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[28390] [習作]steins;madoka (Steins;Gate × まどか☆マギカ)
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/06/22 07:14
はじめまして 私は かっこう といいます。

投稿SSはsteins;gateと魔法少女まどか☆マギカの二次クロスオーバーです。

SSを書くのは初めてなので、至らぬところも度々出てくるとおもわれますが、皆さまに楽しんで読んでもらえるようがんばります。

当方の作品に目をとおしてくれた方、感想を提示してくれた方々、本当にありがとうございます。



























思考 考察 検証 ―――あとがき

当方の作品に目を通してくれた皆さま方に、まずは心からの感謝を




早速本題へ。みなさんは「STEINS;GATE」はご存じとは思われますが、「うみねこの鳴くころに」はご存じでしょうか。

私かっこうはこの二作品に心奪われました。

文章による絶対の真実。にもかかわらず発生する矛盾的状況。これらをただ否定するのではなく。己の中で状況を確認。登場人物の台詞。状況。考え方。でも決して全てをそれに頼ってはいけない。その人物の先入観や、それによる台詞に引っ張られないようにする。なにが絶対の真実で、なにがひっかけなのか。真実の中の向け道等、私はこの二作をとおして読み手の思考、考察、検証することの楽しみ方をしりました。


わかりずらい説明かもしれませんが当方の作品も読み手に自ら作品の矛盾点をみつけてもらいたいです。



皆さんが物語上感じた違和感、矛盾点を、『こう考えたら、あれ、理屈はとおるな』と

皆さまの考えを思考し、考察、検証していきながら当方の作品に目を通してくだされば、うれしいです。




そして、いつかこの作品が完結したとき『こういう結果になったか』『自分の考えはこうなったな』『結局矛盾したまま終わりやがった』等の、感想をいただけたらと、日々思いながら投稿していきたいです。




[28390] 世界線x.xxxxxx
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/06/17 21:12
世界線 ×、××××××


「・・・・・ッ、はぁ、はぁっ、ぐぅ」

声が聞こえる。男が一人、ただ一人。血を口から滲ませながら大地に手をついている。男は戦い続け、今死を迎えようとしている。指は折れ、手足は裂け、体は満身創痍、呼吸は度々途切れ、意識は気を緩めるものならすぐにでも失い二度と起き上がれることは無いだろう。男は何度も命を賭して戦い続けた、でも、それでも失った、失ったものが大きすぎた、失ったものが多すぎた。だから戦うと決めた、過去を、未来を変えるため、何があろうと、何度繰り返そうと、その過程で、避けえない、孤独と破滅が待っていると理解していながら。

『・・・・・・・・・・・・キョ―マ』

とん、男しかいなかった場所に別の存在が現れた。それは重さを感じさせない身軽さで男のそばにかけより大地から手を離すことができない男の顔を見上げた。

『キョ―マ、まだ意識はあるかい?』

その声の持ち主は人語を解しながら人間ではなかった。一見にはクレーンゲームの商品にありそうな白いヌイグルミだろうか、四本の短い足を持ち、二十㎝ほどの体にその倍ほどある狐のような尻尾もつ、丸い顔にはこれまた丸い赤い瞳、愛らしい口、二つある三角の耳から筆のような毛が一房ずつのびていた。その姿は朝の子供番組、魔法少女に出てくるマスコットのようだった。


「・・・・・・ああ、・・・ッ、キュウべえか?」

男は、キョ―マと呼ばれた死に掛けの青年は白い生き物に返事をした。

『・・・もう目も見えていないようだね。まあ耳さえ無事なら報告はできるから君はいいのかな?』

青年はもちろんキュウべえと呼ばれた生き物も青年の命が尽きるのを理解している、もはや奇跡や魔法が無い限り青年の死は時間の問題だろう。そして彼らは奇跡も魔法も存在していることを知っている。キュウべえは奇跡の代償と共に魔法を少女に与える者として、キョ―マはそんなキュウべえと少女達とかかわっていくなかで知っている。

「・・・そうッ、・・だな、目が見えなくても聞こえるし、内容を・・・、理解す・・ッ、こともできる。」

しかし、ここには奇跡と魔法が使える少女達はいない。いや、一時間ほど前には五人はいた。皆キョ―マとキュウべえの知り合いだ。彼女達がいまのキョ―マの姿をみれば誰もが奇跡を願い、魔法を望むだろう。でも彼女たちはいない、先ほどまで残っていた最後の一人もいない。

