弱虫を捕れる虫あみ夢に見る

前へ行く春の日射しを探すため

草原の風を駿馬が連れてくる

老の母餅切る指に雪あかり

老い二人たまに急須で手が触れる

よみせ行き金魚がかぞくのなかまいり

夏の日にすずしい頂上岩木山

卒園式親になった日思い出す

新巻のあご突き出して吊られけり

余生なほ道草をして帰り花

何色が自分の色かさがす旅

目をこすり返信まってる夏の月

隣の子シャンプー香る冬木立

ひっそりと河童が見上げる梅雨の星

大根を引いたら地球まで笑う

白鳥の飛立った後雪に穴

雨が降り洗濯された桜の木

折り鶴や飛ばんばかりに羽広げ

誰だろう窓を開ければ雪だるま

満月がぽとり落ち来た柚湯かな

もちやいてあみめのこげがあみだくじ

春の風お花をさそって音楽会

雪だるま私の方みてありがとう

せんぷうき告白されても首をふる

目覚ましを自分で起こす師走かな

黒帯を締める重さや初稽古

夏鳥やひと声啼いて森になり

若き日の故郷に錦飾る夢

歌声も母に似てきて雛まつり

サングラス似合はぬ妻を娶りけり

テスト中桜見てたら時間切れ

紅葉の磐梯山はふろ上がり

さくらんぼあなたのママは桜かな

電卓であなたへの想い計算中

誰よりも長湯している紅葉かな

ひゅんと来てひゅんと飛びさる親ツバメ

本読んでもみじしおりに一休み

黄金のイチョウの布団ではしゃぐ子ら

しあわせはお茶の香りの中にある

電話よりメールは優し夫かな

しもばしらはっぱのようにはえてくる

雪雲をかたにかけてる赤城山

吾子の手の強さに驚き春の風

昔はな！父もできたぞ二重とび

草臥れて向こうの山と一休み

初げいこ心も竹刀もまっすぐに

ぎょろぎょろとにらみをきかせるだるま市

漬物の位置を論ずる春うらら

つくしんぼつむじ二つの児と遊ぶ

花みずき山の香りの人と逢ふ

寒げいこ終わったぼくに朝日さす

一年分話を聞いてねお雛様

金木犀午後の教室ふと薫り

ランドセルエールをつめて送り出す

肩車空を吸い込み孫はしゃぐ

えんぴつは削っていくほど赤ちゃんに

かれた木の枝の一つのつぼみあり

自転車でツバメになった下り坂

同窓会初恋の彼雪だるま

元旦の富士の頂き我が希望

逆上がり背中に羽つけもう一度

浅草の北風が押す人力車

素振りするラケットの先蝉時雨

繋がれた手と手で会話大丈夫

名を知れば半歩近づく春の草

満月もお月見だんご食べたそう

今日が去り明日が生まれる地平線

円陣で見渡す友の眉を読む

うららかや爪の小さきピアニスト

茄子漬けの母からもらう仮免許

ぽっかぽか陽気でゆるむぼくとゆき

おはようとすがすがしい風吹きわたる

日記書き閉じたら明日の中にいた

楽しみは後に残せと遅桜

夏休み大小並ぶゴムぞうり

妹のままごとおちばがさらになる

チューリップ富山の畑をきせかえた

わたし的春のイメージ笑顔かな

家族ならぶ少し背のびで初もうで

紅葉や世界に知らしむ和の誇り

にゃんと言いこたつに入る子猫かな

潮風に教わる父の偉大な背

泣いた日は一つ多めの角砂糖

トロ箱をゐでし鰤の尾反りて立つ

マスクよりはみ出してゐる笑ひ声

春一番森のスイッチオンにする

シャボン玉少女の息の色となり

若狭鰈月の光を吸ひにけり

きれいな風ばかりを売って風鈴屋

春うらら私の時計眠たがる

かれた木にすずめの花がさいてたよ

「おはよう」と祖父の笑顔と夏野菜

道ずっとつながっている冬すみれ

夏空に叫ぶ今日から正社員

少年のまなざし変える夏読書

手鏡にゆかた似合うか聞いてみる

もぎたての桃と私が会いにいく

隣人と雪かき汗かき道つなぐ

雪明かり絵本の中に紛れ込む

昼寝の児泣き出し一家動き出す

コスモスが相談しながらゆれている

風花やお前は何処から来たものか

草陰で働き蟻も足休め

国宝の寺とは知らぬ夏の草

蝶舞いて遠足の列揺れ動く

ゆっくりと雲の動きについて行く

おしいれが空っぽになる冬の夜

夕空が自分の心と一致した

し残したことはないかと法師蝉

春の虹八十路の母の試歩の先

弟はぼくが大すきぼくもすき

マラソンのゴールを待たず冬が来た

お土産は帰りに拾ったもみじの葉

秘密だよこたつの中で手を繋ぐ

無口でも気持ち伝わる腕まくら

教科書に名前書くとき春心

笑うとき頬をかく癖親譲り

木漏れ日が揺れて木枯らし色をもつ

前髪を気にする君に桜咲く

まじめさが顔の皺なす初笑ひ

