんと楽しまないと勿体無いよ?」

「っ!お前……!」

「……まぁ聞きなって」

「!」

「……少しは先輩の話を聞いてもいいんじゃないかな?」

僕は早生まれだから多分大して年なんて変わんないけどねーと、朝倉はヘラヘラ笑いながら肩を竦める。

……言いたい事は山程あったが、今一瞬朝倉が見せた真剣な顔が気になり、とりあえず聞くだけ話は聞く事にした。

「……僕は別に仇討ちは悪い事では無いと思うよ?」

「な!?」

仇、つまりは僕の父さんを殺し、父さんの作った『究極のDのカード』を奪った犯人……

「『敵討ちをする』っていう君のケジメは大切さ。それに、見ようによっては君がD-HEROを『仇討ちの為の道具』みたいに使っているように捉えてしまうかもしれないけど、D-HERO達だって君のお父さんが作ったカード。仇討ちをしたい気持ちは君と同じだと思うよ?」

でもね、と朝倉は片目をつむり、チッチッチッと指を振りながら……

「それに囚われ過ぎて、それが『人生の全て』なんて事になっちゃいけないね。さっき十代君も言っていたように、元々君のお父さんはD-HEROを君が喜ぶ為に作った筈だよ?」

「……っ!五月蝿い……!お前に、僕の何がわかる……!」

……叫ぶつもりだったのに、自分でも驚く程声が出ていなかった。

……認めたくない。

認めたくないのに……心の何処かで十代や朝倉の言っている事が正しいと感じてしまっている。

「ははは、まぁ、それは僕は君じゃない。完璧に君の気持ちを汲み取れなんていうのも不可能な話さ。でもね、この国には『岡目八目』って諺もあってね、端から見てた方が案外わかる事もあるんだよ?……そうだねぇ、さしあたっては……」

「っ痛!?何をする!?」

何を考えたのか、この男は急に僕の眉間を小突ついてきた。

「ここに皺が寄りがちで、イケメンが台無しになってるよ」

「っ!それがどうした!?」

それが、一体何だと言うんだ!?

「だーかーらー、君のお父さんは君のそんな顔は見たがっていないってーの」

「な!?」

こいつは一体……何を……?

「君のお父さんもD-HEROも、いつもそんな険しい顔と気持ちでデュエルしてたんじゃ悲しむと思うよ?」

「……」

「さっきも言ったけど、僕は別に仇討ちは悪い事じゃ無いと思う。でも、仇討ちの時とそうでない時のメリハリをちゃんとつけた方が良いよ?ONとOFFをちゃんと切り替えないと、電池が切れちゃうよ?」

「……」

……朝倉はさて、と立ち上がり、

「まぁ、これはあくまで僕的な観点から見た物だけどね。別に鵜呑みにする必要は無いよ。単なるアドバイスと考えてくれたまへ」

そう言って親指を立てて、僕の隣から去っていった。



「ははは、歌う曲がジュ○レンジャーとは、剣山君もベタだなぁ」

「和希、エドと何話してたんだ?」

「んー?いや、ちょっとしたアドヴァイスを……ね?」

「……また何か変な事を吹き込んだんじゃないの?」

「を?良くわかったね。実は翔君の恥ずかしい話略してハズバナをあれこれ……」

「『ライオンのご○げんよう』っスか!?と言うか、普通話すの自分の事でしょう?」

「ふふふ、僕のモットーは『退かぬ!媚びぬ!省みぬ!』なのさ!」

「何処ぞの聖帝っスか君は!?」

「はははは、さて、そろそろ僕も歌うか」

「待て朝倉、次は俺の曲だぞ」

「てい!割り込み!」

「おい!」

「……確かに、三沢君の曲地味すぎるっス」

「『津○海峡冬景色』はないザウルス」

「余計な御世話だ!」

「……」

僕の頭の中で、さっきの朝倉の言葉が響いていた。

『だーかーらー、君のお父さんは君のそんな顔は見たがっていないってーの』

……父さん。僕はどうすればいい?

僕は……十代や朝倉の言う通り、あなたが殺されてから、その犯人への復讐が人生の全てとなっていました。

……でも、それでは朝倉の言う通り、あなたは喜ばないのでしょうか。

……教えてください、父さん……僕がどうすれば、あなたは喜んでくれますか?

見ると、十代や朝倉、丸藤翔、ティラノ剣山に三沢大地の五人が歌っていた。

歌声に統制は無く、バラバラである。

だが、何故か、いつもは雑音にしか聞こえない筈のそれが、全く耳障りに聞こえなかった。

「……ちっ」

僕はコップのジュースを煽った。

……そうでもしないと、自分の頬が緩むのが隠せなかった。

……父さん、正直、僕は今楽しいです。

父さん、今この時だけ、あなたの事を忘れてしまっても、あなたは許してくれますか?

……目を閉じると、瞼の裏で、父さんが笑ってくれた気がした。



今日のワイト

3ワイト「「「カタカタカタ(泣」」」

ザルーグ「何と、最近、全くデュエルする時が無いと!?」

3ワイト「「「カタカタカタ(泣」」」

ゴーグ「それどころか、出番すらも減ってきた?」

3ワイト「「「カタカタカタ(泣」」」

ミーネ「泣いちゃダメよ!泣いたらお日様に笑われちゃうわ!」

クリフ「俺達だって、出番は無いけど、めげないぜ!」

チック「明るく!楽しく!元気よく!」

黒蠍「「「「「それが!黒蠍盗掘団」」」」」



「?朝倉、何やらこの部屋、カタカタ物音がしないか?」

「超気のせい。」



あとがき

……またワイトのデュエル書けなかったorz。すみません。次回は必ずワイト無双の回にします。

GXの一番最初のOP大好きなんですよねー。聴いていて元気が出ます。

祝!サイバードラゴン準制限緩和化!やったぜ亮さん!

早速改訂、宇理炎様、異体様、ご指摘ありがとうございました。

話は変わりますが先日、やっと劇場版を見に行けました。(以下、微ネタバレ注意)




微妙に知的になっていながら、それでも全然変わっていない十代君が嬉しかったです。『○○○○キター!』には吹きました。



[6474] 第二十七話 最強ドS決定戦!?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/07/12 23:52
さて、十代君も戻り、思いもかけず亮さんも完全復活した。

だがこの事により、やはり事態は急転していった。

まず、やはりオベリスクブルー寮が、斎王さん達『光の結社』の拠点、ホワイト寮と化してしまった。

これにより、これからは十代君、下手をすれば斎王さんに目を付けられたっぽい僕にも、光の結社の魔の手が伸びてくるかもしれない。厳しくなってくるだろう。

また、ブルー寮がホワイト寮に変化した折、明日香さんもブルー寮を取り返そうと万丈目君に挑み、負け、ホワイト化してしまった。

え?何で明日香さんが万丈目君に挑むのを止めなかったって?そりゃ色々と止めようとしましたよええ。でも……

「アンタねぇ!明日香さんの腕がそんなに信用出来ない訳!?」

……ジュンコさんにそう迫られて何にも言えなくなりましたとさ。……と言うかあれ以上なんか言ってたら多分殴られてた。

なのに、いざ明日香さんが負けてホワイト化すれば……

「アンタねぇ!なんでもっと強く止めなかったのよ!?」

まさに外道!?

え?ナポレオン教頭とクロノス臨時校長のオシリスレッド寮廃寮を賭けたデュエル?あーそんなのもあったねぇ……

……クロノス臨時の股間に『トイ・ソルジャー』の攻撃がスカーンと……

「ぷっ、くくく……」

「?どうしたんだ和希?」

「……どうせまたしょうもない事考えてるドン」

「それにしてもアニキ〜、万丈目君の呼び出しなんか無視すればいいのに」

「うーん、そうだけどさ。あいつ、最近益々変になってるだろ?気になってさ」

「あはは、益々って事は元々も変だって事だよね?」

「……和希君程じゃないでしょ」

「む、失礼だなぁ。あんな、万丈目『マーブルサンダー』よりはずっとましだって」

「……『ホワイトサンダー』ザウルス」

「えー?どう見ても『ホワイト』(白)じゃなくて『マーブル』(水玉)じゃん?」

「……あれは和希君が味噌汁とかジュースとか引っ掛けたシミでしょ?」

「ははは、嫌だなぁ。『引っ掛けた』だなんて、あたかも僕が『ワ・ザ・と』やったみたいジャマイカ?」

((絶対ワザとだったでしょ(ザウルス)))

んで、今何をしているかと言うと、そのホワイト寮の生徒に無理矢理渡された地図に描かれていたポイントに向かっていた。

おそらく、これから起きるのは……

「あ……」

「ここドン?」

予想通り、というか原作通り?海辺を歩いていると、目的地であるであろう洞穴があった。

中に入り、懐中電灯の光を頼りに暫く進むと……

「よくいらっしゃいました。うふふふふふ……」

そんな礼儀正しい、しかしどこか嫌味な猫なで声が聞こえ、それと共に、洞穴内で明かりが灯った。

そして、その明かりに照らし出され、眼鏡をかけたスーツ姿の男が、相手を不快にさせる笑みを浮かべ、現れた。

「あ、あの〜、真っ白な制服を着た変な奴、見ませんでした?」

正確には水玉だけどね!

「あぁ、彼ならここには来ませんよ?」

「「「え?」」」

「全ては私に任されています」

「あんた誰ドン?」

「申し遅れました。私は……」

「プロデュエリストのエックスさん、ですね?」

「おや、私などの事をお見知り置きとは、光栄ですねぇ」

うん、全然嬉しくない。

「知ってるのか和希?」

「まぁね、雑誌で見た覚えがあるよ(大嘘)。それで、そんなプロデュエリストであるあなたが、なんでこんなところに?」

「私の素性を知っているのならば話が早い。遊城十代さん、私とデュエルして下さい」

「なんでオレとあんたが?」

「エド・フェニックスを敗った君と、是非デュエルしたいのです」

嘘ばっかし。斎王さんの刺客のくせに。

「あれー?オレちょっと有名人?」

……そしてそんな口車に乗ってしまう十代君がいとおしい。

「エドの事、知ってるの?」

……いや翔君、エド君もプロデュエリストでしょうに。

「彼は見所のあるデュエリストです。ランキングは私の方が上ですがねぇ」

言い方がウザッ!

「エドより上!?って事はエドより強ぇのか!?凄ぇ!オレ、プロから挑戦受けてるんだぜ!?」

「さぁ、どうします?」

「面白そうじゃないか、このデュエル、受けてや……」

「ちょっと待った」

「え……」

「十代君。今回は僕にやらせて」

「お、おい!?なんでだよ!?」

「君はエド君と散々デュエルしたんだからさ。今度は僕にプロとデュエルさせてよ」

……と、言うのはまぁ建前で、僕が今回デュエルする理由は別にある。

先程も言ったが、この間の接触で十代君だけでなく、僕も斎王さんに目を付けられてしまっただろう。

だが、一旦目を付けられてしまったのであれば、僕への視線をずらすのは難しい。これはこれでしょうがないと割り切るしかない。

ならばどうするか?

僕と十代君の二人に、向けさせる目を分散させればいい。そうすれば少なくとも、十代君の負担も減るだろう。

だからこそ、前回のグラディウスデッキの使い手、銀流星君とのデュエルは原作通り、十代君に任せたのだ。

順番的に次は僕の番、ましてや、この人のデッキは僕のデッキと相性が非常に良い。

それに、おそらくだが原作を見た感じ、この人は銀流星君同様に斎王に洗脳されている訳ではない。おそらく金か何かで依頼されているのではないだろうか。

斎王さんがこの人を刺客に選んだ理由。それは十代君が『破滅の運命』を避けられるかどうかの、言わば捨てゴマ。

この人とデュエルした人はデュエリストとしての誇りやデュエルへの情熱を失くし、二度とそのデッキを手にしなくなるという。つまりは『破滅』。『破滅の光』の力で、十代君を洗脳する事が今回の斎王さんの目的じゃない。

たがら、斎王さんは彼には洗脳をする必要がない。この事は大きい。仮に僕が負けたとしても、僕が『破滅の光』の力で洗脳される危険性がないからだ。

……と言うか、結局のところ最後は十代君任せになってしまいそうなので、僕に出来るのはこういった、十代君への負担を少しでも肩代わりする事しかないんだけどね。

「おいおい、あっちはオレを指名してるんだぜ?オレにやらせてくれよ!?」

「いーや、僕に譲って貰うよ!最近なんか感想でワイト達がエアーマン化してるって言われてるんだからね!」

「オレだ!」

「僕だ!」

「「ぬぬぬぬぬ……」」

「……ホント、デュエルが好きな二人っス」

「というか朝倉先輩、思いっきりメタ発言してるドン」

……僕と十代君は暫く火花を散らしていたが、互いの意思を視線で感じとり……

「「ちーけった!!」」

「視線だけで意志疎通した!?」

「しかも掛け声がなんか古いザウルス!?」

ま、よーするにジャンケンだけど。

んで、結果は……

「くっそー!」

「ははは、甘いね十代君。君の出すパターンは既に僕の頭にインプット済みだって事を忘れたかい?」

「……ジャンケンってそーいう物じゃない気がするんだけど」

因みに僕がグーで十代君がチョキだった。十代君は『ガッチャ』のせいなのか、最初に高確率でチョキを出してくるのだ。

「そういう訳ですので、宜しくお願いします」

そう言って、僕はデュエルディスクを構えた。ワイト達も、久々の出番に張り切っている。

「……やれやれ、私は遊城十代さんとデュエルをしに来たんですがねぇ」

「あはは、そこをお願いしますよ。僕だってプロの方とデュエルしたいですし、それに、僕とのデュエルの後でも十代君とはデュエル出来るじゃないですか?」

「うふふふ、まぁいいでしょう。ならばお望み通り、あなたの方から、先に壊して差し上げましょう。ふふふふふ……」

「ははは、お手柔らかにお願いしますね」

「「ふふふふふふふふ……」」



「な、なんか、空恐ろしい物を感じるザウルス」

「……もしかして、あの二人って似た者同士?」

「は、はははは……なんか今回だけは、和希に譲っておいて良かったかも……」



「「デュエル!!」」

「では、私から行かせて貰います。ドロー!私は『トラップ・スルーザー』(守備力800)を攻撃表示で召喚。更にリバースカードを2枚セットし、ターンエンドです」

「僕のターン、ドロー!」



「ア、アニキ。和希君大丈夫っスかね?」

「心配すんなって。あいつだって、プロになったカイザーと互角のデュエルをしたんだ。プロ相手にだって……」

「そう簡単には行かない」

「エド?」

「いつの間に……」

「あのエックスは、初めてデュエルした相手に、一度も負けた事が無い。プロデュエリスト界に、奴とデュエルしたがる奴なんていないんだ」

「え……」

「奴と戦ったデュエリストは負けるだけじゃない。デュエルに向かう情熱も誇りも、全て失う事になる」

「ど、どういう事?」



……さて、『トラップ・スルーザー』を召喚したって事は、既に『あのカード』をセットしてるっぽいな。ならば……

「僕は『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)を攻撃表示で召喚!」

「おっとその前に罠カード発動!永続罠『モンスターレジスター』を1000ポイントライフを払い、発動します。その効果により、互いのプレイヤーはモンスターが召喚・特殊召喚されたとき、そのモンスターの星と同じ数だけデッキの上からカードを墓地に送る。あなたの召喚した『ゾンビ・マスター』の星は4。よって、4枚のカードが墓地送りとなります。」 敵残ライフ3000

……やはり来たか。

レジの形をしたミミック(?)が現れ、舌を伸ばして、僕のデッキのカードを上から4枚を奪っていった。

「……そして、あなた自身は『トラップ・スルーザー』の効果により、永続罠の効果を受けない。よってデッキは減らない……って訳ですか」

「うふふふ、お察しの通りです。このデュエルが終わる頃、あなたとデッキの信頼関係は完全に崩れ去ります。そして、二度とそのデッキを使う事は出来なくなります。うふふふ……」



「あれが奴のやり方、デッキ破壊。ライフポイントでなく、相手のデッキの枚数を削るデュエル」

「「「……」」」

「? どうした?」

「あー、何と言うか……なぁ?」

「そうっスね」

「ドン」

「こりゃ勝ったな」

「勝ったっスね」

「多分勝ったザウルス」

「な!?お前ら人の話を聞いていたのか!?見ろ!奴のフィールドには既にデッキを壊す環境が整っているんだぞ!?」

「……そう言えばエドは和希君のデュエルを見た事がなかったっスね」

「? どういう事だそれは?」

「まぁ、見てればわかるって」



「うふふふふ、どうしました?もう負けを認めますか?」

「まだまだ、デュエルは始まったばかりですよ!『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)で、『トラップ・スルーザー』(攻撃力800)に攻げ……」

「甘ーい!罠カード『威嚇する咆哮』を発動!このターン、あなたは攻撃宣言出来ません。」

「……リバースカードを2枚セットしてターンエンドです」

「うふふふ、はははは。気持ちがいい、最高に気持ちがいいですねぇ。自分のデッキを信頼しているデュエリストとデュエルするのは」

ホントに一言一言が一々ウザいなこのドSさんは。

「私のターン、ドロー。魔法カード『強欲な壺』を発動、その効果により、デッキからカードを2枚ドロー。、更にリバースカードを3枚セットしてターンエンドです」

「僕のターン、ドロー!『ゾンビ・マスター』(攻撃力1800)で、『トラップ・スルーザー』(攻撃力800)に攻撃!」

……ここで、罠でも発動してくるかと思ったが、意外にも、相手はすんなりと『トラップスルーザー』を破壊させた。 敵残ライフ2000

この人のデッキの罠カードのほとんどが、相手の攻撃を防ぐないし、戦闘ダメージを0にする類の筈。

あれだけリバースカードをセットしているのに、それがない?

「うふふふふ……」

……なにか企んでるな。

「……ターンエンドです」

「うふふふ、私のターン、ドロー。魔法カード『天使の施し』を発動、デッキからカードを3枚ドローし、2枚カードを墓地に捨てます。更に、『天使の施し』で墓地に送った『誘蛾灯 レベル4』の効果を発動!このカードが効果によって墓地に送られた場合、自分はデッキから星4のモンスター1体を特殊召喚することが出来る。私が召喚するのは勿論、『トラップ・スルーザー』(攻撃力800)です」

なるほど、また『トラップ・スルーザー』を召喚する手立てがあったから、リバース罠は温存した訳か。

「まぁ、『トラップ・スルーザー』を特殊召喚した事により、『モンスターレジスター』の効果でデッキのカードが4枚墓地送りになってしまいますがねぇ。私は更に、そして永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動。墓地からモンスターカードを1体、攻撃表示で特殊召喚します。私は、同じく『天使の施し』で墓地に送ったモンスター、『ニードルワーム』(攻撃力750)を特殊召喚」

あ、ヤバい予感。

「更に手札から速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動。このカードは、相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時に発動。その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚します。」

エックスさんのフィールド上に3体の『ニードルワーム』が揃った。

「更に、『地獄の暴走召喚』の効果により、あなたは自分のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚します。さぁ、あなたのフィールド上のモンスター。『ゾンビ・マスター』をデッキ・墓地から全て特殊召喚して下さい。」

……僕の墓地には、『ゾンビ・マスター』はもう2枚。それを攻撃表示(攻撃力1800)で特殊召喚する。

「この瞬間、永続罠『モンスターレジスター』の効果発動。あなたのデッキからカードを墓地送りです」

……再び、2体の『ゾンビ・マスター』の星の数、8枚のカードが僕のデッキから墓地に送られた。

それに対して、エックスさんは『ニードルワーム』を3体特殊召喚したが、『トラップスルーザー』の効果により、『モンスターレジスター』の効果は受けず、デッキから墓地に送られた枚数は0。

そして、リバース効果モンスターである『ニードルワーム』を3体も並べたという事は、次に来るのはおそらく……

「うふふふ、これで、私の勝利の環境は完璧に整いました。いよいよカウントダウンです。手札から速攻魔法『皆既日蝕の書』を発動!フィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て裏側守備表示にします」

……やっぱりソレか。

フィールド上のモンスター6体、エックスさんの『トラップスルーザー』(守備力1300)と『ニードルワーム』(守備力600)3体、そして僕の『ゾンビ・マスター』(守備力0)2体の全てが裏側守備表示となった。

「うふふふ、いきますよ。罠カード『砂漠の光』を発動!自分フィールド上に存在するモンスターを全て表側守備表示にする。そして、『ニードルワーム』(守備力600)のリバース効果が発動!あなたのデッキのカードを上から5枚墓地送りにします。うふふふ、合計15枚墓地送りです」



「なんというコンボだ。このターンだけで、デッキを約20枚も削られてしまった。これでも、まだ朝倉が勝つと思うのか?」

「うーん、確かにちょっとヤバそうかもなぁ」

「まぁでも、多分大丈夫っスよ。全然余裕そうな顔してるし」

「と言うか、あれは多分、何か良からぬ事を考えてる顔ザウルス」



「更に、手札から永続魔法『平和の使者』を発動、このカードがフィールド上に存在する限り、攻撃力1500以上のモンスターは攻撃出来ません。うふふふ、毎ターン自分のスタンバイフェイズごとにライフを100ポイント払わなければこのカードは破壊されてしまいますがねぇ。これでターンエンドです。このターンのエンドフェイズ時、『皆既日蝕の書』の効果により、あなたのフィールド上に裏側守備表示で存在するモンスターを全て表側守備表示にし、その枚数分だけあなたはデッキからカードをドローします。ははは、聞こえますか?デッキの悲鳴が。絆も何もかもが滅茶苦茶になってしまいましたね。さて、あと何ターン持ちこたえられますかな?」

『皆既日蝕の書』の効果で、『ゾンビ・マスター』(守備力0)3体を表側守備表示にし、その枚数、3枚のカードをデッキからドローし、僕のデッキは残り3枚。

「うふふふ、さぁ、あなたのターンですよ。うふふふふ、ゾクゾクしますねぇ。デッキ破壊に絶望のデュエリスト。うふふふふ……」

「僕のターン、ドロー!……ふぅ、どうですか?十分に楽しみましたか?」

「なにぃ?」

「んじゃ、そろそろいかさせて貰いますよ」

「はははは、いくら強がったって、あなたには何も出来ませんよ」

「ふふふ、それはどうでしょう?手札から『デス・ラクーダ』(星3、攻撃力500)を攻撃表示で召喚!」

『モンスターレジスター』の効果で、僕のデッキの残り2枚が墓地に送られ、0枚になった。

「ははははは、最後は自滅ですか?」

「はぁ、全く、プロなのにルールもわかってないんですか?」

「なにぃ?」

「……確かに、デッキからカードをドロー出来なくなったら負けだが、エフェクト(効果)が発動した時に、デッキからセメタリー(墓地)へ送るカードが無くても、負けではない。だがこれ以上、朝倉に何が出来る!?」

「その通り、諦めてサレンダーしなさい」

「ふふふ、なぜ?」

「ぬ?」

「だから、なぜ、勝ちデュエルなのにサレンダーしなければならないんですか?」

「!? こいつ!?」

「更に、『ゾンビ・マスター』の効果発動!手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、自分または相手の墓地に存在する星4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。手札の『魂を削る死霊』を墓地に送り、その『魂を削る死霊』(星3、攻撃力300)を墓地から特殊召喚!そして、『魂を削る死霊』を召喚した瞬間、罠カード『激流葬』を発動!フィールド上の全てのモンスターを破壊します!」

「何!?」

フィールド上の全モンスターが激流に流され、破壊された。

「く!?だがこのターン、あなたは既に通常召喚を行っている。この状態から、何が出来る!?」

「別にモンスターを召喚する術は通常召喚だけじゃないでしょう?手札から魔法カード『生者の書-禁断の呪術』を発動!自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外します。あなたの墓地の『トラップ・スルーザー』1体を除外し、僕の墓地の『ワイトキング』を特殊召喚!更に、墓地の『馬頭鬼』の効果を発動!墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地からアンデット族モンスター1体を特殊召喚します!『ワイトキング』をもう1体、特殊召喚します!」

待たせたねワイトキング、出番だよ!

「『ワイトキング』の攻撃力は、墓地の『ワイト』『ワイトキング』の枚数×1000、僕の墓地には、『ワイト』が3枚、『ワイトキング』が1枚、そして、墓地では『ワイト』として扱える『ワイト夫人』が3枚、よって……」

「こ、攻撃力7000のモンスターが一挙に2体だと!?ふ、ふふふ、だが、その高い攻撃力が仇ですねぇ。私のフィールドには『平和の使者』があります。攻撃力1500以上のモンスターは攻撃できません。惜しかったですねぇ。」

「ははは、まさか、僕がそんな事もわからずに召喚したと思っているんですか?心外ですね」

「何!?」

「手札から、もう1枚『生者の書-禁断の呪術』を発動!あなた墓地のからもう1体の『トラップスルーザー』を除外し、僕の墓地の『ワイト夫人』(守備力2200)を守備表示で特殊召喚!このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する『ワイト夫人』以外の星3以下のアンデット族モンスターは戦闘によっては破壊されず、魔法・罠カードの効果も受けません。『ワイトキング』(攻撃力7000→6000)の星は1、つまり……」

「『平和の使者』の効果を受けないだと!?……だが、甘ーい!罠カード『リサイクルバリア』発動!通常 相手モンスターから受けるコントローラーへの戦闘ダメージを、発動ターンのみ全て0にします。この効果は『ワイトキング』に対する物ではない為、発動可能です!」

……やっぱり、その類罠カードか。

「うふふふ、やはり惜しかったですねぇ。ですが残念な事に、あなたのデッキは既に0、そして、このターン私にダメージは与えられない。つまりはあなたの負けです。はははははははは……」

「……はぁ、本当にあなたプロですか?よくフィールドを見て下さいよ」

「なに!?……!?それは!?」

僕のフィールドにあるカード、それは永続罠『王宮のお触れ』。

「『リサイクルバリア』にチェーンして発動させました。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にします。よって、『リサイクルバリア』は無効です」

「な!?あ、あなたはそのカードを最初のターンからセットしていた筈!そのカードを発動させていれば、デッキ破壊も防げていた物を……」

「ふふふふ、その疑問の答えは、今の状態を見ればわかるじゃないですか?」

「ま、まさか、『ワイトキング』の攻撃力を上げる為にワザと……」

「ははは、だから、デュエルが始まる前に言ったじゃないですか。『あなたの事は知っている』って」

「な!?」

知っての通り、僕のデッキは墓地にカードが送られれば送られる程強くなるコンセプトだ。

そして、相手の戦術はデッキ破壊。デュエルが始まる前にも言ったが、この上なく、僕のデッキと相性がいい訳だ。



「あ、朝倉はこれを狙っていたのか?」

「だろうなぁ」

「相手に負けず劣らずに、悪そうな顔をしてたっスからね」

「だから言ったザウルス。『多分勝ったドン』って」



「ふふふ、さて質問です。どっちの『ワイトキング』でやられたいですか?選んでください」

「ひ、ひと思いに右の方でやってくださいぃ」

NO!NO!NO!

「ひ、左?」

NO!NO!NO!

「り、りょうほ〜ですかあああ〜?」

YES!YES!YES!

「もしかして2体同時攻撃ですかーッ!?」

YES!YES!YES!OH MY GOD

因みに、ワイトキング達は準備万端とばかりに、左肘をくの字に曲げ、振り子の様に左右に動かしている。

しかも、よく見るとその左腕が何処ぞの空手界の最終兵器(リーサルウェポン)よろしく、びっしりと関節の連なりと化している。これならば軽く音速を超えそうだ。

……てな訳で。

「『ワイトキング』(攻撃力6000)2体でダイレクトアタック!『ホーンテッド・ソニック・フリッカー』!」

オラオラオラオラオラ……いや、実際にはカタカタだけど。

「……!」 敵残ライフ0

エックスさんは棒立ちで、声にならない悲鳴を上げながら顔面にそれを受けまくっていた。

……鬱憤溜まってたんだねぇ。



「イェーイ!楽勝!Vにゃのだー!」

意気揚々と十代君達の所に引き返す。

「……なんだかなぁ」

「微妙に相手が可哀想な気がするザウルス」

その相手のエックスさんは、音速のフリッカーを何発も顔面にくらった挙げ句、最後に『当てない打撃』をくらい、失神した。

そのせいで、顔面が某明治剣客浪漫譚の『ぼんじゅぅる』の人みたいに顔が変形している。

因みに、ワイトキングの左腕はそのソニックブームによって、腕の肉が弾け飛び、骨だけと化していた。……え?元々骨だけ?うん、ごめん知ってる。

「って言うか、本当にソリッドビジョンっスよね?さっきの」

「ま、まぁ何はともあれ、ガッチャ!和希らしいデュエルだったぜ!」

「あははは、ガッチャ!」

「……ところで、あそこで失神しているアレはどうするザウルス?」

剣山君が指差す方向には、未だにピクピク痙攣しているモノ。

そんなの決まっている。

「勿論放置で」

「「「えー」」」

「それとも十代君、あの人が回復するのを待ってデュエルする?」

「い、いや、あいつとはいいや」

ふむ、十代君にも、デュエルしたくない相手がいるらしい。

「んじゃ、帰ろうか」

「い、いいのかな?」

「いいのいいの、今まであの人にデッキを破壊されたデュエリスト達の分の制裁だよ」

「……朝倉」

「んー?」

と、エド君が複雑そうに聞いてきた。

「エックスの言う通り、最初から『王宮のお触れ』を発動させておけばもっと安全に勝利を得られた筈じゃないのか?」

「あー、まぁそれもそうなんだけどね。なんと言うか……」

「『なんと言うか?』」

「ははは、僕好きなんだよね。ああいう下衆な人を調子に乗らすだけ乗らしておいて、その足元掬って悲鳴上げさすのがね」

「な!?」

「まぁ、あと、こっちの方がカッコいいから、かな?ははは、ほら、帰るよ。僕、疲れちゃった」



「……」

「……和希君がこの学園でなんて呼ばれているか知ってるっスか?」

「『デュエルアカデミアの問題児』ザウルス」

「……的を射たニックネームだ」



SIDE OUT



SIDE 斎王(破滅の光)



「む?」

私は今、タロットによる占いをしていた。

テーブルの上には、遊城十代を示す『愚者』のカード、そして、『破滅』の意味を持つ『死神』のカードの2枚。

私は誰を刺客として送り込めば遊戯十代が『破滅』の運命を辿るのかを見透し、プロデュエリストのエックスを金で雇い、刺客として差し向けた。

尤も、私の本当の狙いは遊戯十代の『破滅』では無く、遊戯十代がこの『破滅』の運命を乗り越えられるかどうかなのだが。

そして予想した通り、遊城十代は『破滅』の運命を乗り越えたのを感じた。

だが……

思うところがあった私はもう1枚タロットを捲った。

……そこには予想した通りのカード。

ふふふふ、やはりお前が絡んでいたか。『魔術師』。

デュエルアカデミア、本当に興味深い場所だ。

片や、破滅の運命をも乗り越え、我が光の洗礼にも耐えうる者。

片や、運命のビジョンにその姿も見せず、関わる者の運命を変える力を持つ者。

さて、私の運命の輪を回すのに相応しいのは果たして誰か……

『皇帝』か。『愚者』か。はたまた『魔術師』か。

ふふふふふ、これは慎重に見極める必要がありそうだ。



今日のワイト

和「今日はエックスさんの使っていた原作オリジナルカードを紹介、『トラップ・スルーザー』、星4、闇属性、機械族、攻撃力800守備力1300、このカードが表側攻撃表示でフィールド上に存在する限り、このカードのコントローラーは永続罠カードの効果を受けない。 ……使いようによっては、『王宮のお触れ』や『グラヴィティ・バインド−超重力の網』等の効果を相手だけに適用する事が出来る、という強力なカードに化けますね」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「エックスさんがこれと合わせて使ったのが、永続罠『モンスターレジスター』、1000ポイントのライフを払う。モンスターが召喚・特殊召喚されたとき、お互いのプレイヤーはそのモンスターのレベルと同じ数だけデッキの上からカードを墓地に送る。……僕のデッキに組み込めば、墓地肥やしと相手のデッキ破壊の2点で活躍出来そうです。ただし、発動条件が召喚・特殊召喚なので、一度セットしてからの反転召喚には発動出来ません。

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「あとは罠カード『誘蛾灯 レベル4』、このカードが効果によって墓地に送られた場合、自分はデッキから星4のモンスター1体を特殊召喚することができる。同じく罠カード『リサイクルバリア』相手モンスターから受けるコントローラーへの戦闘ダメージを、発動ターンのみ全て0にする。自分のスタンバイフェイズにこのカードが墓地にあるとき、手札の罠カード1枚を墓地に送ることでこのカードを手札に戻すことができる。……両方共 、なかなかに強力なカードでした」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「さて次回は、『ワイト、関節炎になる』『ワイト夫人、転んで複雑骨折』『ワイトキング、風化する』の3本です」

3ワイト「「「!?」」」

和「来週もまた見て下さいね。ジャン!ケン!ポン!うふふふ」

3ワイト「「「……!!」」」



あとがき

予告通りワイト無双……うーん、だけどなんか微妙に不完全燃焼。

……まぁ、対戦相手が対戦相手だったっていうのがあるんですが、ちょっとデュエルの内容が有りがちな感じが……

次回は、なるたけ新しいカードを使いたいと思います。

いきなり改正、デモア様、ご指摘ありがとうございました。……確かにこれは酷い。

更に改正、デモア様、度々ありがとうございました。

原作通りだと、『誘蛾灯 レベル4』の効果が『手札から墓地に送られたとき』に発動するのですが、それだと原作でやっていた『手札抹殺』とのコンボができない(遊戯王wiki『タイミングを逃す』『任意効果』の項参照)ので、原作に合う様に、『手札から墓地に送られた場合』に変更しました。



[6474] 第二十八話 相手はプ○キュア!?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/07/13 00:13
さて、エックスさんをフルボッコにしたのも束の間、またもや胃が痛くなるような状況になってきた。

斎王さんがアカデミアへ転入して来たのだ。

斎王さんは突如、デュエルアカデミアに現れ、タロットの『力』のカードの示す者、剣山君にデュエルを挑み、『破滅の光』の力で洗脳しようとした。

結果、剣山君は負けてしまったが、原作同様に剣山君は、昔化石発掘現場で足を骨折した際に損傷した足の骨の代わりに移植した恐竜の骨の化石のおかげで洗脳を免れた。

……いや、「普通の子よりもちょっとだけ強い子になった」って、それ以前に拒絶反応出ないか普通?

そして何よりも、僕を不安にさせたのは斎王さんが立ち去る時、目が合ってしまい……

ニヤリ……

と含み笑いをされた事である。

……背筋が寒くなった。色々な意味で。あの目はあたかも、獲物を狙う獣のような目だった。

こうして斎王さんがデュエルアカデミアに転入し、また気の抜けない日が始まった。

……と言うか、斎王さんって何歳なんだろ?

原作で子供の頃の回想シーンではエド君とそこまで変わらない感じだったから……まさか20歳前後?……老け過ぎでしょ、某射手座の黄金聖闘士並みに。

そして前日、十代君とカエルデッキの使い手、プリンセス・ローズとのデュエルが行われた。

あー、いや、エックスさんの時同様僕がデュエルしても良かったんだけどさ。……なんか鬼門なんだよね。女性のデュエリストって。

ジュンコさんにカミューラさんにアンケさん…………気の強い人ばっかりなんだもの。例外はレイ君だけか?

原作を見る限り、プリンセス・ローズもなんか怒らせたら怖そうだしなぁ。

あと、正直この人イタ過ぎ。実際は妄想でしかないのに、物語の『カエルの王子様』に自分を重ねて、モンスター達に『精霊』が宿っているって言い張っているし。

……うん、ダメだ。絶対その辺をツッコんで怒らせる自信がある。妄想少女は怒らせると怖い。

……と言うか、ジュンコさんを怒らせ過ぎたせいで、女性の顔色を伺うのが上手くなったみたいでなんか悲しい。



まぁ、そんなこんなで……

「来たぜ!童実野町!入学試験の時はゆっくり見物する暇も無かったからな」

先程の修学旅行の行き先を決めるデュエルで十代君がプリンセス・ローズに勝った為、十代君が希望した童実野町へと修学旅行に来ている。

……しかし修学旅行とは言え、おそらく『あの人』の襲撃が待っている。やはり気は抜けない。

「ははは、そうだねー。隼人君ん家に行った時に経由した時も、あんまり見て回らなかったもんね」

まぁ修学旅行も普通に楽しみだけどね!?

「♪は〜るばるきたぜ どっみのちょ〜♪」

「○ブちゃん歌ってないで手伝ってよ!三沢君しっかり」

「うぷ……やっと着いたか……」

と、翔君と剣山君に肩を借りて、今にも死にそうな顔色の三沢君もフェリーから降りてきた。……なんかどことなくワイト達に似ているゾー?

「ははは、そう言えば隼人ん家に行った時の飛行機でも酔ってなかったか?」

あー、そう言えば。

「しょ、しょうがないだろ!苦手な物は苦手なんだ!大体、飛行機が空を飛ぶ原理はまだ科学的に解明されてないんだ!そもそもあんな鉄の塊が……」

「あー、あー、あー、それでは皆さん。本日の予定を言うでアール」

「アニキ、そろそろ集合した方がいいみたいっス」

「そうだな」

「お、おい待て!話はまだ……」

最早お約束のように三沢君の話をスルーし、ナポレオン教頭の所へ集まる僕達。

「すまないが教頭」

「え……」

「私はこれから大事な用件がある。別行動とさせて貰おう」

「そ、そうなのでアールか?」

「では失礼」

そう言った斎王さんを先頭に、光の結社の面々は何処へとも知れず、移動してしまった。

そして、今や全生徒の半数以上である光の結社の面々が去ってしまったので……

「……彼らだけ面倒見ても、仕方ないノーネ」

「む、そうでアール」

「今日は1日、自由行動とするノーネ」

「んじゃ。そういう事で」

と、外人教師コンビも去ってしまった。それでいいのかデュエルアカデミア。

「全く、どうなってるんだ。あの光の結社ってのは」

「ま、今に始まった事じゃ無いドン」




[6474] 第二十九話 感染拡大
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:32
辺りもすっかり暗くなり、僕と三沢君がオシリスレッドのキャンプ場……と言うか野宿場?に着いた時には、もう既に十代君と四帝の最後の一人、岩丸君のデュエルは始まっていた。

「『フレア・スカラベ』のダイレクトアタック!『フレイムバレット』!」

「ぐあぁぁぁ!?」

十代君は岩丸君の『地帝グランマーグ』や『デミウルゴス・EMA』に苦戦しながらも、勝利した。

岩丸君は他の四帝同様、元は平凡なデュエリストだったが、美寿知さんに四帝の力を授けられた。そして、同じ四帝である氷丸と雷丸は、翔君と剣山君を人質とするのに手こずり、氷丸が雷丸を巻き添えにする形でなんとか二人を人質とするのには成功したが、美寿知さんに役立たずと見なされ、二人共カードに魂を封印されてしまった。

そして、同様に岩丸君と炎丸君の二人も、授けられた四帝の力を返すか魂を封印されるかを美寿知さんに迫られて逃亡。知らず知らずの内に十代君と知り合い、名誉挽回の為にデュエルをする事となった。

岩丸君は氷丸、雷丸、そしてデュエル直前に美寿知さんが魂を封印した炎丸君のカードを美寿知さんに与えられ、四帝の力を失いたくない一心で十代君に挑んだ。

そんな岩丸に対して、十代君は言っていた。

「他人から貰った力でデュエルして、本当に楽しいのかよ?」

「今、すっげぇピンチなのに、全然ワクワクしねぇ。お前の力が、本物じゃないからだ!」

……そして、十代君は自分の力とデッキを信じ、圧倒的不利な局面をひっくり返し、勝利した。

「オレもさ、ボッロボロに負けてすっげぇ落ち込んだ時があるんだ」

「まさか!?」

「本当だって、でもオレはどんな強い奴にも、頑張れば必ず勝てるって信じてるんだ」

「……自分の力を信じられる奴はいい」

「自分で自分を弱いって思ってたら、いつまで経っても弱いまんまだ」

「……ホント、面白い奴」

「だからよく言われるって」

「「ははははは」」

「ガッチャ!今度は絶対、楽しいデュエルしような」

「ああ」

……ホント、十代君には敵わない。敵ともこんなにあっさりと友情を築けるんだから。

だが、そんな緩んだ空気の中、岩丸君の頭上に、美寿知さんの鏡が表れ、光を発した。

「み、美寿知様!?お許しを!美寿知様!ぐああぁぁ……」

そして岩丸君も、他の四帝同様、カードに封印されてしまった。

そして、美寿知さんは原作通り、人質である翔君と剣山君助けたいのならば海馬ランドへ来るように言った。

そう、『原作通り』に十代君とエド君に。

どうやら、美寿知さんとタッグデュエルをするのはこの二人のようだ。

僕にも刺客が向けられていた為、僕に出番が回って来るのではないか心配だったが安心した。先にも言ったが、ここは今年のキーポイント。原作通りに進んでくれるならば好都合だ。

そして、そのまま夜が明けた頃、僕達は海馬ランドに着き、十代君とエド君はバーチャルリアリティー(仮想現実)の施設に入り、僕と三沢君、そして遊戯さんのおじいさんである双六さんの三人は建物の外で待つ事となった。



パチリ……

「ふむ、どうじゃ?」

「むむむ、オーソドックスな矢倉からの棒銀。隙が無いですね。……てい!」

パチリ……

「ふむ、そう言う君の振り飛車からの変則的な攻めは中々面白いのじゃが……いかんせん、守りは高美濃囲いに任せっきりで若干の隙があるのぅ。ほれ」

パチリ……

「うぇ……」

待ってる間、暇だったので手持ちだったマグネット式の携帯将棋で双六さんに挑んだのだが、流石は元腕利きのゲーマー。少しばかり定石を知ってる位の僕じゃ歯が立ちましぇん!

「それにしてもお前さん、よくそんなに落ち着いていられるのぅ。友達がピンチなんじゃろ?」

「ははは、大丈夫ですよ。十代君とエド君は強いですから。心配する必要ありませんよ」

「ほっほっほ、随分と友達を信頼しとるんじゃな」

「ははは、モチのロンですヨ。ね?三沢君」

「……」

と、三沢君はさっきから全く会話に参加せず、思い詰めた表情で、僕達の座っているベンチから少し離れたベンチに座っていた。

「どうやら、彼は心配みたいじゃのぅ」

……いや、多分違う。

おそらく、まだ昨日のデュエルの事を気にしているんだろう。

そろそろ何か言ってあげようかなと思ったその時だった。

「朝倉」

と、こっちに歩み寄る人影があった。

「……どしたの?マーブルサンダー」

「ホワイトサンダーだ!……お前に用がある。少し顔を貸せ」

……嫌な予感満載。

「だが断……」

「れると思うのか?」

と、万丈目君が指を鳴らすと、どこからともなく白い制服の光の結社の生徒達が現れ、取り囲まれてしまった。

……いつかしていた剣山君の『シロアリ』という表現がピッタリだ。うじゃうじゃうじゃうじゃと。

「……はいはい、わかりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば」

このままじゃ双六さんや三沢君にも危害が及びそうなので、大人しく付いていく事にした。



「だ、大丈夫かのぅ?」

「……くそっ!」

ガン!

「な、なんじゃ!?どうしたんじゃ君!?」

「まただ!また奴らは俺に見向きもしなかった!何故だ!何故なんだ!」



僕は万丈目君達に連れられて、時計灯の広場、あのバトルシティが始まった場所に来ていた。

「……で?こんな所まで連れてきて、一体何の……」

「ご苦労でした万丈目君」

「!」

「は!御命令通り、朝倉を連れて参りました」

……そういう事か。

背後から聞こえた聞き覚えのある声、そして万丈目君の言葉から僕は全てを察し、天を仰いだ。

「……十代君とエド君の事は美寿知さんに任せて、残った僕をあなた自身が。……そういう事ですか斎王さん?」

「おや、理解が早くて助かります」

振り向くと、例の目の笑ってない微笑みを浮かべた斎王さんが居た。

……美寿知さんとデュエルしなかったのは、当たり籤に見えてその実外れ籤だったようだ。

「お久しぶりですね朝倉君。また合えて嬉しいです」

こっちは全然嬉しくないデスヨ!

「さて、そこまでわかっているのならば話が早い。朝倉君、是非とも我が『光の結社』に力を貸して貰えませんか?」

「……僕なんて、ただのオシリスレッドの一生徒ですよ?仲間にしても、意味無いんじゃないですか?」

「ふふふ、御謙遜を。あなたには、遊城十代やエドにも負けない力を持っています。そう、『他人の運命を変える』力を」

「他人の運命を……変える?」

「そう、エドから聞いているでしょうが、私には人の運命を見通す力があります。ですが、何故かあなたと関わった者の数名が私の『視た』運命と違う運命を歩んでいるのです。そう、今プロリーグで活躍している丸藤亮がいい例ですか」

「!?」

……そういう事か。

彼の言う運命、多分それは、簡単に言えば『原作の流れ』……原作でも、十代君が彼の『視る』運命を乗り越えている為、結末等には差違があるのだろうが。

それに対して、確かに僕は亮さんを原作とは違った道へと進ませるきっかけを作った。そういう意味ならば、確かに僕は『運命を変えた』のだろう。

更に、この仮説が本当だとするならば、彼の『視る』運命……『原作の流れ』には、原作には存在しない『僕』という存在は無いのかもしれない。

……成る程、斎王さんが僕に目を付ける訳だ。

「如何です?是非その力を、我が光の結社の為に貸してくれませんか?」

……斎王さんが右手を差し出しながら近付いてきた。

「……」

僕はその手を……

パシッ!

軽く払った。

『な!?』

周りの光の結社の生徒達がどよめく。

「残念ですけど、僕はあなた達みたいな宗教団体染みた集団の仲間入りをする気はありません。『世界を真っ白に染め上げる』?そんな何も書かれてないキャンバスみたいな世界、何の面白味が有るんですか?」

「き、貴様!」

「斎王様に向かって何て無礼な!」

「……」

周りの生徒達がざわめくが、それに反して斎王さんは顔に微笑みを張り付けたまま、黙って払われた手をじっと見ていた。

「……そうですか。では仕方ありません」

と、斎王さんは踵を返し、数歩歩いた後、再びこちらに振り返り……

「頼んで駄目ならば、力ずくで入ってもらうしかありませんね」

周りにいた生徒達の内一人が掲げたデュエルディスクを装着し、構えた。

これは……かつて無いピーンチ!助けてー!ス○レッチマン!……なんてくだらない事言ってる場合じゃ無いなこりゃ。

逃げたい所だけど……周りを光の結社の生徒達に囲まれている為、それは叶わない。

くっ、おそらく勝っても、僕では『破滅の光』の浄化は無理だっていうのに。

勝ってもメリット無し、負けたら洗脳という莫大なリスクが……

「くっ!」

自分で顔をバシッと叩く。

なってしまった物はしょうがないだろう!気持ちを切り替えろ!

目の前に居るのは、間違い無く今までで最大の難敵。集中しなければ間違い無くやられる!



「「デュエル!!」」

「先攻はどうぞ」

「……僕のターン!ドロー!僕は『終末の騎士』(守備力1200)を守備表示で召喚!『終末の騎士』の効果発動!このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地に送る事が出来る!僕は『ワイト』を1枚デッキから墓地に送り、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドです!」

「私のターン、ドロー」

……斎王さんの使うカード、それは勿論……

「私は『アルカナフォースⅠ(1)-THE MAGICIAN(ザ・マジシャン)』(攻撃力1100)を攻撃表示で召喚」

……当然『アルカナフォース』か。

斎王さんが召喚したモンスターの頭上でカードが回転する。

「『アルカナフォース』と名の付くカードは正位置か逆位置かで効果が決まります。回転を止めるのはあなたです。さあ、ストップと言ってください」

そう、『アルカナフォース』は正位置と逆位置で異なる効果を持つカード。

そして、その効果は一部のカードを除き、殆んどのカードは正位置でプラスに働く効果、逆位置でマイナスに働く効果だ。

このように、本来は不安定な効果で使いづらい筈のカードなのだが……

「ストップ!」

僕が言うと、『THE MAGICIAN』の頭上で回転していたカードが次第にその回転を弱め、やがて止まった。

……正位置に。

そう、この使いづらいカードを、斎王さんはその脅威的な運命力で正位置逆位置を自分の思うがままに出来る。

そして……

「『THE MAGICIAN』の正位置の効果。魔法カードが発動された時、そのターンのエンドフェイズ時までこのカードの元々の攻撃力は倍になる」

使いづらいが故に、『アルカナフォース』の効果はどれも強力なカードばかりなのだ。

「私は更に、魔法カード『アルカナティック・デスサイス』を発動。デッキから『アルカナフォース』と名の付くモンスター1体を選択して墓地に送る事により、このターン、戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」

ぐっ……いきなり来るか!?

「魔法カードが発動された事により、『THE MAGICIAN』の元々攻撃力は倍になる(攻撃力1100→2200)。『THE MAGICIAN』(攻撃力2200)で『終末の騎士』(守備力1200)を攻撃!『アルカナ・マジック』!」

「く!?」

『THE MAGICIAN』の放った念波によって『終末の騎士』が破壊された。

「魔法カード『アルカナティック・デスサイズ』の効果により、『終末の騎士』の攻撃力、1400ポイントのダメージを受けて貰います」

「くっ……」 自残ライフ 2600

「私は更にリバースカードを1枚セットし、ターンエンド。『THE MAGICIAN』の攻撃力は元に戻ります(攻撃力2200→1100)」

「……僕のターン、ドロー!」

……いきなり結構なダメージを受けてしまった。

だが、手札はそこまで悪くはない。仕掛ける!

「リバースカード発動!永続罠『リビングデッドの呼び声』!自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚します!墓地から『終末の騎士』(攻撃力1400)を特殊召喚!」

……ここで本来ならば再び効果を発動するところだが、今回は発動しない。

「更に手札から速攻魔法『地獄の暴走召喚』発動!相手フィールド上に表側表示でモンスターが存在し、自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時、その特殊召喚したモンスターと同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から全て攻撃表示で特殊召喚します!そして相手は相手自身のフィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを相手自身の手札・デッキ・墓地から全て特殊召喚します!デッキから、2体の『終末の騎士』(攻撃力1400)を攻撃表示で特殊召喚!」

そう、『リビングデッドの呼び声』で特殊召喚した『終末の騎士』の効果を発動してしまうと、チェーン1に『終末の騎士』の効果が発動し、チェーン2に『地獄の暴走召喚』となってしまい、『~できる』という任意効果である『終末の騎士』の効果はチェーン2以降に発動出来ない為、『地獄の暴走召喚』で特殊召喚した2体の『終末の騎士』の効果を発動するタイミングを逃してしまうからだ。

「では私も、デッキから『THE MAGICIAN』(守備力1100)を2体、守備表示で特殊召喚します」

召喚された『THE MAGICIAN』の頭上で再びカードが回転する。

「さあ、どうぞ」

「……ストップ」

……もうどうなるか予想はつくが、僕は言った。

当然、止まったのは両方とも正位置。

「そして、魔法カードが発動された事により、もとから居た『THE MAGICIAN』の攻撃力は再び倍になります(攻撃力1100→2200)」

だが、2体目の『THE MAGICIAN』は魔法カードが発動された後に召喚された為、まだ効果は発動していない。更には守備表示で召喚されている。守備力は倍にはならない。

「2体の『終末の騎士』が特殊召喚された事により、その効果でデッキから闇属性モンスターを墓地に送ります!デッキから『ワイト』を2枚墓地に送ります。更に魔法カード『おろかな埋葬』を発動!自分のデッキからモンスター1体を選択して墓地へ送り、その後デッキをシャッフルします!『ワイト夫人』を1枚墓地に送ります!」

よし、これで墓地にワイトは4枚。あとはワイトキングを引くだけだ!

「更に、『終末の騎士』1体を生け贄に捧げ、『龍骨鬼』(攻撃力2400)を攻撃表示で召喚!『龍骨鬼』(攻撃力2400)で、攻撃表示の『THE MAGICIAN』(攻撃力2200)へ攻撃!」

『龍骨鬼』が『THE MAGICIAN』に突進し、頭の角で突き倒した。 斎王残ライフ3800

「更に、『終末の騎士』(攻撃力1400)2体で守備表示の『THE MAGICIAN』(守備力1100)2体を攻撃!」

この攻撃は全て通った。

「……」

……だが、斎王さんはまだ涼しい顔をしている。

「……ターンエンドです」

「ふふふ、良かったのですか?自分を象徴するカードを破壊してしまって」

? 僕を象徴するカード?

「以前お話しましたね?私はマネージャー以外にもタロット占いを営んでいます。そして、あなたを表すカードは正位置の『魔術師(マジシャン)』。その持つ意味は独創性・奇抜さ。ふふふ、将にあなたにピッタリのカードですね」

……成る程、斎王さんの占いでは、僕は『魔術師』と出たのか。

確か、十代君が『愚者(フール)』、エド君が『皇帝(エンペラー)』、剣山君が『力(ストレングス)』だった筈だ。

……って『魔術師』とか、もしかして僕、死亡フラグ立ってる!?なんかそれっぽいネタをした覚えあるし!具体的に言うならば第三部!

「私のターン、ドロー」

……ヤバいヤバい。下らない事を考えている暇があるならデュエルに集中しないと!

「私は手札から魔法カード『強欲な壺』を発動。デッキからカードを2枚ドロー。更に魔法カード『カップ・オブ・エース』を発動。正位置ならば私が、逆位置ならばあなたがデッキからカードを2枚ドローします」

「……ストップ」

結果は当然の如く正位置。

「正位置の効果。私はデッキからカードを2枚ドローします。更に装備魔法『リバース・リボーン』を発動。自分の墓地から『アルカナフォース』と名の付くモンスター1体を選択して攻撃表示で自分の場に特殊召喚し、このカードを装備する。このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する。私は、『アルカナティック・デスサイズ』でデッキから墓地に送った『アルカナフォースⅩⅧ(18)-THE MOON(ザ・ムーン)』(攻撃力2800)を攻撃表示で召喚!」

う……来てしまったか。最上級モンスター。

『アルカナフォース』の上級モンスターにはとんでもない能力を持つモンスターがいる。

特に『アルカナフォースⅩⅩⅠ(21)−THE WORLD(ザ・ワールド)』の正位置なんかは、自分フィールド上のモンスターを2体を墓地に送れば次の相手のターンをスキップする、などという滅茶苦茶な効果を持っている。墓地からの蘇生能力を持つ『黄泉ガエル』や『サクリファイス・ロータス』、墓地から手札に加えられる『キラー・スネーク』を使えば将に『ずっと俺のターン』になる訳だ。

「『リバース・リボーン』によって特殊召喚されたモンスターは逆位置の効果となります。『THE MOON』の逆位置の効果、自分のエンドフェイズ時に1度だけ、自分フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターのコントロールを相手に移します」

「……でも、その効果を発動させる気なんてないんでしょう?」

……あのリバースカード、おそらく……

「ほぅ、流石に読みが鋭い。罠カード『逆転する運命』を発動。フィールド上の『アルカナフォース』と名の付くモンスター全ての正位置と逆位置を入れ替えます。よって、『THE MOON』は正位置となります」

くっ、やはり抜け目ない。

「『THE MOON』(攻撃力2800)で『龍骨鬼』(攻撃力2400)を攻撃!『テラー・ウェーブ』!」

「くっ!?」 自残ライフ2200

「更にリバースカードを2枚セットし、ターンエンド」

「僕のターン!ドロー!」

! よし!『ワイトキング』を引いた!

「僕は……」

「おっと、その前に……」

「え……」

「あなたのスタンバイフェイズ時に永続罠『死神の巡遊』を発動。あなたのターンのスタンバイフェイズごとに正位置か逆位置かが決定し、正位置ならばあなたのこのターンの、逆位置ならば次の私のターンの召喚・反転召喚・特殊召喚が禁止されます。さぁ、回転を止めて下さい」

「ぐ……ストップです」

半ば絶望的な気持ちで宣言する。

結果は……正位置。

「ふふふ、更に永続罠『聖なる輝き』を発動。このカードがフィールド上に存在する限り、モンスターを裏側守備表示でセットする事は出来ず、その場合、表側守備表示で召喚しなければならない」

ぐ……これで召喚・セット・反転召喚・特殊召喚の全てを封じられてしまった。

「……『終末の騎士』(守備力1200)2体を守備表示に表示変更して、ターンエンドです」

マズい!このままじゃおそらく次のターンもモンスターを召喚出来ない!どうする!?

「ふふふ、この『THE MOON』、恰も、今のあなたを表しているようだ」

「え……」

「タロットカード正位置の『月(ムーン)』の持つ意味、それは不安・懸念・恐怖。ふふふ、あなたの中で不安や恐怖が段々と膨れてきているのが見てとれるようだ」

「ぐ……」

……言い返したいが事実だ。実際、不安と恐怖で自分が軽く震えているのがわかる。

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時に『THE MOON』の正位置の効果を発動。自分のスタンバイフェイズ時に自分フィールド上に『ムーントークン』を1体特殊召喚する事ができる。『ムーントークン』(守備力0)を守備表示で特殊召喚!魔法カード『天使の施し』発動。デッキからカードを3枚ドローし、手札からカードを2枚捨てる。そして『アルカナフォースⅣ(4)-THE EMPEROR(ザ・エンペラー)』(攻撃力1400)を攻撃表示で召喚!」

「……ストップ」

……正直、もうストップって言う必要性が感じられなくなってきたな。

「正位置の効果、自分の場の『アルカナフォース』と名の付く表側表示モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。『THE MOON』(攻撃力2800→3300)で『龍骨鬼』(守備力2000)に、『THE EMPEROR』(攻撃力1400→1900)で『終末の騎士』(守備力1200)へ攻撃!」

「うぅ……」

ヤバい、サンドバック状態だ。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド」

おそらく次の僕のターンも、『死神の巡遊』の効果は正位置。このままじゃ……

「……僕の……ターン……!!」

この状況を打開出来るカード、来い!!

「ドロー!!」

……

「では、『死神の巡遊』の効果を……」

「させません!」

「む……」

「速攻魔法『サイクロン』!フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊します!『死神の巡遊』を破壊!」

「……ほぅ」

「そして『ワイトキング』を攻撃表示で召喚!『ワイトキング』の元々の攻撃力は、墓地に存在する『ワイト』『ワイトキング』の枚数×1000。今、僕の墓地に存在する『ワイト』『ワイトキング』は4枚。よって攻撃力は4000!更に装備魔法『光学迷彩アーマー』を装備!このカードは星1のモンスターにのみ装備可能!装備したモンスターは相手プレイヤーへのダイレクトアタックが出来る!」

「……」

斎王さんのフィールドにはリバースカードが1枚あるが、僕の知る限り、斎王さんの使う『アルカナフォース』には相手のモンスターを破壊するないし攻撃を防ぐ罠カードは無かった筈!

この攻撃は通る!勝てる!

「『ワイトキング』(攻撃力4000)のダイレクトアタック!『ホーンテッド・ナイトメア』!」

『ワイトキング』の姿がブれ、次の瞬間斎王さんの目の前に姿を表し、攻撃した。

か、勝った!?

「ふ……ふふふふふ……」 斎王残ライフ3800

「な!?」

ライフが……減ってない?

「手札から『アルカナフォースⅩⅣ(14)−TEMPERANCE(テンパランス)』の効果を発動。手札からこのカードを捨てる事で、自分が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にする」

くっ、そいつが居たか。

「……リバースカードを1枚セットして、ターンエンドです」

だが依然、僕のフィールド上にはダイレクトアタック可能な『ワイトキング』(攻撃力4000)が居る。

次のターンこそは……

「ふふふふふ、興味深い。いや、あなたは本当に興味深い」

え……

「先にも言いましたが、私には運命を見通す力があります。しかし朝倉君。あなたに限ってはそれが通用しない。そう、恰も、あなたがこの世界の運命の輪の外から来たかのように」

「!?」

僕が異世界から来ている事がバレている!?……いや、あの言い方から推測すると、バレてはいないが薄々勘づき始めているのか?

「私のターン!ドロー!スタンバイフェイズ時に、『THE MOON』の効果により『ムーントークン』(守備力0)を1体守備表示で特殊召喚!魔法カード『貪欲な壺』発動!自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、デッキに加えてシャッフル、その後、自分のデッキからカードを2枚ドロー!墓地から『THE MAGICIAN』2枚と『TEMPERANCE』、そして『天使の施し』で墓地に送った『アルカナフォースⅥ(6)-THE LOVERS(ザ・ラバーズ)』と『アルカナフォースⅢ-THE EMPRESS(ザ・エンプレス)をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドロー!そして魔法カード『幻視』を発動!」

こ、このカードは……!万丈目君を敗北に導いたカードの1枚!

「デッキからカードを1枚ドローして相手に見せ、その後、ドローしたカードをデッキに戻して相手にデッキをシャッフルさせる!そのカードがプレイされたとき、相手に1000ポイントのダメージを与える!」

と、斎王さんが何かを念じるように目を閉じた。

そう、恰も占い師がタロットカードで占うように。

「ふふふ、今から私の運命力を使い、あなたの運命をこのドローで占ってあげましょう」

「な!?」

その瞬間、斎王さんの体から禍々しい光が発せられた気がした。

「ドロー!」

そして、斎王さんは目を閉じたまま、ドローしたカードをこちらに向けた。

「ふふふふふ、どうやらあなたは『悪魔』に取り憑かれているようですね」

斎王さんがこちらに見せたカード、それは『アルカナフォースⅩⅤ(15)−THE DEVIL 』。

「タロットカード正位置の『悪魔(デビル)』の持つ意味。それは喪失・悲観、そして運命への失望と絶望。これが、あなたに訪れる運命です」

くっ、なんて不吉な……

「このカードをデッキに戻してシャッフルします。シャッフルするのはあなたです。さぁ、お願いします」

「……」

僕は細心の注意をしてデッキをシャッフルした。

「さて、私は2枚目の魔法カード『カップ・オブ・エース』を発動!」

!? まさか!?

「ふふふふ、どうしました?顔色が変わりましたよ?」

こ、この人は、今デッキに戻した『THE DEVIL』をこれでドローするつもりなのか!?

「ほらほら、早く『カップ・オブ・エース』の回転を止めてください」

「ス、ストップ!」

結果は……正位置!

「正位置の効果!デッキからカードを2枚ドロー!……ふふふふふ……」

!? まさか!?

「やはりあなたは『悪魔』に取り憑かれているようだ!2体の『ムーントークン』を生け贄に捧げ、『THE DEVIL』(攻撃力2500→2800)を攻撃表示で召喚!そして魔法カード『幻視』の効果を発動!あなたに1000ポイントのダメージを与える!」

「ぐあぁぁ!!?」 自残ライフ1200

……召喚された『THE DEVIL』の頭上でカードが回転する。

「くっ……ストップ!」

結果は……やはり正位置。

「正位置の効果。このカードの攻撃宣言時、フィールド上に存在するモンスター1体を選択して破壊する。この効果で破壊されたモンスターのコントローラーは500ポイントのダメージを受ける。そして破壊しない場合、このカードは破壊される」

「くっ……」

……だが、この効果で僕のフィールド上の『ワイトキング』が破壊されても、僕のライフポイントは残る……!

僕のフィールドのリバースカードは墓地の星2以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する永続罠『エンジェル・リフト』。『ワイトキング』が破壊されてダイレクトアタックされても、これで『ワイトキング』を蘇生させれば……

「ぐ、ぐうぅぅ……」

「え……」

と、突如、斎王さんが目眩を起こしたかのように額に手を当てて屈みこんだ。

「……残念です」

「え……」

「……あなたならば、『私』を止められると思ったのですが……」

「斎……王さん?」

斎王さんは急に涙を流しだした。

今のは……斎王さんの本来の人格?

「……ふふふふふ、これで幕だ!『魔術師』!」

「!」

だが次の瞬間、元の表情に戻ってしまった。

「罠カード『アルカナコール』発動!自分フィールド上に表側表示で存在する『アルカナフォース』と名のついたモンスター1体を選択して発動!墓地に存在する『アルカナフォース』と名のついたモンスター1体をゲームから除外。エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの効果は、ゲームから除外したモンスターの効果と同じ効果になる!『THE MAGICIAN』をゲームから除外し、『THE DEVIL』の正位置の効果を『THE MAGICIAN』の正位置の効果に置き換える!」

「な!?」

『THE MAGICIAN』の正位置の効果……魔法カードが発動されたターン、エンドフェイズまで攻撃力が元々の倍になる効果……

ということは……まさか!?

「手札から魔法カード『アルカナティック・デスサイス』を発動!デッキから『アルカナフォースⅦ(7)−THE CHARIOT(ザ・チャリオット)』を墓地に送り効果発動!そして、魔法カードが発動された事により、『THE DEVIL』の元々の攻撃力が倍になる!(攻撃力2800→5300)」

そ、そんな……

「『THE DEVIL』(攻撃力5300)で『ワイトキング』(攻撃力4000)に攻撃!『デビル・ディザスター』!」

「うわあぁぁ!?」 自残ライフ0

負け……ちゃった……?

「ふふふふふ、『魔術師』よ、これで貴様も我が手の内の中だ。ふふふふふふふふ……」

……薄れていく意識の中、斎王さんの狂ったような笑いが聞こえた。

十……代君……み……んな……

……僕の意識はそこで一度途切れた。



……侵食されていく……

……手の先や爪先、体の末端から徐々に、白い『ナニカ』によって染め上げられていく……

そして、首から下が完全に染められ、残る首から上へとソレが上ってきた時……

『……悪ぃな。この体は予約済みだ。お帰り願うぜ』

……何処かで聞き覚えのある声を聞いた気がした。



「……うぅぅ……」

気が付くと、僕は俯せに倒れていた。

あ……れ?僕は何を……

「!? 何故だ!?何故貴様にも光の洗礼が効かない!?」

目の前で、斎王さんが信じられない物を見る目で僕を見ていた。

……そうだ、僕は斎王さんに負けて……

……

…………

………………

なんで洗脳されてないんだ?

……斎王さんの反応を見るに、剣山君みたく、僕には洗脳が通じなかったみたいだ。

……でもなんでだ?僕は剣山君みたく斎王さんの洗脳を回避出来る要素は持ってない筈……

と、

「おーい!和希ー!無事かー!?」

「! ちぃっ!美寿知、失敗したのか!?」

十代君の声がし、斎王さんは舌打ちを1つして、周りの光の結社の生徒達と共に立ち去った。

た、助かったぁ……洗脳は逃れたけど、著しく体力消耗して、もうほとんど体が動かない状態だし……

……緊張が緩んだ僕は、その場で気絶した。

『ククククク……』

……無意識の中、また『あの声』が聞こえた気がした。



今日のワイト(オマケ)



SIDE 翔



僕と剣山君がアニキとエドに助けられた後、双六おじいさんから和希君が万丈目君達に連れていかれた事を聞いた僕達は、慌てて和希君を助けに向かった。

そして、見つけた時には和希君は斎王の前に倒れ伏していた。

斎王は僕達に気付くと引き上げていった。

僕達は気絶した和希君を双六おじいさんの家、ゲームショップ『亀』に寝かさせて貰うことにした。双六おじいさんは快く引き受けてくれた。

それから数日後、修学旅行最終日。和希君は回復した。

和希君は斎王にデュエルで負けてしまったそうだ。でも、何故か和希君も剣山君みたく変にならなかったみたいでホッとした。

……和希君、剣山君みたいにワイトの骨でも移植してるのかな?

そして、デュエルアカデミアに帰る時間になった。

「双六さん。本当にお世話になりました」

『亀』の前で、和希君が代表してお礼を言う。

「ほっほっほ、なんのなんの。また童実野町に来る時には訪ねて来てくれ」

双六おじいさんは名残惜しそうに見送りに出てきてくれた。

「あ、そうだ」

と、和希君が何か思い出したように手のひらを叩いた。

「双六さん。『アレ』見せて貰ってもいいですか?」

「む?おお、そうじゃったそうじゃった。見せる約束じゃったのぅ」

「「「『アレ』?」」」

その場に居た僕とアニキと剣山君は首を傾げた。

「それにしても、よく『アレ』の事を知ってたのぅ」

「まぁ、噂でちょっと聞いた事がありましてね」

「和希。『アレ』ってなんだ?」

双六おじいさんがお店の中に何かを取りに戻っている間、アニキが和希君に訪ねた。

「ははは、多分ビックリすると思うよ?十代君とエド君が美寿知さんに挑んでいる時、見せて貰うように頼んだんだ」

「……僕達が大変な目に合ってる時に、何だってそんな呑気してたんスか!」

「まぁ、十代君とエド君のコンビだから心配要らないだろうしなぁと思ってね」

「こ、この人は何処までポジティブなんだドン……」

「待たせたのぅ。ほれ」

と、双六おじいさんは1枚のカードを持ってきた。

そのカードを見た瞬間……

「え……」

「これって……」

「まさか……」

僕達三人は驚愕した。

「「「『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』!!!?」」」

そう、双六おじいさんが見せてくれたカード、それは以前、アカデミアの温泉から迷い込んだ精霊界でカイバーマンが使っていた『青眼の白龍』だった。……破れたのをセロテープでとめられていたけど。

「なんでじいさんがこのカードを!?」

「このカード、あの海馬瀬人しか持ってない筈っスよね!?」

「そもそも、なんで破かれてるザウルス!?」

双六おじいさんは説明してくれた。おじいさんの親友、アーサー・ホプキンズさんからこのカードを貰った経緯、ある事故で二人が遺跡に閉じ込められてしまった時、暇潰し兼残りの水を賭けた公平な勝負として二人はデュエルをして、その際、本当は勝っていたのに、双六おじいさんが脱水症状を起こしたアーサーさんの為にわざとサレンダーし、そのお礼、そして、二人の友情の証としてこのカードを譲って貰った事。その後、訳あって破けてしまった事(この訳は教えてもらえなかった)。そして、破けてしまった今でも、このカードは大切にしている事。

「まぁ、こんな状態では一銭の価値もありはしないだろうがのぅ」

そう言って、少し寂しそうにおじいさんは笑った。

「……そんな事ありませんよ」

「む?」

「僕には、このカードがこの世で一番尊いカードの1枚に見えますよ。双六さんとアーサーさんの友情を証明するなんて、他のどんなレアカードにだって不可能な筈ですから」

……そう言う和希君の表情はいつものおちゃらけた物では無く、真剣そのものだった。

「……先輩、なんか悪い物でも食ったザウルス?」

「ははは、和希って結構感激屋だからな。でも、オレもこのカードはすっげぇカードだと思うぜ。なんたって、和希の言う通り、ある意味世界でたった1枚しかないカードだもんな」

アニキも和希君も凄く感動したみたいだ。

「……ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいのぅ」

双六おじいさんは、本当に嬉しそうに顔を綻ばせた。



あとがき

なんとか今月中にアップ出来た!


ではまた次回。

ps 新しいギタフリに5D'sの『LAST TRAIN』があって狂喜した。でもどうせなら日本語版が良かったのに……

改正しました。翠玉 皐月様、コウ様、ぬこG様、御指摘ありがとうございました!

再改正 青天様、翠玉 皐月様、海鮮丼様、御指摘ありがとうございました!






[6474] 第三十話 男でも泣いていい時はある!?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:32
「この物語は、オシリスレッド生の平凡な日常を淡々と描く物です。過度な期待はしないで下さい。あと、部屋は明るくして、パソコンから3メートルは離れて見やがって下さい」

「……いきなり何を言ってるんスか」

「いやー、今更だけど読者さん達に注意をね」

「……本当に今更ザウルス」

「と言うかメタ発言禁止!」

「はっはっは……」



童実野町で斎王さんに負けた後、僕は何故か『破滅の光』の洗脳を免れた。

……正直な所、理由は全くわからない。ワイト達の力かと思ったが、ワイト達は首を振っていた。

……これも『あの夢』と関わりがあるのだろうか?

でも、相変わらず判断材料が少な過ぎる。やっぱり思い当たるふしも無い。

……気にはなるけど、結局はまた保留にするしかないか。

それにしても、今後の僕の立ち回りが悩み所である。

今回のデュエルで、今の僕では斎王さんの運命力には敵わない事がわかった。

おまけに、仮に勝てるようになったとしても、相変わらず僕では斎王さんを『破滅の光』の呪縛から解き放てる確証が無い。

……となると、いよいよ裏方回りが確定か?

だが、洗脳が効かなかった事により、以前にも増して斎王さんは僕の事を警戒しているだろう。

これからの行動には細心の注意が必要だろう。



……まぁ、憂鬱な思案はさておき、今僕達四人が何をしているかと言うと……

「あーぁ、釣れねぇなぁ」

「そっスねぇ……」

「ドン……」

おかずになる魚を釣っていた。

「流石にメザシだけなのは飽きたしなぁ……」

「まぁ、僕は別に構わないんだけどね」

「どうせ和希君アレルギーで食べられないでしょ」

「と言うか、よく毎日納豆や海苔とかだけで飯を食えるザウルス」

まぁ、作ろうと思えば料理の出来る僕や剣山君が食堂から材料貰って料理出来るのだが……

「たまにはメザシ以外の魚が食いてぇ」

と十代君のリクエストがあったので、魚を釣る事になったのだ。流石にメザシだけじゃ料理なんて出来ないし。

因みに、肉類も週1ぐらいでしか食堂に入ってこないので僕や剣山君が作る料理も大体が野菜料理である。……週1って、収容所じゃないんだから……

更に付け加えると、その肉で週1に作られるのはそぼろご飯である。……どんだけ手抜きなんだ。

「寮に帰ればカレーが待ってるけど……」

「それじゃアニキが不憫ドン。あぁ、だけどこのままじゃ肉食の俺は……そう言えば、丸藤先輩の頬っぺは柔らかそうだドン……ジュルリ……」

「な!?ちょっと剣山君!変な涎垂らさないでよ!?」

「はっはっは、翔君のほっぺプニプニ具合は僕のお墨付きだよ」

「和希君!?」

「なんせ、僕がことあるごとに引っ張ってたからね!」

「胸を張るなー!」

「グッジョブザウルス先輩!じゃあ早速、いただきますドン!」

「ぎゃー!?」

「はっはっは……」

因みに、これまでの釣果は僕以外は0。

川釣りがメインとはいえ、少しは釣りをやっている僕は数匹釣れている。

……だが……

ピクピク……

「来た!フィーシュッ!……ってまた君か」

……釣れるのはほとんど河豚河豚河豚河豚、河の豚と書いてフグの山。

河豚の持つ毒であるテトロトドキシンはあたると大体24時間で死亡する程強力なのだ。だから専門の調理免許が必要なのだが当然、僕達がそれを持ってる筈も無く、食べるのは無理。だから釣れてもリリース(逃がす)しかない。

しかも、釣れている河豚の種類はクサフグ。毒性が強くて食べられた物じゃない。

そして、河豚には魚には珍しく、1枚の板のような形をした丈夫な前歯を上下に持っている。その為、糸がボロボロにされる事も少なくないのだ。

「あーもう、また糸換えなくちゃ……」

「いいじゃねぇかよ一応河豚以外も釣れてるんだからよ。ボウズ(釣果0)のオレ達より何倍もマシじゃねぇか」

「……そりゃそうだけどさ」

……釣れてるっていっても他は小さいゴンズイだけである。ゴンズイは小さなナマズのような魚で、味噌汁の具ぐらいにしかならない。

因みに、このゴンズイも毒を持っている。……釣れる魚が全部毒持ちとかどういう事?

「はーぁ、退屈だぁ!何か面白い事無いか?」

「あるわけないじゃないっスか……」

「よーし!んじゃ替え歌大会!」

「なんで!?」

「一番、朝倉和希!聴いてください。『みじめな歌』!」

「……しょーもない予感満載ザウルス」

「み~じめみじめ~、に~んげんってみ~じめ~♪」

「まんが日本昔ば○し!?」

「冷たい味噌汁腐ったご飯~、枯れ葉の布団で眠るんだろな~♪」

「やっぱりしょーもなかったドン!」

「僕もかえ~ろ、お家が無いよ♪」

「「無いの(ドン)!?」」

「でんでんでんぐり返しでバイバイバイ♪」

「と、とんでもねぇ歌だなオイ。つーかお前らもノリノリだな……」

十代君は冷や汗をかきながら曲に合わせてでんぐり返しでバイバイバイをしてたワイト達(さりげなくワイトのでんぐり返しが横にそれてしまっているのが細かい)にツッコんだ。



……まぁ、こんな感じで四人で駄弁っていると、翔君が気になる事を言った。

「あ、そう言えば変な噂聞いたなぁ。誰かが修学旅行に帰ってきてから部屋に閉じ籠ったきりだって」

「『誰か』って誰ドン?」

「へ?えーと……うーん……」

「きっと大したことない奴ドン」

「……」

パシャッ

「? どうしたんだ和希?道具片付け出して」

「ごめん。ちょっち用事思い出した」

「え?あぁおい!?」

……まったく、『彼』にも困った物だ。

僕は荷物を纏め、その場を去った。



「……何なんスかね?用事って」

「オレが知る訳ないだろ?って剣山!引いてるぞ!」

「き、来たザウルス!こいつは大物ドン!」

バシャーン!

「凄ーい!」

「やったぜ剣山!」

「ドン!今日はご馳走だドン!」

「おう!」



「出来た!俺の新しいデッキ!これで俺が、誰にも負けないエリートだという事を証明してやる!」

「はーい、おめっとさん」

「!?」

所変わってここはラーイエロー寮。只今絶賛ヒッキー中の三沢君の部屋である。

パチパチと気のない拍手をすると、デッキ開発に夢中だった三沢君は僕にやっと気付いたようだ。

「まったく、窓全開とか不用心だよ?声ダダ漏れだったし」

窓越しに僕は注意した。

「……」

……シカトされた。

「……悩みあるんなら聞くよ?『Dr.カズキにきいてみて!』みたいな?」

僕は風水なんて見れないけどね!

