平昌冬季五輪 隣国開催 共に喜びたい(7月10日)
韓国の平昌(ピョンチャン)が2018年冬季オリンピックの開催地に決まった。夏季五輪を除くと札幌、長野に次いでアジアでは3番目になる。
3度目の挑戦だった。過去2回は1回目の投票でトップになりながら過半数をとれず、決選投票で逆転された。それだけに国民の思いも格別なものがあろう。隣国の開催を共に喜びたい。
韓国の周到な準備が実った。欧米に比べて普及が遅れているアジアの冬季競技に「新たな地平線」を切り開きたいと訴えた。04年から始めた企画「ドリーム・プログラム」も各国IOC委員の心をつかんだ。
雪のない国や地域の子供たちに冬のスポーツに親しんでもらおうとの狙いで、50を超す国や地域から約900人を平昌に招いてきた。五輪精神を広げる国際交流と評価された。
国を挙げての招致活動だった。国民の支持率が9割を超えた。浅田真央選手のライバル金妍児(キムヨナ)選手を看板に、李明博(イミョンバク)大統領が各国の委員やトップに直接呼びかけた。
前回のバンクーバー大会でフィギアやスピードスケートなどで金メダル6個を獲得、冬のスポーツへの韓国民の関心も高まってきている。
今後は開催地の面目にかけ底辺拡大と選手強化に乗り出すのだろう。日本も負けてはいられまい。隣国という地の利もある。良きライバルとしてメダル争いに加わりたい。
平昌は江原道(カンウォンド)にあり、ソウルから車で西へ約3時間のリゾート地だ。
日本人になじみは薄いが、「冬のソナタ」の舞台と言えばイメージが浮かぶのではないか。主役の2人が出会いを重ねたスキー場の龍平(ヨンピョン)リゾートは、五輪の中心会場となる。
江原道は豊かな自然に恵まれ、日本海に注ぐ川にはサケが上る。ジャガイモが特産品だ。炭鉱で知られる東海岸の三陟(サムチョク)市と赤平市が友好都市になるなど北海道との縁もある。
「近くて遠い」関係から「近くて近い」隣国同士へ。冬ソナに代表される韓流ブームがそのきっかけを作ったように、五輪が両国民の交流をより深める機会になればと願う。
東西に走る軍事境界線が江原道を南北に分ける。北側は北朝鮮だ。いまも南北100万人もの軍が対峙(たいじ)し、韓国側には朝鮮戦争で北から逃れてきた人々や離散家族が多く住む。
1988年のソウル夏季五輪に北朝鮮は参加しなかった。その前年には大韓航空機爆破事件が起きた。
その後、両国は国連に加盟し、北朝鮮も国際社会の一員に加わったが核問題に解決の兆しは見えない。
五輪開催まで7年。朝鮮半島情勢がどう変化していくか見通しにくいが、平昌五輪が名実共に平和の祭典になることを心から期待したい。