マルセル盗難事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マルセル盗難事件(まるせるとうなんじけん)とは1968年に発生した美術絵画品盗難事件。
概要
京都国立近代美術館で1968年11月4日から開催中の「ロートレック展」が催されていたが、12月27日にフランスの画家であるアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの油彩絵画『マルセル』(当時価3500万円相当)が姿を消した。この絵画はフランスの美術館が所蔵しているものであり、フランス文化省の好意により、今回初めて日本の展覧会に貸し出されたものであった。当時は史上最大の美術品盗難事件であった。
12月28日、主催者であった読売新聞社などが発見者や情報提供者に1000万円の懸賞金を送ると発表。美術館館長は辞意を表明。翌1969年1月4日、事件当日の当直守衛(55歳男性)が自宅で自殺。自殺した守衛は郷土史家としても知られていた。
その後で美術館から南へ150メートルの疏水のほとりで、絵画『マルセル』の額縁と犯人のものらしい足跡が発見された。警察は延べ4万7000人の捜査員を動員して、7000人をリストアップ。額縁発見現場で目撃された男のモンタージュ写真が公開され、ポリグラフ(うそ発見器)にかけられた者もいた。しかし、絵画『マルセル』は発見されないまま1975年12月27日に窃盗罪の公訴時効が成立した。
ところが翌年1976年1月29日、大阪に住む会社員夫婦が知人である学校教師から風呂敷に包まれた状態で2年前から預かっていた保管物を開けてみて、盗難された絵画『マルセル』ではないかとして新聞社に連絡をした。鑑定の結果、絵画は本物であることが判明した。
夫婦や学校教師を調べようとするが、公訴時効を迎えているために難航。民事時効はまだ成立していなかったが、学校教師は自分も中身を知らずに友人から預かったとしか答えず、友人の名前は一切出さなかった。結局、誰が絵画を盗んだのかという事件の真相は分からないままとなり、未解決事件となった。
発見された絵画『マルセル』は無事にフランスへ返還された。
その他
- この事件が起こる少し前の1968年12月10日に東京都府中市で現金輸送車から約3億円が強奪される三億円事件が発生した。この事件は日本で発生した現金強奪事件としては当時の最高額だったが、同じく未解決事件となっている。