「……ラーイエロー首席のエリートの俺がお前に話す事なんてない」

……駄目だこりゃ。

「はーぁ、さっきから聞いてればエリートエリートエリートエリート。まるでオベリスクブルー時代の万丈目君みたいだよ?」

「……」

「これじゃ、対戦相手のデッキを海に捨てたりするのも時間の問題……」

「黙れ!」

「うわっ!?」

と、いきなり三沢君は窓越しに僕の胸ぐらを掴んだ。

「お前らに何がわかる!?いくら勝利しても他人から認められないこの俺の気持ちの何がわかる!?」

「……」

「俺はかつて万丈目に勝った!十代やお前もあと一歩の所まで追い詰めた!セブンスターズとも戦った!だが何故、お前らと俺との評価の差がこんなにもある!?俺とお前らで何が違う!?この間の修学旅行だってそうだ!光の結社はお前や十代やエドばかりに目をつけ、俺には見向きもしなかった!」

「……」

「お前なんかに、俺の気持ちが……!」

「……わかるもんかぃ」

「何!?」

……僕は胸ぐらを掴んでいる三沢君の手を払い、逆に三沢君の胸ぐらを掴み返した。

そして息を思いっきり吸い込み……

「いい加減にしろ!このわからず屋ぁ!!」

「!?」

思いっきり叫んでやった。

「『誰からも認められない』って、なんでそんなに他人の顔色を伺う!?他人からの評価がそんなに必要かい!?君のそれは、母親に誉めて貰えなくて駄々をこねている子供と何ら変わりないよ!」

「お前……!」

「『俺とお前らで何が違う』だって!?ふざけるな!君以外にそんな名声目当てでデュエルしている人が僕達の中で一人でも居るもんか!十代君を見てみなよ!一時は再起不能にまでなったのに、『デュエルが好きだから』っていう誰よりも強い思いで復活したんだよ!?そんなの、比べるのもおこがましい!」

「く……」

「どうしました!?一体何事ですか!?」

……騒ぎを聞き付けたラーイエロー寮長の樺山先生や野次馬の生徒達が集まって来たが、僕はやめなかった。

「その姿勢を変えないならもうデュエルなんてやめてしまいなよ!続けても君が苦しむだけだし、何よりも見ているこっちが不愉快だよ!」

「……」

……言うだけ言うと、僕は手を放し、踵を返した。

「……去年のアカデミア対抗戦の前日、君自身が十代君に言った事をよく思い出してみる事だね。それでもわかんないようならば僕はもう知らない。勝手に悩めばいいさ。……じゃあね」

「……」

……僕はその場から立ち去った。



SIDE OUT



SIDE 翔



「うひょー!」

「焼けてるっス!うまそうっス!」

僕達は今、食堂で借りた大鉄板を使って剣山君の釣り上げた大物を料理していた。……と言っても、実際に料理しているのは剣山君だけだけど。

うぅ……立ち昇るいい匂いに涎が止まらないっス。

「まだ食べちゃ駄目ドン!」

「「はーい」」

「待ってるザウルス。今出来上がるドン」

うぅ、待ち遠しいなぁ。早く出来ないかなぁ。

と、

「……」

「あ、和希君、おかえ……り?」

「……」

和希君が帰って来たが、何だか様子がおかしかった。

「か、和希?どうしたんだ?そんな険しい顔して……」

「……何でもない」

と、和希君は僕達の前を素通りして寮の階段を登っていった。

「せ、先輩?もうすぐ飯出来るドン?」

「……要らない。おやすみ」

和希君は部屋に帰ってしまった。

「……何かあったザウルス?」

「さぁ?」

……今の和希君の表情は一見もの凄く怒っているように見えた。でも、ただ怒っているというのも何か違う気がした。

と、

「まったく、あいつもお前並み、いや寧ろお前以上のお人好しだな、十代」

意外な人物が姿を現した。

「エド?」

「お前、何か知ってるのか?」

「まぁな」

そして、エドは僕達に事の詳細を話した。

「そんな事があったのか……」

「あの時のあいつの表情は三沢に勝るとも劣らない位悲痛だった。大方、三沢が未だに『周りから認められない』などというくだらない理由で悩んでいるのが悲しいのだろうな」

そうか、さっきの和希君の表情、見ようによってはもの凄く悲しそうだった。

「く……!」

「何処へ行く?」

「決まってんだろ!三沢の所だよ!」

「やめておけ。これはあいつ自身の問題だ。あいつ自身で答えを出さなければ意味がない」

「でもよ……!」

「朝倉の言う通り、このままではあいつにとってデュエルは苦痛以外の何者でも無い。……少し前までの僕のようにな」

「エド……」

「……ふん、じゃあな」

エドはそう言って立ち去った。

……三沢君、大丈夫かな……



SIDE OUT



SIDE 三沢



……あの後、俺は樺山教諭や野次馬達を何とか追い返し、ベッドに横たわって天井を見ていた。

……さっきから耳の中で朝倉の言葉が鳴り響いている。

『ふざけるな!君以外にそんな名声目当てでデュエルしている人が僕達の中で一人でも居るもんか!』

「……」

……情けなくて泣きそうになる。そうだ。皆は俺のようなくだらない理由なんかではデュエルしちゃいない。

『去年のアカデミア対抗戦の前日、君自身が十代君に言った事をよく思い出してみる事だね』

……朝倉はそう言っていた。……去年の……アカデミア対抗戦の前日?

……代表が十代に決まって、俺達が、デッキの調整をしていた十代に自分たちのカードを使って貰うように頼んでいた時の事か?



『だー!うるさい!邪魔すんなよ!』

『何も邪魔をしているわけじゃない。今度のデュエルは学園の名誉を賭けた戦いだ。だから俺達も一緒に戦うつもりで……』

『冗談じゃない!学園の為になんかにデュエルするかよ!これはオレのデュエルなんだ。オレは楽しむためにやってるんだよ!』

『わかるぜその気持ち。デュエルは他人の為にやるんじゃない。自分の為にする物だもんな』



「……は、ははは……」

……成る程、朝倉、そういう事か。

「はは、はははは……」

……俺は『わかるぜ』と言っておきながら全然わかってなかった。

「はは……」

エリート面して、他人の顔色ばかり気にして……

「うぅ……」

こんな事で……

「うぅぅ……」

『自分自身の為に』デュエルしているだなんて胸張って言える物か!

「畜生……」

畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生!

「畜生ぉぉぉ!!」

涙が、止まらなかった。



……それから暫くの間、俺は泣いた。自分自身の情けなさ、器の小ささを実感した。

暫くして、俺は漸く泣き止んだ。

……このままじゃ駄目だ。

俺自身が変わらないと駄目だ。

そうじゃないと、こんな情けない俺を仲間と認めてくれた皆に申し訳が立たない!

俺はさっき作ったばかりのデッキをバラした。

……夜明けまであと数時間。

それまでに、俺は新たにデッキを組んでみせる!

生まれ変わる為の、新しいデッキを!

俺は再び、壁の計算式に向き合った。



SIDE OUT



SIDE 和希



「…きて!和希君起きて!」

「……」

「はぁ、やっと起きたっス……」

ガシッ

「え?」

「……なんぴとたりともぼくのねむりをさまたげげるやつはゆるさん」

ぐぎゅー

「ぎゃー!?ギブ!ギブっス!」

「先輩!寝ボケて丸藤先輩にアイアンクローきめてないで早く起きるザウルス!」

「……一体どうしたのさ、こんな朝早くに」

寝ボケ眼で時計を見るとまだ朝の5時。……眠い……

「三沢君が……」

「!」

……その名前を聞いて一気に意識が覚醒した。

「……三沢君がどうしたって?」

光の結社に入ってしまったのだろうか?

「アニキに勝負を挑んで来たっス!」

「……はい?」

「だから!三沢先輩がアニキにいきなり真剣勝負を挑んで来たんだドン!」

なんで!?光の結社に挑みに行って万丈目君とデュエルするんじゃないの!?

……失敗した。昨日は後先考えずに感情で動き過ぎた……

僕は少し後悔しながら現場に急いだ。



現場に着くと、三沢君と十代君が対峙していた。

「三沢、聞いたぜ、昨日の事」

「……そうか。ならばこのデュエル、受けて貰えるな?」

「三沢……」

「俺は昨日の朝倉の言葉で、今までの自分の愚かさを痛感した。だが、ではどうすればいいか、具体的な事がわからないんだ」

「それで、オレとデュエルなのか?」

「ああ。お前とデュエルをすれば何か掴める気がするんだ。……頼む」

「……いいぜ、でも、やるからには全力で行くぜ?」

「……勿論だ」



……やーめた!

止めようと思ったけど、なんか逆効果になりそうだし。

何より、三沢君の雰囲気がいつもと違う。このデュエルがどうなるのか楽しみだ。

今後の流れが気になるが、まぁ成るように成るだろう。

そう自分で結論づけ、僕は観戦モードに入った。

……因みにワイト達は皆、十代君が勝つ方にスーパーひ○し君を賭けている。……さり気に酷い……



「「デュエル!!」」

「先攻はオレが貰うぜ!オレのターン!ドロー!『カード・ガンナー』(守備力400)を守備表示で召喚!効果発動!自分のデッキからカードを上から3枚墓地に送る事で、墓地へ送ったカード1枚につき、このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで500ポイントアップする!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

? 守備表示なのに攻撃力アップ効果を発動させた?しかも1ターン限定の?

「いくぞ!俺のターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』発動!デッキからカードを2枚ドロー!そして『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!『カード・ガンナー』(守備力400)に攻撃!『ハイドロ・ブレス』!」

「くっ!?」

『ハイドロゲドン』の吐く水流が十代君の『カード・ガンナー』を粉砕した。

「『カード・ガンナー』の効果発動!フィールド上のこのカードが破壊され墓地に送られた時、デッキからカードを1枚ドローする!」

「ならばこっちも『ハイドロゲドン』の効果を発動!このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキから『ハイドロゲドン』1体を特殊召喚する事が出来る!デッキから『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)を攻撃表示で特殊召喚!さあ、次はダイレクトアタックを受けて貰うぞ!」

「やらせるか!罠カード発動!『ヒーロー・シグナル』!自分フィールド上のモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の手札またはデッキから『E・HERO』という名のついた星4以下のモンスター1体を特殊召喚する!デッキから『E・HERO クレイマン』(守備力2000)を守備表示で特殊召喚!」

「……流石だな。俺はリバースカードを1枚セットしターンエンドだ!」

……『ハイドロゲドン』という事は、三沢君は結局『ウォーター・ドラゴン』をデッキに組んだようだ。さぁ、今後どうなる?

「オレのターン!ドロー!魔法カード『潜入!スパイ・ヒーロー』を発動!自分のデッキの一番上のカード2枚を墓地へ送り、相手の墓地から魔法カード1枚を選択し、自分のカードとして使用する!俺が選ぶのは魔法カード『強欲な壺』!デッキからカードを2枚ドロー!そして魔法カード『テイク・オーバー5』を発動!自分のデッキの上から5枚カードを墓地に送る!更に魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、『E・HERO』という名のついた融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する!フィールド上の『クレイマン』、墓地の『E・HERO バーストレディ』『E・HERO フェザーマン』『E・HERO バブルマン』の4枚をゲームから除外!融合召喚!現れろ!『E・HERO エリクシーラー』!(攻撃力2900)」

『ハァッ!』

「いきなり『エリクシーラー』!?」

「アニキ、宣言通り最初から全開ドン!」

なるほど、この為の墓地肥やしだったのか。

……それにしても、『カード・ガンナー』『潜入!スパイ・ヒーロー』『テイク・オーバー5』で『バーストレディ』『フェザーマン』『バブルマン』の3枚を一気に墓地に送るとは、相変わらず十代君の引きは強い。

「『エリクシーラー』の効果を発動!このカードの融合召喚に成功した時、ゲームから除外された全てのカードを持ち主のデッキに戻し、デッキをシャッフルする!除外した『フェザーマン』『バーストレディ』『バブルマン』『クレイマン』をデッキに戻す!いくぜ三沢!『エリクシーラー』(攻撃力2900)で『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)に攻撃!『フュージョニスト・マジスタリー』!」

……原作の『エリクシーラー』には、相手フィールド上に存在するこのカードと同じ属性のモンスター1体につき攻撃力が300ポイントアップする効果はない。だがそれでも『エリクシーラー』の攻撃力は『ハイドロゲドン』を大きく上回っている……!

「カウンター罠発動!『攻撃の無力化』!相手モンスターの攻撃宣言時に発動!相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!」

繰り出された『エリクシーラー』のパンチが次元の間に吸い込まれて無効化された。

「悪いが、ああ言った以上、俺も簡単にはやられないぞ!」

「みたいだな!オレは更にリバースカードを2枚セットし、更にモンスター1体を裏側守備表示でセットしターンエンドだ!」

「俺のターン!ドロー!『オキシゲドン』(攻撃力1800)を攻撃表示で召喚!そして魔法カード『ボンディング-H2O』を発動!自分フィールド上に存在する『ハイドロゲドン』2体と『オキシゲドン』1体を生け贄に捧げ、自分の手札・デッキ・墓地から『ウォーター・ドラゴン』1体を特殊召喚する!『ハイドロゲドン』2体と『オキシゲドン』1体を生け贄に、デッキから『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)を攻撃表示で特殊召喚!」

『ギシャー!』

「三沢君も『ウォーター・ドラゴン』を……」

「早くも熱い展開ザウルス!」

……『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)の攻撃力では『エリクシーラー』(攻撃力2900)に及ばない。でも……

「『ウォーター・ドラゴン』の効果発動!このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、炎属性と炎族モンスターの攻撃力は0になる!そして、『エリクシーラー』は属性は光属性だが、風、火、水、土属性としても扱う!よって、『エリクシーラー』の攻撃力は0になる!」

「く……!」

「『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)で『エリクシーラー』(攻撃力0)に攻撃!『アクア・パニッシャー』!」

『ウォーター・ドラゴン』の放つ『ハイドロゲドン』を遥かに上回るの水流が『エリクシーラー』に襲いかかった。

「罠カード発動!『ヒーローバリア』!自分フィールド上に『E・HERO』と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。」

だが、それも『エリクシーラー』の前に現れた障壁に打ち消された。

「凄い……三沢君、アニキ相手に互角の戦いをしてるっス」

「でも、アニキはまだ『ネオス』を出してないザウルス。アニキの方が1枚上手ドン」

……確かに、十代君はまだ主力にして切り札の『ネオス』を出していない。三沢君、これに対してど対応して行くのだろうか……

「俺は更にリバースカードを1枚セットしターンエンド!流石だな、十代!」

「へへ、今のは一瞬ヒヤッとしたぜ。今度はオレの番だぜ!オレのターン!ドロー!墓地の『テイク・オーバー5』の効果を発動!このカードの発動後、次のスタンバイフェイズ時に墓地にこのカードが存在する場合、このカードと同名カードを手札・デッキ・墓地から選択しゲームから除外する事で、デッキからカードを1枚ドロー出来る!デッキから2枚目の『テイク・オーバー5』をゲームから除外し、デッキからカードを1枚ドロー!そして、『エリクシーラー』と守備表示モンスター『E・HERO スパークマン』を生け贄に、『E・HERO ネオス』(攻撃力2500)を攻撃表示で召喚!」

『ハァッ!』

来た!『ネオス』!

「よもや『エリクシーラー』を生け贄に召喚して来るとはな!だが、『ネオス』(攻撃力2500)では『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)に勝てないぞ!」

「慌てんなよ。更にフィールド魔法『ネオスペース』を発動!」

「む!?」

十代君が『ネオスペース』を発動し、辺りが七色に輝く空間と変化した。

「『ネオスペース』の効果で、『ネオス』の攻撃力は500ポイントアップ!(攻撃力2500→3000) 『ネオス』(攻撃力3000)で『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)に攻撃!行け!『ラス・オブ・ネオス』!」

『ハァ!』

『ネオス』が手刀をかざして『ウォーター・ドラゴン』に襲いかかった。

……だが……

ガキン!

「何!?」

驚いた事に、『ウォーター・ドラゴン』が『ネオス』の手刀を噛みついて受け止めたのだ。

「何で!?」

「どういう事ザウルス!?」

「三沢のフィールドをよく見てみろ」

「エド!?」

「いつの間に……ってあのカードは!?」

……なるほど、そういう事か。

「永続罠『DNA改造手術』を発動!発動時に1種類の種族を宣言!このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した種族になる!俺が選んだ種族は……炎族!」

……つまり、『ネオス』と『ウォーター・ドラゴン』を炎族にし、『ウォーター・ドラゴン』の効果で無理矢理攻撃力を0にしたのか。今までの三沢君には見られない力業だ。

「そして、攻撃力0同士のバトルではモンスターは破壊されない!」

「くっ、ターンエンド!」

……でも、これではこれから召喚されるモンスターの攻撃力が全て0になってしまうのではないだろうか。

だが、三沢君の次の一手に、僕達は驚くことになる。

「俺のターン!ドロー!俺は魔法カード『リトマスの死儀式』を発動!自分の場か手札から、合計星8以上になるように生け贄を捧げ、手札から『リトマスの死の剣士』を特殊召喚する!手札の星8のモンスター1枚を生け贄に、『リトマスの死の剣士』(攻撃力0)を攻撃表示で特殊召喚!リトマスの死の剣士』はフィールド上に表側表示の罠カードが存在するとき、このカードの攻撃力・守備力は3000となる!俺のフィールドには永続罠『DNA改造手術』がある!よって、『リトマスの死の剣士』の攻撃力は3000ポイント!」

こ、これは……

「え?でもそれじゃ、また『DNA改造手術』と『ウォーター・ドラゴン』の効果で攻撃力0になっちゃうんじゃないっスか?」

「いや、『リトマスの死の剣士』は罠の効果を受けない効果を持っているんだよ!」

「そうか!『リトマスの死の剣士』だけは『DNA改造手術』の効果を受けず戦士族のまま。よって攻撃力は3000のままだ!」

「こ、これはまたとんでもないコンボザウルス」

凄い。これまでの三沢君にあった『相手の弱点に合わせる』という感じを全く感じさせない、どんな敵でも捩じ伏せるようなコンボだ。

「『リトマスの死の剣士』(攻撃力3000)で『ネオス』(攻撃力0)に攻撃!『デス・ソードダンス』!」

『ぐわぁぁぁ!』 十代残ライフ1000

「ネオス!」

おお!?三沢君が大きく先制した!

これは……ひょっとしたらひょっとするかも?

「更に『ウォーター・ドラゴン』(守備力2600)を守備表示に表示変更してターンエンドだ!」

「へ、へへへ。凄い!凄いぜ三沢!このデュエル、今までのお前とのデュエルの中で一番楽しいデュエルだぜ!」

だがこの状況でも、例によって十代君の目には諦めなどまるで見られない。

このデュエル、まだ終わりそうにない。

「オレのターン!ドロー!魔法カード『天使の施し』発動!デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚墓地に送る!更に罠カード『堕天使の施し』を発動!このターン魔法カードの効果で手札から墓地に送られたカードを手札に戻す!今『天使の施し』で墓地に送った2枚を手札に戻す!そして魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!」

「……相変わらずあいつのドロー力はデタラメだな」

「は、ははは……」

……エド君のこのツッコミには空笑いをせざるを得なかった。

「行くぜ!魔法カード『ミラクル・コンタクト』を発動!フィールドまたは墓地から『ネオス』と『ネオスペーシアン』をデッキに戻し、『ネオス』を融合素材とする『E・HERO』という名のついた融合モンスター1体を召喚条件を無視して融合デッキから特殊召喚する!」

「な!?墓地からのコンタクト融合だと!?」

「墓地の『ネオス』と『N・ブラック・パンサー』をコンタクト融合!現れろ!『E・HERO ブラック・ネオス』!(攻撃力2500→0)」

『ハァッ!』

『ブラック・ネオス』も、『ウォーター・ドラゴン』と『DNA改造手術』のコンボで攻撃力は0になる。だが……

「『ブラック・ネオス』の効果発動!フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択!このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、選択したモンスターはフィールド上から離れるまでその効果が無効化される!『ウォーター・ドラゴン』の効果を無効化!」

「くっ!?」

「これで『ブラック・ネオス』の攻撃力は元に戻るぜ!(攻撃力0→2500) そして、フィールド魔法『ネオスペース』の効果により、『ブラック・ネオス』の攻撃力は500ポイントアップ!(攻撃力2500→3000)」

「くっ……だが、それでも『リトマスの死の剣士』(攻撃力3000)と同じ攻撃力だ!しかも、『リトマスの死の剣士』は戦闘によっては破壊されない!」

「あぁ、わかってるさ!」

「何!?」

「オレは魔法カード『ヒーロー・マスク』を発動!自分のデッキから『E・HERO』と名のついたモンスター1体を墓地に送り、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択、このターンのエンドフェイズ時まで選択したモンスターはこの効果で墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う!オレはデッキに戻した『ネオス』を墓地に送る!これによりこのターン、『ブラック・ネオス』は『E・HERO ネオス』として扱われる!」

「? 一体何を……」

「そして装備魔法『ネオス・フォース』を装備!」

「な!?」

「このカードは『E・HERO ネオス』のみ装備可能!装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップ!(攻撃力3000→3800)そして、装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地に送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える!」

な、なるほど!その為の『ヒーロー・マスク』か!

「そして、『カード・エクスクルーダー』(守備力400)を守備表示で召喚!」

『わわわ!?あ痛!』

あ、召喚された勢いでコケた。

「か、可愛い……」

「「「……」」」

「な、なんでもないっス」

「『カード・エクスクルーダー』の効果発動!1ターンに1度、相手の墓地に存在するカード1枚を選択しゲームから除外する!お前の墓地から『オキシゲドン』をゲームから除外する!」

「くっ!?」

……なるほど、『ウォーター・ドラゴン』の効果、破壊された時に墓地の『ハイドロゲドン』2体と『オキシゲドン』1体を特殊召喚する効果はこの3枚が墓地に揃ってなければ発動しない!

「『ブラック・ネオス』(攻撃力3800)で『ウォーター・ドラゴン』(守備力2600)に攻撃!『フォース・オブ・ブラックネオスペース』!」

「ぐあぁぁぁ!?」

『ブラック・ネオス』の爪が『ウォーター・ドラゴン』を引き裂いた。

「『ネオス・フォース』の効果により、『ウォーター・ドラゴン』の攻撃力、2800ポイントのダメージを受けて貰うぜ!」

「ぐっ……」 三沢残ライフ1200

「そして、『ブラック・ネオス』の効果対象がいなくなった今、再び『ブラック・ネオス』の効果を発動!今度は『リトマスの死の剣士』の効果を無効化するぜ!」

「何!?」

うまい!これで『リトマスの死の剣士』まで無力化した!いくら罠カードがあっても、これで『リトマスの死の剣士』の攻撃力は0になるし、戦闘破壊に対する耐性も消える!

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!装備魔法『ネオス・フォース』はその効果によりデッキに戻る。(攻撃力3800→3000)そしてフィールド魔法『ネオスペース』の効果で『ブラック・ネオス』は融合デッキに戻らず、フィールドに居続けるぜ!」

「……これで決まりか」

「うーん、三沢君も頑張ったんスけどね」

「やっぱりアニキは強すぎるドン!」

……僕以外のギャラリーは皆、これで勝負が決したように感じているみたいだ。

……だが、僕にはまだ勝敗が決せられたようには感じられなかった。

今の三沢君は、何だかいつもの十代君、どんなピンチでも覆す十代君とダブって見えた。

「は、ははは、はっはははは!」

「は?」

と、急に三沢君が笑い出した。

「な、なんだよ三沢、急に笑い出したりしてよ」

「いや、いつもお前が言ってる事が、今やっと実感出来てな」

「オレが言ってる事?」

「『この1枚のドローで、世界がガラリと変わるかもしれない。そう思うとワクワクしてくる』……あぁ、俺もワクワクしているよ。手札も1枚、フィールド上の状況も絶望的。これが覆せる可能性なんか数%もない。だが、もしこのドローでそれを覆せるかもしれないと思うと、ワクワクするな。初めてだよ。デュエルをこんなに楽しく感じるのは」

「三沢……」

「行くぞ十代!俺のターン!ドロー!魔法カード『アドバンスドロー』を発動!自分フィールド上に表側表示で存在する星8以上のモンスター1体を生け贄に捧げ、自分のデッキからカードを2枚ドローする!『リトマスの死の剣士』(星8)を生け贄に、デッキからカードを2枚ドロー!」

最後にドローしたカードを確認した三沢君が……不敵な笑みを浮かべた

「俺は手札の『氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)』の効果を発動!このカードは通常召喚出来ず、自分の墓地の水属性モンスター2体と炎属性モンスター1体をゲームから除外する事でのみ特殊召喚する事が出来る!俺は墓地の水属性モンスター『ウォーター・ドラゴン』『ハイドロゲドン』そして炎属性の『溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム』をゲームから除外!『氷炎の双竜』(攻撃力2300)を特殊召喚!」

『『ギャオォォ!!』』

「これは……氷と炎のドラゴン!?」

お、驚いた。三沢君がこのカードを使うとは……そうか、『ラヴァ・ゴーレム』は『リトマスの死の剣士』の儀式召喚の時に手札から生け贄にしてたのか!

「更にフィールド魔法『ウォーターワールド』を発動!」

「何!?」

辺りが七色に輝く『ネオス・ペース』からイルカの跳ねる海へと変化した。

「『ウォーターワールド』の効果で、フィールド上の全ての水属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備力は400ポイントダウンする!『氷炎の双竜』は水属性。よって攻撃力が500ポイントアップ!(攻撃力2300→2800) 更に、フィールド魔法『ネオスペース』が破壊された事により、『ブラック・ネオス』の攻撃力が元に戻る!(攻撃力3000→2500) 『氷炎の双竜』(攻撃力2800)で『ブラック・ネオス』に攻撃!『フロストアンドフレイム・ツインブレス』!」

『ぐあぁぁぁ!』

「『ブラック・ネオス』!」

『ブラック・ネオス』が氷と炎のブレスに粉砕された。 十代残ライフ700

「更に『氷炎の双竜』の効果発動!1ターンに1度、手札を1枚墓地に送る事で、フィールド上のモンスター1体を破壊する!手札を1枚墓地に送り、『カード・エクスクルーダー』を破壊!『ヒート・エクスホージョン』!」

『きゃあぁぁ!?』

「くっ!?」

『カード・エクスクルーダー』も同様に、2つの相反する属性のブレスに粉砕された。

……それなんてメド○ーア?

「ターンエンドだ!」

「凄い!また逆転した!?」

「しかも、先輩のフィールドには、手札さえあれば毎ターンモンスターを破壊出来る『氷炎の双竜』がいるドン!」

「まさか……十代が負けるのか?」

ギャラリーの三人はやはり驚いた顔をしている。……正直、僕も驚いている。よもや三沢君があの状況をひっくり返すとは。しかもあの十代君を相手に。

「へへへ、三沢」

「……何だ?」

「今のお前、すっごく良い表情(かお)してるぜ」

「……そうか」

……ははは、確かに、三沢君、今までに無く生き生きしてる。

「さぁ十代!お前のターンだ!」

「おう!オレのターン!ドロー!魔法カード『O-オーバーソウル』を発動!自分の墓地から『E・HERO』と名のついた通常モンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する!墓地から『E・HERO ネオス』(攻撃力2500)を攻撃表示で特殊召喚!」

『ハァッ!』

「やはり最後も『ネオス』か!だが、攻撃力は俺の『氷炎の双竜』(攻撃力2800)が上回っているぞ!」

確かに。十代君、どうするつもりだろうか?

「行くぜ!『ネオス』(攻撃力2500)で『氷炎の双竜』(攻撃力2800)に攻撃!」

「何!?」

ここで自爆特攻!?

「行っけぇ!『ラス・オブ・ネオス』!」

「迎え撃て!『フロストアンドフレイム・ツインブレス』!」

結果は……

『ぐあぁぁぁ!』

当然、攻撃力の低い『ネオス』が負けた。 十代残ライフ400

……だが……

「罠カード発動!『デス・アンド・リバース』!自分のターンのバトルフェイズ中に自分フィールド上の通常モンスターが破壊された場合に発動!相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、破壊された通常モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する!その後、このカードの効果で特殊召喚したモンスター1体は攻撃しなければならない!」

「何!?」

「『氷炎の双竜』を破壊し、『ネオス』(攻撃力2500)を墓地から特殊召喚!」

『氷炎の双竜』にヒビが入り、爆発を起こし、中から『ネオス』が出現した。

「『ネオス』(攻撃力2500)のダイレクトアタック!『ラス・オブ・ネオス』!」

「ぐっ……」 三沢残ライフ0

「ガッチャ!最高にワクワクするデュエルだったぜ三沢!」

「……ああ」

……三沢君の表情は、負けたのに晴れやかだった。



「あー、まーた釣れねえなぁ……」

「そうっスね……」

「ドン」

数日後、僕達はまた釣りをしていた。

「ははは、まぁ『果報は寝て待て』ってことわざもある。のんびりと待とうぜ」

今日は三沢君も一緒だ。

「あー!退屈だ!また何か面白い話ないか?」

「またっスか?」

「よーし!じゃ替え歌大会……」

「「却下!」」

……拒否られた。

「面白い話か。1つ傑作なのがあるぞ」

「お?なんだ傑作って?」

「この間の十代とのデュエル、誰か光の結社のやつに見られていたんだろうな。昨日、とうとう俺にも光の結社から勧誘が来たんだ」

「ふむふむ」

「それで?」

「勿論断った。だがあいつらも食い下がってな。しつこく迫って来たんだ。だから俺は……」

「俺は?」

「『そんなに白がいいなら、こうしてやる!』ってな、あいつらに壁に塗ってた白ペンキをぶちまけてやったのさ」

「ははは、そいつはいいや!」

「ははは、連中、顔も髪も真っ白になってしまってな。あの顔は傑作だったよ」

……あのデュエル以来、三沢君は完全に吹っ切れたようだ。雰囲気が1年の頃に戻っている。

「……でだ。そのせいでまだ部屋のペンキ塗りが終わってないんだ。悪いがまた手伝ってくれないか?」

「また『ビッグバン』スか!?」

「まぁそう言うな。このまま釣れる気配のない釣りを続けるのと、手伝って確実に飯を奢って貰うのとどっちが得だ?」

「そ、それは確かに……」

「でもそれじゃラーイエローの俺達にメリットが少ないドン」

「おいおい贅沢言うな。わかったよ。翔と剣山には食後のデザートもつける」

「あー!狡ぃ!」

「不公平だよ!」

「その代わり、十代や朝倉も働き具合によってはデザート追加だ。どうだ?」

「……ま、しょうがねぇか。んじゃ、早く行こうぜ!一番遅かったやつ皆にジュース奢りな!」

「あ、待ってよアニキ!」

「ずるいザウルス!」

「おい!そもそも俺が先に行かないと部屋が開かないぞ!」

「はははは……」



……亮さんだけでなく、三沢君も原作とは違う風になってしまった。

だが、あの三沢君の晴れ晴れとした表情を見る限り、これで良かったかなとも思う。

……願わくは、この事が後々マイナスに働かないように祈るとしよう。



今日のワイト

数日前、対神田君(クイズデッキ)戦

「『ワイトキング』(攻撃力4000)に装備魔法『光学迷彩アーマー』を装備!ダイレクトアタック!」

「ちょ!?おたくクイズに答える気0ですか!?」

「ははは!問答無用ぉ!」

「うぎゃあぁぁ!?」

「あーあ」

「な、何と言うか……」

「敵ながら哀れザウルス……」



後書き

や、やっと書けた(疲れ お待たせしました。

いきなり改正しました。蟹座様、えだまめ様、デモア様、アンデビ様御指摘ありがとうございます!



[6474] デッキ紹介(特別編) その2
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:26038740
Date: 2010/05/21 14:44
和「さて、本日はリクエストにお応えしてマナさんのデッキレシピを紹介でーす!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」



最上級×2

サイレント・マジシャンLV8×2

上級×2

ブラック・マジシャン・ガール×2

下級×14

マジシャンズ・ヴァルキリア×3
見習い魔術師×3
サイレント・マジシャンLV4×2
ホーリーエルフ×2
水晶の占い師×2
マハー・ヴァイロ×2

魔法×15

ディメンション・マジック×3
レベルアップ!×2
魔導師の力×2
受け継がれる力×1
大嵐×1
強欲な壺×1
サイクロン×1
マジカル・ピジョン×1
マジシャンズ・クロス×1
魔術の呪文書×1
魔法使いの里×1

罠×7

ブロークン・ブロッカー×2
マジシャンズ・サークル×2
激流葬×1
聖なるバリア-ミラーフォース-×1
リビングデッドの呼び声×1

総計40枚



和「因みに作者はタッグフォースで、収録されていない『マジカル・ピジョン』と禁止カード『強欲な壺』の代わりに『サイレント・マジシャンLV4』と『レベル・アップ!』を足した、最早『ブラマジガールデッキ』というよりは『サイレント・マジシャンデッキ』なものを作っています」

3ワイト「「「カタカタ(オイ)!」」」

和「えー、続きましては、リクもないのに勝手に紹介、三沢君のニューデッキでーす!」



最上級×4

リトマスの死の剣士×2
溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム×1
ウォーター・ドラゴン×1

上級×2

氷炎の双竜×2

下級×18

オキシゲドン×3
ハイドロゲドン×3
マンジュ・ゴッド×3
ペンギン・ナイトメア×2
水晶の占い師×2
UFOタートル×2
プロミネンス・ドラゴン×2
メタモルポット×1

魔法×12

平和の使者×2
リトマスの死儀式×2
ウォーター・ワールド×1
ポンディング-H2O×1
大嵐×1
手札抹殺×1
強欲な壺×1
貪欲な壺×1
天使の施し×1
リビング・フォッシル×1

罠×7

モンスターBOX×2
激流葬×1
聖なるバリア-ミラーフォース-×1
血の代償×1
DNA改造手術×1
リビングデッドの呼び声×1

サイド

アドバンスドロー
攻撃の無力化
その他

総計43枚



和「……ぶっちゃけ、回りません」

3ワイト「「「カタカタ(オイ)!」」」

和「いや、回ることは回るんですが、本編みたく『ウォーター・ドラゴン』と『リトマス』の共演はほぼ皆無です。因みに作者はタッグフォースで『強欲な壺』『天使の施し』『リビング・フォッシル』の代わりに『カードトレーダー』を入れてます。それではまた次回!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」



[6474] 第三十一話 友情が もたらす力は 無限大(字余り)
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9766d1b6
Date: 2011/06/22 01:32
SIDE 翔



「ジェネックス第一回大会の開催を宣言する!」

三沢君の一件があってから数日後、新学期が始まってから世界中を旅していた校長先生が帰ってきてこう宣言した。

ジェネックス、それは校長先生曰く、アカデミア本校の生徒並びにノース校の生徒、果ては一部のプロデュエリストまでがこの島で行う世界中のジェネレーションネクストナンバーワンを決める為のサバイバルデュエルだ。

ルールとして、選手には資格メダルが渡され、これを賭けてデュエルする。負けた方は全てのメダルを差し出さなければならない。そして一日一回デュエルする義務があり、最初に挑まれたデュエルは拒めないというのがあるっス。

アニキは俄然やる気になっていた。そして、僕も心踊った。

プロデュエリストが参加しているという事は、もしかしたらお兄さんも参加するのかもしれない。

あれから更に強くなったお兄さん、僕の永遠の目標であり憧れであるお兄さんとデュエルしてみたい。自分がお兄さんにどれだけ近づく事ができたかどうか、確かめたい!



そんなこんなで今現在。ジェネックスが始まってから3日が過ぎた。

僕やアニキ、和希君に剣山君に三沢君と、僕達は勝ち残る事ができているっス。

そして、今アニキと和希君は……

「ヨ○ダだ!」

「いーや、ウィ○ドゥだね!」

……物凄く不毛な言い争いをしていた。

「何を言い争っているんだ?」

「あ、三沢君」

アニキと和希君がレッド寮の前で熱くなっている所に、三沢君がやって来た。

「……この間の金曜○ードショーを見て、ジェ○イ最強は誰かを熱く討論してるドン」

「……なんじゃそりゃ」

剣山君の説明に三沢君は呆れた表情を浮かべ……

「お前ら、最強はア○キンに決まっているだろーが!」

「「ってうぉーい!!?」」

「オビ・○ンに負けてんじゃねーか!」

「それを言うならウィン○ゥだってアナ○ンにやられているぞ!」

「いやいやいや!あれ不意討ちじゃん!」

……いつの間にか三つ巴になってるっス。

……三沢君、この前の一件で元気になったのはいいんだけど……

「……はぁ、ツッコミ役が減っちまったドン……」

「……寧ろボケ側になってるっス」

元気になり過ぎっス……



……1時間後、漸くこのカオスな言い争いは終わった。

「はーぁ、折角のジェネックス大会だってのに、なんで誰も相手してくれねぇんだよ」

アニキは退屈そうにぼやいた。

「いきなりアニキとやって、メダル取られたら堪らないっス」

「皆、アニキの強さにビビってるドン」

そう、このジェネックスには賞品があるだけでなく、この大会での成績が今学期の成績に影響するとの噂なのだ。当然、アニキのような強い人といきなりデュエルする人もおらず、アニキは退屈していた。

「つまんねーの」

「ははは……はぁ……」

「? 和希、どうしたんだ?」

溜め息をついた和希君を見て、三沢君が尋ねた。

あ、余談だけど、あの一件以来、三沢君は和希君の事を『朝倉』じゃなくて『和希』って名前で呼ぶようになったっス。

「ははは、まぁ、ちょっとね」

「?」

……そうか、三沢君は修学旅行から帰ってきてから寮に籠ってたから知らないんだ。

「和希君、今スランプなんスよ」

「スランプ?」

「うーん、斎王さんに負けたせいかどうかはわからないけど、なんか最近調子が悪くてね」

たははと苦笑するその顔にも、いつも以上に覇気がない。

事実、修学旅行から帰ってきてからジェネックスが始まる直前まで、和希君は練習で、今まで五分五分の成績だったアニキはおろか、僕や剣山君にまで負け越していた。

唯一、光の結社のクイズデッキ使いの神田君には快勝したが、あれはデッキの相性が良かったからだろうし。

「気分を変える為に、デッキを再調整したらどうだ?」

「うーん、それも色々試したんだけど、あんまり効果は出てないねぇ」

と、

「? 相棒?」

アニキが何か呟いたその時だった。

ゴゴゴゴ……

「あれ?いい天気だったのに……」

凄い勢いで黒い雲が空を覆った。

「雨ザウルス?」

「……待て、風向きと逆の方向からも雲が流れて来ている。何かおかしいぞ」

三沢君がいぶかしんだその時……

ゴゥ!

「ひゃあ!?」

突然起こった轟音に、思わず悲鳴を上げてしまった。

「なんだ!?」

「見ろ!あそこで誰かがデュエルしてるぞ!」

三沢君が指差す方向に、巨大な火柱が上がっていた。

「すげぇ力だ……」

「一体、誰がどんなモンスターを召喚したザウルス」

……やがて、その火柱は消えた。

「すっげぇ!あんなすげぇモンスターを使うやつも参加してんのか!よっしゃぁ!行ってみようぜ!」

「あ、アニキ!?」

アニキが今にも走り出そうとしたその時……

『オシリスレッドの遊城十代君、朝倉和希君、至急校長室まで来てください』

校舎の方からアナウンスが聞こえた。

「えー!?こんな時に何だよ!?やっとすげぇやつとデュエル出来そうだったのに!」

「ははは、まぁ、呼ばれちゃった物はしょうがないよ。行こう」

「……ちぇ」

二人は校舎の方へ向かった。

……それにしてもさっきの火柱、どんなモンスターだったんだろう……

「……っていうかさっきからツッコミたかったけど、三人で合体してたら腕6本でグ○ーヴァス将軍っていうよりアシュ○マンだよ?」

「それは確かに」

……そしてあの二人は誰にツッコんでいるんだろう……



SIDE OUT



SIDE 和希



「隼人が来てるって!?」

さっきまでの不機嫌はどこへやら、来る途中に鮎川先生から隼人君が来ている事を聞いた十代君は嬉しそうに校長室に駆け込んだ。

「十代!元気そうなんだなぁ!」

「むぐ……隼人、こそ……」

隼人君が相変わらずその(横に)大きな体で十代君に抱きついた。

「おっひさー隼人君」

「和希も、久しぶりなんだなぁ。? 何か元気ないけど、どうしたんだなぁ?」

「はははは、ちょっとね」

元気がない……か。確かにさっき翔君が言ってた通りスランプなのもあるけど、もう一つの理由がある。

それは、今回ジェネックスに参加してきた、ミズガルズ王国の王子にして、地上を焼き尽くす事が出来る軍事用レーザー衛星『ソーラ』を持つオージーン王子の光の結社入りを止められなかった事だ。

鮫島校長がジェネックスを開催した本当の理由、それは世界中のデュエリストを集め、『破滅の光』の力が宿り、世界を滅ぼしかねない危険なカード、そしてエド君のお父さんの形見であり、エド君が探し求めている『究極のDのカード』を探し出す為だ。(実際、『究極のDのカード』を持つ人は参加してなかったが)

それを利用し、斎王さんはジェネックスに参加するデュエリストとしてオージーン王子を招く事を鮫島校長に提案したのだ。オージーン王子を洗脳し、『ソーラ』を手に入れる為に。

これは何としても阻止したかった。何らかの切っ掛けで斎王さん、『破滅の光』が『ソーラ』を始動しかねないからだ。

だから僕は、誰も挑んでくれなくて暇な十代君に付き合って釣りをしているふりをしてヘリポートで張っていた。

……だが、ヘリの音が近づいて来た頃……

「朝倉和希!デュエルを受けて貰おう!」

「げっ!?」

光の結社の生徒に勝負を挑まれてしまったのだ。

この日、僕はまだデュエルしておらず、ルールによりデュエルするしかなかった。

仮にこのデュエルを放棄したとしても、それで資格メダルを失った僕の挑戦をオージーン王子が受けてくれるとは思えない。八方塞がりだった。

……オージーン王子とデュエルをする為に、スランプの事も考えて、メダル温存でデュエルしてなかったのが完全に裏目に出てしまった。

デュエルを挑まれたことを羨ましがる十代君を尻目に、僕はデュエルするしかなかった。

しかし、いざデュエルしてみると、相手のデッキは壁モンスターや『攻撃の無力化』や『平和の使者』など、足止めのカードばかり。攻撃の意志は0。

……やられた。相手は勿論、この世界では幻のレアカードである『エクゾディア』のデッキなどではない。僕を足止めするように斎王さんが差し向けた捨て駒だ。

その証拠に、原作通りオージーン王子の『サテライト・キャノン』による1ターンキルコンボを逆手にとった『0ターンキル』を決め、オージーン王子を洗脳、『ソーラ』のコントローラーを手に入れた斎王さんは去り際、未だデュエル中だった僕に向かってニヤリと笑っていた。

……完全にやられてしまった。こうなってしまっては、原作通り斎王さんの元の人格が、十代君とエド君に『ソーラ』始動の為の鍵を渡してくれるまで、『破滅の光』の人格を抑えてくれるのを祈るしかない。

……そんな訳で、最近モチベーション下がりまくりな僕なのだが、今校長室には、そんな僕のモチベーションが跳ね上がる人がいた。

「あのボーイ達は?」

「隼人君のルームメイトだった遊城十代君と朝倉和希君です」

「オウ、ユー達が十代ボーイに和希ボーイデスか。隼人ボーイからいつも話は聞いてマース」

ボーイキター!

「うわぁ……」

僕と共に握手された十代君も驚愕の声を上げた。

「インダストリアルイリュージョン社の名誉会長でデュエルモンスターズの生みの親でもあるペガサス・J・クロフォード氏だ」

そう、無印遊戯王において僕の好きなキャラベスト3に入るペガサスさんである。

うぅ、『和希ボーイ』なんて……感激だ!

「すっげぇ!でもなんでここに?」

「……」

十代君のこの質問に、周りの雰囲気が沈んだ。

「実はだな……」

鮫島校長は説明を始めた。インダストリアル・イリュージョン社にある『ラーの翼神竜』が盗まれた事を。

「『ラーの翼神竜』が盗まれた!?『ラー』ってあの、遊戯さんが戦ったっていう伝説の?」

「所謂、『神のカード』ってやつだね」

「ザッツライト。その名の通り、神そのものが宿ったような恐ろしい力を秘めたカードデース。勿論、オリジナルはもうこの世には存在しまセーン。研究用としてコピーカードが1枚だけ我が社に残されていたのデスが、それを我が社のメインデザイナーが盗み出してしまったのデース」

コピーカードか。グールズの物でも押収したのだろうか。

「この大会に紛れ込んだらしいんだなぁ」

「……! もしかしてさっきの火柱……!」

「……可能性は高いだろうね」

十代君の指摘に僕は頷く。……いや、そうだって知ってるんだけどさ。

「心当たりがあるようだね。コピーとは言え、神のカードの力は計り知れない。実際、既に何人ものデュエリスト達が被害にあっているらしい。一刻も早く取り戻さなければ……」



『ジェネックス全参加者に告げる。一時的に大会を中断。全員外出禁止を命ずる。繰り返す……』

僕達が隼人君を連れてオシリスレッド寮に帰る頃、島全体にアナウンスが鳴り響いた。

「隼人君!?びっくりした」

「隼人!?久しぶりだな!」

翔君と三沢君が驚愕の声を上げた。

「翔も三沢も元気そうなんだなぁ。でも今はゆっくり話してる場合じゃないんだなぁ」

「誰ドン?」

「去年、僕達のルームメイトだった前田隼人君だよ。今はインダストリアル・イリュージョン社でカードデザイナーをしてるんだ」

僕の説明に、剣山君は驚愕した。

「イ、インダストリアル・イリュージョン社って言ったら、デュエルモンスターズを創ってる会社ザウルス!?すげぇドン!」

「そ、そんな、別に俺は凄くもなんともないんだなぁ」

「そんな事無いって。ペガサスさん直々の勧誘だったんだから」

「マジザウルス!?」

「マジマジ。本当、誇りに思える仲間だよ」

「和希……」

「まぁ、出会ったばっかりの時はリバース効果モンスターの『デス・コアラ』を攻撃表示で出してたけど」

「そ、それは言わない約束なんだなぁ」

ははは、やっぱり隼人君との掛け合いはほのぼのするなぁ。

「外出禁止って、一体何があったんだ十代」

「ああ、ちょっとな」

と、早くも十代君は『ラー』を探しているペガサスさんを手伝うべく、飛び出そうとした。

「やっぱり行くのか?十代」

「ああ」

「なら、これを持ってってくれ」

と、隼人君が十代君に『摩天楼2-ヒーロー・シティ』を渡した。

「俺が作った新作カードなんだなぁ」

「隼人……」

「十代の力になれるかもしれないんだなぁ」

「……サンキュー!」

十代君は嬉しそうにカードを受け取り、飛び出してった。

……代わりたい所だけど、スランプ中の僕に原作版の『ラー』が倒せる気がしないしなぁ……

「はぁ……」

……溜め息しか出なかった。

「和希?やっぱり様子が変なんだなぁ」

「……和希君、最近スランプなんス」

「スランプ?」

「まぁ、色々あってな」

いやうん、それもあるんだけどさ……

「そうなのか。……なら、丁度良かったんだなぁ」

「「「「……は?」」」」

「実は、最新作のカード、もう1枚あるんだなぁ」

え……

「ほら、これなんだなぁ」

僕は呆然とカードを受け取った。

!? こ、このカードは……!

「多分、お前がこのカードを一番上手く使いこなせるんだなぁ」

……確かに、このカードはワイト達と相性抜群だ。

「隼人君……」

「和希、俺だってお前の事、誇りに思える仲間だと思うんだなぁ」

「! ありがとう!」

「あ!和希!?」

「僕も十代君を手伝ってくる!」

限界だった。僕は部屋を飛び出した。



「あーもう、僕ってば涙腺緩いなぁ……」

軽く滲み出た涙を拭いながら僕は走った。

『『『カタカタカタ』』』

……ふふふ、そうだねワイト達。過去のミスをいつまでもウジウジと、僕らしくなかったね。

なってしまったものはしょうがない。だったらせめて今後が好転するように努力しないとね!

さて、どうするか……

ゴゥ!!

「あ」

そう考えているうちにさっきと同じように巨大な火柱が起ち……

『ヒィィィィン!!』

中から『ラー』が姿を現した。

……

…………

………………

間に合わなかったぁ……! "orz

どうやらぐずぐずしている間に十代君と『ラー』を盗んだデザイナー、フランツさんのデュエルが始まってしまったようだ。

……まぁしょうがない。今心に決めたばかりだ。『なってしまったものはしょうがない』。

さて、今後が好転する行動か……

……まぁ、原作通りならば十代君は勝ってくれるだろうけど……

……取り敢えず、万一に備えて僕も向かいますか。



「『ラーの翼神竜』の攻撃!『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!」

「ぐあぁぁぁ!?」

結果的に、十代君は原作通り、フランツさんからコントロールを奪取した『ラー』を見事に使いこなし、勝った。

「大き過ぎる力は、大き過ぎる悲劇を生む。そして一生、その後悔を抱いて生きていかなければならないのデース」

「!?」

ペガサスさんが髪で隠していた左目、失った左目をフランツさんに見せた。

「私は大切な部下に、自分と同じ運命を歩ませたくないのデース」

「会長……」

「ユーの新しいカードに期待してマース」

「……はい」

フランツさんは泣き崩れた。

いやー、めでたしめでたし。……なのはいいんだけど、完全に不完全燃焼だなぁ、こりゃ。折角久々にやる気が戻ってきたのに……

……そうだ。まだやっておきたい事があった。

僕は早速行動に移る事にした。



それから1時間後……

「すみません。こんな所まで来て貰ってしまって」

「……ドント・ウォーリー。気にしないでくだサーイ」

僕はオシリスレッド寮から見て島の反対側の森までペガサスさんを連れてくる事に成功した。

今日はジェネックスが中断してしまったので、今日のみ特例で1日1回デュエルの義務が無くなり、ここ数日の連戦の疲れを癒しているのだろう、他のデュエリストはいない。

……つまり、秘密の話をするにはもってこいなのだ。

え?どうやってペガサスさんに来て貰ったかって?

それは簡単。隼人君を通してペガサスさんにファンレターとして手紙を渡したのだ。

『元千年アイテムの所有者としてのあなたに、聞きたい事があります』……ってね。

「……なぜ私が千年眼(ミレニアム・アイ)の所有者だった事を知っているのデスか?」

ペガサスさんが剣呑とした雰囲気で尋ねてきた。そりゃまぁ、そんな事を知ってるやつは怪しいよなぁ。

「そうですね。それではまず、僕自身の事をお話しましょう」

「? ユーの事……デスか?」

僕はマハードさんの時同様、自分の事を話した。

「……つまりユーは違う世界の人間で、その世界ではこの世界の事はカートゥーン(漫画・アニメ)であると?」

「はい。そういう事ですね。……信じますか?」

「……俄には信じ難い話デース」

ふむ、まぁそりゃそうだわな。

「まぁ、その辺は取り敢えず半信半疑で構いません。それで本題なのですが……」

「……なんでしょう?」

「元の世界に戻る方法、他の世界に渡る方法について、何か心当たりがないですか?」

これは正直ダメ元な質問だった。マハードさんが知らなくてペガサスさんが知っている可能性は低いだろうし、さっきの反応から見ても、ペガサスさんも元の世界の事を知らないだろうし。

「……1つだけ、心当たりがありマス」

ほーらね……って、アルェー?

「但し、今はもう不可能な方法デース」

「え……」

『今は』? どういう意味だろう?

「私が所有していた千年眼には所有者の願いを1つだけ叶える力があるのデース。それを使えば或いは……」

……あー、成る程。

「確かに、『今は』もう無理な方法ですね」

千年アイテムは全て遊戯さんが封印しているからね。

「と言うか、可能だとしても、そんな危険な方法はとりませんよ」

千年アイテムは人を選ぶ。受け入れられなかった者に待っているのは死。リスクが高過ぎる。

……あとついでに、片目を潰されるのも嫌だ。

「ふ、そうデスか。安心しました」

「え……」

「ユーは賢明デース。かつての私のように、自分の目的の為に大き過ぎる危険な力を得るような愚を侵さない」

「あーいや、別にどうしても戻りたい訳でも無いんです」

「……ホワッツ?」

僕は再び、マハードさん達にしたような説明、もしもの為に帰る方法が知りたいだけだということを説明した。

すると、ペガサスさんの反応も、マハードさん達と同じだった。

「ふふふ、成る程、隼人ボーイの言う通り、ユーはとてもユニークなボーイデース」

……なんかこれからこの事を説明する度に笑われそうだな、僕。

まぁともかく、今のやりとりでペガサスさんは警戒を解いてくれたようだ。

「……とまぁ、ここまでが用件その1です」

「? まだ何か?」

「はい」

そう言って、僕はデュエルディスクを取り出した。

「デュエルして頂けませんか?」

「私と……デスか?」

「はい。先程隼人君から新しいカードを貰ったのでその試運転に。他の人はジェネックス参加者になってしまいますから」

「成る程」

「それに……」

「?」

「世界が違うとはいえ、デュエルモンスターズの生みの親とのデュエル、やってみたいに決まっているじゃないですか!」

ま、こっちが理由の大部分だけどね!

「ふふふ、わかりました。私で良ければ、お相手しましょう」

よっしゃぁ!



「「デュエル!!」」

「ふふふ、久しぶりに心踊るデュエルになりそうデース。私のターン、ドロー!手札から魔法カード『トゥーンのもくじ』を発動!デッキから『トゥーン』と名のつくカードを手札に1枚加えマース!」

やはり、ペガサスさんが使うのは『トゥーン』。この世界では、カートゥーンが好きなペガサスさんが自分の為に創ったペガサスさんのみが持つオリジナルカード。

「ふふふ、ユーを私の『トゥーン』の世界に招待しましょう。私はデッキから永続魔法『トゥーン・キングダム』を手札に加え、これを発動!」

ペガサスさんのフィールドに1冊の大きな本が現れ、それが開かれると、中から飛び出し絵みたいな城が出てきた。

「このカードは自分のデッキのカードを上から5枚ゲームから除外して発動!このカードのカード名は『トゥーン・ワールド』として扱いマース。そして『トゥーン・マーメイド』(守備力1500)を守備表示で召喚し、ターンエンドデース」

『きゃはははは!』

……『トゥーン』には大きく分けて3種類のカードがある。

1つ目は、通常召喚出来ず、自分のフィールド上に『トゥーン・ワールド』が存在する場合のみ特殊召喚出来る(生け贄は必要)。そして特殊召喚したターンには攻撃出来ず、500ライフポイント払わなければ攻撃できない、所謂『初期型トゥーン』。『トゥーン・マーメイド』はこれに該当する。

2つ目は、自分のフィールド上に『トゥーン・ワールド』が無くても召喚でき、攻撃時にライフコストが不要だが、やはり召喚・反転召喚・特殊召喚したターンに攻撃不可能な『後期型トゥーン』。

そして、『初期型トゥーン』同様、自分フィールド上に『トゥーン・ワールド』が存在しなければ特殊召喚不可能だが、攻撃にライフコストがいらず、特殊召喚した1ターン目から攻撃が可能な『例外型トゥーン』

そして、どの『トゥーン』も、自分フィールド上の『トゥーン・ワールド』が破壊された時に一緒に自壊する効果を持つが、自分フィールド上に『トゥーン・ワールド』が存在し、相手が『トゥーン』モンスターをコントロールしていない時、相手にダイレクトアタックが可能。即ち、この世界において『トゥーン』を持つのがペガサスさんだけな以上、ペガサスさんの攻撃のほとんどがダイレクトアタックになるという、ライフ4000のこの世界においてはかなり脅威的なカードである。

おまけに、原作オリジナルであるあの永続魔法『トゥーン・キングダム』がこの厄介さに拍車をかける。

「僕のターン!ドロー!『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!そして『ダーク・グレファー』の効果を発動!1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を捨てる事で自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地へ送る事が出来る!手札から闇属性モンスター『ワイト』を1枚墓地に送り、デッキからも『ワイト』を1枚墓地に送ります!」

「オゥ!?『ワイト』!?そのカードを使うデュエリストがいるとは、アンビリーボォー!」

……アンビリーボォー頂きましたぁ!

「そして『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)で『トゥーン・マーメイド』(守備力1500)を攻撃!」

『ダーク・グレファー』が剣で『トゥーン・マーメイド』に斬りかかった。

が……

「永続魔法『トゥーン・キングダム』の効果を発動!デッキのカードを上から1枚ゲームから取り除く事により、『トゥーン』モンスターの戦闘破壊を無効にしマース!」

ガキィン!

『トゥーン・マーメイド』の貝から腕が伸び、原作で『エルフの剣士』にやったように『ダーク・グレファー』の剣を真剣白刃取りで受け止めた。

「……リバースカードを1枚セットし、ターンエンドです。」

「私のターン、ドロー!装備魔法『コピー・ハンド』を発動!相手モンスター1体のコントロールを得マース!そしてそのモンスターは『トゥーン』として扱いマース!これをユーの『ダーク・グレファー』に装備しマース!」

「げ!?」

『トゥーン・キングダム』の本から手が伸び、『ダーク・グレファー』を捉え、その中に引きずり込んだ。

そして……

「カムヒア!『トゥーン・ダーク・グレファー』(攻撃力1700)!」

ペガサスさんの言葉に応じ、その『トゥーン』化した姿を現した。

『ゲヒャヒャヒャヒャ……!』

うわぁ、なんか更に獣(ケダモノ)族化してるし。……タ○ニートゥーンのタスマニアデ○ルみたいな感じ?

「『トゥーン・マーメイド』(攻撃力1400)を攻撃表示に表示変更!そして『トゥーン・ダーク・グレファー』(攻撃力1700)でダイレクトアタック!」

『トゥーン・ダーク・グレファー』の剣が僕に襲い掛かってきた。

「永続罠『グラヴィティ・バインド-超重力の網-』を発動!フィールド上に存在する全ての星4以上のモンスターは攻撃をする事が出来ません!」

「ム……」

現れた超重力の網に攻撃が遮られ、無効化された。

「……成る程、『グラヴィティ・バインド』等のカードで相手を足止めし、『ワイト』を墓地に送り、『ワイトキング』の攻撃力を高める。それがユーの戦略デスね? やはり持ち主に似て、とてもユニークなデッキデース。……となると、ユーが狙うのは恐らく装備魔法『光学迷彩アーマー』によるダイレクトアタック。奇しくも、私のデッキと少し似ていますネ」

……流石、デュエルモンスターズの生みの親。鋭い洞察力だ。もしかしたら、千年眼を失った事で、遊戯さんの言っていた『千年眼に頼る余りに失ったデュエリストとしての勘』を取り戻したのかもしれない。

「これは早目に勝負を仕掛けた方が良さそうデース。私は『トゥーン・仮面魔導士』(守備力1400)を守備表示で召喚し、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドデース」

……『トゥーン・仮面魔導士』は『後期型トゥーン』。召喚されたこのターンは攻撃出来ないが、次のターンからライフコスト無しで攻撃可能。

そして、その星は3、『グラヴィティ・バインド』をすり抜けて来る……!

その攻撃力は900。毎ターンこれにライフを削られるのはキツい……!

「僕のターン!ドロー!」

……よし!

「速攻魔法『サイクロン』発動!フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊します!永続魔法『トゥーン・キングダム』を破壊!」

装備魔法『コピー・ハンド』はフィールド上の『トゥーン・ワールド』が破壊された時、このカードも破壊され、装備モンスターのコントロールは元のプレイヤーに戻る。

そして、先にも言ったが、『トゥーン』モンスターはフィールド上の『トゥーン・ワールド』及び『トゥーン・ワールド』として扱う『トゥーン・キングダム』が破壊された時、自壊する。

つまり、これでペガサスさんのモンスターは全滅する!

更に、『ダーク・グレファー』が戻ってくれば、その効果で手札にある『ワイト夫人』をコストに、更に墓地にワイト達を増やす事が出来る!

「残念デスがそれはさせまセーン」

え……

「カウンター罠『アヌビスの裁き』を発動!自分フィールド上の魔法・罠を破壊する効果の魔法カードが発動された時、手札を1枚墓地に送りこれを無効化、破壊しマース!」

「く!?」

駄目だったか……!

……考えてみれば、『トゥーン・キングダム』はペガサスさんのデッキの要。その破壊を防ぐカードを組むのも当然か。

「……デスが、ユーのフィールド上に表側表示のモンスターは存在しまセーン。『アヌビスの裁き』のもう1つの効果、相手の魔法を無効にした時、相手フィールド上の表側表示モンスター1体を破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える事が出来る効果は不発デース。ガッデム!」

「ははは……僕はモンスターを1体裏側守備表示でセットし、ターンエンドです」

僕はペガサスさんのアメリカンなリアクションを笑いながらこのターンを終了した。

……しょうがない。このターンは『トゥーン・仮面魔導士』のダイレクトアタックを甘んじて受けるしかない……

「私のターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!そして『トゥーン・仮面魔導士』(攻撃力900)を攻撃表示に表示変更しマース!」

来た!

「自分フィールド上に『トゥーン・ワールド』が存在し、相手が『トゥーン』モンスターをコントロールしていない時、『トゥーン』モンスターはダイレクトアタックが可能なのデース!そして、『トゥーン・仮面魔導士』は星3。永続罠『グラヴィティ・バインド』に掛かりまセーン!『トゥーン・仮面魔導士』(攻撃力900)でダイレクトアタック!」

『ギャヒィィィッ!』

「く!?」 自残ライフ3100

『トゥーン・仮面魔導士』のゴムの様に伸びるパンチが僕のフィールド上の裏側守備表示モンスターをすり抜け、僕に直撃した。

「『トゥーン・仮面魔導士』の効果発動!このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、デッキからカードを1枚ドローしマース!更に私は『トゥーン・キャノン・ソルジャー』(守備力1300)を守備表示で召喚しマース!」

『ウヒャヒャヒャヒャ』

げ!?ヤバい!

「『トゥーン・キャノン・ソルジャー』の効果を発動!自分のフィールド上のモンスターを生け贄に捧げる度に相手に500ポイントのダメージを与えマース!私は『トゥーン・マーメイド』と『トゥーン・ダーク・グレファー』を生け贄に捧げ、ユーに1000ポイント(500×2)のダメージを与えマース!」

『ウヒャヒャヒャヒャ、アー……』

と、『トゥーン・キャノン・ソルジャー』の口が大きく広がり……

ゴクン

「げ!?」

なんと『トゥーン・ダーク・グレファー』と『トゥーン・マーメイド』を一飲みにしてしまった。

と、ペガサスさんは手で耳を塞ぎながら……

「カウントダウン、スタートデース!スリー、ツー、ワーン、ファイア!」

『ウヒャアァァ!』

ドォン!

『キャハハハハ!』

『ゲヒャヒャヒャヒャ!』

ちゅどーん!

「くっ!?」 自残ライフ2100

ペガサスさんのカウントダウンと共に、まるで人間大砲のように『トゥーン・マーメイド』と『トゥーン・ダーク・グレファー』が発射され、僕に直撃した。

「ターンエンドデース」

マズい、『トゥーン・キャノン・ソルジャー』は星4なので永続罠『グラヴィティ・バインド』に引っ掛かり攻撃不可能だが、次のターンでペガサスさんがモンスターを召喚してき場合、『トゥーン・仮面魔導士』(攻撃力900)のダイレクトアタックのダメージ、900ポイントと、『トゥーン・キャノン・ソルジャー』の効果で『トゥーン・キャノン・ソルジャー』自身を含めた相手の全モンスター3体を生け贄に捧げた時のダメージ、3×500ポイントで1500ポイントのダメージ、合わせて2400ポイントのダメージを僕は受け、僕のライフは0……!

ここで何かを引かなければ、僕の負け……!

「僕の……ターン!ドロー!」

……! よし!取り敢えずこのカードがあればこの場は凌げる。

……だが、このカードだけでは依然形勢は僕に不利なまま。

「裏側守備表示モンスター『デス・ラクーダ』(攻撃力500)を反転召喚!効果発動!このカードの反転召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローします!」

……ここであのカード、隼人君から貰ったあのカードが来れば、形勢は逆転する……!

「カード、ドロー!」

……

…………

ありがとう、隼人君!

「手札から魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!」

「! それは隼人ボーイが創った……」

このカード、実は元々僕のデッキに入っていたのだが、何故かこっちの世界に来た時にデッキから消えていたのだ。おまけに、調べた所、こちらの世界ではこのカードは存在しておらず、入手を諦めていたのだ。

それを、なんと隼人君が僕オリジナルのカードとして創ってくれたのだ。隼人君にはいくら感謝してもし足りない……!

「『ワン・フォー・ワン』は手札からモンスター1体を墓地へ送って発動します!手札またはデッキから星1のモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚します!」

そう、このカードが僕のデッキ相性がといい理由、それは……

「手札の『ワイト夫人』を墓地に送り、デッキから星1の『ワイトキング』を特殊召喚!」

デッキから『ワイトキング』を特殊召喚出来るだけでなく、それと同時に手札からワイト達を墓地に送れる事!

「オゥ、アンビリーボォ!面白いカードだと思い採用しましたが、隼人ボーイが創ったそのカードに、まさかそのような使い方があるとは……!」

確かに、『シンクロ召喚』の概念が無いこの世界において、隼人君が言う通り、僕がこのカードを一番上手く使えるデュエリストかもしれない……!

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する『ワイト』と『ワイトキング』の枚数×1000。そして、『ワイト夫人』は墓地に存在する時、カード名を『ワイト』として扱います。そして、僕の墓地には『ダーク・グレファー』の効果で墓地に送った『ワイト』が2枚と『ワン・フォー・ワン』で墓地に送った『ワイト夫人』が1枚の計3枚!よって、『ワイトキング』の攻撃力は3000ポイント!(1000×3)」

「オゥ、イッツ アメイジング!」

「更に魔法カード『アームズ・ホール』を発動!自分のデッキの一番上のカード1枚を墓地へ送り、このターン通常召喚を行わない代わりに自分のデッキ・墓地から装備魔法カード1枚を手札に加えます!僕はデッキから装備魔法『光学迷彩アーマー』を手札に加え、これを『ワイトキング』に装備!このカードは星1のモンスターにのみ装備可能!装備されたモンスターはダイレクトアタックが可能となります!『ワイトキング』(攻撃力3000)でプレイヤーにダイレクトアタック!」

と、『ワイトキング』はローブの中から、絶対にその中に入る大きさではないバズーカを取り出した。

……マテ、どこで手に入れたその○導具。

……で、何処からともなく頭蓋骨を取り出し……って、もしかしてそれ墓地のワイトの?

……ま、いいか。

「魔○具『砲○神』!」

ドカーン!

「オーノーー!?」

ちゅどーん! 敵残ライフ1000

……ワイトカワイソス。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドです!」

「くっ、私のターン!ドロー!……今のは見事なコンボでした。しかし残念な事に、私の手札にはこのターンに通常召喚出来るモンスターがいマース。このターン、『トゥーン・仮面魔導士』のダイレクトアタックと『トゥーン・キャノン・ソルジャー』の効果のダメージでユーのライフポイントは0デース」

「……それはどうでしょう?」

「ホワッツ!?」

「そちらのドローフェイズ時に永続罠『生贄封じの仮面』を発動!このカードがフィールド上に存在する限り、いかなる場合もカードを生け贄に捧げる事は出来ません!」

これで『トゥーン・キャノン・ソルジャー』の効果は発動出来ない!

これでこのターンを凌げば、次の僕のターンで『ワイトキング』のダイレクトアタックでペガサスさんのライフは0……!

これでどうだ!?

と、

パチパチパチ……

「え……」

突然ペガサスさんが拍手し始めた。

「エクセレント!このターン、ユーのドローした永続罠『生贄封じの仮面』だけでは、例えライフが0になるのを免れても、『トゥーン・仮面魔導士』のダイレクトアタックは依然止められず、ユーの形勢が不利だったのは変わりませんでした。しかし、『デス・ラクーダ』の効果で見事ユーがドローした、ユーと隼人ボーイの友情の証、『ワン・フォー・ワン』の力で形勢は一気に逆転しました。やはり友情・結束の持つ力は素晴らしいデース!」

……そうか、ペガサスさんは遊戯さんとのデュエルにおいて、遊戯さんとその仲間達の友情・結束の前に敗れた。だから、この友情・結束が生み出す力が、時にはとても強力なのを痛感しているのかもしれない。

「……デスが、今回ばかりは私に運が向いていたようデース」

「!?」

「魔法カード『コストダウン』を発動!手札を1枚墓地に送り、自分の手札にある全てのモンスターカードの星を、発動ターンのエンドフェイズまで2つ下げマース!そして、『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』(星6→4 攻撃力2000)を攻撃表示で特殊召喚しマース!」

『いぇーい♪』

……っ!、『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』は『例外型トゥーン』。特殊召喚したターンに攻撃が可能……!

だが、魔法カード『コストダウン』で星を下げても、まだ星4、永続罠『グラヴィティ・バインド』で攻撃出来ない……筈!

「そして私は更に、魔法カード『スター・ブラスト』を発動!」

「な!?」

「このカードは、500の倍数のライフポイントを払い、自分の手札・フィールド上のモンスター1体の星をこのターンのエンドフェイズ時まで、500ライフポイントにつき1つ下げマース!私はライフポイントを500払い、『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』の星を更に1つ下げマース!」 敵残ライフ500

っ!?これで『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』の星は3!『グラヴィティ・バインド』を越えてくる……!

「『トゥーン・仮面魔導士』(攻撃力900)と『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』(攻撃力2000)の2体でダイレクトアタック!」

『ウヒャヒャヒャヒャ!』

『てやー!』

「……っ!?」 自残ライフ0

『トゥーン・仮面魔導士』の先程の伸びるパンチ、『トゥーン・ブラック・マジシャン・ガール』も伸びる杖による打撃が僕に直撃した。

……いや、『黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)』じゃないの!?



いやー、負けたかー。流石は元千年眼の持ち主にしてデュエルモンスターズの生みの親。強かった……

……でも、最近のデュエルの中では一番手応えがあった。これでスランプも解消……してくれるといいな。

と、ペガサスさんが近づいて来て……

「さて、覚悟はよろしいですか?」

……へ?

「『罰(パニッシュメント)ゲーム』!」

え?は?って、ちょ!?

「……ジョークデース」

……僕はズッコけた。

「し、心臓が止まるかと思いましたヨ!」

「ふふふ、ソーリー。とても楽しいデュエルでした。サンキュー。」

「はい。こちらこそ、ありがとうございました。」

「ユーも十代ボーイ同様素晴らしい素質を持っていマース。これからも頑張って下サーイ」

と、ペガサスさんは踵を返そうとした。

「あ、あの……!」

「? まだ何か?」

「……」

「?」

正直、この不躾過ぎる質問はしようかどうか迷っていた。……だが、やはり聞いておきたい。

「ペガサスさんは……何故デュエルモンスターズの制作を続けているのですか?あなたには……それを続ける理由はもう無いのでは……?」

「……」

……ペガサスさんが原作にて『決闘者の王国(デュエリストキングダム)』を開催した理由、それは海馬コーポレーションのビッグ5との密約で、海馬コーポレーションを譲り渡す代わりに、海馬社長を倒し、海馬コーポレーションを経営難に陥れた遊戯さんを倒す為。

そして、そもそもペガサスさんが海馬コーポレーションを欲した理由、それは亡き恋人のシンディアさんを海馬コーポレーションの開発しているソリッド・ビジョンシステムを使い、彼女ともう一度再会したかった為であった。

……ペガサスさんはシンディアさんの幻影をずっと追いかけており、彼女のカードも作っていた。だが、彼女との再開も叶わなくなってしまった。

彼は……何故まだデュエルモンスターズに関わっているのだろう。

「……」

……やはり、不躾な質問だったかな。

「……すみません。今の質問は……」

「……彼女と、約束したのデース」

「え……」

「私は武藤遊戯に敗れた後、千年眼を奪われ、生死の境をさ迷いました。そして、その時、彼女と出会った気がしたのデース」

「……シンディアさん……ですか?」

「イエス、彼女は私にこう言いました。『私の分まで、人々の笑顔を作って欲しい』と。ふふふ、彼女はいつもそうでした。自分も病弱なのに、いつも自分よりも周りを心配するのデース」

ペガサスさんは懐からシンディアさんのカードを取り出し、愛しそうに眺めた。

「勿論、既に千年眼は奪われていました。あれは幻だったのかもしれまセン。しかし、私は世界中の人々の笑顔の為、デュエルモンスターズを創り続けていマース。それを、彼女が願っていると信じて」

「……そう……ですか……」

……危うく本日2度目の涙が零れそうだった。

「すみません、不躾な事を聞いてしまって」

「気にしないで下サイ。ユーが唯の興味だけで聞いた訳ではない事はわかっていマース」

「ペガサスさん……ありがとうございます……あ」

「? どうしました?」

「いいえ、お礼と言ってはなんですが、いい事を教えてあげようと思いまして」

「? いい事、デスか?」

「はい、実は僕も、十代君同様にデュエルモンスターズの精霊が見えるんです」

「! それは本当デスか!?」

「はい、僕だけでなく、このアカデミアには何人か精霊が見える生徒がいます。そんな中には、『デュエルの精霊に会いたい』という真摯な思いによって、カードに精霊が宿った人もいます」

「な!?」

光の結社の『カエルのお姫様』ことプリンセス・ローズ。彼女には十代君とのデュエル後、原作同様、カエルの王子様(カード名は分からないが)の精霊が宿っていた。(まだ本人には見えていないようだが)

「……無責任な言い方かもしれませんが、もしかしたら、いつの日か精霊となったシンディアさんと会えるかもしれません。その日が来ることを、僕も願います」

「……サンキュー。ありがとうございマス……」

……ペガサスさんの隻眼から、一筋の涙が零れた。



と、ペガサスさんは2枚のカードを懐から出し……

「このカードを受け取って下サーイ」

「え……」

僕に差し出してきた。

って、このカードは……!?

「こ、このカードはペガサスさんのデッキの切り札じゃ……」

「私は第一線から身を引きました。このカードはもう必要ありまセーン。私に新たな生きる希望を作ってくれたユーに、是非受け取って貰いたいのデース」

「ペガサスさん……」

「私はこれからもカードを創り続けマース。いつか、彼女に会えるその時を待ちながらネ」

「はい!頑張って下さい!」

「また、いつかどこかでお会いしましょう」

僕達は握手し、ペガサスさんは今度こそ、踵を返した。



……思いがけなく、新たなカードを手に入れてしまった。

このカードには、隼人君やペガサスさんの期待や信頼が込められている。

……これにちゃんと応えないとね。よし!頑張ろう!

と、

『クリクリ~』

「ありゃ?ハネクリボー?」

「相棒!居たか!?和希ー!」

「十代君?」

「こんなところで何やってんだよ!折角隼人が来てるんだ、皆でデュエルしようぜ!」

「あれ?ジェネックスは?」

「だから、今日はもう中止状態だろ?普段通りのデュエルでいいじゃねぇかよ!」

「ははは、それもそうだね」

「ほら!早く行くぞ!」

「はいよー!」

「お? いつもの調子に戻ってるな」

「ふふふ、まぁね」

「こりゃ期待できそうだぜ。ジェネックス前の和希は、イマイチ歯応えが無かったからなぁ」

「にゃにおぅ!よーし、吠え面かかせちゃる!」

「ははは、望むところだぜ!」

僕達は笑いながら、レッド寮に戻った。



今日のワイト


和「今日は勿論、魔法カード『ワン・フォー・ワン』デース!間違った、でーす!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「通常魔法(制限カード)、手札からモンスター1体を墓地へ送って発動、手札またはデッキから星1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。 ワイトのデッキ以外には、同じく星1の『カオス・ネクロマンサー』が主力のデッキや、星1のチューナー『救世竜 セイヴァー・ドラゴン』が必要な『セイヴァー・スター・ドラゴン』のデッキなど、使い様は様々です。……制限化に全僕が泣いた!」

3ワイト「「「……(泣)」」」

和「……せめて準制限に緩和して欲しいです。ではまた次回!次回も観ないと、お前はもう死んでいる……」

3ワイト「「「カタカタ(北○の拳)!?」」」



あとがき

ペガサスさんから貰ったカード……バレバレ臭いなぁ(オイ
今回は難産でした、なんせトゥーンでライフ4000はすぐに終わr
あと、前回のデッキレシピ、三沢君の方のデッキを感想を基に少し変えてみました。本当にありがとうございます。



[6474] 第三十二話 目指すべき目標
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:33
『ラーの翼神竜』のコピーカードの件から数日後、十代君と万丈目マーブル……ホワイトサンダーとのデュエルが行われた。

このデュエルに関しては、十代君にやって貰うしかなかった。

と言うのも、万丈目君は『十代君に勝ちたい』という心の隙をつかれて斎王さんに洗脳された。なので、やはり、十代君とのデュエルでないと、洗脳が解けないと思ったからだ。

そこで、僕は大徳寺先生に協力して貰い、原作通り十代君が万丈目君が捨てたおジャマ達を回収するように誘導した。

……それにしても……

「……先生、ものっそい演技下手ですね。わざとらしさ満載でしたヨ?」

『しょ、しょうがないのニャ。いきなりあんな演技をしろって言われても困るのニャ』

「……去年は僕達を騙しまくってたくせに」

『ひ、酷いのニャ~!?』

ま、そんなこんなで、万丈目君の洗脳も無事に解け、更に数日後、今に至っている。

あ、因みに、この数日の間、件のデュエルで正気に戻った万丈目君のコントロールの下に置かれた時、調子に乗って、それまで協力していた十代君を悪者扱いしたおジャマ達は、何かムカついたのでワイト達にお仕置きさせてました。



「トメさん!お代わり~!」

「俺も!俺もザウルス!」

「僕もお願いしまーす!」

「同じく!」

「はいよ!四人共ご飯大盛りだね?」

「勿論!今日も元気にデュエルだぜ!」

「その為にも、燃料補給は欠かせないドン!」

「寧ろ特盛で!ふふふ、まだまだ食べるよ!三沢君、付いてこれるかい!?」

「何を!お前の方こそ付いてこいってんだ!」

いつも通り、十代君、剣山君、僕に三沢君で大騒ぎしながら朝食を食べていると……

ガラガラガラ……

「「「「「ん?」」」」」

食堂の引き戸が開き……

「……」

黒い制服に戻った万丈目君が入ってきた。

「やっぱ、万丈目ちゃんは黒がお似合いだよ」

そう言いながら、トメさんは万丈目君の着いた席に朝食を置いた。

「……焼き海苔、ワカメの味噌汁、焦げたメザシにヒジキの煮物か。……相変わらずだな」

口ではそう言っているものの、万丈目君の顔はどこか嬉しそうだった。

「万丈目ちゃんもね」

「そうそう、白は冒険過ぎるドン。黒が無難ザウルス」

「お前がファッションチェックをするな」

「なんだドン!?」

「……と言うか三沢、何故貴様がここに居る?」

「ははは、まぁ飯は粗末だが、ここの方がイエロー寮よりも断然賑やかだからな。それに、慣れればこの粗末な飯も……」

ガン!

「粗末粗末って何度も言うんじゃないよ」

「……しーましぇん」

……トメさんが持っていたお盆が三沢君の頭にクリティカルヒットした。

「よーし!万丈目も復活した事だし、ジェネックスでレッド寮の底力を見せてやろうぜ!」

「おう!」

「ドン!」

「お前らはイエローだ。因みに丸藤翔、お前もだ」

「……」

と、翔君はさっきから何かを思い詰めた顔をして黙っていた。

「? どうしたんだ翔?」

「うん、昨日イエローの生徒が噂しているのを聞いて。……お兄さんが、フェリーから降りてきたのを見たっていうんだ」

「カイザーが?」

「ジェネックスに?」

「うおー!すげぇ!最高じゃん!益々ワクワクするぜ!」

「……いや、それで何でそんな深刻そうな顔してるのさ?」

原作では、亮さんがヘルカイザーになってしまっていたから気にするのはわかるけど、そうじゃないこの世界においては、こんなに深刻になっている理由が全然わかんないし。

「……」

翔君は黙ったままだった。

「……どうやら、丁度話題にされていたようだな」

「「「「「「え……」」」」」」

と、またもや引き戸が開き……

「久し振りだな」

「「「カイザー!?」」」

「お兄さん!?」

噂をすれば影とはよく言ったものだった。

って……あれ?