「そうか、・・・・悪いな・・最後ま・・で、・・損な・・役回りで。」

『暁美ほむらには最初からうとまれていたから特におもうことないよ。・・・ただ。』

ゆえに彼らはもう助からないことを理解している。

「・・・・?。」

『君のリーディング・シュタイナーは移動後の世界線を観測できる、今日までの記憶を保持できる。でも暁美ほむらは時間逆行、タイムリープこそ君より精度は高いけど彼女にはリーディング・シュタイナーはない。ゆえに世界線が移動すれば記憶はなくなる。そして君の持つ「未来ガジェット」のタイムリープマシンは記憶の逆行だけでなくリーディング・シュタイナーに蓄積されたこれまでの君の繰り返しの戦いがあった数多の世界線に引っ張られてしまうことが確認できているんだろ?逆行と共におこる世界線の移動、キョ―マ、それが何を意味するか誰よりも解っているはずだ。世界線の移動、再構築はこの世界線の暁美ほむらの繰り返しの時をすべてなかったことにする。』

暁美ほむら、彼女はたった一人の少女を助けるためにこの世界線の歴史を何度も繰り返している。ただ一人で、過去を変え、望むべき未来のために、親友である少女との約束のため、何より自分の願いのために、たとえ今、この瞬間まで人生を歩んできた世界中で生きているすべての人を巻き添えにしても―――。それは独善で、それは決して許されない。彼女はそれを理解しているだろうか?いや、理解してなお彼女は繰り返すだろう。

かつての自分のように。

理解した時にくる、一人の女の子が背負うには大きすぎる罪悪感、自分以外は誰も知らない未来の記憶、それにともなう孤独、かつての自分のように、――否。
かつて自分には仲間がいた。何度時間を逆行し、世界線を越えようとも自身の話に耳を傾け打開策を提示してくれた。いつもの妄言と貶すことなく、世界再構成によるこれまでの経験努力人生がリセットされると理解しながら、過去、未来を共に歩いてくれた。戦ってくれた。だから戦えた、だから立ち上がれた、諦めても誰も責めることはできないだろう、逃げても誰にも文句はいえないだろう、何度も死に掛け、何度も心が折れた、それでも戦えた。彼女達が支えてくれた。言葉で、行動で、想いで。何度も何度も――――だから、だから戦って戦って戦って戦い続けた。だから辿りつけた。辿りつけさせることができた。『シュタインズ・ゲート』に。

だが暁美ほむらの場合は話を聞く限り最悪だった。時間を繰り返すほど元の仲間との齟齬が生まれ、話を信じてもらえず、尊敬する先輩、親友の少女から孤独を味わった。結果二人とも助けきれなかった。何度も繰り返した。真実を話し信じてくれた。結果、真実に耐えきれず仲間割れ、助けきれなかった。何度も繰り返した。この手で―――、助けきれなかった。何度も繰り返した。助けきれなかった。何度も繰り返した。

『それでも暁美ほむらは君と出会い、皆とここまでたどり着いた。巴マミは脱落せず、美樹さやかは絶望せず、佐倉杏子が加わり、彼女がいうには過去最高の戦力に辿りついたらしいじゃないか。今回は駄目でも次は鹿目まどかを助けきれるかもしれないよ?何より彼女はタイムリープ後に君がいるから、「記憶を保持している君」が、もう一人じゃないという希望、いままでなしえなかった「――――わかっている」・・・・・・・』

彼女の努力を、後悔を、孤独を、――そして希望を、俺は―――、無かったことにしようとしている。いや、無かったことにするのだ。彼女のこれまでを踏みにじっても、皆から恨まれようとも、俺は跳ぶ。

この新しい世界線で出会ったラボメンのみんなを助けるために。

『君がその決断をするということは、つまり世界線の収束かい?』

「・・・・ああ、お前にはッ、・・話したな、そうだ、このままでは・・・だれも、・・生き残れない」

そしてなによりタイムリープした暁美ほむらの世界線にはキョ―マ、「岡部倫太郎」は存在しない。できない。―――それは、それは本来ならありえない。だから跳ぶ。本来の因果ならいるはずの自分が、過去に確かに存在するはずの自分が、いなければタイムリープができない。ゆえに別の世界線の自分にタイムリープしなければならない。

岡部倫太郎は同じ世界線に存在できない。――――暁美ほむらに話していない真実。知れば希望を抱いた彼女はもう―――。

「だから、・・いく、 もう・・・、もたない・・みたいだ。」

『・・・・わかったよ。キョ―マ、むこうの僕にもよろしくね』

「もちろんだ。忘れるな・・・・・お前も、ラボメンなのだから。」




もう動くことのない青年の前で、本来は人間のような感情を持たないキュウべえ、「インキュベーター」は、滅びゆく世界の空見上げ―――――。

『さようなら、<オカリン>ボクの、ボク達の―――――――――










[28390] 世界線0.091015→x.091015 ①
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/06/18 01:20
世界線 0.091015


