学校での〈柔道〉死亡事故を考える

 27年間で108人――この数字は、学校での柔道事故死亡者数である(注・愛知教育大学教育学部内田良講師の調査による)。つまり、1年間に平均4人ずつ、学校現場では生徒が亡くなっているということだ。しかも、ここ5年(05年→09年)の死亡者数の推移を見ても、「2人→5人→1人→1人→3人」と、死亡者数は決して減少傾向にはない。

 このことから何が言えるか――。それは、学校現場での柔道にまつわる何らかの危険性が放置されているのではないかという疑念だ。

 今年3月、全国の柔道事故による被害家族らが、その名も〈全国柔道事故 被害者の会〉を立ち上げた。今月6月13日(日)には、同会主催の第1回シンポジウムが都内で開催される。

 柔道は、相撲、剣道と並び、広く国民の間に浸透したスポーツ(武道)である。1964(昭和39)年からは、オリンピックの正式種目として採用され、1984年ロス五輪の金メダリスト山下泰裕(53)氏は、国民栄誉賞も受賞している。学校現場では、2012年から中学での「武道必修化」が始まり、それに向けての各分野での様々な動きもある。そのような中で、柔道の死亡事故につながる何らかの要因が見過ごされているとすれば、それは大変なことだ。

 「柔道の危険性」があるとすれば――、それはどのようなものなのか、その危険性は何に由来するのか。さらに〈全国柔道事故 被害者の会〉設立の経緯や、今後の活動方針について、同会副会長を務める村川義弘氏に話を聞いた(本文中、敬称略)。

 

 
 
 
 

東京・水道橋の講道館入り口にある、柔道創始者 嘉納治五郎氏 立像(撮影・三上英次 以下同じ)。今年9月には世界柔道選手権大会が東京で開催される。

~全国組織たちあげまで~

〔記者〕今年3月、新聞各紙で、〈全国柔道事故 被害者の会〉(小林泰彦会長)設立のニュースが報ぜられました。同会は全国組織だそうですが、設立の経緯について、お聞かせ下さい。

〔村川〕私自身、柔道事故の被害者家族です。当時中学1年生の私の甥が、2009年夏に、滋賀県秦荘中学校柔道部での事故に遭い、命を落としました。

 その後、「事故の起きた状況が似ている」ということで、神奈川県在住の小林現会長から連絡をもらい、話をする中で「被害者の会」の立ち上げで意見が一致しました。

〔記者〕同じ武道でも、「剣道事故 全国被害者の会」とか「空手事故 全国被害者の会」といった組織は、あまり聞いたことがありません。そういう柔道事故に関する組織を立ち上げるということは、何かおふたりに共通した問題意識がおありだったのでしょうか。

〔村川〕私は、自身の経験から柔道事故の被害者に特化した支援組織が必要であると強く感じていました。小林会長も同様の支援組織の必要性を感じており、私を含めて、被害者家族とコンタクトをとっていたのです。

 私たち2人に共通した見解とは「このまま何もアクションを起こさなければ、間違いなく事故は続くであろうこと」、「今後とも前途ある中高生が命を落とし続けるということ」、そして「柔道事故に遭い、事故原因の究明で困難に直面している多くの被害者の人たちは、何らかの支援を必要としているということ」でした。

 学校等での柔道事故については、事故の起きやすい原因、起きてからの真相究明の手順、指導する側の責任等にあいまいな点も多く、まだまだ改善の余地があると考えます。

 「全国~」と銘打ったのは、会に参加していただいた被害者家族が、全国にいること、学校現場での柔道事故は、ある一地方に特有のものではなく、今後も特定地域に限らず、全国で被害が起こるであろうと想定されるからです。

〔記者〕〈全国柔道事故 被害者の会〉の方針は、ウェブサイトにある、(1)柔道事故に遭われた方への支援と(2)柔道事故の被害者を二度と出さないための活動、――この2つということでしょうか。

〔村川〕その通りです。柔道の事故は、家族にとっては、何の前ぶれも無く、ある日突然起こることが大半です。そして、事故に遭って、家族は事故原因の究明をはじめ、何をどうしてよいかわからない状態に投げ込まれます。

 「弁護士に相談してみる」という選択肢すら、はじめは思いつかないのです。また、弁護士に相談してみようと思っても、学校での事案は専門的な知識が必要となり、対応できる弁護士に出会うことすら難しいのです。