「あのー、その引き摺っているのは?」

亮さんが後ろ手に何かを引き摺っていた。

「……これか?」

と、亮さんは『ソレ』を前にほっぽりだした。

「「「「「「……」」」」」」

僕達は『ソレ』を見て絶句した。それは……

「はらほらひれはれ~……」

……良い具合に目を回している吹雪さんだった。



「……つまり、元ライバルとして、いの一番に亮さんとデュエルしたかったと?」

「ははは、見事に負けちゃったけどね」

「それで、気絶した師匠を引き摺ってここまで来たと」

「……って、火山の所からここまでずっと引き摺ってきたのかよカイザー」

「……シュールな絵だな」

「と言うか、結構な距離ドン」

僕達は場所を万丈目君の部屋に替え、カイザーとの再会を喜んでいた。

「いやー、それにしても本当に久し振りだなカイザー!」

「元気そうで何よりです!」

「皆も、元気そうだな。? 明日香はどうした?」

「それが……」

僕達はかいつまんで説明した。

「……そうか、明日香は光の結社とやらに……」

「そうなんだよ」

「……まぁ」

「これも……」

「一重に……」

「「「「「サンダーのせいで」」」」」

「な!?ま、待て!そもそもその時俺は斎王に洗脳されていて……」

「でも、万丈目君が負かした事が原因なのは確かだよね?」

「ぐっ……」

「あーあ、明日香のやつ、可哀想にな」

「本当ザウルス」

「う……」

「将に外道!」

「兄として許せないね」

「ううぅぅ……」

「これは終わったね。色々と」

「うわああぁぁぁ!!?」

『『『ア、アニキ~!』』』

万丈目君はとうとう、目から心の汗を流しながら部屋を飛び出し、おジャマ達がそれを追いかけてった。

「よっしゃ!」

「大成功ザウルス」

僕達五人、僕に十代君に剣山君に吹雪さんに三沢君はしてやったりとハイタッチをした。

「……何が大成功なんだ?」

冷や汗を垂らしながら、亮さんが聞いてきた。

「いやー、件の事で万丈目君にちっとも反省が見れないもなので、ちょっと懲らしめてやろうかと思いまして」

「まぁ、確かに万丈目の言う通り、万丈目だけのせいではないんだがな……」

「何を言うんだい三沢君。僕の妹を傷物にしたんだよ?まだ足りない位だよ」

「……皆相変わらずのようだな。特に吹雪と朝倉」

亮さんは頭痛を抑えるような格好で苦笑いをした。



その後、亮さんが皆に話があるというので、飛び出してった万丈目君を探しだし、連れ戻してきた。

「……」

……部屋の隅っこで『この世の終わりだ』と言わんばかりの雰囲気を醸しながら壁に向かって体育座りしてるけど。

『アニキ~、しっかりしてよぅ~』

『アニキのせいじゃないって。多分』

『明日香の姐さんも許してくれるって。多分』

……おジャマ達はあれで慰めてるつもりなのだろうか?

「それでカイザー、話ってなんだ?」

そんな万丈目君をスルーしながら話は進む。

「俺が、この大会に参加している理由についてだ」

「理由、ザウルス?」

「そう言えば亮、僕に勝ったのに、僕のメダルをを取ってないようだけど」

吹雪さんは気付いたように質問した。

「ああ、俺のこの大会での目的は優勝ではない。他の……二つの目的の為だ」

「二つの目的……ですか?」

……原作でのヘルカイザー亮さんも、優勝する為でなく、ただ勝利を得る為だけにジェネックスに参加していた。……まさか、同じ理由ではないだろうな……

「俺はこの大会において、鮫島校長からある依頼を受けている」

「校長からの?」

「一体なんだい?」

「それは……『究極のDのカード』を持つデュエリストを探し出す事だ」

「「「「!」」」」

「? それは何なんだい?」

あ、そうか。吹雪さんは十代君とエド君のデュエルを見てないから知らないのか。

僕達はかいつまんで説明した。

「……つまり、エド君の父親を殺した何者かに奪われたカードで、更にそのカードには『破滅の光』が宿っているって事かい?」

「多分、斎王の妹の美寿知の話だと、それで間違いなさそうだぜ。それに、あの斎王も『究極のDのカード』でおかしくなったみたいだ」

吹雪さんの確認に、十代君が頷く。……そうか、この時点ではまだ、『究極のDのカード』には『破滅の光』の本体が既に無く、その本体が斎王さんに乗り移っている事を知らないのか。

「今まで言っていなかったが、俺はかつて、鮫島校長が師範であるサイバー流に弟子入りをしていた」

「校長がカイザーの師範!?」

「……とてもそうは見えないな」

十代君と三沢君が驚きの声をあげた。まぁ、色々抜けていると言うか、詰めが甘いもんなぁ、あの人。迷宮兄弟の登場に目を輝かせたりしていたし。

「その事もあり、この件を鮫島校長に個人的に頼まれた訳だ」

「『究極のDのカード』、そいつを持ってるやつがジェネックスに参加してやがるのか」

……いや、実は参加していない。鮫島校長が見逃していたのかどうかは知らないが、『究極のDのカード』を持つデュエリスト、プロリーグチャンピオンのDDはこのジェネックスに参加していない。正直、亮さんのこれは無駄足になってしまう。

だが、僕はその事を伝える事が出来ない。いつもながら、もどかしい事だ。

「そういう事だ。光の結社の事もあるが、『究極のDのカード』の方にも十分に注意してくれ」

「おう、サンキュー、カイザー。でもよ、それを一人でやるの大変じゃねえか?」

「……確かに、これだけの参加者の中から探し出すのは骨ザウルス」

「ここは俺達も、ジェネックスを勝ち進むついでに協力した方が良さそうだな」

「……だが、危険だぞ?」

「だったら尚更、亮一人だけに任せる訳にもいかないよ」

「……そうか。すまない。恩にきる」

亮さんが頭を下げたその時だった。

バタンッ!

「ふざけるな!」

部屋のドアが勢いよく開き、誰かが怒鳴りこんできた。

「エ、エド?」

十代君の言う通り、怒鳴りこんできたのはエド君だった。

「あのカードは父さんの形見だ!そして、それを持っているやつは父さんの仇だ!そいつには僕がこの手で引導を渡す!いいか!お前たちは手出しをするんじゃない!」

エド君はそれだけ言い捨てると、踵を返して走り去ってしまった。

『…………』

僕達はただそれを呆然と見ていた。

「……やはり、こうなったか」

『え……』

亮さんの言葉に、皆が疑問の声をあげた。

「俺も、鮫島校長からエドの父親の事は聞いていた。だからこうなる事は予想できた。可能ならばエドには悟られずに行動したかったのだが……立ち聞きされていたとは、不覚だったな」

「不覚だったなって、どうすんだよカイザー?」

十代君が聞くと、亮さんは何でもないといった風に笑った。

「ならば、俺はただ『捜索をするだけ』だ」

「『探索するだけ』?なんだそりゃ?」

「……そうか!つまり、『究極のDのカード』の持ち主を見つけたとしても、手を出さずにエドに知らせてエドに決着を着けさせる、という事か」

三沢君の推察に、亮さんは頷いた。

「こうすればあいつと俺との利害が一致する。要は、俺達はエドの仇討ちの御膳立てをしてやればいい訳だ」

「なるほど」

「な、なんと言うか、悪知恵が働くようになったね、亮」

「融通が効くようになったと言って貰いたいな」

冷や汗をかく吹雪さんに亮さんはしれっと言った。

「はは、そう言えば亮さん。もう一つの理由って何ですか?」

僕は聞いてみた。

「もう一つは単純だ。修行しに来た。ただそれだけだ」

「修行……ですか?」

「ああ、俺はまだ未熟だ。この大会でのサバイバルは心身共々、修行には持ってこいだと思ってな」

『…………』

あ、今皆と考えてる事がシンパしったぽい。

曰く……

『いやいやいや、あんた十分強いって』

そんな僕達の呆れた表情に気付いた亮さんは苦笑した。

「……と言うよりは、より高みを目指すため、と言った方が正しいか」

「高み、ですか?」

「十代やお前とのデュエルの時、お前達にはまだまだ可能性が秘められていると俺は言った。だが、果たして俺にはもう強くなれる可能性が無いのか。アカデミアで『パーフェクトデュエリスト』と呼ばれ、もう自分はこれ以上強くなれないのではないか、俺はそう決め付けていた。だが、それは間違っていた」

と、亮さんは自分の服、原作でヘルカイザーが着ていたのと同じ黒い服の襟元を掴んで言った。

「俺がアカデミアの時に着ていた服をやめたのも、あの時の自分と決別する為だ。そう、俺はまだ未熟だ。エドに負けて以来、それを引き摺って連敗していたのがその証拠だ。だが、未熟故にまだ強くなれる可能性が残っている。ならば、どれだけ強くなれるのか、例え、『パーフェクトデュエリスト』なんてものが存在し得ないものだとしても、限界までそれに近づいてみたい。そう思ってな」

『…………』

拳を握り締め、そう語る亮さんに、僕達は感嘆のあまり、言葉が出なかった。

なんて気高くて、なんて貪欲なんだろう。

間違いなく、カイザーだった時や原作のヘルカイザーよりも、今の亮さんは強い……!

「お、お兄さん!」

と、沈黙を破ったのは今まで何故か黙っていた翔君だった。

「僕と……僕とデュエルして!」

「翔!?」

翔君のこのいきなりの挑戦に皆が驚いた。

「……お兄さんがプロリーグに戻ってきた時、最初は嬉しかった。でも、前よりも強くなったお兄さんを見て、今までお兄さんを目指して頑張って、少しは実力の差が縮まったと思っていたのに、またお兄さんが遠退いちゃったみたいで次第に不安になっちゃったんだ。このデュエルで、お兄さんと僕との差がどれだけ離れているのか、この1年間で僕がお兄さんに近付けたのかどうか、確かめたいんだ!」

「翔……」

「丸藤先輩……」

「……」

亮さんは自分を見つめる翔君を静かに見つめ返し……

「……」

黙ってまま立ち上がり、扉に向かった。

「お、お兄さん?」

「……やるからには、全力で来い」

「! うん!」



そして、レッド寮の前、翔君と亮さんは対峙した。

原作でのこの二人の対決、翔君とヘルカイザーのデュエルはもう少し後だった筈。

そのデュエルは、ヘルカイザーと化した亮さんが地下デュエルから持ち出した衝撃増幅装置を使った危険なデュエルだった。

勿論、ヘルカイザーではない今の亮さんがそんな物を持ち出す筈もなく、二人は既にスタンバっている。

これは、原作とはまた違った内容になりそうで面白そうだ。

「でも、あのカイザーを相手に丸藤先輩が勝てるザウルス?」

剣山君が聞いてきた。

「正直、難しいだろうね。さっきデュエルした限りでは、亮はアカデミアに居た時よりも数段強くなっていたよ」

吹雪さんの言葉に、僕は首を横に振った。

「確かに亮さんは強いよ。おまけに、現在進行形で更に強くなってる。でも、翔君だってそんな亮さんを目指して頑張ってきたんだから、満更勝ち目が無いとも言えないさ」

考えてみれば、原作ではジェネックスが始まってから翔君は他のデュエリストから逃げ回っていた。でも、こっちの世界では翔君は逃げず、逆に挑んでくる相手を返り討ちにしているのだ。これも、亮さんに触発されたのだろうか。

「……じゃあ、丸藤先輩にも勝てる見込みが?」

「うーん、そうだね、モ○ガがデスザ○ラーに勝つ位の可能性はあるんじゃない?」

「それ殆んど0ザウルス!」

「そうだぞ!翔にだって、せめてカノント○タス位は勝ち目があるぞ!」

「三沢先輩!それも大差無いドン!」

「寧ろプ○ラス?」

「いやいや、ガイ○ック位かも……」

「いい加減にゾ○ドから離れるドン!がー!ツッコミが俺一人だけじゃキツいザウルスー!」



「いくぞ、翔!」

「うん!」

「「デュエ……!」」

「ちょっと待ったぁぁ!」

『!?』

さあデュエルが始まろうとした矢先、今まで何処に行っていたのか、十代君が息を切らせながら走ってきた。

「アニキ?」

「はぁ、はぁ、翔、こいつを忘れちゃ駄目だろ」

「こ、これは……!」

十代君が翔君に渡したカード、それは翔君が封印していた『パワー・ボンド』だった。恐らく、十代君は翔君の部屋からこのカードを持ってきたのだろう。

「でも、このカードは……」

「大丈夫、お前にはもうこのカードを十分に使いこなせる実力はある。カイザーに、成長したお前の姿を見せてやれ」

「……うん!ごめんお兄さん!ちょっと待ってて!」

「……ふ、ああ」

翔君は『パワー・ボンド』を組み込むべく、デッキの調整に入った。

「くぅー、ニクい事するねー、十代君」

「へへへ、だろ?」

僕が笑いながら肘で小突くと、十代君は嬉しそうに鼻の下を掻いていた。

「……よし!」

……どうやら、翔君の調整が終わったようだ。

「よっしゃあ!最高にワクワクするデュエルを見せてくれよな!丸藤兄弟!」

「いくよ!お兄さん!」

「来い!」

「「デュエル!!」」

「僕の先攻!ドロー!『シャトル・ロイド』(守備力1200)を守備表示で召喚!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」



「おいおい、先攻を取っちゃって大丈夫なのかい?」

「……確かに、カイザーの使う『サイバー・ドラゴン』は圧倒的に後攻有利のカードだ」

吹雪さんと三沢君が翔君の出だしに不安そうな声をあげた。

だけど……

「「大丈夫(だ)」」

あ、十代君とハモった。

「カイザーがどう来るか、弟の翔が一番良くわかってる筈だ」

「うん、それに翔君だって結構な分析派。何か考えがあっての事だと思うよ」



「俺のターン、ドロー!相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、『サイバー・ドラゴン』は手札から特殊召喚する事が出来る!『サイバー・ドラゴン』(星5、攻撃力2100)を攻撃表示で特殊召喚!」

やはり、『サイバー・ドラゴン』か。

だが次の瞬間、亮さんは驚くべきカードを出してきた。

「更に俺は、『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』(攻撃力1500)を攻撃表示で召喚!」

うぇぇ!?『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』!?

「何だあのカード!?」

「『サイバー・ドラゴン』……なのか?」

「初めて見るカードザウルス」

……皆も驚いているが、僕が一番驚いているだろう。

このカード、確かに『サイバー・ドラゴン』関連のカードだが、元の世界でこのカードがOCG化されたのは原作GXの終了後。つまり、原作で亮さんはこのカードは使っていないのだ。

「……吹雪さん、さっきの亮さんとのデュエル、亮さんはあのカードを使ってました?」

「……ああ、手の内を明かしてしまったらフェアじゃないと思って黙っていたけどね。でも少なくとも、アカデミアであんなカードを使っていたのは見た事ないよ」

……やっぱりか。何で亮さんがあのカードを?



「お、お兄さん、そのカードは……?」

「……今はデュエルの最中だ。『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』の効果を発動!1ターンに1度、手札から魔法カードを相手に見せる事により、このカードのカード名はエンドフェイスまで『サイバー・ドラゴン』として扱う。俺の見せる魔法カードは、これだ」

「! 『融合』……!」

「そして、そのままこの『融合』を発動!フィールド上の『サイバー・ドラゴン』と、『サイバー・ドラゴン』と化している『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』を融合!『サイバー・ツイン・ドラゴン』(攻撃力2800)を攻撃表示で融合召喚!」

『『キシャーッッ!!』』

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』(攻撃力2800)で『シャトル・ロイド』(守備力1200)を攻撃!」

『サイバー・ツイン・ドラゴン』が口内にエネルギーを溜める。

が……

「『シャトルロイド』の効果発動!このカードが攻撃対象に選択された時、このカードをゲームから除外する事が出来る!」

翔君のモンスター、スペースシャトルを型どったモンスターは『サイバー・ツイン・ドラゴン』の攻撃が放たれる直前に、空の彼方へと飛んでいった。



「ま、丸藤先輩!何やってるドン!?」

「これじゃ、翔君のフィールドはがら空きじゃないか」

……いや、翔君のフィールド上にはリバースカードが1枚、僕の予想が正しければ恐らくあのカードは……



「……攻撃対象が存在しなくなった事により、『サイバー・ツイン・ドラゴン』のバトルステップは巻き戻される。『サイバー・ツイン・ドラゴン』(攻撃力2800)でダイレクトアタック!『エヴォリューション・ツイン・バースト』!」

『サイバー・ツイン・ドラゴン』が翔君に向けて口から光線を放った。

だが……

「永続罠発動!『ライフ・フォース』!400ポイントのライフを払う事で、プレイヤーが受ける戦闘ダメージを0にする!」

翔君の前に障壁が現れ、それを遮った。 翔残ライフ3600

「……『サイバー・ツイン・ドラゴン』は1ターンに2度攻撃が可能!『サイバー・ツイン・ドラゴン』(攻撃力2800)でダイレクトアタック!『エヴォリューション・ツイン・バースト』!」

「なら、再び永続罠『ライフ・フォース』を発動!」 翔残ライフ3200

またもや、光線が障壁に遮られた。

「……ターンエンドだ」



……やっぱり『ライフ・フォース』か。翔君もなかなかやる。

「やっぱり、先制したのはカイザーザウルス」

「いや、違うよ」

「え」

「本当に先制したのは、翔君だよ」

「そ、それって一体……?」



「僕のターン!ドロー!『シャトルロイド』の効果発動!除外したターンの次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に自分フィールド上に特殊召喚する!その時、相手ライフに1000ポイントダメージを与える!」

キィィィン……ズガガガガァン!

「くっ!?」 亮残ライフ3000

前のターン、遥か上空へと飛び立っていた『シャトルロイド』が急降下爆撃をしてきた。

「そして、モンスターを1体、裏側守備表示でセット、更にリバーススカードを1枚セットしてターンエンド!」



「ほらね」

僕は唖然としてる剣山君に言った。

……それにしても、『ライフ・フォース』と『シャトルロイド』とは、また質の悪い組合せだ。

下手に攻撃しても、『シャトルロイド』の効果が発動。そしてダメージは『ライフ・フォース』で軽減、結果として、ダメージ負けをする場合が多い。亮さんや僕みたいな単発大ダメージ型のデッキにはとても効果的だ。

さぁ、亮さんはこれに対してどう出る?



「俺のターン、ドロー!ユニオンモンスター『アーマード・サイバーン』(守備力2000)を守備表示で召喚!」

うわ、出た。原作効果が凶悪過ぎるこのカードが。

「このカードは1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に装備カード扱いとして自分のフィールド上の『サイバー』と名の付くモンスターに装備、または装備を解除して表側攻撃表示で特殊召喚する事が出来る!『サイバー・ツイン・ドラゴン』に『アーマード・サイバーン』を装備!」

『サイバー・ツイン・ドラゴン』に『アーマード・サイバーン』が装備……と言うより合体した。

カ、カッチョいい!メカゴ○ラとガ○ーダが合体してスーパーメカ○ジラになった感覚!?やっぱり合体メカは永遠の男のロマン!

「この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせる事により、フィールド上のカード1枚を破壊出来る!」

「そ、そんな!?」

このカード、OCGでは装備出来るのは『サイバー・ドラゴン』及び『サイバー・ドラゴン』を融合素材とする融合モンスターで、破壊出来るのも1ターンにモンスター1体。やっぱり、原作効果強過ぎ。

「装備された『アーマード・サイバーン』の効果を発動!『サイバー・ツイン・ドラゴン』の攻撃力を1000ポイントダウンさせ(攻撃力2800→1800)『シャトルロイド』を、更に1000ポイントダウンさせ(攻撃力1800→800)永続罠『ライフ・フォース』を破壊!『ジャッジメント・キャノン』!」

「くっ!?」

『アーマード・サイバーン』の砲口から発射された2発のエネルギー弾が『シャトルロイド』と『ライフ・フォース』を破壊した。

「そして、速効魔法『融合解除』を発動!フィールド上に表側表示で存在する融合モンスター1体を選択して融合デッキに戻し、更にに、融合デッキに戻したこのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター1組が自分の墓地に揃っていれば、この1組を自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る!」

「な!?で、でも、『サイバー・ツイン・ドラゴン』の融合素材にした『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』の『サイバー・ドラゴン』として扱う効果はさっきのエンドフェイズで切れている筈じゃ!?」

「『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』の第2の効果、墓地に存在するこのカードは『サイバー・ドラゴン』として扱う」

「そ、そんな!?」

「よって、『融合解除』による特殊召喚は可能!『サイバー・ツイン・ドラゴン』を融合デッキに戻し、墓地から『サイバー・ドラゴン』(攻撃力2100)と『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』(攻撃力1500)を攻撃表示で特殊召喚!」

巧い!これで『サイバー・ツイン・ドラゴン』に装備されていた『アーマード・サイバーン』は破壊されてしまったが、攻撃力が下がった分をチャラにした!

「『サイバー・ドラゴン』(攻撃力2100)で裏側守備表示モンスターに攻撃!『エヴォリューション・バースト』!」

「くぅぅっ!?」

『サイバー・ドラゴン』の放った光線が裏側守備表示モンスター、『ドリルロイド』(守備力1600)を撃破した。

「更に『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』(攻撃力1500)でダイレクトアタック!『エヴォリューション・バースト・ネオ』!」

「うわあぁぁぁ!?」 翔残ライフ1700



「翔!」

「こ、これがアニキと引き分け、朝倉先輩を敗ったカイザーの実力。桁違いの強さザウルス」

「いや、アカデミアに居た時よりも遥かに強くなっている。将に『ジェヌエンカイザー』。真の皇帝の名前に相応しいな」

た、確かに。……と言うか多分、今知る限りでは、この人最強なんじゃないだろうか。

と……

「……ふふふふ。そうか、そう言う事か」

「吹雪さん?」

吹雪さんが笑い出した。

「いや、さっきの亮とのデュエル。何か違和感があったんだ」

「違和感……ですか?」

「だから、強くなってるとか、そういうんじゃないのか?」

「それもある。でも、他にももっと根本的な違和感があった。亮の表情だ」

「表情、ですか?……あ」

……言われて気が付いた。亮さんの口元が、僅かに緩んでいた。

まるで……

「……本当だ。カイザー、オレとデュエルした時みたいに、すっげぇ楽しそうだな」

そう、卒業生代表デュエルで十代君とデュエルした時みたいだった。

「2年間合わないうちに、亮はカイザーと呼ばれるようになって、2つの物を失いかけていた」

「2つの物?」

「1つは『目標』、亮自身が言うように、『パーフェクトデュエリスト』と呼ばれるようになって、亮は『目標』というものを見失いかけていた。だけど、今では際限無く高みを目指している。見失いかけた『目標』を再発見したんだ」

「……もう1つは?」

「それは、十代君や和希君みたいに、デュエルを楽しむ心さ。『目標』を見失ったのと同じように、カイザーになってから、亮は前程デュエルを楽しまなくなっていた。いや、物足りなくなっていたと言った方が正しいね。でも、今の亮は昔みたいに心からデュエルを楽しんでいる。……失いかけていた物を取り戻した今の亮は、強いよ」



「俺は更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「くっ、僕のターン!ドロー!『スチームロイド』(攻撃力1800)を攻撃表示で召喚!このカードは相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする!『スチームロイド』(攻撃力1800→2300)で『サイバー・ドラゴン』(攻撃力2100)に攻撃!『スチーム・チャージアタック!』

「……」 亮残ライフ2800

『スチームロイド』の猛烈な体当たりによって、『サイバー・ドラゴン』が撃破された。

「……ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動、デッキからカードを2枚ドロー!そして『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』で『スチームロイド』に攻撃!」

「っ!」

……流石亮さん、『スチームロイド』の効果もよくわかっている。

「『スチームロイド』はこのカードは相手モンスターに攻撃された場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントダウンする(攻撃力1800→1300) そして、逆に『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』は相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする!(攻撃力1500→1800) 『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』の攻撃!『エヴォリューション・バースト・ネオ』!」

「くうぅ……」 翔残ライフ1200

「更にリバースカードを3枚セットし、ターンエンド!」

……さぁ、翔君もいよいよ追い込まれて来た。

1年前までの翔君ならば、戦意喪失してしまってもおかしくない状況だ。

でも……

「……」

その眼は、まだ死んではいない。やっぱり、翔君だって、亮さんに追い付きたくて頑張って来たんだ……!

「僕のターン!ドロー!……よし!『エクスプレスロイド』(守備力1600)を守備表示で召喚!効果発動!このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する『エクスプレスロイド』以外の『ロイド』と名のついたモンスター2体を手札に加える事が出来る!僕は墓地の『ドリルロイド』と『スチームロイド』を手札に加える!そして、魔法カード『パワー・ボンド』を発動!手札またはフィールド上から融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する!手札の『スチームロイド』『ドリルロイド』『サブマリンロイド』の3体を融合!『スーパービークロイド-ジャンボドリル』(攻撃力3000)を攻撃表示で融合召喚!そして、『パワー・ボンド』の効果により、融合召喚したモンスターは元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップ!(攻撃力3000→6000)」

おぉ!?土壇場で攻撃力6000!これはアツい!

「すっげぇ!いいぞ翔!」

「このモンスターの攻撃が通れば勝ちザウルス!」

「『スーパービークロイド-ジャンボドリル』(攻撃力6000)で『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』(攻撃力1500)に攻撃!『ビッグ・ドリル・クラッシュ』!」

ギュイィィィン!!

ドリルを高速回転させ始めた『スーパービークロイド-ジャンボドリル』が地中に潜り込んだ。

剣山君の言う通り、この攻撃が通れば翔君の勝ち……!

「速攻魔法発動!『神秘の中華なべ』!自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げ、生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する!俺は『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』を生け贄に捧げ、その攻撃力、1500ポイントのライフポイントを回復させる!」 亮残ライフ4300

? そんな事をしても、ダイレクトアタックを受けるからダメージは変わらない筈じゃ……

「……攻撃対象がいなくなった事により『スーパービークロイド-ジャンボドリル』のバトルステップは巻き戻される!『スーパービークロイド-ジャンボドリル』(攻撃力6000)でダイレクトアタック!」

ゴゴゴゴ……

地響きが鳴り、亮さんの足下の地面にヒビが入った。

「罠カード発動!『パワー・ウォール』!相手フィールド上のモンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受ける場合、自分のデッキの上からカードを任意の枚数墓地に送る事で、自分が受ける戦闘ダメージを墓地に送ったカードの枚数×100ポイント軽減する!」

な!?『パワー・ウォール』!?

「デッキからカードを27枚墓地に送り、2700ポイントダメージを軽減!」

地中から現れたドリルを、亮さんの目の前に現れた障壁が遮った。 亮残ライフ1000

……亮さんが、『パワー・ウォール』を使った……

このカード、原作ではヘルカイザーとなった亮さんが使っていたカード。原作での亮さんは発動の際、墓地に送るカードをゴミのようにバラ蒔いていたのだ。

だが勿論、今亮さんはカードをバラ蒔いてなんかはしてはいない。原作で亮さんがやっていたようにゴミのようにカードを扱っているわけではない。……と思いたい。

「『パワー・ボンド』の効果により、お前はエンドフェイズに融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを……」

「受けないよ」

「!」

「わかっていたよ!お兄さんなら、これぐらいの攻撃は受けきるって!罠カード『ピケルの魔方陣』を発動!このターンのエンドフェイズまで、このカードのコントローラーへのカードの効果によるダメージは0になる!」

おお!?巧く『パワー・ボンド』のデメリットを消した!

「……ふ」

と、亮さんは自分に不利な事が起きた筈なのに嬉しそうに笑った。

……まぁ、それもそうか。今の場面、亮さんが翔君に『パワー・ボンド』の封印を強要させた場面とよく似ている。

子供の頃、翔君はゴリ介という苛めっ子とのデュエルにおいて、相手のフィールドにリバースカードが在るのにも関わらず、無警戒でこのカードを使おうとし、亮さんに止められ、デュエルを中止させられた事があったのだ。

そのリバースカードは永続罠カード『六芒星の呪縛』、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、選択した相手モンスターの攻撃と表示形式の変更を封じるカード。もし、亮さんが止めに入っていなければ、攻撃出来ず、『パワー・ボンド』のデメリットのダメージを受けるのを只待つのみとなってしまっていた。

当時の翔君をまだ未熟と思った亮さんは、『パワー・ボンド』の封印を命じたのだ。

これと似ている今の場面において、翔君は恰も、自分の成長を見せつけるかのように『パワー・ボンド』のデメリットを回避してみせたのだ。

……やっぱり、兄として弟の成長が嬉しいんだろう。

「更に、リバースカードを1枚セットし、ターンエンド!」

……何にせよ、亮さんのデッキは残り3枚。果たして、どんな決着が待っているんだろう。

「翔」

「え……」

と、亮さんが翔君に話し掛けた。

「確かにお前は強くなった。今のお前ならば、『パワー・ボンド』も使いこなせるだろう」

「お兄さん……」

「……だが、お前は、進むべき道を間違っている」

「え……」

「俺のターン!ドロー!罠カード『無謀な欲張り』を発動!この後、2回ドローフェイズをスキップする代わりに、デッキからカードを2枚ドローする!」

! これで亮さんのデッキは0!ドローフェイズを2回スキップするからまだ次のターンのデッキ切れの負けは無いが、実質、亮さんにはあの手札3枚とリバースカード1枚しか残っていない。

おまけに、翔君のフィールドのモンスター、『スーパービークロイド-ジャンボドリル』は守備表示モンスターを攻撃しても、攻撃力が相手モンスターの守備力を上回った分相手にダメージを与える貫通能力持ちのモンスター、次の亮さんのターンが回ってくる可能性はほぼ0……!

泣いても笑っても、このターンで勝敗が決まる……!

「俺は手札から魔法カード『パワー・ボンド』を発動!」

! 手札が2枚しかないのに『パワー・ボンド』!?

……! いや、このパターンは僕を倒した時の……!

「更に、リバースカードオープン!速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』!ライフポイントを半分を支払い、自分のフィールドか墓地から融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外する事により、機械族の融合モンスターを融合召喚するときに必要なモンスターをこのカードを発動することで代用できる!墓地から『サイバー・ドラゴン』3体をゲームから除外!『サイバー・エンド・ドラゴン』(攻撃力4000)を攻撃表示で融合召喚!」 亮残ライフ500

『『『キシャー!!!』』』

「っ!『サイバー・エンド』……!」

「『パワー・ボンド』の効果により、融合召喚したモンスターは元々の攻撃力分、攻撃力がアップする!(攻撃力4000→8000)」

こ、こっちも土壇場で攻撃力8000の『サイバー・エンド・ドラゴン』……!

……翔君の残りライフは1200、攻撃力8000で貫通能力持ちの『サイバー・エンド・ドラゴン』ならば、『スーパービークロイド-ジャンボドリル』(攻撃力6000)『エクスプレスロイド』(守備力1600)のどちらを攻撃しても翔君の残りライフは0……!

「『サイバー・エンド・ドラゴン』(攻撃力8000)で『エクスプレスロイド』(守備力1600)を攻撃!『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

決着か!?

「なら僕も、速攻魔法『神秘の中華なべ』を発動!『スーパービークロイド-ジャンボドリル』を生け贄に、その攻撃力、6000ポイントのライフポイントを回復させる!」 翔残ライフ7200

おぉ!?『パワー・ボンド』だけじゃなく、ここまで被るとは……!

ォォォォ……ズガァァァン!

「くぅぅ……」 翔残ライフ800

あ、あの攻撃を受けきっちゃったよ……

亮さんが速攻魔法『リミッター解除』で『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力を更に倍にしてくるとも思えたが、それならば『スーパービークロイド-ジャンボドリル』の方を攻撃していた可能性が高かった。翔君が『ライフ・フォース』なんかでダメージを軽減した際なんかも考えて、攻撃力の高い『スーパービークロイド-ジャンボドリル』の方を破壊するのがセオリーだ。

だが、亮さんは『エクスプレスロイド』を攻撃した。それは、逆に翔君が『リミッター解除』を発動させる事を警戒していたからだろう。それはつまり、『エクスプレスロイド』を攻撃対象にした時点で、亮さんの手札に『リミッター解除』は無かった事を表している……!

今、亮さんの残りの手札は0!エンドフェイズに『パワー・ボンド』のダメージを受けて翔君の勝ち……

……!? 『手札が0』!?何でだ!?このターン、亮さんは『無謀な欲張り』で手札を増やして手札は3枚。手札の『パワー・ボンド』とリバースカードの『サイバネティック・フュージョン・サポート』を使っても、まだ手札は2枚残っていた筈……

僕が疑問に思っていると……

「な、なんで……?」

翔君が震えた声を上げた。

そして、『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃によって起こった砂ぼこりが晴れ……

『サイバー・エンド・ドラゴン』が『2体』姿を現した。

「『サイバー・エンド』が2体!?」

「どうなってるザウルス!?」

僕達ギャラリーも、驚くばかりだった。

やがて、亮さんのフィールド上も、全て明らかになり、その疑問の答えがあった。

「『瞬間融合』と、もう1枚の『サイバネティック・フュージョン・サポート』……!」

翔君の言う通り、2枚の速攻魔法が亮さんのフィールドで発動されていた。『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃の後、まだバトルフェイズ中であるうちに手札から発動させたのか。だから手札が0に……!

「速攻魔法『瞬間融合』、自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚、この効果で融合召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズ時にデッキに戻る。そして2枚目の速攻魔法『サイバネティック・フュージョン・サポート』。このコンボにより、2体目の『サイバー・エンド・ドラゴン』(攻撃力4000)を融合召喚した」 亮残ライフ250

「で、でも、『サイバネティック・フュージョン・サポート』を使う為にはフィールドか墓地から融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外しなければならない。1枚目の『サイバネティック・フュージョン・サポート』で、もうお兄さんの墓地には『サイバー・ドラゴン』は残ってない筈……!」

「このデュエルの最初から最後までを、よく思い出してみろ」

「え…… ! そうか、『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』!」

「そうだ、『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』は墓地では『サイバー・ドラゴン』として扱う。墓地の『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』を3体ゲームから除外し、『サイバネティック・フュージョン・サポート』を『サイバー・ドラゴン』3体分の代用にした」

そうか!『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』を投入して、『サイバネティック・フュージョン・サポート』での墓地からの融合の幅が広がったからの『パワー・ウォール』による墓地肥やしか!

「……翔、これが今の俺とお前の差だ」

「え……」

と、亮さんが再び翔君に話し掛けた。

「何故、俺に『追い付こう』とする?」

「え……何故ってそんなの、お兄さんは僕の目標だから……」

「それが間違っていると言っている」

「え……」

「俺に『追い付こう』と、お前が成長しているのはわかった。だが、その間に、俺もより高みを目指している」

「……」

「この俺との差を縮めたいのであれば、俺に『追い付こう』と思うな。俺を『越える』事を胸に抱け!そして、そのまま俺を越えてみせろ!」

「お兄さん……」

「兄に出来て、弟に出来ない道理はない筈だ」

「……うん!」

「……『サイバー・エンド・ドラゴン』(攻撃力4000)でプレイヤーにダイレクトアタック!『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

「……」 翔残ライフ0



「……行っちゃうの?」

「ああ」

デュエルが終わった後、亮さんは修行の為、島を廻ると言った。

十代君や僕は、さっきのデュエルに触発されて亮さんとやりたがったが……

「お前達とは、納得のいくまで腕を上げてからまたデュエルをしたい」

と亮さんが言うのでこの場は引き下がった。

「それではな。何か『究極のDのカード』について進展があったら連絡をくれ」

「ああ」

「わかりました」

「翔」

「え……」

と、去り際、亮さんは翔君の頭にポンと手を置き……

「頑張れよ」

「! うん!」



こうして、亮さんは去っていった。

「くぅ~!流っ石カイザー!最高に格好良かったぜ!」

「将に皇帝!イタリア語ならレッ!」

「おう!レッ!レッ!レッ!」

「「「レレレのレッ!レレレのレッ!レッ!レッ!」」」

「……アニキ達、イタリア語でレッは皇帝じゃなくて王様ザウルス」

興奮覚め止まない僕と十代君と三沢君はずっと騒いでいた。

「……」

そんな中、翔君は一人、ずっと亮さんが去って行った方を見つめていた。

その背中が、デュエルする前よりも少し大きくなったように見えた。



……そう言えば何か忘れてるような……ま、いいか。



『万丈目のアニキ~、いい加減立ち直ってよぅ~』

「……」

『『『カタカタカタ……』』』

『『『!? ぎゃー!?もうお仕置きは勘弁してー!?』』』



今日のワイト(十代君 対 歌舞伎デュエリスト カブキッド戦時)

「あれ?クロノス先生とナポレオン教頭だ」

「いつの間に……と言うか、シートに座ってお茶飲みながら何やってるドン、あの人達」

「学園内テレビ中継もいいでアルが……」

「やっぱり生が一番なノーネ。後でサイン貰うノーネ」

「我々カブキッドのファンでアール」

「そうなノーネ」

「うーん、僕は狂言の方が好きなんですけどねー、ムシャムシャ……」

「ってシニョール和希!?いつの間に!?」

「そ、それはワガハイ秘蔵のお茶受けなのでアール!返すのでアール!」

「……あの人達、デュエル真面目に見る気あるんスかね?」

「……多分無いドン」



後書き

しょ、翔君のデッキがイマイチ掴めない!モンスターはロイド一色なのはわかってるんですけど……
次回は最近絡みがなかったあの人との絡みも盛り込みたいと思います。



[6474] 第三十三話 島巡りツアー0泊0日の旅
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:42a7b41e
Date: 2011/06/22 01:33
それは、単純ながらも奥深いゲーム。

相手の手の内を読み、何を狙っているかを見透かす洞察力が必要となってくる。

そして、如何にして、自分のライフを失わずに相手のライフを削っていくか、将に紙一重と言うに相応しい攻防が続く。

……そう、そのゲームの名は……



タンッ!

「ロン!ふふふ、万丈目君、それだよ!」

「何ぃ!?オタ風の西の地獄待ち……だと!?」

「立直、一発、一通、ドラ1、裏ドラが……おお!?頭の西でドラ3つ!」

「何だとぉ!?」

「あーあ、親っパネ直撃だな」

「万丈目先輩、トビザウルス」

「くそ!白を暗カンなどしなければ……!」

「雀卓囲ってないで早く行こうよ!」



ジェネックスが始まってから今日で丁度10日目になる。

参加者が半分程に絞られた中、僕達は勝ち残っていた。

今日は、ジェネックス中の今はバラバラに行動する事が結構多い中、皆で島を廻り、どんなデュエリスト達が残っているか見て廻ろう、という事になった。

なったのだが……

「……何で居ないかな、三沢君は」

そう、三沢君唯一人だけが居なかった。

「一昨日辺りから、また部屋に籠ってたよ?1日1回のデュエルは消化してるみたいだけど」

「昨日は、ドアをノックしても、『今いい所だから邪魔しないでくれ!』って言われたドン」

そして、今さっき、訪ねてみたら既に留守だった。

三沢君、何やってるんだろう?

「……どうやら、噂をすれば影、だな。見ろ」

「え……」

そんなこんなで、森の中を歩いていると、万丈目君が森が開けた所を顎で差した。

果たして、そこには三沢君が居た。どうやら、デュエル中のようだ。

相手は……光の結社の生徒だ。おいおい、負けたらヤバいじゃん。

残りライフは……三沢君が無傷の4000、対する相手は1000と、三沢君が勝っている。

だが……

「……ヤバいな、三沢」

「え?でもライフポイントは勝ってるっスよ?」

「馬鹿、相手のフィールドをよく見てみろ」

「え……あっ!」

そう、万丈目君が言う通り、相手のフィールド上には永続魔法『波動キャノン』、自分のメインフェイズ時にフィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送る事でこのカードの発動後に経過した自分のスタンバイフェイズの数×1000ポイントのダメージを与える超強力バーンカード、があった。

更に、相手のフィールド上には他に、ライフを3000払った状態の永続罠『光の護封壁』、発動時1000の倍数のライフポイントを払い、払った数値以下の攻撃力を持つ相手モンスターの攻撃を禁止するロックカード、まである。

一方、三沢君のフィールド上には攻撃表示『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)とリバースカードが1枚、早いとこ勝負を仕掛けないとヤバいぞ。

「くくく、次の俺のターンのスタンバイフェイズで『波動キャノン』が発動してから4回目のスタンバイフェイズだ!」

って、もう既にヤバかったー!?

「次の俺のターンのメインフェイズ、『波動キャノン』を破壊すればお前はそのスタンバイフェイズ数×1000、4000のダメージを受け、ライフは0、俺の勝ちだ」

「……」

相手の罵声を浴びても、三沢君は目を瞑って黙っていた。

「ははは、ブルっちまって声も出ねえか?わかってんだろうな?光の結社とのデュエルに敗れた場合、そいつは光の結社に入らなければならない。もっとも、お前みたいな雑魚、光の結社に入れた所で何の役に立ちもしなさそうだがな!はははははは!」

「……」

「ははは、おい!何か言ってみろよ!負け犬!」

「あの野郎、好き勝手言いやがって……!」

相手の暴言に、腹を立てた十代君が進み出ようとしたその時……

「喝っ!」

『!?』

突如、目をくわっと見開いた三沢君が上げた大声に、その場に居た全員が驚いた。

「ふ、心頭滅却すればピンチもまた涼し!そんなちゃちな罵声等で、心を乱す今の俺ではない!俺のターン!ドロー!儀式魔法『ドリアードの祈り』を発動!フィールドか手札から、星が3以上になるようカードを生け贄に捧げ、手札から儀式モンスター『精霊術師(エレメンタルマスター)ドリアード』を特殊召喚する!手札から『リトマスの死の剣士』(星8)を生け贄に捧げ、手札から『精霊術師ドリアード』(星3、攻撃力1200)を攻撃表示で特殊召喚!」

! 『精霊術師ドリアード』とリバースカードが1枚、って事は……!

「ははははは、なんだ、わざわざそんな貧弱なモンスターを儀式魔法で呼び出したのか、でも、雑魚デュエリストにはそんな雑魚モンスターがお似合いだぜ」

「更に、リバースカード発動!」

「何!?」

「罠カード『風林火山』!風・水・炎・地属性モンスターが全てフィールド上に表側表示で存在する時に発動する事が出来る!相手フィールド上モンスターを全て破壊する。相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。相手の手札を2枚ランダムに捨てる。カードを2枚ドローする。この4つの効果の中から1つを選択して適用する!」

「な!?ふざけんな!フィールド上にはお前の『ウォーター・ドラゴン』と『精霊術師ドリアード』しか居ねぇ!風・水・炎・地属性なんて揃ってねぇじゃねぇか!」

「ふ、生憎だな!『精霊術師ドリアード』は光属性だが、このカードの属性は風・水・炎・地属性としても扱う!このモンスター1体で、『風林火山』の発動条件は満たしている!」

「ば、ばかな!?」

「いくぞ!『風林火山』の2番目の効果発動!相手の魔法・罠カードを全て破壊する!はぁぁぁぁ……!」

と、三沢君の目に炎が燃えた……ような気がした。

「風よりも速く!林よりも静かに!炎よりも熱く!山よりも高くにぃ!」

……目の錯覚かな、三沢君が金色に輝いて見えるんだけど?あと、どっかからBGMで『お前の鉄槌に釘を打て』が聴こえるのも気のせい?

と、三沢君は何を考えたのか、相手に向かって猛スピードで走り出した。

そして……

「唸れ!俺の魂よ!この混沌とした世界に!正義の!鉄槌をぉぉぉぉ!」

ズドォォォン!!

『えぇぇぇぇ!?』

なんと、『波動キャノン』のソリッドビジョン目掛け、思いっきり殴り付けた。

ズガァァン!!

『波動キャノン』は爆散し、それに誘爆する形で『光の護封壁』も爆散した。

三沢君は軽快なバックステップをし、元の位置に戻った。

……つーか、『精霊術師ドリアード』が何にもしてないんだけど?『風林火山』の発動トリガーだったのに。因みに、その『精霊術師ドリアード』は三沢君の勢いに軽くドン引きしてました。

「これでトドメだ!『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)でダイレクトアタック!『アクア・パニッシャー』!」

「ぐわあぁぁぁぁ!?」 敵残ライフ0

「三沢!」

「お、なんだ見てたのか」

気絶した相手からメダルを剥ぎ取っている所で、漸く三沢君は僕達に気が付いた。

「さっきの、すっげぇコンボだったな!三沢!」

「色々な意味でな」

万丈目君のツッコミに、僕、翔君、剣山君の三人が頷く。

「と言うか、昨日1日籠ってたのは、このコンボを考えてたドン?」

「まぁな、一昨日の夕方頃、不意に、修学旅行で和希とゲームセンターに行ったのを思い出してな」

「……修学旅行なのに?」

「だって、クロノス教諭が『自由』行動だって言ってたじゃん」

「なんて非常識な奴」

「それで、その時にやったゲームの1つがどうも気になってな」

「まさか?」

「デュエルのヒントにする為に、1日中家庭用のそれをやってた」

……よく見ると、目に炎が灯っているように見えたのは、ただ真っ赤に充血していただけだった。

「……因みにソフトは?」

「BL○Z BLUE」

やっぱりか!あの某熱血忍者か!

「……最早完全なる引き籠りだな」

……万丈目君のツッコミに、誰も反論出来なかった



「……ちっ、嫌な顔触れが集まってるわね」

と、聞き覚えのある声がした。

「お、お前は!?」

『カミューラ!?』

そう、カミューラさんだった。

「? アニキ、誰ドン?」

「去年、『三幻魔』を封印していた『七星門』の鍵を狙いに来た、『セブンスターズ』の一人だ!」

「貴様!何かまた企んでいるのか!?」

十代君、万丈目君、三沢君、翔君の四人は警戒心を剥き出しにしていたが……

「はい、ストップ」

『な!?』

僕は四人の前に立ち、皆を制止した。

「彼女は今は敵じゃないよ」

「……ふん、味方でも無いわよ」

「……どういう事だ?」

「まー、つまり、彼女にも『究極のDのカード』探しを手伝って貰ってる訳」

『はぁ?』

僕は皆に説明した。亮さんが『究極のDのカード』を探しているのを知り、僕が、コウモリを使った探索能力に長けたカミューラさんに協力して貰う事を思い付いた事を。そして、鮫島校長に頼んで、その許可を得た事。

「……大丈夫なのか?信用しても」

「だって、『究極のDのカード』に宿っている『破滅の光』はこの世界を滅ぼそうとしてるんでしょ?だったら、カミューラさんだって協力せざるを得ないよ」

「そういう事、不本意だけど、あなた達とは協力関係って訳。ただし、味方になった覚えは無いわ。その事を覚えておきなさい」

そう言い放つと、カミューラさんは不機嫌そうに去っていった。

「……それにしても、よくあいつが協力する気になったな」

「確かにな、奴は影丸に利用され、恐らく人間を信用出来なくなったんじゃないのか?」

「おー、三沢君ビンゴ、説得するのに苦労したんだよー」

『究極のDのカード』の持ち主、DDは原作ではジェネックスには参加しなかったものの、万が一の時も考え、彼女に協力して貰いたかった。

だが、カミューラさんは体の傷は癒えても、心の傷は癒えてなかった。その為、極度の人間不信になっており、最初はこの用件を受けようとはしなかった。

そこで、僕は信用して貰う為、カミューラさんに僕自身の事、他の世界から来た事を話したのだ。

勿論、最初はカミューラさんは信じてなかったが、僕が原作の十代君対カミューラさんのデュエル中にあった彼女の回想シーン、彼女の目の前で同族の少女、彼女曰く妹さんらしい、が胸に杭を打たれ、消滅してしまったシーンの事を話すと納得してくれた。

その上で、彼女に危険性が極めて低い事を説明し、了承して貰おうとした。

「……1つ聞かせて頂戴」

「? 何ですか?」

その折り、こんな質問をされた。

「あなたの話が本当なら、どうして私も助けるような真似をしたの?あなたが何もせず、あの坊や、遊城十代に任せていたら、私は『三幻魔』の餌になってた訳でしょ?」

「え?うーん、どうしてって言われても……助けたかったから助けただけ、としか言い様が無いデスヨ?」

「はぁ?そんな何の得にもならない理由で助けた訳?」

「むぅ、得ならありますよ?やりたい事をやったっていう自己満足デスヨ」

「……」

カミューラさんは呆気に取られた表情で僕を見て……

「……わかったわ。その用件、受けるわ」

「え……」

あっさりと受けてくれた。

「……借りを作ったのに、それを返さないなんてヴァンパイア一族の沽券に関わるわ。面倒臭いけど」

こうして、カミューラさんは協力してくれる事になった。

因みに、報酬として、カミューラさんのプロデュエリスト入りの推薦をする事となった。

プロとなり、エド君のように世界を廻れば、もしかしたらヴァンパイア一族の生き残りと出会えるかもしれない。そう思ったからだ。

……だがここに来て、問題なのは翔君だ。カミューラさんは亮さんを卑怯な手を使って倒し、人形にしてしまった。彼が納得するかどうか……

「……翔君、複雑だとは思うけど……」

「……大丈夫っスよ和希君」

「え……」

「『罪を憎んで人を憎まず』っス。あの人だって、自分の一族の復活の為に形振り構っていられなかったのは、僕だってわかってるっス」

おー、翔君偉い!

「翔君、亮さんとのデュエルで、なんか少し逞しくなったね」

「翔が二代目のカイザーって呼ばれるようになるのも、そう遠くないかも知れないな」

「そだね」

僕と十代君は翔君に聞こえないように、嬉しそうにそう話した。



その後、三沢君も僕達に加わり、島を廻る事にした。

そして、火山の麓付近に差し掛かった所だった。

「ん?おい」

「アニキ?どうしたっスか?」

「あれ、カイザーじゃねぇか?」

十代君の指差した方に、果たして亮さんが居た。どうやら、亮さんもデュエル中のようだ。

えーと相手は……って……

「ひ、ひひひひひひ、壊す壊す壊す壊す壊す!」

「あの人は……」

「プロデュエリストのエックス!?」

そう、僕が以前倒した、デッキ破壊デッキのエックスさんだった。

ただ、あの時と違い、スーツは薄汚れ、セットされていた髪も乱れ、眼鏡はズリ落ちていた。そして、気が違ったかのような高笑いをケタケタ上げていた。

「どうやら奴は、お前に負けてからはそのショックで、プロリーグで連戦連敗だそうだ」

「その結果、奴はランクを大きく下げた挙げ句、やがてプロリーグから姿を消した」

……万丈目君と三沢君の話を聞き、僕は冷や汗を流し、近くの木の影に隠れ込んだ。見つかったらヤバそうだ。

「ひゃひゃひゃひゃ、すすす既にあなたのデデデデデッキは残りいいい1枚ぃぃぃ!壊れろ壊れろ壊れろ壊れろぉぉぉ!」

こ、怖いよぅ(汗

……デュエルは、残りライフが亮は4000、エックスさんが2000、だが亮さんのフィールドにはモンスターが居らず、リバースカードが1枚のみ、そしてエックスさんの言う通り、もう亮さんのデッキは残り1枚のみ。

片や、エックスさんのフィールドには『トラップ・スルーザー』(攻撃力500)、このカードが表側攻撃表示でフィールド上に存在する限り、コントローラーは永続罠カードの効果を受けない、と、永続罠『モンスター・レジスター』、発動時1000ポイントのライフを払い、モンスターが召喚・特殊召喚されたとき、そのコントローラーはそのモンスターのレベルと同じ数だけデッキの上からカードを墓地に送るデッキ破壊カード、の相変わらずのコンボがある。恐らくこれで亮さんのデッキを破壊したのだろう。更に、リバースカードも1枚セットされている。

だが、そんなピンチの中、亮さんは哀れむような目でエックスさんを見ていた。

「……あなたは、それでもプロデュエリストなのか?」

「ひゃ?」

「あなたはカードを、自分の快楽、相手のデッキを破壊する為の道具としか見ていない!それでも、プロデュエリストなのかと聞いている!俺のターン!ドロー!魔法カード『融合破棄』を発動!手札の『融合』カード1枚と融合デッキに存在する融合モンスター1体を墓地に送り、その融合モンスターに記されている融合素材モンスター1体を手札から特殊召喚する!この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズ時に墓地へ送られる!俺は手札から『融合』を、更に融合デッキから『サイバー・エンド・ドラゴン』を墓地に送り、手札から『サイバー・ドラゴン』(攻撃力2100)を特殊召喚!」

!? おかしい、こんな事をしなくても『サイバードラゴン』は、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、手札から特殊召喚出来る筈だ。なのに何故……

「更に永続罠『輪廻独断』を発動!種族を1つ選択し、このカードが存在する限り、自分の墓地のモンスターカードの種族は全て、その選択した種族となる!俺はドラゴン族を選択!」

! まさか!?

「更に、魔法カード『オーバーロード・フュージョン』を発動!自分フィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、闇属性・機械族の融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する!墓地の『サイバー・ダーク・ホーン』『サイバー・ダーク・エッジ』『サイバー・ダーク・キール』をゲームから除外し、『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』(攻撃力1000)を攻撃表示で融合召喚!」

「『サイバー・ダーク』だって?」

「聞いたこと無いカードザウルス」

「お兄さん!?」

りょ、亮さん、何でそのカードを……?

『『『ヴァァァアァァ!!』』』

白を基調とした機械のドラゴン、『サイバー・ドラゴン』とは逆の、黒を基調とした機械のドラゴンが姿を表した。

「『サイバー・ダーク・ドラゴン』の効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択してこのカードに装備カード扱いとして装備し、その攻撃力分だけこのカードの攻撃力をアップする!永続罠『輪廻独断』でドラゴン族となった『サイバー・エンド・ドラゴン』(攻撃力4000)を装備!攻撃力4000ポイントアップ!(攻撃力1000→5000)」

『サイバー・ダーク・ドラゴン』が『サイバー・エンド・ドラゴン』に宿り木のように絡み付いた。

「更に、『サイバー・ダーク・ドラゴン』は自分の墓地のモンスターカード1枚につき、攻撃力が100ポイントアップする!俺の墓地のモンスターカードは全部で18枚!よって、更に攻撃力1800ポイントアップ!(攻撃力5000→6800)」

「こここ攻撃力6800ぅ!?」

「更に、魔法カード『エヴォリューション・バースト』を発動!自分フィールド上に『サイバー・ドラゴン』が表側表示で存在する時、このターンの『サイバー・ドラゴン』の攻撃を封じる代わりに、相手フィールド上のカード1枚を破壊する!リバースカードを破壊!」

『サイバー・ドラゴン』が放ったビームがエックスさんのリバースカード、カウンター罠『攻撃の無力化』を破壊した。

「ひ、ひぃぃぃぃ!?」

「己の快楽の為だけに、墓地に送られたカード達の痛みを知れ!『サイバー・ダーク・ドラゴン』(攻撃力6800)で『トラップ・スルーザー』(攻撃力500)を攻撃!『フル・ダークネス・バースト』ォ!」

「ぴぎゃあぁぁぁぁぁ!?」 敵残ライフ0



「カードも相手もリスペクトしないあなたに、プロデュエリストの資格はない」

泡を吹いて気絶したエックスさんに、亮さんはそう言い放った。

「カイザー!」

「お兄さん!」

「む……お前達か」

「……さっきのカードは一体?」

翔君は早速、『サイバー・ダーク』の事を聞いた。

「……これは、サイバー流裏デッキのカードだ」

「サイバー流裏デッキ?」

「我がサイバー流のリスペクトデュエルの理念に反した禁断のデッキとされ、誕生と共に初代師範が封印した物だ」

「……どうして、そんなカードを?」

翔君が少し疑るように亮さんに聞いた。

……僕も知りたい。リスペクトデュエルを捨てておらず、ヘルカイザーでは無い亮さんが、どうしてこのカードを?

「……いいだろう。俺がこのカードを手に入れた理由、そして手に入れた経緯を話そう」



SIDE OUT



SIDE 亮 2WEEKS AGO



『かの地にて待つ』

俺は鮫島校長、いや、鮫島師範に、遥か、雪山の頂上にあるサイバー流道場の本堂まで呼び出された。

「待っていたよ。亮」

「お久し振りです。鮫島師範」

昔と変わらない、師に対する礼をすると、師範は嬉しそうに目を細めた。

「プロリーグでの活躍は聞いているよ。……懐かしいな。この本堂で、幼い君は、我がサイバー流免許皆伝の証、『サイバー・エンド・ドラゴン』を若冠9歳で手にする迄、文字通り血と汗と涙を流して修行に明け暮れていた。その君が、こうしてプロリーグで立派に活躍してくれている。師範として鼻が高い事この上ない。……と、昔の話はこのくらいにしておこうか。さて、今日、お前に来て貰ったのはだな……」

そして、俺は『究極のDのカード』を探す事を聞いた。

「……と言う訳だ」

「……わかりました。他ならぬ師範の頼み、慎んでその役、受けましょう」

「おぉ、本当かね」

「ただ、俺からも1つ頼みがあります」

「ふむ、出来る範囲ならば。言ってみなさい」

「では……我がサイバー流に伝わるというもう1つのデッキ、サイバー流裏デッキを俺に授けて下さい」

「な!?う、裏デッキを!?亮!あれがどんな物なのか知っているのか!?」

「はい」

「……理由を聞かせてくれ。何故今になって、あのリスペクトデュエルから一番遠いデッキを求める?」

厳しい目をする師範に、俺は言った。

「果たして、本当に裏デッキはリスペクトデュエルの理念に反するのでしょうか?」

「何……?」

「俺は、最初朝倉のデュエルを見た時、不思議に思いました。あいつは自分から進んでモンスターカードを墓地に送っている。しかし、あいつからは、俺に勝るとも劣らないカードに対するリスペクトが感じられたのです」

「……」

「そして、昔の俺の殻を破れた今、俺の考えは変わりました。どんなカードでも、リスペクトデュエルに繋がる物を持っている。それを繋げられるかどうかは、デュエリストの腕次第なのではないか、と」

「亮……」

「お願いします!師範!俺は、もっとデュエリストとして、高みを目指したいのです!」

「……」

師範は目を瞑り、暫く考えた後……

「亮、構えなさい」

師範は、デュエルディスクを構えた。

「裏デッキを使いたいのなら、裏デッキの暴虐の力に溺れない精神、それを私に証明して見せるんだ。亮」

「……はい!」



デュエルの結果は、俺の勝利に終わった。……鮫島師範が速攻魔法『スクラップ・フュージョン』、融合モンスターカードによって決められたモンスターを相手の墓地から選択してゲームから除外し、その融合モンスター1体を、自分または相手の融合デッキから融合召喚するカード、によって融合召喚した俺の『サイバー・エンド・ドラゴン』を、同じく俺も『スクラップ・フュージョン』によって融合召喚した『サイバー・オーガ2』の攻撃で、自らの手で破壊する事によって……

「うぅ……亮、何故、『サイバー・エンド』のコントロールを取り戻そうとしなかった?」

最後のターン、俺の残りライフは2400、手札は魔法カード『無情の抹殺』、自分の場のモンスター1体をランダムに選択して墓地に送り、相手の手札1枚をランダムに選択して墓地に送るカード、のみの1枚、フィールドには『サイバー・バリア・ドラゴン』(攻撃力800)とリバースカードが1枚だった。

対して、鮫島師範の残りライフは無傷の4000、手札は1枚、フィールドには『スクラップ・フュージョン』で融合召喚した俺の『サイバー・エンド』(攻撃力4000)と『サイバー・エスパー』(攻撃力1200)、そしてリバースカードは1枚。

そして最後のターン、俺は魔法カード『強欲な壺』をドローし、カードを2枚ドロー。ドローした2枚のカードは魔法カード『強制転移』、お互いのプレイヤーは自分の場のモンスターを1体ずつ選択し、そのモンスターのコントロールを入れ替えるカード、と速攻魔法『リミッター解除』、このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にし、この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊するカード、だった。

この時点で、『リミッター解除』を発動して『サイバー・バリア・ドラゴン』(攻撃力800)の攻撃力を倍加、『サイバー・エスパー』(攻撃力1200)を戦闘破壊し、『強制転移』を発動させれば、確かに『サイバー・エンド』のコントロールを俺に移す事が出来た。

だが、俺はそれをせず、セットしていた罠カード『ロスト・プライド』、手札の魔法カード1枚を墓地に送り、相手の墓地にある魔法カード1枚を手札に加え、その魔法カードをプレイしたとき、自分は1000ポイントのダメージを受けるカード、を発動。手札の『強制転移』を墓地に送り、鮫島師範の墓地の『スクラップ・フュージョン』を手札に加え、更に『無情の抹殺』を発動。 自分フィールド上の『サイバー・バリア・ドラゴン』を墓地に送り、鮫島師範の1枚の手札、前のターンに魔法カード『死者転生』で墓地から手札に加えた『サイバー・オーガ』を墓地に送らせ、『スクラップ・フュージョン』を発動、前のターンに破壊していた『サイバー・オーガ』と今墓地に送らせた『サイバー・オーガ』を師範の墓地から除外し、『サイバー・オーガ2』(攻撃力2600)を融合召喚。『サイバー・エンド』(攻撃力4000)に攻撃し、『サイバー・オーガ2』の自身の効果、このカードが戦闘するとき、相手モンスターの攻撃力の半分の数値だけこのカードの攻撃力をアップさせる、により、攻撃力を4600に上げ、更にその時点で『リミッター解除』を発動。攻撃力9200となり『サイバー・エンド』を破壊。師範のライフを0にした。

「亮、お前、リスペクトデュエルを……?」

「……いいえ、違います。俺は『サイバー・エンド』を、そしてあなたをリスペクトしていたからこそ、今の戦い方を選びました」

「な……に?」

「あなたは、『サイバー・エスパー』の効果で、俺のドローしたカードを確認した。だが、あなたは、俺が『強制転移』をドローしても、眉一つ動かさなかった。それは、俺に『サイバー・エンド』のコントロールを奪われた際の対策が既にあったからでは?差し詰め、師範のあのリバースカードは、自分の場のモンスター1体のコントロールが相手に奪われた時、そのモンスターを破壊して、その攻撃力分のダメージを相手に与える罠カード、『トロイボム』辺りではなかったですか?」

「! そ、その通りだ」

「……確かに、『サイバー・エンド』は俺の大切なカードです。そして、だからこそ、このカードのせいで負けたりなどしたくはなかった。ならば、いっそこの手で全力で打ち砕いてやる。……『サイバー・エンド』も、それを望んでいた筈」

……正直、『サイバー・エンド』に対する懺悔の気持ちが全く無いと言えば嘘になる。だがあれが、あの場面で俺が『サイバー・エンド』に対して出来た一番のリスペクトだ。後悔はしない。

「……ふ、見事だ。リスペクトデュエルの基本にして極意、『相手の心となって、自分を見ること』。お前はそれを極めたようだ」

と、師範はよろめきながら立ち上がった。

「師範!?」

「ふふふ、心配いらんよ。まだそこまで、衰えてはいないつもりだ」

師範は踵を返し、デュエルによって起こった突風で吹き飛ばされた『サイバー・エンド』が描かれた掛け軸、その裏にあった壁の窪みに置かれていた箱を開け、中にあったデッキを取り、俺に渡した。

「わかった。このサイバー流裏デッキ、お前に託そう」

「! ありがとうございます!」

「そして、サイバー流の看板も、下ろそうと思う」

「! 何故……ですか?」

「今やサイバー流は名前を残すのみの現状だ。今更看板を下ろした所で何の支障も無いだろう。亮、今までのサイバー流の伝統を打ち破ったお前に、伝統に囚われない、新しいサイバー流を作って欲しいのだ」

「あ、新しいサイバー流……ですか?」

「無論、今すぐにとは言ない。お前が自分の納得のいくまで腕を上げるのをいつまでも待つさ。ふふふ、もっとも、出来れば私の生きている内にしては貰いたいがね」

「師範……ありがとうございます!」



SIDE OUT



SIDE 和希



「……こんな所だ」

「……」

……だ、駄目だ。亮さんのこういう話を聞けば聞く度、亮さんへのリスペクトがうなぎ登りになってしまう!つーかやっぱ今のこの人カッコ良すぎ!

「お、お兄さん……」

「……どうした?」

「ごめんなさい!僕、お兄さんの事、少し疑っちゃってた。お兄さんには、そんな立派な考えがあったのに……!」

「翔……」

「丸藤先輩……」

「翔君……」

翔君は、申し訳なさのせいか、今にも泣き出しそうだった。

「翔……」

……亮さんは、そんな翔君に対して……

「いや、そもそも俺の説明の仕方が悪かった。いきなりあんな説明の仕方をしたら疑われて当然だ。謝るのは俺の方だ。すまない」

そう言って、頭を下げた。

「や、止めてよお兄さん!悪いのは僕の方だよ!」

「ははは、まぁ、ここは両方とに非があったって事で、おあいこでいいんじゃねぇか?」

「はは、そうだね。はい、という訳でどっちが悪いかの話は終了!」

「……無理矢理に纏めたな」

「いいんだよ万丈目君。こういうのはノリで」

「貴様はいつもノリでしか行動しないだろうが!」

「はははは……」

僕と万丈目君のやり取りに、翔君は笑い、亮さんも柔らかく微笑んだ。

「……そう言えばカイザー。この前の翔とのデュエルでも、新しいカードを使ってましたね?」

「あ……」

三沢君のこの一言で、僕も『あのカード』の事を思い出した。

「……これの事か?」

そう言って、亮さんはそのカード、『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』をデッキから取り出した。

確かに、原作で存在してなかった筈のこのカードを、亮さんがどうやって入手したのか、気になる所だ。

「……そうだな。このカードの事も話しておこう」



SIDE OUT



SIDE 亮 2WEEKS AGO



師範からサイバー流裏デッキとジェネックス参加証のメダルを受け取った後、俺はアカデミアに行く準備をする為、プロリーグの為に滞在していたホテルに戻った。

その時、俺を訪ねてきた人がいた。

「!? あなたは……!」

「ナイストゥミートゥー、ミスター丸藤亮」

インダストリアル・イリュージョン社の名誉会長、ペガサス氏だった。

「ユーのプロリーグでの活躍は拝見させて貰ってマース。私は武藤遊戯やユーを倒したエド・フェニックスなど、世界に5本の指に入るデュエリストがいると思っていました。しかし、プロリーグにカムバックしたユーはこの五人に勝るとも劣らない程の素晴らしいデュエリストになっていました。ふふふ、指が6本無いのが残念デース」

「……恐縮です。しかし、俺はまだまだ未熟な若輩者。もっと精進しなければ……」

「それデース」

「は?」

「そこがユーの凄い所なのデース。それだけ卓越した腕を持ちながら決して驕らず、更に上を目指し続ける。素晴らしい向上心デース。そんなユーに、私から素敵なプレゼントがありマース」

「プレゼント……ですか?」

ペガサス氏は3枚のカードを俺に渡した。

「こ、このカードは!?」

その3枚のカードこそ、『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』だった。

「ユーのデュエルスタイルに合わせて、私自らがデザインしたカードデース」

「ペガサス氏自らが!?」

「イエス。ユーはミスター鮫島から依頼を受けましたネ?」

「! 何故それを?」

「今回の『究極のDのカード』の件は私とミスター鮫島が相談して決めた事なのデース。このカードはユーの力になれるよう、私なりのバックアップデース。そして私からの報酬代わりとも考えて下サーイ」

「……いいのですか?」

「オフコース。ユーのような将来有望なデュエリストに使ってもらえれば、私も本望デース」

「……ありがとうございます!」



SIDE OUT



SIDE 和希



「……と言うわけだ」

「へぇ、会長さん直々のデザインかよ!すっげぇ!」

成る程、ペガサスさんがデザインしたカードなのか。

「お兄さん凄いっス!デュエルモンスターズの生みの親に、そんな誉められるなんて!」

「ああ、正直嬉しかった。二人からカードを託された、この信頼に応えるためにも、何としても、『究極のDのカード』を見つけ出さなくてはな」

と、亮さんは僕達に背を向けた。

「さて、そろそろ俺は行くとする。あまりぐずぐずしている暇はないからな」

「気をつけてね。お兄さん」

「お前こそ、な。翔」



そして、亮さんと別れた後、僕達はまた島を廻り始め、原作通り、大山君がプロランク10位の、数学博士、マティマティカを、もけ夫君がプロランク9位のラテン系デュエリスト、サンブレ・ゲレロを倒したのを目撃した。

そして、十代君以外の皆で欠伸をしながらもけ夫君のデュエルを見終わったその時……

「「きゃーー!?」」

聞き覚えのある悲鳴が二色、重なって聞こえた。



悲鳴がした所に駆け付けてみると……

「! あれは……ジュンコとももえ?」

そう、原作通り、二人がワインを片手に持ったプロデュエリストに追い詰められていた。

「あの相手は誰ドン?」

「あいつは、プロランク8位のソムリエ・パーカーだ」

「そんな、1対2のハンデ戦でも、相手悪過ぎだよ」

万丈目君の解説に、翔君が不安そうに言った。

「「うぅ……」」 残ライフ1600

「ふふふ……」 敵残ライフ4000

相手のフィールドには『酒豪神バッカス』(攻撃力1600)が1体。片や、ジュンコさんののフィールドには『ハーピィ・ガール』(守備力500)とリバースカードが1枚。浜口さんの方は『レスキュー・キャット』(守備力100)がいるのみだ。

「私のターン、ドロー、『酒豪神バッカス』(攻撃力1600)は自分のターンのスタンバイフェイズごとに攻撃力が300ポイントアップする(攻撃力1600→1900)」

「「あぁ……」」

「『酒豪神バッカス』(攻撃力1900)で『ハーピィ・ガール』(守備力500)を攻撃!」

『きゃー!?』

『酒豪神バッカス』の酒臭い猛烈なブレスを浴び、『ハーピィ・ガール』が破壊された。

「きゃー!?」

「お酒臭い……」

「更に、手札から速攻魔法『神々の盃』を発動!自分フィールド上に水属性モンスターが存在する時、『ワイントークン』1体を特殊召喚します。私のフィールドには水属性の『酒豪神バッカス』がいます。よって、『ワイントークン』(攻撃力1000)を攻撃表示で特殊召喚。『ワイントークン』(攻撃力1000)で『レスキュー・キャット』(守備力100)を攻撃!」

赤いスライム状の『ワイントークン』が『レスキュー・キャット』の口に入り込み、『レスキュー・キャット』はぐでんぐでんになって破壊された。

「「あぁ……」」

「まだまだ若い。もっとも、いくら寝かせたところで、駄目なワインは酢になるだけですが」

……ワインビネガーってやつね。

「も、もう駄目……」

「プロ相手に、これ以上は無理ですわ……」

二人はその場にへたりこみ、完全に諦めモードに入ってしまった。

「おやおや、オベリスクブルーのお嬢様方という事で期待したんですが、貴女方にとって、デュエルはお茶やお花と同じ、花嫁修行の習い事って訳ですね。さぁ、さっさとサレンダーしちゃいなさい」

「「うぅ……」」

二人は悔しさで唇を噛み締めていたが……

「待ちなさい!」

と、横から待ったがかかった。

「「! 明日香さん!?」」

そう、原作通り、未だ斎王さんに洗脳されている明日香さんだった。

「あなた達が敗れたら、ジェネックスに参加している、伝統あるブルー女子の生徒がいなくなってしまうわ」

「「うぅ……」」

あー、やっぱり二人以外のブルー女子って全滅なんだ。

と、明日香さんはデュエルディスクを構え……

「私がデュエルを引き継ぎます!ライフポイントは勿論、今のままで構いませ……」

二人の後を引き継ごうとし……

「余計な事しちゃダメですよ。明日香さん」

「「「な!?」」」

「「和希!?」」

「和希君!?」

「先輩!?」

「朝倉!?」

僕はそれを遮った。

「……どういう事?余計な事って」

「そのままの意味ですよ。そもそも、オベリスクブルー女子が全滅した所で、今はオベリスクブルーじゃないあなたには関係無い事でしょう?」

「! それは……!」

「大方、二人にオベリスクブルー女子のプライドでも教えようとでも思ってたんでしょうけどね、この二人は今までずっと明日香さんのデュエルを見てて、ブルー女子のプライドなんて知っているの筈でしょう?これ以上、あなたにおんぶに抱っこしてもらっても、二人の為になんかなりはしませんよ」

「……」

明日香さんは反論したそうな顔しているが、反論する材料が無いのか黙ってしまった。

と、

「アンタね!わかってんの!?相手はプロなのよ!?無責任な事言ってるんじゃないわよ!」

ジュンコさんが、恨みまがしい目で僕を睨んで叫んだ。

「『プロだから』?それがどうしたって言うのさ」

「!?」

「十代君や万丈目君、翔君や僕だってプロデュエリストとデュエルしたんだよ?それで、今の君達みたいにピンチに追い込まれたりもしたよ。でもね、誰も今の君達みたいに情けなく震え上がったりしてないよ?最後まで諦めずに頑張って、何人かはそれで勝ったんだよ?『相手がプロだから』なんて、言い訳にしかならないよ!」

「だって、だって……!」

……これだけ言ってもダメか。

「はぁ、全く、君には失望しちゃったよ」

「な!?」

僕は軽蔑するような目でジュンコさんを見た。

「だってそうでしょ?相手が強くて、ちょっとピンチになっただけで震え上がっちゃうなんて、情けないったらありゃしない」

「あ……ああ……」

「お、おい和希!」

「言い過ぎドン!」

「君なら大丈夫だと思ってデッキを渡したのに、本当、期待外れだよ」

「……」

皆の制止を気にも留めず、僕が続けると、ジュンコさんは俯いてしまった。

「あ、朝倉さん!幾らなんでも言い過ぎですわ!ジュンコさん!お気を確かに!ジュンコさん!」

と、浜口さんがジュンコさんを慰めようとしたが……

「! ひぅ!?」

慌てて、その場を飛び退いた。

「……」

……ジュンコさんから形容し難いオーラが出てきたからだ。

ジュンコさんは俯いたまま、ゆらりと立ち上がった。

「ふふふ、痴話喧嘩は終わりましたか?その様子だと、どうやらまだ続けるようですね。ならば、貴女にはまだ早いでしょうが、一流ソムリエである私が最高級品を貴女に味あわせてあげましょう。私はフィールド上の『酒豪神バッカス』と『ワイントークン』を生け贄に、『ビッグ・ヴィンテージ マグナムートン』(攻撃力2500)を攻撃表示で召喚!」

『ガオォォォォ!!』

ワインボトルの形をした大砲を両脇に装着した獅子が召喚された。

「私のこのターンのバトルフェイズは終了してますが、『ビッグ・ヴィンテージ マグナムートン』は、最高級ワインが時が経てば経つほどに味わいが増すように、自分のスタンバイフェイズごとに攻撃力が1000ポイントアップします。つまり、次の私のターンのこのモンスターの攻撃力は3500ポイントになります。ターンエンドです」



「……拙いな、早くあのモンスターを破壊しなければ、あのモンスターは際限無く攻撃力を上げていくぞ」

「でも、二人のフィールドには上級モンスターを召喚する生け贄がいないドン」

「おい朝倉、やはり天上院君に任せた方が良かったんじゃないのか?」

「別に負けなら負けでいいんだよ」

『はぁ?』

「さっきも言ったけど、あの二人は困ったら明日香さんに頼っちゃう場合が多いんだよ。そんなんじゃ『花嫁修行の習い事』なんて言われちゃってもしょうがないよ。確かに、負けるのは格好悪いけど、勝負から逃げるのはもっと格好悪いからね」

……別に負けたっていいさ。誰にも頼らず、最後まで自分自身でやるんだジュンコさん。



「……アタシのターン、ドロー、魔法カード『手札抹殺』、全てのプレイヤーは手札を全て墓地に送って、同じ枚数デッキからカードをドロー……」

俯いたまま、淡々とデュエルを再開させるジュンコさん。

「……『ハーピィズペット仔竜(ベビードラゴン)』(攻撃力1200)を攻撃表示で召喚……」

『ピィィィィ!』

「おやおや、これはまた可愛らしい。お嬢様のペットとしてはうってつけ、という訳ですね」

……嘗めちゃいけない。あのカードは、あのデッキにおける切り札の1枚!

「……更に、永続罠『ヒステリック・パーティー』を発動、手札を1枚捨て、自分の墓地に存在する『ハーピィ・レディ』を可能な限り特殊召喚する。このカードがフィールド上から離れた時、このカードの効果で特殊召喚したモンスターを全て破壊する。……アタシの墓地の『ハーピィ・レディ』全て、フィールド上と墓地では『ハーピィ・レディ』として扱う『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を2体、モンスター名を『ハーピィ・レディ』として扱う『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)を1体攻撃表示で召喚」

……ふふふ、やっぱり、やれば出来るじゃない。

「ふふふ、今更、そんなモンスターを揃えた所で手遅れです」

「……『ハーピィズペット仔竜』は、自分フィールド上の『ハーピィズペット仔竜』以外の『ハーピィ』と名の付くモンスターの数だけ、効果が追加される。1体以上の時、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は自分フィールド上に存在する『ハーピィズペット仔竜』を除く『ハーピィ』と名のついたモンスターを攻撃対象に選択できない。2体以上の時、このカードの元々の攻撃力・守備力は倍になる」

そう、よって、今の『ハーピィズペット仔竜』の攻撃力は2400

「ふふふふ、惜しいですね。それでも、私の『ビッグヴィンテージ・マグナムートン』(攻撃力2500)の攻撃力には僅かに届きません」

「……『ハーピィ・レディ1』の効果、このカードがフィールド上で表側表示で存在する時、風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップする……」

「な!?」

これにより、『ハーピィ・レディ1』の攻撃力は1600、2体の『ハーピィ・クイーン』の攻撃力は2200、そして、『ハーピィズペット仔竜』の攻撃力は……

「こ、攻撃力2700!?『ビッグヴィンテージ・マグナムートン』の攻撃力を凌いだ!?」

『ギャオォォォォ!!』

『ハーピィ』達の力を受けて、『ハーピィズペット仔竜』は立派な若い竜へと成長した。

だが、『ハーピィズペット仔竜』の効果はまだ1つ残っている!

「……『ハーピィズペット仔竜』以外の『ハーピィ』と名の付くモンスターが3体以上の時、1ターンに1度、『ハーピィズペット仔竜』は相手フィールド上のカード1枚を破壊する事が出来る。……『ビッグヴィンテージ・マグナムートン』を破壊……!」

「な!?」

『ハーピィズペット仔竜』が放った火球が『ビッグヴィンテージ・マグナムートン』を破壊した。

相手のフィールドは、これでがら開き……!