それは叫びだった。
―――――叫びかもしれなかった。それは叫びとは言えないかもしれなかった。それは叫んだ本人の近くにいた人間にも解らなかったほど小さな叫び。仮に場所が満員のエレベーター内でも誰にも聞こえない、小さな、吐息のような小さな言葉。ゆえにそれは叫びとは言えないかもしれない。
それでも少女にはそれが聴こえた―。聞いているだけで身がすくみ、目をそらし、耳を塞ぎたくなる―――――、ただ一言の、決して表にはださないときめた。小さな小さな、本人すらきずかないその絶叫が――――聴こえた。


ならばそれは、きっと叫びだったのだろう。


世界線x.091015



「・・・・朝か」

カーテンの隙間から朝日が差し込む。脳に突き刺すような―――――、跳ぶたびに感じる。もはや『慣れた』痛みに顔をしかめながら長身の青年、「岡部倫太郎」は寝床にしていたソファーか体をほぐしながら立ち上がる。

「・・・・・・・・・・」

目をつむり、記憶をよびおこす。たった数瞬前まであったはるか未来という矛盾を。失ってしまった大切な、かけがえのない人たちを、もう、決してもどらない思い出を。

「・・・・・・・・それでも俺は戦おう。」

岡部は部屋を見渡す。この世界線の自分の状況を知るために。

「何故ならば、この俺は―――」

確認すべきはこの部屋にある折りたたみ式ベット。

「世界を混沌に導き―――、世界を創りかえる――――」

我が右腕キュウべえ。リアルホームレス中学生であるバイト戦士・「佐倉杏子」。そのオトモの小動物・「ゆま」。癒しの掌をもつ閃光の指圧師・「飛鳥ユウリ」。―――――はいない。この世界線では彼女たちとはまだ出会っていないのだろうか?

「狂気のマッドサイエンティスト―――――――」

かまわない。それは諦める理由にはなりえない。――――というか、いたらいたらでちょっと困る。キュウべえはともかく、自分が人道を外すとはおもわないが――――数多にある世界線の数だけ可能性はある。ゆえに、だからこそ、念のために、大丈夫だとしても、――――――いや、この世界線の俺を信じている。信じている。うん。二回いったから大丈夫だ。

――――さあ、今のところ我がラボに寝泊まりしているラボメンはいない。たまたまいないのか、まだ知りあってもいないのか――――。それを確かめに外にでるためドアノブをつかむ。

そのさきは、繰り返される絶望がまっているかもしれない戦いの日々、それでも彼は、岡部倫太郎は

「そう、俺の名は――――――――」

あの涙も、あの痛みも、あの記憶も、意味があったと信じているから、もう一度呼び起こす。彼を、世界を変え続けたもうひとりの自分、やさしいやさしい救世主。

「鳳凰院 凶真なのだから。」

外の世界へと足を己の意思で再び歩みだした。



やさしい救世主は知らない。ドアノブに手をかけた瞬間から、ラボメンである大切な少女から、先ほどまで感じていた頭痛を忘れるほどの苦しみを与えられることを、彼は――――知るよしもなかった。



「いってきまーーーーす。」

鹿目まどか。見滝原中学校に通う中学2年生の少女。150㎝未満の身長と、桃色の髪をツインテールにしている可愛らしい少女は、学生が登校するにはやや早い時間帯に家族に声をかけ家をでる。

「キョ―マ君へのお弁当忘れていますよ」

そしてすぐにUターン。父、鹿目和久から慌てて弁当を受け取る。

「あ、ありがとうお父さん。じゃ、じゃいってくるね」

「はい、気をつけていってらっしゃい。キョ―マ君にもよろしくね。」

「まろかーー。いってら・・?・・らしゃい?」

恥ずかしかったのか、若干頬を染めながら父と半分寝ているであろう弟タツヤに手を振って今度こそ家をでる。母親はまだ寝ているのだろうか?。

目的地はここからそう離れていない古びた二階建ての建物。一階は数年前からシャッターが下りている。まどかは建物にたどり着くと外側にある階段からニ階にスキップをするように駆け上がる。普段の彼女を知るものが見れば首を傾げるかもしれない。