〔記者〕学校を相手に…となると、〈組織〉対〈個人〉という構図で、私がこれまで取材したケースでも、〈個人〉という弱い立場に立つ様々な困難が想像されますが、それ以前に、そうした事実究明の相談相手となるべき弁護士も、中々みつからないということなのでしょうか。

〔村川〕私自身、複数の弁護士に相談をしましたが、数名からは「それは難しい事案だから諦(あきら)めろ」とまで言われました。私は、それでもかなり精力的に様々なことを調べ、そして、学校事故を取り扱える弁護士の方を探し出しました。そして、ようやく同じような被害者の方と知り合うことができたのです。けれども、そうやって事故の真相究明をともにしてくれる弁護士と出会うまでに、まずかなりの労力を要します。

〔記者〕「柔道事故に遭われた方への支援」というのは、具体的には、事故に遭ってから、どのようにして真相究明するかの、基本的なノウハウの提供ということでしょうか。

〔村川〕今述べたように、柔道事故被害というのは個人で対応するには相当のパワーが必要となります。相談をするにしても、どこに、誰に相談をしてよいか、被害者や家族が積極的に動かないと、相談相手すら見つかりません。すでに同じ苦しみを経験している私たちが、さまざまな助言や情報の提供をすることで、同じ事故に遭われた方の相談窓口の機能をもつこと、また多くの方から柔道事故の事例やデータを寄せて頂き、それを検証すること、そういう活動の積み重ねにより、事故原因の究明や、より安全な柔道の指導に対して、少しでも貢献ができればと思っています。

~柔道・死亡事故の現実~ 

〔記者〕ウェブサイトの〈設立趣旨〉のところで、「柔道の安全を願う」として、文章が載っています。そこでは、「27年間で108人」という学校での柔道事故による死者数が紹介され、「年平均4人以上の死亡者」と換算されています。村川さんご自身は、今回活動を始められるまで、いわゆる「柔道の危険性」はお感じでしたか。

〔村川〕おそらく一般の方がもってらっしゃる程度の危険性しか感じていませんでした。私自身も「柔道をしていれば怪我はつきものだ」という認識をしていました。しかし、それは「練習中に、捻挫(ねんざ)ぐらいはするかもしれない」程度のことで、まさか「命を落とす」とまでは想像すらしていませんでした。

 柔道の危険性を感じたのは、家族が事故に遭い、様々な資料にふれ、具体的なデータを目にしてからです。実際に、なまの数字(=学校での柔道事故の死亡者数)を見て、こんなに子どもたちが亡くなっているのか、と驚きました。

 昨年(2009年)、私が知っているだけでも、青森の藤崎中、兵庫の日生高校、そして、滋賀県の秦荘(はたしょう)中での事故と、3件の死亡事故が起きています。先月(2010年5月)にも大分県竹田高校での柔道部合同合宿に来ていた高校3年生が、乱取り中に大外刈りをかけられて後頭部を打って意識不明となり、約9時間後に死亡する事故が起きています〔注1〕。

〔記者〕内田講師(愛知教育大学)のデータを見て、私も驚きました。特に、内田氏の集められたデータは「死亡者数」ということで、福島県の須賀川市立第一中学校(2003年10月)や横浜市立奈良中学校(2004年12月)のような重篤な後遺症のケースは含まれていません。それから、2009年8月に起きた、関東地方のある私立高校での死亡事故や、2007年6月の広島県・町道場での死亡事故など、さきの内田講師の集計でカウントされていない数字もあると思います〔注2〕。

〔村川〕まず、この数字の持つ意味ですが、死者の総数では、例えば、1998年から2007年までの10年分のデータをみると中学・高校の部活動における死者の数は、野球が24人で柔道が23人となり、野球の方が多いのです。(愛知教育大学の内田講師の研究データより)。死者の総数だけでみるなら、野球も柔道も同じ程度の危険性をはらんでいるように見えます。しかし、死者数を競技人口で割った「死亡率」でみると、柔道は10万人あたりの死亡率が2.592人、野球による死亡率が0.513人となり、野球を圧倒します。中学・高校の部活動でとらえると、柔道は他のスポーツよりも明らかに死亡率が突出しているのです。日本における学校現場での「柔道の危険性」は、実証された客観的なデータからも導き出されます。

 

  

日本武道館での試合の様子(5月23日、東京学生柔道優勝大会)。記者は、柔道関係者に初心者に対する「ヘッドギア」着用を尋ねてみたが、ほぼ全員が着用の必要性を感じていなかった。しかし、現在、柔道専用の練習用ヘッドギアは開発され、すでに販売されている。