鬼は外鬼も悪ぎはないと思う

冬の空お月様でもかぜをひく

受験日は肌刺す風も背中押す

七夕の願い叶った逆あがり

白雪におとぎ話を見た三才

いなごの子小さいくせにようとんだ

寒いねと吐息が咲いた１７歳

ポケットの中だけ繋ぐ照れ屋な手

よみがえる第二ボタンよ花吹雪

紫陽花の地球のような青さかな

お年玉計算ぎらいがすきになる

消しゴムは曲がったことが大嫌い

満月が欠けても書けぬ化学式

あなたとの渋み出るまで手をつなぎ

ポケットの穴からのぞく夏休み

北風にどっしり構えるお母さん

寒いけどブーツがきまる冬が好き

山びこが今年の決意固くする

デッサンをはみ出してゆく積乱雲

セーターの色にこだわる母卒寿

鏡もち分数のよう子をおんぶ

風がふき林や森が返事する

あくびして起きかけている春の花

桜舞うこれから先は自分流

土の中春のクレヨン起動する

おしゃれした町で目立ってはずかしい

山びこやささやかな事も聞いてくれ

蝶蝶を追いかけてゆき知らぬ町

白息や見知らぬ人に語りかけ

寄り道の子どもの髪に梅香る

くわがたがぼくは強いとアピールだ

春風に思いをよせる山々よ

豪雪は課題のようにあせらせる

父からのメール愚痴でもほしい春

行く秋や恋のボールは楕円形

通信簿欠席のわくにゼロの文字

白鳥がドレスみたいに輝くよ

雲もくもく口はもぐもぐ夏祭り

明日こそ最終面接おぼろ月

つれ合いとさしつさされつ長い夜

お父さん私たちの電子辞書

祖父母の手時間の深さきざんでる

南南東今年も鬼は家に居る

自分へのご褒美を買う十二月

絵手紙のケーキの苺光ってる

ミニトマト花がさいてるぼくのだぞ

父の日に照れをかくしてかたたたき

大根にひげがついてる紳士かな

イノシシよお前はどこへ行きつくの

新年の干支飼いたいと子がせがむ

登校中いつも子鳥が待っている

茶柱で少し和んだ口喧嘩

たんぽぽを吹いても飛ばず甘えん坊

川沿いの桜が出番を待っている

ひぐらしに急きたてられて主婦となり

初日の出光のシャワー俺のパワー

おじぞう様昔はかさで今マフラー

朝顔がとなりのつると糸電話

酒造り桶に耳あて声を聞く

かに鍋を囲んだ月日は永久版

初鏡ベートーベンのやうな髪

秋の午後季節を本に閉じ込めて

ふくふくと屋根にぎやかに初雀

立春のなにかありそう街歩く

梅雨晴れて畳に風の立ち止り

ゆかた着ておてんばたちの屋台めぐり

あといくつ蝶が飛び立つ明るい日

父とゆく凩吹いて背にかくれ

一言の見慣れた文字の年賀状

青春は気づかぬうちに風とおる

四万十を上から見てるこいのぼり

向日葵はとっても素直に生きている

冬の朝母立つキッチンあったかい

アンタレス射手座のあたし狙い撃つ

故郷は籠に摘まれし山の里

いもうとがひらがなおぼえるみかんのみ

宿題が大渋滞の冬休み

パフェ一つ二人でつつく老夫婦

母の背に想い深まる冬の夜

其のままの貴方が好きと毛糸編む

我が心大根にある辛さかな

収穫期いつもできない親孝行

夕暮れにシオカラトンボが飛び回る

食卓を湯気で彩る季節かな

竹の子は抗いつつも顔を見せ

手ぶくろの中がふわふわくもみたい

まだ上の空を見つめるこいのぼり

君の席次は近づけ春よ来い

米粒がダイヤのような塩むすび

幼な子の真っ赤な唇紅いらず

初日の出阿蘇の五岳の応援歌

ひまわりがあの青空に恋をした

マフラーを巻いて夜の二年坂

水馬思ひ出の上とどまりぬ

花咲きて心の余裕取り戻す

ぼたん雪本一冊でやんじゃった

帰り道妙な視線は案山子かな

桜風私の前にあなたいた

毛糸玉夫のかたちになってゆく

本当は逢いたくて残暑見舞いかな

ライバルをぬかすためには走るだけ

秋の夜近くの草むらライブ中

バッターボックスみんなの声が遠くなる

夏空のような笑顔が駆けてくる

葉桜の影の優しさ風を止め

言えるかな今年もいっぱい「ありがとう」

冬の朝ベルの音さえ子守歌

菜の花が薩摩の春を彩るよ

友の背を大きく照らす秋の暮れ

流れ星探しに行こう落ちた場所

赤蜻蛉一人で歩く日暮れかな

哲学を知ったかぶりの青林檎

母からの小包届く秋灯す

長袖を買い込んで行く新天地

そよ風が昼寝の前髪すり抜ける

ＮとＳ近づけてみたキスをした

雪ぼうしかぶったポストなでてやる

待ちぼうけふと見た道にひめつばき

もみの木さん雪のマントが重そうね

選るはむつかし同じ顔した寒玉子