「ふんふんふ~ん♪。オカリン起きてるかな~、昨日帰ってきてからすぐ寝るんだから。今日こそちゃんとお話きかせてもらうんだから」

彼女、まどかは赤いチェックの制服のスカートからこの部屋のマスターキーを取り出す。―――――部屋の住民が持つのがスペアキーという謎の上下関係が発生。

「おっはよ~~~オカリン。朝だよ~~~~♪」

その程度のことに、まどかは疑問を感じることなく勝手知ったるドアノブを「いきおいよく」あける。そのさい鈍い音が響いたが、朝早いのが関係あるのか、テンションが高い彼女は気づかなかった。結果、中学生の女の子の前で、土下座をしているような恰好で鼻をおさえている青年という混沌が発生していた。

「トゥットゥル~~~」という幻聴と共に寝起きの頭痛がとんでいった青年、岡部倫太郎にして、狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真は電源の切れている深紅の携帯を耳にあてつぶやく。

「・・・・・・ッ、ああ、俺だ。どうやら機関からの攻撃をうけている。」

「ん~?オカリンは朝から何と戦っているの?」




「・・・・・・これが<シュタインズ・ゲート>の選択か。エル・プサイ・コングルゥ」






















[28390] 世界線0.091015→x.091015 ②
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/06/28 21:37
世界線0.091015


―――――――もう無理だよ

黙れ

「暁美ほむらです」

何度目の自己紹介だろうか。いつもと同じガラス張りの変わった教室で、変わり映えのしないクラスメイト。変化の無い質問、回答。同じ授業、同じ時間。

―――――――無茶だよ

うるさい

「保険室まで案内してくれる」

何度目の再開だろうか。いつもと同じ席、いつものメンツ。

――――――もう無駄だよ

騒ぐな

「ほむらでいいわ」

何度目のやり取りだろうか。いつもと同じ――――――いや、魔法少女ではない鹿目まどかは、自分のことを過小評価しているようにみえる。私のことを自信なさげにみつめる。

―――――――誰も私をみてくれない

喚くな

「鹿目まどか、あなたには――――――

―――――――だって私は、ここにいる私は、世界でただ一人の放浪者。そして―

やめろ やめろ

「あなたには、大切な―――

―――――――尊敬するマミさんも、声を掛けてくれた美樹さやかも、協力してくれた杏子も見殺しにして―

やめろ やめて これ以上は

「た、たい・・たいせつ・・・ッ、・・・・たい――

―――――――まどかさえも、この手で――

やめろやめろやめろだまれだまれしゃべるなわめくなほざくなあきらめたぶんざいでさけぶなわたしはまだやれるあきらめないあがくぜったいたすけてみせるなんどくりかえしてもなんどだって―――

―――――――殺すの?また?なんどでも?彼女を?この手で?

指先が震える。声がどもる。視線をまどかにむけられない。体の感覚がぐらつく。今まで何度だって繰り返してきたのに。私は―――。

いけない。だめだ、この感情はだめだ。これがでてきたらもう保てない。動けない。耐えろ。今はたえろ、まどかを助ける。私はもどるんだ。彼女達と共にいたあのころに。

―――――――戻れるの?

「―――――ッ」

暁美ほむら。友達――――鹿目まどかの不遇の未来をかえるため何度も時を繰り返し、そのたびに絶望をあじわった。それでも絶望を払いのけここまできた。そして、繰り返すたびに、まどかとの関係がはなれていく。諦めず今度こそ乗り越えてみせると繰り返すたびに、仲間のもとから、この身は孤独になっていく。

(だめ、弱気になるな。私はまどかをたすける。たとえ無限の時間に閉じ込められても絶対にわたし――――――

「えっと、ほむら・・・ちゃんと、私ってさ、どこかで会ったことあったけ?」

「~~~~~~~~~~~~~~~~ッ」










――――――――――――――絶叫

まどか、まどかまどかまどか―――――――――――私はいるよ ここだよ ここにいるよ 目の前に――――いるんだよ やだ やだやだやだ やめて そんな目で そんな声で よくしらない他人のように接しないで 私は 私は――――――――ここにいるんだよ まどか――――もう もう一人はいやだよ 寂しいよ 怖いよ







「・・・・・・・・・・・・・・・助けて」






一人はもういやだよ


それは叫びだった。
―――――叫びかもしれなかった。それは叫びとは言えないかもしれなかった。それは叫んだ本人の近くにいた人間にも解らなかったほど小さな叫び。仮に場所が満員のエレベーター内でも誰にも聞こえない、小さな、吐息のような小さな言葉。ゆえにそれは叫びとは言えないかもしれない。

―――――――私のしてきたことは、私の願いは、無理だったの?無茶だったの?無駄だったの?