~安全性の向上のために~

〔記者〕〈全国柔道事故 被害者の会〉ウェブサイトには、こう書いてあります。「毎年、柔道で亡くなる子どもがいます」――これは、学校現場での柔道の現状として、内田講師のデータ等からすれば、客観的な事実です。そして、そのあとに「柔道は危険なスポーツです」とあります。

 「柔道は危険なスポーツです」――このことについて、何が要因なのか、慎重な見極めが必要だと思います。

 例えば、野球とテニスとを比べた場合、硬い球が頭部を直撃する危険性は、毎回打席に立つ野球のほうが高いですし、その危険性は、ある意味で「競技そのものに内在するもの」と言えます。しかし、野球では、ヘルメットなどを被って、その危険性を低めています。

 空手の試合でルールを「寸止め」から「直接打撃制(フルコンタクト)」に変えて、打撲による傷が増えたとしたら、「直接打撃制(フルコンタクト)」という競技方式(ルール)に打撲傷の危険性が内在していることになります。

 「柔道が危険なスポーツ」という時の、その〈危険性〉は、どこから来ているのでしょうか。フルコンタクトの空手競技に打撲傷がつきもののように、競技そのものに内在する危険性なのか、それとも、指導する側の安全に対する意識の低さによるものなのか。そして、今後、学校現場での柔道の安全性を高めていくためには、どういうことが必要でしょうか。

〔村川〕様々な要因があると思います。大きく分ければ、ハードとソフトの両面での改革が必要だと私は考えます。

 ハード面でいえば、例えば、現在は安全性を考慮したスプリング畳が開発されています。また、頭部を保護するという点では、まだ受け身が十分に取れないような初心者には、ヘッドギアなどを着けて練習してはどうかという意見もあるようです。

 ハード面については、安全だと思われる設備や対策を専門家の方に検討をいただきたいと思っています。

 ただ、いくらハード面を整備し、安全策を講じても、結局は柔道を教える側の意識改革がされなければ事故は減らないと考えています。

〔記者〕ヘッドギアについて言えば、ボクシングではプロの試合では着けませんが、国体競技等、アマチュアの試合ではヘッドギアを着用します。また、空手(寸止め)では、以前は面などの防具なしで、拳サポーターのみでしたが、現在は、全日本選手権の大会などでも防具(面)着用です。その意味では、柔道競技においても、ハード面での「頭部の保護」は、特に初心者の場合、考えられてもよいでしょう。

 ただ、村川さんご自身は、むしろハード面よりも、ソフト面、つまり柔道を実際に指導する人材に関して、意見をお持ちだとお聞きしました。

〔村川〕ハード面以上に重要なのが、ソフト面。柔道の指導方法についてです。

 柔道の指導者の中には、自分が受けて来た練習のあり方を客観的にふり返ることをせず、過去の練習例、それもよく考えれば安全面で問題があるような指導を、そのまま現在も繰り返して指導している人もいるようです。

 全日本柔道連盟は『柔道の安全指導』(PDFファイル、全40ページ)を発行しています。そこでは「怪我をしない・させない柔道こそ、正しい柔道といえます」(P14)ということが明記され、徹底した安全管理を柔道指導者に求めています。しかし、学校現場等での柔道事故を調べていくと、一部で『柔道の安全指導』の内容が守られていなかったり、全柔連の指針に反することが行われたりしていることがわかりました。

 そして、一部の指導者の間では、「強くなるためには、過酷な練習をしなければならない」といったことが信じられているようです。全柔連の『柔道の安全指導』を読むと、安全面への配慮がたいへんよく考えられています。素人ながら思うのですが、もし、すべての柔道指導者が、全柔連の指導書の指導方法を厳格に守って指導していれば、過去の事故もかなりの割合で防げたのではないかと思います。

 また、日本の柔道・死亡事故の約6割が初心者なのです。ですから、その初心者に対する安全な指導が、いかに大切かということを私は痛感します。柔道指導者が、初心者に対して、安全への配慮を欠いた無茶な指導をすれば、当然、重大な事故が頻発するのは目に見えています。