「……全モンスターで、ダイレクトアタック……!」

「ぐわあぁぁぁぁ!?」 敵残ライフ0



「か、勝っちゃった……あの二人が、プロ相手に……」

「うおぉぉ!凄ぇぜジュンコ!」

「し、信じられん……」

「た、確かに、驚きだ」

「ドン」

ギャラリーの皆は、予想外の結末にこれ以上無く驚いている。

そんな中、僕は一人、前に出た。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

俯いたまま、ジュンコさんは肩で息をしている。

「ジュンコさん」

僕が声をかけると、ジュンコさんの肩がピクリと動き……

「……何よ」

こっちも向かず、俯いたまま応えた。

そんな彼女の背中に向かって僕は……

「……ふふふふふ……」

クスクスと笑った。

「……何よ、私の情けないデュエルが、そんなに可笑しかった訳?」

「ふふふ、まさか、プロ相手に大逆転勝利を収めたデュエルの何処が情けないのさ?ふふふふふ……」

「じゃあ何が可笑しいのよ!」

……ジュンコさんの殺気が上がる。……ここで正直に話してしまうのは危ないが……

「いやー、だって、やれば出来るのに、あれぐらい言わなきゃ、ジュンコさんやらないんだもの」

「!?」

「ジュンコさんってさ、いつもは気が強いのに、打たれ弱いから直ぐに弱気になっちゃう。あれぐらい言って怒らせないと、いつもの強気なジュンコさんに戻らないからね」

と、ジュンコさんの肩がフルフル震え出した。

「……何?じゃあ、その為だけに、あんな事言った訳?」

「うーん、まぁ、そーなるね」

……なんか想像以上にショック受けてたみたいだケド……

と、ジュンコさんがこちらに振り向いた。

身の危険を察知していち早く逃げようと……

「……え?」

……出来なかった。

「…………!」

……その目に溜まっている、涙に気を取られて。

「え?え?」

僕は混乱した。そ、そんな泣く程怒らせちゃった?

……その隙が致命的だった。

「……! 馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ぐほぉぉぉぉ!?」

至近距離からの大音響が耳を直撃した。

そして、よろめいた所を……

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁ!!」

「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ!?」

襟を掴まれ、がっくんがっくんと凄い力で揺さぶられる。

の、脳が揺れるぅぅぅ?

たが、そんな状態でも、僕の顔は笑いを抑えられてなかった。

「何よ!? まだ可笑しいの!?」

「いーや、さっきのがまぁ笑ってた理由の半分」

僕はクラクラするのを耐えながら言った。

「じゃあ何がそんなに可笑しいのよ!?」

ジュンコさんが凄い形相で聞いてきた。

「嬉しくてね」

「え……」

だが、僕が言うと、一気にきょとんとした表情を作った。

「だって、僕が作ったデッキをあんなに上手く使って貰えて、果てはプロに勝っちゃったんだからね。前言撤回。そのデッキ、君に渡して本当によかったよ」

「!?」

「あー、あと、おめでとう。ナイスファイト」

「……!」

と、僕が労うと……

ポロポロ……

「え!?」

何故か、ジュンコさんは遂に涙を溢し始めた。

「ぐすっ、馬鹿!本当、馬鹿!えぐっ……」

「え!?え!?え!?」

……僕は狼狽えるしかなかった。



「……全く、朝倉さんも人が悪いですわ」

「ま、今に始まった事じゃないけどな」

「そうっスね」

「あ、あんなに狼狽えてる先輩、初めて見たドン」

「う、羨ましいぞ和希!俺だって、俺だって……うおぉぉぉぉ!タニヤぁぁぁぁ!!」

「「……おいおい……」」

「……タニヤって誰ドン?」

「……」

「て、天上院君、調子はどうだ……」

スタスタスタ……

「天上院君!?」

「無視だな」

「無視っスね」

「完全無視ザウルス」

「タニヤぁぁぁぁ!!」

「天上院君……」

「「…………」」

ガシッ!

「あ、握手した」

「……『恋する報われない男同盟』の誕生ザウルス」

「あれ?剣山君もアリスちゃ……」

「! しー!しー!あの二人の仲間入りは御免ザウルス!」

「うぅ……極上のワインを醸造する為には、葡萄を発酵させる為の上等な樽が必要。彼は、その樽だった訳ですか……。ふ、あの二人に乾杯。そして、私の完敗に、乾杯……」

「……ダジャレかよ」



……結局、この日の残りの時間の殆んどはジュンコさんの慰めに使ってしまいましたとさ。

めでたくなしめでたくなし。



今日のワイトはお休みです


後書き

多分今までで一番長い……疲れた……



[6474] デッキ紹介(特別編) その3
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:ecbf4609
Date: 2010/06/24 23:06
和「はいはーい、今日はリクにあった亮さんとマハードさんのデッキをご紹介!ちゃっちゃと行くよー!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「では、まず亮さんのデッキから!ヒア ウィ ゴゥ!」



上級モンスター×3

サイバー・ドラゴン×3

下級モンスター×10

サイバー・ドラゴン・ツヴァイ×3
アーマード・サイバーン×2
サイバー・ヴァリー×2
サイバー・ダーク・エッジ×1
サイバー・ダーク・キール×1
サイバー・ダーク・ホーン×1

魔法カード×20

パワー・ボンド×3
サイバネティック・フュージョンサポート×3
融合×2
封印の黄金棺×2
大嵐×1
オーバーロード・フュージョン×1
強欲な壺×1
未来融合-フューチャー・フュージョン×1
融合解除×1
融合破棄×1
リミッター解除×1
手札抹殺×1
手札断殺×1
天使の施し×1

罠×10

パワー・ウォール×3
サンダー・ブレイク×2
輪廻独断×1
ゲットライド!×1
聖なるバリア-ミラー・フォース-×1
リビングデッドの呼び声×1
無謀な欲張り×1

計43枚

融合モンスター×15

サイバー・エンド・ドラゴン×3
サイバー・ツイン・ドラゴン×3
キメラテック・オーバー・ドラゴン×3
キメラテック・フォートレス・ドラゴン×3
鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン×3

サイド

プロト・サイバー・ドラゴン
エヴォリューション・バースト
瞬間融合
神秘の中華なべ
魔力倹約術
その他



3ワイト「「「……」」」

和「……えぇ、皆さんの言いたい事はわかりますとも。『サイバー・ダーク』が入っているのに、まさかのドラゴン族0枚。そこは完全に『輪廻独断』任せですね」

3ワイト「「「カタカタ?」」」

和「ん?このデッキの使い方?主力は『パワー・ウォール』で墓地を肥やして、そこから『オーバーロード・フュージョン』や『サイバネティック・フュージョン・サポート』での墓地からの融合かな。だから、墓地では『サイバー・ドラゴン』として扱われない『プロト・サイバー・ドラゴン』も敢えてサイドですね」



和「続いてはマハードさんのデッキです」



最上級モンスター×4

ブラック・マジシャン×3
黒の魔法神官×1

上級モンスター×2

カオス・マジシャン×2

下級モンスター×11

熟練の黒魔術師×3
見習い魔術師×3
水晶の占い師×3
執念深き老魔術師×2

魔法×19

ディメンション・マジック×3
黒魔術のカーテン×3
千本ナイフ×2
魔法族の里×2
魔力掌握×2
古のルール×1
黒・魔・導×1
魔力倹約術×1
大嵐×1
サイクロン×1
強欲な壺×1
テラ・フォーミング×1

罠×5

黒魔族復活の棺×1
激流葬×1
聖なるバリア-ミラーフォース-
リビングデッドの呼び声×1
正統なる血統×1

計41枚

サイド
拡散する波動×1
古の森×1
ミス・リバイブ×1
奇跡の復活×1
漆黒のパワーストーン×1



和「打って変わってかなーり安定した感じのデッキ。因みに対僕戦でのコンボは流石に難し過ぎるのでサイドにしました。」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「ポイントは、『黒の魔法神官』と『魔法族の里』による、一方的な魔法・罠のロック。決まればやりたい放題できます」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」



和「それでは今日はこの辺で。次回は久々にワイト達が大活躍!」

3ワイト「「「!?」」」

和「……するといいな」

3ワイト「「「!?」」」



[6474] 第三十四話 ドキッ!? ネタだらけの同キャラ対決
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:41cffdee
Date: 2011/06/22 01:33
さて先日、デュエルアカデミアノース校の死神デュエリストこと橘一角君と十代君とのデュエルが行われた。

一角君は魔法カード『一撃必殺!居合いドロー』、フィールド上のカードの枚数だけ自分のデッキからカードを墓地に送り、その後デッキからカードを1枚ドローし、そのカードが『一撃必殺!居合いドロー』だった場合、そのカードを墓地に送り、フィールド上のカードを全て破壊。破壊して墓地に送ったカード1枚につき、1000ポイントのダメージを相手に与えるカード、による『1ターンキルデッキ』の使い手だ。

勿論、十代君や大山君ばりの引きの強さが無ければ普通はこんなコンボはそう成功しない。だが彼は自分のデッキの強さを証明する為、ノース校の七不思議の内の一つ、『死神』のカードの力で、ジェネックス優勝後に魂を差し出す代価としてそのドローの力を得た。

そんな一角君に、十代君は自分のデッキを信じる事を思い出させ、『死神』のカードの呪縛から解き放った。

結果、十代君に敗れたものの、彼の思いにデッキが応え、彼はこのコンボを自力で発動させた。

まぁ、僕が相手をしても良かったのだが、正直そんなチートさんには勝てる気がしないので辞退しました。

あぁでも、彼の某ネオジャパン代表っぽいセリフは良かった。『俺の右手の髑髏が叫ぶぅ!』……ってね。これで声が関さん声だったら言うこと無しだったなぁ……



それから数日後の今日……

『ソニックブゥームッ!ソニックブゥームッ!』

ピョン!

ゲシッ!

『うわぁぁ……』

YOU WIN! PERFECT!

「……待ちガ○ル自重希望っス」

「あいよ」



『タイガァ!タイガァ!』

ピョン!

『タイガーアパカッ!』

バシッ!

『うわぁぁ……』

YOU WIN! PERFECT!

「待ちでスーパーのサ○ットも!」

「……もー、翔君我が儘過ぎー」

「……いや、お前がえげつない事ばっかしてるからだろ」

「軽くイジメにしか見えないザウルス」

……それにしたって翔君弱過ぎるんだけど……

「それ以前に貴様ら!人の部屋で何時間ゲームするつもりだ!?」

……だってここの方が画面大きいし。

「さて、次はダ○シムで……」

「いい加減にして!」



『フンッ!』

グルグルグル、グシャッ!

『うわぁぁ……』

YOU WIN!

「……占めて20連敗だな」

「しかも、結局全キャラで負けてるドン」

「うぅぅ……」

「はっはっは。 ♪そうさラ~ラ~ラ~なんて素敵な ララララ~ラ~ラ~文字の並び~ ラ~ラ~ラ~それはラ~ラ~ラ~それは~ フ!ル!ボ!ッ……」

「歌ってんじゃないわよ!」

スカーンッ!

「コォぉぉぁぁぁ!!?」

……こ、後頭部に激しい鈍痛がぁぁぁ……!?

「……随分と中身が詰まってなさそうな音がしたな」

「ジュ、ジュンコさん?さ、流石に無防備な人の後頭部にデュエルディスクを投げつけるのはどうかと……」

「何か言った?」

「……何でもありませんわ……」

ジュンコさんの一睨みで、一緒に部屋に入ってきた浜口さんが黙る。……痛いよぅ……

「うぅ、な、何をそんなにご立腹で?」

「……!」

ジュンコさんのいかりのボルテージがあがった!?ジュンコさんのこうげきりょくがあがった!?

「え、えーと?」

「……人の事を無視しておいてよくもぬけぬけと……!」

「無視?な、何の事?」

「……!!」

こうげきりょくがぐーんとあがった!?ひぃ!?『メガトンパンチ』が飛んで来るぅ!?

「アンタねぇ!さっき人が声をかけたのに完全無視したのは何処の誰よ!」

はいぃぃ!?

「いやいやいやいやいや!?今日は僕、今初めてジュンコさんに会ったよ!?」

「嘘言うんじゃないわよ!」

「ほ、本当だって!と言うか、今日はずっとこの部屋に居たし!ねぇ?」

僕は十代君達に同意を求めた。

「さーて、次は『マ○オカート』やるか」

「そうっスね」

「朝倉先輩抜きだから丁度いい勝負が出来そうドン」

「仕方ない。付き合ってやるか」

「うぉーい!?」

助け船無し!?と言うかワイト達まで!?

「……さぁ、歯を食いしばりなさい!」

「いーやー!?」

一撃でひんし状態に持ってかれるぅ!?

と……

「よぅ皆!おっぱいよ……ぐべら!?」

「下品な事言うんじゃないわよ!」

……登場して数秒で僕同様にデュエルディスクを投げつけられる三沢君だった。

い、今のジュンコさんは阿修羅も凌駕する存在だ!?

「痛ててて……ん?和希、何で此処に居るんだ?」

「「え……?」」

三沢君の言葉に、意味を捉え損ねた僕とジュンコさんの声がハモる。

「いや、イエロー寮からここに向かう途中、お前らしき生徒がデュエルしているのを見掛けたんだが……」

「……はい?」

「背格好もお前そっくりだったし、何よりもそいつは『ワイト』を使っていたぞ?」

「あ、そう言えば、最近噂で聞いたっス。何でも、オシリスレッドの制服を着た『ワイト』使いが連戦連勝してメダルを集めまくってるらしいっス」

……初耳だ。

「あれ?でもオシリスレッド、つーかアカデミアで『ワイト』使ってるのって和希ぐらいだよな?」

「おまけに、先輩は割りとまだそんなにメダル集めてないザウルス」

そうなのだ。ホワイト化していた時に稼いでいた万丈目君を筆頭に、メダルをかなり集めているこの面子の中で、初めの方にスランプで出遅れていた僕は実は一番メダルが少ないのだ。

因みに順位は万丈目君、十代君、三沢君、翔君、剣山君、僕の順になっている。

……って事は?

「……先輩のパチモンザウルス?」

「馬鹿馬鹿しい。何が悲しくてこんな奴の真似などせにゃならん」

「うーん、でもそれしか考えられないんだよねぇ。それで、ジュンコさんはそれを僕と間違えたと。はははは……」

「な、何が可笑しいのよ」

「いやー、おちょっこちょいだなぁと思ってさ」

「う、うるさい!」

「はっはっは……さてと、じゃあこれ以上(主に僕への)被害が増えないうちに偽者を捕まえに行きますかね」

「……ちょっと待て和希。その口振りだとその偽者が誰だか知っているのか?」

「いや知っていると言うより、ピンポイントで思い当たる人が居る」

『……は?』

……いや、こんな事するのは『彼』しかいないでしょうよ。



SIDE OUT



SIDE 翔



「いい加減誰なのか教えなさいよ!」

「だーかーらー、ネタバレしたら面白くないでしょーに」

……万丈目君の部屋を出た後、僕達は和希君の偽者とやらを探しに、三沢君の言っていた場所に向かった。

その最中は、ずっと今みたいな感じでジュンコさんが怒って、和希君がそれをいなしている状態だ。

……傍目から見たら痴話喧嘩しているようにしか見えないっス。

微妙に三沢君と万丈目君の同盟から敵意のある視線を向けられてるけど、全く気付いてない。

「むぅ、本当にわかんないのかい?十代君や翔君はデュエルした事あるよ?」

「オレや翔が?」

「和希君以外の『ワイト』使いとなんてデュエルした事ないっスよ」

「はははは、まぁその時は彼、『ワイト』なんて使ってなかったしね」

? 『その時は』?

「ははは、あ、そう言えばジュンコさん?」

「な、何よ」

「偽者に声をかけたって事は、僕に何か用があったんじゃないの?」

「! べ、別になんでもないわよ!」

「?」

「何よ、用が無くちゃ声もかけちゃいけないっての!?」

「……ふふふふ、天の邪鬼さんだなぁ」

「うるさい!」

和希君、楽しそうだなぁ。

「……本当は何か和希に用があったのか?」

アニキがももえさんに、二人に聞こえないように小声で聞いた。

「ふふふ、この間のデュエルのお礼を言いたかっただけですわ」

「あー、あのプロデュエリストが相手の時のか?」

「ソムリエ・パーカー……だったな」

「……相変わらず素直じゃねーのな」

「気付かない和希君もかなり鈍いと思うっスけど」

基本鋭い筈なのに。

……そもそも、あの二人はお互いに好意は持ってる筈なんだよね。

ジュンコさんのあれはどう見ても照れ隠しにしか見えないし、和希君も基本、好意を持ってればそれに比例してその人をからかう質だ。そして、和希君は女子ではジュンコさんを一番からかっている。

だけど、和希君はアニキ並みに恋愛に疎過ぎる。和希君の事だから、多分恋とかそういうのは全く意識してないっス。……和希君が謎なのは他人の恋愛事にはそうでもないのに、自分に対する恋愛事だけに物凄く鈍感って所なんスよね。

だから、ジュンコさんが素直にならない限り、あの二人がくっつく事って無いんじゃないかなぁ。

「そうなんですの。ジュンコさんも早く素直になればよろしいですのに。見ていてやきもきしますわ」

……って、ももえさんに思考を読まれた!?

「……いや、先輩、思いっきり口に出してたドン」

「気を付けろよ。和希はともかくジュンコに聞かれてみろ。ボコされるぞ?さっき和希に格ゲーでボコされてた並みに」

……百烈張り手ならぬ百烈ビンタをくらいそうっスね。

「居たぞ!」

「え」

と、三沢君が指差した方角に、オシリスレッドの制服を着た生徒がこちらに背を向けて立っていた。

確かに、あの背格好はどう見ても……

「和……希……?」

「……ふふふふふ……」

アニキが呟きに反応して、その誰かは笑いだし、こちらを振り向いた。

「はーっはっはっはっは!彩りましょう食卓を!皆で防ごう摘まみ食い!常温保存で愛を包み込むカレーなるデュエリスト!朝倉和希見参!」

「怪盗レ○ルトっスか!?」

「と言うか何してるドン神楽坂先輩!」

そう、その正体は和希君の格好をしたモノマネデュエリスト、神楽坂君だった。

……確かに考えてみればこんな事をするのは彼しかいなかったっス。

それにしても、学園祭の演劇の時よりも更にモノマネに磨きがかかってるっス。これじゃ、ジュンコさんや三沢君が見間違えたのも頷けた。

「ふふふふふ。完成したんだよ。朝倉流が」

……言うこともネタまみれで和希君ぽいっス。

「……」

「か、和希君?」

その和希君は、何故か満面の笑みを浮かべていた。

「ふ、ふふふふ。ふフ不負腑腐埠訃怖……」

……もしかして、和希君怒ってるっス?

「……」

あ、和希君の口が声を出さずに動いてる……











やっぱり怒ってる!?久々に黒いオーラも出てる!?

「よくも、よくも……」

や、やっぱり、和希君でも真似されたりするのは嫌なのかな……

「よくも、僕がいつかやろうとしていたネタを……!」

「「怒る所そこ(ザウルス)!?」」

……流石和希君。怒るポイントが予想の斜め上だった。

「……奴に人並みの羞恥心を期待した所で無駄だろうが」

……確かに。

「わかる!わかるぞ和希!その悔しさ!」

……三沢君も大概に感覚がぶっ壊れてるっス。

「ははは、よく来たねブラザー!君と僕のどちらが本物か、デュエルで決着を付けようじゃないか」

「いや、勝っても負けてもお前がパクリだろ」

「望むところだよ!」

「受けて立っちゃった!?」

二人は僕達のツッコミを無視してヒートアップしている。

……本当に和希君が二人になったみたいっス。……三沢君を含めたら三人スね。

「行くぞ偽者!ワイトの貯蔵は十分か!?」

「何を!贋作が真作に勝てないなど誰が決めた!」

「……さっきから何を訳のわからない事を言ってんのよ、あの二人は」

「多分知らない方が吉っス」



SIDE OUT



SIDE 和希



「「デュエル!!」」

「僕の先攻!ドロー!『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果発動!1に1度、手札から闇属性モンスター1体を墓地に送る事で自分のデッキから闇属性モンスター1体を選択して墓地へ送る事が出来る!手札とデッキから『ワイト婦人』を1枚ずつ墓地に送る!」

……さて、始まったはいいが、僕は同じデッキ同士のミラーマッチ、対『ワイト』デッキはこれが始めてだ。少し不安もある。

例えば、僕がいつも使っているような、全ての星4以上のモンスターの攻撃を防ぐ永続罠『グラヴィティ・バインド-超重力の網-』はあまり効果を成さない。相手も、『ワイト』や『ワイトキング』など、星の低いモンスターが主力の筈だからだ。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

……まぁ、それ以上に楽しみでもあるけどね!

「僕のターン!ドロー!」

あ、紛らわしいけど、先攻が僕で後攻が神楽坂君だ。

「モンスターを1体、裏側守備表示でセット。更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

……墓地肥やしはしないのか?

『ワイト』デッキはその性質上、その他のアンデット族デッキよりもパワーがある分速効性に欠ける。だから、同じパワーの『ワイト』デッキのミラーマッチは、主にこの欠けている速効性、つまり墓地に『ワイト』達を貯めるスピードを競う勝負となる。

「僕のターン!ドロー!」

……あの裏側守備表示モンスター、気にはなるけど、もたもたしていたら、スピード負けする……!

「手札から『ワイトキング』を攻撃表示で召喚!」

『カタカタカタ』

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する『ワイトキング』と『ワイト』の枚数の合計×1000ポイント!僕の墓地には、墓地では『ワイト』として扱われる『ワイト夫人』が2体!よって、今の攻撃力は2000!更に『ワイトキング』を召喚した瞬間、罠カード『連鎖破壊(チェーン・デストラクション)』を発動!攻撃力2000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、そのモンスターのコントローラーの手札とデッキから同名カードを全て破壊し、その後デッキをシャッフルする!この効果により、デッキからもう2枚の『ワイトキング』を墓地に送る!これにより、僕の墓地の『ワイト』『ワイトキング』は4枚!よって、『ワイトキング』の攻撃力は4000!」

よし!かなり早い段階で攻撃力4000!このまま一気に……

「ふふふふ、慌てちゃ駄目デスヨ?」

「!?」

「罠カード発動!『因果切断』!手札を1枚捨て、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外!除外したそのモンスターと同名カードが相手の墓地に存在する場合、そのカードを全てゲームから除外する!」

「な!?」

「ふふふ、手札を1枚墓地に送り、君のフィールド上の『ワイトキング』を除外!更に君の墓地の『ワイトキング』も全て除外!」

『!?』

……登場して早々、『ワイトキング』が消滅した。

マズい!焦り過ぎた!

「ふふふ、これで君のデッキの切り札は無くなった。さぁ、その状態でいつまで続くかァ~~~続くかァ~~~続・くゥ・カァ?」

「くっ……」



「和希がミスをした!?」

「らしくないっス」

「……和希の奴、初めてのミラーマッチに戸惑っているな」

「確かに、いつもの朝倉先輩みたいなマイペースさが感じられないドン」

「奴のデッキは元々かなり特殊な部類だ。その自分のデッキの特殊さに、自分で驚かされているな」

「……! 何やってんのよアイツ……!」

「ジュ、ジュンコさん。彼のピンチで居ても立ってもいられないのはわかりますけど、少し落ち着いて下さいませ」

「そ、そんなんじゃないわよ!」



「……『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)で裏側守備表示モンスターに攻撃!」

苦し紛れに攻撃をする。だが……

「裏側守備表示モンスター『魔導雑貨商人』(守備力700)のリバース効果を発動!自分のデッキを上からめくり、一番最初に出た魔法か罠カード1枚を自分の手札に加え、それ以外のカードは墓地へ送る!」

「う……」

「ふふふふふ、刻むぞ波紋のビート!」

と、神楽坂君はデッキをめくっていく。

……見る見るうちに墓地にカードが送られていく。……デッキの比重をモンスターカードに偏らせたのか!

そして、デッキからカードを10枚程墓地に送った後、魔法カード『手札抹殺』をめくり漸くストップした。

その間、相手の墓地には『ワイト』が2枚と『ワイト夫人』が1枚送られた……!

「くっ……リバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「……はははは、なぁ、朝倉」

「?」

と、神楽坂君がモノマネを解き、素に戻って話し掛けてきた。

「俺はお前に感謝してる。お前が誘ってくれた去年の学園祭の演劇、あれが俺に気付かせてくれた!」

と、神楽坂君が目に怪しい光を灯しながら語り始めた。

「そう、モノマネデュエルとはすなわち、そのデュエリストに成りきるという事!さすれば、そのデッキの長所から短所まで、全てが見えてくる!」

神楽坂君の目の光が強まった!

「そう!これこそ、『相手の心となる』というリスペクトデュエル!カイザーこと丸藤亮の目指した物の完成形なんだよ!」

「な、なんだってー!!?」



「……衝撃の発言が飛び出したな」

「……」

「翔!?」

「ショックの余りに固まってるドン!」

「むぅ、だが一理あるような……だとすると、カイザーが次のステップに進む為にはモノマネを……ばわ!?」

「翔!?」

「ぶぺぺぺぺぺ!?」

「三沢君!君が!泣いて謝るまで!殴るのを止めない!」

「お、落ち着くザウルス丸藤先輩!」



「僕のターン!ドロー!……ふふふ、『ワイトキング』を攻撃表示で召喚!」

! 今あっちの墓地には『ワイト』達が3枚。よって、攻撃力は3000……!

「更に魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いプレイヤーは手札を全て墓地に送り、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする!そして、今の『手札抹殺』により、僕の墓地に、手札にあった1枚ずつの『ワイト』と『ワイト夫人』が加わり、『ワイトキング』の攻撃力は5000!」

ヤバい!?

「『ワイトキング』(攻撃力5000)で『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)に攻撃!『ホーンデッド・ナイトメア』!」

「くっ……」 自残ライフ700

「ふふふふふ、ターンエンド!」

あ、あっぶな!と言うか相手してみるとライフ4000で『ワイトキング』のパワーってマジ怖!

『♪』

……いや、ワイトキング?自慢気にふんぞり返られても、デッキに『異次元からの埋葬』が入ってない今回はもう出番ないから。

『!?』

……しかし、本当にマズいな。

今手札には、手札からモンスター1体を墓地へ送り、手札またはデッキから星1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する魔法カード『ワン・フォー・ワン』、更に3枚目の『ワイト夫人』の2枚。だが、『ワン・フォー・ワン』で特殊召喚出来る『ワイトキング』はいない。

……さっき神楽坂君が使った『手札抹殺』により、さっきまで手札にあった『馬頭鬼』が墓地に送られたが、今その効果、墓地にあるこのカードを除外する事で墓地のアンデット族モンスターを1体蘇生する効果、で墓地から蘇生出来るのも『ワイト夫人』と、『馬頭鬼』同様に『手札抹殺』で墓地に送られた『ゾンビ・マスター』のみ。

『ゾンビ・マスター』の効果、表側表示で存在する時、1ターンに1度、手札のモンスターカード1枚を墓地に送る事で、墓地の星4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する効果、は相手の墓地のアンデット族モンスターにも有効だが、今あっちの墓地に『ワイトキング』は無い……!

……このドローに賭けるしかない!

「僕の……ターン!ドロー!」

! このカードは……!

待てよ……これに加えて手札のカードとリバースカードを使えば……

……よし!イケる!

「神楽坂君、君のモノマネは確かに出来がいい。でも、足りない物がある!」

「何!?」

「君に足りないのはっ!情熱 思想 理想 思考 気品 優雅さ 勤勉さ! そして何より……速さが足りない!」

「多!?」

「ス○ライドっスか!?」

「君は僕のデッキの切り札を『ワイトキング』だけだと勘違いしてるよ」

「結局速さ関係無いザウルス!?」

外野のツッコミを総スルーしながら僕は続ける。

「手札から魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!手札からモンスター1体を墓地へ送り、手札またはデッキから星1のモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する!手札から『ワイト夫人』を墓地に送り、デッキから星1の『スカル サーヴァント』を特殊召喚!」

「? 『スカルサーヴァント』……?」



「『スカルサーヴァント』だって!?」

「聞いた事ないカードっス」

「先輩が『ワイト』以外の切り札を!?」

「名前からすると……やはりアンデット族モンスターか?」

「しかも星1……『ワイト』しか思い浮かばんな」

「ジュンコさん知ってますの?」

「ア、アタシが知るわけないでしょ!?というかなんでアタシなのよ!?」

「以心伝心の仲のジュンコさんならわかるかと思いまして」

「だ、誰と誰が以心伝心の仲なのよ!」



「カモン!『スカルサーヴァント』!」

僕以外の皆がいぶかしむ中、そのモンスターは召喚された。

……

…………

………………

『カタカタ』

『って、やっぱり『ワイト』じゃない(ねーか・っスか・ドン・か・ですの)!!!』

「はっはっはっはっは、せいかーい!」

因みに、『Skull Servant』とは『ワイト』の英語名である。

「アンタねぇ!散々勿体つけておいて結局『ワイト』じゃない!」

「ははは、あれ?僕ってば『ワイト』じゃないなんて一言も言ってたっけ?」

「……っ! 後で覚えておきなさいよ」

「はいはーい。更にリバースカードオープン!2枚目の『連鎖破壊』!これにより、僕のデッキの残りの2枚の『ワイト』を墓地に送る!」

「? 『ワイトキング』が全て除外されているのに、今更何を?」

僕の行動が不可解だったのか、神楽坂君のモノマネが解けた。

……そして、これで仕上げだ!

「更に装備魔法『守護神の矛』を『ワイト』に装備!」

『ワイト』がその手に矛を装備した。

……何かイラストと違って矛が赤い槍状なんだけど?しかも何処かで見たことある。

「『守護神の矛』を装備したモンスターの攻撃力は、墓地に存在する装備モンスターと同名カードの数×900ポイントアップする!」

「な!?……そうか、『ワイト夫人』は墓地では『ワイト』として扱われる……!」

そう、『ワイトキング』だけを防げば勝てる程、僕のデッキは甘くないよ!

「だが、『ワイト』の元々の攻撃力は300!お前の墓地には『ワイト夫人』が3体と『ワイト』が2体!攻撃力が900×5で4500ポイントアップで攻撃力は4800!まだ俺の『ワイトキング』(攻撃力5000)には届かない!」

「残念、『守護神の矛』は相手の墓地のカードも枚数に数えるんだよ!」

「な!?……! 俺の墓地には『ワイト』が3枚に『ワイト夫人』が2枚、計5枚……!」

「そう、これにより攻撃力は10枚分、攻撃力は900×10で9000ポイントアップ!」

「ワ、『ワイト』の攻撃力が……9300だと!?」

と、『ワイト』が『守護神の矛』……って言うか槍?の穂先を低く構えた。

「『ワイト』(攻撃力9300)で『ワイトキング』(攻撃力5000)に攻撃!」

僕が宣言すると、槍が紅く輝き出した。

「その心臓!貰いうける!」

『ワイト』が『ワイトキング』の足元に向かって刺突を繰り出し……

「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』!!」

気付くと、相手の『ワイトキング』の心臓部に突き刺さっていた。

……いや、君達に心臓ってあるの?

「くっ……馬鹿な……」 敵残ライフ0

「ふふふ、ついでに言っておくよ神楽坂君」

「くっ?」

「『ワイトキング』の攻撃名、『ホーンデッド・ナイトメア』じゃなくて『ホーンテッド・ナイトメア』だから」

「な!?」

「ふふふ、すいません、正確に言っておきたいので」

「……ふ、畜生、まだまだ奥が深いぜ……モノマネ道……ガクッ……」

「……今あいつ自分でガクッって言ったぞ」



「しょーり!」

「限りなくギリギリのな」

「むぅ、それはしょーがないじゃん万丈目君。慣れないミラーマッチだったんだからさ」

正直、『ワイトキング』が全部除外された時にはどうしようと思ったけどね。

と、

ポンッ……

「ん?」

後ろから肩に手を置かれ……

ギリギリギリギリ……

「あだだだだだ!?」

に、肉が抉れるぅ!?

「……アンタにしてはいいデュエルだったじゃない。でも、まさか忘れた訳じゃないでしょうね?」

……背後から、地の底から響くような声がした。

「……随分とふざけた事言ってくれるじゃない。当然、こうなる覚悟があっての事よね?」

「ちょ!?は、話せばわかるぅ!」

「問答無用ぉ!」

「いぎゃあぁぁぁ!?」

青年将校に射殺される首相の気分!?

「……和希君が勝てた理由はあれかもしんないっスね」

「? どれだ?」

「日々ジュンコさん相手に鍛えられている打たれ強さっス」

「ははは、かもな」

「きゃー!愛ですわ!愛の力ですわ!」

「……違うような合ってるような」

「うーん、胸キュンポイント5ポイントだね」

「って吹雪さんいつの間に!?」

「ふふふふ、恋愛の薫りが漂う所ならば、僕は何処へだって現れるのさ」

「あ、吹雪さんだ」

「え!?」

「脱出!」

「あ!こらー!」

「はっはっは、文句があるならヴェルサイユにいらっしゃーい!」

「待ちなさーい!」

「……女性へのアタックの手段その1、『からかってみる』か。どう思う?同士万丈目」

「……無理だ同士三沢。どうシュミレートしても天上院君に嫌われて終わってしまう。後で師匠からアドバイスを貰うぞ」

「……あんたらは何をしてるドン……」



今日のワイト

和「今日のカードはこちら!装備魔法『守護神の矛』!装備モンスターの攻撃力は、墓地に存在する装備モンスターと同名カードの数×900ポイントアップ、ポイントは、本編で僕が使っていたように、相手の墓地のカードにも適用される事。『ワイト』デッキ同士のミラーマッチならば相手の墓地の分も合わせると最高11枚分、9900ポイントも攻撃力アップで、その攻撃力はなんと10200!『パワー・ボンド』で融合した『サイバー・エンド・ドラゴン』を軽く越えます」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「装備するモンスターの制限も無く、凡庸性も高いです。……墓地に同名カードが無い時には完全に腐りますが……」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「それではまた次回!伊達にあの世は見てないゼ!」

3ワイト「「「カタカタ」」」

和「……つーかよく考えてみたら君達本当に見てるよね?」

3ワイト「「「……(コクコク)」」」



後書き

うーん、デュエルがちょっとあっさりな内容な気が……『ワイト』同士のミラーマッチでライフ4000ならこんなもんかな?




[6474] 第三十五話 ルート分岐点
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:4cd0461e
Date: 2011/06/22 01:34
さて今、ここデュエルアカデミアのデュエル場で行われているデュエル、十代君と明日香さんのデュエルも佳境だ。

「ビビってんのか明日香?お前も大したことないな!」

「何ですって!?」

「ハッキリ言って、今のお前は斎王に操られてるだけでつまらねぇ。カッコ悪いぜ」

十代君は明日香さんに失望したかのように溜め息をつき、肩を竦める。

と、明日香さんは肩をワナワナと震わし……

「カッコ悪いですって!?この私が!?ふざけないで!あなたに言われたくないわよ!」

「うわーぉ!あの啖呵!あれこそ天上院君だ!」

「……と言いつつ、万上目君、腰が引けてるっスよ?」

「しょ、正直怖いドン……」

「よ、よし!明日香の闘志に火が着いた!頑張れ十代君!」

もの凄い剣幕で吠えた明日香さんに、周りのギャラリーは皆引き気味だった。

「ははははは……」

「……和希君、この状況で何でそんな楽しそうに笑ってられるんスか」

「ははは、だって、見てる分には面白くない?こーゆー修羅場」

「……知ってはいたけど、どんだけ性格ネジ曲がってるんザウルスこの人」

「いやー、あの怒りがこっちに向けられたら即土下座か逃走するケドね?他人事万歳?」

「……相変わらずいい根性してるっス」

「ぐぐぐぐぐ……」

「……んで、三沢先輩は何を唸ってるドン」

「う、羨ましい!俺だって、あんな修羅場を作れる相手が欲しい!そう、例えば!彼女とか!お姉様とか……あと特に妹とか!!」

「君はどっかの○リコン神父っスか?」

「と言うかタニヤとかいう人はどうしたんザウルス」

「ははははは……」



……なんて、絶賛外道中の僕だったが、実際、内心はかなり切羽詰まっていた。



ピカッ!

「!? なんだよこれ!?」

「あれは、輝かせてはならない不幸の光……」

「斎王!?」

「遊城十代、この鍵をお前に託す」

「え!?」

「決して、誰にも渡してはならない。決して」

「……」

「……朝倉和希、起きているのはわかっていますよ」

「……ありゃま、バレてましたか」

斎王さんは十代君に鍵の入った小箱を渡し、目から不可思議な光を放ち、それで催眠術にかけたのであろう十代君をベッドに戻させた後、今度はベッドで狸寝入りしていた僕に話し掛けてきた。

いやー、ベッドでゲームしてたら外から憎しみの……じゃなくて『破滅の光』の光が見えたから慌てて狸寝入りしてたんだけどね。

……今、目の前に居る斎王さんは僕とデュエルした『破滅の光』の人格とは別の斎王さん本来の人格だ。

オージーン王子を洗脳し、レーザー衛星『ソーラ』を手に入れた『破滅の光』はすぐにでもそれを起動しようとしたのだが、斎王さんは今までそれん抑えていたのだ。

だが、それも限界になり、原作では完全に『破滅の光』に乗っ取られる前にあの鍵、レーザー衛星『ソーラ』を制御するのに必要な2つの鍵を十代君とエド君に渡したのだ。

……正直、一安心した。『破滅の光』が『ソーラ』を手に入れてからこれまで、原作と食い違いが起きて、いつ『ソーラ』が起動させられないかどうかが不安でしょうがなかったのだ。

「……それで、僕にも何か用ですか?」

まさか、原作でエド君に渡していたもう1つの鍵を僕に渡すんじゃ……

「……あなたの事ですから、今私が遊城十代に渡した物が何か、勘づいているのではないですか?」

「……薄々は」

毎度の如く、『識ってる』だけなんだけどね。

「本来ならば、あなたに預けたい所なのですが、残念ながら以前、あなたは奴……『破滅の光』とのデュエルに敗れてしまっている」

「うぐ……」

た、確かに。あの時でさえ、僕は切り札の『アルカナフォースEX THE LIGHT RULER』どころかエースカードの『アルカナフォースⅩⅩⅠ(21) THE WORLD』すら使われずに『破滅の光』に敗れている。『破滅の光』とまた直接に対峙するような事になれば、鍵を守り抜ける自信は無い。次回も洗脳を免れられる保証も無い。

……と言うかぶっちゃけ、あんなチートさんともう戦いたくない……

「残るもう1つの鍵はエドに渡します。あなたには鍵を持つ二人を支えて欲しいのです」

……要はまたサポート役に徹しろって訳ね。……また十代君任せになってしまうが、まぁ、適材適所って言うし、しょうがないか。魔術師は魔術師らしく、後方支援に励みますか。

「……もう時間が無い。すまない。私のせいでこのような事に。……どうか、この世界を守って欲しい」

涙を流しつつ、斎王さんは消えるように去っていった。



そんな事があったのが昨日の夜。その翌日の今日、原作通りに強く洗脳された明日香さんが鍵を取り戻しに来た所を見ると、どうやら斎王さんは完全に『破滅の光』に乗っ取られてしまったようだ。

……原作通り、どっかのライトニング・バロンよろしく「光に栄光あれ!」って叫んでたんだろうなぁって想像して笑ってしまったのは秘密だ。

だが、この先はもう笑ってはいられない。十代君とエド君に『ソーラ』の鍵が渡った事により、事態はいよいよ最終局面に差し掛かって来た。

そして、ここに来て僕には2つのルートの内1つを選ばなくてはならない。

まず1つは、このままデュエルアカデミアに残り、鍵を狙ってくるオージーン王子を十代君と共に撃退するルート。もう1つは、エド君とDDとの宿命のデュエルに協力するルート。この2つのイベントは同時に起こる為、どちらか一方にしか付いていけない。

どちらにしろ、最後の最後には『破滅の光』に完全に乗っ取られた斎王さんとの決着が待っているのだが……

先日、僕と神楽坂君とのデュエルの後、再びペガサスさんがデュエルアカデミアに来て、鮫島校長のいない間に光の結社を野放しにしてしまった責任でクビになった(と勘違いした)クロノス教諭とナポレオン教頭のインダストリアル・イリュージョン社への再就職を賭けたトライアングルデュエルが行われた。

……因みに、僕は勝手にこのデュエルの事を、デース、なノーネ、アールの三竦みデュエル、縮めてDNAデュエルと呼んでいる。

このDNAデュエルが行われた後、鮫島校長はペガサスさんと一緒に、究極のDのカードについての話をする為に島を離れた。

原作ではこの数日後、エド君とDDの宿命のデュエル、そして、十代君とオージーン王子の鍵を賭けたデュエルが行われている。

そして、その狼煙となるプロリーグのタイトルマッチが今から5日後に行われる。

……迷っていられる時間は、もう残り少ない。

「……希君!和希君!」

「ふぇ!?」

「何をそんな深刻そうな顔をしてるんだよ?」

「ふん、どうせまた下らない事を考えているに決まっている」

……顔に出てしまっていたようだ。

今は、十代君が明日香さんに勝ち、無事洗脳も解けた後、久々に全員が揃ったので、今後の『光の結社』対策その他諸々を万丈目ルームで駄弁っていた所だ。

「んー?いやね、ちょいと悩んでる事があってね」

「悩みかい?ふふふ、もし恋の悩みなら、僕にお任せさ」

「……吹雪さん、この人に限ってそれは多分ないザウルス」

「うーん、ル○プ・ザ・ループは100回出来るのに、なんでト○キョウタワーが出来ないんだろう……」

「ハイパーヨ○ヨーかよ!?」

「それ上手いのか下手なのか意味わかんないっス」

「中○名人にでも弟子入りして来い!」

「ふ、甘いな和希!俺はダブル・ドラゴン・ル○プは余裕だ」

「嘘ザウルス!?」

「嘘だ!」

「嘘なの!?」

「ダブル・シュート・ザ・ム○ンで限界だ!」

「十分凄いし!?」

「はははははは……」

……ま、ルート決めるの、明日でいいか。

ん?何だいワイト達?……夏休みの宿題を後回しにする子供みたい?……言わないで……



「ふふふふふ……」

「? どうしたのよももえ?そんなに楽しそうに」

「明日香さんが元に戻ったから、気持ちはわかるけどね」

「いえ、少しお二人が羨ましくて」

「「羨ましい?」」

「だって、お二人共、意中の殿方と両想いのようですから」

「「な!?」」

「さっきのデュエルの最終局面での十代さんの叫び、『融けろ!凍てついた明日香の心!』。あれは言葉通り、凍てついた明日香様の心を溶かす十代さんの熱い愛でしたわ」

「ちょ、ちょっとももえ!」

「ふふふ、そして、ジュンコさんと朝倉さんが両想いなのは最早言うに及びませんわ」

「い、言うに及ばない!?」

「待ちなさい!ジュンコはともかく、何で私と十代が両想いなのよ!」

「ア、アタシだって朝倉となんて……!」

「「? 呼んだ(か)?」」

「「呼んでない!!」」

「「?」」



今日のワイト



3ワイト「「「カタカタカタ?」」」

和「ん?何で斎王さんにサポート任されたのに、今回の鍵を賭けたデュエルを普通に十代君にやらせたかって?」

3ワイト「「「……(コクコク)」」」

和「だって、十代君にフラグ立てて欲しいし」

3ワイト「「「……」」」

和「ふふふふふ、そしてゆくゆくは明日香さんとレイ君が十代君を取り合い、それにおろおろする十代君……。ふふふふふ、今から考えるだけでも楽しみでしょうがない」

3ワイト「「「! カタカタカタ!」」」

和「ん?後ろ?って……」

明「……」

和「……あ、あははははは……」

3ワイト「「「カタカタカタ……(その後、彼を見た物は誰も居ない……)」」」

和「ぎにゃー!?テ○ルズ風にゲームオーバーにしないでー!」



後書き

……酷い。この一言に尽きます。

うぅぅ、やっと試験が終わったってのに、場面が言わばピッチャーのローテーション谷間と言うかなんと言うか、どう足掻いてもこれぐらいの字数にしかならなかった(泣

……次回はデュエルが書きたい。

あ、あと、感想で『レシピ公開は本編更新の妨げになるからやらないで欲しい』という意見が出たので、その点についてご意見が欲しいです。お願いします。

ではまた次回。



[6474] 第三十六話 贖罪
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/06/22 01:34
SIDE 翔



「ちょ、ちょっとシニョール達!なんでこんな所に居るノーネ!ここは校長室なノーネ!」

アニキと僕、剣山君と三沢君の四人で校長室のソファーに腰掛けながらテレビを見ていると、クロノス先生とナポレオン教頭が咎めて来た。

「だって、今校長居ないんだろ?その間、ここででかいテレビを見放題♪」

「ドン」

そう、鮫島校長は少し前に、再びアカデミアを訪ねてきたペガサス会長に誘われ、今この島には居ないっス。なので、僕達四人はこの大画面3D液晶テレビを堪能していたのだ。

「テレビなら自分の部屋で見るのでアール」

「だって、レッド寮のテレビは小っちゃいから、迫力無いんだもんな」

「それに3Dどころか液晶でもないっスもんね」

因みに、和希君はこのテレビが嫌いらしい。「3Dは見てて目が疲れるからヤダ」らしい。

「イエロー寮のテレビも、ここまでは大きくは無いからな」

「今日はプロリーグの、世界タイトルマッチの日だドン。どうせなら良いテレビで見たいザウルス」

「「世界タイトルマッチ?」」

そう言うと、剣山君がリモコンでチャンネルを回した。

『さぁ、待ちに待った世紀の対戦!プロリーグ世界タイトルマッチの幕が、ここに切って落とされます!』

「おー!満員だぜ!」

「流石、世界タイトルマッチだドン」

「そうっスね」

最高潮に盛り上がっているスタジアムを見て、いつかアニキ、そしてお兄さんとも、この舞台に立ってデュエルをしたいと思った。

と、ナポレオン教頭が残念そうに溜め息をついた。

「チャンプ……今更ながら、レッド寮潰しは彼に頼めば良かったのでアール」

「チャンピオンなんて、呼べる訳無いじゃないっスか」

「それが、呼べるのでアール」

「教頭は知り合いザウルス?」

「ワガハイでは無く、エドが知り合いなのでアール」

「そう言えば、エドの後見人ンーは、世界チャンピオンのDDなノーネ」

「DD!?」

「DDと言えば、今日王座を防衛する、プロリーグ王者に10年間君臨している史上最強のデュエリストだな」

「この学校での保護者も、DDになってるノーネ」

衝撃の事実だった。まさか、エドの親代わりの人がそんなに凄い人だっただなんて……

「世界チャンピオンがエドの親代わりか。ははは、エドの奴、道理で強い筈だぜ」

「何言ってるんスか。そのエドに、アニキは勝ってるじゃないっスか」

「流石はアニキドン」

「そ、そうか?あれ、ひょっとしてオレってもう世界チャンピオン目指せる位置に居たりすんのかな?ははははは……」

「……すぐ調子に乗るノーネ」

と、アニキが何かを思い出したように三沢君に話し掛けた。

「そう言えば三沢。お前、オレとデュエルしたあのなんとか博士とかいうじいちゃんに呼ばれたのに何で行かなかったんだ?あのじいちゃん、偉い学者なんだろ?」

「あー、デュエル大統一理論のツバインシュタイン博士っスね」

そう、つい一昨日、急にアニキが物理の補習テストの呼び出しを受けた。そして、補習のデュエルと号して、博士とデュエルする事になったっス。

でも和希君曰く、これは斎王の罠で、ツバインシュタイン博士の理論的なデュエルでアニキの引きの強さを伴ったデュエルを否定して、アニキの自信を喪失させようという作戦だったらしいっス。

確かに考えてみたら、呼び出しの校内放送のクロノス先生のしゃべり方がおかしかった点(いつもはシニョール十代って呼ぶのに、この時は遊城十代クーンと呼んでいた)や、ジェネックス中は一切のテストが行われない筈だった点等、おかしな点が何個かあった。

まぁ、やっぱりアニキがここ一番での引きの強さを見せて、デュエルは無事アニキの勝利に終わった。

この時、テストの事前勉強(と言っても、始まる前の数分間だけだったけど)の為にと、剣山君が三沢君を連れて来ていた。

そして、アニキと博士のデュエルを僕達と見た後、三沢君はこの機会にと、ツバインシュタイン博士に自分独自のデュエル理論を述べた。

この理論に感嘆したツバインシュタイン博士が、三沢君を自分の後継者へと見い出したのだ。

「おいおい、光の結社の事をほっといたままこの島を離れる訳にもいかないだろ。ま、そっちの方が一段落しても、俺はあの人の後継者にはなるつもりは無い」

「? なんでだよ?」

「あの人にとって、デュエル=理論だからな。俺はそうは思わない。目の前に、理論では測れない奴がいるからな」

「……オレかよ」

「ははは、まぁそう腐るな。誉め言葉だ。確かに、理論はデュエルにおいて大きな武器と成り得る。だが、ドローや勘だって、デュエルの勝敗を大きく左右する事もある。俺はそう思うんだ」

「……」

「ま、理論が俺の最大の武器なのは変わらないからな。それを磨く為に、今度の長期休暇中は博士の元で助手をしながら理論の勉強をさせて貰う事にはなっている」

……三沢君も変わったっスね。前はなんと言うか、理論や計算が全てだった感じっスからね。

「ははは、和希なんて、三沢が喜びの余りに裸で島中を走り回らないか心配してたぞ?」

……それは犯罪っス。

「ははは、前までの俺だったらやりかねないかもな。理論と計算を全てとするデュエリストにとって、あの人は神みたいなものだからな」

……やりそうだったんだ。……と言うか、今の三沢君なら普通にやりかねないっス。

「そう言えば、その和希はどうしたんだ?」

「なんか昨日の夜から、用事があるってレッド寮を出てるドン」

「こんな時に、何してるんスかね?」



SIDE OUT



SIDE 和希



『この10年間、世界のトップに君臨しているDD、今悠然と、控え室へ歩いて行きます!』

こちらオールド・スネ○ク。 大佐、潜入に成功した。

僕は今、エド君の船……の中のベッドの下で、ラジオを聴きながら息を潜めている。

結局、僕はエド君の方のルートを選ぶ事にしたのだ。

こちらの方は、もしエド君が負けてしまった場合、もしかしたらDDに取り憑いている『破滅の光』の残骸と斎王さんに取り憑いている『破滅の光』本体が合体、『真・大魔王バ○ン』ならぬ『真・破滅の光』とかになってしまったりしたらもうどうしようも無くなってしまう。

……いや、あっちも十代君が負けちゃったらヤバいんだけどね。

あー因みに、なんでオールド・ス○ークかと言うと……はぁ……

……ここ半年で急に増えだした若白髪に憂鬱になる。……光の結社関連のストレスかな?

まぁ、それはともかく、昨日の夜、エド君が斎王さんの所に談判をしに行った(多分門前払いされてるけど)のを見計らって潜入した訳だ。

泣いても笑っても、『破滅の光』との戦いも、今日明日で決着が着く。

……あー、でもこの場面で、僕に出来る事が何かあるのかな……

完全に『破滅の光』へと覚醒した斎王さんと対決なんてしたら……今度こそ、このSSのタイトルが『ライトロード使いのGX世界放浪記』に成りかねない事態に陥っちゃいそうだし……

……どうしたもんかね?



SIDE OUT



SIDE 翔



「メタ発言は禁止っス」

「い、いきなりどうした翔?」

「……なんか今、和希君が何処かでメタ発言をしていた気がするっス」

「……お前のツッコミも神憑ってきたな」

「……一瞬、種が割れたようなイメージが見えたドン」

「言ってる場合かよ!だー!この!映れ!何で映んないんだよ!」

アニキは砂嵐画面のテレビを拳でガンガン叩いていた。

チャンピオンのDDと、IQ200の頭脳を持ち、あらゆるカード犯罪に精通しており、獄中からFBIにも協力しているという挑戦者、ドクター・コレクターとのタイトルマッチがいよいよ始まった。

1ターン目、DDが1体の守備表示モンスターと1枚のリバースカードだけという平凡な出だしだったのに対して、挑戦者のドクター・コレクターは、墓地へ送られるモンスターをゲームから除外させる永続魔法『次元の裂け目』と手札交換カードのコンボでモンスターを大量に除外させた後、ライフポイントを2000払う事で、お互いに除外されたモンスターをそれぞれのフィールド上に可能な限り特殊召喚する魔法カード『次元融合』で除外したモンスター、『コスモクイーン』(攻撃力2900)3体の『マジシャンズ・ヴァルキリア』(攻撃力1600)『黒魔導師クラン』(攻撃力1200)の5体をいきなり特殊召喚したのだ。

DDは、このターンの攻撃はなんとかカウンター罠の『攻撃の無力化』で乗りきったものの、自分フィールド上に表側表示で存在する魔法使い族モンスターの数×200ポイントダメージを相手ライフに与える魔法カード『マジックブラスト』で1000ポイントのダメージを受けたっス。

ドクター・コレクターのフィールド上のモンスター、『黒魔導師クラン』は自分のターンのスタンバイフェイズ時、相手のフィールド上のモンスター×300ポイントのダメージを与える効果を持っており、更に『マジックブラスト』は墓地に存在する場合、自分のドローフェイズ時に通常のドローを行う代わりに、このカードを手札に加える事が出来る効果を持っている。放っておいたらそれだけでライフポイントを削られてしまう状態だった。

しかも、フィールド上に表側表示で存在する限り、相手は表側表示で存在する他の魔法使い族モンスターを攻撃対象に選択する事は出来ない効果を持つ『マジシャンズ・ヴァルキリア』が3体揃っており、『ヴァルキリア・ロック』で攻撃もままならない状態、極めつけは攻撃力2900の強力モンスター『コスモクイーン』、将に絶体絶命の状況だったっス。

それに対して次のターン、DDは、『メタルデビル・トークン』を1体特殊召喚する魔法カード『デビルズ・サンクチュアリ』を2枚発動、さっきのターンに守り抜いたモンスターと2体の『メタルデビル・トークン』の3体を生け贄に捧げ、何かモンスターを召喚した……

……と思った瞬間、テレビが砂嵐画面になってしまったのだ。

「アニキ退くザウルス!ここは俺の必殺キックで……!」

「ややや止めるノーネ!」

「そうでアール!」

「殴ったりーノ蹴ったりーノしたら、高価なテレビが壊れるノーネ!」

「そんな事で、今時のテレビは治らないのでアール……」

今にも突進しそうだった剣山君を、クロノス先生とナポレオン教頭が慌てて止めた。

「うおぉぉぉぉ!」

「ちょ!?三沢君!?」

……と思いきや、今や剣山君よりも遥かに暴走癖のある三沢君がテレビに向かって突進していた。

「震天裂空斬光旋風滅砕神罰……攻撃ぃ!」

ズドォン!

「思いっきり行ったぁ!?」

パッ……

「う、映ったドン……」

そんなアホな……

「斜め45度で殴るのがコツだ」

……何処からツッコむべきやら。

と、映ったテレビには何と、さっきまでDDとドクター・コレクターがデュエルをしていたスタジアムに火災が起きていた。

『現場の様子はどうなっていますか!?』

『よくわかりません!世界タイトルマッチの最中、突如起きた爆発でスタジアムは火の海となり、大惨事となっています!』

『DDと対戦者のドクター・コレクターは!?』

『依然行方がわかっておりません!二人の安否が心配される状況です!』

「どうなってんだよ……」

余りの事に皆が呆然とそれを見ている中、アニキのその呟きだけが嫌に大きく聞こえた。



SIDE OUT



SIDE 和希



夜になり、船が沖の方へと向かって出港した。

どうやら原作通り、エド君がDDの呼び出しを受けたらしい。

……だが、結局の所、僕はエド君の仇討ちには特に余計な事をする気はない。

DDは、かつて『英雄』になりたくてプロデュエリストを目指したが行き詰まり、そこで当時のエド君が持っていた、エド君のお父さんの『究極のD』のカードのスケッチからその存在を知り、それを狙い強奪しようとした。その時、その邪悪な心を『究極のD』のカード、『D-HERO Bloo-D』に宿っていた『破滅の光』に取り憑かれてしまい、その人格がエド君のお父さんを殺害してしまった。そして、DDは何も知らないエド君を通してその事件の警察の捜査状況を知る為に、彼の後見人となったのだ。

……流石に、この因縁に僕がしゃしゃり出る事は出来ない。僕の役割は、万が一エド君が負けてしまった時の保険だ。

と、船が止まった。

エド君が外に出て暫くした後、僕も二人の決戦の地、DDの所有する巨大な豪華客船へと乗り込んだ。



……さて、乗り込んだはいいが、ここで1つ問題にぶち当たった。

二人のデュエルはたしかダンスホールで行われていた筈。

だが、エド君が入った扉はもう開かない。何処から入ったものか……

もう1つの扉は……DDのすぐ背後の位置、危険だ。

……偵察を頼んだワイト逹が言うには、もう既にDDは『Bloo-D』を召喚しているらしい。急がなくては……

と、

パリンッ

上の方からガラスの割れる音がした。

……『破滅の光』の力で具現化した『Bloo-D』の攻撃の余波で窓か何かが割れたのかもしれない。

僕は音のした方へ向かった。



果たして、ダンスホールの2階、吹き抜けとなっている部分の窓が割れていた。僕はそこから中に入った。

そして、下の階にはエド君と、眼鏡をかけ、悪魔のような白いオーラを纏う男、DDが対峙していた。

……状況は将に絶体絶命。DDのフィールド上には既に『D-HERO ドグマガイ』を吸収した『Bloo-D』が居る。

『Bloo-D』(攻撃力1900)は通常召喚出来ず、3体の生け贄を捧げる事で特殊召喚する事が出来る。そして、相手モンスター1体を指定してこのカードに装備し、このカードの攻撃力に装備したモンスターの攻撃力の半分を加え、装備したモンスターのモンスター効果を得る。今吸収している『ドグマガイ』の攻撃力は3400、よって今の攻撃力は3600、そして原作版『ドグマガイ』の効果、相手ターンのスタンバイフェイズ毎に相手ライフを半分にする効果を持っている。

更に、『Bloo-D』の強力なサポート魔法カード『D-フォース』、発動後に表側表示でデッキの一番上に置き、このカードが自分のデッキの一番上に表側表示で存在する時、自分のドローフェイズにドローする事が出来ない。その代わりに『Bloo-D』はこのカードが自分のデッキの一番上に存在する時、相手フィールド上に表側表示で存在する効果モンスターは全て効果が無効化され、更に『Bloo-D』を対象とする相手の魔法・罠カードの発動と効果を無効にし破壊する、も発動されいる。

一方、エド君のフィールドには、モンスターは守備表示の『D-HERO デビルガイ』(守備力800)、このカードが自分フィールド上に表側攻撃表示で(原作では表側守備表示でも可)存在する場合、そのターンにバトルフェイズを行わない代わりに1ターンに1度だけ相手モンスター1体をゲームから除外する事が出来、この効果によって除外したモンスターは、2回目の自分のスタンバイフェイズ時に同じ表示形式で相手フィールド上に戻る、が1体のみ。恐らく、さっきのターンにその効果で『Bloo-D』を除外しようとしたが、『D-フォース』で防がれてしまったのだろう。

その他には、カウンターが2つ乗ったフィールド魔法『幽獄の時計塔』とリバースカードが1枚。

『幽獄の時計塔』は相手ターンのスタンバイフェイズ時に、このカードに時計カウンターを1個乗せ、時計カウンターの合計が4個以上になった場合、このカードのコントローラーは戦闘ダメージを受けず、時計カウンターが4個以上乗ったこのカードが破壊され墓地へ送られた時、手札またはデッキから『D-HERO ドレッドガイ」1体を特殊召喚する。

一応、あと2ターンで戦闘ダメージを受けなくなるものの、エド君の残りライフは200。一方でDDのライフは2000。ヤバい事この上ない。

と、DDがエド君に話し掛けた。

「エド、お前はまだ気づいてないようだな」

「!?」

「いくらお前が『D-HERO』の未来を操る力を信じようとも、お前自身の中では、ずっと時は止まっている!」

「な!?」

「お前の父親が死んだ時から、何も変わっちゃいない!何も成長しちゃいない!お前はあの時のガキのままだ!」

「くっ……」

「ふふふふふ、魔法カード『ドレイン・タイム』発動!」

パキィン……

「な!?」

『幽獄の時計塔』が凍り付いてしまった。

「『ドレイン・タイム』は、フィールドに『Bloo-D』が存在する限り、互いの任意のフェイズを凍結させる。俺が選ぶのは当然、スタンバイフェイズ。これで、お前の時は完全に止まった!」

……またトンデモな原作オリジナルカードを。

「行け『Bloo-D』!『ブラッディ・フィアーズ』!」

「カウンター罠発動!『D-カウンター』!『D-HERO』に攻撃してきたモンスターを破壊する……」

バァン!

「な!?」

エド君が発動した『D-カウンター』が砕け散った。

「無駄だ!『D-フォース』の力を得た『Bloo-D』には、魔法も罠も効かん!」

そのまま、『Bloo-D』(攻撃力3600)が放つ無数の血の槍に貫かれ、『デビルガイ』(守備力800)が粉砕された。

「ぐ……馬鹿な!?モンスターエフェクト(効果)、魔法、罠、全てが効かないなんて!」

「くくくくく、感動するだろうエド?お前の愛する父が作り上げた『究極のD』。それが将に完全無欠なんだよ」

「く……」

「俺はリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「僕のターン!ドロー!……リバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

「お前のフィールドにモンスターは居ない。勝負はついたな。俺のターン!当然、お前の『幽獄の時計塔』は『ドレイン・タイム』の効果で時を進める事は出来ない」

「くっ……」

「死ねエド!父親の下に逝くがいい!『Bloo-D』!『ブラッディ・フィアーズ』!」

「ぐ……」

「ふふふ……」

エド君が無数に降り注ぐ血の槍に貫かれた……かに見えた。

だが、攻撃で起こった砂ぼこりが晴れると、仮面を被った巨人がエド君を守るように立ち塞がっていた。

「馬鹿な!?俺は攻撃と同時に罠カード『砂塵の大竜巻』で『幽獄の時計塔』を破壊した筈!」

「ふ、僕はそれにチェーンして罠カード『エターナル・ドレッド』を発動させた!このカードは『幽獄の時計塔』に時計カウンターを2つ乗せる。貴様が『幽獄の時計塔』を破壊してくれたお陰で『幽獄の時計塔』の効果で『ドレッドガイ』をデッキから特殊召喚。このカードが特殊召喚されたターン、自分フィールド上の『D-HERO』は破壊されず、コントローラーへの戦闘ダメージは0になる!」

「だが、『D-フォース』の力を得た『Bloo-D』の効果で、貴様のフィールド上のモンスターの効果は全て無効の筈!」

「だから僕は更にチェーンしてもう1枚罠を発動させた!罠カード『強欲協定』!貴様のデッキを見ろ」

「! なに!?」

いつの間にかDDのデッキの一番上から『D-フォース』が消えており、それが手札に加わっていた。

「このカードは、互いのプレイヤーにデッキからカードを1枚ドローさせる!『D-フォース』が無くなった事により、モンスターエフェクト無効化の効果も消えた!『ドレッドガイ』エフェクト発動!『幽獄の時計塔』の効果で特殊召喚した時、自分フィールド上の『D-HERO』以外のモンスターを全て破壊し、その後、自分のセメタリー(墓地)から『D-HERO』と名のついたモンスターを2体まで特殊召喚する事が出来る!現れろ『D-HERO ダイヤモンドガイ』(守備力1600)!『D-HERO ダイハードガイ』(守備力800)!」

『『ハッ!!』』

「そして、『ドレッドガイ』の攻撃力と守備力はそれぞれ、自分フィールド上の他の『D-HERO』の攻撃力、守備力の合計の数値となる!(守備力1600+800→2400)」

やるやる!

「いいぞエド君!」

「!? 朝倉!?何故ここに!?」

……思わず声援を掛けてしまった。

「エド君!君の時は止まってなんかいないよ!」

「!」

「君は父親を殺されて、泣いていた昔とは違う筈だ!自分の手で仇を討とうと一人で立ち上がって、現に今、その犯人と対峙している!ゆっくりだけど、確実に君の時は刻まれている筈だよ!」

「……」

「寧ろDDさん!あなたの方こそ、行き詰まっていた時と何ら変わっていない!」

「何だと!?」

「あなたは自らの手で『ドレッドガイ』を召喚させただけじゃない。『ドレイン・タイム』の効果で、『Bloo-D』に吸収されている『ドグマガイ』の強力無比な効果を自ら殺している!あなたは英雄なんかじゃない!手に入れた強力なカードの力に、ただ振り回されているだけの愚者だ!」

「ぐ……おのれ小僧!エドを葬った後は貴様だ!再び『D-フォース』を発動!更に魔法カード『アンフェア・ジャッジ』を発動!このカードはバトルフェイズに相手モンスターを破壊出来なかったターンのメインフェイズ2に発動可能!ライフを800ポイント払い、自分フィールド上の表側表示モンスター1体を選択!相手フィールド上の攻撃表示モンスター全ての攻撃力と相手フィールド上の守備表示モンスター全ての守備力を合計した数値が選択したモンスター1体の攻撃力を上回っている場合、選択したモンスター1体は相手の場のモンスター全てに1回ずつ再び攻撃することが出来る!」 DD残ライフ1200

「何!?」

「『ブラッディ・フィアーズ』!」

「ぐ!?」

再び『D-フォース』を張り、『ドレッドガイ』の効果を無効化した『Bloo-D』の全体攻撃に、エド君の3体の『D-HERO』が破壊された。

「ははははは!どうだ小僧!この力を持ってしても、俺が英雄じゃないと言い張るか!」

……全然わかっちゃいないよ、この人。

「英雄っていうのは、過去の功績に対して人々から贈られる称号で自分で成る物じゃないんですよ!第一、あなたは『どんな英雄も、何らかの罪を犯している』って言いましたけど、英雄の犯した罪は、結果として人に感謝される物に繋がっているんですよ!あなたのような私利私欲の為だけに罪を犯した英雄なんて聞いた事がありませんよ!」

……どこぞの仮面の人の理論だけど。

「ぐっ……減らず口を……!」

「エド君!」

「!」

今の攻撃で、半ば諦め半分になっていたエド君に、僕は叫んだ。

「お父さんの作った『D-HERO』を信じるんだ!カードを信じればデッキは必ず応えるよ!十代君がそうだったみたいに」

「十……代……」

「カードに対する思いは、君だって十代君には負けてない筈だよ!」

「……!」

エド君の目に光が戻った。

「僕のターン!ドロー! ! これは……!?」

……引いたようだ。『Bloo-D』の余りの力に脅威を感じたエド君のお父さんがエド君に残した、対『Bloo-D』の原作オリジナルカード!

「僕は『D-HERO ダークエンジェル』を手札からセメタリーに送り、エフェクト発動!『ダークエンジェル』を復活させる!」

「墓地から復活する『D-HERO』だと?」

「そう、そしてこのカードが復活するのは、相手のデッキの1番上だ!」

「何!?」

そう、『Bloo-D』が能力を最大限に発揮するのは『D-フォース』がデッキの1番上にある時。このカードで『D-フォース』をデッキの1番上で無くしてしまえば……

「これで『D-フォース』の力は封印された!フィールド魔法『ダーク・シティ』発動!『D-HERO』が攻撃し、その攻撃力が相手モンスターの攻撃力よりも低い時、その攻撃力をダメージ計算時のみ1000ポイントアップさせる!」

周りの景色が黒く塗り潰されたビルが建ち並ぶ、ゴ○サムシティのようになった。

「『D-HERO ディバインガイ』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!行け!『ディバインガイ』!『Bloo-D』(攻撃力3600)に攻撃!」

『ハァッ!』

攻撃力の高い『Bloo-D』に攻撃する事により、『ディバインガイ』の攻撃力が1000ポイントアップした(攻撃力1600→2600)。

このままではまだ自滅……だが……

「『ディバインガイ』は攻撃宣言した時、相手の装備カードを1枚破壊し、500ポイントのダメージを与える!僕は『Bloo-D』に吸収された『ドグマガイ』を破壊!」

これにより、『Bloo-D』の攻撃力は元々の1900に戻る!

「ぐ……こんな事が……」 DD残ライフ700

この攻撃が通れば700ポイントのダメージ、エド君の勝利だ!

「覚悟しろDD!父さんの仇!」

「父の仇?ふふふふふ、なら聞こえないか!この呻きが!」

『うぅぅぅぅ……』

『あぁぁぁぁ……』

「な!?」

と、『Bloo-D』の翼に無数の人の顔が浮かび上がり、呻き声を上げ出した。

その中には、先程DDと対戦していたドクター・コレクターらしき物もあった。

突然の事に、エド君は『ディバインガイ』の攻撃を中断させた。

「確かに『Bloo-D』は公式デュエルじゃ使わなかった。だが裏世界のデュエルでは、こいつは何人ものデュエリストの魂を吸い込んでいる!」

「何……だと?」

「会いたいだろうエド?愛する父に」

「!」

と、エド君に似た、眼鏡をかけた男性の顔が浮かび上がってきた。

『エ、エド?エドか?大きく……なったな……」

「父……さん?」

「『Bloo-D』の中にはお前の父親の魂もある。それでもトドメを刺せるのか?」

「貴様……!」

「……っ!」

知らず知らずの内に握り拳を握り締める。このやり方には虫酸が走る。

……だが、僕には何も出来ない。自分の無力さが腹立たしい。

『エド、私は恐ろしいカードを創り上げてしまった……』

「父さん……」

『私が『Bloo-D』の創作に取り掛かった時、聞こえてきたのだ!『破滅の光』の声が!』

「『破滅の光』……」

『私は勝てなかった。かつてペガサスが神のカードを創った時のような誘惑に。だが、それは間違いだった。……よく聞けエド!このカードに宿る『破滅の光』の力は既に脱け殻だ!』

「脱け殻?」

『『破滅の光』の本当の力は別の人間に取り憑いている!その人間は、斎王琢磨!』

「斎王!?」

『『破滅の光』がその本当の力解き放てば世界は滅びる!行けエド!『Bloo-D』を倒し、斎王の所へ!』

「でも……!」

『エド、友達が出来たんだな』

エド君のお父さんがこっちを向いた。

『君、どうか、エドが私のような間違いを犯さないよう、支えてやって欲しい』

……僕は神妙に頷いた。

「エド君」

「!」

「どちらにしろ、お父さんの肉体はもう滅んでしまっている。辛いけど、君が介錯してあげるんだ」

「う、うぅぅ……」

『エド、元気でな』

「父さん……父さん!父さん!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

攻撃を再開した『ディバインガイ』の攻撃が『Bloo-D』を貫いた。

「ぐあぁぁぁ!?そんな、馬鹿なぁぁ!?」 DD残ライフ0

DDが倒れこみ、デッキのカードが散らばった。

と、

『ギャアァァァァァ!!』

その中の『Bloo-D』のカードから、DDに取り憑いていたのと同じ白い悪魔的なオーラ……『破滅の光』の脱け殻だろう……が漏れだし……

ズガァァァァン!!

爆発した。

「うわ!?」

「エド君!」

僕は爆風に吹き飛ばされたエド君を見て、慌てて近くの階段から下の階に降り、吹き飛ばされたエド君に近寄った。

「エド君大丈夫!?」

「くっ……ああ」

と、さっきの爆風で『Bloo-D』と『D-フォース』がこちらの方へ吹き飛ばされていた。

「父さん……」

エド君はそれを悲しそうに、しかし大切そうに手に取った。

と、

「俺は……」

「「!?」」

爆発で起きた炎の中にユラリとDDが立ち上がり……

「俺は英雄だ!選ばれた男なのだぁぁぁぁ!」

ズガァァァァン!

「ぐあぁぁぁぁ!?」

再び起こった爆発に吹き飛ばされた。

「くっ、脱出するぞ!」

と、エド君が急かしてきたが……

「! おい!朝倉!?」

僕は逆に炎の方へ走り、気を失っているDDの肩を抱き、引き摺ろうとした。

……だが、脱力した大人の男性一人運ぶのは……キツい……

「お前……!そんなクズを助ける気なのか!?」

「はぁ、はぁ、まぁね」

「どういうつもりだ!?」

エド君が敵意も露に睨んできた。

「……この人がこのまま死んだら、君は本当に満足なのかい?」

「何……だと?」

「それじゃ本当の償いにならない。この人が心から後悔して、悔やんでこそ、君のお父さんも喜ぶ。そう思わない?」

「……」

「少なくとも、僕はそう思うよ。それに、やっぱり人死には出来るだけ避けるべきだしね」

そう話を切って、再び僕は引き摺り始めた。

と、

「……」

「え……」

エド君が駆け寄り、無言で反対側の肩を抱いた。

「……急ぐぞ」

「……はいよ!」

僕が返事した……時だった。

ズガァァァァァァァン!

「「な!?」」

一際大きな爆発が起こり、僕逹の『真上』の天井が崩れた。

そして、『背後』で轟音が起きた。



「くっ……エド君大丈夫!?」

「あ、ああ……」

と、天井が崩れ落ちた際に起こった埃が晴れ……

「「!?」」

……それに半身を押し潰されたDDの姿がそこにあった。

「D……D?」

エド君は信じられない物を見る目で彼を見た。

……混乱していた頭が冴えてくる。

さっき、僕達が押し潰される瞬間、彼が僕逹を突き飛ばして助けてくれたのだ。

……DDは鈍く瞼を開いた。

「エド……無事……か……」

彼の顔は、将に憑き物の落ちたように穏やかなものになっていた。

「な、何故だDD!?今更……今更になって懺悔のつもりか!?」

エド君は混乱したまま、DDに向かって叫んだ。

と、DDは涙を流し出した。

「俺が、俺があんな……事をした……ばかりに……許して……くれとは言わ……無い。事実、俺の……心の底……に……殺してでも……奪い……たいとい気持ちが……僅かだが……あった。……その心……の闇……を……『破滅の……光』……につけ……こまれ……てしまった……寧ろ憎め……思う存分……呪ってくれ……」

「DD……」

DDは口から血を吐きながらも、穏やかに笑った。

「俺を……止めてくれた……のがお前で……良かった。俺は……これから……お前の……父親に詫びに……行く。……もっとも……万が……一……お前……の父親……と同じ所に……行けた……とすれ……ば……だ……が……」



「……」

安らかに、眠るように眼を閉じたDDを目の前に、エド君は立ち尽くしていた。

僕は背後からだったのでその表情は見えなかったが、その拳が震えているのが見えた。

ズガァァァァン!

と、また船の何処かで爆発が起きた。

「……行こう」

「……ああ」



その後、救援に駆け付けた鮫島校長のヘリに乗り、アカデミアへと急いだ。

待ち受けているのは斎王さん、『破滅の光』との決着……!

「……朝倉」

ヘリの中で、エド君がポツリと洩らした。

「最後の最後、DDは心の底から悔いていたと、デュエリストとしての誇りを取り戻していたと思うか?」

「……少なくとも、僕はそう思うよ」

……もしかしたら、彼がエド君の後見人になったのも、心の底には悔恨の念があったからかもしれない。

「……僕の仇討ちは、まだ終わっていない」

「え……」

「父さん、DD、『Bloo-D』に吸収された人々、その全ての運命を狂わせた『破滅の光』。それがまだ斎王に取り憑いている。奴との決着がまだの残っている」

「……」

と、エド君が真剣な表情で僕の方に向き直った。

「朝倉、力を貸してくれ。この因縁を終わらせる為に。そして斎王を『破滅の光』から救う為に」

……正直驚いた。まさかエド君が僕に頼んでくるとは……

……応えは決まっている。勿論……

「嫌だ」

「な!?」

「……なんて言う訳無いでしょ?任しんしゃい!」

「……」

僕が能天気に笑い、エド君が反眼でそれを睨む中、ヘリは斎王さんの待つブルー寮へと急いだ。



今日のワイトはお休みです



後書き

デュエル書けなかった……(泣

……まぁ、この回は原作でも二番目に泣ける場面だったからしょうがないか。因みに一位はヘルカイザー死亡回。

次回こそは、和希のデュエルを書きますので!そして第二期もクライマックス!筆に力が入ります!

ではまた次回!



[6474] 第三十七話 入口での攻防
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/06/22 01:34
DDの客船からヘリで脱出した僕逹は、ブルー寮へと急いでいた。

『破滅の光』の力のせいか、沖の方からヘリで見てみると、デュエルアカデミアの島全体を怪しい雲が覆っていた。

……やがて、ヘリがブルー寮の目の前に着いた。

「! 斎王!」

と、一番高い部屋の窓から、斎王さんがその部屋から出ていくのが見えた。

「もっと寄って!」

「エド!?」

「ちょ!?エド君!?」

エド君はパイロットの操縦桿を後ろから無理矢理操作し、その窓まで近付かせた。

ちょ!?この展開は、まさか原作通り……?

「はっ!」

「エド君!?」

ガシャーン!

エド君はヘリの扉を開けて飛び降り、体をボールのように丸めてその窓に突っ込んだ。

うぉーい!?ちょ 待てよ!今さっき協力を願い出てきたばっかりなのにそれは無いっしょ!?

……エド君はそのまま斎王さんを追い掛けてしまった。

「だー!くぉらヅラぁ!」

怒りの余り、どこぞの万屋さんの如く叫ぶ僕だった。無論、お決まりの返事は無い。

だー!ツ○ペリさんだって言ってたじゃないか!『ノミっているよなあ……ちっぽけな虫けらのノミじゃよ!あの虫は我々巨大で頭のいい人間にところかまわず攻撃を仕掛けて戦いを挑んでくるなあ!巨大な敵に立ち向かうノミ……これは『勇気』と呼べるだろうかねェ?』って!エド君、今の君の行動はノミと同類よォーッ!

慌て、僕も飛び降りようとしたが……

……あ、ムリだわこれ。

いやだって、エド君が飛び込んだ窓、まだ枠に結構ガラス残ってるし……このまま飛んだら、確実にグサッと行きますって!

……なんて、躊躇している間に……

ピシャッ!ズガァァァン!

「「「うわぁ!?」」」

ヘリのメインローター、大きい方の回転翼に雷が落雷した。

その結果、ヘリが大きく揺れ、パイロットが、握っていた操縦桿をそれにつられて前に倒してしまい……

ガガガガガ……!