リーディング・シュタイナー
世界線を観測する岡部倫太郎の有する力。世界線の移動にともなう記憶の再構築を受けぬかわりに、移動前の世界線での記憶を保持することができる。本来はありえない現象。過去が変われば世界線は移動する。過去が変われば未来、つまり現在が変わる。過去を変えた時からの現在までの経験が変わる。右の道に進む過去を、左の道に進む過去に変えれば、右の道に進んだ経験は消去され、左の道に進んだ現在までの経験しか残らない。右の道に進んだ記憶は、世界線の移動とともに、左の道に進んだ記憶に再構築される。ゆえに、リーディング・シュタイナーをもたないものは移動前の記憶を保持できない。



かつて岡部倫太郎の仲間はいった。

『みたこともないのに、きいたこともないのに、何故か知っていたり。見たことがあるように感じる――――デジャブってやつ?それは別の世界線での経験を少なからず覚えているのかもしれないよね――――――つまりリーディング・シュタイナーは誰しもが持っている可能性があるね』




それは叫びだった。
―――――叫びかもしれなかった。それは叫びとは言えないかもしれなかった。それは叫んだ本人の近くにいた人間にも解らなかったほど小さな叫び。仮に場所が満員のエレベーター内でも誰にも聞こえない、小さな、吐息のような小さな言葉。ゆえにそれは叫びとは言えないかもしれない。

――――ほむらの脳裏に聞いたことのない言葉がきこえる

『無理だったかもしれない。無茶だったのかもしれない。でも―』

それでも少女には,鹿目まどかにはそれが聴こえた―。聞いているだけで身がすくみ、目をそらし、耳を塞ぎたくなる―――――、ただ一言の、決して表にはださないときめた。小さな小さな、本人すらきずかないその絶叫が――――聴こえた。

――――知らない青年の声

『絶対に無駄なんかじゃ無かった。』

だから――――世界は――――

世界線0.091015 → 0.954815




「助けるよ。ほむらちゃん」


世界線0.954815 → 1.264856


越える。



「私は、ほむらちゃんをたすける」



世界線1.264856 → 4.687157


声が聴こえる。



世界線4.687157 → 7.684265


まどかの表情はいつか、どこかでみた。―――自信に満ちている―――大好きなやさしい笑顔



世界線7.684265 → 世界線9.678541


「私は――――― 『俺は―――――



世界線9.678541 →


「ほむらちゃんと―――――   『君と――――――




「ここに―――  『ともに―――





世界線x.091015














[28390] 世界線0.091015→x.091015 ③
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/06/22 03:15
世界線x.091015



トゥットゥル~~~

「・・・・・・・・むう。」

あの後、この世界線での自分の立ち位置を知る為に、まどかと朝食(鹿目和久作弁当)をとり、世間話ながら探りをいれる。自分とまどかは幼馴染。これはよし、現在共に市立見滝原中学校に向かっている。

幼馴染との学校までの散歩ではない。かといって学生でもない。当然だ、この世界での姿は自分の元いた世界の時よりも若返っている。記憶がたしかなら、今の年齢は18~20といったところか。これで中学生としてつとめてみろ。ただでさえ実年齢よりも上にみられることが多いのだ。トラウマが新たに刻まれるだろう。

つまり俺は市立見滝原中学に散歩や登校ではなく出勤するために歩いているのだ。警備員や清掃員ではなく「教師」として鞭をとるのだ。むろん正職員ではなく、臨時のバイトのようなものだ。特別課外授業の一環で外からの人間を招き生徒達に・・・・・簡単にいえば様々な授業を受けていろいろ経験しろ。といったものだ。自分が採用されたのは外部の人間、何も全員が大学の教授じゃなくて、高校生や、地域の大人など、文字どおりいろんな人間を採用していて、職員に鹿目夫妻の友人がおり、そこからの推薦があったのだ。・・・鹿目夫妻には頭があがらないな。

