完全に夏休みに入るまで、あと小論文1本を残すのみとなった。今学期の発表は全て終わったし、夏休みになればそろそろシュウロンに取り掛からないといけないので、娯楽目的の本を読むなら今しかない。というわけで、ジェフリー・ディーバーのちょっと前の本『ソウル・コレクター』を読み始める。
まだ200/522ページくらいなので今後の展開は予想もつかないのだが、ここまで読んで、今回の犯罪の手口の概要がわかる。犯人は、情報を提供するナレッジ・サービス・プロバイダーのデータからターゲットを決めて殺し、その罪を同じくナレッジ・サービスのデータを利用して濡れ衣をきせる人物を選定し遂行する、ということを少なくとも4件行っている。
怖いなと思ったのは、殺人ターゲット(女性)に最初近づくために、その女性の嗜好、趣味、過去の恋愛、交友関係、仕事、住所、病歴、買い物歴などなどをデータベースで調べ上げ、「僕もそのワインが好きだよ、偶然だね」とか「僕もあのパーティーにいたんだよ、偶然だね」といった感じで相手を安心させて近づくところ。そして濡れ衣をきせる人物についても徹底的に調べ上げ、証拠を捏造するのだ。この犯人は過去に練習のため、データを利用して裕福な開業医になりすまし借金をかさね、不倫の証拠をでっちあげ、その開業医をほぼ社会的に葬ってしまった前科もある。今、私は情報の恐ろしさを200ページまで読んで思い知ったところである。
ここまで読んで印象的だった場面は、主人公の刑事がそのナレッジ・サービス・プロバイダーの本社に行き、トップの部屋で話をするところ。情報を商品として「売っている」会社のトップは、情報の恐ろしさを知り尽くしているためか、机の上の全ての書類は裏向けにおいてあり(これはよくあるとは思うが)、部屋の本棚の本はみな背表紙が本棚の棚板を向けて立てかけてあり、ふつうに本棚をみても本のタイトルが読めないようにしているのだ。どんな本を読んでいるのか見るためには一冊、一冊、本棚から出さないと見れない。なんとなく気持ちはわかるのだ。
本棚は、その人となりの一端を示している場所だと思う。いわばその人にまつわる情報である。私は、1階の寝室の本棚にはかなり個人的な書籍や雑誌のスクラップブックを置いている。2階のパソコン周りとすぐ近くの本棚には現在進行中の案件に関する書籍や資料、2階のリビングの飾り棚付近にはお客様が手にとっても楽しめるような、画集、写真本などを置いている。
以前、家を建築される予定のご夫婦が、人を介して我が家を見学にこられたことがある。とても感じのよい30代前半のご夫婦で、特に奥様は家の内装と我が家のインテリアも気に入っていたようで、さかんに写真を撮っていた。その奥さんは細部までじっくりと見るのだが、パソコン周辺の本棚に近づいて、本棚の書籍を端からじっくりと見始めたとき、私はとても居心地が悪くなって、ちょっと悪いかな、私って心狭いかな、とは思ったのだが、「すみません」と正直にお願いをして、離れてもらった。本棚も撮影しそうだったから。もちろん奥さんは悪気などないから、本棚から飛びのいたのだけど、奥さんに申し訳ないと思った。本来なら非公開ゾーンの寝室の本棚に置いておくべき書籍なのだが、パソコンで作業するので便宜上パソコン周囲に置いていたのだ。
でもどうして本棚を覗かれると居心地が悪いのだろう。趣味・嗜好・仕事(研究)内容が知られるのがそんなに私は嫌なのだろうか(*1)。たぶんそうなんだろう。大昔に女性の部屋に遊びに行ったとき、本棚に俗っぽい恋愛小説と恋愛ハウツー本しか並んでいなかったのを見て、なにか見てはいけないものを見たような気がしたことがある。それ以後他人の家におじゃましたら、本棚を見たいときは、一声かけるようにしている。黙ってみるのは、覗き見しているように私が感じるから。
ネット上の情報の取り扱いについては、以前から色々とおもうところがあって、また、まとまったところで記録したい。
*1:そのくせブログで研究内容以外についてはよく書いていると思う。矛盾した人間だなと思う。でもブログに書いていることは、ある程度取捨選択はしている。本棚に並んだ書籍や資料は、加工前の私にまつわるローデータの一部である。
松本復興相の発言と陳謝の映像をまとめて見た。