「「「うわぁぁぁぁ!?」」」

テールローター、尾翼部分の小さい方のプロペラがブルー寮の屋根部分に接触してしまい、より大きな揺れが起き……

ズルッ……

「あ……」

……エド君の後を追おうと扉部分に立っていた僕はその揺れに耐えきれず、外へと吐き出された。

「朝倉君!」

咄嗟に鮫島校長が手を伸ばしたものの、虚しく空を切り……

「……!」

一瞬の浮遊感の後、僕の体は重力に従って落下し始めた。



あー、思えばこの1年と数ヶ月、色々とあった……

十代君とデュエルしたり……

翔君をいぢめたり……

剣山君にツッコまれたり……

ジュンコさんに殴られたり……

万丈目君をからかったり……

三沢君とバカやったり……

明日香さんを焚き付けて赤くさせたり……

ジュンコさんにシメられたり……

ワイト逹と悪巧みしたり……

クロノス教諭を震え上げさせたり……

吹雪さんの奇行を笑ったり……

ジュンコさんにボコされたり……

浜口さんがそれを温かーい目で見てたり……

……何故か色々な事が頭を過るなぁ……

……人それを走馬灯と言う。



だが、数秒後に来る筈だった、死をもたらすであろう衝撃は来なかった。

『キキキキキ……』

耳元で鳴っていた風切り音が弱まり、代わりに聞こえてきたのは無数の甲高い鳴き声と羽音。そして、降下速度がガクンと下がった。

我に返り、見てみると……

「うわ……」

僕の周りを無数のコウモリが覆い、僕の制服のあちこちを足で掴みながら羽ばたいていた。

やがて、仰向けに落ちていた僕の背中が、ゆっくりと地面に着いた。

「パラシュートも無しにスカイダイビングとは、随分とマゾヒスティックな事するのね」

そして、腕を組ながら、そんな僕を罵る麗人が一人。

「カ、カミューラさん……」

もしかして……と言うかさっきのコウモリはもしかしなくても、彼女が僕を助けてくれたのだろうか。

「あ、ありがとう……ございます……」

余りに意外過ぎる人からの救助に、呆然としたまま礼の言葉を言った。

「……勘違いするんじゃないわよ。お前を助けたのはオマケ。私が助けたかったのはあっち」

そう言って、テールローターが大破してバランスを崩したものの、僕と同じように無数のコウモリによって支えられ、ゆっくりと降下して行くヘリを顎で指した。

「正直、お前やあのじいさんが死んだってどうだっていいんだけど、あのじいさんに死なれたら今回の報酬の話もパァになるわ。勿体無い。それに、目の前に汚ならしい墜落死体を晒されるのも不愉快だわ」

……相変わらず性格悪い……

「墜落死体って……」

落ちた高さを見上げてみると、大体5階から6階位の高さだった。

……あの体勢でそのまま落ちてたら確かにヤバかったな。なんか走馬灯みたいなの見えてたし。3割方シバかれてたけど。

と……

『キキキ……』

1匹のコウモリが、さっきエド君が突入した窓から出てきた。

そして、そのコウモリがカミューラさんが差し出した手に止まり、その深紅の目と、同じくカミューラさんの紅い目が妖しく光った。

「今、あのちょっとイケてる子が、斎王とかいう男と対峙していたわ」

「!」

そうか、コウモリとの視界を共有して……

「……斎王から禍々しいオーラを感じるわ。これが……?」

カミューラさんが投げ掛けてきた疑問に、僕は首肯する。

僕は以前、『Bloo-D』から斎王さんに『破滅の光』の本体が移動している事をカミューラさんに話している。だから、監視をするにしても斎王さんには極力関わらない方がいいと僕は伝えていたのだ。

ついでに、僕は今までの成り行きもカミューラさんに伝えた。

「……そう、『破滅の光』と最終決戦って訳ね」

「はい。あー、なので……」

「?」

「これ以上は危険なので、カミューラさんのお仕事はここでおしまい、という事で」

「……は?」

「いや、最初に約束したじゃないですか。『危険な事はさせない』って」

「……」

カミューラさんは意外そうな顔で僕を見ていた。

「むぅ、もしかして僕をあのおじーさん、影丸さんと同類とか思ってました?心外ですね。僕は基本、約束はなるたけ守るようにしてるんですよ?」

「……そう」

そう言うと、カミューラさんは踵を返した。

「なら、私はここらで切り上げさせて貰うわ。精々頑張りなさい」

「ありゃ、応援してくれるんですか?」

「……別に。お前逹が負けたら世界が滅亡する。それだけよ」

「ははは、まぁ、善処しますよ」

と、カミューラさんは一度こっちを振り向き、笑った。

「……人間が皆、お前みたいにお人好しだったら良かったのに……」

……その笑顔は儚げで、泣いているようにも見えた。



「和希!大丈夫か!?」

「鮫島校長がヘリから落ちたって……」

「って、なんでピンピンしてるドン!?」

「……」

「? どうした和希?」

「……あの人、あんな笑い方もするんだな、ってね」

「? 何の事ザウルス?」

「……何でもない。それより、他の人逹は?」

僕は頭を振り、駆け付けてきた十代君、翔君、剣山君の三人に聞いた。

「明日香さんと吹雪さんは校長先生の手当て、万丈目君と三沢君は他の生徒を集めて光の結社の人逹と最終戦争中っス」

「……っていうのは表向きで、実際は僕逹がここに乗り込む為の陽動……って所?」

「流石先輩!その通りザウルス!こういう時『だけ』は頼りになるドン!」

「……『だけ』を随分強調された気がするんだけど?」

「お前がこの島に居なかった間に、オレとオージーン王子が鍵を賭けてデュエルしたんだ」

スルーかい。

「勿論、勝ったんでしょ?」

「へへ、まぁな。それで、この鍵がレーザー衛星『ソーラ』を操作する為の鍵だってわかったんだ」

「それで、斎王の狙いが『ソーラ』で地球を焼き払う事だってわかって、その野望を打ち砕く為に来たんスよ」

「途中で万丈目先輩と三沢先輩に連絡して、あっちの陽動の方も頼んだドン」

「……成る程ね。それはそうと、もう1つの鍵を持ってるエド君がもう突入しちゃってるんだよ」

「ああ、校長から聞いた。急ごうぜ」

「そだね」

僕は三人に加わり、目の前に見えていたブルー寮に突入しようとした。

だが……

ギギギ……

「な!?」

「お前ら!?」

突入する寸前、扉が開き、十数人の光の結社の生徒逹が出てきた。

……おいおい、こんな場面、原作には無かった筈だよ!?

と、光の結社の生徒逹の一人、銀流星君が口を開いた。

「遊城十代、鍵を持つお前に、斎王様が直々に会って下さるズラ。さっさと中に入るズラ」

「……はい?」

と、生徒逹が道を空けるように退いた。

「……来るなら来いって事か。上等だぜ!」

十代君が真っ先に突入する。

「ア、アニキー!」

「待つザウルス!」

翔君と剣山君もそれに続く。

僕もそれに続いて突入しようとした。

が、

ザザザ……

「げ……」

道を空けていた光の結社の生徒逹が再び立ちはだかった。

……あれ、これってひょっとして……

「朝倉和希、斎王様はお前を危険視しているズラ。故に、お前はここを通すなとのご命令ズラ」

……やっぱし……

僕は溜め息をつきながらデュエルディスクを構えた。

「要は、通りたければ腕ずくで……って訳ね」

「そういう事ズラ」

そう言って銀君……こう呼ぶとさっきの万屋さんみたいだ、もデュエルディスクを構える。まずは彼が相手らしい。

……しょうがない。こうなったら、やれる所までやるしかない!



「「デュエル!!」」

「僕のターン!ドロー!」

……銀君は十代君とデュエルした際、『巨大戦艦』デッキを使っていた。

その名前の通り、『巨大戦艦』と名の付いたモンスター達が主体のデッキ。

その効果は、戦闘によって破壊されない代わり、このカードの召喚(一部特殊召喚)に成功した時、このカードにカウンターを幾つか置き、このカードが戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時にこのカードのカウンターを1つ取り除く。そして、このカードがカウンターのない状態で戦闘を行った場合、ダメージステップ終了時にこのカードを破壊する、という物だ。

そして、その攻撃力は2000半ば。その中量級モンスターを、永続魔法『ボスラッシュ』 、このカードのコントローラーは通常召喚出来ない代わりに、自分フィールド上の『巨大戦艦』と名のついたモンスターが破壊され墓地に送られたターンのエンドフェイズ時、自分のデッキから『巨大戦艦』と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事が出来る、で次々と特殊召喚し、戦線を維持していくデッキだ。

だが、『巨大戦艦』にカウンターが乗るのは大部分が通常召喚時。特殊召喚時にカウンターが乗る『巨大戦艦 ビッグ・コアMk-Ⅱ』以外は『ボスラッシュ』の効果で特殊召喚されてもカウンターが乗らず、1度の戦闘だけで自壊効果で破壊されてしまう場合が多い。原作とPSP版ゲームオリジナルカードで、『巨大戦艦』にカウンターを乗せる魔法カード『シールドリカバリー』もあるが、それでも効率は悪い。

ましてや、出てくる『巨大戦艦』は攻撃力2000半ばの中量級。早めに墓地を肥やして、攻撃力3000を越える『ワイトキング』を召喚してしまえば問題無い!

「モンスターを1体守備表示でセット!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「俺のターン!ドロー!フィールド魔法『シャイン・スパーク』発動!」

辺りが眩しい閃光に包まれ、白一色に染まった。

「フィールド上の全ての光属性モンスターの攻撃力が500ポイントアップし、守備力が400ポイントダウンするズラ!」

!? ちょっと待て。『巨大戦艦』のモンスターに光属性のモンスターはいなかった筈……

! そうか、銀君と言えば……

「更に、『ロードブリティッシュ』(攻撃力1200)を攻撃表示で召喚!」

やっぱし、その辺のモンスターか……!

銀君が召喚したのは、1機の戦闘機。

そう、これは『巨大戦艦』と同じく、銀君が世界チャンピオンになったシューティングゲームであり、デュエルモンスターズと同じくコ○ミが製作している『グラディウス』がモチーフとなっている『超時空戦闘機』系のカード……!

「『ロードブリティッシュ』は光属性!『シャイン・スパーク』の効果で攻撃力が500ポイントアップズラ!(攻撃力1200→1700)『ロードブリティッシュ』で守備表示モンスターを攻撃!『マルチプルインパルスガン』!」

「っ!」

『ロードブリティッシュ』が高速で突貫してくる。

……しょうがない。ちょっと勿体無い気もするけど……

「罠カード発動!『聖なるバリア-ミラーフォース-』!相手モンスターの攻撃宣言時に発動!相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する!」

「何!?」

『ロードブリティッシュ』が放ったレーザーが現れた障壁に跳ね返され、『ロードブリティッシュ』自身に当たり、自滅した。

ふふふ、これぞエネルギー偏向装甲『ゲシュマイディッヒ・パ○ツァー』の威力!

「おいおい、モンスターが1体だけなのに『ミラーフォース』かよ?」

「使い所わかってんのかね?」

……周りの『光の結社』の生徒達が嘲っていたが、この場面ではこの選択がベストだった筈。

『ロードブリティッシュ』には、このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、●もう1度だけ続けて攻撃する事が出来る。●フィールド上にセットされたカード1枚を選択して破壊する。●自分フィールド上に『マルチプルトークン』(機械族・光属性・星4・攻撃力/守備力1200)1体を特殊召喚する。 の3つの効果のうちいずれかを発動出来る効果を持つ。

仮にここで発動しなかった場合、もし銀君が2番目の効果を使えば、僕の『ミラーフォース』は用を為さずに破壊されてしまう。

銀君が選ぶのが1番目か3番目の効果だとしても、1番目のもう1度の攻撃、3番目のトークン特殊召喚後のそのトークンによるダイレクトアタック時に『ミラーフォース』を発動するよりも、最初のこのタイミングで『ミラーフォース』を発動させておいた方が僕のフィールド上にモンスターが残る。

……全体的に考えて、ここで使ってしまった方が良いだろう。

「……リバースカードを1枚セットしてターンエンド」

「僕のターン!ドロー!裏側守備表示モンスター『魔導雑貨商人』(攻撃力200)を反転召喚!リバース効果発動!自分のデッキを上からめくっていき、1番最初に出た魔法か罠カード1枚を自分の手札に加え、それ以外のカードを墓地へ送る!」

めくったカードはモンスターカードの『ワイト夫人』『ゾンビマスター』『真紅眼の不死竜』『デス・ラクーダ』そして魔法カードの『ワン・フォー・ワン』。

「更に魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!手札からモンスター1体を墓地へ送り、手札またはデッキから星1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する!手札から『ワイト』を墓地に送り、デッキから星1の『ワイトキング』を特殊召喚!」

と、特殊召喚された『ワイトキング』は何故か手に鎌を持っていた。

へ? 友達の『カードを狩る死神』君からパクって来た? ……後で返してあげなさい。……と言うかあれか?さっきの『ミラフォ』と言いその鎌と言い、禁忌巌駄無かい?

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する『ワイトキング』と『ワイト』の合計×1000ポイント!『ワイト夫人』は墓地では『ワイト』として扱う為、墓地の該当カードは2枚!よって、『ワイトキング』の攻撃力は2000!『ワイトキング』(攻撃力2000)でダイレクトアタック!」

『ワイトキング』は手に持った鎌を構え、猛スピードで銀君に襲い掛かった。

「重刎首鎌『ニ○ズヘグ』!」

「ぐわぁぁぁぁ!?」 敵残ライフ2000

「更に、フィールド魔法『シャイン・スパーク』の効果により、光属性の『魔導雑貨商人』の攻撃力が500ポイントアップ!(攻撃力200→700) 『魔導雑貨商人』(攻撃力700)でダイレクトアタック!」

「うわ!?あたたたた!?」 敵残ライフ1300

『魔導雑貨商人』が背中の風呂敷から、その4本の腕で次々と雑貨を取り出し、銀君に向かって投げつけた。

……それなんて『エターナルスロ……』……止めとこう。前回この手のネタはやり尽くしたし。

「ターンエンド!」

よし!先制成功!のんびりしていられない現状、これは大きい。

「俺のターン!ドロー!」

と、ドローした銀君の口がニヤリと吊り上がった。……何をドローしたんだ?

「俺は装備魔法『フリント』をお前の『魔導雑貨商人』に装備するズラ!」

「げっ!?」

『魔導雑貨商人』に機械でできたヒトデのような生命体の3本の触手が巻き付いた。

ま、また厄介なカードを……

「このカードの装備モンスターは表示形式の変更と攻撃宣言ができなくなり、攻撃力が300ポイントダウンするズラ!(攻撃力700→400) 更に『フリントロック』(攻撃力1500)を攻撃表示で召喚!」

これらのカードも、○ナミ製作のシューティングゲーム『ゼクセクス』由来のカード……!

「『フリントロック』も光属性!『シャイン・スパーク』の効果で攻撃力アップズラ!(攻撃力1500→2000) 『フリントロック』(攻撃力2000)で『魔導雑貨商人』(攻撃力400)に攻撃!」

「くっ!?」 自残ライフ2400

『フリントロック』の放ったレーザーに、『魔導雑貨商人』が粉砕された。

「装備魔法『フリント』の効果発動!装備モンスターが破壊された場合、フィールド上のモンスターを1体選択し、そのモンスターにこのカードを装備するズラ!お前の『ワイトキング』にこのカードを装備!」

レーザーで起こった爆発の煙の中から『フリント』が現れ、触手で今度は『ワイトキング』に絡み付いた。(攻撃力2000→1700)

「ターンエンド!」

「……僕のターン!ドロー!手札から、魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動!自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外する!僕の墓地の『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を攻撃表示で特殊召喚し、君の墓地の『ロードブリティッシュ』をゲームから除外!」

……『ワイトキング』は『フリント』の効果で攻撃不可能だが、これなら……!

「『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)で『フリントロック』(攻撃力2000)に攻撃!『アンデット・メガ・フレア』!」

『真紅眼の不死竜』が黒炎を『フリントロック』目掛けて放った。

が、

「甘いズラ!リバース罠『力の集約』発動!」

「な!?」

「フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、フィールド上に存在する全ての装備カードを選択したモンスターに装備させ、対象が正しくない場合は、その装備カードを破壊するズラ!俺は『フリントロック』を選択!よって、『ワイトキング』に装備されていた『フリント』が『フリントロック』に装備されるズラ!そして『フリントロック』は『フリント』が装備されている時、このカードは『フリント』の効果を受けず、戦闘によっては破壊されないズラ!」

くっ、味な真似を……!

『ワイトキング』に絡み付いていた『フリント』が拘束を解いて『フリントロック』の前に移動し、バリアを張って黒炎を打ち消した。 敵残ライフ900

「……『ワイトキング』(守備力0)を守備表示に表示変更して、更にモンスターを1体、裏側守備表示でセットしてターンエンド!」

……正直、『ワイトキング』に『フリント』が装備された時は、『フリントロック』が無防備になっていた為、あっちのプレイングミスかと思って喜んでしまったが、成る程、そういう保険があったのか。

……ダメージが通って、ライフポイント的には依然として圧倒的に勝っているが、ボードアドバンテージは寧ろあっちにある。これは少しヤバいぞ……

「俺のターン!ドロー!『フリントロック』の効果発動ズラ!このカードが装備している『フリント』1枚を、フィールド上に存在する表側表示モンスター1体に装備させる事が出来るズラ!『真紅眼の不死竜』に『フリント』を装備!」

「くっ……」

今度は『真紅眼の不死竜』に『フリント』が絡み付いた(攻撃力2400→2100)

「更に手札から速攻魔法『フリント・アタック』発動ズラ!『フリント』を装備したモンスター1体を破壊するズラ!」

あー、そりゃそう来るよなぁ……

絡み付いた『フリント』から電流が流れ、『真紅眼の不死竜』が粉砕された。

「『フリント・アタック』は発動後、このカードが墓地へ送られた時、このカードをデッキに戻す事が出来るズラ!そして、『フリント』の装備対象が破壊された事により、このカード自身の効果で『フリントロック』にこのカードを再び装備するズラ!」

だー!もう、しつこいっつーの!

「『フリントロック』(攻撃力2000)で『ワイトキング』(守備力0)に攻撃!『フリント地獄突き』!」

「くっ!?」

『フリントロック』が装備した『フリント』から伸ばされた触手が『ワイトキング』を貫き、粉砕した。

……『ワイトキング』は戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地の『ワイトキング』か『ワイト』1体をゲームから除外する事で、墓地から特殊召喚出来るが、まだ墓地に2枚だけしか『ワイト』達が無い今、この効果を使っても、特殊召喚される『ワイトキング』の攻撃力はたったの1000。相手モンスターを戦闘破壊する事で効果を発揮する『超時空戦闘機』の的になるだけだ。

「っ!僕のターン!ドロー! ……! 」

と、その時、僕達二人を囲んでいる光の結社の生徒達の円の外、オージーン王子が側近であるリンドさんに肩を借りて、こっそりとブルー寮に入って行くのが見えた。

マズい、もし原作通りならば、エド君が完全に『破滅の光』へと覚醒した斎王さんに敗れた後、斎王さんがエド君の持つ『ソーラ』の鍵を奪い、更に倒したエド君の命と引き換えに十代君の持つもう片方の鍵を要求し、十代君はその要求を飲んで渡してしまう筈だ。

その後、途中まではネオスが斎王さんの手に2つの鍵が渡るのを阻むが、始まった斎王さんと十代君のデュエルの途中、『破滅の光』の力が宿ったフィールド魔法『光の結界』が発動されたせいでネオスが力を失ってしまい、鍵が斎王さんの手に渡ってしまう。

問題なのはここで、その後、そのデュエルを見ている、今は十代君に敗れて正気に戻っているオージーン王子が再び洗脳されてしまい、鍵を受け取って寮外へ逃走、『ソーラ』を発動させてしまうのだ。

つまり、早くしないと、このギャラリーの生徒達が、オージーン王子を追うであろう剣山君を阻んでしまう可能性もある。

逆に考えればこの状況の中、今、僕に出来るのは、オージーン王子が『ソーラ』を発動させるのを阻止して、皆の負担を軽くするぐらいだ。正直、『三幻魔』の時とほとんど同じ気がするけどしょうがない。

それには、ここに居る全員をさっさと倒さないと……!

だが……

「……リバースカードを1枚セットしてターンエンド……」

今は攻める手立てがない……

……焦るな落ち着け。どっかの大魔道士さんだって言っていたじゃないか。『魔術師はパーティーの中で一番クールじゃなきゃいけない』って。そうだ、KOOLになれ僕。

……ワイト達。

『『『?』』』

ごめん、ちょいと中の様子を確認して来てちょ。

『『『カタカタ!』』』

ワイト達は敬礼をして飛んでいった。

「俺のターン!ドロー!『超時空戦闘機ビック・バイパー』(光属性、攻撃力1200)を攻撃表示で召喚!」

! 来た!あのデッキの中核を成すであろうカードが……!

「フィールド魔法『シャイン・スパーク』の効果で攻撃力が500ポイントアップズラ!(攻撃力1200→1700)更に装備魔法『団結の力』を『ビック・バイパー』に装備!自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき、装備モンスターの攻撃力・守備力は800ポイントアップするズラ!俺のフィールド上にはモンスターが2体。よって、1600ポイントアップズラ!(攻撃力1700→3300)」

っ! いきなり攻撃力3000オーバー……!

「『ビック・バイパー』(攻撃力3300)で裏側守備表示モンスターに攻撃!『インパルスレールガン』!」

『ビック・バイパー』が裏側守備表示モンスターに向けてレーザーを放った。

「永続罠『グラヴィティ・バインド-超重力の網』発動!このカードが存在する限り、フィールド上の全ての星4以上のモンスターは攻撃をする事が出来ない!」

「何!?」

だが、突如現れた超重力の網に阻まれ、レーザーは霧散した。

『フリントロック』も『超時空戦闘機』系のカードの殆んども星4。これでなんとか凌げる。

「ちっ、しぶといズラ。ターンエンド!」

だが、あちらのコンボはこれで8割完成している。ここで『あのカード』が来られたらマズい……!

……だと言うのに……

「僕のターン!ドロー!……くっ、ターンエンド……」

……ここに来て事故とか、最悪……!

「ふ、もう打つ手無しズラ?俺のターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』発動!デッキからカードを2枚ドロー!そんな網、俺の超ド級の一撃でブチ破ってやるズラ!」

「っ!?」

来る……!

「俺は『ビクトリー・バイパー XX03(ダブルエックスゼロスリー)』(光属性、攻撃力1200→1700)を攻撃表示で召喚!そして、魔法カード『パワーカプセル』発動!このカードは、自分フィールド上に表側表示で存在する『ビクトリー・バイパー』1体を選択して発動!『ビクトリー・バイパー』の持つ効果から1つを選択し、このカードの効果として適用するズラ!」

っ!確か『ビクトリー・バイパー』の効果って……

「『ビクトリー・バイパー』はこのカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、●このカードの攻撃力を400ポイントアップする。●フィールド上に表側表示で存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。●自分フィールド上に常にこのカードと同じ種族・属性・星・攻撃力・守備力の『オプショントークン』を1体特殊召喚する。の3つの効果のうち1つを選んで発動するズラ!俺は2つ目の効果を『パワーカプセル』の効果として適用!お前のフィールド上の『グラヴィティ・バインド』を破壊するズラ!」

「くっ……!?」

『ビクトリー・バイパー』某光の巨人の光輪のようなビームを発射し、『グラヴィティ・バインド』を八つ裂きにした。

「更に、手札から『オプション』を攻撃表示で特殊召喚!」

うわ、来ちゃった!このコンボの最後のパーツ……!

「この時点で、俺のフィールド上のモンスターは2体増えたズラ。よって、『ビック・バイパー』の攻撃力は『団結の力』の効果で更に800×2で1600ポイントアップズラ!(攻撃力3300→4900)そして、『オプション』は自分フィールド上に表側表示で存在する『ビック・バイパー』を1体指定して特殊召喚し、このカードは常に対象のカードと同じ攻撃力・守備力の数値になるズラ!(攻撃力?→4900)」

『オプション』が姿を変え、2機目の『ビック・バイパー』に変化する。

くっ、攻撃力4900のモンスターが、2体……

「『ビック・バイパー』(攻撃力4900)で裏側守備表示モンスターを攻撃!『スーパーインパルスレールガン』!」

「く……うぁ……」

さっきとは威力段違いのレーザーが、僕のフィールド上のモンスターを襲った。

だが……

「!? ば、馬鹿な!?」

僕のモンスターは無傷。何故なら……

「……『魂を削る死霊』(守備力200)は戦闘では破壊されない……!」

た、助かった。これで、攻撃力300アップ+貫通能力も付く『ビック・バイパー』専用の装備カード、『サイクロンレーザー』でも装備されていたら負けていた。

……だが、これは一時凌ぎにしかならない。何故なら……

「ならば、メインフェイズ2で『フリントロック』の効果発動!このカードに装備されている『フリント』を『魂を削る死霊』に装備するズラ!」

そう宣言された瞬間、『魂を削る死霊』が自壊した。

「『魂を削る死霊』は魔法・罠・効果モンスターの効果の対象になった時、破壊されるズラ!」

「くっ……!」

知っていたか……

「ターンエンド!ははは!どうズラ!?この圧倒的なパワー!将に無敵艦隊ズラ!さあ、お前のターンズラ!」

「……」

この状況で、僕が勝てる方法は2つある……

1つは、ここで『ワイトキング』をドローする。今、僕の墓地には『ワイト』と『ワイトキング』は3枚。ここで『ワイトキング』を引ければ、その攻撃力は3000。『フリントロック』(攻撃力2000)か『ビクトリー・バイパー』(攻撃力1700)を攻撃すれば、残り900の銀君のライフを0に出来る。

そして、もう1つは、今回デッキに入れている、ペガサスさんから貰った『あのカード』をドローする。

……いずれにせよ、次のドローに賭けるしかない!

「僕のターン!ドロー!」

……!来た!

「僕は手札から、儀式魔法『高等儀式術』を発動!」

「な!?お前が儀式魔法を!?だが、『高等儀式術』は 手札の儀式モンスター1体と星の合計が同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送り、選択した儀式モンスターを特殊召喚するカードズラ。お前のデッキには、星1の『ワイト』しか通常モンスターはいない筈ズラ!」

「ははは、そうだよ。でも、それで十分。今から儀式召喚するのは、星1の儀式モンスターなんだから」

「星1の儀式モンスター……!? まさか!?」

「デッキから星1の通常モンスター『ワイト』を1枚墓地に送り、手札から儀式モンスター『サクリファイス』(星1 攻撃力0)を攻撃表示で儀式召喚!」

『……』

現れたのは、不気味な一つ目を持つ異形のモンスター。

「な、なんでお前がそのカードを持っているズラ!?」

そう、このカードとこのカードを儀式召喚する為の儀式魔法『イリュージョンの儀式』こそ、ペガサスさんが僕にくれたカードだ。

「『サクリファイス』の効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体を指定して吸収し、このカードに最大で1枚まで装備する事が出来る!」

「くっ、だが、『ビック・バイパー』を吸収しても、装備カードの『団結の力』は外れ、攻撃力は『ビック・バイパー』の元々の攻撃力、たったの1200ズラ!それで倒せるのは、『ビック・バイパー』と同じ攻撃力になる『オプション』だけズラ!」

「ふふふ、誰も『ビック・バイパー』を吸収するとは言ってないよ?」

「!?」

「『サクリファイス』で吸収するのは……『オプション』!」

「な!?」

「『サクリファイス』の効果発動!『ダーク・ホール』!」

『……!』

『サクリファイス』が身体の中央部にある口を開き、『オプション』を吸収した。

「ははは!何を血迷ってるズラ!『サクリファイス』に吸収された時点でそのモンスターの効果は無効化されるズラ!『オプション』を吸収した所で、『サクリファイス』の攻撃力は0のままズラ!」

「別に血迷ってなんかないさ!『サクリファイス』(攻撃力0)で『ビクトリー・バイパー』(攻撃力1700)に攻撃!」

「な!?攻撃力0で攻撃だと!?」

「『幻想(イリュージョン)・インパルスレールガン』!」

「迎え撃つズラ!『プラズマレーザー』!」

『サクリファイス』が一つ目から放ったレーザーと『ビクトリー・バイパー』が放ったレーザーがぶつかり、一瞬の膠着の後、『ビクトリー・バイパー』のレーザーが競り勝ち、『サクリファイス』に直撃した。

「ははははは!自滅ズラね!」

「それはどうかな?」

「何?……!?」

レーザーの直撃の爆発で起こった煙が消えると、『サクリファイス』は無傷でいた。

「ど、どういう事ズラ!?」

「『サクリファイス』は戦闘で破壊される時、代わりに装備したモンスターが破壊されるのさ!」

「な!?『オプション』を身代わりに!?」

そう、さっきレーザーが直撃する際、『サクリファイス』が背中の翼で身体を覆い、翼部分に、吸収されていた『オプション』を具現させ、身代わりにしたのだ。

「っ!だが!戦闘ダメージは無効化されない筈ズラ!」

「ごもっとも。でも、『サクリファイス』にはもう1つ効果があるんだ」 自残ライフ700

「な!?」

「このモンスターの戦闘によって僕が受けたダメージは、相手プレイヤーも受ける!」

「何だと!?」

「よって、この戦闘で起こった1700ポイントのダメージを君も受けるのさ!」

「くっ……その為に、『オプション』を吸収したのか……」 敵残ライフ0

「まぁ、そーゆー事♪」

「ぐぅぅ……」



銀君はその場に倒れ、気絶した。

だが……

「……成る程、斎王様が危険視するだけの事はあるな」

「だが、我らを相手に……」

「その勢いがいつまで保つかな?」

「……っ!」

そう、相手はまだ沢山居る。

……銀君相手にこれだけ時間がかかったのに、これじゃ……



……ドクン……

『チッ、しょ…が…ぇな。こ…ヘボヤ…ヌシが!』

? だ……れ……?

『ケッ、さ…な。こ…でテメェ…は貸し1だ。ククククク、い…れ、たっ…り利子付…て返し…貰うぜ?ヒャーッハハハハハ!』

……

…………

………………



!……また今、意識が……

最近になって、結構頻繁に起こるなぁ。なんか幻聴っぽいのも聴こえるし……

……って、それどころじゃないって!

僕は頭を振り、現状を把握……

「え……」

してまた混乱した。

辺りには光の結社の生徒達が気を失って倒れていた。

これは……僕が?

でも、僕は銀君しか倒した覚えがない。

……一体……?

と、

『『『カタカタ!』』』

ワイト達が帰って来た。

それを追うように、オージーン王子が、2つの鍵と『ソーラ』のコントローラーであるトランクを手に、寮から跳びだし……

「!? これは!?」

この状況を見て立ち尽くした。

……どうやら、原作通り、エド君は負けてしまったようだ。

「っ!」

そして、僕の姿を見て、走り去ろうとした。

僕が慌てて追い掛けようとした時……

ドフッ!

「ぐは!?」

鈍い音共に、オージーン王子が倒れた。

「すまない。少々遅れた」

「亮さん!」

どうやら、亮さんがオージーン王子に当て身をくらわせたようだ。

くー、ホント美味しい所持っていくなぁ。登場のし方がカッコ良過ぎ!

「明日香から話は聞いている。加勢に来た」

「お願いします!」

僕達はブルー寮に突入した。



今日のワイト

和「今日のカードは勿論、『サクリファイス』デース!」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「儀式モンスター『サクリファイス』、星1、闇属性、魔法使い族、攻撃力0守備力0、相手モンスター1体を指定してこのカードに装備する事が出来る。(この効果は1ターンに1度しか使用できず、同時に装備できるモンスターは1体のみ)このカードの攻撃力・守備力は装備したモンスターの数値になり、戦闘によってこのカードが破壊される場合、代わりにに装備したモンスターが破壊され、超過した戦闘ダメージは相手プレイヤーも受ける。言わずと知れ……てはないけど知っている人は知っているペガサスさんの切り札。史上初の効果持ち儀式モンスターにして、現在にして唯一の星1の儀式モンスターで、最近ではシナジーのあるカードも増えた事により、融合体である『サウザンド・アイズ・サクリファイス』が未だに禁止カードなのにも関わらず使われ続けているカードです。因みに、儀式魔法は『イリュージョンの儀式』です」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「そして、儀式魔法『高等儀式術』。手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードと星の合計が同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送り、選択した儀式モンスター1体を特殊召喚する。最大の特徴は、どんな儀式モンスターでも儀式召喚可能であり、しかも手札の消耗を普通の儀式よりも抑えられること。そして【ワイト】ならば特に、デッキからカードを墓地に送る、擬似的な『おろかな埋葬』に変化する事が上げられます。儀式を主体とするデッキには必要不可欠とも言えるカードですね」

3ワイト「「「カタカタカタ」」」

和「では、次回もさ○らと一緒に、レリーズ!」

3ワイト「「「カタカタ(カードキャプターさく○)!?」」」

和「あ、ク○ウカード3枚発見」

3ワイト「「「!?」」」



後書き

なんかarcadiaがヨクワカナイ事になっていますが、今後も、僕はマイペースで書いていきますので今後もよろしくお願いします。

あー、因みに、万丈目君が原作で井戸から『サクリファイス』を拾っていたことは、御都合主義ですが無かった事にして下さい(オイ

……だって、あのカードが井戸に捨てられてるとか、納得いかないんですもん・…



[6474] 第三十八話 決着。そして……
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/06/22 01:35
「あ!先輩!カイザー!」

ブルー寮内を進んでいると、正面から剣山君と、オージーン王子の側近であるリンドさんが駆けて来た。

「大変ザウルス!オージーン王子が『ソーラ』の鍵を……って、あれ?」

「それは!?」

二人は亮さんの持っていたアタッシュケース、レーザー衛星『ソーラ』のコントローラーを見て驚愕した。

「王子は入り口の所で気絶させた。そちらの方は頼む」

「! はい!ありがとうございます!」

亮さんが言うと、リンドさんは1度頭を下げ、入り口の方へと走っていった。

「よし、急ごう!剣山君!」

「……」

「……剣山君?」

「なんか、大きな見せ場を無くした気がするドン」

「……気のせいだヨ」

スペースザウルス?何それ美味しいの?



「何故だ!何故『ソーラ』は起動しない!」

「のわ!?顔芸!?」

奥の大広間に着くと、完全に『破滅の光』が覚醒した斎王さんと十代君がデュエルしていた。

そして天井には『破滅の光』の力で映しだされた、うんともすんとも言わない『ソーラ』の映像があった。

「和希!?」

「お兄さん!?」

「へへへ、これ、なーんだ?」

「な!? それは……!」

僕は亮さんから受け取ったコントローラーを見せびらかし、それを剣山君に渡した。

「やっちゃえ!剣山君!」

「よっしゃぁ!このよくわからないフラストレーションを、こいつにぶつけるザウルス!ぬがあぁぁぁぁ!!」

剣山君はコントローラーを高く掲げ……

「よせ!やめろぉぉぉぉ!」

ガッシャァァァン!!

床に思いっきり叩き付け、滅茶苦茶にぶっ壊した。

「十代君!この通り、『ソーラ』の起動は阻止したよ!」

「よっしゃあ!ナイス!和希!カイザー!剣山!へへへ、どうだ?これでも、運命の流れは変わってないというのか!?」

よし、これで……

「……おのれ……」

え……

「おのれ!おのれ!おのぉれぇぇ!」

「げっ!?」

某御大将のように叫びながら、斎王さんが僕達に向けて、手から怪光線を放ってきた。

だが……

パァン……!

「なにぃ!?」

『彼らには指一本触れさせん!』

十代君のデッキからネオスが現れ、それを防いだ。

よ、良かった。『光の結界』が逆位置で、ネオスペーシアン達が力を発揮出来る今じゃなかったらヤバかった。ありがとうネオス。

「おのれ!『ネオ・スペーシアン』に魔術師が!どこまでも邪魔を!ぬおぉぉぉぉ!」

と、今度は斎王さんの眼が妖しく輝き出した。

「ぐ!?あぁぁぁぁぁ!?」

そして、予想外の所から悲鳴が上がった。

「エド!?」

「どうしたんスか!?」

「エド!我が忠実な尖兵となり、憎き魔術師を滅ぼせ!」

! そうか、エド君は斎王さんに負けてしまっているから……!

「……」

「うわ!?」

「「「翔(君)!」」」

「丸藤先輩!」

エド君は立ち上がり、介抱していた翔君を突き飛ばした。

その眼には感情が籠っておらず、人形のように無表情だった。

「エド!」

「ヒヒヒ、他人の心配をしてる暇があるのかな?」

「お前!」

「ヒヒヒヒヒ!『ソーラ』が駄目でも、ここで貴様達を滅ぼし、他の方法を取るまで!所詮、破滅の運命を覆えす事など、不可能なのだよ!」

……あんた不可能を可能にする男でしょうが。

「……」

エド君は無表情のまま、僕の正面に移動し、デュエルディスクを構えた。

「朝倉!ここは俺が……!」

「いやいや、亮さんもこんな状況でエド君にリベンジしたくないでしょ?」

「だが……!」

「まぁまぁ、あっちも僕をご指名みたいですし、それに……」

「? それになんだ?」

「いえいえ、何でもありませんヨ?」

……ここで万が一亮さんが負けちゃったりして、洗脳なんかされちゃったら……

うん、どうしようも無い♪

……まぁそれに、『約束』もあるし……

「エド君!僕が君の眼を覚ましてあげるよ!」

「……」



「「デュエル!!」」

「僕のターン!ドロー!」

……今のエド君のデッキで一番警戒すべきなのは断然、『D-HERO Bloo-D』だ。

他の最上級の『D-HERO』である『D-HERO ドグマガイ』や『D-HERO ドレッドガイ』も強力ではあるが、攻撃力が高くなった『ワイトキング』ならば普通に戦闘破壊出来る。

だが、『Bloo-D』の効果、魔法カード『D-フォース』がその効果によりデッキの一番上に表側表示で存在する時、相手のフィールド上に表側表示で存在する効果モンスターの効果を全て無効にし、自分のフィールド上のモンスターへの罠・魔法の効果も無効にする効果によって、『ワイトキング』の効果、元々の攻撃力が墓地に存在する『ワイト』『ワイトキング』の合計×1000である効果も無効化され、攻撃力が0になってしまう。将にモンスター版『スキルドレイン』。正直な所、相性最悪の相手と言ってもいい。

だが、デメリットばかりでは無い。『Bloo-D』のもう1つの効果、相手モンスター1体を吸収、装備カードとし、そのモンスターの元々の攻撃力の半分を『Bloo-D』の攻撃力(1900)に加算し、そのモンスターの効果も得る効果で『ワイトキング』を吸収されても『Bloo-D』が『ワイトキング』の効果、攻撃力が墓地の『ワイト』『ワイトキング』×1000となる効果も得ても、結果としてエド君の墓地煮は勿論『ワイト』や『ワイトキング』は存在しない。よって、その攻撃力は0となり、同様に装備された『ワイトキング』の攻撃力も0と化し、結果として攻撃力は上昇しない。

……とは言え、『ワイトキング』が使えない以上、『Bloo-D』に『ピラミッド・タートル』(攻撃力1200)を吸収された時点で、その攻撃力は2500。『ワイトキング』を抜かせば僕のデッキで一番攻撃力の高い『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を上回って来る……!

だから、今手札には『ダーク・グレファー』と『ワイト』があり、速攻で墓地に『ワイト』を貯められる状況だが……

「モンスターを1体、裏側守備表示でセットしてターンエンド!」

某武神の如く、攻めないぜ。

取り敢えず、今は極力モンスターを召喚せずに墓地に『ワイト』を貯める。そして、エド君が先走って『Bloo-D』で低攻撃力のモンスターを吸収した所を『真紅眼の不死竜』で戦闘破壊するか、それを嫌がって『Bloo-D』を出し渋っている所を高攻撃力の『ワイトキング』で一気に決める。それが今回の作戦だ。

……と言うか、これぐらいしか戦いようが無いんだけどね。



「アニキも心配だけど、和希君も大丈夫かな」

「大丈夫ザウルス。もし朝倉先輩が負けても、アニキが斎王を倒せば……」

「どうだろうか」

「お兄さん?」

「どういう事ドン?」

「『破滅の光』は『Bloo-D』のカードを通してDDに取り憑き、更に『Bloo-D』を通して斎王に乗り移ったと聞く。ならば、今現在『Bloo-D』を持つエドに乗り移ってもおかしくはない」

「あ……!」

「じゃ、じゃあ……」

「仮に十代が斎王を敗っても、朝倉を敗ったエドに『破滅の光』の本体が移ってしまう可能性がある。このデュエル、どちらも勝つしかない……!」



「……僕のターン、ドロー、『D-HERO ディフェンドガイ』(守備力2700)を守備表示で召喚」

? 『ディフェンドガイ』を表側守備表示で?

『ディフェンドガイ』は星4以下で最高の守備力を持つモンスターだが、相手ターンのスタンバイフェイズ時にこのカードが表側守備表示で存在する時、相手プレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする、というデメリットを持っている。

しかも、裏側守備表示でセットした方が不用心に攻撃して来た相手の自爆ダメージも狙える。

……それなのに何故、表側守備表示?

「更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド」

「……僕のターン!ドロー!そしてスタンバイフェイズ時、『ディフェンドガイ』の効果でもう1枚デッキからカードをドロー!」

「この瞬間、永続罠『便乗』発動」

! そういう事か……!

「相手がドローフェイズ以外でカードをドローした時に発動。その後、相手がドローフェイズ以外でカードをドローする度に、自分のデッキからカードを2枚ドローする」

成る程、『ディフェンドガイ』のデメリットを逆手に取ったいいコンボだ。

だが、この『便乗』は発動時の相手のドローフェイズ以外のドローに対してはカードを2枚ドローする効果の適用はされない。よって、このコンボでエド君がカードをドロー出来るようになるのは次の僕のターンのスタンバイフェイズから……

「更にスタンバイフェイズ終了時に、リバース罠『強欲協定』発動。お互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする」

「な!?」

そうか、原作でエド君が使っていたこれがあったか……!

「『強欲協定』のエフェクト(効果)により、お互いにデッキからカードを1枚ドロー。更に『便乗』のエフェクトにより、僕はデッキからカードを更に2枚ドロー」

くっ、一気に3枚もドローして来た。

マズい。『D-HERO』は上級モンスターの召喚に長けている。こっちも2枚ドロー出来たものの、急がないと上級の『D-HERO』を召喚される……!

……待て、落ち着け僕。良いんだ。取り敢えず召喚されても良いんだ。今回はカウンター狙いがメインだった筈。早まっちゃいけない。

「裏側守備表示モンスターの『魔導雑貨商人』(攻撃力200)を反転召喚!リバース効果発動!自分のデッキを上からめくり、1番最初に出た魔法か罠カード1枚を自分の手札に加え、それ以外のカードは墓地へ送る!」

1枚、2枚、3枚……お!?かなり良い感じ。

そして7枚目、魔法カード『魔法石の採掘』をめくり、この効果は終了した。

この間、『ワイト』『ワイト夫人』『ワイトキング』が1枚ずつ、計3枚の『ワイト』が墓地に送られた。

よし、この調子で……

「更にモンスターを1体裏側守備表示でセット、更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

「僕のターン、ドロー、手札から魔法カード『デステニー・ドロー』発動。手札から『D-HERO』と名のついたカード1枚をセメタリー(墓地)に送り、自分のデッキからカードを2枚ドローする。手札から『D-HERO ディアボリックガイ』をセメタリーに送り、デッキからカードを2枚ドロー。そして魔法カード『オーバー・デステニー』を発動」

! この展開は……!

「自分のセメタリーから『D-HERO』と名のついたモンスター1体を選択、選択したモンスターの星の半分以下の『D-HERO』と名のついたモンスター1体を自分のデッキから選択し特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズ時に破壊される。選択するのはセメタリーの『ディアボリックガイ』(星6)。よって、デッキから星1の『D-HERO ディスクガイ』(攻撃力300)をデッキから特殊召喚。更にセメタリーの『ディアボリックガイ』のエフェクト発動。セメタリーのこのカードをゲームから除外し、デッキから同名カードを特殊召喚する。デッキから『ディアボリックガイ』(攻撃力800)を特殊召喚」

っ!『Bloo-D』の特殊召喚に必要な3体の生け贄が揃った……!

だが、こっちのフィールド上には裏側守備表示モンスターと攻撃力200の『魔導雑貨商人』のみ。

『Bloo-D』は裏側守備表示モンスターも吸収出来るが、その場合、攻撃力の上昇値は0になる。攻撃力200の『魔導雑貨商人』を吸収しても、攻撃力の上昇値はたったの100だ。

となると……ここで来るのは『Bloo-D』と同じく3体の生け贄が必要な『ドグマガイ』か?

「3体の『D-HERO』を生け贄に、『D-HERO Bloo-D』(攻撃力1900)を特殊召喚」

「な!?」

『ハァァァァ!』

この場面で何故『Bloo-D』を?『魔導雑貨商人』を吸収しても、その攻撃力はたったの2000。『サクリファイス』と違い、『Bloo-D』は戦闘破壊される時、吸収したカードを身代わりに出来ない。この攻撃力では、僕が『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を召喚して攻撃すれば戦闘破壊出来てしまう。

なのに何故……?

「更に魔法カード『地獄の取引』発動」

「!」

あのカードは……この間の十代君対万丈目君戦の時に万丈目君が使っていた原作オリジナルカード……!

「自分のセメタリーから魔法カード1枚を手札に加え、相手のセメタリーに存在する攻撃力2000以上のモンスター1体を相手のフィールドに特殊召喚する」

! ヤバい……!

「僕のセメタリーから魔法カード『オーバー・デステニー』を手札に加え、お前のセメタリーの『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)をお前のフィールド上に特殊召喚」

『ギャオォォ!』

「っ!」

そうなのだ。既に僕の墓地には、さっきの『魔導雑貨商人』のリバース効果で『真紅眼の不死竜』が送られてしまっていたのだ……!

「『Bloo-D』のエフェクト発動。1ターンに1度、最大1体まで相手モンスターをこのカードに吸収、装備する。『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を装備。『クラプティー・ブラッド』」

『ムンッ……』

『オオオォ……』

「くっ!?」

『真紅眼の不死竜』が『Bloo-D』の放った血の瘴気に分解され、吸収されてしまった。

「『Bloo-D』の攻撃力は装備したモンスターの攻撃力の半分の数値分アップし、そのモンスターのエフェクトも得る。(攻撃力1900→3100)更に魔法カード『D-フォース』発動」

ぐ……最悪……

「このカードは発動後、表側表示でデッキの一番上に置く。このカードが自分のデッキの一番上に表側表示で存在する時、自分のドローフェイズにドローする事はできない。そして、『Bloo-D』のエフェクト発動。『D-フォース』が自分のデッキの一番上に表側表示で存在する限り、相手フィールド上に表側表示で存在する効果モンスターは全て効果が無効化され、自分フィールド上のカードへの相手の魔法・罠カードの発動と効果を無効にし破壊する。『Bloo-D』(攻撃力3100)で『魔導雑貨商人(攻撃力200)に攻撃。『ブラッティ・フィアーズ』」

『ハァァ!!』

「ぐっ!?」 自残ライフ1100

『Bloo-D』の翼から降り注ぐ血の槍の雨が『魔導雑貨商人』を貫いた。

「更にリバースカードを2枚セットしてターンエンド」

くっ、『真紅眼の不死竜』で戦闘破壊するどころか逆に吸収されてしまうとは……これで『Bloo-D』は僕相手での最高の攻撃力を得てしまった。

更に、原作版『Bloo-D』は攻撃力だけでなく、吸収したモンスターの効果も得る。よって『真紅眼の不死竜』の効果、戦闘によってアンデット族モンスターを破壊し墓地へ送った時、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る効果という、僕にとって最悪な効果まで得てしまった。

……こんなん、どないせいっちゅうねん。

あー、あれだ。気分はもう、ポ○ラで合体しようとしたら合体相手吸収されて「そ……そりゃねぇだろ~」っつってる孫○空みたいな?

……って、現実逃避している場合じゃないか。

「僕のターン!ドロー!」

! よし!これなら……!

「手札から速攻魔法『サイクロン』を発動!フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊!」

『Bloo-D』が防げるのは『自分のフィールド上のモンスターに対する』相手の魔法・罠。フィールド上の魔法・罠に対するカードは防げない!

破壊するのは『D-フォース』……といきたいが、『D-フォース』が存在するのはエド君のデッキの一番上。『サイクロン』では破壊出来ない。

ならば……

「『サイクロン』の効果により、『Bloo-D』の装備魔法となっている『真紅眼の不死竜』を破壊!」

「……」

『グアァァァ!?』(攻撃力3100→1900)

「更に永続罠『リビングデッドの呼び声』発動!自分の墓地からモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する!破壊されて僕の墓地に戻った『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)を攻撃表示で特殊召喚!」

『ギャオォォォォ!!』

よし、今度こそ……!

「『真紅眼の不死竜』(攻撃力2400)で『Bloo-D』(攻撃力1900)に攻撃!『アンデット・メガ・フレア』!」

『真紅眼の不死竜』が『Bloo-D』目掛けて黒炎を放った。

エド君は『D-フォース』の効果でドローが出来ない。『Bloo-D』さえ破壊出来れば……!

だが……

「な!?」

『Bloo-D』は突如防御の態勢をとり、更にその『Bloo-D』を障壁が包み込み、黒炎を遮った。

「永続罠『D-シールド』発動」

うげ!?……って事は……

「自分フィールド上に攻撃表示で存在する『D-HERO』と名のついたモンスターが攻撃対象になった時に発動可能。このカードは装備カードとなり、攻撃対象になったモンスターを守備表示にしてこのカードを装備、装備モンスターは戦闘によっては破壊されない」

くっ……ここで極光へk……じゃなくて『D-シールド』かよ……

……これで『Bloo-D』(守備力600)は、魔法・罠・効果・戦闘破壊の全てに耐性を持つバケモノとなってしまった……

「ぐ……モンスターを1体、裏側守備表示でセット。……ターン……エンド……」

……頼みの綱だった戦闘破壊も不可能。今までにこんな絶望的な能力を持ったモンスターと相対した事があっただろうか?

うぅ、一体誰だよ!こんなチートカードをエド君の負けフラグとか言い出したの!

「僕のターン。魔法カード『D-フォース』の効果により、僕はドローフェイズにドロー出来ない。だが、罠カード『D-ブースト』発動。『D-フォース』がデッキの一番上に表側で存在する時、その下のカード2枚をドローする」

……! これ以上モンスターを召喚されたら……!

「魔法カード『ドクターD』発動。自分のセメタリーから『D-HERO』と名のついたモンスター1体をゲームから除外。その後、自分のセメタリーから星4以下の『D-HERO』と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。セメタリーの『ディフェンドガイ』をゲームから除外し、セメタリーから『ディスクガイ』(星2 攻撃力300)を特殊召喚。そして、『ディスクガイ』のエフェクト発動。このカードをセメタリーから特殊召喚したとき、自分はデッキからカードを2枚ドローする」

くっ……これでこの一瞬だけ、デッキの一番上から『D-フォース』が無くなるが、恐らくまたすぐに発動される……

だが、『D-フォース』を発動する前に、恐らくあの魔法カードを使ってくるだろう。

「更に、『地獄の取引』でセメタリーから手札に加えた魔法カード『オーバー・デステニー』を発動。選択するのは星6の『ディアボリックガイ』。よって、デッキから『D-HERO ダイハードガイ』(星3 攻撃力800)を特殊召喚」

……こうすれば、『オーバー・デステニー』の効果で特殊召喚した後にデッキをシャッフルする時、『D-フォース』が巻き込まれるのを防げる。……状況が状況じゃなきゃ拍手したいぐらい、見事なコンボだ。

「更に魔法カード『D-フォース』発動。そして『D-HERO デビルガイ』(攻撃力600)を通常召喚」

! また、3体の生け贄……!

「3体の『D-HERO』を生け贄に、『D-HERO ドグマガイ』(攻撃力3400)を特殊召喚」

『ウオァァ!!』

「……っ!」

ぐぅの音も出ないよこんちくしょう!

「『Bloo-D』エフェクト発動。『真紅眼の不死竜』を吸収。『クラプティー・ブラッド』」

「くっ……」

泣きっ面に蜂とばかりに、再び『真紅眼の不死竜』も『Bloo-D』に吸収されてしまった。

「『Bloo-D』(攻撃力3100)で右の裏側守備表示モンスターに攻撃。『ブラッティ・フィアーズ』」

『ハァァァァ!!』

『Bloo-D』が放った血の槍の雨が僕の裏側守備表示モンスター。『ライトロード・ハンターライコウ 』を粉砕した。

当然、『ライトロード・ハンターライコウ』のリバース効果、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送り、フィールド上のカードを1枚破壊する事が出来る効果は『Bloo-D』の効果で無効となってしまった。

「更に『ドグマガイ』(攻撃力3400)でもう1体の裏側守備表示モンスターに攻撃。『デス・クロニクル』」

『ウオァァァァ!』

『ドグマガイ』が右手甲に装着された剣で放った超魔爆炎……じゃなくて一閃が残るもう1体の裏側守備表示モンスター『ワイト』(守備力200)を一刀両断にした。

え?我が全身全霊敗れたり?いやいやいや!感覚的にはオ○バ対楊 海○の戦いだったよ!?

くっ……運良く『真紅眼の不死竜』の効果が発動しなかったとは言え、将に絶体絶命だ。

……くそっ、もう駄目……なのか?

「なめるのもいい加減にしろ!!」

「!?」

突如響いた斎王さんの大喝に、僕は思わず目をそちらに向けた。

「貴様らなどに破滅の未来を変えさせるかぁ!!ぬおぉぉぉぉぉぉ!!!」

「!?」

『ネオス』のダイレクトアタックを受け、遂に本気でぶちギレた斎王さんの纏う『破滅の光』のオーラが増大した。

「オォォ!ドゥロォォ!!」

……最早ドローに聴こえねぇ……って、そんな事を気にしてる場合じゃなくて!

「魔法カード『魔術師の天秤』を発動!フィールドの『アルカナフォースⅠ(1)-THE MAGICIAN(ザ・マジシャン)』を生け贄に、デッキから魔法カードを1枚手札に加える!」

この流れは……!

「永続罠『ザ・マテリアルロード』発動!自分の墓地に星4以下の『アルカナフォース』と名のついたモンスターが1体以上存在する時発動!更に永続罠『ザ・スピリチュアルロード』発動!自分の墓地に星5または6の『アルカナフォース』と名のついたモンスターが1体以上存在する時発動!そして手札より魔法カード『ザ・ヘブンズロード』を発動!自分の墓地に星7以上の『アルカナフォース』と名のついたモンスターが1体以上存在するとき発動!」

斎王さんが発動した3枚のカードから天に向かって、3色の光の柱が立ち上った。

「ヒヒヒヒヒ、十代。運命にあがらう事の愚かさを身をもって知るがいい!」

「なに!?」

「この3本の光の柱を生け贄に、光の支配者を呼び出すのだ!フィールド上の『ザ・マテリアルロード』『ザ・スピリチュアルロード』『ザ・ヘブンズロード』の3枚を墓地に送り、デッキ・手札・墓地より特殊召喚!出でよ!『アルカナフォースEX(エクストラ)-THE LIGHT RULER(ザ・ライトルーラー)』(攻撃力4000)!」

「く!?」

その瞬間。将に世界中を白く染めるような強烈な光が起こった。

そして光が止んだ時……

『……』

『破滅の光』の禍々しいオーラを纏った巨大なモンスターが姿を現した。

当然、『アルカナフォース』である以上、正位置逆位置の判定があるのだが……

「正位置!」

斎王さんの命じるような声に呼応したかのように、結果は正位置だった。

「『THE LIGHT RULER』(攻撃力4000)で『ネオス』(攻撃力2500)を攻撃!『ジ・エンド・オブ・レイ』!」

ハ○のような丸い身体をした『THE LIGHT RULER』の背部から二対の龍の首が生え……

『ぐ!?光が闇を消し去るのか!?』

「ネオス!ぐあぁぁぁ!?」

「「アニキー!」」

「十代!」

「十代君!」

龍の首が強烈な光のエネルギー派を発し、『ネオス』を粉砕し、十代君を吹き飛ばした。

「ヒヒヒ、『THE LIGHT RULER』の正位置の効果により墓地から1枚カードを手札に加える。リバースカードを1枚セットしてターンエンドだ」

……だが、十代君のターンになっても、十代君は立ち上がらなかった。

「ヒヒヒ、十代よ、最早サレンダーか?しかし、この戦いにサレンダーは無い!負ける時、それはお前の命が消える時。そしてこの世界が、この星が、この宇宙が真っ白に染まる時なのだ!ヒヒヒ、ヒヒヒヒヒヒ!」

「アニキ!アニキ!」

「立ってくれドン!アニキ!」

「十代!」

だが、皆の声に呼応するように……

「誰がサレンダーなんかするか!」

十代君は飛び起きた。

「オレのこの手で運命を変えてみせる!自分自身の、そしてこの宇宙の運命を!」

「「アニキ!!」」

「十代!」

そうだ、十代君だって……いや寧ろ、十代君の方が僕よりも強大な敵を相手にしてるんだ。僕だけ諦めてなんていられない……!

……僕のフィールド上のリバースカード。これは罠カードではない。『魔導雑貨商人』で手札に加えた『魔法石の採掘』だ。

あのターン、僕の手札は9枚だった。デュエルモンスターズではエンドフェイズ時に手札が7枚以上の場合、手札が6枚になるように墓地に送らなければならない。だから、『ライトロード・ハンターライコウ』を裏側守備表示でセットし、『リビングデッドの呼び声』をセットした後、手札が6枚になるようにこのカードをセットしたのだ。この時に手札の『ワイト』を墓地に送る選択肢もあったが、『魔法石の採掘』のコストに出来る事も考えてこの方法を取った。

通常魔法『魔法石の採掘』、手札を2枚墓地に送り、墓地から魔法カードを1枚手札に加える。

だが、僕の墓地にある魔法カードは『サイクロン』のみ。これで『D-シールド』ないし装備魔法となった『真紅眼の不死竜』を破壊しても事態は好転しない。

……次のドローに賭ける!

「僕のターン!ドロー!」

!このカードは……

……待てよ、こいつと『魔法石の採掘』を組み合わせれば……

「お前のスタンバイフェイズ時に『ドグマガイ』のエフェクト発動。お前のライフを半分にする。『ライフ・アブソリュート』」

「くっ……」 自残ライフ550



「アニキもヤバいけど、和希君もかなりヤバい状況っス」

「攻撃力3000以上のモンスターが2体、しかも魔法・罠・効果が効かない、おまけに片や戦闘破壊も出来ないなんて、どうしようもないドン!」

「……いや、そうとも限らない」

「「え……」」

「確かに『Bloo-D』は通常のデッキではどうしようもないかもしれん。だが、あいつのデッキはかなり独特な物だ。或いは……」



……よし、イケる!

「僕はリバースカードを2枚セット!更に魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いのプレイヤーは手札を全て墓地に送り、それぞれ自分のデッキから墓地に送った枚数分のカードをドローする!」

「……」

「このカードの効果により、僕と君は手札を全て墓地に送り、その枚数分ドローする。僕は4枚、君は2枚、更に君は『便乗』の効果で2枚ドローして貰う。『D-フォース』ごとね!」

「……」

エド君と僕が手札を入れ替え、『Bloo-D』から『破滅の光』のオーラが消えた。

「更にリバースカードオープン!魔法カード『魔法石の採掘』!手札を2枚コストに、自分の墓地の魔法カードを1枚手札に加える!」

「……」

「ド○えもん!エド君の手札にある『D-フォース』を墓地に送りたいんだよ~!」

パパラパッパパ~

「『手札抹殺』~!もいっちょ発動ぉ!」

「……」

2度目の手札交換により、漸く『D-フォース』が墓地に送られた。



「やった!」

「あのノリは意味不明だけど、とうとうあの守り崩したドン!」

「……いや、まだ安心は出来ない」

「「え……」」

「まだエドのデッキに、『地獄の取引』のような魔法カードを回収するカードがある可能性は否定出来ない。このチャンスを活かせなければ、一気にまたさっきの状況に戻ってしまう。だが、依然としてエドのフィールドには『ドグマガイ』と『D-シールド』が装備された『Bloo-D』が居る。攻撃力はいずれも3000以上。朝倉のライフも残り僅かだ」

「た、確かに……」

「ピンチには変わりないザウルス」

「そう、安心は出来ない。たが、そう悲観した物でも無い」

「え……」

「どういう事ドン?」

「あいつのデッキでの一撃一撃の大きさは俺の『サイバー・エンド』と同等……いや、時には上回りさえする。そして、あいつはその一撃をきめる勝負所を、決して逃さない男だ」

「……あー、確かに」

「……抜け目無いっスもんね。そういう所」



「更にリバースカード発動!魔法カード『悪夢再び』発動!自分の墓地に存在する守備力0の闇属性モンスター2体を選択し手札に加える!僕は墓地から、この2体を手札に加えるよ!」



「あれは『ワイトキング』(守備力0)と……『サクリファイス』(守備力0)!?」

「『サクリファイス』っていったら、ペガサス・J・クロフォードがあの武藤遊戯とのデュエルで使用した切り札ザウルス!なんで朝倉先輩が持ってるドン!?」



……2回目の『手札抹殺』でこのカードが墓地に行ってくれたのは行幸だった。

そして、『サクリファイス』を手札に戻したと言うことは、『悪夢再び』と一緒に、最初の『手札抹殺』の前にセットしたカードは勿論……

「リバースカード発動!魔法カード『高等儀式術』!手札の儀式モンスター1体を選択し、そのカードと星の合計が同じになるように自分のデッキから通常モンスターを選択して墓地に送り、選択した儀式モンスター1体を儀式召喚する!デッキから星1の『ワイト』を墓地に送り、手札から星1の儀式モンスター『サクリファイス』(攻撃力0)を儀式召喚!」

『……』

「『サクリファイス』の効果発動!1ターンに1度、最大1体まで相手モンスター1体を吸収してこのカードに装備!このカードの攻撃力・守備力は装備したモンスターの数値になる!『Bloo-D』を吸収!『ダーク・ホール』!」

「……!」

『サクリファイス』が『Bloo-D』のお株を奪うように、『Bloo-D』を吸収した。(攻撃力0→1900)

「これにより、『Bloo-D』に装備されていた『D-シールド』と『真紅眼の不死竜』は破壊される!そして、『ワイトキング』を通常召喚!『魔導雑貨商人』『手札抹殺』『高等儀式術』の効果により、僕の墓地の『ワイト』『ワイト夫人』『ワイトキング』は合計6枚!よって、『ワイトキング』の攻撃力は6000!」

……見ると、『ワイトキング』の額にはZのシールが付いていた。何?Zガ○ダム?え、違う?ア○ション仮面Z?……流石にマイナー過ぎ。

「『ワイトキング』(攻撃力6000)で『ドグマガイ』に攻撃!」

と、いつの間にやら、『ワイトキング』の手には老界○神が封印されてそうな剣が握られていた。何?今回はZ繋がり?

そして、『ドグマガイ』を斬り下げ、そのままの勢いで上へと斬り上げた。

「『Vの字斬り』ぃ!」

って、Zちゃうじゃん!

え?違う?真・V字斬?だからマイナー過ぎだって!

「……」 敵残ライフ1400

……エド君。僕は君のお父さんから、『君の事を頼む』ってお願いされた。

たから、この一撃で、君のお父さんの形見である『Bloo-D』の力で、その約束を果たす!

「『サクリファイス』(攻撃力1900)でダイレクトアタック!『幻想(イリュージョン)・ブラッディ・フィアーズ』!」

「……父……さ……ん」 敵残ライフ0



「……全く、満足そうな顔して寝ちゃってもう」

あー、つーか、もう絶対『Bloo-D』は相手にしたくない。今回ので軽くトラウマになった。

「行くぞネオス!『THE LIGHT RULER』に攻撃!『ラス・オブ・ネオス』!」

『オォォォォ!!』

「ぬあぁぁぁぁぁ!!?」

あちらの方も、逆位置に変わった『THE LIGHT RULER』が自身の逆位置の効果……このカードの攻撃力を1000ポイント下げる事で、このカードを対象にする効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する効果で攻撃力が3000に下がった所を、『ネオス』及び『ネオス』を融合素材とする融合モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせ、更に『ネオス』のコンタクト融合体が融合デッキに戻るのを防ぐフィールド魔法『ネオスペース』と、自分フィールド上に表側表示で存在する『ネオス』と名前のついた融合モンスターが破壊された時、『ネオス』1体を、エンドフェイズに破壊される代わりに自分のデッキから攻撃表示で特殊召喚し、その攻撃力を1000ポイントアップさせる速攻魔法『リバース・オブ・ネオス』で攻撃力が4000に強化された『ネオス』が倒し、決着が着いたようだ。

『オオオオォォォォ……!!』

斎王さんから解離した『破滅の光』は光の粒子となって拡散し、まだデュエル中の『ネオスペース』のソリッドビジョンが消えてない今、まるで宇宙空間に降る雪ような、幻想的な空間を造り出していた。

……そうそう、白一色なんてつまらない。やっぱり、こんな風に暗い色の中にあってこそ、白い輝きは映えるもんさね。



SIDE エド



「う……うぅん……」

僕は……一体……?

……そうだ、僕は斎王に負けて、それから……

「エド!気が付いたか!」

「……斎……王?……斎王!正気に戻ったのか!?」

「……」

斎王は無言で頷いた。

場所はブルー寮の入り口に移動しており、壁を背に座らせられた僕を、斎王と、なんと斎王の妹の美寿知が見守っていた。

「美寿知?どうして……」

「私はこの日の為に自らの意識をデジタル化し、『ソーラ』のプログラムに侵入していた。尤も、あなた達が『ソーラ』の起動を阻止してしまったので徒労になってしまったのだが……だから、こうして再び意識を肉体に戻し、何か力になれないかと駆け付けたのです」

「エド、すまない。私が『破滅の光』に憑依されたばかりに、君をこの手で倒してしまったばかりか、この手で操ってしまった……」

「僕を……操って?」

……そうだ、そして僕は朝倉と……

「……僕の方こそすまない。僕は君の運命を変える力になると言いながら、何もしてやれなかった」

「そんな事は無い。君は私の為に『破滅の光』と戦ってくれた。そして、あのデュエルの中で、消えかけていた私の魂を、君は迎え入れてくれた」

「斎王……」

「君の呼び掛けのお陰で、私の心にはもう一辺の負の感情も残っていない。君は約束通り、私の心に、大きな傘をさしてくれた」

……そうか。

「……なら、これからもずっと、君が必要になった時には、僕は傘をさし続けるよ」

「……」

「そして、もしまた僕が傘が必要になった時には……」

「あぁ、勿論、私が喜んで傘をさそう」

「ふふふふふ……」

「ははははは……」

僕達は笑い合い、それを見て、美寿知も嬉しそうに微笑んだ。

「……そう言えば、他の連中はどこへ?」

十代や朝倉達の姿が見えなかった。

「それが、急に朝倉和希が『そうだ、まだ間に合う!』と言って……」

「そのまま校舎の方へ猛スピードで駆け出してしまったんだ。十代達も、その後を追っていった」

「……忙しないやつだ」

……折角、礼の1つでも言おうと思ったのにな。

……ありがとう、十代、朝倉。お前達のお陰で、僕達の狂った運命の輪は、元の形に戻ってくれた。



SIDE OUT



SIDE 和希



「翔ぶが如く翔ぶが如く 翔ぶが如くぅ!!」

「ちょ、ちょっと!?なんでそんなどっかの喧嘩屋みたいに叫んで急いでるんスか!?」

「いいからいいから!」

ブルー寮の外に出た時、万丈目君がジェネックス優勝した際に聴こえる筈だった『サンダー』コールが聴こえなかった。

……って事は……?



校舎の前の広場に着くと、ジェネックス参加者達が集まっており……

「俺が先だ!」

「いーや、俺が先だ!」

「……もう、どっちでもいいから早くデュエルしようよ」

何やら万丈目君と三沢君が、恐らくどちらが先にデュエルするのかを言い争っており、頭にバンダナをして、男装をしている女の子が呆れた様子でそれを見ていた。

「おー、間に合った間に合った」

「「む?」」

「え……」

「うぃーっす!」

「「「朝倉(和希・先輩)!?」」」

「全く、僕達を差し置いて優勝決定戦なんて、冷たいんでないの?」

「……何だよ、そう言うことかよ」

「……先に言って欲しいドン」

「!」

僕の後から息を切らして来た十代君の姿を確認すると、男装少女君は満面の笑みで突進した。

「十代様~!」

「ぬが!?」

十代君は突進を避けきれずに、のし掛かられる形で倒れた。

「レ、レイ、重い……」

「むぅ!?レディにそれは禁句だよ!十代様!」

可愛らしく頬を膨らませてるのは勿論、原作通りにジェネックスを勝ち残った早乙女レイ君である。

「……!」

……うわ、明日香さんの眼が怖い……

「「……!!!」」

そして、万丈目君と三沢君、他男子生徒数名が血涙を流していた。……同盟員増えた?

「君達!」

と、鮫島校長が慌てて駆けつけてきた。

「エドは!?斎王は!?」

「ははは、大丈夫。無事、皆で解決しましたよ!」

と、Vサインをすると、校長は安心したように息を吐いた。

「あ、先生、ちょっと借ります!」

「え!?あ、こら!」

僕は鮫島校長の持っていたメガホンを引ったくり、叫んだ。

「ではこれより!第1回ガ○の使いやあらへんで チキチキ ジェネックス優勝決定トーナメントを開催しまーす!」

『……はぁ!?』

僕の宣言に、そこに居た生徒たちは異口同音に疑問の声を上げた。



今日のワイト(ジェネックス終了後)

「エド君!斎王さん!」

「朝倉?」

「何か用ですか?」

「何も言わずにこれを声に出して読んで下さい!」

「? 『ありがとうございます、フ○ガ少佐』……?」

「『何でお前までそう呼ぶの?俺はネオ・○アノークた・い・さ!』……? 何ですかこれは?」

「……」

「……エド、何で彼はあんなにも満ち足りた表情をしてる?」

「……さぁな」



あとがき

お待たせしました。最近、サードデッキとして【おジャマ】を作った八王夜です。
いやー、まさかプロモのおジャマが一枚100円で売ってるとは(嬉
さて、この後もう少し2期部分を続けようと思います。ヨハン君達の登場を心待ちにしている皆様、本当に申し訳ありません!
果たして、万丈目君は原作通り優勝出来るのか!?(笑 乞うご期待!