あの世界の我が右腕{マイ・フェイバリット ライトアームズ}にしてHENTAI紳士、スーパーハカ―、頼りになる男、大切なラボメン――――、奴なら喜ぶだろうか?。

話がそれた、ともかく俺は臨時教師だ。―――これも問題無い。すでに別の世界線で経験済みだ。まどかに聞いたところ授業内容も変化はみられないし大丈夫だろう。

「さやかちゃ~ん。仁美ちゃ~ん。おっはよーーー」

「おはよ、まどか、岡部さん。」

「おはようございます。まどかさん、岡部先生。」

まどかが、前を歩いている生徒に声をかけ早足でおいつく。美樹さやか。志筑仁美。まどかの同級生、クラスメイト。自分の受け持ちの生徒。

「おはよう英雄殿&お嬢。元気そうでなによりだ。課題の方は大丈夫だろうな?あと二人とも俺の事は鳳凰院先生と――――、」

「はあ、相変わらず人のことを変な仇名で呼ぶよね。しばらく休んでたのはそれを治すためじゃなかったの?」

「―――もう、さやかさん。年上の方に失礼ですよ。すいません鳳凰院先生。課題の方は・・・一応?大丈夫かと」

さやかは呆れ顔、志筑仁美はやや困った顔で返答する。きっといつものやりとり、でも大切な時間、だから俺はこう返すんだろう、きっといつものように―――――。

「フゥ~~~~~ハハハハハハ。その強気のs「オカリン、朝から大きな声はダメだよ」――――むう。」

まどかの正論に沈黙してしまう。たしかにまだ早い時間帯といえなくもないし口を閉じる。しかし、このての世界線でのまどかは俺に対して意外と強気というか何というかツッコミがよくある。幼馴染効果だろうか、朝探りをいれて感じたときは、キュウべえとまだ契約はしていない。魔法少女になっていないまどかは大抵の場合引っ込み思案の女の子だったが――――。まあいい。元気があるのはいいことだ。そうゆう世界線も無かったわけじゃない。

「相変わらずだね~~~~。」

「仲が良くて羨ましいですわ。」

「うん。幼馴染だからね。」

「だがしかし、まどかは私の嫁なのだーーーー・」

「きゃあ、――もうさやかちゃんったら」

「あらあら、ふふ。」

三人の楽しいそうな声がきこえる。いくつもの世界線できいてきた声。大切な時間。守ってみせる。だから暁美ほむら。彼女が転校してくる前に確認すべきことをすませておかなくてはならない。――――特に美国織莉子。未来視の魔眼をもつ彼女の存在は不安と期待の両方だ。彼女が現れる世界線はそう多くはない。しかしほとんどの場合がラボメンの命に関わるから楽観はできない。ゆえにすぐにでも確認したいところだが―――――――



『おっはよ~~~、オカリン』

『オカリン、トゥットゥル~~~』


まどかの、あの朝の挨拶をきいてから、どうも元の世界の幼馴染の口癖が幻聴になって頭にさっきからリピートしている。

(落ち着け―――――と、いったところか。―――そうだな、時間はある。今はこの時間を大切にしよう。)

余裕がある。というわけではないが、あせって失敗してもしかたがない。今は何よりこの時を無視してまで動くことはない。この温かな気持ちに今は身を委ねようと、岡部は三人のやりとりに視線をむけ、「ふう、」と息を吐き、この大切な時間を眺めていた。



「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」

「―――ん?どうした三人共?」

気がつけば三人がこちらの様子をうかがっている。

「いや~、岡部さんってさ、私たちのことを

「たまにですけど

「とっても、やさしい顔でながめてることがあるな~~って、

「・・・・・・・・・。」

気づかれていた、というかそんな顔をしていたのかと、それも年下の女子中学生に。岡部は深紅の携帯を耳にあて―。

「――――ああ俺だ。小娘どもが俺の演技に騙されているのに気づいていない。このまま奴らを―――、なに心配するな、勝利はこちらの――――」

すこし恥ずかしく思い、岡部は鳳凰院凶真となる。そしてそれを知る彼女たちは

「はあ、まぁーたそうやって逃げる。」

「オカリンは照れ屋さんだからね~」

「そうですわね、まどかさん。」

「ええいうるさい。さっさといくぞ。」

そこには、とても温かい時間がながれていた。







――――――市立見滝原中学校 廊下

「早乙女先生。わかっていますね?」

「はい」

この学校の教頭が女性の教師、まどか達の担任、早乙女和子に確認をとる。彼女達は今、岡部の授業が行われているクラスに向かっている。彼をクビにするかどうかについて話し合うために。

「彼の授業内容は思考実験、試行錯誤による論議。ディベートのようなものと最初はきいていたが、最近は生徒達に未来ガジェットとかいうガラクタを作らせているようではないですか。ご家族から苦情がでてますよ。最近は子供が岡部先生の珍妙な言動ばかりの話をしていると、帰るなりガラクタをつくっているとね。あなたの推薦できた彼がね。」

