韓国企業を育てる「ソニーの革命家」(上)
「世界のIT産業の中心的な競争力は、大量生産能力から大量の情報処理能力へと変わりつつある。韓国の半導体産業は、人件費が安い中国、あるいはドバイに流出してしまうかもしれない。韓国はアップルより先行できる市場に挑戦すべき時がやって来た」
「ソニーの革命家」と呼ばれるソニー・コンピュータエンタテインメントの久夛良木健・元名誉会長は、IT産業界では屈指の経営の大家だ。1993年、同氏は社内の反対を押し切り、ゲーム機「プレイステーション」事業を立ち上げ、売り上げ8300億円を記録するゲーム事業に育て上げた。プレイステーションのシリーズ製品は94年以降、世界で3億4000万台が売れた。「サムスン電子が世界第一の半導体企業になる」「インターネットでゲーム機を相互につないで楽しむ時代が訪れる」となど、久夛良木氏が90年代に示した予測は大半が現実のものとなった。
久夛良木氏は今、韓国に目を向けている。先月28日、ソニーのゲーム事業部門の名誉会長を退任した同氏は最近、東京で記者と会い「投資ファンドの誘いで、コンサルティングを通じ、韓国企業の競争力を高める仕事を引き受けた」と語った。久夛良木氏は米国・東南アジアの投資家が創設した8000億ウォン(約610億円)規模の韓国企業投資ファンド「ハン・アンド・カンパニー・ファンド」の最高経営諮問委員に就任した。尹女乙(ユン・ヨウル)元ソニーコリア、ハン・サンウォン元モルガン・スタンレー・アジア私募ファンド最高投資責任者らが投資を実行し、久夛良木氏は投資先の選定、投資企業の経営改善に向けたコンサルティングを行うというポストだ。
久夛良木氏は「最近のIT産業は激変しており、韓国、以前には日本が誇った『大量投資、大量生産を通じた市場掌握』の時代は過ぎ去ろうとしている」と話した。個人がパソコンや携帯電話の端末にファイルを保存せず、データセンターに保存したデータを必要な時に呼び出す「クラウド・コンピューティング」が代表的な例だ。久夛良木氏は「インターネットが発達し、数多くの個人情報が端末の代わりに、グーグルやアップルのサーバーやデータセンターで統合処理されるようになっている。IT機器・部品市場は以前のようには成長しにくい」と指摘した。消費者がさらに性能の良い機械を大量に購入する理由が減っているということだ。