 例えば、昨年(2009年)起こった3件の死亡事故、――青森の藤崎中、兵庫の日生高校、滋賀県の秦荘中のケースを見ると、すべて死亡したのは柔道初心者で、3件とも「乱取り」中に起きています。『柔道の安全指導』では「怪我や事故は、初心者が周囲に合わせようとして無理をしたり、経験者が初心者への配慮を欠いたときに起きやすくなる」(P15)と警鐘(けいしょう)を鳴らしていますが、まだ受け身を十分に出来ないような初心者に「乱取り」を強制することは、そうした警鐘を無視する、無謀な指導だと思います。

 現場の指導者が安全への配慮を欠けば、いくら『柔道の安全指導』のようなマニュアルがあっても、あるいはハード面での整備がされても、事故は無くならないでしょう。

 現在自分のおこなっている柔道の指導が、医学的にも運動生理学の面からも、本当に適切で安全なものであるのか――、柔道の指導者は絶えず、検証して頂きたいです。「今までこのように指導して来て、事故は起きなかったから」といった経験則に基づく指導ではなく、医学的見地、スポーツ生理学に沿った指導をぜひ強くお願いしたいです。

〔記者〕指導者だけではなく、一般の人たちの、柔道に対する考え方はどうなのでしょうか。

〔村川〕前述のように、私自身も柔道は危険なスポーツで、怪我程度の事故はつきものではないかと、漠然と思っていました。

 しかし、今は、「柔道はもともと危険なスポーツだから、事故が起きても仕方がない」とか「柔道の危険性については、承知した上で練習をしていたのだろうから…」等といった考え方をする事自体が、間違いだと思っています。

 

  

都内の、ある私立学校の武道専用道場。柱はグリーンのクッションが巻かれ、手前の柔道場は、きわめて良好なスプリングが入っており、狭いながらも安全性にはよく配慮してある様子がうかがえる。

~柔道大国フランスの場合~

〔記者〕もともと柔道は、青少年の健全育成のために、それまでの天神真楊流柔術、起倒流など古来の武術をもとに、嘉納治五郎氏(1860~1938)が編み出した武道(スポーツ)です。その「柔道」で、現在のような死亡事故が起きていることについて、どうお考えでしょうか。

〔村川〕嘉納治五郎氏の説いた「精力善用」「自他共栄」の基本理念は素晴らしいと思います。しかしながら、その理念や目標を忘れ、勝利至上主義にとらわれ、無理な練習によって強くなれると思っている指導者がいるのではないかと危惧しています。

 柔道は、嘉納治五郎氏が1882年に「柔道」と命名したのが、その発端です。オリンピックでの正式種目化を経て、今や「Judo」は国際語にすらなっています。

 海外ではどうなのか――、私たちは今、その比較や調査をしているところです。

 その中で興味深いデータがあります。現在フランスの柔道人口はおよそ60万人弱、日本の柔道人口が約21万人ですから、フランスの競技人口数は日本の約3倍です。フランスは国の人口そのものは日本の約半分ですから、人口あたりの比率で考えると、フランスでの柔道競技人口率は、日本の約6倍とも言えます。

 もし、日本における柔道・死亡事故の要因が、柔道競技そのものに内在するものだとしたら、日本の3倍もの競技人口を誇るフランスでも、ほぼ同率の死亡事故が起きているはずです。ところが、日本に見られるような高い割合では、フランスで死亡事故は起きていないのです。しかも、私たちが柔道における脳損傷事故について研究していることを聞いたフランスの柔道関係者は、「そのこと自体がよくわからない」と言います。つまり、海外では、脳損傷による死亡事故の割合は極めて低いということなのです。

 死亡や意識障害をともなう重大な脳損傷事故が日本においてのみ突出していることが事実だとすれば、それは日本の学校現場等での柔道のあり方、指導の方法に問題があると考えるのが自然だと思います。

 ~今後の活動について~ 

〔記者〕海外での柔道・死亡事故の調査は、非常に興味深いです。「柔道」は、日本から世界へと広まりました。しかし、今言われたような形で、本家である日本は、海外の柔道先進国が「Judo」の安全性をどのように高め、同時にどうやって多くの人が柔道を身近なスポーツとして親しんでいるのか、大いに参考にする必要はありそうです。

 今回、このようにお話をうかがって来ると、学校現場での指導のありかた、一般の人たちの柔道に対する意識、あるいは設備の問題など、変えていくべきことは多いですね。

〔村川〕今言われた、指導のありかた、一般の人たちの柔道に対する意識、学校現場での設備の問題のほかに、もう一つ知っていただきたいことがあります。

 最近は、指導中の熱中症事故については、責任が問われていますが、柔道指導中に起きた脳内損傷による事故については、それがどのような事故であれ、今までに起訴された指導者はいません。