「はい」

早乙女先生は素直に答える。言い返したい気持ちもあるが教頭の云うことも少なからずわからないでもない。特に最近生徒に作らせ始めた未来ガジェット。これがヤバい。彼がいうには、「独創的なアイディアがこれからの人生には必要でしょう・・・・・なんたら」。その結果。

美樹さやか 未来ガジェット『俺を誰だと思っている』 部屋にセットすることによりプライベートを守ります。三回ノックせずに扉をあけるとペットボトルロケットがとんでくるコンセプト

教室に配置したところ犠牲者多発。部屋は水浸し。誰も幸せになれない未来ガジェットだった。

鹿目まどか 未来ガジェット『これが私の全力全壊』 同じく部屋にセットすることによりプライベートを守ります。特定のモノ(盗まれそうなの)を正しい手順で取り出さないと大きな音を出して犯人を威嚇する防犯ブザー的なコンセプト

教室に配置したところガラス張りの壁に亀裂、保険室に駆け込む生徒多数。散々だった。

他にも似たような未来ガジェットが生産中である。それも生徒が進んで参加。もはや次の授業までの課題である。たしかに自主性はあるが、自宅でこんなのが生み出されていると知ったら、保護者の苦情もわからなくはない。

「今日の授業で彼と生徒達の様子を確かめます。問題があれば即刻クビです。」

「はい、本人には秘密にしています。抜き打ちではありますが本人もあれだけはっちゃけてたら、ある程度覚悟はあるでしょう。」

早乙女先生は真顔で嘘をはき、教室に辿りついた。岡部には抜き打ちのチェックがあることを伝えている。ゆえに今日は課題である未来ガジェットの発表を延期(どのみち彼らはやる たとえ放課後でも)し、男子と女子に分かれたディベート、討論を行っていた。ガラス張りの教室は中の様子は確認できるが声は聞こえずらい、なんの議題かはしらないがなかなか白熱している様子が窺えた。

「だから必殺技には名前を叫ばなきゃダメだろ、常識的に考えて」「どうして人はパンツをはくんだ」「絆創膏の英語がファーストエイドなのが納得いかないの。ゲームで使ってて意味知ったらとてもショックだったわ。」「私達がガンダ―

「とても白熱してますね教頭先生。」

「彼は生徒を焚きつけるのがうまいわね。・・・・そこは評価していいかしら。」

防弾性の高いガラス(たび重なる修理による強化)により岡部の職生活は助かっていた。日々の積み重ねである。

しばらく授業風景を眺めていると授業終了の鐘がなり、教室から岡部がでてくる。

「これは教頭先生、どうなされました?」

「はあ、なにちょっと話がしたくてね。」

これはいつものどおりだな~と、早乙女は思った。教頭も知っているのだ。彼、岡部倫太郎、鳳凰院凶真は

「ではしばしお待ちを、それでは諸君。この俺鳳凰院凶真の授業は終了だ。」

彼は生徒達に右手をまっすぐ向け、左手を人差し指を額にくっつけポーズをきめ、声を出す。生徒が皆、岡部に顔を向ける。いつものように、授業終了のあいさつを。


「エル」


家で岡部先生の珍妙話ばかりするほど


『『『『『『『プサイ』』』』』』』』生徒一同


彼は、


『『『『『『『『『『コングルゥ』』』』』』』』』』 岡部 生徒一同



生徒に人気があるのだ。







「「・・・はあ」

教頭先生と共に私は今日もため息をはいた。











思考 考察 検証 ―――あとがき

当方の作品に目を通してくれた皆さま方に、まずは心からの感謝を




早速本題へ。みなさんは「STEINS;GATE」はご存じとは思われますが、「うみねこの鳴くころに」はご存じでしょうか。

私かっこうはこの二作品に心奪われました。

文章による絶対の真実。にもかかわらず発生する矛盾的状況。これらをただ否定するのではなく。己の中で状況を確認。登場人物の台詞。状況。考え方。でも決して全てをそれに頼ってはいけない。その人物の先入観や、それによる台詞に引っ張られないようにする。なにが絶対の真実で、なにがひっかけなのか。真実の中の向け道等、私はこの二作をとおして読み手の思考、考察、検証することの楽しみ方をしりました。


わかりずらい説明かもしれませんが当方の作品も読み手に自ら作品の矛盾点をみつけてもらいたいです。



皆さんが物語上感じた違和感、矛盾点を、『こう考えたら、あれ、理屈はとおるな』と

皆さまの考えを思考し、考察、検証していきながら当方の作品に目を通してくだされば、うれしいです。




そして、いつかこの作品が完結したとき『こういう結果になったか』『自分の考えはこうなったな』『結局矛盾したまま終わりやがった』等の、感想をいただけたらと、日々思いながら投稿していきたいです。











