|
きょうのコラム「時鐘」 2011年7月12日
高い木に登ったまま降りられなくなった猫を救出するため木を切り倒したとの話題があった。上に登るのは簡単。下に降りるのは難しいということか
米スペースシャトルが最後の飛行を続けている。宇宙から帰還できる機能は人類が生み出した最高の科学技術に見える。だが、惜しいかな、費用と安全性の面からは撤退せざるを得ない。よく決断したものだと思う 科学開発は、投資をすればするほど元を取ろうとして中断が難しい。戦争でも投入した犠牲が大きいほど撤退しにくいという。「井戸を掘りてあと一寸で出る水を掘らずに出ぬという人ぞ憂(う)き」ともいう。それまでの努力を水の泡にしたくない、あと少しの努力で成功すると思えば欲も出る 撤退は前進する以上の勇気がいる。だが、自信をもって開発した製品が不完全であり、メリットに疑問符がつけば、撤退か作戦変更かの決断が迫られる。これまでの投資金額や努力の量以上に大切なのは、これからのことである。躊躇(ちゅうちょ)すれば犠牲が増えるばかりだ 時間をかけて撤収作戦を展開中の米のシャトルは、日本の原発の明日を思い起こさせる。 |