「矢澤幹臣(やざわみきおみ)」。世田谷一家殺害事件で亡くなった会社員、宮沢みきおさんが、東京大学在学中、学生グループの劇団で使っていたペンネームだ。語尾の「み」を頭に持ってくれば「みやざわ・みきお」。「ループすれば僕の名前になる」と当時話していた。捜査本部は今月14日、犯人が現場に脱ぎ捨てたトレーナーなどの遺留品から検出した蛍光染料を公開したが、この染料はインキやペンキに含まれる。学生時代から事件直前まで、みきおさんと染料の接点を追った。【石丸整】
事件5カ月前の00年7月、東京・赤坂のすし屋。約20年前、みきおさんが所属していた学生演劇サークル「蝸牛(エスカルゴ)」の元メンバー男女10人が集まった。
蝸牛は、女子大の学生をメーンに各大学の男子学生が集まったサークルだった。みきおさんは舞台には立たず、大道具としてセット造りを担当。恐竜の頭部の模型を作り、ペンキを塗ったこともあった。劇団最後のミュージカル「フランケンシュタイン・ロマンス・フォー・レディース」の脚本はみきおさん作。劇中歌「夢の王国の歌」は劇団員たちの結婚披露宴で歌われ続けた。
旧友たちの前のみきおさんは、全く変わった様子はなく笑顔を見せていた。ニューヨークでの家族旅行の写真をみなに見せたという。
みきおさんは学生時代、著名な人形作家の下でアルバイトをし、映画撮影の現場にも入り浸っていた。ともに仕事をした造形作家は「ミニチュアの建物を造るなど、腕前はセミプロだった」と語る。
2009年12月26日
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