[6474] 幕間 幻のデュエル
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/07/13 00:16
時系列はエド君がブルー寮に突入した直後です



SIDE 亮



……俄に、島全体が騒がしくなってきた。どうやら、ジェネックスも終盤となり、島のあちこちでデュエルが行われているようだ。

だが、未だに『究極のD』は見つからない。焦りは募るばかりだ。

と、

ガサッ

「」

背後の茂みから、誰かが姿を表した。

「……ボクとデュエルしろ」

その姿は小柄で、頭にはバンダナを巻き、そして顔には、演劇用と思われる面を着けていた。

「……手加減はしないぞ」

「わかっている。『ジェヌエンカイザー』丸藤亮はデュエルへの妥協を許さない。だからこそ、相手をして欲しい」

「……いいだろう。ならばお前も、全力で来い」

「ああ」



「「デュエル」」

「先攻は貰うよボクのターンドロー」

……俺相手に先攻を取るか。

俺のデッキは典型的な後攻有利のデッキ。俺の事を知っているという事は、この相手もそれは百も承知の筈。

それでも先攻を取るとは……面白い。

「モンスターを1体、裏側守備表示でセット更にフィールド魔法『天空の聖域』を発動」

あのフィールド魔法は……

周りの景色が天空高くそびえ立つ祭壇へと変わった。

「このカードが存在する限り、天使族モンスターの戦闘によって発生する、そのモンスターのコントローラーへの戦闘ダメージは0になるターンエンド」

「俺のターン、ドロー」

……あのフィールド魔法を見る限り、恐らく、あのセットされているモンスターは天使族モンスター。『サイバー・エンド・ドラゴン』の貫通ダメージは効かない。

ならば……

「手札から『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』攻撃力1500を攻撃表示で召喚」

『キシャー』

「 新しい『サイバー・ドラゴン』……」

「『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』の効果発動1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を相手に公開する事で、このカードのカード名をエンドフェイズ時まで『サイバー・ドラゴン』として扱う俺が公開するのは魔法カード『融合』」

「」

「これにより、このターンのエンドフェイズまで『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』は『サイバー・ドラゴン』として扱う。更に魔法カード『融合』発動フィールド上の、『サイバー・ドラゴン』として扱われている『サイバー・ドラゴン・ツヴァイ』と、手札の『サイバー・ドラゴン』を融合『サイバー・ツイン・ドラゴン』攻撃力2800を融合召喚」

『『キシャー』』

『サイバー・ツイン・ドラゴン』は1度のバトルフェイズで2度の攻撃が可能。1度目の攻撃であの守備表示モンスターを戦闘破壊し、2度目のダイレクトアタックでダメージを与える

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』攻撃力2800で裏側守備表示モンスターに攻撃『エヴォリューション・ツイン・バースト』」

『サイバー・ツイン・ドラゴン』から2対のレーザーが、裏側守備表示モンスターに向けて発射された。

だが……

パァン……

「何」

レーザーが相手のフィールド上のモンスター、双子の小さな天使に命中する直前、その天使の体を覆っていたリングから障壁が発生し、レーザーを霧散させた。

「『ジェルエンデュオ』守備力0は戦闘では破壊されない」

……『天空の聖域』と『ジェルエンデュオ』とのコンボか。成る程、よく考えられたコンボだ

『ジェルエンデュオ』は戦闘では破壊されない代わりに、このカードのコントローラーがダメージを受けた時、破壊されてしまう。

そこで、『天空の聖域』だ。この効果で天使族モンスター、この場合は勿論『ジェルエンデュオ』だが、その戦闘によって発生するコントローラーへの戦闘ダメージが0になる。これにより、『ジェルエンデュオ』が戦闘ダメージや貫通ダメージで破壊されるのを防いでいる。

「ターンエンドだ」

「ボクのターンドロー『ジェルエンデュオ』は光属性の天使族モンスターを生け贄召喚する場合、このカードは2体分の生け贄とする事が出来る」

最上級モンスターを召喚するつもりか……

「『ジェルエンデュオ』を生け贄に、『守護天使ガーディアンエンジェル ジャンヌ』星7・攻撃力2800を召喚」

「 このカードは……」

相手が召喚した天使に、俺は見覚えがあった。

「……やはり、お前か。レイ」

「 ……やっぱり、気付かれちゃったか」

そう言って相手、レイは面を外した。

「……いつから気付いて……」

「まず、声に聞き覚えがあった。そして、朝倉の渡したそのカードで確信を持った」

以前、レイがデュエルアカデミアに来た際、朝倉がこのカード、『守護天使 ジャンヌ』を渡していたのだ。

「何故ジェネックスに参加した十代に会う為か」

「それもあるけど、ボクはこの大会で認めて貰って、今度こそデュエルアカデミアに入学するんです」

成る程、レイは以前、編入試験に合格した経歴がある。それに加えてこの大会を優勝すれば、今度こそ編入出来るだろう。

「だから、例え相手が亮様でも、負ける訳にはいかない」

……だが、『守護天使 ジャンヌ』の攻撃力は『サイバー・ツイン・ドラゴン』と同じ2800。戦闘では相打ちとなってしまう。

「更に魔法カード『二重召喚デュアルサモン』を発動このターン、自分は通常召喚を2回まで行う事が出来る手札から『勝利の導き手フレイヤ』攻撃力100を攻撃表示で召喚」

『ファイトファイト』

レイが召喚してきたのは、チアリーダーのような姿をしたモンスター。

……成る程、そういう戦法か。

「『勝利の導き手フレイヤ』は自分フィールド上にこのカード以外の天使族モンスターが表側表示で存在する場合、相手はこのカードを攻撃対象に選択する事は出来ないそして、このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上に存在する天使族モンスターの攻撃力・守備力は400ポイントアップする『守護天使 ジャンヌ』攻撃力2800→3200で『サイバー・ツイン・ドラゴン』攻撃力2800に攻撃『エンジェリック・シャイン』」

「くっ」 亮残ライフ3600

『サイバー・ツイン・ドラゴン』が『守護天使 ジャンヌ』の放った閃光に呑まれ、消滅した。

「『守護天使 ジャンヌ』の効果発動このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のライフを回復」 レイ残ライフ6800

「くっ……」

「更に『勝利の導き手フレイヤ』攻撃力100→500でダイレクトアタック『ボンボンパンチ』」

『えーい』

ポスッ……

「……」 亮残ライフ3100

「……あ、あはははは……」

……手に持ったボンボンのせいで、肉体的なダメージは0だった。

「タ、ターンエンド」

「……俺のターン、ドロー」

……ともあれ、ライフの差が大幅についてしまった。

……朝倉、すまないがお前の送ったあのカード、対処させて貰うぞ。

「手札から魔法カード『タイムカプセル』を発動自分のデッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外、発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊し、そのカードを手札に加える更に魔法カード『融合回収フュージョン・リカバリー』を発動自分の墓地から『融合』1枚と融合素材モンスター1体を手札に加える墓地から『融合』と『サイバー・ツイン・ドラゴン』の融合素材に使用した『サイバー・ドラゴン』を手札に加える『サイバー・ドラゴン』は相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する事が出来る手札から『サイバー・ドラゴン』攻撃力2100を攻撃表示で特殊召喚」

『キシャー』

「っ また『サイバー・ドラゴン』……」

「更に『プロト・サイバー・ドラゴン』攻撃力1100を召喚このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、カード名を『サイバー・ドラゴン』として扱うそして速攻魔法『フォトン・ジェネレーター・ユニット』発動自分フィールド上の『サイバー・ドラゴン』2体を生け贄に、自分の手札・デッキ・墓地から『サイバー・レーザー・ドラゴン』1体を特殊召喚する『サイバー・ドラゴン』と、『サイバー・ドラゴン』として扱われている『プロト・サイバー・ドラゴン』を生け贄に、デッキから『サイバー・レーザー・ドラゴン』攻撃力2400を特殊召喚」

『ギシャー』

「『サイバー・レーザー・ドラゴン』は通常召喚出来ず、『フォトン・ジェネレーター・ユニット』の効果でのみ特殊召喚可能そして1ターンに1度、このカードの攻撃力以上の攻撃力か守備力を持つモンスター1体を破壊する事が出来る効果発動『守護天使 ジャンヌ』攻撃力3200を破壊『フォトン・エクスターミネーション』」

ピュンッ……パァン

「くっ」

『サイバー・レーザー・ドラゴン』の尾に装備されているレーザー砲から鋭いレーザーが発射され、『守護天使 ジャンヌ』を破壊した。

「そして『サイバー・レーザー・ドラゴン』攻撃力2400で『勝利の導き手フレイヤ』攻撃力500に攻撃『エヴォリューション・レーザーショット』」

「くっ……ぁ……」

同じように、『サイバー・レーザー・ドラゴン』のレーザーが『勝利の導き手フレイヤ』を粉砕した。

……だが、戦闘ダメージは『天空の聖域』で0……か。

「……ターンエンドだ」

「くっ……まだまだボクのターンドローモンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド」

「俺のターン、ドロー『タイムカプセル』で除外されたカードの効果を発動」

「 まだ『タイムカプセル』が発動して1ターン目……」

「発動するのは除外されていたカードの方だ」

「え……」

「魔法カード『異次元からの宝札』、このカードがゲームから除外された場合、次の自分のスタンバイフェイズ時に自分の手札に戻る。そして、この効果で手札に戻った時、お互いのプレイヤーはデッキからカードを2枚ドローする」

「『タイムカプセル』をそんな風に使うなんて……」

「『サイバー・レーザー・ドラゴン』攻撃力2400で裏側守備表示モンスターを攻撃『エヴォリューション・レーザーショット』」

と、レイの口端がつり上がった。

そして、『サイバー・レーザー・ドラゴン』の放ったレーザーがレイのフィールド上の裏側守備表示モンスター、翼の生えたリースのようなモンスターを撃破した。

「『コーリング・ノヴァ』守備力800の効果発動このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の光属性で天使族のモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事が



[6474] 第三十九話 トーナメント開催!
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/07/13 00:17
校舎前の広場、万丈目君、三沢君、レイ君の三人で行われようとしていたジェネックス決勝戦は、『破滅の光』を撃ち破って駆け付けた僕達の乱入によって仕切り直された。

「さーて、これから『チャ○ピオン デュエル王決定戦 in ジェネックス』を始める訳だけど」

「前回のラストから名前が変わってるドン」

「あ、因みにサブタイは『この学園の、一等賞になりたいのデュエルで俺はそんだけ』ね」

「ピ○ポンっスか」

「アーイキャーンフラーイ」

「飛んでるのは貴様の頭だろうが」

「お、万丈目君巧い」

「暗に認めた」

「ははは、なんかここに居る全員が今のに頷いたような気がしてネ」

「自分で言うな」

「と言うか、いつまでボケるつもりザウルス」

「いやー、ここ最近幕間ばっかりで出番がまともに無かったからからさ」

「メタ発言禁止」

「えぇーい話が進まん」

僕がここ最近のフラストレーションを発散してると……

「ところで和希、その『第1回○キの使いやあらへんで チキチキ ジェネックス優勝決定トーナメント』なんだが」

「ちゃんと前回ラストの名前覚えてるし」

三沢君が尋ねてきた。

「俺と万丈目とレイの三人以外の誰がやるんだ」

「あー、それね。まず十代君と翔君と剣山君でしょ」

「えでも僕、お兄さんに負け……」

「下30度から出来るだけスピーディーに」

「へぶ」

「丸藤先輩」

僕の放った顎への掌打を受け、翔君が昏倒した。

「ふふふ、今翔君の脳はまるでシェイクされるプリンのように揺れ動いている筈だ」

「貴様は何処ぞの医者兼格闘家か」

「ははは、まあいいじゃない。ここにも一人、負けたのノーカンにしてもらったのが居る訳だし」

「う、うるさい」

僕の混ぜっ返しに、ホワイトサンダー時に十代君に負けた万丈目君が吠える。

「と言うか、丸藤先輩を気絶させる理由が何処にも無いドン」

「……ノリ」

「やりたい放題過ぎザウルス」

「そうかノリか」

「三沢納得するな」



「か、和希先輩、テンション高い……」

「……さっきまで十代と一緒に戦ってたみたいだから、多分その反動ね」

「はは、でも、漸く元通り、皆で騒げる感じに戻ったな」

「……ふふ、そうね」



「さて、それじゃ改めて決勝トーナメントの概要だけど……」

「……また何事も無かったかのように進めるし」

復活した翔君のツッコミをアサルトスルーして僕は続ける。

「名前の通り、決勝はトーナメント方式、出場者は万丈目君、三沢君、レイ君、十代君、翔君、剣山君、亮さん……って、あれ」

ここで僕は気付いた。

「そう言えば、亮さんは……」

そう、亮さんがいつの間にか居なくなっているのだ。

「亮ならさっき、フェリー乗り場に向かったよ」

と、僕の疑問に答えたのは……

「吹雪さん」

「彼はこれから、ペガサス氏に事の顛末を報告しに行くらしくてね。残念ながら、決勝トーナメントは辞退するそうだよ」

「……そうなんですか」

むぅ、それは残念だ。

「お兄さん……」

「亮様……」

翔君とレイ君も、とても残念そうな顔をしていた。

「まぁ、その代わりと言ってはなんだけど、僕がその決勝トーナメントに出場するよ。僕も、まだメダルを持ってるしね」

「え……」

……あ、そう言えば、亮さんは吹雪さんからもメダルを受け取らなかったんだっけ。

と、

『キャー』

『吹雪様ー』

『頑張って下さーい』

ブッキーファンクラブの面々からの黄色い声援が上がった。

……別にするつもりは無いけど、これでもし吹雪さんを失格になんかしたら彼女達に袋にされるんだろうなぁ……恐や恐や。

「ははは、ありがとう皆君達に華麗なデュエルを約束しよう」

『キャー』

「……兄さんたら……」

「たははは……」

溜め息をつく明日香さんを見て、僕は苦笑するしかなかった。

「これはチャンスだぞ同志三沢」

「ああ、モテデュエルの真髄をこの目に焼き付けるぞ同志万丈目」

……あの辺の同盟員達も奮起してるし。

……つーか気付かないのかなぁ彼らが師と仰ぐ吹雪さんの異常なモテ具合こそ、彼ら、と言うより吹雪さん以外の男子生徒に女の子が靡かない理由の一端だって事に。

……面白いから指摘しないけど。

「うーん、この面子で全員かな……」

「待ちなさいよ」

「え……」

と、聞き覚えのありまくる声が聞こえた。

「ジュンコ」

明日香さんの言う通り、ギャラリーから出てきたのはジュンコさんだった。

「えジュンコさんも残ってたの」

「何よアタシが残ってたら悪いっての」

「い、いや、別に……」

……意外ではあるけど。

「正直、アタシはジェネックスの優勝なんてどうだっていいのよ。でも、アンタが出るのなら話は別よ」

僕をビシッと指差しながらジュンコさんは言う。

……人を指差すのは駄目デスヨー

「遂にこの時が来たわ。アンタにリベンジする時が」

「リベンジ」

何の事

「忘れたとは言わさないわよ去年の女子寮の湖でのデュエル」

「……あー」

……翔君の偽ラブレターのあれ

「……物凄い今更だなぁ……」

「う、うるさいわね今更でも、リベンジはリベンジでしょ」

「……僕のあげたデッキで」

「あ、あれはもうアタシのデッキでしょ男が細かい事ごちゃごちゃ言うんじゃないわよ」

……気合い入ってるなぁ……

……でも……

「……あのさ、ジュンコさん」

「な、何よ」

「僕、決勝トーナメントに出るって一っ言も言ってないんだけど」

「……は」

「ぶっちゃけ、昨日デュエル出来なかったから失格なんよ。僕」

そう、僕は昨日、エド君の船に1日中潜んでいた為、デュエルができなかったのだ。

よって、『最低1日1回デュエルしないと失格』というルールのジェネックスにおいて、僕はアウトなのだ。

「……よそれ……」

「え……」

な、なんか、ジュンコさんから形容し難いオーラが、肩も震えてるし。

ま、まさしくMK5マジでキレる5秒前

……少なくとも、『MajiでK○iする5秒前』by広末○子では無い事だけは確かだ……

そして予想通り、胸ぐらを掴まれ……

「何よそれアンタ、アタシが何の為にこの大会頑張ったと思ってんのよ」

「あうあうあうあう……」

前後に思いっきり揺さぶられる僕だった。

の、脳が揺れる……



「……ジュンコさん、そんなに和希君にリベンジしたかったんスかももえさん」

「うーん、戦いたがっていたのは事実ですわ。でも……」

「でも」

「うふふふ、それはリベンジの為と言うよりは、あのデッキをちゃんと使いこなせるようになったのを、朝倉さんに見せたかったからだと思いますわ」

「……あー」

「……そういうことドン」

「どうやら、あのプロデュエリストの方とのデュエルを誉められたのがよっぽど嬉しかったみたいで、あれからあのデッキの使い方を物凄く勉強してましたの」

「実際、それでここまで残っちゃったんだから、大したものよね。私も劇で少し使っていたから、あのデッキが結構強い事は知っていたけど」

「だから、その集大成を、実際にお手合わせして朝倉さんに見せたかったのだと思いますわ」

「十代様さっきからデッキとか、何の話」

「ああ、レイは知らないよな。ほら、去年の学園祭の演劇で和希が作ったデッキ、明日香が使ってた『ハーピィ・レディ』のデッキがあっただろあのデッキ、今はジュンコが使ってるんだよ」

「えじゃ、じゃあもしかしてあの二人って……」

「うふふ、多分、レイさんの思ってる通りですわ」

「へー、いいなぁ」

「まぁ、朝倉はそっち方面が鈍い上にジュンコも素直じゃないから、正式には成立してないんだけどね」

「でも、デッキをあげたって事は、少なからず和希先輩にもその気があるって事ですよね」

「まぁ、本人自身が気付いてないと思うけどね」

「うわー、いつか気付くのかな楽しみだなぁ」

「レ、レイちゃんがこの上無く活き活きしてるっス」

「気持ちはわかるけどね。うーん、胸キュンポイント5ポイントだね」



「なんとか言いなさいよこのっこのっこのっ……」

ガクンガクンガクン……

「あうあうあうあう……」

だ、誰かタスケテ

と、

「あのよ、和希、ジュンコ」

「」

「……何よ」

十代君が話し掛けてくれた事により、漸くガクンガクンは止まった。せ、世界が揺れる

「オレ、『破滅の光』との戦いでもうクッタクタなんだよ。だから和希、オレの代わりに出てくれねえか」

「「え……」」

僕とジュンコさんは揃って間の抜けた声をあげた。

いやだって、いくら激戦の後で疲れているとはいえ、あの十代君がこんなイベントを見過ごすなんて……

「いや、実際オレ自身は全然大丈夫なんだけどよ。相棒達がさ」

『クリ……』

「あー」

そうか、ハネクリボーも疲れた顔してるけど、今回『破滅の光』と直接渡り合ったネオスの消耗なんかは半端無いんだろうな。流石は通称過労死。

「と言うわけで、選手交代だ。いいだろ校長先生」

「む、むぅ、厳密にはそのような事は許可されて無いのだがね……」

と、鮫島校長は顎に手を当てて暫く考え……

「……だが、第1回大会である今大会のルールでは、確かに『参加権を他人に譲るのを禁止する』と明確に記されていない。……これは抜け穴だったか」

校長は困ったような顔をしたが、密かに僕達に向かって目配せをした。

『破滅の光』の件のお礼代わりだよ

校長の目がそう言っていた。

「いいだろう。今大会のみの特例として認めるとしよう」

「よっしゃサンキュー先生じゃ、頑張れよ和希」

「え……あ、うん……」

……なんか、あんまりにも話がトントン拍子で進むから呆然としてしまった。

「……」

見ると、ジュンコさんも僕と同じようにポカーンとしていた。



「いいんザウルスアニキ」

「ああ、もうこれ以上、相棒達の力を消耗させる訳にはいかないからな。それにジュンコも和希と戦いたがってたんだろ丁度良かったじゃねぇか」

「十代様優しい」

「うーん、胸キュンポイント10ポイントだ。十代君」

「……ところでよ」

「 どうしたんスかアニキ」

「さっきのももえとレイの話で出てた『レイの考えてる通り』って、どういう事だ」

『……』

「ね、ねえ十代さっき話てた、ジュンコが朝倉と戦いたがっている理由って理解してる」

「 リベンジと、和希にいいところ見せたいからだろ」

「……なんでいいところを見せたいかは」

「……なんでだ」

『……』

「そ、そうだったわね……」

「アニキも、朝倉先輩に負けず劣らず、そっち方面は鈍かったドン……」

「しかも、和希君と違って、他人の事にも疎かったっスね……」

「……相変わらず鈍いやつだ」

「ははは、まぁ、十代らしいと言えば十代らしいけどな」

「……ですわね」

「うーん、胸キュンポイントマイナス10ポイントかな」

「あ、あはは、そんな十代様も素敵だよ」

「」



こうして、決勝トーナメント出場者が決まった。

人数は八人、万丈目君、三沢君、翔君、剣山君、レイ君、吹雪さん、ジュンコさん、そして僕だ。

その後、くじ引き地面に書いたあみだくじにより、組み合わせが決定した。

第1試合はなんと、万丈目君VSレイ君だった。

これは見物だ。原作でのジェネックス決勝戦の組み合わせだ。果たして、万丈目君が原作通りレイ君を下すのか、或いはレイ君がそれを打ち破るのか。

……原作でレイ君はジェネックス準優勝の功績で3年目に特別に入学してくるの為、ここで負けてしまったら来年度にレイ君が入学してこれない可能性はあるが、まぁ、僕達が鮫島校長に口添えすれば多分大丈夫だろう。なんせ決勝トーナメントはこの面子なんだし……

第2試合は翔君と剣山君の因縁の対決になった。

以前、十代君がエド君に負けて失踪していた際の『どっちが十代君の一の舎弟に相応しいか』という名目で行ったデュエルでは、原作通りに剣山君が勝てる所を翔君に勝ちを譲る形だった。

……あのデュエルの決着を着けるという意味でも、やはりこの勝負も見物だ。

そして第3試合は僕VS吹雪さんとなった。

うーん、吹雪さんの『真紅眼レッドアイズ』デッキとは戦ってみたかった所だけど、正直な所、バーンカードが豊富な吹雪さんのデッキは僕のデッキにとって、この中では苦手な相手の筆頭だ。苦戦は必至っぽい。

そして最後が、ジュンコさんVS三沢君だ。

双方とも、かなりの爆発力を持つデッキ、激しいデュエルになるだろう。



そして、いよいよトーナメントがスタートした。

第1試合は万丈目君VSレイ君。

レイ君のデッキは、原作通りのアニメオリジナルカードの集まりであるタマゴデッキ……かと思いきや、なんと、僕が以前にあげた『守護天使 ジャンヌ』等を主軸とした天使族のデッキだった。

万丈目君の『VWXYZ』シリーズや原作オリジナルの『ビートロン』シリーズ等のユニオンモンスター達をその高攻撃力で捩じ伏せ、後一歩というところまで追い詰めた。

だが、土壇場で万丈目君の奥の手、と言うかお家芸、魔法カード『おジャマ・デルタハリケーン』、自分フィールド上に『おジャマ・グリーン』『おジャマ・イエロー』『おジャマ・ブラック』が表側表示で存在する時に発動可能、相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する、でレイ君のフィールドを一掃、そのまま逆転勝利を納めた。

「あぅ……負けちゃった……」

「は、ははははは、見たかこれが先輩の意地だ」

……万丈目君、汗だくになってるし。

因みにこの後は原作通り、『おジャマ』にトドメを刺されて落ち込むレイ君に対し、万丈目君が十代君のパクリ発言をし、皆から集中砲火を喰らうのだった。



第2試合は翔君VS剣山君。

こちらの方も白熱したデュエルとなったが、最後は辛くも翔君が先輩の意地を見せた。

「くそやられたザウルス」

「……でも、これで一勝一敗だよね」

「え……」

「ほら、この前のデュエル、剣山君は勝てるところを、ワザと負けてくれたんでしょ実際は僕の負けだった訳でしょ」

「丸藤先輩……」

「だから、今回ので一勝一敗のイーブン。決着は次の機会に、って事で」

「……わかったドン。今回は俺の完敗ザウルス。でも、次は絶対に負けないドン」

「望むところだよ」

そして、二人は固く握手をし、周りからは大きな拍手が送られたのだった。……ホント、翔君も精神的に成長したなぁ。



そして、いよいよ第3試合、僕と吹雪さんの対戦だ。

『吹雪様ー』

『そんなやつに負けないで下さいねー』

……そんなやつって……

吹雪さんの背後には、ブッキーファンクラブの面々オベリスクブルーの女子の殆ど鮎川先生が陣とっていた。

と、吹雪さんが彼女達の方に振り向き、空に向かって指をさした。

「僕が指差す先にあるものは」

『天』

「んJOIN」

『キャー』

……いやはや、ジャ○ーズも真っ青な人気だなぁ。うわ、ベタに失神している娘もいるし。

「……んで、君はこっちにいてもいいわけ」

「……誰のせいであそこに居られなくなったと思ってるのよ……」

何故か僕の背後に居るジュンコさんに話しかける。……あ、そう言えば、よくわからないけど僕のせいでファンクラブ辞めさせられたんだっけ

因みに、浜口さんは勿論、あっち側に行っている他、

「師匠頑張って下さい」

「俺達にモテデュエルの真髄を見せて下さい」

万丈目君、三沢君を始めとした例の同盟員達もあっち側で応援をしている。

その他のメンバーは……、あの熱気に引いたのか、こっち側にいる。

「……まぁいいわ。このデュエル、負けたら承知しないわよ」

「え」

「……何よ、その間の抜けた顔は」

いや、だって……ねぇ

「てっきり、吹雪さんを応援するもんだとばかり思ってたからさ」

「え……」

僕の指摘に、ジュンコさんは一瞬眼を丸くし……

「ば、馬鹿言ってるんじゃないわよ普通だったら、アンタなんかと吹雪様だったら勿論吹雪様を応援するに決まってるでしょで、でも、今回はアンタが勝たないと、アタシとデュエル出来ないでしょだから、その、し、仕方なくよ……と言うか、べ、別に応援もしてないわよ」

……しっちゃかめっちゃかでよくわからん。

「いいからさっさと行きなさい」

「へーい」

「うわぁ、本当に気付いてないんだ……」

「」

……途中で、レイ君がなんか言っていたのが聞こえたけど、内容までは聞き取れなかった。



「……デュエルアカデミアの暴走特急同士のデュエル、どうなるんスかね」

「……暴走特急とは、巧く言ったものね。翔君」

「和希と吹雪さんじゃ、微妙に暴走の仕方が違うっぽいけどな」

「アニキの言う通り、吹雪さんには、そもそもブレーキが付いてないドン。朝倉先輩は、ブレーキがあるのにアクセル全開で行ってる感じザウルス」

「……ついでに、三沢君はそのブレーキがぶっ壊れてる感じっス」

「……厄介な事には変わりないドン」



「考えてみれば、こうしてデュエルするのも初めてだね。和希君」

「そうですね」

……と言うか、吹雪さんの周りに女子がずっとひっ着いていたから、デュエルしたくても出来なかったんだけど。

「亮さんと肩を並べていたと言われる吹雪さんには、胸を借りるつもりで頑張りたいと思いますヨ」

「……と言いつつも、負ける気はサラサラ無さそうだね」

「それは当然ですよ。基本、デュエルは全部勝つつもりで挑んでますもん」

胸を張って答えた僕に、吹雪さんは頷いた。

「いい心意気だね。僕も、君とのデュエルが楽しみになってきたよ。じゃ、早速始めようか」

「はい、よろしくお願いします」



「「デュエル」」

「僕のターンドロー」

……このデュエルはいつも以上にスピード重視でいかなければならない。そうでないと、吹雪さんはデッキに、相手のライフを直接削るバーンカードを結構積んでいる為、それらでライフをガリガリと削られてしまう。

特に、魔法カード『黒炎弾』、発動ターンの全ての『真紅眼の黒竜レッドアイズ・ブラックドラゴン』の攻撃を封じる代わりに、自分フィールド上に表側表示で存在する『真紅眼の黒竜』1体を選択し、選択した『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える、はまさに脅威。ライフが4000のこの世界において、『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力は2400である為、これ2発でライフを0にされてしまう。

……まぁ、流石に威力が高い為、こちらの世界では、元々僕が居た世界と違って制限カードと化しているみたいなのだが。因みに、同じ理由で『波動キャノン』等も制限ないし準制限カードとなっている。……考えてみれば吹雪さん、いつも『黒炎弾』は1回のデュエル中じゃ1回しか使っていなかったっけ。

だがこの他にも、吹雪さんは『真紅眼の黒竜』ないしドラゴン族に関するバーンカードを結構入れている。かと言って、モンスターが少ないと言う訳でも無い。『殴れるバーンデッキ』というイメージだろうか。

ただ、ダークネスの力を使っていない今、吹雪さんは真の、と言うよりは禁断の切り札である『真紅眼の闇竜レッドアイズ・ダークネスドラゴン』や『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』は使わない。よって、今の吹雪さんのデッキのエースは攻撃力2400の『真紅眼の黒竜』。

……狙い目としては、このやや低めな火力か。去年の演劇の時、吹雪さんは『真紅眼の黒竜』と『デーモンの召喚』の融合モンスターである『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』攻撃力3200を使用していたが、あれは演劇用に吹雪さんのデッキをアレンジした結果であり、本来吹雪さんは融合を使わない。よって、使ってくる可能性は低い。

「モンスターを1体裏側守備表示でセット、更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドです」

よし、『焦らず急いで正確に』by真○技師長 だ。

……さぁ、吹雪さんはどう来る

「僕のターン、ドロー魔法カード『天使の施し』を発動デッキからカードを3枚ドローし、その後手札からカードを2枚墓地に送るそして『マンジュ・ゴッド』攻撃力1400を攻撃表示で召喚」

『マンジュ・ゴッド』って事は……

「『マンジュ・ゴッド』の効果発動このカードが召喚・反転召喚に成功した時、自分のデッキから儀式モンスターまたは儀式魔法カード1枚を手札に加える事が出来る」

そう、このカードは儀式モンスターのサポートカード、加えて、ドラゴン族では無く天使族だ。吹雪さんが使ってくるとは意外だ。

吹雪さんの使う儀式モンスター……思いつくのは演劇で使っていた『ロード・オブ・ザ・レッド』だけど……

「僕は儀式魔法『黒竜降臨』をデッキから手札に加え、このカードを発動」

そっちか

「このカードは『闇竜の聖騎士』の降臨に必要、フィールドか手札から、星が4以上になるように生け贄に捧げ、手札から『闇竜の聖騎士ナイト・オブ・ダークドラゴン』を儀式召喚する星4の『マンジュ・ゴッド』を生け贄に捧げ、『闇竜の聖騎士』攻撃力1900を手札から儀式召喚」

そう、これは『ロード・オブ・ザ・レッド』と同じく原作のドーマ編で城ノ内さんが使っていた、『青眼の白龍』のサポートカードである『白竜の聖騎士ナイト・オブ・ホワイトドラゴン』の『真紅眼の黒竜』版カードだ。

因みに、アンデット族で日本語名が全く同じ名前である『闇竜の聖騎士ブラックナイト・オブ・ダークドラゴン』も、こっちの世界では共に存在している。ついでに言うならば、一応僕のサイドデッキにもある。

「おっと、攻撃の前にこのカードを発動させておこうか。魔法カード『スタンピング・クラッシュ』このカードは自分フィールド上にドラゴン族モンスターが表側表示で存在する場合のみ発動可能、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊し、そのコントローラーに500ポイントダメージを与える『闇竜の聖騎士』は当然ドラゴン族、よって、君のそのリバースカードを破壊させてもらうよ」

『スタンピング・クラッシュ』のカードから巨大なドラゴン族の足が現れ、僕のフィールド上のリバースカードを踏み潰そうとした。

が、

「リバースカード発動罠カード『針虫の巣窟』自分のデッキの上からカードを5枚墓地に送ります」

踏み潰される直前、間一髪、僕のチェーンが間に合った。

「ふふふ、でも、効果が発動された後の『針虫の巣窟』は『スタンピング・クラッシュ』で破壊された。よって、500ポイントのダメージは受けてもらうよ」

「くっ……」 自残ライフ3500

……『サイクロン』なんかの魔法・罠除去カードを空振らせようとして『針虫の巣窟』を吹雪さんのドローフェイズに発動させなかったけど、そうか、ドラゴン族デッキにはこれがあったか。不覚だ……

「そして、『黒竜の聖騎士』攻撃力1900で裏側守備表示モンスターに攻撃『セイントアウト・ダークネス・スピア』」

『闇竜の聖騎士』も、『白竜の聖騎士』と同様の効果を持っている。って事は……

……予想通り、僕のフィールド上のモンスターが『裏側守備表示のまま』槍に貫かれ、撃破された。

「『闇竜の聖騎士』が裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊するのさ」

そう、よって戦闘破壊されたモンスター、『魔導雑貨商人』は表側表示にならず、リバース効果は発動しない。

……完璧に僕のリバース効果モンスターを読んでいたみたいだ。

「……流石ですね」

「おっと、感心するのはまだ早いよ。更にメインフェイズ2で『闇竜の聖騎士』のもう1つの効果を発動」

……まぁ、そう来るよなぁ。

「このカードを生け贄に捧げる事で手札またはデッキから『真紅眼の黒竜』1体を特殊召喚する事が出来る『闇竜の聖騎士』を生け贄に、デッキから『真紅眼の黒竜』攻撃力2400を攻撃表示で特殊召喚」

『ギャオォォォォォォ』

うわぁ、やっぱり吹雪さんが『真紅眼』を使うと絵になるなぁ。……ダークネス状態だったらもっと絵になるんだろうけど。

『きゃー吹雪様ー』

『カッコイイー』

……エースモンスターの登場に、あちらの応援団の盛り上がりも最高潮だ。……なんか、去年のマハードさんとのデュエルを思い出すなぁ……

「この効果で特殊召喚された『真紅眼の黒竜』はこのターン攻撃が出来ない。もっとも、このターンの僕のバトルフェイズはもう終了しているけどね。まぁでも、このカードがあれば、それも関係無いんだけどね」

ちょっ まさか1ターン目から

「手札から魔法カード『黒炎弾』発動このターン、僕のフィールド上の全ての『真紅眼の黒竜』の攻撃を封じる代わりに、自分フィールド上に表側表示で存在する『真紅眼の黒竜』1体を選択し、選択した『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える『真紅眼の黒竜』の元々の攻撃力、2400ポイントのダメージを受けて貰うよ」

『ギャオォォォォ』

「うぁーーぃ」 自残ライフ1100

『真紅眼の黒竜』の放った黒炎が僕に直撃した。い、いきなりライフ4分の1はキツかとです……

や、ヤバい。これで吹雪さんのデッキには『黒炎弾』は無いとはいえ、墓地から魔法カードを手札に戻す『魔法再生』や『魔法石の採掘』が絶対に無いとも言い切れない。それでなくても、僕のライフは残り1000少し、あと数枚のバーンカードで削られてしまう……

「更にリバースカードを1枚セット、そして手札から速攻魔法『超再生能力』を発動エンドフェイズ時、自分がこのターン中に手札から捨てた、または生け贄に捧げたドラゴン族モンスター1体につき、デッキからカードを1枚ドローする。そしてエンドフェイズ時、『超再生能力』の効果で、生け贄に捧げた『闇竜の聖騎士』と『天使の施し』で墓地に送った2枚のドラゴン族モンスター、合わせて3枚のカードデッキからドローこれでターンエンド」

「しょ、初っぱなから飛ばして来ますね……」

……2ターン目でこっちはもう既に虫の息なんですけど……

「ははは、それはそうだよ。何て言ったって……」

と、吹雪さんは後ろを指示し……

「今回は、彼女達に華麗なデュエルを約束してしまったからね。だから悪いけど、今回は少々本気でいかせて貰うよ」

少々って。いやまぁ、ダークネスの力使わないんだから少々かもしんないけどさ。

『キャー吹雪様の本気デュエルが見られるなんて』

『私、幸せ過ぎて死んじゃうかも』

「ははは、まだまだデュエルは始まったばかりだよ。さぁ、思う存分、僕の美技に酔ってくれたまえ」

『キャー』

……あなたは何処ぞの庭球の王子様のキングですか……あ、でもそう言えば、漫画版の吹雪さんってデュエルアカデミアのキングだっけ

……この人だったら吹雪王国フブキングダムとか建国出来るかも……

「僕のターンドロー手札から魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動手札からモンスター1体を墓地へ送り、手札またはデッキから星1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚します手札から『ワイト』を墓地に送り、デッキから星1の『ワイトキング』を特殊召喚」

いやー本当、『ワン・フォー・ワン』が加わってからデッキの回りが段違いに良くなった。隼人君様々だね。

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する『ワイトキング』と『ワイト』の数×1000ポイントの数値になります僕の墓地には、『針虫の巣窟』で墓地に送られた『ワイト』と、墓地では『ワイト』として扱われる『ワイト夫人』が1枚ずつ、そして今『ワン・フォー・ワン』で墓地に送った『ワイト』の計3枚。よって、『ワイトキング』の攻撃力は3000」

よし、これで『真紅眼の黒竜』の攻撃力2400は上回った。

……だけど、吹雪さんフィールド上のリバースカード、あれが気になる。

もしあれが原作オリジナルの『あのカード』だった場合、僕が『ワイトキング』で攻撃した時、僕の負けが決定してしまう。

……いや、『あのカード』は確か自爆特攻でも効果を発動する。ならばいっそ……

「『ワイトキング』攻撃力3000で『真紅眼の黒竜』攻撃力2400に攻撃」

当たって砕けろ骨だけに

『ワイトキング』は両手の指先の骨を『真紅眼の黒竜』に向けて発射した。

「『十指○弾』」

ズドドド……

『ギャオォォ……』

「くっ」 相手残ライフ3400

その骨飛礫が『真紅眼の黒竜』に次々と命中し、撃破した。

『カタカタカタ』

ん『切り札は最後まで取っておくものだよ』……君は何処ぞのロリコン伯爵か

「更にモンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド」

……何はともあれ助かった。あのリバースカードは『あのカード』じゃ無かったようだ。

……だが予断は許されない。僕の残りライフは相変わらず1100。ヤバい事には変わりないのだ。

「ふふふ、やるね和希君。うーん、惜しいなぁ」

「へ」

惜しいって……何が

「いやぁ、ジュンコ君がいなかったら、君も十代君や亮同様、明日香のお相手候補になったのになぁ、と思ってね」

「……はい」

……何を言い出すのさこの人は……

「ちょ、ちょっと兄さん」

「ふ、吹雪様だからアタシはこんな奴の事……」

……何か色んな所から怒号が上がった。

あ、なんか万丈目君がorzの格好になって三沢君が泣きながら慰めてるし。……そういや、今の候補の中に万丈目君の名前が無かったな。いと哀れ。

「」

……そしてやっぱり十代君はよくわかってない顔してるし。

……ところで、なんで今ジュンコさんの名前が出たんだろ

「僕のターンドローモンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド」

とと、僕のターンか。

「僕のターンドロー裏側守備表示モンスター『デス・ラクーダ』攻撃力500を反転召喚『デス・ラクーダ』の効果発動このカードの反転召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローします」

……畳み込むチャンスだったが、召喚出来るモンスターカードはドロー出来なかった。

「……手札から魔法カード『アンデットワールド』を発動このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上及び墓地に存在する全てのモンスターをアンデット族として扱い、また、このカードがフィールド上に存在する限りアンデット族以外のモンスターの生け贄召喚をする事は出来ません」

……取り敢えず、ドラゴン族専用サポートカードや、生け贄召喚を防ぐ為に、このカードを発動させておいた。

「くっ……、これは厄介だね」

吹雪さんのスマイルも、やや渋いものに変化した。

「そして『ワイトキング』攻撃力3000で裏側守備表示モンスターに攻撃」

と、いつの間にか『ワイトキング』の手にはナイフが握られており、そして左目には何処かで見たことがある眼帯が着いていた。

そして、そのナイフを握った腕が吹雪さんのフィールド上の裏側守備表示モンスターに向かって伸びた。

「『シューテ○ング・アロー』」

何処ぞのノーリスペクトの技のように、そのナイフが吹雪さんの裏側守備表示モンスターを貫いた。

「ふふふ、かかったね」

「な」

『ワイトキング』が撃破したのは、仮面を被っているドラゴンだった。

「『仮面竜』守備力1100の効果を発動このカードが戦闘によって破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る僕はデッキから『アタ8



[6474] 第四十話 リベンジ権争奪戦!?
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/07/13 00:13
SIDE 和希



ふぅ、何とか勝てた勝てた。

いやー、流石は吹雪さん。パワーが低くて、使いこなすにはテクニックが必要な筈の『真紅眼(レッドアイズ)』をあそこまで使いこなすとは。宣言通りの華麗なデュエル、敵ながら眼福でした。

「やったじゃん和希!」

「はは、ギリギリもギリギリだったけどね」

ホント、最後に『ライトロード・マジシャン ライラ』が来てなかったら敗北が濃厚だったろうな。

「……」

と、ジュンコさんと目があった。

「はは、どう?勝ったよ?」

「……見ればわかるわよ」

……素っ気ない。

「……ま、よくやったんじゃない?」

「お、本当?ありがとう!」

「か、勘違いするんじゃ無いわよ。アンタが勝たなきゃ、アタシがアンタにリベンジ出来ないじゃない。だから……!」

「……あのさ、僕にリベンジするのはいいけど、先ずは目の前の相手に集中した方がいいんじゃない?」

「わ、わかってるわよ!首を洗って待ってなさい!」

そう言い放って、ジュンコさんはデュエルへと臨んでいった。

「はは、鼻息荒いなぁ」

「……デュエルが終わって早々、何をイチャついてるんスか」



SIDE OUT



SIDE ジュンコ



……このデュエルに勝てば、アイツと対戦出来る!

そう、このデュエルに勝てば……!

「……全く、俺はまるで眼中に無い感じだな」

と、対戦相手である三沢が苦笑していた。

そう、三沢大地、ラーイエローのトップ、いや、その実力はラーイエローを越えてオベリスクブルーの上位の生徒にも勝るとも言われている。

アイツと対戦する為には、まずこの高い壁を乗り越えないと……

「まぁ、君が和希と対戦したい気持ちはわかる。だが、生憎俺もあいつにリベンジしたいのは同じなんでな」

そう言えば、彼もアイツに1回負けてるんだったわね。

「……まぁ、もう1つ、絶対に負けられない理由があるんだが……」

「は?」

負けられない理由?

「なに、個人的な事だ。ま、要するに手加減はしないって事だ」

「っ! 望むところよ!」

なんだかよくわからないけど、あっちも本気みたいね。

でも、こっちだって、アイツにあんなこと言った以上、負ける訳にはいかないのよ!



「「デュエル!!」」

「先攻は貰うぞ!俺のターン!ドロー!『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

いきなり攻撃力1600の中途半端なモンスターを攻撃表示……って事は……

「アタシのターン!ドロー!」

あのリバースカードは多分罠。それなら……!

「アタシは手札の『ハーピィ・クイーン』の効果を発動!このカードを手札から墓地に送る事により、デッキからフィールド魔法『ハーピィの狩場』を1枚手札に加える!そしてこのフィールド魔法『ハーピィの狩り場』を発動!」

「む!?」

『ハーピィの狩り場』の効果で、辺りが切りだった山に囲まれる森に変化した。

「アタシは『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)を攻撃表示で召喚!そしてこの瞬間、フィールド魔法『ハーピィの狩り場』の効果が発動!『ハーピィ・レディ』または『ハーピィ・レディ三姉妹』が召喚・特殊召喚された時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する!『ハーピィ・レディ1』はカード名を『ハーピィ・レディ』として扱うわ。よって、『ハーピィの狩り場』の効果が発動!そのリバースカードを破壊!」

「くっ!?」

破壊されたカードは『モンスターBOX』、毎ターンのスタンバイフェイズにライフ500ポイントの維持コストが必要な代わりに、相手モンスターが攻撃をする度に、コイントスで裏表を当て、当たりの場合、攻撃モンスターの攻撃力を0にする強力な永続罠だった。

……成る程、『ハイドロゲドン』には戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、自分のデッキから他の『ハイドロゲドン』1体を特殊召喚する事が出来る効果がある。『モンスターBOX』の効果で、あわよくばアタシに大ダメージを与えつつ、尚且つ、フィールド上に『ハイドロゲドン』を並べるのを狙ってたわけね。

「『ハーピィ・レディ1』には、フィールド上の風属性モンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる効果があるわ。そして、フィールド魔法『ハーピィの狩り場』にも更に、フィールド上の鳥獣族モンスターの攻撃力と守備力が200ポイントアップさせる効果がある。よって、風属性鳥獣族の『ハーピィ・レディ1』の攻撃力がアップ!(攻撃力1300→1800)」

でも、『モンスターBOX』を破壊した今なら、心置き無く攻撃する事が出来る!

「『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1800)で『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)に攻撃!『爪牙砕断(スクラッチ・クラッシュ)』!」

「くっ!?」 敵残ライフ3800

『ハーピィ・レディ1』の鋭い爪が『ハイドロゲドン』を切り裂いた。



SIDE OUT



SIDE 和希



僕は思わず口笛を吹いた。

「凄い。ジュンコさん、完全に罠を見破ってた」

翔君の言う通り、今のジュンコさんのプレイングは、罠を警戒した慎重尚且つ完璧な物だった。

今までのジュンコさんだったら、より攻撃力の高い『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を召喚して、そのまま攻撃していてもおかしくはなかった。もしそうすれば、下手すればジュンコさんは大ダメージを受けた上、モンスターは返り討ちでフィールドががら空き、更に三沢君のフィールドにモンスターが増えて、勝負が決まってしまっていたかもしれない。

でも、ジュンコさんはちゃんと罠を見抜いてそれを回避した。例え、召喚するモンスターの攻撃力が下がったとしても。

ふむ、どうやらあのデッキをちゃんと使いこなしてくれているようだ。

勿論、三沢君がこのまま押され続けて終わるとも思えない。さて、どうなっていくのか、楽しみだ。



SIDE OUT



SIDE ジュンコ



「更にアタシはリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

よし、先ずは良い感じで先制出来たわ。

……でも、デュエルはまだ始まったばかり。これぐらいで浮かれていられないわ。

「俺のターン!ドロー!まずはその厄介なフィールド魔法から対処させて貰うぞ。手札から速攻魔法『サイクロン』発動!フィールド上の魔法・罠カードを1枚破壊する!『ハーピィの狩り場』を破壊!」

「くっ!?」

『ハーピィの狩り場』が消滅し、『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1800→1600)の攻撃力が下げられてしまった。

「俺は更に『オキシゲドン』(攻撃力1800)を攻撃表示で召喚!『オキシゲドン』も風属性、よって、君の『ハーピィ・レディ1』の効果で攻撃力アップ!(攻撃力1800→2100)」

「くっ……」

そう、『ハーピィ・レディ1』の効果は、相手の風属性モンスターの攻撃力もアップしてしまう。

「『オキシゲドン』(攻撃力2100)で『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)を攻撃!『オキシ・ストリーム』!」

「くっ!?」 自残ライフ3500

『オキシゲドン』の攻撃に『ハーピィ・レディ1』が粉砕されてしまった。

「『ハーピィ・レディ1』が破壊された事により、『オキシゲドン』の攻撃力は元に戻る(攻撃力2100→1800)。俺は更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「アタシのターン!ドロー!」

ここは……

「……モンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド!」

「俺のターン!ドロー!魔法カード『強欲な壺』を発動!デッキからカードを2枚ドロー!更に魔法カード『天使の施し』を発動!デッキからカードを3枚ドローし、手札からカードを2枚墓地に送る!」

っ! 大幅に手札を入れ替えて来たわね……

「更に俺の墓地の、水属性である『ハイドロゲドン』2体と炎属性である『プロミネンス・ドラゴン』をゲームから除外し、『氷炎の双竜(フロストアンドフレイム・ツインドラゴン)』(攻撃力2300)を攻撃表示で特殊召喚!」

『『ギャオォォォォ!!!』』

……出たわね、新しい切り札!それを待ってたのよ!

「折角召喚して貰って悪いけど、早々にお帰り願うわ!罠カード発動!『ゴッドバードアタック』!自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体を生け贄に捧げ、フィールド上に存在するカードを2枚破壊!」

「なに!?」

「裏側守備表示モンスター、鳥獣族の『ハーピィ・ガール』(守備力500)を生け贄に捧げ、『オキシゲドン』と『氷炎の双竜』を破壊!」

「くっ!?」

『ハーピィ・ガール』が特攻を仕掛け、『オキシゲドン』と『氷炎の双竜』を巻き込んで消滅した。

「くっ、リバースカードを2枚セットしてターンエンドだ」



SIDE OUT



SIDE 和希



「うわ、『氷炎の双竜』まであんなにあっさりと」

「凄いザウルス、ジュンコ先輩!」

うーん、確かに上手くいってるけど……

「85点……かな」

「? なんだよ和希、その点数」

「ん? 今のターンのジュンコさんのプレイング」

「? ジュンコ、どこかミスでもしてたの?」

「エサクタ!」

「は?」

「……明日香先輩にそれ系のネタが分かるわけないドン」

「明日香さん、正解って意味っス」

「まぁ、ミスって言うか、ベストのプレイングじゃなかったかな。誰か、『氷炎の双竜』の効果を覚えてる人」

「……何だっけ?」

「……十代、貴様は直接対決したんじゃないのか?」

「えーと確か、通常召喚が出来ないで、墓地の水属性モンスター2体と炎属性モンスター1体をゲームから除外した時のみ特殊召喚可能、あと1ターンに1度、手札1枚を墓地に送る事で、相手フィールド上のモンスター1体を破壊……あ」

翔君がはっとした表情をした。

「そうか、今の場面、三沢君が『氷炎の双竜』の効果を使ってから『ゴッドバードアタック』を使っていれば、『氷炎の双竜』の効果のコストの手札1枚分を三沢君は損してた……」

「エレス・コレクート!」

「いちいちネタで返すな!鬱陶しい」

そう、翔君の言う通り、『氷炎の双竜』の効果が発動されてから、チェーンしてその効果の対象になった『ハーピィ・ガール』を『ゴッドバードアタック』で生け贄に捧げていれば、所謂サクリファイス・エスケープが成立。『氷炎の双竜』のコストになった手札は、無駄に墓地に送られるわけだ。

仮に三沢君が『氷炎の双竜』の効果を発動させなかったとしても、バトルフェイズに入ってから『ゴッドバードアタック』を発動させても遅くはなかった筈だ。

「特に、三沢君のデッキは結構コンボを多様するデッキだから……」

「……成る程、手札を消費させて、コンボパーツを墓地に送らせるのも有効な訳ね」

「ィ「次に先輩は『イグザクトリー』と言う!」何ぃ!?」

れ、レイ君!?

「えへへへ、相手が勝ち誇ったとき、すでにその人は敗北しているんだよ。先輩」

「何……だと!?」

よ、読まれてしまった……orz

「……何してるドン」

「……何か僕、この二人が割りと仲がいい理由がわかったかも」

「……奇遇だな。俺もだ」

「……私も」

『精神年齢が同じ』



SIDE OUT



SIDE ジュンコ



「アタシのターン!ドロー!」

よし、三沢の切り札の1枚である『氷炎の双竜』を破壊する事が出来た。

加えて、もう1枚の切り札、『ウォーター・ドラゴン』を特殊召喚する為に必要な『ハイドロゲドン』2枚もゲームから除外されている。

このチャンスを活かさないと!

「アタシは2体目の『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)を攻撃表示で召喚!『ハーピィ・レディ1』自身の効果で攻撃力アップ!(攻撃力1300→1600)」

……あの3枚のリバースカード、気にはなるけど、今アタシがドローした『このカード』があれば、そんなに気にはならないわ。

「『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)でダイレクトアタック!『爪牙砕断』!」

「ぐぁっ!?」 敵残ライフ2200

だが意外にも、ダイレクトアタックはそのまま通った。

「アタシはカードを1枚セットしてターンエンド!」

……いい具合に攻めれている。それに『切り札』もセットした。

でも……

「……このリバースカードが気になるみたいだな?」

「……っ!」

そう、さっきのダイレクトアタックにも発動しなかった、あの3枚のリバースカード、不気味だわ。

「ふふふふふ……」

「な、何がおかしいのよ」

と、急に三沢が笑いだした。

「いや、君が本当にデュエリストらしくなったと思ってな。前までの君だったら、この時点でもう勝ち誇っていそうだからな。和希も喜んでるんじゃないか?」

「な!? だからなんでここでアイツの名前が出てくんのよ!?」

「ですって、どうなの?そこのところ」

「ん? そりゃジュンコさんがデュエルが上手くなってくれるのは嬉しいよ。デッキ制作者としても友達としてもぐぇ!?」

「だー!この天然無自覚リア充が!もう勘弁ならん!」

「あががが……ま、万丈目君、し、絞まってるって……」

「そうですわ朝倉さん!ジュンコさんを『お友達』扱いなんて酷いですわ!」

「は、浜口さん、なんか論点ズレてるような……って言うか、友達が駄目ってそれ以下って事……ぐが!?ま、万丈目君……何故に余計に……ぐぇ……」

「……」

後ろの方のギャラリーから、またあいつの引き起こしているバカ騒ぎが聞こえた。

……取り敢えず、後で1発殴る……!

「……全く、『友達』呼ばわりされてるのに怒ってちゃ、隠しようが無いだろうに……」

「何か言った!?」

「いいや何も。俺のターン!ドロー!」

と、カードをドローした三沢の口が吊り上がった。

……っ、仕掛けてくる……!?

「ここらで反撃させて貰うぞ!罠カード発動!『異次元からの帰還』!ライフポイントを半分払い、ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する!そしてエンドフェイズ時、この効果で特殊召喚した全てのモンスターはゲームから除外される!俺は、ゲームから除外されている『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)2体と『プロミネンスドラゴン』(攻撃力1500)1体を攻撃表示で特殊召喚!」 敵残ライフ1100

……一気にモンスターを並べてきたわね……!

「更に装備魔法『リビング・フォッシル』を発動!自分の墓地からモンスターを1体選択して特殊召喚し、このカードを装備する!このカードを装備したモンスターは攻撃力が1000ポイントダウンし、モンスター効果は無効化され、このカードが破壊された時、装備モンスターを破壊する!俺は『オキシゲドン』(攻撃力1800→800)を墓地から攻撃表示で特殊召喚!そして一斉攻撃……と行きたい所だが」

「え……」

「これだけモンスターを並べられて落ち着いている所を見ると、君のそのリバースカード、永続罠『ヒステリック・パーティー』の可能性が高いな」

「……っ!」

読まれてる……

もし三沢がそのまま攻撃してきていれば、彼の読み通り、さっきのターンセットしていた『ヒステリック・パーティー』、手札を1枚捨て、自分の墓地に存在する『ハーピィ・レディ』を可能な限り特殊召喚、このカードがフィールド上から離れた時、このカードの効果で特殊召喚したモンスターを全て破壊する永続罠、を発動させていた。

この効果で、さっき戦闘破壊された『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)、そして1ターン目に手札から墓地に送った、フィールド上と墓地では『ハーピィ・レディ』として扱う『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を特殊召喚していた。そうすれば、『ハーピィ・レディ1』2体分の効果で、『ハーピィ・レディ1』自体の攻撃力は1900、『ハーピィ・クイーン』に至っては攻撃力2500まで上がるわ。

……攻撃力の合計がアタシのライフを上回ってるんだから、『ハイドロゲドン』(攻撃力1600)1体と『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)が相打ちにして、その後他のモンスターでダイレクトアタック……って来ると思ったのに、流石に冷静ね。

……でも、って言うことは、『ハイドロゲドン』2体と『オキシゲドン』1体を揃えた今、やって来そうなのは……

「俺は更に、手札から魔法カード『ボンディング-H2O』を発動!」

……っ!やっぱり……!

「自分フィールド上に存在する『ハイドロゲドン』2体と『オキシゲドン』1体を生け贄に捧げ、自分の手札・デッキ・墓地から『ウォーター・ドラゴン』1体を特殊召喚する!デッキから『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)をデッキから攻撃表示で特殊召喚!」

『ギシャー!』

「くっ……」

まさか、『ハイドロゲドン』が2枚ゲームから除外されている状態から召喚してくるなんて……

「でも、『ウォーター・ドラゴン』が真価を発揮するのは対炎属性か対炎族の時、残念ながら、アタシのデッキには1枚も無いわ!」

「……『真価を発揮出来ない』、果たしてそうかな?」

え……

「いくぞ!『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)で『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)に攻撃!『アクア・パニッシャー』!」

くっ、『ヒステリック・パーティー』を使っても、これじゃどの道攻撃力は上回れない。

でも、『ウォーター・ドラゴン』の攻撃が放たれたその時、アタシは『ヒステリック・パーティー』云々が頭から吹っ飛ぶ事態に襲われた。

「え……」

なんで、『ハーピィ・レディ1』の攻撃力が……0に!?

「きゃああぁぁ!?」 自残ライフ700

事態が呑み込めないまま、『ハーピィ・レディ1』(攻撃力0)が『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)の放った強烈な水流に粉砕された。

「な、なんで……?」

改めて、三沢のフィールド上を見てみる。すると……

「!? 『DNA改造手術』!?」

「そうだ、『ウォーター・ドラゴン』の攻撃の際に発動させて貰った。永続罠『DNA改造手術』、発動時に1種類の種族を宣言、このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した種族になる。俺が宣言したのは炎族。そしてこの瞬間、『ウォーター・ドラゴン』の効果が発動!このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、炎属性と炎族モンスターの攻撃力は0になる!」

「で、でも、それなら『ウォーター・ドラゴン』自体も『DNA改造手術』の効果で炎族になって、『ウォーター・ドラゴン』自身の効果で、そのカードの攻撃力も0になる筈でしょ!?」

「そう、だから俺はもう1枚、罠カードを発動させていたのさ」

「え……」

見てみると、三沢のもう1枚のリバースカードも発動していたのだった。

「永続罠『暴君の威圧』!自分フィールド上に存在するモンスター1体を生け贄に捧げて発動、このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する元々の持ち主が自分となるモンスターは、このカード以外の罠カードの効果を受けない。俺は『プロミネンスドラゴン』を生け贄に、このカードを発動させた」

「じゃ、じゃあ……」

「そう、つまりこのカードの効果で、俺の『ウォーター・ドラゴン』は罠カード、『DNA改造手術』の効果を受けず、種族は海竜族のまま、という訳だ」

くっ、何よそれ、つまり、一方的にアタシのモンスターだけが攻撃力0にされるって訳?

おまけに、『暴君の威圧』の効果で普通に罠も効かないなんて……

「確かに、『ウォーター・ドラゴン』は、単体では能力を発動する場面が限られ、十代の『ネオス』のような決め手にはなりにくい。だがこの通り、このカードは他のカードと組み合わる事によって、どんな高攻撃力のモンスターも無力化出来る!ウォーター・ドラゴンとはそのカード単体にあらず!さながらデンプシー・○ールのようにな!」

……デンプシー・○ールって何よ。

「くっ……アタシのターン、ドロー!モンスターを1体、裏側守備表示でセットしてターンエンド!」

ここで、攻撃力1200以上のモンスターを召喚されたら……負け……

「俺のターン!ドロー!……『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)で裏側守備表示モンスターを攻撃!『アクア・パニッシャー』!」

「くっ!?」

よ、よかった。どうやらモンスターカードはドロー出来なかったみたい。

「……破壊された『バード・フェイス』(守備力1600)の効果を発動!このカードが戦闘によって墓地に送られた時、デッキから『ハーピィ・レディ』を1枚手札に加える事が出来る。デッキから3枚目の『ハーピィ・レディ1』を手札に加えるわ!」

「俺は更に、リバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

な、なんとか凌いだけど、これじゃいつやられてもおかしくないわ……

「……アタシのターン、ドロー……」

「永続罠発動!『最終突撃命令』!」

っ!?それはさっきのデュエルでアイツが使っていた……!

「このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に存在する表側表示モンスターは全て攻撃表示となり、表示形式は変更出来ない!」

そ、それじゃ……

「つまり、君が裏側守備表示でセットしたモンスターも、戦闘で表側表示になった瞬間、このカードの効果で強制的に攻撃表示になり戦闘させられる。『ウォーター・ドラゴン』と『DNA改造手術』のコンボで、攻撃力が0になったままな」

……アタシの残りライフは700、攻撃力2800で攻撃力0のモンスターに攻撃なんてされたら……

……こんなの、どうしろってのよ……

諦めかけたその時だった。

「あ……」

そう言えば、前にも似たような事があった。ジェネックスで、ももえと一緒にプロデュエリストを相手にした時だ。

あの時も、もう少しで負けそうだった窮地で、……認めたくないけど、アイツの発破のお陰で勝てた。

……そう、ここで諦めたら、あの時と何も変わらないじゃない……!

またアイツに、みっともない姿を見せるの?

そんなの、絶対イヤ!



SIDE OUT



SIDE 和希



おー、立ち直った立ち直った。

いやー、なんか追い込まれてまた諦めムードが漂ってたからなんか発破でも掛けようと思ったけど、今回は必要無いみたいだ。

……でも、三沢君もまたトンデモなコンボを展開している。そして事実上、『最終突撃命令』のせいで、このターンにあのコンボを破らなければジュンコさんの負けだ。

……さて、大逆転、見せてくれるのだろうか。



SIDE OUT



SIDE ジュンコ



……アタシは、『最終突撃命令』が発動されたせいでよく確認していなかったドローしたカードを見た。

「!」

このカード……!

「……永続罠『ヒステリック・パーティー』を発動!手札を1枚捨て、自分の墓地に存在する『ハーピィ・レディ』を可能な限り特殊召喚するわ!このカードがフィールド上から離れた時、このカードの効果で特殊召喚したモンスターを全て破壊する!アタシは手札からコストとして『ハーピィ・レディ1』を墓地に送り、このコストにしたのを含めた『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)3体と、フィールド上及び墓地では『ハーピィ・レディ』として扱う『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を攻撃表示で特殊召喚!」

『『『『ハッ!!!!』』』』

「やはりそのリバースカードは『ヒステリック・パーティー』だったか!だが、そのハーピィ達も当然、『ウォーター・ドラゴン』と『DNA改造手術』のコンボで、全て攻撃力0になるぞ!」

「わかってるわよ!更に魔法カード『万華鏡-華麗なる分身-』を発動!『ハーピィ・レディ』が表側表示でフィールド上に1体以上存在する時、手札またはデッキから『ハーピィ・レディ』か『ハーピィ・レディ三姉妹』を1体特殊召喚する!デッキから『ハーピィ・レディ三姉妹』(攻撃力1950)を攻撃表示で特殊召喚!」

『『『フフフフ……』』』

「一気に5体のモンスターを揃えてきたか。だが、何体揃えようとも……!」

「まだよ!」

「何!?」

「これで仕上げよ!手札から魔法カード『トライアングル・X(エクスタシー)・スパーク』を発動!このターンのエンドフェイズまで、『ハーピィ・レディ三姉妹』の攻撃力は2700になり、相手プレイヤーは罠カードを発動できず、相手フィールド上の罠カードの効果は無効になる!」

「な!?」

「このカードの効果で、アンタのフィールド上の『暴君の威圧』、『最終突撃命令』、そして『DNA改造手術』の3枚の永続罠は、このターンのエンドフェイズまで無効になるわ!」

『『『ハァ!!!』』』

「ぐぁ!?」

『ハーピィレディ三姉妹』が三角形の陣形から放ったビームがあちらの3枚の永続罠に命中して、その効果を無効化させた。

「これで『ウォーター・ドラゴン』と『DNA改造手術』のコンボが消えたわ!」

「くっ……」

「『ハーピィ・レディ三姉妹』の攻撃力は『トライアングル・X・スパーク』の効果で2700、そして、他のハーピィ達も、3体の『ハーピィ・レディ1』の効果で攻撃力アップ!(『ハーピィ・レディ1』3体 攻撃力1300→2200 『ハーピィ・クイーン』 攻撃力1900→2800)」

「攻撃力2800!?『 ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)に並んだ!?」

「『ハーピィ・クイーン』(攻撃力2800)で『ウォーター・ドラゴン』(攻撃力2800)に攻撃!『爪牙斬撃(スクラッチ・スラッシュ)』!」

「くっ、迎え撃て『ウォーター・ドラゴン』!『アクア・パニッシャー』!」

『ハーピィ・クイーン』の爪が『ウォーター・ドラゴン』を捉え、『ウォーター・ドラゴン』の断末魔に放った水流も『ハーピィ・クイーン』に命中、双方ともに消滅した。

「……『ウォーター・ドラゴン』の効果発動!このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に存在する『ハイドロゲドン』2体と『オキシゲドン』1体を特殊召喚する事が出来る!『ハイドロゲドン』2体(守備力1000)を守備表示で、『オキシゲドン』(攻撃力1800)を攻撃表示で特殊召喚!そして、『ハーピィ・レディ1』3体の効果で、『オキシゲドン』の攻撃力がアップ!(攻撃力1800→2700)」

「それでも、『ハーピィレディ三姉妹』(攻撃力2700)と攻撃力は同じよ!」

「また相打ち狙いか……!」

「『ハーピィレディ三姉妹』(攻撃力2700)で『オキシゲドン』(攻撃力2700)に攻撃!『トラアングル・X・スパーク』!」

「くっ、『オキシ・ストリーム』!」

再び、お互いのモンスターが相打ちになった。

「まだまだ!『ハーピィ・レディ1』2体(攻撃力2200)で『ハイドロゲドン』2体(守備力1000)に攻撃!『爪牙砕断』!」

「ぐっ!?」

これで、三沢のフィールド上にモンスターは居なくなったわ!

「これで終わりよ!最後の『ハーピィ・レディ1』でダイレクトアタック!」

「ぐぁぁぁ!?」 敵残ライフ0



か、勝った……?

「や……やったぁ!」

嬉しさが込み上げてくる。今にも飛び上がってしまいそうな程に。

……でも、何か違和感があった。

勝った事は勿論嬉しい。でも、その嬉しさは全体の半分にも満たない。大半は別の嬉しさだった。

何に対して嬉しいのかよく分からないまま浮かれていると、

「……負けたよ」

三沢が話し掛けてきた。

「今回は、君にリベンジの役割を譲るとするよ」

「あ……」

デュエルに夢中になっていて忘れちゃっていたけど、言われて思い出した。そうだ、これでアタシ、アイツと対戦出来る……!

「じゃ、頑張ってくれよ」

と、励ましの言葉と共に、三沢は皆の居る方へと歩いていった。

……それじゃ、嬉しさの大半って……アイツと対戦出来るから?

……っ!そ、そうよ!アイツにリベンジ出来るからよ!

そう、リベンジ、リベンジなんだから……!

まるで呪文のように繰り返しているアタシだった。

……この後、労いと共に、アタシのプレイングミスを指摘してきたアイツを殴ってやったのは言うまでもないわ。



今日のワイト(デュエル後)



「そう言えば三沢君、『絶対に負けられない理由』って何だったんスか?」

「ははは、いや、ちょっと個人的な恨みと言うかな」

「恨み?ジュンコ先輩にザウルス?」

「まさか、恨みがあるのはあのデッキさ」

「ジュンコさんのデッキ?『ハーピィ・レディ』の?」

「……なんか嫌な予感するドン」

「……あいつらのせいで、折角の3期の再登場シーンが惨めな物になったからな!『ハーピィ・レディ』許すまじ!」

「逆恨みだ!?」

「と言うか思いっきりメタ発言ザウルス!」

「……でも結局負けてるっス……」

「言うなあぁぁぁぁ!!!」



後書き



どうも、最近KOF系のギャルゲーであるデイズ オブ メモリーズにハマっている八王夜です。クーラ可愛いよクーラ。

ここに来て、自分の水色髪キャラ好きぶりを再確認。DS版遊戯王のミサキとか、何あのえうえう鳴く可愛い生物!?

いやー、とうとう5D`sが終了しましたね。さて、まだ大分気が早いですが、次回作予定(あくまで予定)の『遊戯王5D`s ○○○使いの5D`s世界放浪記』の構想でも練りますか(爆

ではまた次回

ps

見なおしてみたら、なんか必要性を感じなかったのでキャラ設定を削除しました。



[6474] 第四十一話 第二部完
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/06/22 01:35
SIDE 和希



さて、トーナメントもいよいよ2回戦、準決勝となった。

準決勝第1試合は万丈目君対翔君だ。

十代君や僕達のグループ以外の皆が万丈目君の方が上手だと予想していた対戦だったが、始まってみると、予想に反して翔君が圧倒的に押し、皆を驚かせていた。

ふむ、やっぱり翔君も、十代君や亮さんから刺激を受けて成長しているみたいだ。

だが、あと一歩で翔君の勝利……という所で、再び万丈目君必殺の『おジャマ・デルタハリケーン!!』が炸裂。またもや万丈目君の大逆転勝利となった。

「……釈然としないっス」

「……と言うか、万丈目先輩がこのパターン以外で勝っている所、殆んど見たこと無いザウルス」

「ははは、そだね」

確かに、原作全般で見ても万丈目君が『おジャマ』以外で勝ったのって、明日香さんに三沢君、それに、なんか某後ろに立っちゃいけないスナイパーそっくりなゲルゴとかいうプロデュエリストぐらいだしなぁ。しかも、3つとも全部ホワイトサンダーの時だったし。

『イエーイ!』

『オイラ達!』

『またまた大活躍!』

「ええーい、気色悪い!引っ付くな!」

はは、何だかんだ言って、切っても切れない関係なんだよね。全く、いいコンビ……じゃない。いいカルテットだ。

「ふむ、バカルテットと名付けよう」

「人を何処ぞのバカ妖精達のように呼ぶな!と言うか、寧ろその渾名が相応しいのは貴様と貴様の精霊達の方だろうが!」

「ははは……」

ん?何だいワイト達?『そのうちもう一人増えてバカレンジャーになる予感』?うん、メタ発言は止めようね。



さて、次は僕の番……

「レディースアンドジェントルマン!」

「へ?」

ふ、吹雪さん!?

いきなり、吹雪さんが鮫島校長の持っていた拡声器を使って叫んだ。

「さぁ、次はお待ちかね!今回のトーナメントの目玉、カップルデュエルの実現だよ!」

「ちょ!?」

……カップルデュエルってナンデスカー!?

「これは残酷な運命なのか、はたまた二人の愛を示す絶好の場面なのか、これは見逃せない!」

「兄さんったら……」

頭を抱える明日香さんとは反対に、吹雪さんの宣言に反応して、ギャラリー、特に女子が沸く。……吹雪さん効果に加えて、女子はそういうの好きそうだもんなぁ。

……じゃなくて、と言うかそもそも、なんで僕とジュンコさんがカップルなのさ?

いやまぁ、女子の後輩からはよく、何故かは分からないけど、『ジュンコ先輩と付き合ってるんですか!?』とか聞かれるんだけどね。……否定すると物凄い意外そうな顔されるし。

……ある時、尚も食い下がってくる後輩君に否定し続けたら……

「ふーん、アタシの事はそんな嫌いな訳?」

……偶々その場を通り掛かったジュンコさんがそんな風に捉えて烈火の如く怒り出すし。

因みに、その後の喧騒を目の当たりにした件の後輩君は……

「やっぱり、何処からどう見ても付き合ってるようにしか見えませんけど……」

……だからなんでそう見えるのさ?

いやまぁ、僕から見れば、一番身近な女子ではあるとは思うんだけどさ、なんかあっちは相変わらず僕の事を目の敵にしてるっぽいしなぁ。今回も、1年も前の事のリベンジだって言うし。

……ホント、なんで僕達が付き合ってるように見えるんだか。

と、

「……っ! 違ーーーう!!!」

さっきから肩を震わせていたジュンコさんが拡声器顔負けの声で叫び、周りのギャラリーも一気に静かになった。

「あーもう、この際だからはっきり言っとくけど!」

と、ジュンコさんは僕をズビシッと指差し……

「アタシとコイツとはカップルでも何でも無いんだから!赤の他人よ!」

あ、赤の他人って……

「むぅ……」

「な、なんでそんな不満そうな顔するのよ」

いやだって……

「流石に赤の他人は酷くない?僕は友達だと思ってたのに。……一方的にかもしんないけどさ」

「ぅ……」

自分でも珍しいと思ったけど、割りと傷付いたので拗ねてみた。

「わ、悪かったわよ。言い過ぎたわよ……」

と、ジュンコさんの方も珍しく、素直に謝ってくれた。

と、ギャラリーがまたざわざわし出した。なんか「説得力無い」とかいう声がちらほら聞こえる。

その声が聞こえたのか、ジュンコさんはハッとした表情になり……

「で、でも、百歩譲って友達よ!それ以上でもそれ以下でも無いんだから!」

……百歩譲って友達なら、殆んど友達以下だと思うんだけどなぁ……

と、ジュンコさんはまた僕を指差し……

「今日こそは、いつもアタシの事をバカにしているコイツの鼻っ柱をへし折ってやるのよ!」

「……別にバカにしてるつもりは無いんだけどなぁ……」

「問答無用!いいからさっさと構えなさい!」

「……人の話は最後まで聞こうよ?」

「アンタにだけは言われたくないわよ!」

「それはごもっとも……」

……あれ?

「ぷっ、はははははは……」

思わず吹き出してしまった。

「な、何がおかしいのよ?」

「いや、今のやり取り、去年君と初めてデュエルした時のとまるっきり同じだったからさ」

「な!?」

「ははは、いやー、あの時もジュンコさん、喧嘩腰だったよねー」

「っ!アンタがアタシの事おちょくるからでしょ!」

「ははは、いやー、ジュンコさんって吊り鐘みたいだからさ」

「は?吊り鐘?」

「そ、吊り鐘は叩くのが強ければ強い程大きく鳴る。そして君は、からかえばからかうほど、それに比例してリアクションが返ってくる。はは、ホント、君と居ると退屈しないよ」

「……っ!?」

まぁ、元ネタの、坂元龍馬が西郷隆盛の人柄を吊り鐘に例えたのとは大分意味が違うけど。

「……アンタが……」

「ん?」

と、またジュンコさんの肩が震え出した。

あ、ヤバい予感……

「アンタがそういう事言うから、勘違いされるんでしょうがぁぁぁ!!」

ちょ!? これからデュエルするのに本体攻撃とかみぎゃぁぁぁぁ!?



「……まーた始まったドン」

「……いつになったら始まるんスかね」

「と言うか、ジュンコのやつ大丈夫か?ただ怒ってるだけの割には、尋常じゃ無い位顔が真っ赤だぜ?」

『……はぁ……』

「? どうしたんだよ皆、溜め息なんかしてよ?」



十数分後、漸く鮫島校長の仲裁が入り、殴る蹴るの暴行は治まった。

「……出来ればもう少し早く止めて貰いたかったです」

「ははは、流石にこの歳で馬に蹴られてしまってはひとたまりもないからね」

「校長先生!」

「まぁまぁ、取り敢えずジュンコ君も大分気が張れただろうし、そろそろデュエルに移って欲しい」

「……」

物凄い渋々だし。あれだけやってまだ足りないんかい。恐ろしい……

「……こっちはもう、気分的にも肉体的にも棄権したい所なんですど……」

「そんな事したら、どうなるのかわかってるんでしょうね……!」

「……デスヨネー」

……こうして、もう色々とボロボロになりながら、やっとデュエルがスタートした。



「「デュエル!!」」

「僕の先攻!ドロー!『カードガンナー』(守備力400)を守備表示で召喚!『カードガンナー』の効果を発動!1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送っる事により、このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする!デッキの上からカードを3枚墓地に送り、『カードガンナー』の攻撃力を1500ポイントアップ!」

まぁ、守備表示だし、相手のターンになったら元に戻るから攻撃力アップの方は今回はあんま意味はない。狙いは勿論、デッキから墓地にカードを送る方だ。

「ターンエンド!」

元の世界では、『カードガンナー』を攻撃表示で召喚してその効果を使った後、次の相手のターンで攻撃力が元に戻った『カードガンナー』を狙われてダメージを受けるケースが多かった。でも、こっちの世界では、今やった通りに表側守備表示で召喚する事が出来る。その為、反撃で大ダメージを受ける可能性がぐっと低くなった。

十代君も、原作でよくこのカードを守備表示で召喚して、効果で墓地を肥やしてたもんなぁ。そして、墓地で効果が発動する『ネクロ・ガードナー』か『E・HERO ネクロダークマン』が大体墓地に送られたのはお約束だ。

「アタシのターン!ドロー!」

……ジュンコさんのデッキは勿論、僕のあげた『ハーピィ・レディ』のデッキ、僕はその特徴をよく知っている。

あのデッキの最大の強みは、フィールド魔法『ハーピィの狩場』等、魔法・罠の破壊能力が高い事だ。

だが、僕のデッキには魔法・罠、特にフィールドに残って破壊の対象になり易い永続魔法・永続罠が少ない。だからその面だけを見れば、僕が有利に見える。

だが、あくまでそれはあのデッキの『最大の特色』であって、それ以外に特徴が無いわけじゃない。事実、あのデッキは色々と偏りのある僕のデッキと比べて、ややテーマ色が強いものの、魔法・罠・モンスターのバランスが良く、色々なデッキへの対応力という点では僕のデッキよりも上だ。

……さぁ、どう来る?ジュンコさん。

「アタシは手札からフィールド魔法『ハーピィの狩場』を発動!」

「え……」

僕が思わず声を上げてる間に、周りの景色が、さっきジュンコさんが三沢君戦でこのカードを発動させた時と同じ渓谷へと変化した。

「……あのさジュンコさん?」

「何よ」

「……今僕のフィールド上に魔法・罠カード無いんだけど?」

そう、『ハーピィの狩場』の効果は、フィールド上に表側表示で存在する鳥獣族モンスターの攻撃力と守備力が200ポイントアップする他、『ハーピィ・レディ』または『ハーピィ・レディ三姉妹』がフィールド上に召喚・特殊召喚された時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する、というものだ。

ここで注意するのは、『破壊出来る』ではなく『破壊する』という所。つまりは強制効果、言い換えれば、『破壊しなければならない』なのだ。

つまり、今の僕みたいに、相手のフィールド上に魔法・罠が無ければ、自分の魔法・罠、最悪は『ハーピィの狩場』自体を破壊しなければならなくなるのだ。

因みに少し前のゲームでは、相手コンピューターがよくこのミスをし、先攻1ターン目で『ハーピィの狩場』を発動させたすぐ後に『ハーピィ・レディ』を召喚して『ハーピィの狩場』そのものを破壊、とかやっていたものだ。

「アンタねぇ……!」

そして、またなんか怒ってるし!?

「アタシがそんな初歩的なミスをするとでも思ってる訳!?」

「いやだって……」

「うるさい!アンタは黙って見てなさい!アタシはリバースカードを1枚セットして、『ハーピィ・クイーン』(攻撃力1900)を攻撃表示で召喚!」

……あれ?これって……

「『ハーピィ・クイーン』のカード名は、フィールド上または墓地に存在する限り『ハーピィ・レディ』として扱うわ。そしてこの瞬間、『ハーピィの狩場』の効果が発動!『ハーピィ・レディ』または『ハーピィ・レディ三姉妹』がフィールド上に召喚・特殊召喚された時、フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚を破壊する!アタシは、アタシのフィールド上のリバースカードを破壊!」

っ!やっぱり、そう来るか……!

「そしてこの瞬間、破壊されたアタシの罠カード『荒野の大竜巻』の効果が発動!セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する!この効果で、アンタのフィールド上の『カードガンナー』を破壊するわ!」

「くっ!?』

突如竜巻が発生し、『カードガンナー』を巻き込んで粉砕した。

「……『カードガンナー』の効果を発動!自分フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキからカードを1枚ドローする!」

「でも、これでアンタのフィールドはガラ空きよ!『ハーピィの狩場』の効果で、フィールド上に表側表示で存在する鳥獣族である『ハーピィ・クイーン』の攻撃力と守備力が200ポイントアップ!(攻撃力1900→2100)『ハーピィ・クイーン』(攻撃力2100)でダイレクトアタック!『爪牙斬撃(スクラッチ・スラッシュ)』!」

「ぐっ!?」 自残ライフ1900

……いきなり大ダメージを受けてしまった。

けど……

「これでターンエンドよ!……って、何ニヤニヤしてんのよ!気持ち悪いわね!」

「ふふふ、いやー、まさか君がその使い方に気付くとはね」

罠カード『荒野の大竜巻』は普通に発動しただけでは、魔法・罠カードゾーンに表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊し、破壊されたカードのコントローラーは、手札から魔法または罠カード1枚をセットする事が出来る、というだけの、弱体化『砂塵の大竜巻』みたいなものだ。

だがこのカードは、セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する、というもう1つの効果を持っている。この効果と、『ハーピィの狩場』の魔法・罠破壊効果を絡めたのが、さっきジュンコさんがやったコンボ、このデッキにおける『荒野の大竜巻』の正しい使い方だ。

「言わば、今のはそのデッキの隠し技さ。それに気付いて貰えるなんて、製作者冥利に尽きると思ってね」

「ぅ……」

これに気付いたって事は、ジュンコさんのデュエルの腕が上がったというのもあるだろうけど、それ以上にこのデッキを使い込んで、使い方を研究してくれているって事だろう。そう考えると、嬉しくなってくる。

「あーもう!アンタのターンよ!余計な事言ってないでさっさとしなさいよ!」

「ははは、僕のターン!ドロー!『ライトロード・マジシャン ライラ』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!」

「……『ライトロード・マジシャン ライラ』、確か守備表示に表示変更する事で魔法・罠を破壊する効果があったわね」

お、効果覚えてたんだ。

「攻撃力が敵わないから、取り敢えず『ハーピィの狩場』でも破壊しておくつもり?」

「半分正解、かな」

「半分?」

「更に僕は、装備魔法『守護神の矛』を『ライトロード・マジシャン ライラ』に装備!装備モンスターの攻撃力は、墓地に存在する装備モンスターと同名カードの数×900ポイントアップする!」

「っ!さっきの『カードガンナー』の効果で……!?」

「そ、僕のデッキのもう1枚の『ライトロード・マジシャン ライラ』が墓地に送られたって訳。よって、『ライトロード・マジシャン ライラ』の攻撃力は900ポイントアップ!(攻撃力1700→2600)『ライトロード・マジシャン ライラ』(攻撃力2600)で『ハーピィ・クイーン』(攻撃力2100)に攻撃!『シャイニング・オブ・ベガ』!」

「くっ!?」 敵残ライフ3500

『ライトロード・マジシャン ライラ』の放った魔法が『ハーピィ・クイーン』を粉砕した。

「更に『ライトロード・マジシャン ライラ』の効果を発動!自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードを表側守備表示に変更し、相手フィールド上の魔法または罠カード1枚を破壊する!『ライトロード・マジシャン ライラ』(守備力200)を守備表示に表示変更して、『ハーピィの狩場』を破壊!」

「くっ……」

『ライトロード・マジシャン ライラ』の魔法が、今度は『ハーピィの狩場』を破壊し、周りの景色が元に戻った。

「更にリバースカードを1枚セット!そしてエンドフェイズ時に『ライトロード・マジシャン ライラ』のもう1つの効果が発動!このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを3枚墓地に送る!デッキからカードを3枚送ってターンエンド!」

……今のでやっと『ワイト』が1枚墓地に送られてくれた。今回はなかなかワイト達が墓地に行ってくれない。

これで一応、ジュンコさんのフィールド上は一掃出来たけど、僕のフィールド上に居るのは守備表示の『ライトロード・マジシャン ライラ』(守備力200)のみ。……『ワイト』でも崩せる脆い壁だ。

しかも僕のライフは残り半分以下。一応僕のフィールド上にはリバースカードがあるが、ジュンコさんが『ハーピィ・レディ』を大量展開してきたらキツいな……

「アタシのターン!ドロー!……アタシは『バード・フェイス』(攻撃力1600)を攻撃表示で召喚!『ライトロード・マジシャン ライラ』(守備力200)に攻撃!」

よし、『ハーピィ・レディ』を展開して来ない……!

「罠カード発動!『サンダー・ブレイク』! 手札を1枚墓地に送り、フィールド上に存在するカード1枚を選択して発動する。選択したカードを破壊する!『バード・フェイス』を破壊!」

攻撃を仕掛けようとしていた『バード・フェイス』に、天空から雷が襲い掛かった。

だが……

「……ありゃ?」

命中する刹那、『バード・フェイス』の姿が消え、雷は何もない地面へと落ちた。

「アンタの罠なんてお見通しなのよ!手札から速攻魔法『スワローズ・ネスト』を発動!自分フィールド上に表側表示で存在する鳥獣族モンスター1体を生け贄に捧げ、そのモンスターと同じ星の鳥獣族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する!このカードの効果で、『サンダー・ブレイク』の対象になった『バード・フェイス』を生け贄にしたわ!」

くっ、サクリファイスエスケープか。上手いな。

「そして、生け贄にした『バード・フェイス』と同じ星4で鳥獣族の『聖鳥クレイン』(攻撃力1600)を攻撃表示でデッキから特殊召喚!」

……しかも、ここで『聖鳥クレイン』を特殊召喚して来るか、心得てるな。

「『聖鳥クレイン』の効果発動!このカードの特殊召喚した時、このカードのコントローラーはカードを1枚ドローする!」

……これで、消費した『スワローズ・ネスト』の分の手札を補充、実質ジュンコさんは、ノーコストで『サンダー・ブレイク』をかわした事になる……!

「『聖鳥クレイン』(攻撃力1600)で『ライトロード・マジシャン ライラ』(守備力200)に攻撃!『セイント・フェザー』!」

「くっ……!?」

『聖鳥クレイン』が光り輝く羽を飛ばし、それが刺さった『ライトロード・マジシャン ライラ』が粉砕された。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンドよ!」

くはー、これも完璧に対処されたなぁ。



SIDE OUT



SIDE ジュンコ



……凄い。アタシ、コイツを追い詰めてる……

……今まで、このデッキを使っても、自分が強くなった事を実感出来なかった。プロや三沢に勝てたのも、正直運が良かったからだと思っていた。

でも、前にデュエルした事のあるコイツとのこのデュエルで、アタシは前以上に善戦出来ている。

アタシ、強くなってるんだ……

「ふふふふふ……」

「な、何よ!?またニヤニヤ笑い出して……!」

「ははは、だってさ、ジュンコさんがなんか楽しそうだしさ。前にデュエルした時よりも全然ね」

「ぅ……」

……ホンット目敏いわねコイツ。悪い意味で。

「…なによ?楽しんじゃ悪いっていうの?」

「まさか、寧ろ、楽しんでる相手とデュエルした方が、僕も楽しいしね。大歓迎さ。僕のターン!ドロー!……モンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド!」

……リバースカードをセットしてこない。畳み掛けるチャンス!

「アタシのターン!ドロー!」

! 来た!

「アタシは『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300)を攻撃表示で召喚!そしてこの瞬間、罠カード『連鎖破壊(チェーン・デストラクション)』を発動!攻撃力2000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、そのモンスターのコントローラーの手札とデッキから同名カードを全て墓地に送る!アタシのデッキから、残り2枚の『ハーピィ・レディ1』を墓地に送るわ!」

これで、いつでも『ヒステリック・パーティー』で墓地の『ハーピィ・レディ』を並べられる。

……もっとも、その必要は無いかもしれないけど……!

「更に魔法カード『万華鏡-華麗なる分身-』を発動!『ハーピィ・レディ』が表側表示でフィールド上に1体以上存在する時、手札またはデッキから『ハーピィ・レディ』か『ハーピィ・レディ三姉妹』を1体を特殊召喚する!デッキから『ハーピィ・レディ三姉妹』(攻撃力1950)を攻撃表示で特殊召喚!」

これで、アタシのフィールド上に3体のモンスターが揃った!アイツのフィールド上には裏側守備表示モンスター1体のみ……!

「『ハーピィ・レディ1』の効果で、フィールド上の風属性モンスターの攻撃力は300ポイントアップ!(『ハーピィ・レディ三姉妹』攻撃力1950→2250 『ハーピィ・レディ1』攻撃力1300→1600)」

『聖鳥クレイン』は光属性だから攻撃力は上がらないけど、今はこれで十分よ!

