特集

震災せんだい−3.11記憶と一歩
関連リンク
関連機関

(2)仙台・荒浜の狐塚/使者の休憩所、ほぼ無傷

津波の被害を免れた狐塚。近くには浸水の跡が残る=仙台市若林区荒浜

「おキツネ様の休憩所」と伝えられるほこらと鳥居

 3月11日の大津波で壊滅的な被害を受けた仙台市若林区の荒浜地区。ここに古くから伝わる「狐塚」が、ほぼ無傷の状態で残っている。

<周りに浸水の跡>
 狐塚があるのは、海岸から約1キロ離れた田んぼの中。すぐそばを県道塩釜亘理線が通る。こんもりと1.5メートルほど周囲より高く、ほこらと小さな鳥居を松が取り囲む。地元には、竹駒神社(岩沼市)と塩釜神社(塩釜市)を往来する「おキツネ様の休憩所」と伝えられてきた。
 狐塚の周りは浸水した跡が残り、倒れた木が転がる。狐塚より400メートルほど海に近い市消防局荒浜航空分署の屋上に避難したという消防署員は「北東から津波が流れ込み、狐塚の辺りものみこんだはずだ」と、その日を思い返す。

<所有男性犠牲に>
 なのに、何事もなかったかのように姿を保つほこらや鳥居。住民の間では以前から、この周辺は交通事故が多い場所として知られてきた。
 荒浜北町内会の早坂勝良会長(70)は「航空分署が盾のようになったのかもしれないが、被害がほとんど無いように見える。交通事故が多かったことといい、不思議な感じがする」と住民の気持ちを代弁する。
 狐塚の土地を所有する男性は、仕事中に車ごと津波に流され、犠牲になった。「ほこらは17年ほど前に夫が建てた。丁寧に手入れをしてきたほこらだけが残った。夫は守ってもらえなかった」。男性の妻(67)は、複雑な胸の内を明かした。


2011年05月26日木曜日

Ads by Google

△先頭に戻る