 学校関係者はもちろんのこと、警察、検察、裁判官などの法曹関係者、そして医療関係者の方にも、学校現場等での柔道の危険性に対する意識を深めてもらいたいと思います。

〔記者〕 〈全国柔道事故 被害者の会〉は、第1回目のシンポジウム(6月13日)以降、どのような活動を予定されていますか。

〔村川〕引き続き「柔道事故は何故起るのか、防ぐ方法はないのか、どうすれば防げるのか」をテーマとして掲げ、定期的にシンポジウムを開催する予定です。

 私たちの会の基本的な活動は、被害者が寄り集まり、自身に起こった不幸を世間に公表するだけではなく、どのようにすれば柔道事故がなくなるかを具体的に提言する活動を行っていきたいと思っています。

 全日本柔道連盟の関係者の方とも、事実関係やデータを共有し、学校で安全な武道教育が行われるよう、協力し合える関係でありたいと願っています。

〔記者〕言わば、全日本柔道連盟と手を携えて、ともに協力し合って、柔道の安全性向上に英知を結集していこうということですね。

〔村川〕そうです。幸い、柔道関係者の中にも本会の活動にご理解をいただき、賛同して下さる方がいらっしゃいますので、日本の学校現場等での、より安全な柔道指導の実現にむけて、多くの柔道関係者の方と連携をとっていきたいと思っています。

〔記者〕〈全国柔道事故被害者の会〉には、柔道の指導者、現職の教員(学校関係者・部活動指導者)も、入会できるのですか。

〔村川〕本会は、誰に対しても門戸が開かれています。正会員は、柔道事故の被害者とその家族のみですが、本会の趣旨に賛同して下さる賛助会員としてなら、どなたでも入会できます。むしろ、賛助会員にしろ、シンポジウムへの参加にしろ、実際に柔道を指導されている方の参加を願っています〔注3〕。

〔記者〕本日はお忙しい中ありがとうございました。

(5月19日 都内・赤坂見附にて)

※ 

〔注1〕大分県竹田高校を舞台にした事故については、昨年8月に、当時高校2年生だった男子生徒が剣道部の稽古中に熱中症で死亡している。当時、顧問であった男性教諭は、ふらふらになっていた男子生徒を足で蹴飛ばし、その行為が体罰に当たるとして停職6ケ月の処分を受けた。死亡事故をきっかけとして、今年2月20日には、地元で問題点や再発防止を考える有志の会が設立されている。

〔注2〕2007年6月の町道場での死亡事故について、死亡した中学1年男子生徒の両親が、「死亡は指導者が安全配慮義務などを怠ったのが原因」として、指導者らに約8400万円の慰謝料などを求める裁判を起こした。広島地裁(福田修久裁判官)は、「安全を最大限重視し、指導監督すべきであった」として道場責任者に約2400万円の支払いを命じた(09年8月7日)。

〔注3〕本インタヴューで、村川副会長は、便宜上「柔道事故」という表現を用いたが、個々のケースを精査すると、事件性の高いものも含まれているという。また、係争中の事例もあり、本来であれば、〈事故〉の場合と〈事件〉の場合とを区別すべきであるが、〈全国柔道事故 被害者の会〉ウェブサイトの表記に合わせ、「柔道による事故」として用語を統一した。

~ 〈全国柔道事故 被害者の会〉第1回シンポジウム ~

テーマ 「柔道事故と脳損傷」

日 時 6月13日(日)午後1時~5時

場 所 TKP東京駅日本橋ビジネスセンター

(参考) http://judojiko.net/symposium/33.html

〈 後 記 〉

 今回、紙面で割愛した問題として、「柔道未経験の体育教師」による柔道指導の問題が、学校現場では避けて通ることが出来ない。2009年8月の、滋賀県秦荘中の場合は、「柔道経験者である外部講師」による事故だが、現在、中学校の体育授業では、体育の免許状を持っているという理由だけで、柔道をやったことの無い体育教師が、中学生相手に、体育館の硬い床に畳を敷き、そこで大外刈り等の指導を行っている現状がある。 「柔道をやったことがない者」による柔道指導がいかに危険であるかは、誰もが容易に想像できるだろう。この点についても、時機を見て明らかにしていきたいと思う。尚、本記事に関するご意見、お問い合わせは、下記まで。

pen5362@yahoo.co.jp  (三上英次)

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