「『ハーピィ・レディ三姉妹』(攻撃力2250)で裏側守備表示モンスターに攻撃!『トライアングル・X(エクスタシー)・スパーク』!」

これでアイツのモンスターが、戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから守備力2000以下のアンデット族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事が出来る『ピラミッド・タートル』、リバース効果でフィールド上のカードを1枚破壊出来る『ライトロード・ハンター ライコウ』の何れか以外だったら、他のモンスターの総攻撃が決まってアタシの勝ち……!

……そして、『ハーピィ・レディ三姉妹』が攻撃したのは……

「……『メタモルポット』(守備力600)のリバース効果発動! お互いのプレイヤーは手札を全て墓地に捨て、その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする!」

懸念していた2枚じゃ無かった……!

「『聖鳥クレイン』(攻撃力1600)でダイレクトアタック!『セイント・フェザー』!」

「くっ……」 和希残ライフ300

これで最後の攻撃が通れば……!

「これで終わりよ!『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1600)でダイレクトアタック!『爪牙砕断(スクラッチ・クラッシュ)』!」

アタシの勝ち……!

でも……

「な!?」

『ハーピィ・レディ1』の攻撃は、突然現れた障壁に遮られてしまった。

「……ふぅ、危ない危ない。『メタモルポット』の効果で手札から墓地に送られた『ネクロ・ガードナー』の効果を発動!自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事により、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!この効果で『ハーピィ・レディ1』の攻撃を無効にしたよ!」

「くっ、リバースカードを1枚セットしてターンエンドよ」

それにしても……

「……アンタも、無駄に大胆よね」

「ん?何でさ?」

「普通安全策を取るんだったら、『メタモルポット』じゃなくて『ネクロ・ガードナー』の方を召喚しとくべきでしょ?アタシが『メタモルポット』のリバース効果を発動させずに破壊してたらどうするつもりだったわけ?」

「はは、まぁその時は、ジュンコさんの勝ちだったという事で」

「……」

まぁ、よっぽどの事が無い限り、コイツが安全策を取るなんて事はないんでしょうけど。

ともかく、このターンではトドメを刺せなかったけど、これでアイツの残りライフを僅か300まで削れたわ!

次のターンで……!

「まぁでも、ことわざに『死中に活を求める』って言うし、今ので流れが変わったかもよ?」

……ホンット、馬鹿みたいにプラス思考なやつね。でも、コイツの事だから強がりなんかじゃなく、本当にそうなると思ってるんでしょうね。

……気は抜けないわね。

「僕のターン!ドロー!僕はリバースカードを1枚セットして、魔法カード『手札抹殺』を発動!お互いプレイヤーは手札を全て墓地に捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする!」

「!? また手札を……!」

不味い、さっきの『メタモルポット』の効果と合わせて、アイツの墓地にどんどんカードが送られている……!

そして、デッキからカードをドローしたアイツが笑みを浮かべた。

! 来る!

「僕は手札から『ワイトキング』を攻撃表示で召喚!」

『カタカタ!』

「くっ……」

……いつかは来るとは思っていたけど、出来れば出てこないうちに勝負を着けたかったわ。

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する『ワイトキング』『ワイト』の合計枚数×1000ポイントの数値になる!僕の墓地には、『ワイト』が1枚と、墓地で『ワイト』として扱う『ワイト夫人』が2枚の計3枚。よって、『ワイトキング』の攻撃力は3000!そして更に、装備魔法『光学迷彩アーマー』を装備!このカードは星1のモンスターのみ装備可能!装備モンスターは相手プレイヤーに直接攻撃する事が出来る!」

「な!?」

こ、攻撃力3000のダイレクトアタック……!?

「『ワイトキング』(攻撃力3000)でダイレクトアタック!『ホーンテッド・ナイトメア』!」

「きゃあああぁ!?」 ジュンコ残ライフ500

くっ、一気に同じぐらいまでライフを削られた……

「……そのデッキも、相変わらずの一発狙いの馬鹿デッキね」

「まぁでも、その一発が馬鹿にならないでしょ?」

……確かに馬鹿にならないわ。アイツの墓地にあと1枚『ワイト』が送られていたら、アタシは負けていた……!

「ターンエンド!」

……アタシのフィールド上のリバースカードは、切り札の永続罠『ヒステリック・パーティー』、これで墓地の『ハーピィ・レディ1』2体を特殊召喚しても、アタシのフィールド上の最高攻撃力は『ハーピィ・レディ三姉妹』の2850止まり、『ワイトキング』に敵わない……

かと言って、アイツの『メタモルポット』と『手札抹殺』で補充、交換させられた手札にも、『ワイトキング』を破壊出来るカードは無い……

……でも、何故だかわからないけど、さっきの三沢とのデュエルで追い詰められた時みたいな、諦めの気持ちは全く湧いてこない。

……単にコイツに負けたくないっていうのもあるけど、それ以上に……

『死中に活を求める』

……さっきコイツは宣言通り、ピンチからの突破口を開いたわ。

……コイツに出来る事がアタシに出来ないなんて、これ以上癪な事は無いのよ!

「アタシのターン!ドロー!」

! これなら……!

「リバースカード発動!永続罠『ヒステリック・パーティー』!手札を1枚墓地に捨て、自分の墓地に存在する『ハーピィ・レディ』を可能な限り特殊召喚する!このカードがフィールド上から離れた時、このカードの効果で特殊召喚したモンスターを全て破壊する!墓地の、『ハーピィ・レディ』として扱われている『ハーピィ・レディ1』(攻撃力1300→1600)2体を攻撃表示で特殊召喚!『ハーピィ・レディ1』が増えた事によりフィールド上の風属性モンスターの攻撃力が更にアップ!(『ハーピィ・レディ三姉妹』攻撃力2250→2850 『ハーピィ・レディ1』攻撃力1600→2200)」

だけどさっき言った通り、これだけじゃ『ワイトキング』に届かない。

「『ヒステリック・パーティー』、それをやって来るからには、勿論それだけじゃ終わらないよね?」

……寧ろこれからアタシがする事に期待するかのように笑う馬鹿。

上等、期待に応えようじゃない!

「アタシは更に、2枚目の速攻魔法『スワローズ・ネスト』を発動!星4の『聖鳥クレイン』を生け贄に、デッキから星4の鳥獣族モンスターを特殊召喚するわ!」

「星4の鳥獣族…… ! そうか!」

流石にこのデッキの製作者。気付いたみたいね!

「アタシはデッキから星4の鳥獣族、『ハンター・アウル』(攻撃力1000)を攻撃表示で特殊召喚!」

そう、このカードこそ、このデッキの切り札よ!

「『ハンター・アウル』は自分フィールド上に他の風属性モンスターが存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象に選択する事は出来ない。そして、自分フィールド上に表側表示で存在する風属性モンスター1体につき、このカードの攻撃力は500ポイントアップする!アタシのフィールド上には、『ハンター・アウル』自身を含めて風属性モンスターは5体!よって攻撃力は2500ポイントアップ!そして、『ハーピィ・レディ1』3体の効果で、風属性モンスターの『ハンター・アウル』の攻撃力は更にアップ!(攻撃力1000→4400)」

「っ!攻撃力4400……!」

これで、一気に『ワイトキング』の攻撃力を上回った……!

「まだよ!更に魔法カード『トライアングル・X・スパーク』を発動!このターンのエンドフェイズまで、『ハーピィ・レディ三姉妹』の攻撃力はに2700なり、相手プレイヤーは罠カードを発動出来ず、相手フィールド上の罠カードの効果は無効になる!」

「……」

これで、アイツは罠を発動出来ない!あのリバースカードも心配無いわ!

「『ハンター・アウル』(攻撃力4400)で『ワイトキング』(攻撃力3000)に攻撃!『ハンティング・ラプター』!」

『ハンター・アウル』が手に持った錨のような槍を振り被り……

『カタカタ!?』

『ワイトキング』を粉々に打ち砕いた!

やったわ!アタシの勝ち……

「え……」

でも、破壊した筈の『ワイトキング』の破片がいつまで経っても消えなかった。

「……ははは、惜しいな」

と、あいつが心底残念そうな苦笑を浮かべた。

「僕のリバースカード、罠じゃないんだ」

「え……」

「速攻魔法『手札断札』、お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする」

「あ……」

あいつの手札も、アタシの手札も2枚。じゃあ、アイツの手札……

「……たはは、ごめん……」

……苦笑いしながらアイツが見せてきた2枚の手札は、『ワイト』と『ワイトキング』だった。

「……」

そう、またアタシの負けなのね……

……お互いに、手札2枚を交換する。

「墓地に『ワイト』と『ワイトキング』が1枚ずつ増えて、『ワイトキング』の攻撃力アップ(攻撃力3000→5000) 『ハンター・アウル』(攻撃力4400)に反撃!」

……粉々になった『ワイトキング』の破片が、そのまま『ハンター・アウル』に襲い掛かってきた。

「『弾○爆花散』!」

「……」 ジュンコ残ライフ0



SIDE OUT



SIDE 和希



か、勝てた……いやー、ジュンコさん、前にやった時とはダンチにつよくなったなぁ。

「……」

うわぁ、なんかジュンコさん俯いてるし。

……前回の事が蘇る。ジュンコさん、泣き出しちゃったんだよなぁ……

うぅ、こんな皆の前で泣かせちゃうとか、罪悪感満載過ぎる……

そして、ジュンコさんは顔を上げ……

「……負けたわ」

「……ありゃ?」

憮然としてはいるが、割とケロリとした表情で言ってきた。

「……何よ変な顔して」

「い、いや、何でも……」

……流石に公衆の面前で泣く云々は言わない方がいいだろうな。

「……どうせアタシがまた怒るとでも思ってんでしょ?」

……当たらずとも遠からず。

「……まぁ、皆の前でアンタを負かせられなかったのは残念だけど、前よりもアンタと善戦出来たから、今日のところは別にいいわ」

……確かに、最後の『手札断札』で2枚とも『ワイト』『ワイトキング』なんて、かなり運が良かったとしか思えないし。

「……それに……」

「それに?」

「……………………楽しかった……」

「え?」

「う、うるさい!何度も聞くな!……今回のデュエルは楽しかった、だから満足だって言ってるのよ!」

そう言って、ジュンコさんはそっぽを向いてしまった。でも、確かにその表情からは充実感が見てとれた。

「ははは、うん、僕も楽しかったよ」

「……次にアタシとやる時まで、負けるんじゃないわよ」

「善処するよ」



……といったのが数分前の話。

で、今現在……

「……で?」

「い、いや、ほら、どんなデュエリストも完全無欠な人なんて居なくてですね……」

「……で?」

「あ、あくまで僕は善処すると言ったんであって、言った通り善処はしたつもりで……」

「……で?」

「……本当に申し訳ありませんでしたぁ!」

あの後の決勝戦、僕はあっさりと万丈目君に負けてしまった。

最初はいい感じで攻めていたのだが、三度万丈目君の『おジャマ・デルタハリケーン!!』が決まり、僕のフィールドが一掃されてしまったのだ。

その後、万丈目君はおジャマ3兄弟を融合して『おジャマキング』を融合召喚、僕のモンスターゾーン3つをその効果で使用不可能にし、残る2つのモンスターゾーンも永続魔法『地盤沈下』で潰されてしまい、モンスターを召喚出来なくなってしまったのだ。

これをやられると、魔法・罠が少なく、ほとんどがモンスターカードである僕のデッキはどうしようもなくなってしまうのだ。

かくして、決勝戦にあるまじき一方的な展開で、僕は敗北してしまったのだ。

そして、先程までの満足そうなのは何処へやら、怒り心頭のジュンコさんの前で、地面に正座させられている、と言うのが現状である。

「……」

ぅぅ、怖いよぅ……ジュンコさん、今にも殺意の波動にでも目覚めそうだょ……

そして、遂に死刑宣告が……

「……まぁ、アンタの言う事にも一理あるのは認めるわ」

「え……」

「そこに酌量の余地はあるわね」

をお!?珍しく話がわかる!ありがたや!

「まぁ、その事も踏まえて……」

そして、ジュンコさんはニッコリとステキに笑い……

「判決 死刑」

メ○デン様!?

「ちょ!?待って待って待って!全然酌量されてないって!?再審を……」

「却下」

お、横暴だ……

「……遺言はそれで全部かしら?」

ひぃ!?ジュンコさんが殺意の波動に曝され過ぎて人ではない者に変貌しようとしてるぅ!?

こ、こうなったら……

「てい!」

パンッ

「きゃっ!?」

……ザ・ワールド、時は止まる……一瞬。

「そしてその隙に脱出!」

「あ!?」

猫だましをかまして逃げ出す僕であった。ふふふ、僕の逃走術は108式まであるぞ。

「アンタねぇ……!」

「ははは、リズムに乗るゼ!」

……ともかくこれで、2年目の山場、ジェネックスと『破滅の光』との戦いが終わった。

……でも来年度になったら、また新たな困難が待ち構えている。しかも今度は、今までになく、精神的にも肉体的にも厳しい戦いになるだろう。

「待ちなさーい!」

……ははは、でも今はまぁ、束の間の日常を楽しむとしますかね。



「くっ、勝った筈なのに、全く勝った気がしないのは何故だ!?」

「大丈夫だ万丈目、実際に負けた俺と比べたら」

「「……」」

「三沢ぁ!」

「万丈目ぇ!」

「……友情が深まったドン」

「……と言うか、周りの女子がドン引きしてるのが見えないんスかね?」



今日のワイトはお休みです



あとがき

どうも!絶賛かっとビング中な八王夜です。

やっと、ようやっと第二部がオワタ!(嬉

この後、数話幕間を入れていよいよ鬱展開な第三部突入です!

次の幕間ですが、僕がGXで一番健気だと思う人の話を書きたいと思います。ヒントは吹雪さん関係(オイ

それではまた次回!

PS 遊馬君、13歳なのに声渋すぎてワロタ。



[6474] 幕間 とある聖人の日の話
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/06/19 12:51
※注 レイ君はデュエルアカデミアに先行入学しています。あとデュエルはありません。



「……はぁ……」

……今日になって何度目かわからないため息をつく。

今日のデュエルアカデミアのオベリスクブルーの女子達は浮わついた雰囲気をしている。そんな中、アタシは途方に暮れていた。

「……なんでこんなの作っちゃったんだろう……」

アタシは手に持っている、ため息の原因を見下ろした。

アタシが持っている物、それはラッピングされた、と言うより、アタシがラッピングした小さな袋。

そう、今日は2月14日、バレンタインデーだ。

「……はぁ……」

またため息が出る。ため息の回数だけ幸福が減るのなら、どれだけアタシは不幸になっているのかしら。

これを渡す相手は……その……アイツ、朝倉和希だ。

も、勿論義理よ!?だ、誰があんなやつに本命なんか……!

……で、でも、アイツのおかげで強くなれたし、何度か助けられたし……義理ぐらいあげた方がいいかなって……

「……そう、これは義理、義理なんだから……」

……呪文のように呟くけど、アタシの頭からは、さっきの出来事が頭を離れなかった。



それはさっき、吹雪様にチョコをお渡しする時だった。

「吹雪様!」

「やぁ、ジュンコ君」

吹雪様は、既に何個ものチョコを両腕に抱えていた。

「あの、これ、受け取って下さい!」

そしてアタシも、吹雪様にチョコを渡したそうとしていた。

「おや、ふふふ、ありがとう」

吹雪様は喜んで受け取ってくれた。

でも……

「ふふふ、義理とはいえ、やっぱりチョコを貰えるのは嬉しいね」

「え……」

その一言で、アタシは凍りついた。

「あ、あの……お気に召しませんでしたか?」

あの手作りチョコは自信作だった。……少なくとも料理の苦手なアタシにとっては。

……どこか気に入らないところでもあったのかしたら……

「? いや、さっきも言ったけど、とてもありがたいよ?」

「で、でも、『義理とはいえ』って……」

と、吹雪様はその形のいい眉をひそめた。

「……ジュンコ君、まさか君は、彼じゃなくて僕に本命チョコを作ったのかい?」

か、彼ってまさか……

「な、なんでアタシが朝倉なんかに本命を……!」

「……ふふふ、僕は名前までは言ってないんだけど?」

「っ!」

し、しまった……!

「ふふふ、その様子だと、彼にもチョコを作っているんだろう?やっぱり君の本命チョコは、僕よりも彼の方が相応しいんじゃないかな」

「ア、アイツなんか、義理で十分……」

「ジュンコ君」

「っ!?」

吹雪様は、これ迄になく真剣な目でアタシを見つめた。

「……ジェネックスの決勝トーナメントの時だって、君は僕じゃなくて彼を応援してたじゃないか」

「そ、それは、アイツにリベンジしたかったから……」

「……それは違うね。ジュンコ君」

「え……」

「伊達に僕は『愛の伝道師』を自称している訳じゃないよ。そんな風に僕に対して取り繕っている君の姿と、何も取り繕わない、ありのままに彼と話している君の姿。どう見ても、僕よりも彼に親しみを持ってるんじゃないかな」

「……」

そ、それは……確かにアタシはアイツの事は……その、き、嫌いじゃない。

アイツは……性格はひねくれてるけど、根はどうしようもないぐらい善人だ。だから、やりたい放題しているのに、苦手意識を持ってる人は居ても、余り嫌っている人は居ない。

それに、去年の夏、アイツは、自分とアタシは相性がいいと言っていた。それはアタシも……賛同はしないけど、否定もしない。

確かにアイツは、その……今まで会った同年代の男性の中で、一番身近な存在かもしれない。

……って、何を考えてるのよアタシは!

これじゃまるで、アタシがアイツの事……

ポン……

「あ……」

と、吹雪様はアタシの肩に手を置いて、囁いた。

「いい加減、素直になった方がいいと思うよ?」

「素……直……?」

「彼は自分への女性の好意にはちょっと疎いみたいだから、このままじゃ、本当に気付いてもらえないかもしれないよ?」

「……」

「……ふふふ、それじゃあね。ああ、重ねて言うけど、チョコはありがとうね」

そう言って、吹雪様は立ち去った。



「……」

これで、アタシは吹雪様にフラれたも同然だった。なのにあの時、何故アタシは吹雪様を呼び止めて訂正しなかったんだろう……

それに、悲しい筈なのに、何故か気が少し軽くなったような気もした。

そして、この原因とも言えるアイツに対しても、憎しみが湧いてこない。……何故?

……吹雪様の指摘が図星だったから?

「っ!」

一瞬思い浮かんでしまったトンデモない考えを、頭を降って霧散させる。

「あれは……そう! 他人に指摘されると、自分にはその気がないのにその気になっちゃうってやつで……」

「あー、あるある、そういうの」

え……

「……んで、どうしたの? こんな廊下の真っ只中でブンブン頭降ったり一人言言ったりして」

……背後からの聞き慣れた声に振り向くと……

「おいっす」

「っ!?」

当の本人が、目の前に居た。

「……っ!」

「のわ!?」

反射的に手が出た。紙一重で避けられた。

「ちょ!? 何故に出会い頭!? サーチアンドデストロイ!?」

「う、うるさい!」

……神様、あなたはアタシに何か恨みでもあるの?

「……っ!」

アタシは咄嗟に、手に持っていたものを後ろ手に隠した。

……って、なんで隠すのよ!? ただ「義理よ」って言って渡せばいいだけじゃない!

そう、さっさと……

「……っ!」

なんで声が出ないのよ……!

なんで後ろに隠した手がこんなに震えるのよ……!

なんでアイツに目も合わせられないのよ……!

なんでこんなに動悸が激しくなってるのよ……!

なんで……なんで……

……アタシの頭がオーバーヒートする直前……

「やー、実は探してたんだよ? 渡す物があったからさ」

「え……」

その一言で、アタシは現実に引き戻された。

よく見ると、朝倉の手には小さなラッピングされた袋があった。

……そう、今アタシが後ろ手に隠してるのと同じような……

「はい、これ」

「え……何……これ?」

アタシは訳もわからず、差し出されたその袋を受け取った。

「何って、所謂……逆チョコ?」

「な!?」

な、な、な、な、な、な……!?

逆……チョコ!?

「な、なんで……!?」

「なんでって、今時逆チョコなんて珍しくもないでしょ? そもそも、本場のヨーロッパじゃ、男性も女性にあげてる訳だし……」

そうじゃなくて! そんな豆知識どうでもいい!

「あ、あともう1つ渡す物があるんだ」

「え……」

もう……1つ?

そう言って、朝倉は1枚のカードを渡してきた。

「『風帝ライザー』……?」

初めて見るカードだった。そして、このカード……

「どう? ジュンコさんのデッキにピッタリじゃない?」

その通り、星6の攻撃力2400に守備力1000、このカードが生け贄召喚に成功した時、フィールド上に存在するカード1枚を持ち主のデッキの一番上に戻す、そして何より、風属性で鳥獣族、アタシのハーピィデッキにはかなり相性が良さそうだった。

「……」

「とある知り合いに譲って貰ったんだけど、それが丁度今日届いてさ。どう?」

「……手」

「? 手?」

「いいから! 手を出しなさい!」

「?」

「……ほら」

アタシは、さっきから隠していた物を、その手に置いた。

「え……これって……」

「……ふんっ!」

アタシは踵を返した。

「……ありがと」

「え……」

「何度も言わせないで。……ありがと」

アタシは耐えきれず、駆け出した。

と、

「……ははは、こちらこそー!」

背後から、心底嬉しそうな返事が聞こえた。

そして、その声を聞いて、アタシの頬は『何故か』緩むのだった。



SIDE OUT



SIDE 和希



『ほほほ、和希君、結構貰ってるのニャ』

「ははは、まぁ、どれも義理でしょうけどね」

『またまた、この中で、少なくとも1つは本命確実ですニャ』

「ははは、残念、そんな事言ったって、引っ掛かりませんよ先生」

『……本人が聞いたら、血のバレンタインになりそうなのニャ……』

? 何処ぞの戦争の口火になった事件デスカ?

『ま、いいニャ。それで、誰から貰ったのですニャ?』

「えーと、今さっき貰ったジュンコさんの他、明日香さん、浜口さん、レイ君。この三人は、いつものメンバー皆にも渡してましたね」

『ですニャ』

この三人は、レッド寮の万丈目君の部屋……実質レイ君の部屋に僕達いつものメンバーを呼んで、一斉に渡したのだ。

「ま、勿論レイ君が十代君にあげたのは本命でしょうし、明日香さんも、口では義理って言ってたけど、なんとなーく、十代君へのが僕達のよりも手が込んでたような……」

『万丈目君の、嬉しさと悔しさの混じった表情がなんとも言えなかったのニャ』

「ふふふ、先生も意地が悪い」

『ほほほ、和希君程じゃないのニャ。それで、他にも貰ったのニャ?』

……ええ、ビックリする人からね。

「あとは、まさかのカミューラさん」

『ニャ!?』

いや、でもまぁ……

「……チ○ルチョコ1個投げつけられて『3万倍にして返しなさい』って言われたんですけど……」

『……それは、バレンタインと言うのですかニャ?』

「デスヨネー」

……まぁ、僕に義理を感じてくれてたと思えばいいか。チ○ルチョコ1個分だけど。

そして、実はもう1つ、驚くべき物を貰った。

それは、ジュンコさんにあげた『風帝ライザー』を譲って貰った、美寿知さんからだ。

僕は少し前、ふと、ジュンコさんのデッキに『風帝ライザー』がマッチするんじゃないかと、突拍子も無く思い付いた。

そこで、エド君から連絡先を聞き、美寿知さんに『風帝ライザー』を譲って貰えないか頼んだのだ。

もっとも、原作はおろかこの世界でも、美寿知さんの配下で『風帝ライザー』を使っている人は居なかったので、『風属性の帝カードがあったら譲ってもらえませんか』みたいな感じだったが。

そして、美寿知さんは快く承諾してくれた。なんでも、『風帝ライザー』を与える配下は元々居なく、美寿知さんがそのまま持っていたらしい。

そして、『風帝ライザー』が送られてきたのだが、それと共に1枚のカードが送られてきたのだ。

そのカードとは、なんと、あの僕を苦しめた『邪帝ガイウス』であった。

一緒に送られてきた手紙には、こう書かれていた。

『兄の件の礼と、バレンタインを兼ねて』

因みに、礼を兼ねて一応確認した所、あのゴスロリコンビの一人、闇丸さんの本来の『帝』は、この『邪帝ガイウス』では無く、『闇帝ディルグ』だったらしい。そしてあの時、僕の『ワイト』達と相性のいい『邪帝ガイウス』を特別に与えていたようだ。

……なんでも、このカードが今後僕の力になってくれる予感がしたとか。

んー、厚意はありがたいんだけど、正直、悪魔族でワイト達と何のシナジーのないこのカードを使う余地は無いんだけどなぁ……いっそ、このカード軸のデッキをもう1つ組んでみるか?

『『『……っ!?』』』

ははは、冗談だって、僕は君たち以外のデッキを作る気はないよ。

……まぁ、以前の斎王さん同様、運命を見通す力を持つ美寿知さんがそう言ってくれてるんだから、デュエルで使わないとはいえ、ありがたく貰っておくとしようか。

あ、そう言えば……

「ところで、先生は生前にどれぐらい貰ったりしてたんですか?」

今まで話していた大徳寺先生に聞いてみた。

『ほほほ、よくぞ聞いてくれたのニャ。これでも、教師陣の中では一番貰ってたのニャ』

「……いやまぁ、それは予測できますけど」

対抗馬が鮫島校長にクロノス教諭に佐藤先生だもんなぁ……あ、あと樺山先生もか。

……この中だったら、先生が一番多いだろうな。間違いなく。

『ニャ、チョコの話をしてたら、なんか食べたくなってきたのニャ』

「む、流石に義理とはいえ、あげませんよ?」

貰った人からの義理はちゃんと味あわないとね。

『ファラオ!』

「ほぁら!」

「あ、こら!」

ファラオにチョコの1つ、レイ君のチョコを引ったくられてしまった。

『よし、逃げるのニャ!』

「ほぁら!」

「待てぇーい! リアル泥棒猫!」

と言うか猫がチョコ食べたら中毒起こすから!

この後、逃げ回るファラオを散々追いかける羽目になったのだった。

……まぁ、ワイト達を駆使して捕まえた後、お仕置きとして散々モフモフしてやったのは別の話。



今日のワイト(in 女子寮)

「……それって本当なんですの?」

「うん、昨日ボクが部屋でチョコを作っている時、十代様を探してた和希先輩が訪ねてきて、ついでにチョコを作るの手伝ってくれたんだ。その時、ボクが目方を間違えて、チョコが少し余っちゃって……」

「……そのチョコで、朝倉がジュンコへの逆チョコを作ったって訳ね」

「そういう事。しかも、結構量が余っちゃってたのに、先輩は『いや、一人分でいいよ』って言ってたから……」

「ふふふ、少なくとも、義理以上本命以下……ですわね」

「ふふふ、ジュンコ、どんな顔をして帰ってくるのかしら」



あとがき

どうも、お久しぶりです。最近色々忙しくて更新が亀で申し訳無いorz

この話も、当日迄に書く予定だったのに(泣 まさかの半月遅れorz

今後も、早くて月1ぐらいの更新になってしまうと思いますが、完結まで諦める気はないので、どうか、末永くお付き合いください。

ああでも、もうファイブディーズも終わるなぁ(汗



[6474] 幕間 Reason
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:9fb8726c
Date: 2011/07/13 00:03
「十代君、あとどれぐらい」

「もう少しだ。おーい、吹雪さん早く早く」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ君達」

ジェネックスが終わった数ヵ月後、僕と十代君は吹雪さんを連れて、ある所へと急いでいた。

「困るよ、今日はこれからファンクラブの娘達に会う約束があったのに……」

「そんなのいつだって会えるだろ」

「吹雪さん、この機会を逃したら必ず後悔しますヨ」

「だ、だから一体何をしに行くんだい確かこの先は立ち入り禁止だった筈じゃ……」

「「いいから」」

そして、僕達は半ば無理矢理吹雪さんを連れて、先を急いでいた。

そして、それから更に暫く歩くと……

「ふぅ、着いたぜ」

「結構歩いたねぇ」

僕達は火山近くのある場所に着いた。

「こ、これは……」

唖然とする吹雪さんの視線の先には、アーチが欠けたような遺跡の入口があった。

原作で見てはいたが、僕も実際に見るのは初めてだ。

「吹雪さん、こいつに見覚えないか」

アーチを手で叩きながら十代君が尋ねた。

「……いや、無い……筈なんだけど、なんだろう、なにか……引っ掛かる……」

「……そっか」

吹雪さんの返答に、少し落胆する十代君。

「まぁまぁ、今回はこれだけじゃ無いんだしさ」

「……そうだな」

そして、三人で遺跡内に入ると、十代君が背負ったリュックからひょっこりとファラオが顔を出す。うん、ラブリー。

『二人共、そろそろなのニャ』

大徳寺先生が言うや否や……

カッ……

「な」

アーチの近くの地面に埋め込まれていた銅鏡のような物が緑色の光を発し、それに伴って地面の石畳の隙間からも同じような光が溢れ出た。

そして……

「おー……」

僕は思わず感嘆の声を上げた。ここから見える太陽が3つに分裂して、更に昼だというのにオーロラのような虹色の靄が出現したのだ。

そして、その幻想的な光景に見入っていると……

ゴロゴロゴロ……

雷のような閃光と轟音が響き、それと共に空にかかった靄が地面へと降り注ぎ、辺りが何も見えなくなった。

そして、靄が晴れると……

「こ、これは……」

さっきまでの遺跡は、ピラミッド型の巨大な祭壇と、『三幻魔』を封印していたのとそっくりの先の尖った塔に入れ替わっていた。

そして後ろを見ると、さっきのアーチが完全な形で復元されており、極めつけに……

「クリクリー」

「「「カタカタカタ」」」

実体を持ち、リアルにクリクリカタカタカタ言っているハネクリボーとワイト達。

……ここまで言えばわかるだろうけど、僕達が今居るのは、去年に十代君達が迷い込んだ精霊界、『墓守一族』の聖域だ。

大徳寺先生曰く、あのアーチは僕達の世界とこの世界を繋ぐゲートとなっているらしく、ある一定期間ごとに2つの世界が繋がるそうだ。

……もしかしたら、デュエリストがデュエル時に発生させるエネルギーであり、異世界へと渡るのに使われるデュエルエナジーが、デュエルアカデミアの生徒達のデュエルによって発生して、このゲートを開いているのかもしれない。

「……ここは以前、君が迷い込んだ精霊の世界なのニャ」

「な」

と、十代君のリュックからファラオが飛び出し、更にその口から大徳寺先生の魂が飛び出して具現化した。

どうやら、原作でユベルに飛ばされた異世界同様、この精霊界でも一般人に見えるように具現化出来るみたいだ。

「だ、大徳寺……先生」

「……私とのテストデュエルで、君はこの世界に迷い込んだのニャ」

と、大徳寺先生が説明していると……

「そこで何をしている」

背後から女性の声が聞こえた。

「ここは我ら墓守一族の聖域、速やかに立ち去りなさ……っ」

と、その女性、『墓守の暗殺者アサシン』の精霊のサラさんは、振り向いた僕達を見て息を飲んだ。

「あ、あなたは……」

……いや、正確には、吹雪さんを見て息を飲んだ。

しかし、吹雪さんの反応は……

「……君は……」

「え……」

……そうか、やっぱり駄目か。

「……あなたが、『墓守の暗殺者』のサラさんですか」

「は、はい……」

「……ごめんなさい、吹雪さんには、ここに来た時の記憶が無いんです」

「」

「……ごめんな、サラ」

「 あなたはこの間の……確か、十代さん」

「ああ、あんた達から貰ったこの首飾りの片割れを吹雪さんが持ってたから、この前あんたが言ってた人は吹雪さんだと思ったんだ」

十代君は、2つに割れた首飾り、片方は以前ここに来た時に墓守の長から貰った物、もう片方は以前カミューラさんに挑む際に吹雪さんから預かった物をポケットから出して言った。

この首飾りは、原作ではカミューラさんとのデュエル中に1つになり、十代君を助けたのだが、この世界ではカミューラさんは十代君ではなく僕が倒した為、2つに別れたままだ。

そして、原作通りならば、以前十代君がここを離れる際、サラさんは首飾りのもう片方を持つ人、吹雪さんに伝えて欲しいと言ったのだ。……『サラはあなたの事を忘れません』と。

この事からわかると思うが、吹雪さんが一度ここに来た時以来、彼女は吹雪さんに想いを寄せているのだ。

なので今回、サラさんに吹雪さんを会わせようと思って連れてきたのだ。

しかし、結果はこの通りだった。

「でも、吹雪さんはここの記憶を無くしちまってて、ここに連れてくれば、その時の記憶が戻ると思ったんだけどな」

「……」

うーん、ショックを受けてるっぽい。

……サラさんの健気さに対する親切心での行動だったけど、完全に裏目っちゃったみたいだ。



その後、僕達は一族のリーダーである『墓守の長』の所まで案内された。

咎められるかと思ったが、以前に十代君と吹雪さんが試練をクリアしている為、咎められずに迎えられた。

「……成る程、そんな事があったのか」

僕達は長に事の顛末を話した。

「なぁ、何でもいいから、その時の吹雪さんについて教えてくれないか吹雪さんが何か思い出すかもしれないしさ」

十代君がそう頼んだ。

「……確かに、その青年は以前ここに来て試練を受けた。その時は、邪悪な気配のする仮面を被り、何か闇の意志に取り憑かれていたようで、意識が混濁していたようだが……」

……つまり、ここに来た時は、まだ吹雪さんとダークネスの中間だったという事かそして、試練を終えて、ダークネスに覚醒した……

「……どうだ吹雪さん、何か思い出せそうにないか」

だが、十代君の問いに、吹雪さんは首を横に振る。

「……所々、引っ掛かる部分はあるんだ。でも……」

吹雪さんは、申し訳なさそうにサラさんに目を向けた。

「……すまない」

「……いいんです。あなたがこうして元気だと知る事が出来るだけでも……」

サラさんはそう言って笑ったが、どう見ても無理してる笑みだった。

……奥ゆかしいというか、ホント健気だよなぁ。どっかの誰かさんと違って。



「っ」

「まぁ、また朝倉さんが噂でもしてましたか」

「ちょっまだ何も言ってないでしょ」

「ふふふ、もう反応でわかりますわ」

「ももえー」

「きゃー♪」



むー、でも諦めきれない。僕達が吹雪さんを連れて来たせいで彼女を悲しませてしまった責任もあるし、何よりも、自分を想ってくれる女性の事を忘れてしまった吹雪さんなんて、そんなの吹雪さんらしくない。

頭を捻っていると……

「……なぁ」

十代君が長に話し掛けた。

「吹雪さんも、オレとあんたがやった試練ってやつをやったんだよな」

「 その通りだが」

「だったら、もう一度、吹雪さんがあの試練をやったら、何か思い出すかもしれないんじゃないか」

……

…………お

おおおおおおお

「……十代君」

「ん」

「君、天才かもしんない」

「へへへ、だろ」

そうか、何でこんな単純な事を考えつかなかったんだろ。以前に吹雪さんも試練を受けているなら、確かにそれで何か思い出すかも……

「で、でも……」

と、サラさんが難色を示した。

「あの試練はとても危険な物、一歩間違えれば取り返しのつかない事に……」

……そうか、この世界のデュエルは、ダメージが本物となる闇のデュエルだ。

原作のユベルの世界とは違って、この世界ではデュエルの負け死では無いが、それでも相当のダメージは受ける筈だ。

「……いや、やろう」

「 吹雪さん……」

「……闇のデュエルの厳しさは承知しているよ。でも、何でかな、君の事を忘れてしまっている方が、何だか辛いんだ」

「吹雪さん……」

カ、カッコいいぞブッキー

「サラ」

「長……」

「彼の目には揺るぎない意志が宿っている。止めても無駄だ」

「……」

と、長は立ち上がった。

「青年よ、その覚悟、本物と見た。これより、試練を始める」



僕達は、長に案内されて、ピラミッド状のデュエル場へと案内された。

……サラさんの姿は見えない。恐らく、長のデッキにモンスター『墓守の暗殺者』として入っているのだろう。

……吹雪さん、なんとかこれで思い出して欲しいな……



SIDE OUT



SIDE 吹雪



「「デュエル」」

「わしの先攻ドローモンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド」

「僕のターンドロー」

……正直、闇のデュエルは怖い。記憶には無くても、まるで本能にその恐怖が記されているみたいだ。

でも……

『……いいんです。あなたがこうして元気だと知る事が出来るだけでも、私は嬉しいですから……』

……参ったね。女性から悲しそうな顔でそんな事を言われちゃったら、何としてでも思い出すしかないじゃないか

「僕は『竜の尖兵』攻撃力1700を攻撃表示で召喚そして『竜の尖兵』の効果を発動手札からドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る事で、このカードの攻撃力は300ポイントアップする手札からドラゴン族モンスター1体を墓地に送り、『竜の尖兵』の攻撃力を300ポイントアップ攻撃力1700→2000『竜の尖兵』攻撃力2000で裏側守備表示モンスターを攻撃」

『竜の尖兵』が手に持つ槍で、相手モンスターを貫こうとした。

だが……

「甘いわしの守備表示モンスターは『墓守の偵察者』守備力2000お主のモンスターの攻撃力と同じ守備力よ」

「くっ……」

『竜の尖兵』の槍は、見事にかわされてしまった。

「更に、『墓守の偵察者』のリバース効果を発動自分のデッキから攻撃力1500以下の『墓守の』と名のついたモンスター1体を特殊召喚する『墓守の口寄せ術』」

『墓守の偵察者』が呪文を唱えると、地面に魔方陣が浮かび、そこから新たなモンスターが出現した。

「わしはデッキから、『墓守の呪術師』守備力800を守備表示でデッキから特殊召喚そして、『墓守の呪術師』の効果を発動このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与える『衰弱の呪文』」

『瘟』

「ぐあぁぁぁぁ」 吹雪残ライフ3500

あ、頭が……割れそうだ……だ、だけど、これぐらい……

「……僕は、リバースカードを1枚セットしてターンエンド」

「わしのターンドロー速攻魔法『手札断殺』を発動互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、その後、デッキからカードを2枚ドローする」

……互いに、カードを2枚ずつ交換する。

「更にわしは手札の『墓守の司令官』の効果を発動このカードを手札から墓地に捨てる事により、デッキからフィールド魔法『王家の眠る谷ネクロバレー』1枚を手札に加えるそして、わしはこのフィールド魔法を発動」

周りの景色が、さっきまでのデュエル場から、異様な雰囲気を放つ渓谷へと変化した。

「『王家の眠る谷ネクロバレー』がフィールド上に存在する限り、お互いのプレイヤーは墓地のカードに効果が及ぶ魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にし、墓地のカードをゲームから除外する事も出来ないそして、このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の『墓守の』という名のついたモンスターカードの攻撃力・守備力は500ポイントアップする」

くっ、これでは折角『手札断殺』で墓地に送った『真紅眼の飛竜レッドアイズ・ワイバーン』の効果が使えない……

『真紅眼の飛竜』には、通常召喚を行っていないターンのエンドフェイズ時に、自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、自分の墓地に存在する『真紅眼の黒竜レッドアイズ・ブラックドラゴン1体を特殊召喚出来る能力を持っている。

だけど、『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で、墓地のカードをゲームから除外する事が出来ない。つまり、あのフィールド魔法がある限り、この効果は使えない……

「わしは更に、魔法カード『墓守の石板』を発動自分の墓地に存在する『墓守の』と名のついたモンスター2体を選択して手札に加える」

「な『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で、墓地への効果は無効の筈……」

「生憎だが、『墓守の石板』には『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果では無効化されない効果を持っているのだ」

くっ、こちらの墓地を封じながらも、自分の墓地は自由に操るとは、流石は墓守一族と言うべきか……

「わしは『墓守の石板』の効果で、墓地の、今さっき効果で捨てた『墓守の司令官』と、『手札断殺』で墓地に送った『墓守の番兵』を手札に加えるそして、『墓守の司令官』攻撃力1600を攻撃表示で召喚『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で、攻撃力と守備力が500ポイントアップ攻撃力1600→2100」

っ 『竜の尖兵』攻撃力2000の攻撃力を越えて来た……

「更に、わしのフィールド上の『墓守の偵察者』攻撃力1200と『墓守の呪術師』攻撃力800を攻撃表示に表示変更この2体も、『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で攻撃力と守備力が500ポイントアップ『墓守の偵察者』攻撃力1200→1700 『墓守の呪術師』攻撃力800→1300」

……っ 一気に来る気か……

「行くぞ『墓守の司令官』攻撃力2100で『竜の尖兵』攻撃力2000に攻撃『死兵への号令』」

『墓守の司令官』が呪文を唱えると、地面から人魂が現れ、『竜の尖兵』に襲い掛かってきた。

「させない罠カード『バーストブレス』を発動自分フィールド上のドラゴン族モンスター1体を生け贄に捧げ、そのモンスターの攻撃力以下の守備力を持つ表側表示モンスターを全て破壊する僕は『竜の尖兵』攻撃力2000を生け贄に、その攻撃力、2000以下の守備力のモンスターを全ての表側表示モンスターを破壊する」

「ぬぅ……」

攻撃が当たる直前、『竜の尖兵』が、口から大量の炎を吐き、我が身共々、『墓守の司令官』守備力2000と『墓守の呪術師』守備力1300を焼き払った。

「だが、『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で、『墓守の偵察者』の守備力は2500にアップしているこのモンスターは破壊されん」

「くっ……」

再び『墓守の偵察者』が呪文を唱えると、足元に魔法陣が現れ、炎を遮った。

「これでお前のフィールド上にカードは存在しない『墓守の偵察者』攻撃力1700でダイレクトアタック」

「ぐあぁぁぁ」 吹雪残ライフ 1800

『墓守の偵察者』が放った波動を受けた瞬間、先程とは比べ物にならない苦痛が僕を襲った。

「更にわしは、リバースカードを1枚セットしてターンエンド」



SIDE OUT



SIDE 和希



「うわぁ、吹雪さんキツそうだなぁ……」

『墓守』デッキは、シンクロが無いこの時代においては、恐らくシリーズ物のデッキの中ではかなり上位の強さを持っている。特に、『王家の眠る谷ネクロバレー』による墓地封じが厄介極まりない。僕のような墓地からの特殊召喚に重点を置いているデッキ使いなんかには悪夢のようなデッキだ。

いやホント、前に十代君達がここに来た際に一緒に来なくて良かった。もし十代君の代わりに僕が試練を受けるような事になったら勝てる気がしない。

……あ、ワイト達もカタカタじゃなくてガタガタ言ってるし、恐怖で。

……って、なんで泥だらけなの……えさっき遺骨と間違えて埋められかけたあ、そう。

……にしても、吹雪さん、大丈夫かな……

……あと、どうでもいいけど、長、「落ちろ、カトンボ」とか言ってくれないかな。若しくは「カカロットォ」、「ノロノロビーム」でも可。



SIDE OUT



SIDE 吹雪



「……僕のターンドロー」

……『王家の眠る谷ネクロバレー』は墓地への効果を無効にするカード、なら……

「スタンバイフェイズ時に、『竜の尖兵』の効果で墓地に送った『ミンゲイドラゴン』の効果を発動」

「なんと」

「『王家の眠る谷ネクロバレー』は『墓地への効果』を無効化するカード、『ミンゲイドラゴン』の『墓地からの効果』は無効化されない自分のスタンバイフェイズ時に『ミンゲイドラゴン』が墓地に存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事が出来るこの効果は自分の墓地にドラゴン族以外のモンスターが存在する場合には発動出来ない。でも、今僕の墓地に存在するモンスターは全てドラゴン族よって、この効果を発動可能『ミンゲイドラゴン』攻撃力400を攻撃表示で特殊召喚」

『クエェェェェ』

「この効果で特殊召喚されたこの『ミンゲイドラゴン』は、フィールド上から離れた場合、ゲームから除外されるそして、『ミンゲイドラゴン』はドラゴン族モンスターを生け贄召喚する際、2体分の生け贄として扱う事が出来る『ミンゲイドラゴン』を生け贄に、『真紅眼の黒竜』攻撃力2400を攻撃表示で召喚」

『ギャオォォォォ』

「おお、黒竜。その勇姿、久々にお目にかかるな」

「『真紅眼の黒竜』攻撃力2400で『墓守の偵察者』攻撃力1700に攻撃『ダーク・メガ・フレア』」

「ぐおぉぉぉ」 墓守の長残ライフ3300

『真紅眼の黒竜』の放った黒炎が『墓守の偵察者』を粉砕した。

「くっ……」

と、ダメージを受けた長がふらついた。

……そうか、これは闇のデュエル、僕同様に彼も実際にダメージを……

「だ、大丈夫ですか」

「ふ、大事ない。お主ら人間よりは丈夫なのでな。さぁ、試練を続けるぞ」

「……ありがとうございます。ターンエンド」

「わしのターンドロー……ほう、これは面白い。以前にお主が受けた時の再現となりそうだ」

「え……」

「わしは罠カード『降霊の儀式』を発動指定した自分の墓地の『墓守の』という名のついたモンスターカード1枚を特殊召喚するこのカードも、『墓守の石板』同様に『王家の眠る谷ネクロバレー』によっては無効化されないわしは墓地から、『墓守の司令官』攻撃力1600を攻撃表示で特殊召喚『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で攻撃力アップ攻撃力2100」

だが、その攻撃力では『真紅眼の黒竜』攻撃力2400には敵わない。何を狙っているんだ……

「わしは更に、『墓守の暗殺者アサシン』攻撃力1500を攻撃表示で召喚」

『……』

「な」

召喚されたモンスターは、フードと覆面で顔を隠しているものの、紛れもなく彼女、サラだった。

「『墓守の暗殺者』も、『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で攻撃力アップ攻撃力1500→2000『墓守の暗殺者』攻撃力2000で『真紅眼の黒竜』攻撃力2400に攻撃」

「な」

そんな、彼女で自爆特攻を仕掛けてくるなんて……

「この瞬間、『墓守の暗殺者』の効果を発動」

「な」

彼女の……効果

「『王家の眠る谷ネクロバレー』がフィールド上に存在する時、このカードの攻撃宣言時、相手表側表示モンスターの表示形式を変更する事が出来る『真紅眼の黒竜』守備力2000を守備表示に表示変更」

『はあぁぁぁ……』

サラの体から気のような物が発せられ、その力で『真紅眼の黒竜』が守備表示に表示変更させられた。

「バトルを再開『墓守の暗殺者』攻撃力2000の攻撃力と『真紅眼の黒竜』守備力2000の守備力は同じよって、どちらのモンスターも破壊されん『暗殺者の剣アサシンブレード』」

『はぁっ』

『ギャオォォォォ』

サラが逆手に持った曲剣を薙ぎ、『真紅眼の黒竜』も鋭い爪を振るってそれに応戦し……

「 これは……」

双方の攻撃が激突し、双方ともが弾かれた。

「……」

今の光景……

「覚えがあるようだな」

「え……」

「以前、お主とデュエルした時も、今のようにサラが黒竜と相打った場面があったのだ」

「……」

「いくぞ『墓守の司令官』攻撃力2100で『真紅眼の黒竜』守備力2000に攻撃『死兵への号令』」

「くっ」

さっきと同じように『墓守の司令官』が人魂を飛ばし、『真紅眼の黒竜』を粉砕した。

「ターンエンド」

……そう、以前にも、こんな風に『真紅眼の黒竜』を表示変更させられて破壊された覚えがある。

……どうやら、段々と思い出せてきているみたいだ。

「僕のターンドロー」

くっ、ここは凌ぐしかない……

「モンスターを1体裏側守備表示でセットしてターンエンド」

「わしのターンドローわしは『墓守の司令官』を生け贄に、わし自身、『墓守の長』攻撃力1900を攻撃表示で召喚」

「な」

今までデュエルをしていた長の姿が消え、フィールド上に、新たにモンスターとしての彼が現れた。

「『墓守の長』も、『王家の谷ネクロバレー』の効果で攻撃力と守備力が500ポイントアップ攻撃力2400そして『墓守の長』の効果を発動このカードがフィールド上に存在する限り、自分の墓地は『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果を受けないそして、このカードが生け贄召喚に成功した場合、自分の墓地に存在する『墓守の』という名のついたモンスターカード1枚をフィールド上に特殊召喚する事が出来るわしは墓地から、『手札断殺』で墓地に送った『墓守の長槍兵』攻撃力1500を攻撃表示で特殊召喚」

くっ、拙い、あのモンスターは確か……

「『墓守の長槍兵』も、『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で攻撃力と守備力が500ポイントアップ攻撃力1500→2000『墓守の長槍兵』攻撃力2000で裏側守備表示モンスターに攻撃『長槍速撃突』」

『墓守の長槍兵』が放った槍の一撃が僕の守備表示モンスター、『仮面竜マスクド・ドラゴン』守備力1100を貫き……

「ぐっ……」 吹雪残ライフ900

その余波が僕に襲い掛かってきた。

「『墓守の長槍兵』が守備表示モンスターを攻撃した時、このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を越えていれば、その数値だけ相手ライフポイントに戦闘ダメージを与える」

「……ならば僕も、『仮面竜』の効果を発動このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下のドラゴン族モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する事が出来るデッキから、2体目の『仮面竜』守備力1100を守備表示で特殊召喚」

「まだまだ我がモンスターは残っているぞ『墓守の暗殺者』攻撃力2000で2体目の『仮面竜』守備力1100に攻撃」

『……っ』

……だが、サラは攻撃宣言がされた後も、『仮面竜』に攻撃するのを躊躇っているようだった。

……もしかして、闇のデュエルでダメージを受けている僕を気遣って

「……サラ、攻撃するんだ」

『』

「あともう少しで思い出せそうなんだ。……君の事を思い出す為にも、頼む」

『……』

僕の言葉に、サラの目から躊躇いが消えた。

「ふ、味な真似を。『墓守の暗殺者』の効果を発動『仮面竜』攻撃力1400を攻撃表示に表示変更」

『はあぁぁぁ』

再びサラの力で、僕のモンスターの表示形式が変更させられた。

「バトルを再開『墓守の暗殺者』攻撃力2000で『仮面竜』攻撃力1400に攻撃『暗殺者の剣』」

『はぁっ』

サラが、『仮面竜』を真っ二つに切り裂いた。

「……ありがとう、サラ。『仮面竜』の効果を発動デッキから、3体目の『仮面竜』守備力1100を守備表示で特殊召喚」 吹雪残ライフ300

「ふ、なかなか骨のある。ならば青年よ。わしもお主に敬意を払って、全力で攻撃させて貰う『墓守の長』攻撃力2400で3体目の『仮面竜』守備力1100に攻撃受けよ『王家の怒り』」

長が手から激しい炎を放ち、『仮面竜』を焼き払った。

「くっ……『仮面竜』の効果を発動デッキから『軍隊竜アーミー・ドラゴン』守備力800を守備表示で特殊召喚」

「ターンエンド」

し、凌いだ……

……でも、このデュエルも、もう終わりに近い。

……あと少しで、思い出せそうな気がするのに……何かが足りない気がする。

……あの時にあって、今僕に無い物が何かあるのか

……

そうか



SIDE OUT



SIDE 和希



「うーん、ここまでかな……」

『軍隊竜』は戦闘で破壊され墓地に送られた場合、デッキから他の『軍隊竜』1体をフィールド上に特殊召喚する効果を持っているけど、貫通能力のある『墓守の長槍兵』や、表示形式を変更出来る『墓守の暗殺者』が居る限り、残りライフが僅かな吹雪さんにはもう勝ち目は殆んどない。

……これは闇のデュエル、ライフが0になってしまうのは危険だ。吹雪さんサレンダーさせるのが賢明か……

まぁ、今回もかなり手応えあったみたいだし、今年が駄目でも、また周期ごとにゲートは開く。気長にやればいずれ……

「「「 カタカタカタ」」」

「 クリクリー」

「ん」

「どうしたんだ相棒」

と、ワイト達とハネクリボーが騒ぎ出した。

「……何か嫌な予感がするのニャ」

大徳寺先生も、不安そうな声を上げた。

「十代」

「ネオスお前までどうしたんだよ」

と、十代君のデッキからネオスも実体化してきた。

「気を付けろ邪悪な闇の力を感じる」

「闇の力だって」

と、デュエルをしていた吹雪さんが瞑想をするように眼を閉じた。

「な」

「吹雪さん」

その吹雪さんの足元から、黒いオーラが吹き上がった。

「これは闇の力」

『吹雪さん』

長やサラさんも、驚きの声を上げる。

そして吹雪さんの服、オベリスクブルーの制服が、黒を基調とした服へと変化した。

「 十代君あれって……」

「ダークネスの服……」

そう、去年の学園祭の演劇の時も着ていたあの時は偽物だったけどダークネスの服だ。

吹雪さん、まさかダークネスの力を



SIDE OUT



SIDE 吹雪



『…………』

「くっ……」

頭の中で、地の底から響くような叫び声が響いている。……ダークネスの意志か……気を抜くと乗っ取られてしまいそうだ……

『……いいんです。あなたがこうして元気だと知る事が出来るだけでも、私は嬉しいですから……』

…… 気をしっかり持つんだ彼女にまたあんな顔させるつもりか

「僕の……ターンドロー」

そうか、このカード……

「僕は魔法カード『死者蘇生』を発動自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択し、そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する」

「馬鹿な『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果で、墓地への効果は封じられている筈……」

「そう、僕の墓地は封じられているでも、あなたの墓地は違う」

「な」

「あなたの墓地は、あなた自身、『墓守の長』の効果で『王家の眠る谷ネクロバレー』の効果を受けないよって、あなたの墓地のモンスターならば、蘇生させる事が出来る」

「なんと」

「僕はあなたの墓地から、『墓守の呪術師』攻撃力800を攻撃表示で特殊召喚そして『墓守の呪術師』の効果を発動このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、相手プレイヤーに500ポイントダメージを与える」

「くっまさか、このわしが墓荒らしされるとは」 墓守の長残ライフ2800

「そして、僕は『軍隊竜』と『墓守の呪術師』を生け贄に、2体目の『真紅眼の黒竜』攻撃力2400を攻撃表示で召喚」

『ギャオォォォォ』

「……だが、『真紅眼の黒竜』攻撃力2400は『墓守の長』攻撃力2400と同じ攻撃力この布陣を突破出来んぞ」

「勿論、これだけじゃ終わらないさ」

「何」

「僕は更に、『真紅眼の黒竜』を生け贄に、『真紅眼の闇竜レッドアイズ・ダークネスドラゴン』攻撃力2400を攻撃表示で特殊召喚」

「 そのカードは……」

『真紅眼の黒竜』に、亀裂が走った地面から吹き上がった炎に包まれ……

『ギャオォォォォォォォ』

『真紅眼の闇竜』へと変貌した。

「『真紅眼の闇竜』は通常召喚出来ず、自分フィールド上に存在する『真紅眼の黒竜』1体を生け贄に捧げた場合のみ特殊召喚する事が出来るそして、このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体につき300ポイントアップする僕の墓地にはドラゴン族モンスターは8体『仮面竜』×3 『真紅眼の黒竜』×2 『竜の尖兵』×1 『真紅眼の飛竜』×1 『軍隊竜』×1よって、『真紅眼の闇竜』の攻撃力は、300×8で2400ポイントアップ攻撃力2400→4800」

「こ、攻撃力4800だと」

「『真紅眼の闇竜』攻撃力4800で『墓守の長槍兵』攻撃力2000に攻撃『ダークネス・ギガ・フレイム』」

「ぐおぉぉぉぉぉぉ」 墓守の長残ライフ0

『真紅眼の闇竜』が放った巨大な黒炎が『墓守の長槍兵』を粉々に粉砕した。

か、勝った……

『…………』

「ぐっ」

し、しまった



[6474] 幕間 思わぬ対戦と新たなる力
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:b77ad0e6
Date: 2011/06/19 16:13
デュエルアカデミアも、今年度最後の長期休暇に入った。各々、帰省したり、アカデミアに残ったりと様々に過ごしている。 

「はーっはっはっはっ!冷却完了!くらえ!『天地乖離す開闢の星(エ○マ・エリシュ)』!」

僕の使うキャラが古○式殲滅銃槍を構え、炎戈竜目掛けてぶっ放す。

……黒轟竜装備一式な剣山君のキャラごと。

「ちょっとぉ!?」

剣山君のキャラは吹っ飛ばされ……

「だあぁぁぁ!?崖から落ちたドン!?」

別のエリアへ強制送還された。

「だから先輩!何でいっつも俺ごとぶっ放すザウルス!?」

「はっはっはっは……」

『グオォォォ……』

「あ、倒した。よーし、剥ぎ取れー」

「だあぁぁぁ!?絶対間に合わないドン!?」

……そんな鬼畜プレイを堪能している時だった。

「ただいまー」

と、出掛けていた十代君と翔君が帰ってきた。

「……はぁ……」

「? どったの?十代君」

と、何故か珍しく、どんよりと沈んでいる十代君だった。

「……校長先生から呼び出しくらった。……はぁ、休み中だってのに、補習かなぁ……」

「はは、それは御愁傷様」

「和希君もっスよ」

「? 僕も?」

はて、呼び出されるような心当たりは……

「……あんまり無いんだけどなぁ」

「あんまりって事は、少しはあるんスか?」

「強いて言うなら、この間の現国の宿題とか?」

「自作で俳句書くやつ?何て書いたの?」

「『俺様が 殴った物は 皆燃える』」

「グレート・ハ○カーっスか君は!?」

「いやー、『美味しすぎる イベントを 拾って食べたら 毒フラグ』と迷ったんだけどネ」

「神○み!?って言うか、そもそもそれ俳句じゃ無いし!」

「まぁ、裏にはちゃんとした俳句書いたんだけどね」

「……普通、逆に書かねぇか?」

「普通、逆にも書かないっスから!」

十代君のツッコミに更にツッコむという器用な事をする翔君だった。

「ははは、まぁ、僕が一緒なら補習はないって。成績だけは無駄にいいんだから」

「……それもそうか」

僕の励ましに、十代君も気を取り直した。

「よし!じゃあ、さっさと説教くらって、その後デュエルするか!」

「ははは、説教は確定事項かい?」

「そりゃあ、お前も一緒なんだしな」

「はは、納得」

十代君の返しに笑い合いながら、僕と十代君は部屋を後にした。

「相変わらず能天気っスね。……と言うか剣山君、なんで目の幅涙流してるんスか?」

「うぅ……結局、1回も剥ぎ取れなかったドン……」



……というのが数時間前の事だった。

そして今、僕達は物凄く周りから注目を浴びている。

……いや、僕なんか、いつも馬鹿やってるんだから、そんなのしょっちゅうなのだが、今回は色々と違う要素が混じっている。

まず、僕は特に何もしていない事。

次に、場所がデュエルアカデミアじゃない事。

次に、集まる視線も、アカデミア生徒の物じゃなくて、一般人の物である事。

そして最後に、厳密には、注目を集めているのが僕や十代君ではなく、一緒に居る第三の人……

「ムグムグ……オゥ、ワンダフォー!流石は海馬ボーイが自らプロデュースしたという『カイバーガー』デース。他の追随を許さない、迫力の味デース」

……バーガーチェーン点にてジャンクフードを頬張るペガサスさんという、シュール過ぎる光景である事だった。

「だよな会長さん!いやー、TVのCM見て、ずっと食べたかったんだよこれ!」

かく言う十代君は、周りからの視線を全く気にせず、既に5つ目のバーガーに突入。流石は腸で考えるデュエリスト。君の胃袋は宇宙か?

「はは、いやー、定番の童実野バーガーもなかなかイケますヨ」

そして、さっきまでは流石に気が気でなかった僕も、今では慣れてしまって、バーガーをパクついていた。……人それを諦観という。

「うぅ……皆から見られてるんだなぁ……」

唯一、隼人君だけは、居心地悪そうに、大きな体を縮こませているのだった。……大丈夫隼人君、多分君の反応が普通だ。



数時間前、校長室に呼ばれた僕達を待っていたのは、鮫島校長だけではなく、ペガサスさんと隼人君も一緒だった。

そして、驚く僕達に挨拶もそこそこに、

「ではミスター鮫島、二人を借りていきマース」

と、半ば強引に連れていかれたのだ。

そして、ヘリコプターで童実野町まで飛び、

「お腹が空きましたネ。ランチにしましょう」

とペガサスさんが勧めるまま、近くにあったバーガーチェーン店、あの杏子さんもアルバイトしていたという『童実野バーガー』へと入ったのだった。

「いらっしゃいま……!?」

ペガサスさんの事を知っているのか、驚いて固まる店員のお姉さんに対して、ペガサスさんはにこやかに言ったのだった。

「まずはスマイルを1つ、お願いしマース」



そんなこんなで、奇妙な昼食は続き、約一名を除いてそれを全く気にせず、バーガーに舌鼓を打っていた。

途中、店長らしきおじさんがペガサスさんに挨拶しに来ていたが、

「今の私は一人の客デース。そんなに気を使って頂かなくて結構デース」

と、軽く返していた。

そして、食事が終わる頃……

「あの……」

一人の小学生位の少年が、おずおずと尋ねて来た。

「……インダストリアル・イリュージョン社の、ペガサス・J・クロフォードさん……ですか?」

「オゥ、その通りデース。よくわかりましたネ」

ビックリしたようにおどけるペガサスさん。……そりゃ、デュエルモンスターズに関わっていたら、その生みの親であるこの人を知らない訳ないよな。

「あああ、あの……握手、して貰っていいですか!?」

本物だとわかって興奮したのか、顔を真っ赤にしながら少年は懇願してきた。

「オフコース、勿論デース」

ペガサスさんは微笑みながら、彼の手を握った。

それを切っ掛けに、ペガサスさんの元に、子供から僕達と同い年位の人までが、物凄い勢いで集まりだした。中には、近くの文房具屋ででも買ったのか、色紙を持っている人も居た。

そして、ある女の子が、

「あ、あの、私のデッキを見て貰えませんか?」

と頼んだのを皮切りに、デッキ診断をお願いする人が続出した。

すると、ペガサスさんは、

「オーケー、わかりました。少々待って下サーイ」

と、携帯電話を取り出して、一言二言話した。

それから1分もしない内に、何人もの黒服サングラスのSPさん達が、何個ものトランクケースを運んできた。

「今から、私が皆さんのデッキのアドバイスをしてあげマース。そして、皆さんのデッキにピッタリなカードも、それぞれプレゼントしてあげマース」

ペガサスさんからの思いがけないサービスに、歓声が上がった。

「ただし、条件が1つだけ有りマース」

と、ペガサスさんは指を立て、悪戯っぽく続ける。

「アドバイスを受ける人は、ここのバーガーを1つ買っていって貰いマース。カイバーガーがお勧めデース」

店に対しても、気配りを怠らないペガサスさんだった。

そんなこんなで、急遽始まった、ペガサスさんの出張デッキ診断会。

流石はデュエルモンスターズの生みの親。その指摘は的確な物であり、見ている僕達も、気付かされる物がしばしばあった。

「会長さん、子供が好きなんだな」

「そうだね」

お礼を言われて、嬉しそうに笑うペガサスさんを見て、僕達はそう思う。

まぁ、子供が好きじゃなかったら、デュエルモンスターズなんて作れなかったんだろうけど。

「でもこれじゃ、終わるまで時間がかかりそうなんだなぁ」

隼人君の言う通り、今や長い行列が、店の外まで並ぶ始末だった。

さて、この行列が途絶えるまで、どうしたものかと困ったその時だった。

「十代!十代じゃないか!」

唐突に十代君が声をかけられた。

声の方を見ると、僕達と同年代の、帽子を被ったちょい大柄な男と、同じく同年代の、炎のような赤髪にサングラスの男が居た。

「岩丸!それに炎丸も!久しぶりだな!」

そう、嘗ての美寿知さんの配下で、『地帝グランマーグ』と『炎帝テスタロス』を与えられていた岩丸君と炎丸君だった。

「誰なんだなぁ?」

「元敵だった人達」

「そ、その紹介は無いだろ……」

隼人君に超簡潔に紹介する僕に、炎丸君が苦笑しながらツッコんだ。

「あのペガサス・J・クロフォードが居るっていうから来てみたら、お前も一緒に居て驚いたぜ」

岩丸君が笑いながら言う。

「本当だぜ、つくづくお前には驚かせられるよな十代。それとえーと……」

ああ、僕の事と隼人君は知らないか。

「俺は前田隼人、宜しくなんだなぁ」

「僕は……」

「朝倉和希、だろ?」

……あり?何で知ってるんだ?

「美寿知様が警戒してたんだぜ?知ってるに決まってるだろ?」

あー、納得。じゃあ、さっき詰まったのは隼人君に対してか。

「知ってるとは思うが、俺は岩丸」

「炎丸だ。宜しく」

「お前達、まだ美寿知の所に居るのか?」

自己紹介が終わった所で、十代君が切り出した。

「いや、美寿知様にはもう俺達みたいな配下は不要だからな」

「約二名を除いてな」

岩丸君の言葉に、炎丸君がおどけて付け足す。

……あー、なんか予想つくな。

「……闇丸さんと光丸さん?」

「ビンゴ、あのゴスロリコンビは美寿知様大好きだからな。未だにベッタリだ」

「因みに、この間偶然会ったんだが、二人共、特に闇丸の方は相当和希の事を恨んでたぞ?」

「ははは……」

岩丸君の言葉に、乾いた笑いが出る。

まぁ、僕は二人を倒した挙げ句、元は闇丸さんが使っていた『邪帝ガイウス』を貰っちゃったからなぁ、そりゃ恨まれるか。

「ま、そんなこんなで、お役御免の俺達は普通の生活に戻っているんだ」

「今では、お前へのリベンジ目指して、腕を磨いているところだ。そうだ、折角会ったんだし、デュエルでもしないか?」

と、岩丸君が提案して来た。

「お、いいなそれ。あの時は炎丸とはデュエル出来なかったしな」

「まぁな」

十代君の言葉に、炎丸君が苦笑する。

「そっか、デュエルする前に、美寿知さんに封印されちゃったんだっけ」

「だからそれを言うなっつーに!」

僕の指摘に、炎丸君がまたも苦笑したままツッコんだ。

「どうせなら、2対2だしタッグデュエルにしようぜ!」

「お、いいのか?」

「俺達のコンビネーションは半端じゃないぜ?」

十代君の提案に二人が不敵に笑う。

「コンビネーションならこっちも負けないぜ!な、和希」

「おうよ!」

「十代と和希のタッグか。迷宮兄弟の時以来なんだなぁ」

そう、僕達にも彼の迷宮兄弟を破った実績がある。あの時以来ではあるけど、自信はそれなりにある。

久しぶりの十代君とのタッグ、楽しみだ。



そして、僕達は店を出た。

僕達の話を聞いていたのか、ペガサスさんにデッキ診断をして貰った人を中心に、ギャラリーが出来ていた。……なんか最近、ギャラリーが多い場面でのデュエルが多い気がする。

「ルールはどうする?」

「今度、タッグデュエルの公式ルールになる、タッグフォースルールでどうだ?」

そう、岩丸君の言う通り、この世界では、今度新学期が始まる頃から、元の世界のPSPソフトだったタッグフォースでのタッグデュエルのルールが公式になると、この間海馬コーポレーションから発表があったのだ。

「パートナーとライフ、フィールド、墓地を共有するんだな。わかったぜ」

「いくぞ炎丸!」

「おう!」

「和希!楽しんでいこうぜ!」

「勿論!」

「「「「デュエル!!」」」」

「俺のターン!ドロー!」

先攻は炎丸君、次いで十代君、岩丸君に僕という順番だ。

「モンスターを1体、裏側守備表示でセットしてターンエンド!」

「オレのターン!ドロー!オレは『E・HERO バブルマン』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!効果を発動!このカードが召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時に自分フィールド上に他のカードが存在しない場合、デッキからカードを2枚ドローする事が出来る!」

……相変わらず強いな。原作版『バブルマン』。OCGだと手札も0じゃないと、この効果発動出来ないからなぁ。

「更にオレは、永続魔法『魂の共有-コモンソウル』を発動!フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、自分の手札の『N(ネオススペーシアン)』と名のついたモンスター1体を、選択したモンスターのコントローラーのフィールド上へ特殊召喚する!選択したモンスターの攻撃力は、この効果で特殊召喚した『N』と名のついたモンスターの攻撃力分アップする!このカードがフィールド上から離れた時、このカードの効果で特殊召喚した『N』と名のついたモンスター1体を手札に戻す!オレは『E・HERO バブルマン』を選択!そして手札から、『N・アクア・ドルフィン』(守備力800)を守備表示で特殊召喚!」

『ハァッ!』

おー、出た。キモイル……じゃなくて、ドルフィーナ星人。

「『魂の共有-コモンソウル』の効果で、『バブルマン』の攻撃力は『アクア・ドルフィン』の攻撃力分アップ!(攻撃力800→1400)そして、『アクア・ドルフィン』の効果を発動!手札を1枚捨て、相手の手札を確認してモンスターカードを選択、選択したモンスターの攻撃力以上のモンスターが自分フィールド上に存在する場合、選択したモンスターカードを破壊して相手ライフに500ポイントダメージを与える!選択したモンスターの攻撃力以上のモンスターが自分フィールド上に存在しない場合、自分は500ポイントダメージを受ける!『エコーロケーション』!」

『アクア・ドルフィン』が口から超音波を炎丸君の手札に放つと、その手札が透けた。

……今の僕達のフィールド上に存在する最大の攻撃力は強化された『バブルマン』の1400。これ以下の攻撃力のモンスターがいない可能性もあるが、それでも炎丸君の手札を見れるのは大きい。

……『炎帝テスタロス』があったからそれにしたい所だけど、攻撃力2400の『炎帝テスタロス』は当然、破壊不可能だ。

「よし、『バブルマン』(攻撃力1400)よりも攻撃力の低い『インフェルノ』(攻撃力1100)を破壊!そして、500ポイントのダメージだ!」

「くっ!?」 敵残ライフ3500

……『インフェルノ』は通常召喚出来ない代わりに、墓地の炎族モンスターを1体除外して特殊召喚出来る。つまり、『炎帝テスタロス』の生け贄召喚に繋がる。破壊出来たのは大きい。

「いくぜ!『バブルマン』(攻撃力1400)で裏側守備表示モンスターに攻撃!『バブルシュート』!」

『バブルマン』が水の奔流を放ち、裏側守備表示モンスターを撃破した。

……が、撃破したモンスターは……

「ふふ、戦闘破壊された『火口に潜む者』(守備力1200)の効果を発動!このカードが破壊されフィールド上から墓地に送られた時、手札から炎族モンスター1体を特殊召喚する事が出来る!」

「げっ!?炎族って事は……」

「そういう事!手札から、炎族の『炎帝テスタロス』(攻撃力2400)を攻撃表示で特殊召喚!」

『オォォォ!!』

うひょー、いきなり帝っすか。

「くっ、ターンエンド!……はは、悪ぃ」

「ドンマイドンマイ。寧ろ効果を使われなかった分よかったさね」

『炎帝テスタロス』は生け贄召喚に成功した時、相手の手札をランダムに1枚捨て、捨てたカードがモンスターカードだった場合、そのモンスターの星×100ポイントダメージを相手ライフに与える効果を持っている。その効果が発動しなかったんだから、満更悪い事だらけって訳でも無い。

……まぁ、悪い方が割合は高いけど。

「はは、相変わらず楽しそうにデュエルするな」

と、笑いながら岩丸君が話し掛けてきた。

「まぁ、それだけが」

「僕達の取り柄ですから」

十代君の言葉に、僕が続ける。

「おまけにコンビネーションもバッチリ。こりゃ気が抜けないな。炎丸」

「ああ」

あちらの二人も笑い合う。

……こういう所でも、十代君の凄さを感じるなぁ。元々敵だったのに、今ではこんなに和気藹々とデュエルしてんだから。

「俺のターン!ドロー!『炎帝テスタロス』(攻撃力2400)で『バブルマン』(攻撃力1400)に攻撃!『フレイム・ザンバー』!」

「ぐぁっ!?」 自残ライフ3000

『炎帝テスタロス』が炎の剣で『バブルマン』を切り裂いた。

……英語で『テスタロス』はイタリア語では『テスタロッサ』、それで『ザンバー』とか、別の物を連想させるな……水○奈々的な。

「そして、モンスターを1体裏側守備表示でセット!更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

「僕のターン!ドロー!」

……岩丸君が使うのは恐らく、総じて守備力が高い傾向岩石族モンスター。あのモンスターも守備力が高そうだけど、あの守備表示モンスターを放っておいたら、それを生け贄に、更に帝を召喚されてしまう。

ここはダメージ覚悟で……!

「僕は『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!効果を発動!1ターンに1度、手札から闇属性モンスター1体を墓地に捨てる事で、自分のデッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る!僕は手札から闇属性の『ワイト』1枚を墓地に捨て、デッキからも『ワイト』1枚を墓地に送る!」

と、

「えー、『ワイト』?」

「あんな弱っちいカード使ってんの?」

「ダサーい」

……ギャラリーのジャリん子達が言いたい放題言い出した。

『『『……』』』

……挫けちゃ駄目だ。ドクロは信念の証だヨ?

「馬鹿にしてはいけまセーン」

と、いつから居たのか、ペガサスさんがたしなめてくれた。

「あのデッキは、私をあと一歩まで追い詰めた、素晴らしいデッキなのデース」

その一言に、ギャラリーから驚きの声が上がった。……まぁ、弱小だと思っていたカードが、あのペガサスさんを追い詰めたって言うんだから、それは驚きだろう。

「お前、会長さんとデュエルしたのかよ!?」

十代君が羨ましそうに聞いてきた。……そう言えば、十代君にも言ってなかったっけ。

「更に手札を1枚墓地に送り、『アクア・ドルフィン』の効果を発動!『エコー・ロケーション』!」

さっきと同じように、『アクアドルフィン』が超音波を岩丸君の手札に放った。

「……『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)よりも攻撃力の低い『アステカの石像』(攻撃力300)を破壊!そして500ポイントのダメージ!」

「くっ……」 敵残ライフ3000

「そして、『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)で、裏側守備表示モンスターに攻撃!」

『ダーク・グレファー』が剣で岩丸君の裏側守備表示モンスターに斬りかかった。

高守備力のモンスターと思っていたそのモンスターは、意外にも戦闘破壊出来た。が……

「戦闘破壊された『メタモルポット』(守備力600)のリバース効果を発動!お互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その後、それぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする!」

「? いきなり?」

今フィールドをプレイしているのは僕と岩丸君。よって、僕達が『メタモルポット』の効果の対象になり、手札を入れ換えた。

……確かに『メタモルポット』は岩石族だけど、『地帝グランマーグ』とシナジーはそんなに無い。しかも、手札をあまり消費していない今にいきなり使ってくるなんて……

まるでいつもの僕みたいな使い方だ。

……って、待てよ。もしかして……

「……僕はリバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

「っておい、手札が増えたのに、なんで『アクア・ドルフィン』の効果をもっと使わなかったんだよ?」

十代君がいぶかしげに聞いてくる。

……そう、原作版の『アクア・ドルフィン』はOCGと違い、1ターンに何度でもその効果を発動可能なのだ。

「……いや、岩丸君のデッキも、何か僕のデッキと似たタイプな気がしてね」

「? 墓地にモンスターが増えれば増える程強くなるって事か?」

「……確証はないけどね」

……岩石族にはそんな効果を持つ『切り札』が存在する。もしそれを岩丸君が持っていたとするなら、無闇に手札を破壊して墓地に落とさせない方がいいだろう。

「……」

十代君が黙り込む。……そうか、十代君も僕と同じように警戒して……

「……和希がそこまで警戒するカードか……」

「へ?」

「すっげぇ楽しみだぜ!」

「……」

……目を輝かせる十代君に、ベタにズッコケそうになった。

……はは、そりゃそうか、十代君がそんな警戒とかする訳無いか。君なら、寧ろワクワクするよなぁ。

と、僕も笑いそうになっていると……

「ならば、そっちのエンドフェイズ時に罠カード『岩投げアタック』を発動!自分のデッキから岩石族モンスター1体を選択して墓地へ送り、相手ライフに500ポイントダメージを与える!俺はデッキから、岩石族の『マイン・ゴーレム』をデッキから墓地に送り、お前達に500ポイントのダメージを与える!」

と、結構な大きさの岩が現れ……

「うおりゃあぁぁ!!」

「うべ!?」 自残ライフ2500

……岩丸君が自ら投げてきた。……ド○ン専用ザクか君は?

……だけど、やっぱり岩石族モンスターを墓地に送っている。やっぱり、あの『切り札』を使ってくる可能性が高い。

……次は炎丸君 のターンか。

「俺のターン!ドロー!」

よし、今しかない!

「スタンバイフェイズ時に、リバースカード発動!速攻魔法『手札断殺』!お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする!」

このタイミングならば、この効果が適用されるのは僕と炎丸君。岩丸君の墓地が肥える心配も……

「ふふふ、ありがとうよ!」

……あら?

「俺は『炎帝近衛兵』(攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!」

! そうか、そいつが居たか……!

「このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する炎族モンスター4体を選択してデッキに戻し、その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする!お前の『手札断殺』で墓地に送った分を含めて、俺の墓地の炎族モンスターは丁度4枚だぜ!この4枚をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドロー!」

くっ、岩丸君の『切り札』を気にかける余り、炎丸君の注意が足りなかったか。……よく考えてみりゃ、『炎帝』って名前の付いてるこのカードが入ってるなんて思い付く事だろうに、態々手札を増やさせてしまったか……!

「いくぜ!『炎帝テスタロス』(攻撃力2400)で『ダーク・グレファー』(攻撃力1700)に攻撃!『フレイム・ザンバー』!」

……どうせなら水樹○々な声のキャラでやって欲しいと贅沢を言ってみる。……キャラが居ないやコンチクショウ……

……そんな馬鹿な事を考えている間にも、『ダーク・グレファー』が両断されてしまった。 自残ライフ1800

「更に『炎帝近衛兵』(攻撃力1700)で『アクア・ドルフィン』(守備力800)に攻撃!『ロイヤルガーディアンズ・フレイムジャベリン』!」

『炎帝近衛兵』が『炎帝テスタロス』の炎の剣に酷似した炎の槍を作り出し、『アクア・ドルフィン』を刺し貫いた。

「俺はリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

くっ、これで僕達のフィールド上のモンスターは全滅か……

「……和希、お前のリバースカード、退けちまってもいいか?」

「え?べ、別に良いけど?」

さっき、僕がもう1枚セットしたのは罠カード『連鎖破壊(チェーン・デストラクション)』、攻撃力2000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚した時、そのモンスター1体のコントローラーの手札・デッキから同名カードを全て破壊するカードだ。僕は主に、デッキのワイト達を墓地に送るのに使う。

だが、僕の墓地には既に、『ダーク・グレファー』の効果で送った『ワイト』が2枚と、『手札断殺』で送った『ワイト夫人』が1枚ある。よって、『ワイトキング』を召喚すれば、その攻撃力は3000。別に『連鎖破壊』を使わなくても、既に十分に攻撃力は高い。

「よし!オレのターン!ドロー!速攻魔法『非常食』を発動!このカード以外の自分フィールド上に存在する魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送り、墓地へ送ったカード1枚につき、ライフポイントを1000ポイント回復する!オレは対象の居なくなった『魂の共有-コモンソウル』と、和希のセットしたリバースカードを墓地に送り、ライフポイントを2000ポイント回復させる!」 自残ライフ3800

? このタイミングでライフ回復?そりゃ、『魂の共有-コモンソウル』はもう邪魔なだけだけど、でも、一応相手モンスターにも使える『連鎖破壊』までなんで……?

