きょうのコラム「時鐘」 2011年7月10日

 藩政期に能登町で作られていた久田和紙が復活し、欧州で活躍する写真家や画家の素材として利用されているとの話題があった

先月、金沢でペーパーショーがあり、紙の可能性を探る新商品の他に、日本各地に伝わる和紙約70点が展示された。中に、17世紀のオランダの画家・レンブラント(1669年没)が、日本の和紙を手に入れて版画紙に愛用していた事実が紹介されていた

江戸初期の和紙と言えば、京都の桂離宮で襖に使われた加賀奉書が有名だが、同じ時代、オランダの巨匠に届いたのは越前和紙など数種類あったという。鎖国に入った日本は長崎を窓口として、東インド会社を通して和紙を輸出していたとは意外だった

レンブラントが加賀和紙を使ったか否かは不明だが「越前と加賀の和紙をもって最高とする」との言葉が越前の古文書にある。ともかく400年前にヨーロッパに渡った北陸の和紙が再び欧州で注目されているとは何ともロマンのある話だ

漆や陶磁器など、日本の工芸は想像以上の国際性がある。伝統の和紙が持つ印刷・出版文化の歴史にも再度、光を当ててみたい。