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[28762] 《習作》花が散りました・オリジナル
Name: 試し◆34681328 ID:e9acb0f3
Date: 2011/07/10 00:43
『僕の願いはただ一つです。告げた人全ての人に、いえ、全ての種族に無理だと否定され
 それでもなお諦めきれなかった願い。それを叶えるために僕は旅を続けているのです。』



月が赤く染まってしまったその世界で。
出会ったお前は言っていた。
だから。


「さあ、述べるがよい。そなたの望みとやらはなんだ?」
「僕の…、いや、この俺の望みは--」


あの日。
いつもと変わらぬ平凡な日々を過ごしていた俺が
何のイタズラか、この世界へと魂だけで飛ばされてしまった。
全ての生物が俺の存在に気付かず、絶望に染まりかけた時に
お前だけが俺に気付いてくれた。

一緒に過ごせたのはほんの数日だけ。
けれどその間に、お前は多くのことを教えてくれた。

そして、その命が…魂が尽きるその時。
俺へとその肉体をくれたお前のために。

たった一度だけ弱音を吐いたお前が打ち明けてくれた切なる誓いを。願いを。
俺は守り、必ず叶えると、決めたのだ。


「月を。あの赤い月を碧く、してほしい。それだけだ。」
「ほう?そなた、それが何を意味しているのか分かっておるのか?」


『あの仄かに赤い月。あれは本来、あんな色では無かったのです。
 むしろ、正反対と言ってもいいほど碧い時もあったくらいです。』
(青…?)
『いえ、碧、です。その碧い月の光によって育つ花がありました。
 僕はそれをもう一度この世界で咲かせたい。』
(どうしてだ?)
『それはですね…秘密です。』


「あぁ。分かっている。十分すぎるほどに分かっているとも。」


笑うだろうか?
俺が、この俺がお前の願いを叶えるために生きるなんて。

知っている。
お前がこの世界に絶望していたことも。


「そうか。まあわらわには関係ないことだがな。」


知っている。
お前が死に場所を探していたことも。


「では始めるぞ。そなたは、ほんに…哀れよの。」


知っている。
知ってしまった。
お前の願いが何を指したものなのか。

けれど、しょうがないだろう?
お前にとって生きづらくなってしまったこの世界は
俺にも生きづらいものなのだから。


「赤き月の精として産み落とされた忌み子よ。
 世界を混沌に陥れたあの者が作り出したまがい物の世界の理よ。
 そなたの肉体を持って、今再び世界に---」


碧き花が咲いていた場所には
今赤き花が咲いている。
それは、誰にも変えられない悪夢の象徴…だった。

赤い、花が、散る。


「静寂を。」


あぁ。あぁ!ようやく。
ようやく終わる。分かっているとも。
碧い月が復活する…それすなわち、この肉体が滅ぶということを。

知ってしまったのだ。
お前の願い、碧い花を再び咲かせること。
それは自身を犠牲にしてまでもの世界の平和。
それが本当の願いではなく、それすらも嘘で。

本当は。


「なあ、お前は。ただ笑顔を。感謝を、純粋なまでの好意を向けられたかったんだよな。
 もう一つの悪夢の象徴として嫌われるのではなく、世界を救った優しい精霊として。
 本物の精霊と同じように、ひたすらに慈愛に溢れた存在として。」


寂しいまでのその考えは、その時点ですでに望む者の考え方ではなかった。
でも誰にも告げさえしなければ、それは知られることはない。
そうして成し遂げたこの行動を知るものにはひっそりと、心優しき精霊として思われる。

滑稽で、それでいて物悲しい。


赤き花が散る。

それは赤い月の世界の終わり。


「ありがとう。俺の願いを叶えてくれて。」
「ふん。礼などいらぬ。むしろ、世界が変わるのはわらわも望むこと。」
「だろうな。だが、それでも…ありがとう。」


そして最後の赤が散る。
赤い月の精霊の、命の花が。散っていく。

それは碧い月の世界の始まり。
静寂の世界の…始まり。


END





ここまで読んでいただきありがとうございます。
お試しもお試し、思いつくままに打ったもので
もう小説と呼べん感じが…。
どんまい。自分w文の読みやすさ的にはどうだろうか…


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