「そして魔法カード『戦士の生還』を発動!自分の墓地に存在する戦士族モンスター1体を手札に加える!オレは、墓地の『バブルマン』を手札に加える!」

あ、成る程、そういう事か。

「そしてオレは、今手札に加えた『バブルマン』(攻撃力800)を攻撃表示で召喚!効果を発動!デッキからカードを2枚ドロー!」

『バブルマン』の効果は、召喚した時に自分フィールド上に他のカードが存在していたら発動出来ない。その為に『非常食』でフィールドを空にしたのか。

「流っ石~」

……と言うか、なんか原作版『バブルマン』だけでデッキが組めちゃいそうな位の暴れっぷりだな……

「へへ、勿論これだけじゃないぜ。手札から速攻魔法『バブル・シャッフル』を発動!このカードは『バブルマン』がフィールド上に表側表示で存在する時のみ発動する事が出来る!自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する『バブルマン』1体と相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を守備表示に表示変更し、守備表示にした『バブルマン』1体を生け贄に捧げ、『E・HERO』と名のつくモンスター1体を手札から特殊召喚する!オレは『バブルマン』(守備力800)と『炎帝テスタロス』(守備力1000)を守備表示に変更!」

「くっ!?『炎帝テスタロス』が守備表示に!?」

「そして、『バブルマン』を生け贄に捧げ、『E・HERO ネオス』(攻撃力2500)を攻撃表示で手札から特殊召喚!」

『ハァッ!』

おお!?しかもあそこからネオスに繋げるか。凄ぇ!

「まぁ、お前のリバースカードを無駄使いしたんだ。これぐらいはやらないとな!」

おお、カッコイイ事言っちゃって!

「『ネオス』(攻撃力2500)で『炎帝近衛兵』(攻撃力1700)に攻撃!『ラス・オブ・ネオス』!」

『トァァァァ!!』

「くっ!?」 敵残ライフ2200

『ネオス』の手刀が、防御で掲げた槍ごと、『炎帝近衛兵』を両断した。

「オレは更に、フィールド魔法『摩天楼-スカイスクレーパー-』を発動!『E・HERO』と名のつくモンスターが戦闘する時、そのモンスターの攻撃力が相手モンスターの攻撃力よりも低い場合、そのモンスターの攻撃力はダメージ計算時のみ1000ポイントアップする!そして、リバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

よし、これでライフも逆転出来たし、大分状況も巻き返せた。 しかも、攻撃する時のみに効果が発動するOCG版と違い、原作版の『摩天楼-スカイスクレーパー-』は相手からの攻撃時にも発動する。よって、実質『ネオス』は攻撃力3500以上のモンスターじゃなければ戦闘破壊されない。

……でも、まだ油断は出来ない。相手のフィールド上にはまだ『炎帝テスタロス』が居る。

「俺のターン!ドロー!俺は手札から速攻魔法『月の書』を発動!フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする!『ネオス』を裏側守備表示に変更!」

うっ……『ネオス』の守備力は2000、『炎帝テスタロス』(攻撃力2400)に戦闘破壊されてしまう。攻撃力は『ネオス』の方が高いから『摩天楼-スカイスクレーパー-』の効果は発動しないし、そもそも『摩天楼-スカイスクレーパー-』では守備力は上がらない……

……待てよ、そう言えば岩丸君の帝は……!

「俺は『炎帝テスタロス』を生け贄に、『地帝グランマーグ』(攻撃力2400)を召喚!」

『オォォォ!!!』

くっ、まさか帝を生け贄に新たな帝を召喚するとは……!

「『地帝グランマーグ』の効果を発動!このカードの生け贄召喚に成功した時、フィールド上にセットされたカード1枚を破壊する!お前達の裏側守備表示でセットされているモンスター、『ネオス』を破壊!」

「くっ!?『ネオス』!?」

『地帝グランマーグ』が、その巨大な腕で裏側守備表示の『ネオス』をそのまま押し潰した。

拙い、これで僕達のフィールドにモンスターが居なくなった……!

「『地帝グランマーグ』(攻撃力2400)でダイレクトアタック!『バスター・ロック』!」

「ぐあぁぁぁ!?」 自残ライフ1400

そして同じように、その巨大な腕で十代君を吹き飛ばした。

「俺は更に、リバースカードを2枚セットしてターンエンド!」

くっ、瞬く間に逆転されてしまった。流石は帝、強い……!

しかも、モンスター過多な僕のデッキには珍しく、今僕の手札にはモンスターカードが無い。ここでモンスターカードをドローしないと……

「僕のターン!ドロー!」

っ! モンスターカードじゃない。ヤバい……!

と、十代君が……

「和希、リバースカードを使え!」

「? リバースカード?」

どれどれと、僕はさっき十代君がセットしたリバースカードを確認する。

……え?これって……

「……リバースカード発動!魔法カード『0-オーバーソウル』!自分の墓地から『E・HERO』と名のついた通常モンスター1体を選択し、自分フィールド上に特殊召喚する!僕は墓地から、通常モンスターの『ネオス』(攻撃力2500)を特殊召喚!」

『ハァッ!』

「E・HERO専用の……」

「蘇生カードだと!?」

あっちも驚いてるが僕も驚いている。普通だったら、通常魔法である『O-オーバーソウル』はセットしない。

でも、十代君はこのカードをセットしていた。という事は……

「……『ネオス』が破壊されるのを読んでたの?」

「へへへ、まぁな」

そう、仮に『ネオス』が破壊されても、このカードをセットしておけば、僕のターンでも、セットされたこのカードを使って『ネオス』を蘇生出来る。逆にそうしなかった場合、『O-オーバーソウル』は十代君の手札のまま。僕のターンでは使えなかった。

「前に岩丸とはデュエルした事があるからな。もしかしたら『地帝グランマーグ』か何かで破壊されちまうんじゃないか……ってな」

す、鋭い……!

「……その機転を勉強に向けたら、もうちょい成績良くなるんじゃない?」

「……余計なお世話だっつーの」

僕の混ぜっ返しに、十代君がジト目でツッコんだ。

さて、気を取り直して……

「『ネオス』(攻撃力2500)で『地帝グランマーグ』(攻撃力2400)に攻撃!『ラス・オブ・ネオス』!」

『トァァァァ!!!』

おー、あのネオスが僕の攻撃宣言で攻撃してくれるなんて、感動だ。

だが……

「罠カード『和睦の使者』を発動!このカードを発動したターン、相手モンスターから受ける全ての戦闘ダメージは0になり、このターン自分のモンスターは戦闘では破壊されない!」

『ネオス』の手刀は、突如現れた障壁に阻まれてしまった。

……『地帝グランマーグ』を破壊出来なかったか。

だが、帝は生け贄召喚を終えた後は攻撃力2400の、効果無しの通常モンスターと大差無い。

「そして、そっちのエンドフェイズ時に、罠カード『岩投げアタック』を発動!」

って、またかい!?

「デッキから、2枚目の『マイン・ゴーレム』を墓地に送り、お前達に500ポイントのダメージを与える!ぬぉりゃああぁぁ!」

「ぐが!?」 自残ライフ900

くっ、ライフが1000を下回った……!

「……ターンエンド!」


「俺のターン!ドロー!」

と、炎丸君がニヤリと笑った

「お前達、まさか俺達のデッキの切り札が帝だけなんて思ってないよな?」

「「な!?」」

「見せてやるぜ!俺のデッキの本当の切り札を!」

!?『炎帝テスタロス』は切り札じゃ無いのか?

「俺は、墓地の炎族モンスター『炎帝近衛兵』をゲームから除外し、『インフェルノ』(攻撃力1100)を攻撃表示で手札から特殊召喚!」

? 『インフェルノ』の効果は、相手モンスターを戦闘破壊した時、相手に1500ポイントのダメージを与えるという物。確かに強力だが、まさかこれが切り札……?

「そして俺は、『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』(攻撃力2000)を攻撃表示で召喚!」

『……』

! そ、そのカードは……!

炎丸君が召喚したのは、高熱によって灼熱色に染まった、目の付いた溶岩石のモンスターだった。……それなんてば○だんいわ?

「『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』は、自分フィールド上の炎族モンスターを2体まで生け贄に捧げる事で、攻撃力が生け贄の数×1000ポイントアップする!」

……そして、更に貫通効果、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を越えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える効果もある。エンドフェイズ時に破壊されるデメリットがあるが、それでもライフが4000のこの世界では十分に切り札足りえる。

……だが、今あっちのフィールド上で、この効果で生け贄に出来る炎族モンスターは『インフェルノ』の1体のみ、それでは、『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』の攻撃力は3000止まり。『摩天楼-スカイスクレーパー-』の効果が発動した『ネオス』には敵わない。……どうするつもりだ?

「更に、永続罠『DNA改造手術』を発動!種族を1つ宣言し、このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターは宣言した種族になる!俺は炎族を選択!」

「な!?」

まさか、1度ならず2度までも帝を生け贄に!?

「『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』の効果を発動!元から炎族モンスターである『インフェルノ』と、『DNA改造手術』の効果で炎族となった『地帝グランマーグ』を生け贄に、攻撃力を2000ポイントアップ!(攻撃力2000→4000)」

『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』に、生け贄となった『インフェルノ』と『地帝グランマーグ』のパワーが集約し、巨大化した。

「『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』(攻撃力4000)で『ネオス』(攻撃力2500)に攻撃!」

くっ……相手のモンスターの攻撃力の方が高いので、『摩天楼-スカイスクレーパー-』の効果でダメージ計算時に攻撃力が1000ポイントアップする。(攻撃力2500→3500)でも、それでも『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』(攻撃力4000)には敵わない……!

巨大化した『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』の体当たりに、『ネオス』が粉砕された。 自残ライフ400

「くっ……『ネオス』がまた……」

「エンドフェイズ時に、『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』は破壊される。ターンエンド!」

炎丸君のエンドフェイズに際し、『爆炎集合体 ガイヤ・ソウル』が爆散した。

……相手フィールド上にモンスターが居なくなったものの、こっちのフィールドにもモンスターは居ない。しかも、こっちのライフは残り僅かだ。

……十代君の手札は2枚。挽回出来るか……?

「オレのターン!ドロー!手札から魔法カード『テイク・オーバー5』を発動!自分のデッキの上から5枚カードを墓地に送る!」

? この場面で墓地肥やし?

僕の疑問をよそに、デッキから墓地にカードを送った十代君口が吊り上がる。
。「『テイク・オーバー5』の効果で墓地に送られたた『E・HERO ネクロダークマン』の効果を発動!このカードが墓地に存在する時、一度だけ、自分は『E・HERO』と名のついたモンスター1体を生け贄なしで召喚する事が出来る!『E・HERO プリズマー』(星5 攻撃力1700)を攻撃表示で召喚!」

そうか、原作版の『プリズマー』は、星4のOCG版と違い星5、その生け贄の為に、『ネクロダークマン』を墓地に送るのを狙って『テイク・オーバー5』を発動させたのか。

……しかし、まさか本当に実現させるとは、相変わらず凄い引きだ。

「『プリズマー』(攻撃力1700)でダイレクトアタック!『プリズム・フラッシュ』!」

「ぐあぁぁぁ!?」 敵残ライフ500

その名の通り、プリズムから出来た身体の『プリズマー』が、その身体から眩い光を炎丸君に浴びせた。……相手が超人だったらイチコロだったなこりゃ。

「更にリバースカードを1枚セットしてターンエンド!」

土壇場で、十代君の引きの強さのお陰で逆転出来た。

……でも、炎丸君が帝以外の切り札を使ってきた。って事は……

「……俺のターン!ドロー!」

……警戒していた、岩丸君の『切り札』が来る事も……

「……炎丸」

「あ?」

「待たせたな。来たぜ」

と、岩丸君が不敵に笑う。

っ! やっぱり来るのか!?

「……ったく、やっとかよ。いつも遅ぇっつーの」

と、炎丸君も笑い出す。

「いつも?」

と、十代君が、僕も疑問に思った事を聞いた。

「俺達はよくタッグ組んでデュエルするんだけどよ、大体役割が決まってるんだよ」

「炎丸が先制攻撃して、俺がトドメ刺す、ってな」

「お陰で、いっつもこいつに良いところ取られっぱなしだぜ」

「ふふ、よく言うぜ、3回に1回は、お前がそのまま決めちまってるじゃねーか」

「ははは、まぁな」

あちらは軽口の応酬をしているが、僕は気が気で無かった。

「……十代君、ヤバいのが来るよ」

「……さっきお前が言ってた奴か?」

十代君の言葉に、僕は頷いた。

「俺は、墓地の岩石族モンスターを全て除外し、『メガロック・ドラゴン』を特殊召喚!」

『ヴォオォオォォォ!!!』

岩丸君が召喚したのは、全身が岩石で出来た、巨大なドラゴンだった。

くっ、やっぱりこのモンスターだったか……!

「おお!すっげぇ!」

……そして、お約束のように目を輝かせる十代君だった。

「『メガロック・ドラゴン』は通常召喚出来ず、自分の墓地に存在する岩石族モンスターを除外する事でのみ特殊召喚出来る!そして、このカードの元々の攻撃力と守備力は、特殊召喚時に除外した岩石族モンスターの数×700ポイントの数値になる!俺が除外した岩石族モンスターは7枚!よって、『メガロック・ドラゴン』ドラゴンの攻撃力と守備力は7×700で4900!」

攻撃力4900!『ワイトキング』に勝るとも劣らない攻撃力だ……!

「『メガロック・ドラゴン』(攻撃力4900)で『プリズマー』(攻撃力1700)に攻撃!『グランド・クラッシャー』!!!」

『メガロック・ドラゴン』が後ろ足で竿立ちになると、その振り上げた両前足を勢いよく地面に叩きつけた。すると、『プリズマー』に向けて地面が次々と隆起していった。

拙い、この攻撃が通れば、僕達のライフは0……!

「罠カード発動!『ヒーローバリア』!『E・HERO』という名のついたモンスターが表側表示で自分フィールド上に存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!」

地面の隆起が『プリズマー』に直撃する直前、障壁が現れ、阻んだ。

ふぅ、この場面で『ヒーローバリア』をセットしている辺りも、流石は十代君だ。

「……これを凌ぐとは流石だな!ターンエンド!」

くっ、攻撃力4900……!今の僕の墓地にはワイト達は3枚。よって、今『ワイトキング』を召喚しても、その攻撃力は3000止まり。『メガロック・ドラゴン』には追いつかない。

……だが、十代君は逆転チャンスを作ってくれた。……良いカードをドロー出来れば……!

「僕のターン!ドロー!……っ!?」

……ドローしたのは『馬頭鬼』、狙っていたカードじゃなかった。

……でも……

「和希!」

十代君の呼びかけに頷く。そう、僕にはもう1チャンスある……!

「スタンバイフェイズ時に、墓地の『テイク・オーバー5』の効果を発動!このカードを発動した次のスタンバイフェイズ時に墓地にこのカードが存在する場合、 このカードまたはこのカードと同名カードを手札・デッキ・墓地から選択しゲームから除外する事で、デッキからカードを1枚ドローする事が出来る!」

……尤も、『テイク・オーバー5』には、このカードが墓地にある時、自分のカード効果でデッキから墓地にカードを送る効果が無効化される効果も持っている。どっちにしろ、この効果を発動させて、墓地の『テイク・オーバー5』は退けておく必要があった。

「墓地の『テイク・オーバー5』をゲームから除外し、デッキからカードを1枚ドロー!」

! 来た!

「手札から魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動!手札からモンンスター1体を墓地へ送り、手札またはデッキから星1モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する!手札から『ワイトキング』を墓地に送り、デッキから星1の、2体目の『ワイトキング』を攻撃表示で特殊召喚!」

『カタカタ!』

「『ワイトキング』の元々の攻撃力は、自分の墓地に存在する『ワイト』『ワイトキング』の数×1000ポイントの数値になる!僕達の墓地には、『ワイト』が2枚、『ワイト夫人』が1枚、『ワイトキング』が1枚の計4枚!よって、攻撃力は4000!


と、

「す、凄ぇ、あんな雑魚カードが……」

「あの『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』よりも強くなるなんて……」

さっきまでワイト達の事を馬鹿にしていたギャラリーのガキンチョ達から驚きの声が上がった。ふっふっふ、こういう『してやったり感』こそ、ワイトデッキを使う醍醐味なんだよね。

「来たな!『ワイトキング』!」

「だが、俺の『メガロック・ドラゴン』の攻撃力は4900!『ワイトキング』(攻撃力4000)では倒せないぜ?」

……そう、このままではまだ『メガロック・ドラゴン』には勝てない。……このままだったらね!

「僕は更に、『プリズマー』の効果を発動!」

「な!?」

「和希が十代の『E・HERO』の効果を!?」

そう、この『プリズマー』こそ、数少ないワイトデッキとシナジーを持つ『E・HERO』なのだ。

「『プリズマー』は1ターンに1度、自分の融合デッキに存在する融合モンスター1体を相手に見せ 、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体を自分のデッキから墓地へ送る事によって、このカードはエンドフェイズ時まで墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う事が出来るのさ!」

十代君が『プリズマー』の効果を説明する。

「だ、だけどよ!和希が融合モンスターを使うなんて聞いてないぜ!?」

炎丸君が訝しげに言った。

「……! 違う!」

「あ?」

「和希の狙いは、融合じゃない!」

……岩丸君は気付いたようだ。

「僕が選択する融合モンスターは『アンデット・ウォーリアー』!そして、その融合素材モンスターは、『ワイト』と『格闘戦士アルティメーター』!」

「な!?『ワイト』が融合素材だと!?」

『プリズマー』の効果は、デッキに融合素材モンスターが片方だけでも存在すれば発動出来る。そして勿論、僕のデッキには『格闘戦士アルティメーター』は入っていない。よって……

「僕が選択する融合素材モンスターは『ワイト』、僕のデッキの3枚目の『ワイト』を墓地に送り、このターンのエンドフェイズまで、『プリズマー』は『ワイト』として扱う!『リフレクト・チェンジ』!」

『プリズマー』が眩い光を放つと、その姿を『ワイト』へと変貌させた。

「くっ、やはり『プリズマー』は融合の為ではなく……」

「墓地に『ワイト』を送る為だったのか……!」

そう、だから、もしさっきの『テイク・オーバー5』でドローしたのが『ワイトキング』ではなく『ワイト』だったら駄目だった。例え、手札にあった『ワン・フォー・ワン』で手札から『ワイト』を墓地に送って『ワイトキング』をデッキから特殊召喚しても、その時点でデッキの『ワイト』は0。『ワイト夫人』や『ワイトキング』を融合素材とした融合モンスターは存在しない為、『プリズマー』の効果でデッキから『ワイト』達を墓地に送るのは不可能だったからだ。

「これで、僕の墓地『ワイト』達が5枚!よって、『ワイトキング』の攻撃力は5000!」

「攻撃力5000……!?」

「俺の『メガロック・ドラゴン』(攻撃力4900)の攻撃力を超えた……!?」

「『ワイトキング』(攻撃力5000)で『メガロック・ドラゴン』(攻撃力4900)に攻撃!」

と、『ワイトキング』が自ら身体をバラバラにし……

「『竜○アタック』!」

某モンスター育てゲーの、岩のモンスターのように、回転し、その名の通り竜巻と化して『メガロック・ドラゴン』に突っ込み、粉砕した。

「「くっ!?」」 敵残ライフ400

……どうでもいいけど、この間の『弾岩○花散』と被ってない?

「そして、『ワイト』となっている『プリズマー』(攻撃力1700)でダイレクトアタック!」

「「ぐあぁぁぁぁ!!!?」」 敵残ライフ0



「よっしゃあ!」

「イェーイ!」

僕と十代君はハイタッチした。

「ガッチャ!」

「楽しいデュエルだったよ!」

久しぶりの、二人揃っての決めも忘れない。

「……ちぇ、負けちまったか」

「ははは、やっぱり強いな。お前達」

と、炎丸君と岩丸君が立ち上がった。

「いや、お前達も凄かったぜ!岩丸なんか、前にデュエルした時よりも全然強かったぜ!」

十代君が称賛する。

「……それもこれも、お前のお陰さ、十代」

「オレの?」

岩丸君の言葉に、十代君が首を傾ける。

「あの時お前は俺に言っただろう?『他人の力でデュエルして、楽しいかよ』ってさ。だから、俺達は、美寿知の下から離れた時に頂いたたデッキをそのままじゃなく、自分なりに改造して、この『自分のデッキ』を創ったんだ」

「そしたら、前よりも勝てるようになったし、例え負けても、なぁ?」

「ああ、自分のデッキでデュエルするのが、とてつもなく楽しいんだ」

「こんな充実感。美寿知様の配下だった時には味わえなかったぜ」

……確かに、僕もそれには共感する事がある。

これは批判的な言い方になってしまうかもしれないが、例えば、大会の優勝者のデッキレシピ通りにデッキを創ってそのままデュエルするよりも、一から作るとまでは言わないが、少なくとも、自分なりなアレンジを加えたデッキの方が、使って楽しい筈だ。

「お前達……」

「……へへ、またいつかやろうぜ!」

「次は絶対、負けないからな!」

と、二人が握手を求めてきてくれた。

「ああ!勿論だぜ!」

「こっちこそ、次も絶対負けないからね!」

僕達は固く握手した。

と、

パチパチパチ……

「ブラボー!素晴らしいデュエルだったのデース!」

真っ先に、ペガサスさんが拍手をしてくれた。

そして、それに触発されるように、周りのギャラリーも拍手をし出し、僕達は万雷のような拍手に包まれたのだった。……ちょっと照れくさかった。

と、

「そこのボーイ達、ちょっと宜しいデスか?」

「え!?」

「俺達……ですか!?」

ペガサスさんが炎丸君と岩丸君に話し掛けた。

「どうでしょう。我がインダストリアル・イリュージョン社で、働く気はありませんか?」

「な!?」

「俺達が、あのインダストリアル・イリュージョン社に!?」

驚愕する二人に、ペガサスさんは頷いた。

「最近、この隼人ボーイらの若い有能なカードデザイナーが増えたのと同時に、彼らが作った新作カードのテストプレイヤーが不足していたのデース。如何でしょう。十代ボーイや和希ボーイと互角のデュエルを繰り広げた、ユー達を是非スカウトしたいのデース」

このペガサスさんの提案に、二人は飛び上がって喜んだ。



その後、テストプレイヤーの件を後日に約束してもらった岩丸君と炎丸君とは、再戦を誓って別れた。

そして、僕達が童実野バーガーを去る際、店長がペガサスさんに何度も礼を言っていた。この支店始まって以来の売上を記録したとか。

そして僕達は、ペガサスさんの手配した車に乗り、ある場所へと向かった。漸く、今回僕達を呼んだ本題に入るらしい。

そこは、厳重な警備の置かれたビル、KCのマークが付いていたので多分海馬コーポレーションのビルだろう、だった。

そのビルの応接室のような所に、僕達四人は案内された。

そして暫く待つと、例の黒服サングラスのSPさんが部屋に入り、ペガサスさんに2つのジュラルミンの頑丈そうなケースを渡し、退室していった。

「今日は、ユー達にこれを渡す為に来て貰いました」

と、2つのケースのうちの1つの中身を僕達に見せた。

そこには、何の絵も文字も描かれていない2枚のカードがあった。

「? 何だ?この何にも描かれてないカード」

十代君が疑問の声を上げる。かく言う僕も、何なのかさっぱりわからない。

「それぞれ1枚ずつ、手に取って下サーイ」

ペガサスさんに言われるまま、僕達はそれを手に取った。

「そして、今ユー達が最も必要とするカードの姿をイメージして下サーイ」

必要なカード……?

……よくわからないけど、必要なカードと言われて、真っ先に思い浮かぶのはあのカード……『ワン・フォー・ワン』同様、この世界に来たときに、デッキから無くなっていたカード……

そのカードをイメージすると……

「え……」

「これは……!?」

その無地のカードが一瞬光を放ち、僕のは3枚、十代君のは2枚に分裂し……

「イメージしたカードが……!?」

僕がイメージしていたカード、3枚の、貴族然としたワイト、『ワイトメア』のカードへと姿を変えた。

そして、十代君のカードも……

「すっげえ!イメージ通りだ!」

それぞれ、『E・HERO アナザー・ネオス』と『ネオスペース・コンダクター』へと姿を変えていた。両方共、原作で十代君が使っていなかったカードだ。

更に、驚きはそれだけでは無かった。

再び、そのカードが光ったかと思うと……

『カタカタカタ!』

な!? これは……精霊!?
 
『ワイトメア』のカードから、精霊が出て来たのだった。

一方、十代君の方も……

『ハァ!』

『フッ!』

『アナザー・ネオス』と『ネオスペース・コンダクター』の精霊が、カードから出現した。

「……成功したようですネ」

「すっげえ!精霊まで!」

「ど、どうなってるんですかこれ!?」

いきなりの出来事に、思わず面食らってしまった。

と、ペガサスさんはもう1つのケースを開け、中から拳大の、不思議な色の岩を取り出した。

……あれ?この色、どこかで見た事があるような……?

「ユー達は、ダークマターという物を知っていマスか?」

「ダークマター?」

「……何となく、ニュアンス的には」

……某学園都市の第2位さん的な?

「自然界には、大別して4つの力があると言われていマース。重力、電磁力、強い力、弱い力。しかし、一説によれば、こ以外にも、未知の力を持つ5番目の力が存在する言われていマース。それが、ダークマターーなのデース。ダークマターを含めた5つの力は、遥か昔、ビッグバンによって5つに分割され、宇宙に飛び散りました。今でも、宇宙にはダークマターは存在していると言いマース」

「……よくわかんねぇけど、その宇宙にある未知の力ってのが、ダークマターってやつなんだよな?」

「簡単に言えば、その通りデース」

「……なんか似てるな、『優しき闇』や『破滅の光』に」

「あ……!」

十代君の言葉に思わず声を上げる。た、確かに……

「ザッツライト。将にその通りデース。私は、このダークマターが善に染まった物が『優しき闇』、邪悪に染まった物が『破滅の光』であると考えたのデース」

この話を聞いて、僕はある事を思い出した。

原作では、最終決戦時にダークネスは、この宇宙の根源は1枚のカードであり、そのカードの表側が善、裏側が悪であり、ダークネスはその裏側の部分だと言っていた。だとすれば、その1枚のカードがビッグバンによって飛び散り、この宇宙を創ったとするならば、そのビッグバンの過程で生まれたダークマターが、飛び散った表側の善や裏側の悪に染まった、なんて事も、考えられなくは無かった。

「そして、その存在に思い至った私は、隼人ボーイを連れて、ある場所を調査しました。そこは、太古の昔、隕石が落ちたと言われている場所でした。そこで発見したのが、この未知の成分を含んだ岩でした」

「じゃ、じゃあ、これがそのダークマターを含んだ隕石?」

「その可能性は高いでしょう」

……なんか、とてつもなくスケールが大きい話になって来たな……

「私は、海馬コーポレーションと協力して、極秘にこの岩を研究始めましたた。その結果的、その成分は、ある物と類似している事が判明したのデース」

「ある物?」

「かつて、古代ローマの君主ユリウス・カエサルは、その覇権を知らしめるため世界中から7つの宝石を集め、石版を作ろうとしました。その7つの宝石の成分と、よく似ていたのデース」

え!?じゃあ……

「それって、あの噂の『宝玉獣』ですか!?」

「? 何だよその『宝玉獣』って?」

……そうか、原作じゃ十代君、ヨハン君に会うまでは『宝玉獣』の事知らないんだっけ?

「噂で聞いたんだけどね、その宝石は、船でローマに運ばれる途中、嵐で海に沈んじゃったんだって。それをペガサスさんが回収して、その成分を使ってカードを創ったんだって」

勿論、僕は噂で聞いただけじゃなく、原作知識で知ってもいるんだけどね。

「イエス、その通りデース。そして、そのカードには精霊が宿ったのデース」

「『宝玉獣』か、いつかそいつと、デュエルしてぇなぁ」

……大丈夫、あと数ヶ月で、その望みは叶うよ。

「しかし、この岩、私は精霊岩と呼んでいますが、この成分は、その宝石の成分とは全く違う点があったのデース」

? 全く違う点?

「ユリウス・カエサルの宝石の成分には、それぞれある方向性があったのデース。その方向性を基に、私は『宝玉獣』をデザインしたのデース。しかし、この精霊岩の成分には全く方向性という物が存在しないのデース。この方向性と言うのは、言うなれば精霊の設計図デース。それが無い、という事は……」

「……この成分を使ってカードを作っても、どんな精霊が生まれるのかわからない、って事ですか?」

「ザッツライト。その通りデース。そして、十代ボーイはかつて、そのイマジネーションでネオスという精霊を創り出しました。そこで、精霊を持つユー達のイマジネーションならば、或いはその方向性を創り出せるのでは、と思い至ったのデース」

……言われてみれば、ネオスは十代君のイマジネーションから生まれた精霊。もしかしたら、十代君のデザインが宇宙に上げられて、それに『優しき闇』の力が宿る際、そのイマジネーションが『優しき闇』、善のダークマターの持つ方向性を変えて、ネオスという精霊を生み出した、なんて事も考えついた。

「尤も、枚数が増えた事は予想外でした。この精霊岩には、まだ未知な部分があるようデース。かく言う、精霊の存在を感じても見えなかった私や隼人ボーイも、この岩を研究しているうちに、精霊が見えるようになったのデース」

「え!?じゃあ、隼人にも精霊が!?」

「ああ」

隼人君が1枚のカード、彼のお気に入りである『デス・コアラ』のカードを出すと……

『モフン』

「でか!?」

カードから『デス・コアラ』の精霊が出てきた。

「この通りなんだなぁ」

「良かったな隼人!」

「ああ」

「しかし、他の研究員達は精霊を見えるようにはなっていません。どうやら、心から精霊の存在を信じている者にしか、この岩の効果は及ばないようなのデース」

ふーむ、成る程。取り敢えず理解出来た。

「……あれ?」

と、十代君が何かに気付いた。

「この岩の色って、和希のペンダントに似てないか?」

「あ……」

そうか、どこかで見たことがあると思ったら、あのマハードさんに貰ったペンダントの宝石の色にそっくりだったんだ。

取り出して見比べてみると、確かに、そっくりというより、全く同じ感じだった。

「オウ、まさしくそれは精霊岩。しかも、この上なく高純度な物デース。これを一体どこで?」

僕は、マハードさんから貰った経緯を話した。……勿論、十代君や隼人君が居るので、元の世界云々は伏せて。

「精霊から貰った精霊岩か。何か、物凄い力が宿っそうなんだなぁ」

「和希ボーイの身を案じて渡した所、事実そうなのでしょう」

……確かに、これからはかなり危険な状況が続く。これは肌身離さず持っていた方が良さそうだ。



と、ペガサスさんが、ふぅ、と長い溜息をついた。

「これで漸く、彼女に一歩近づけたのデース」

「? 彼女?」

「彼女って誰なんだなぁ?」

と、彼女、シンディアさんの事を知らない十代君や隼人君が首を傾ける。

「……そう言えば、ユーたちは知りませんでしたネ。いいでしょう。この場を借りて話しておきましょう」

そして、ペガサスさんはシンディアさんの事を二人に話した。

「……会長さん、そんな悲しい事があったのか」

「会長、可哀想なんだなぁ」

涙もろい隼人君は涙ぐんでいた。

「……でも、この精霊岩を使えば、そのシンディアって人の精霊も創れるんだよな?」

「ノウ、それでは駄目なのデース」

十代君の言葉に、ペガサスさんは首を振る。

「例え、私のイマジネーションで方向性を創っても、あくまでそれは私のイメージの彼女であり、彼女自身では無くなってしまいマース」

「で、でも、それじゃあどうするつもりなんですか?」

「……なんとかして、彼女の魂を宿らせる事が出来れば、彼女自身の方向性を精霊岩に刻み込める。そう考えてマース」

魂を宿らせるって言ったって……! まさか!?

「……安心して下サーイ。勿論、千年アイテムに頼るつもりはありまセーン」

と、ペガサスさんは遠くを見つめるように、虚空を見上げた。

「……今はその方法はわかりまセーン。ですが、例え、何年、いや何十年かかっても構いまセーン。いつか必ず、私は成し遂げるつもりデース」

と、ペガサスさんは隼人君に笑いかけた。

「以前、隼人ボーイが良い言葉を教えてくれました。『為せば成る』、とネ」

「……はは、隼人君らしいや」

「て、照れるんだなぁ」

「……私も、不可能を可能にすべく、頑張りたいと思いマース。あの武藤遊戯のようにネ」

遊戯さんのように、か……

「会長さん、オレ、応援してるぜ!」

「十代ボーイ……」

「もし協力が必要になったら言ってくれよな!」

……ありゃりゃ、十代君に先言われちった。

「右に同じく!」

「俺も、精一杯サポートするんだなぁ」

「……サンキュー、ありがとうございマス」

ペガサスさんは、深々と頭を下げてくれた。



その後、僕達はデュエルアカデミアへと、再びヘリで送って貰い、ペガサスさんや隼人君と別れた。

そして、レッド寮へと戻る道すがら……

『十代、これからは君の力となり、共に困難に立ち向かおう』

『宜しくお願いします。マスター』

「ああ、こっちこそ、宜しくな!」

十代君は、新たな仲間である『アナザー・ネオス』と『ネオスペース・コンダクター』と話していた。

『カタカタ』

「はは、こっちも宜しくね」

もうじき、過酷な3年目が始まる。戦力が増えたのはありがたい。

何よりも、ワイト使いとして、ワイト達全員が揃った事が一番嬉しかった。

「頼りにしてるよ?勿論、ワイト達も」

『『『『カタカタ!』』』』

うむ、いい返事だ。

僕はペガサスさんに感謝する一方、シンディアさんの事が上手くいく事を心から祈った。



今日のワイト

和「祝!全員集合!」

4ワイト「「「「カタカタカタ(嬉)!」」」」

和「と言う訳で、今回はデュエルには登場しませんでしたが、早速、貴族さんこと『ワイトメア』をご紹介!」

ワイトメア(以下貴)「カタカタ!」

和「『ワイトメア』……星1、闇属性、貴ぞ……じゃなくてアンデット族、攻撃力300、守備力200、このカードのカード名は、墓地に存在する限り『ワイト』として扱う。また、このカードを手札から捨てて以下の効果から1つを選択して発動する事が出来る。●ゲームから除外されている自分の『ワイト』または『ワイトメア』1体を選択して自分の墓地に戻す。●ゲームから除外されている自分の『ワイト夫人』または『ワイトキング』1体を選択してフィールド上に特殊召喚する……このカードの出現によって、ワイトデッキは飛躍的に強化されたと言えます」

貴「カタカタ」

和「まず、単純にデッキに入れられるワイトが3枚増えたという点、次に、自分から墓地に送られるワイトであるという点、そして、今までワイトデッキの弱点であった除外に対する耐性を僅かながら上げてくれたという点です」

貴「カタカタ」

和「……まぁ、このカードが出て、『ワイト』要らないんじゃね?的な声も聞きますが」

ワ「カタカタ(ガーン)!?」

和「はは、大丈夫、僕は勿論、これからも皆3積みでいくから」

ワ「カタカタ……(ホッ……)」

和「……多分ネ」

ワ「!?」

和「それではまた次回!さよーならー!」

3ワイト「「「カタカタ!」」」

ワ「……」



あとがき

どうも、『ベビー・トラゴン』が可愛すぎて生きるのがつらい八王夜です。なんですかあの可愛さ!?ニコ動でもう何回見たことか(オイ

しかも、ワイトデッキとシナジーあり。思わず叫びましたヨ、『我が世の春が来たぁ!!!』と!(オイ

実は、5D´s編の大まかな構成も終え、調子に乗ってZEXAL編も構想、と言うか妄想してるのですが、もしそこまでいったら、是非とも『ベビー・トラゴン』を使いたいと思いました。

今回の話ですが、元々はペガサスさんからカードを貰うだけの予定でしたが、それだけではつまらないと思い、以前に感想で頂いた岩丸君・炎丸君とのタッグデュエルをねじ込みました(オイ いやー、炎族単体のデッキなんて、オブライエン君のヴォルカニックデッキしか思いつかなかったので苦労しました(汗

次回からいよいよ3期突入!……やっとここまで来たなぁ……(しみじみ

ではまた次回!

PS 今現在、全体的な加筆修正及び添削を行っています。……ようやっと初期のが読めるレベルになってきた(汗

全体的な修正したら、いよいよその他板に移動しようと思います。

PS② 今現在、『ベビー・トラゴン』搭載型のワイトデッキを構想中です。次回辺りで載せて、皆さんのご意見を伺いたいのですが、如何でしょうか?

PS③ 『暗黒界の導師 セルリ』OCG化に心から拍手!……この調子で、GX世代の原作カードがOCG化されないかなぁ(笑



[6474] 第四十二話 悪夢再び
Name: 八王夜◆bf2d4ad6 ID:b77ad0e6
Date: 2011/07/04 08:46
SIDE 和希



ソイツラは何の前触れもなく、突然やってきた。

そして、親父もお袋も兄弟もダチも赤の他人もジジイもハバアもガキも逆らう者も逃げ遅れた者も命乞いをした者も、皆コロサレタ……

『俺』らは何もしていないのに!ただ、普通に生活していただけなのに!何故!?

……奴らが、親父『だった』モノで、お袋『だった』モノで、兄弟 だった』モノで、ダチ『だった』モノで、赤の他人『だった』もジジイ『だった』モノで、ハバア『だった』モノで、ガキ『だった』モノで、逆らう者『だった』モノで、逃げ遅れた者『だった』モノで、命乞いをした者『だった』モノで、『ナニカ』を作っているのを見た時、『俺』は理解した。

嗚呼、『俺』達はあの『ナニカ』の材料にされたんだ。

……アイツら、こっちの事なんざお構い無しに、自分達の都合だけで、皆殺しやがった!

……許さねえ……

いつか、必ず、復讐してやる……!

……と、目の前に小さなナニカが転がっていた。

……ダレカの……手……

あ……

……この大きさ、この形、そしてこの火傷の痕……

あ……あああ………

……ア……マ……ネ……

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……!!!!!



「!? はぁ……はぁ……!」

……僕は汗だくになりながら起きた。

……今日は新学期の始業式。今日から僕達は最終学年生なる。

そして、新学期の前に最後の休みを堪能しようと、僕は十代君に誘われ、式が始まるまで、屋上で一緒に日向ぼっこしていたのだ。

そして、そのまま一緒に寝入ってしまったのだが……

「また、あの夢……」

……いつか見た夢、それも、前よりも生々しかった。……『僕』の感じた、悲しささえも。

「……アマネ……?」

……知らない筈の、たが、どこか聞いた事のある名前が口から出る。

……いや、聞いた事のあるだけじゃない。……知らない筈なのに、僕はこの名前を知っている?

そして、この名前は僕の中で、何故か悲しく響く。

「……あーもう、何だって言うんだよ……」

最近悩みの種である、若白髪の増えてきた頭をガシガシ掻きながら一人ごちる。

……思えば、最近になって変だった。時々途切れる意識に、この悪夢、極めつけは、ジェネックス終盤のあれだ。

僕は銀君に勝利した後、光の結社の生徒達に取り囲まれながら、例のごとく気を失った。

……そして、気が付いた時には、光の結社の生徒達は倒れ伏していた。

……あれは、僕が……?

「……う、ぅぅ……」

と、考え込んでいると、隣から呻き声が聞こえた。

見ると、

「! 十代君!?」

一緒に眠っていた十代君がうなされていた。

! そう言えば原作でも、3年目の頭、彼はうなされていた……!

……異世界において、仲間達が石化し、消えてしまうという、この上なく正確に、未来の事を暗示した悪夢によって……!

「十代君!十代君!」

僕は自分の悪夢の事など忘れ、慌てて十代君を起こそうとした。



SIDE OUT



SIDE 十代



待ってくれ!皆待ってくれよ!

……気が付くと、オレは見知らぬ所に居た。

……いや、正確には、オレはここを知っている。ここは、かつて『破滅の光』に取り憑かれた斎王とデュエルした時に、『破滅の光』に見せられた、オレの『破滅の運命』の場所だった。

辺りは砂と、その砂に埋もれたデュエルアカデミア以外には何も無かった。そしてオレは、そんな異世界の中で、皆が居るのを見つけた。

でも、オレがいくら呼んでも、皆は悲しい目をオレに向けて、立ち去ろうとした。

慌てて追いかけようとしても、皆との距離は縮まず、寧ろ離れていった。

やがて、皆、姿を消してしまった。

待ってくれ!

オレは皆に手を伸ばした。

……その時、気付いた。

オレの手から、赤いナニカが滴っていた。

……血だった。

気付くと、オレの全身は血で濡れていた。

……オレの血じゃない。

そして、目の前には……

血まみれで横たわる、掛け替えの無い仲間が……

……十代クン……

……言葉が出ないオレに、あいつが話し掛ける……

……十代クン……

……十代クン……

……十代クン……

……十代クン……
 


……キミノセイダ……



「うわあぁあぁあぁ!?」

「ちょっ!?」

ゴンッ!



SIDE OUT



SIDE 和希



「いってぇ!?」

「オーノー!?」

突然飛び起きた十代君を避けられず、頭と頭が激突し、某誇り高き血統の人のごとくリアクションをする僕だった。

……十代君も返してくれればあのシーンの再現だったのに……って、そうじゃなくて……!

「……十代君、大丈夫?」

「……目覚まし代わりに頭突きくらって大丈夫だと思うか?」

「そっちじゃなくて、夢の方」

「夢?」

的外れな事を言う十代君に、僕は追求した。

「さっきまで十代君、うなされてたからさ。何か悪夢でも見たんじゃないかって……」

「……さぁな。確かに悪い夢を見てた気もするけど、今ので忘れちまったよ」

たははと笑う十代君だったが、僕は不安だった。やっぱり、あの夢を見たのだろうか。

「……お前も大丈夫か?」

「? 何が?」

「お前こそ、なんか顔色が悪いぜ?」

僕の不安を見透かしたように、十代君が訪ねる。

……勿論、これからの流れについては言えないので、

「いや、僕もさっき、悪い夢を見ちゃってね……」

「お前も?どんな夢なんだよ?」

「それがさ……」



ドクン……



「……あれ?」

……どんな夢を見てたんだっけ?

……いや、それだけじゃなくて、それ関連で悩んでいたような……

……その部分だけ、ポッカリと記憶が消えてしまっている?

「ははは、なんだよ、お前も今ので吹っ飛んじまったのかよ?」

「……はは、そうみたい」

……まぁ、忘れてしまったんなら、そう重要な事でもないだろう。



それから僕達はしばらく駄弁っていた。

「いやー、参ったぜ。『サンダー・ジャイアント』の効果が全然変わっちまうんだもんな」

「そだね。僕なんかは全然影響無かったから助かったけど」

新学期が始まる直前、海馬コーポレーションはタッグフォースルールの公式化の他、ある事を行った。全国のプレイヤー達の意見やコンピューターのシュミレートを基にした、一部の既存カードの能力の変更やそれに伴ったテキストの変更、所謂エラッタだ。

……考えてみれば、原作でも3年目からOCG効果となったカードは幾つかある。もしかしたら、描写はされてないけど、これに似たような事が行われていたのかもしれない。

デュエルアカデミアにも、ヘリで海馬コーポレーションの機材が運び込まれ、全生徒がチェックを受け、カードの更新がされた。

例を上げれば、さっき話になっていた、十代君の使う融合モンスター『E・HERO サンダー・ジャイアント』だ。星や属性種族、融合素材や攻撃力守備力、融合召喚でしか特殊召喚出来ない効果なんかはそのままだが、それ以外の効果が今までの物、このモンスターの融合召喚に成功した時、フィールド上に表側表示で存在する、元々の攻撃力がこのカードよりも低いモンスター1体を選択して破壊する効果、からOCG版の効果、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に、自分の手札を1枚捨てる事で、フィールド上に表側表示で存在する元々の攻撃力がこのカードの攻撃力よりも低いモンスター1体を選択して破壊する効果、に変わったのだ。原作でも、3年目からこのカードはOCG効果に変更されていた。他にも、例えば剣山君の使うフィールド魔法『ジュラシックワールド』も今までの効果、恐竜族・鳥獣族モンスターの攻撃力・守備力を300ポイントアップさせ、更に恐竜族・鳥獣族は相手の罠の対象とならず、その効果も受けず、更に自分のコントロールする攻撃表示の恐竜族・鳥獣族モンスターが相手モンスターの攻撃対象になった時、そのモンスターを守備表示にする事が出来る効果、からOCG版の効果、フィールド上に表側表示で存在する恐竜族モンスターは攻撃力と守備力が300ポイントアップする効果、に変更され。

亮さんの使う装備魔法『未来融合-フューチャー・フュージョン』も今までの効果、自分の融合デッキに存在する融合モンスター1体を選択、お互いに確認し、決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送り、融合デッキから確認した融合モンスター1体を融合召喚扱いで特殊召喚しこのカードを装備、この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できず、デュエル中に生け贄に捧げる事も出来ず、このカードが破壊されたとき、装備モンスターを破壊する効果、からOCG版の効果、自分の融合デッキに存在する融合モンスター1体をお互いに確認し、決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送り、発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時に、確認した融合モンスター1体を融合召喚扱いとして融合デッキから特殊召喚、このカードがフィールド上に存在しなくなった時、そのモンスターを破壊するし、そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する効果、に変更されたりした。……尤も、まだ『未来融合-フューチャー・フュージョン』はOCG版の永続魔法と違い、装備魔法のままだったけど。

「ははは、『ジュラシックワールド』の効果変更で、てっきり剣山君が暴れ出すかと思ったんだけどなぁ」

「まぁ、剣山はオレやお前とのデュエルで、『あのカードに頼らないデュエリストになる』っつってたからな。……つーかそれは寧ろ、お前が剣山に暴れて欲しかっただけだろ?」

「……バレた?」

「はは、バレバレだっつーの」

「因みにその心は?」

「面白そうだから、だろ?」

「大・正・解♪」

「ははははは……」

バカな話をしている内に、滅入っていた気分が晴れてくる。

……十代君があの悪夢を見たという事は、恐らくこの3年目も原作通りに進むのだろう。

原作の3年目、つまり今年の前半、十代君は、『心の闇』と向き合う事となり、またその後、自分や仲間達の命を賭けたデュエルを繰り返す羽目になった挙げ句、終いには仲間達を失う結果となり、遂には、デュエルを純粋に楽しむ事が出来なくなってしまう。

……そう考えると、十代君があの悪夢を見た事を確認出来たのは寧ろ僥倖だった。これから原作3年目前半のような流れで事が進むのが予測出来たからだ。……今のうちに、これからの僕の立ち回りを考えておくべきだろう。

と、

『クリクリ~』

ハネクリボーが何かを見つけたみたいだ。

「どうしたんだよ相棒?……ん?」

ハネクリボーが羽で指す方を見ると、建物の影から、赤く光る玉が見えた。

あ、原作通りの流れならあれって……

見ていると、それが全貌を現した。

『ルビ』

赤く光っていたのは尻尾の先端であり、身体は紫、手のひらよりも少し大きな、猫とリスの中間のような動物だ。ただし、よく見ると耳は2つずつの計4つであり、額にも、尻尾の物を小さくしたような赤い玉が付いていた。

そう、デュエルモンスターズの精霊、『宝玉獣 ルビー・カーバンクル』だ。

『ルビルビ~』

ルビーはこちらに歩み寄り……

『クリクリ~』

『ルビルビ~』

ハネクリボーとクリクリルビルビ話し始めた。な、なんだこの究極的な和み空間!?くそ、抱き締めたい!

「なんだこいつ?リス?」

『ルビルビ!』

十代君の指摘に、首を振るルビー。……くっ、流石はPSPソフトのタッグフォース3のマスコットモンスター、ファラオに勝るとも劣らない可愛さだ……!

「おーい、ルビー」

と、ルビーを呼ぶ、どこかで聞き覚えのある声がした。

その声の主、明るい緑色の髪をした、僕達と同年代の男が、階下から屋上に姿を現した。

『ルビ!ルビ~♪』

「こんな所に居たのか」

と、ルビーは彼の肩に乗り、彼に頬擦りした。くっ、羨ましい、僕のと代えてくれ。

「よう」

「こんちわ」

「ん?」

と、僕達は挨拶した。

「そいつ、ルビーっていうのか?」

「ああ、こいつは『カーバンクル』のルビー」

「『カーバンクル』?」

「伝説上の生き物さ」

「確か、宝石のルビーなんかの、赤い宝石に宿る精霊やら妖精、だっけ?」

「ああ、その『カーバンクル』さ」

「よく知ってるな和希」

「まぁ、無駄知識だけは豊富だからネ」

……ルビーは、ユリウス・カエサルの宝石の1つ、ルビーの成分から生まれてる。将に、宝石ルビーの化身、と言う訳か。

「ふーん、伝説かぁ」

「ははは、可愛いね」

『ルビルビ~♪』

「はは、ありがとうってさ。……ところで、それって、ハネクリボー?」

『クリクリ~』

彼が聞くと、ハネクリボーが頷いた。

「それじゃ、君が遊城十代?」

「そうだけど……お前ハネクリボーが見えるのか?」

「はは、十代君、彼にだって精霊が居るんだから、そりゃあ見えるでしょーに」

「あ、そりゃそうか。ははは……」

僕の指摘に、十代君は頭を掻きながら笑う。

「俺には小さい頃から、デュエルモンスターズの精霊が見えるんだ。それは君も同じだろ?」

「ああ、オレもずっと小さい頃から……あれ?」

と、質問された十代君が眉をひそめる。

……彼は、幼い時の彼の精霊の記憶を除去されてしまっている。この質問には答えられないだろう。

……ここは、話題を変えた方がいいかな。

「はは、それにしても、十代君って有名なんだね。ハネクリボーを連れてるだけでわかっちゃうんだからね」

「はは、それは君もだぜ?朝倉和希」

「へ?」

あれ?なんで僕の名前を……?

「さっき、十代が君の名前を言ってただろ?精霊『ハネクリボー』と『ネオス』を仲間に持つ遊城十代と、その友達の朝倉和希は、俺の学校じゃ結構有名だったぜ?」

「マ、マジっすか」

そ、それは嬉しいような、恥ずかしいような。

「ははは、尤も、君は『デュエルアカデミアの危険分子』とか呼ばれてたけどな」

「って、またそれかい!?」

しかも、なんか『デュエルアカデミアの問題児』から更にレベルアップしてるし!?

……なんで僕って、悪評が先行するかなぁ……

「そう言えば和希、君にも精霊の仲間が居るって聞いてたんだけど?」

「うん、居るけど……あれ?」

そう言えば、さっきからどこに……?

……

……ああ、そういう事ね。

『!? ルビー……!』

「? どうしたんだよルビー?」

と、彼の肩に乗っていたルビーが、彼の背後に向けて、毛を逆立てて、威嚇をした。

「?」

気になった彼が後ろを見ると、

『『『『カタカタカタ……』』』』

カタカタ鳴っている骸骨が4つ。

「うわぁ!?」

……ずっとこれを狙ってたのね。



「ははは、はぁー、びっくりした」

「はは、こりゃ、確かに『危険分子』だな」

「ははは、だからごめんてヴぁ」

ワイト達の悪戯に、三人でひとしきり笑った。因みに、当のワイト達は歓迎の高知は室戸市名物シット○ット踊りをしている。……君達はどこぞの南国少年か?

「ところでお前、見た事ない顔だけど、新入生か?」

と、十代君が切り出した。

「へ?……ふっ、まぁそう言われば、新入生かな?」

「そうか、よく来たな、デュエルアカデミアに」

「ようこそ、歓迎するよ」

「ああ、ありがとう」

と、僕達は握手をした。

「……なんか、不思議な感じがする」

「俺もだ。初めて会った気がしないぜ」

「はは、なんか、十代君と初めて会った時を思い出すね」

「そうだな」

本当、彼の言う通り、初対面って感じが全くしない。彼とも、仲良くなれそうだ。

「アニキ!」

「始業式が始まるよ!」

と、階下から剣山君と、オベリスクブルーに昇格した翔君が呼び掛けてきた。

「いけね、忘れてた!」

「はは、すっかり話し込んじゃったね」

「急ぐっス!」

「先に行ってるドン!」

と、二人は教室に向かった。

「じゃあ、オレ行くわ。行くぞ!ハネクリボー!」

『クリクリ~』

「良かったら、後で島を案内するよ。行くよ!ワイト達!」

『『『『カタカタカタ』』』』

「ああ、またな!」

『ルビー!』

僕達は彼に別れを告げ、教室に向かった。



「あ、やべ!」

「? どうしたの?」

と、教室に向かう途中、十代君が急に立ち止まった。

「あいつの名前、聞くの忘れてた」

「あ、そう言えば……」

勿論、僕は原作知識で彼を知っている。その事と、余りに親しみを感じてしまったせいか、すっかり、彼の名前を聞くのを忘れてしまった。

「まぁ、新入生なら、そのうちまた会うんじゃない?」

「……それもそうか、その時に聞きゃいいか。はは、それにしても、精霊が見える新入生だなんて、なんか今年は楽しくなりそうだぜ」

「……そう、だね」

……楽しくなりそう、か……

「? どうしたんだよ和希?」

「……ううん、なんでもない」

……ごめん十代君、今年は、きみにとっては過酷な1年になってしまうかもしれない。

……でも僕は、君を精一杯サポートして、出来る限り、負担が軽くなるよう、努力するよ。

……だからどうか、さっきまでの、楽しそうに笑っていた君のままで居て欲しい……

「ほら、始業式が始まっちゃうよ。早く行こう」

「おう!」

気を取り直して、僕達は教室へと急いだ。

……しかし、彼の声、本当に彼女に似てたな……



教室に着いてから間もなく、鮫島校長の挨拶を皮切りに、始業式が始まった。

僕達は、剣山君が取っておいてくれた席に座った。万丈目君も、真後ろの席だった。

ジェネックス優勝でオベリスクブルーに昇格した万丈目君だったが、大会後、光の結社の拠点となった為に白く塗られていたブルー寮にペンキを塗り直しをオベリスクブルー生徒でやっていたのだが、それをやるのが面倒で、原作通りにオシリスレッドに戻って来た。

まぁ、剣山君の方は相変わらずラーイエローだけど、去年からずっとオシリスレッドの席に居るので、もう違和感は感じない。

「では次に、新入生を代表して、早乙女レイ君に宣誓して貰うのでアール」

「……あいつか」

と、新入生の宣誓時、万丈目君が忌々しそうに言う。

「はは、折角レッドに戻ってきたのに、部屋取られちゃったドン」

「やかましい!」

そう、剣山君の言う通り、レッド寮に造った万丈目君の豪華な部屋は、彼女に半ば強引に奪い取られてしまったのだ。

まぁ、原作と違い……

「……天上院君達も、引き続きあの部屋を使いたいと言ってるんだ。譲らん訳にはいかんだろうが」

そう、去年、ナポレオン教頭がレッド寮を潰そうとした時期からジェネックス大会終了に掛けて、あの部屋を使っていた明日香さん、ジュンコさん、ももえさんの女子三人も、まだあの部屋に居座って居るのだ。

……因みに、これには僕が一枚噛んでいるのだが、その騒動については、また別の機会に。

「お、出てきたザウルス」

と、皆の拍手の中、レイ君が壇上に上がった。

「宣誓!我々新入生は、デュエルアカデミアの規律を守り、デュエリストとしての誇りと、相手へのリスペクトを重んじ、日々精進する事を誓います!新入生代表、早乙女レイ!」

全く臆さないレイ君に感嘆する。肝が据わってると言うか、流石、12歳と最年少なのに、新入生を代表して宣誓するだけの事はある。

そして、レイ君は壇から降りる際、原作通りにしっかりと十代君に向かってウィンクした。

「いい!?」

「ははは、先が思いやられるドン」

「あ、ああ……」

「はは、僕としては楽しみな事この上無いんだけどネ」

「……相変わらず、悪趣味なやつめ」

と、見てみると、オベリスクブルーの席では、隣の翔君が引く程、明日香さんが不機嫌になっている。ふふ、段々と、明日香さんもその気になってきたみたいだなぁ。楽しみ楽しみ。

因みに、皆が拍手している中、僕が調子に乗って指笛を吹くと、流石にレイ君も苦笑していた。

「……!」

「はっ!?」

と、殺気を感じたのでその方向を向くと、案の定、オベリスクブルーの席に居たジュンコさんのキッツい眼差しがこっちに向かっていた。……そのうち、あの目から熱視線でも出て来るんじゃないか?……ワイト達なら余裕で灰に出来そうだ。

「さて、本年度は、デュエルアカデミアの生徒の能力向上を願い、新しい生徒達を向かい入れる事にした」

と、レイ君が席に戻ったのを見計らって、鮫島校長はそう切り出した。

「デュエルの発展を目指すデュエルアカデミアには、世界各地にその分校が点在する。今年は、その首席の生徒達を、我が学園に向かい入れる事にした」

「それって、各デュエルアカデミアのチャンピオンって事ザウルス!?」

「凄ぇ!そんなやつらが来てるのかよ!?」

十代君が目を輝かせる。まぁ、気持ちは分かんなくもない。僕も、原作3年目に出ていた彼らが来ると思うと、ワクワクする。

「では紹介しよう。デュエルアカデミアイースト校代表、アモン・ガラム君!」

「ふ……」

赤い短髪を逆立てて眼鏡をかけているアモン君が、柔和に微笑みながら手を挙げ、拍手に応えながら壇上に上がる。

「デュエルアカデミアウェスト校代表、オースチン・オブライエン君!」

「……」

褐色の肌に、団子鼻、そして真一文字な太い唇と、見るからにふてぶてしそうな表情のオブライエン君が、皆の拍手には全く意を介さず、壇上に上がり、休めの態勢を取る。

「デュエルアカデミアサウス校代表、ジム・クロコダイル・クック君!」

「イエーイ!」

カウボーイハットを被り、右目を隠すように包帯を巻いているジム君が、楽しそうな笑みを浮かべながら、彼のファミリー、ワニのカレンを持ち上げながら壇上に駆けて来る。

「そして、デュエルアカデミアアークティック校代表、ヨハン・アンデルセン君!」

と、鮫島校長が紹介するが……

「む?」

「どうしたノーネ?」

「誰も来ないでアール」

そう、誰も壇上に来ない。周りの生徒達もざわめきだした。

「やはり、幽霊か?」

と、壇上のアモン君が呟く。そう言えば原作で、彼はこの島に来る途中のフェリーで、姿の見えないヨハン君の事を『ゴースト』って呼んでたっけ。

「ヨハン?ヨハン・アンデルセン!?まさか、『宝玉獣』デッキを持つヨハンか!?」

と、ヨハン君の名前を聴き、万丈目君が呟いた。

「知ってるザウルス?万丈目先輩?」

「……かつて万丈目グループは、あらゆる財力を使い、インダストリアル・イリュージョン社から『宝玉獣』のカードを買い上げようとした事があった」

「……万丈目先輩、まだそんな事を……」

「ずっと前の話だ!」

「ははは、『我(おれ)はともかく我の財力を侮るなよ!』ってやつ?」

「どこの慢心王だ!と言うのか俺も侮るな!」 

「ははは……そう言えば和希も、社長さんに会った時に『宝玉獣』について言ってたよな」

「そう言えば言ってたね」

僕は剣山君に、以前十代君にしたのと同じように『宝玉獣』の説明をした。

「噂によれば、ペガサスはそのカードを金では売らず、ある大会優勝者に渡した。そのデュエリストが、ヨハン・アンデルセンだ」

僕の説明に続けるように、万丈目君が締める。

「……なぁ、和希」

「ん?」

と、十代君が尋ねてきた。

「さっきの屋上のあいつの精霊、カーバンクルって、確か宝石の精霊、なんだよな?」

「……そうだね」

「それじゃ、もしかしたらあいつが?」

おお!?原作では気付いてなかったのに気付いた!

……そう言えば、原作では十代君はカーバンクルが何か知らなかったもんなぁ。……「カーバンクル?」「伝説上の生き物さ」「伝説って?」「ああ、……それってハネクリボー?」……と、質問を質問で返すという、「おっと会話が成り立たないアホがひとり登場~。質問文に対し質問文で答えるとテスト0点なの知ってたか?マヌケ」と某カウボーイが言いそうな会話によって。これぞ所謂『言葉のドッジボール』。

と、その時、教室のドアが開いた。

そして、このタイミングで現れるのは勿論……

「デュエルアカデミアよ!俺は帰ってきたァ!」

「って違!?」

某ソ○モンの悪夢さんのような登場をした三沢君に、思わずツッコんだ。ここは彼じゃ無いんかい!?

……つーか三沢君、確か君、原作ではあのツバインシュタイン博士の助手になって、今頃は実験事故で異世界に飛ばされちゃったんじゃなかったっけ?……こっちの世界では、博士の助手になったのでは無く、あくまで長期休暇を利用して、彼の理論を勉強しに行ってただけだけど。

「三沢!帰ってきてたのか?」

「ああ、ツバインシュタイン博士の理論を頭に詰め込めるだけ詰め込んで来た。ふふふ、今の俺なら烈○王にも勝てる!」

「……何で勝つつもりドン」

僕がフリーズしている間に、近くまで来た三沢君に十代君が話し掛けていた。

「? どうしたんだ和希?」

と、その表情を読んだのか、三沢君が話し掛けてきた。

「あ、いや、なんでもない。三沢君、元気だった?」

「ああ、実験事故に巻き込まれそうになった事もあったが、特に大事は無い」

……そうか、原作と違って実験事故は回避したんだ。本来なら原作通りじゃ無くてマズいんだろうけど、まぁ、博士の理論を勉強していたのなら、今後、彼の知識が必要になって来る場面でも、問題無いか。

……まぁ、何より、

「はは、そりゃ良かった。お帰り三沢君」

「はは、おう、ただいま」

友達として、彼が無事だったのは喜ばしいや。

「それにしても遅れてしまったな。ま、そのお陰で、迷子を一人案内出来たけどな」

「迷子?」

と、十代君が聞き返したその時、再び教室のドアが開いた。

「いやー、遅れた遅れた。俺、方向音痴だからさ」

と、入って来たのは、さっきの緑髪の彼だった。

「サンキュー三沢、助かったぜ」

「はは、礼には及ばないさ。三沢大地はクールに去るぜ」

と、三沢君はからから笑いながら、ラーイエローの席に向かった。

「ははは、面白い奴だな」

「……面白くなり過ぎザウルス」

彼の感想に、剣山君が一人ごちる。

「よう!新入生!」

「やっほー、さっきぶり」

「よう!」

と、さっき会ってる僕と十代君は気軽に挨拶した。

「なぁ、もしかしてアークティック校のヨハンってお前の事か?」

「あれ、知ってたのか?俺の事」

と、いきなりの話題の人の登場に、周りがざわめいた。

「まぁ、今話になってたからね。あと、ルビーが何の精霊かを重ねて考えれば、ね」

……まぁ勿論、それ以前に原作知識もあるのだが。

「へぇ、鋭いんだな。悪ぃ、別に騙すつもりじゃ無かったんだけど、勝手に新入生と勘違いされちゃったからさ」

「そうだったのか」

「では、改めて紹介しよう。アークティック校代表、ヨハン・アンデルセン君!」

先程の三人同様に、壇上に上がったヨハン君にも、皆から拍手が贈られた。

「ちゃんと正体があったな」

「ん?」

と、ヨハン君は壇上のアモン君と握手し、

「やあ、君がヨハンか。ハロー、マイフレンド」

と、ジム君とも握手したが、

「グルル……」

「いい!?」

彼の背負っていたカレンのうなり声に、思わず顔を引き吊らせた。

「あのワニ、生きてるノーネ!?」

「でアール!?」

クロノス教諭とナポレオン教頭の声に、皆がざわつく。どうやら、皆もカレンが人形か何かだと思っていたみたいだ。

と、壇上の、もう一人の新顔が前に出た。

「そして、もう1人紹介しよう。今年、特別講師としてウェスト校から赴任した、プロフェッサー・コブラ!」

……どう見ても教師とは思えない逞しい体格に、ノーチラスポセ○ドンの角のような尖った髪、そして何より、その名の通り蛇のような油断のならない目と、物々しさ満載のその姿に、周りのざわめきが消える。

「こんにちは諸君、本来ならここで、延々と挨拶でも述べるとけろだが、そんな物を聞いても君達の足しにはならん。下らない話よりも実戦あるのみ、それが私の方針だ」

……愛想0である。……て言うか、あなたが『実戦』とか言うとそれっぽ過ぎです。……「今から皆さんに殺し合いをしてもらいます」ってか?

「早速、その方針にのっとり、エキシビジョンマッチを執り行う!」

「な!?」

「エキシビジョンマッチ!?」 

「そんな話は聞いてないノーネ!?」

鮫島校長を始め、先生陣が驚愕の声を上げる。勿論、周りの生徒達も同様だ。

「対戦者は、私の独断で決める。一人目はヨハン・アンデルセン!」

「俺?」

「そして対するは……」

「ふ、当然……」

と、万丈目君が立ち上がるが……

「遊城十代!」

「ずこー!?」

……やっぱし。

「よっしゃあ!新学期早々、伝説のカードと対戦出来るなんて、ラッキー!」

勿論、十代君はやる気満々だ。

「ぐ、何故だ、何故俺じゃないんだ……!」

と、ひっくり返った万丈目君が復活した。

『まぁまぁ、アニキ、落ち着いてーん』

「俺はジェネックス優勝者だぞ!?」

「「まぁまぁ」」

と、息巻く万丈目君を、おジャマイエローや剣山君、十代君が宥める。

……まぁ、当然だろう。プロフェッサー・コブラの裏には『彼』(『彼女』?)が居る。『彼』は十代君に対して、歪んだ愛情を抱いている。その尖兵であるプロフェッサー・コブラは当然、十代君を選ぶだろう。

「二人共、右手を前に」

と、壇上に上がった十代君とヨハン君の右手首に、プロフェッサー・コブラが機械式の腕輪を着ける。

「なんだこれ?」

「新学期を祝して、私からの贈り物だ」

……あの腕輪、デスベルトこそ、これ以後、十代君達を苦しめる代物だ。

……出来れば、あれを着けるのを阻止したかったが、それでは、僕がどうやってあの腕輪の事を知っているのか説明が出来ない。……くっ、ここは黙って見ているしかない……

「では、1時間後にデュエルを開始する!」






……デュエルは、十代君のネオ・スペーシアンとヨハン君の宝玉獣との一進一退の激しい攻防だった。

特に、原作でも感じていたが、ヨハン君と精霊である宝玉獣達との絆はこの上無く固い物で、将に『家族』という表現がピッタリだった。

そして、その最終局面、

「これでオレの勝ちだ!行け!『エアー・ネオス』!『スカイリップ・ウィング』!」

十代君が、トドメの一撃を決めようとした。

だが、

「それはどうかな!」

「っ!?」

「忘れてるぜ。俺がまだ、エースカードを出してない事を!」

「なに!?」

「このタイミングで呼び出せると言うのか!?『レインボー・ドラゴン』を!?」

途中から観戦に参加していたエド君が驚愕の声を上げる。

「7体の『宝玉獣』がそろった時、世界を繋ぐ光がこの地に蘇る!見ろ!『宝玉獣』の軌跡!」

と、ヨハン君がフィールド魔法『虹の古代都市-レインボー・ルイン』の空を指差すと、ヨハン君のフィールドと墓地の宝玉獣達が7色の光を空に向かって放ち……

「虹!?」

十代君の言う通り、澄み切った空に美しい虹を作り出した。

「蘇れ!『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』!」

ヨハン君の呼び掛けに、巨大な龍の姿が、その虹の中に映し出された。

たが、

「『レインボー・ドラゴン』……!」

「……なんちって」

「へ?」

やがてその虹は消え、それと共に龍も姿を消し、結果、ヨハン君のフィールドは先程と何も変わっていなかった。

そして、『E・HERO エアー・ネオス』の攻撃が『宝玉獣 アンバー・マンモス』に直撃し、

「うぁ……」

……ヨハン君のライフは0になった。

「痛てて……」

「おいおい、『レインボー・ドラゴン』は?」

「いや、そのなんだ、『レインボー・ドラゴン』はまだ俺のデッキに無いんだな。ははは……」

「はははって……」

その後、ヨハン君は説明した。『レインボー・ドラゴン』のカードを創る為に必要な、ユリウス・カエサルが件の7つの宝石をはめ込むのに作った石板が、まだ見つかっておらず、それさえ見つければ、ペガサスさんが創ってくれると約束したのだ。

そして、恐らく原作通り、今は使われてない、あのSAL事サルの研究所に向かっていたのだろう、このエキシビジョンマッチの提案者なのに途中から現れたプロフェッサー・コブラが、表面上は二人を誉めながらデュエル上に上がった。

そして、

「ここに、全学年参加の『デスクロージャーデュエル』の開催を宣言する!!」
 
一連の事件の発端となる、サバイバルが開催された。

デスクロージャーデュエル、通称デスデュエル。

建前は、デュエリストの戦術や戦績を分析し、その生徒の能力を測るという物であり、その測定にあのデスベルトが必要であるという物だった。

だが、それは真っ赤な嘘であり、デスベルトは、デュエリストがデュエルの際に発生させるエネルギー、デュエルエナジーを集める為の物であり、収集の度合いによっては、そのデュエリストは命に危険が及ぶ程に衰弱してしまう。デスデュエルは、ある目的の為に、生徒達のデュエルエナジーを収集するのが目的なのだ。

……恐らく、数日後には全校生徒にデスベルトが渡される筈。さて、どうするか……

「……希、和希」

「んぁ?」

「どうしたんだよ?ボーっとして」

「ん?……はは、いや、何でもない。ちょい考え事」

デュエル後、僕は十代君とヨハン君に連れられて、西日が赤くなりだした屋上で、さっきのデュエルを振り返っていた。

「ほら、このターンはさ、こうして、こうした方が良かったんじゃないか?」

「本当はそうしたかったんだけどさ、俺はこっちを狙った訳」

「成る程な」

「それより、お前のこのターンだけど……」

……楽しそうに話すデュエルお馬鹿二人を見て、僕は苦笑する。……全く、こっちの気も知らないで。

「和希、この場面で、お前だったらどうする?」

「俺ならこうで、十代だったらこうなんだけど、第三者から見たらどうだ?」

「んー、そうだね……」

……でも、逆に考えれば、上手く行けば、一連の騒動が終わっても、この光景を目にする事が出来るかもしれない。

……悲観的に考えてもしょうがない。僕はただ、最善を尽くすのみ。それでも及ばなかったら、その時はその時だ。



『ククククク……』



「え……」

と、背後から、誰かの笑い声がした……気がした。

でも、後ろを振り返っても、屋上には僕達以外にはもう誰も居なかった。

……空耳か?

「おーい、和希」

「あ、ごめんごめん。えーとこの場面は……」

……画して、様々な思いを胸に、僕は3年目初日を、2人と楽しく過ごした。



今日のワイトその1(島案内時)



「あ、こんにちは」

「……ちっ」

と、始業式の翌日、僕と十代君でヨハン君に島を案内していると、散歩していたカミューラさんに会った。……出会い頭に舌打ちされたけど。

「よ、カミューラ」

十代君が気楽に声をかける。ジェネックスで協力してくれた彼女に、十代君は特にもう警戒をしていなかった。

因みに、その時の約束、協力してくれたら、プロリーグに推薦するという話だったが、

「面倒くさいから保留」

という事になり、今でもこの島に居着いている。

因みに、校長の知り合いという形になっており、あの露出度の高いドレスも着ていない為、今の所は、特に生徒達との問題も起こってない。

「……何か用?」

「あ、いや別に。今は彼に島を案内していた所で……」

「……私を見つけたから、ただ挨拶しただけ、って訳?」

「はは、そんな所です」

「……そんな事をする物好きはあなたぐらいよ」

「むぅ、知り合いに会ったら挨拶、これ礼儀ですよ?」

「……前々から思ってたけど、あなたってどこかズレてない?」

「ははは、よく言われますヨ」

僕が笑うと、カミューラさんは頭痛を堪えるように頭を抑えた。

「……用がないなら行くわよ?」

「あ、はい、じゃあまた」

「……じゃあね」

と、カミューラさんは立ち去った。

「……誰だ?今の人」

「あいつはカミューラっていうんだ」

「ふーん……」

「ははは、ヨハン君は美人のお姉さんに興味津々?」

「ち、違ぇよ。ただ、なんか他人の気がしなかったて言うか……」

「……なんじゃそりゃ」

「……」

……ツ、ツッコミたいけどツッコめない……!



今日のワイトその2(部屋争奪時)



「ここは俺の部屋だ!」

「何よ!レディファーストを知らないの!?」

「ははは、いいぞもっとやれー」

「……なんでこの状況で、そんな楽しそうに笑ってるんスか」

レイ君の先行入学が決まってから、万丈目君とレイ君は、万丈目君の部屋を取り合って、こんな感じで争っていた。

「先輩、笑ってないで、なんか解決案を考えるドン」

「えー、折角面白いのに……」

……ん?待てよ……

「……ふふふ、うん、いいよ。良い案があるヨ」

「……またろくでもない事考えてるドン」

「……この場面で和希君が『解決案』なんて考える訳ないっス」

僕は、まだ言い合いをしている二人に、

「まぁまぁご両人」

「む……」

「先輩?」

「ひとーつ、贔屓は絶対せず!ふたーつ、不正は見逃さず! みっつ、見事にジャッジする!キャプテン・アサクーラ只今参上!この勝負、僕が預かる!」

「……キ○プテン・トンボーグっスか?」

「ははは、僕に良い代換え案があるんだけど、どうカナ?」

「「代換え案?」」

「そうそう、まず第一に、この部屋は万丈目君が使う」

「ふ、当然だな」

「えー」

僕の提案に、万丈目君が満足げに頷き、レイ君が頬を膨らます。

「んでもって、翔君や剣山君、僕も、この部屋に移る」

「「は?」」

僕の更なる提案に、二人が首を傾ける。……ふふふ、そしてオチは……

「で、仕上げに、僕達の代わりに、レイ君が僕達の部屋に入る、と」

「な!?」

「そ、それって……」

「ははは、つまり、十代君とレイ君の二人であの部屋に……」

「「えー!?」」

十代君とレイ君が驚愕の声を上げた。

「ちょ、ちょっと待てよ和希!さ、流石にそれはヤバいだろ!?」

「ははは、でも、2年前だって、一時的に同じ部屋だったじゃない」

「そ、そりゃそうだけどよ……お、おい、レイも何とか……」

「……良い」

「へ……」

「良いよ!それ最高だよ先輩!」

「いい!?」

「そうだよね!2年前だって同じ部屋だったんだし、今回も同じ部屋でも……!」

「か、勘弁してくれぇ!?」

「ははははは……」

ノリノリなレイ君とたじたじな十代君に、僕は腹を抱えて笑った。

と、

ポンッ

「へ?」

後ろから、僕の肩に手がかけられ……

ミシッ

「あぎゃぁ!?」

肉がもげんばかりに掴まれた。

「朝倉、不純異性交遊って知ってるかしら?」

見ると、いつから居たのか、青筋付きのステキな笑みを浮かべた明日香さんがいらっしゃった。

「いだだだだ!?ちょ、一言反論を……」

「……何かしら?」

……今までの経験から、多分助かりそうにないので、これだけは言ってこう……

「レ、レイ君のラブは不純ではないかと……」

「……で?」

「……以上デス」

「あ、そう」

ぎゃーっす……!

「……結局、掻き乱すだけ掻き乱したっスね」

「……よっつ、容赦はせずに制裁……ドン」

その後、明日香さんの鶴の一声で、万丈目君は強制的に僕達の部屋に移され、レイ君が万丈目君の部屋を使用、そして、『不純異性交遊を阻止する』という名目の下、明日香さんやジュンコさん、ももえさんも、あの部屋を使う事になったのだった。

「……ま、いいか、もう21世紀だし」

「良くない!」



今日のワイト3(呼び方)



「……って言うか、なんでアンタいつの間にももえの事を名前呼びにしてるのよ!」

「……なんでそんな不機嫌なのかわかんないけど、ももえさんに、『もう会ってから3年も経った上、ジュンコさんはともかく明日香様やレイさんまで名前呼びなのに、わたくしだけ名字呼びは、なんだか気分悪いですわ』って言われてね」

「……ふーん?」

「あ、あと、『ちょっとは危機感を感じて欲しいですわ』とも言ってたっけ」

「ももえー!!」

「ちょ!?なんで僕の首を絞めごひゅ!?」



あとがき

どうも、最近オチるスレを見たら、この作品が『万能地雷』と評価されていて少々へこんだ八王夜です。……ちくしょう、巧い表現しやがる(オイ

この場を借りて、その方にお詫び申し上げます。もし、この作品を期待して見ていただいて、それでいてご期待に添えられなかったのであれば、本当に申し訳ありませんでした。つきましては、感想にて、どういった所が地雷であったのか、差し支えなければ書いていただければ幸いです。こちらの方で、出来うる限りご期待に添えられるよう努力致します。

えー、その他板での初投稿なのにデュエルが無くて申し訳ありません(汗 やっぱりここは、十代君にやって貰いたかった場面なので。……と言うより、もしかしたら第3期は結構デュエルが少なくなってしまうかもしれません(オイ 何せ、途中からRPGみたいなものなので(汗

では、また次回

PS①,……プロフェッサー・コブラの髪型を表現するのに、なんでこんな表現を……(滝汗

PS②,前回予告していました、『ベビー・トラゴン』搭載型ワイトデッキの構想図を書きます。何か指摘、意見があれば感想に書いていただければ幸いです。ただし、例によってネタバレ要素ありなのでご注意ください











下級モンスター×29

ワイト×3
ワイト夫人×3
ワイトキング×3
ワイトメア×3
魔導雑貨商人×3
ゾンビ・マスター×2
カード・ガンナー×2
ライトロード・ハンターライコウ×2
ゴブリン・ゾンビ×2
金華猫×2
ダーク・グレファー×1
メタモルポット×1
スナイプストーカー×1
馬頭鬼×1

魔法×6

地獄の暴走召喚×2
生者の書-禁断の呪術-×1
ワン・フォー・ワン×1
手札抹殺×1
闇の誘惑×1

罠×5

王宮のお触れ×2
リビングデッドの呼び声×1
激流葬×1
超古代生物の墓場×1

エクストラ×3

ベビー・トラゴン×3


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