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2011年7月11日0時35分

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日航機事故遺族、作家提訴の構え 「手記と表現酷似」

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写真:1996年に出版された「雪解けの尾根」と、2010年8月出版の「風にそよぐ墓標」拡大1996年に出版された「雪解けの尾根」と、2010年8月出版の「風にそよぐ墓標」

 日本航空ジャンボ機墜落事故を題材に、ノンフィクション作家・門田隆将氏が昨年出版した「風にそよぐ墓標」(集英社)の複数の記述が、1996年に出版された遺族の手記(著書)に酷似していることがわかった。

 門田氏側は「承諾を得て参考にした。盗用ではない」としているが、遺族側は「承諾していない」と抗議。著作権を侵害されたとして訴訟を起こす構えだ。

 抗議しているのは、事故で夫を亡くした大阪府茨木市の池田知加恵さん(78)。事故から11年後の96年に「雪解けの尾根」(ほおずき書籍)を出版。一方、「風に――」は昨年夏、門田氏が複数の遺族を取材して出版した。

 池田さん側が「酷似」と指摘するのは計26カ所。たとえば池田さんの家族を取り上げた部分で「不安と疲労のために、家族たちは“敗残兵”のようにバスから降り立った」という記述は、「雪解けの尾根」の「みなさすがに不安と疲労の色濃く、敗残兵のようにバスから降り立った」と似通っている。

 池田さんは「敗残兵という表現は、戦争を体験した世代で、かつその場にいた遺族だからこそ発することのできた固有の表現。著書に記した言葉は、苦悩の中で紡ぎ上げたもので、盗用は許されない」と話す。

 門田氏は執筆に際し、池田さんから約4時間取材し、サイン入りの著書、当時のニュース映像を収録したDVDなど複数の資料提供も受けた。池田さんは「事実関係を整理する参考にと本を渡したが、表現を使っていいとは一切認めていない」としている。

 門田氏は「本人に長時間取材し、提供されたサイン入りの本を、本人承諾の上で参考文献として巻末に明記し、参考にした。それを後になって著作権侵害とは、ただただ驚きだ。これが問題となるなら、日本のノンフィクションは成り立たない」と話している。

 門田氏は事件や歴史など幅広いテーマで執筆をしており、NHKのドラマ「フルスイング」の原案になった「甲子園への遺言」(講談社)、光市母子殺害事件の遺族を描いた「なぜ君は絶望と闘えたのか」(新潮社)、元陸軍中将・根本博の人生をたどった「この命、義に捧ぐ」(集英社)などがある。

 集英社広報室は取材に対し「門田氏が池田氏を取材した際に資料として著書をいただきました。その扱いについて行き違いがあり、協議を重ねてきたところです」とだけ回答した。(佐々木学)

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