3.ど根性もの
(2003/05/23)
風土が生んだ成功物語
劇作家・花登筐(はなとこばこ)の家に、見知らぬ男が朝鮮ニンジンを届けに来るようになって三カ月が過ぎた。気味悪がっていた花登に、男は初めて商社の社長と名乗り「大阪ででっち奉公して成功した自分の話を本にしてほしい」と頼み込んだ。
“ど根性ドラマ”の代表作「どてらい男(やつ)」(関西テレビ、七三―七七年)は、こうして誕生した。
当時のプロデューサー野添泰男(72)=宝塚市=が振り返る。「エピソードを聞いただけで、ドラマ化を決めた」
福井の貧しい農家の二男、山下猛造が、持ち前の根性で、苦難を乗り越え、裸一貫から大商人へとのし上がる。「やったるわい!」の気合とともに。
全国ネットながら当初は、夜十時からの放送。しかし、通称モーヤンの痛快無比の生き方が大反響を呼び、ついに日曜夜九時台のゴールデンタイムへ“出世”を果たす。
山下を演じたのは西郷輝彦(56)。当時、歌手からの脱皮を図ろうとしていた西郷は、旧知の花登に台本を手渡され、すぐさま出演を決める。
「誰にもこの役を渡さない。役者で失敗したときのことなんか考えなかった」。そしてモーヤンさながら、スターダムにのし上がったのだった。
この「どてらい男」の女性版が、同じ花登作の「細うで繁盛記」(読売テレビ、七〇―七三年)だ。大阪の料亭の娘・加代が、嫁ぎ先の伊豆の小旅館を大手に成長させる成功物語。加代をいびる小姑(じゆうと)と、それに耐え、夢に向かう加代のいじらしさに全国が涙し、続編までつくられた。当時のディレクター小泉勲さん(70)は「いびられるときの表情を思い切りアップにした」と語る。
放送中の「あなたの人生お運びします」(TBS)は大阪を舞台にした、成功を夢見る夫婦の物語。植田博樹プロデューサーはいう。「夢を描くには大阪が一番」
先行きの見えない時代。不屈の「ど根性もの」に今、熱い視線が注がれる。(敬称略)
HOME
・
連載TOP
・
「関西素材 関西風味 テレビ50年」目次
2<
3
>4
Copyright(C) 2003 The Kobe Shimbun All Rights Reserved