気仙沼大沢地区の住民 高台へ集団移転
東日本大震災から明日で4カ月。遅々として進まぬ国の復旧・復興策にしびれを切らし、行政の先手を打って地域住民全体で高台への集団移転計画を進めている被災者たちがいる。宮城県気仙沼市の避難所で暮らす熊谷光広さん(44)を中心とする同市唐桑町大沢地区の人たちだ。
津波で流された自宅跡地に立った熊谷さんは語気を強めて言った。
「この地区は震災のあった3月11日から何も変わっていない。見てください。がれきだってあの日のままですよ」。
186世帯の同地区は約8割の144世帯が津波で流失した。死者・行方不明者は40人。避難所には当初約200人が暮らし、現在も約80人が生活している。住民が各地の仮設住宅などに散っていく様子を見た熊谷さんたちは「このままでは自然豊かな故郷が分断されてしまう」と危機感を持った。「安全な高台に集団で移転できないか」。そう考えて住民アンケートを実施。すると、多数の住民が地元に戻り、安全な場所に住みたいと希望していることが分かった。その結果を基に先月、「防災集団移転促進事業期成同盟会」を立ち上げた。設立総会には市長も出席。「帰っぺす、大沢さ」を合言葉にする住民の心情に理解を示した。
9日に行われた役員会では高台の地権者をリストアップした。週明けにも、使用許可を得るための交渉を開始することを確認した。東日本大震災は、移転費や宅地造成費などの4分の3を国、4分の1を市町村が負担する「防災集団移転促進事業」の対象となっており、最終的には熊谷さんたちも、国や市の動きに歩調を合わせることになるが、先手を打って移転に向けた道筋を作っておこうという発想だ。「予算のことで最終的には国の世話になることは分かっている。でも、それからじゃ遅い。ゴーサインが出たときには、すぐに着手できるように準備をしておきたい」。失った日常生活を取り戻し、故郷を守るために、熊谷さんたちは今日も歩を進める。【松本久】
[2011年7月10日9時22分 紙面から]
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