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'11/7/10

風力発電 中国地方で足踏み



 再生可能エネルギーとして期待される風力発電の設置が、中国地方で足踏みしている。中国地方は山陰を中心に全国でも有数の風力発電地域だが、2010年度に新たな運転開始はなく、11年度も予定がない。採算性、騒音、景観への影響などをクリアする適地が少なくなってきており、国が建設の補助金を打ち切ったことも響いている。

 「いい風が吹いても山の上だと資材を運ぶのが大変。風車を建てる場所は限られている」。中国ウィンドパワー(浜田市)の矢口伸二社長は候補地が狭まる現状を説明する。

 同社は浜田、益田市などに計3カ所の風力発電所を持つが、09年以降は新設が止まっている。大田、江津市での建設計画は採算などを考慮して中止した。発電には風車のほか送電線、鉄塔などが必要。電力会社の送電線が遠いとコストが増す。「採算が合わない発電はできない」と矢口社長は話す。

 地元住民の理解にも時間がかかる。長門市では電源開発(東京)が、風車19基(出力3万8千キロワット)のことし3月の稼働を目指していた。しかし「風車の騒音や低周波が健康に影響を与えるとして、住民が建設に反対している」(長門市)ため、着工できていない。

 島根県が2009年、江津市に建設した江津高野山風力発電所では、住民が騒音被害を訴えている。

 グリーンパワーインベストメント(東京)がことし12月に浜田市で稼働予定だった発電所も、着工が延期されている。風車29基(出力4万8千キロワット)を計画したが、建設費の3分の1を補助する国の制度が10年度で終わり、計画をストップした。

 「全て自前でやったら採算が合わない」と明治博之開発部長。国会で審議されている、電力会社が再生可能エネルギーを固定価格で買い取る制度の行方を注視している。

【写真説明】風車が並ぶ江津高野山風力発電所。一部住民が騒音被害を訴えている=江津市(撮影・福井宏史)




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