[28390] 世界線x.091015 「巴マミ」①
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/07/01 13:56
世界線 x.091015


私、巴マミは

「・・・・やっと、・・・やっと会えた。」

中学三年生で、魔法少女で、

「俺は―、・・・・君をずっと探していた。

最近胸の大きさに悩んでいて

「―――――――てほしくて」

今年上の男性から、

「でも―――――――あって、何故か――――――で、」

学校の有名な臨時講師から

「だけどこうやって・・・・ッ。君に――――」

今まさに全ての問題、障害を突破してきたような真剣な顔で

「巴マミ」
「は、はい?」

私の目をまっすぐ見詰めながら

「―――――――――――俺と一緒にいてほしい。」



友達とか告白をとばして生まれて初めて求愛されました。










数時間前 見滝原中学校玄関付近
――――――――ヤンデレ魔法少女とエンカウント。

・・・・・・・・最初から話そう。教頭先生との会話(未来ガジェット創作での注意・保護者からの苦情等の報告)を終え、今日の授業を全て消化した俺は暁美ほむらが転校してくる前に他の魔法少女とのコンタクトを果たすために三年生のいる教室に足をむけた。目的の人物の名は「巴マミ」。金髪縦ロールの、おそらくこの世界線でもすでに魔法少女として活動しているであろう少女。

「休み?」
「はい、巴さん今日は風邪でお休みって朝担任が言ってました。」

―――風邪で休み。魔法少女は普通の人間よりもずっと丈夫だ。風邪などそうそう罹らんし、変身すればすぐに完治するだろう。優等生である彼女がズル休みをするとは思えないし、おそらく魔女関係だろうか?

「・・・・・ふむ。食事中邪魔したな。ありがとう。」
「いいえ~。」
「っていうか巴さんに何の用なの鳳凰院先生?」
「あ、気になる!なになに、何かやらかしたの?」

巴マミの所在を教室でお昼の弁当をつついていた女子グループに聞いたところ、彼女は休みとの情報はつかんだ。が、いかんせん。彼女は有名だ。成績優秀、スポーツ万能、容姿も良く、物腰柔らか、面倒見もいい性格。ようするに人気があるのだ。そして会話が聴こえたのだろう。教室に残っていた生徒もこちらに集まってきて次々に言葉を発する。

「何々?巴さんがどうしたって?」「なんか鳳凰院先生がマミさんに会いにきたって。」「・・・・・逢引?」「告白か!?」「許さない、絶対にだ」「あれじゃね?先週のー」「―――ああ、未来ガジェット?」「すごかったよね~、私感動したし」「ウチワと小型扇風機で何故か壁が――――」「射線上に人、いなくてよかったよね」「自動であおいでくれるってコンセプトがな」「あの時のマミさん可愛かった」「目が点だったね」「ラブ」「ああ、ラブ」「ラブだね」[Yes we love]

気づけば教室でいかにマミが可愛かったかの討論が始まっている。彼女は皆から愛されていると実感する。このことを伝えたらきっと顔を真っ赤に恥じらうだろう。――――――すぐにでも伝えたい。「君は愛されているな」。と、やさしい彼女につたえたい。

「・・・・・まったく、相変わらずだな。」

何度も繰り返してきたこの[世界]で、もっとも仲良くなりたい人物。彼女はベテランの魔法少女であり、なにかと融通もきく、彼女はやさしく頼りになる、岡部は何度もそのやさしさに助けてもらった。だから彼女に頼ってしまう。年下の少女に頼りすぎの気もするが最早なんのそれ。それに岡部は知っている。彼女の脆さを。彼女はかっこづけで、見栄っ張りで、厨二病で、――――とても、さみしがりやだった。

巴マミは、皆の前では明るく面倒身がよく頭もいい優等生としてすごし、生徒からはもちろん、生徒の模範というべき存在として教師からも評価は高い。彼女に告白する生徒も数多くいる。そして、外では人知れず人外の魔女と戦い平和を守っている。きっと必殺技を叫ぶ彼女に危機を救ってもらった人がこの町にはたくさんいるだろう。戦う彼女の姿は美しく、彼女に憧れる人間はどれだけいるのだろうか?

そしてどれだけの人が彼女のことを知っているのだろうか?彼女は一人暮らし。両親は事故により他界している。彼女の面倒見のいいところや、魔女との戦いは彼女の性格や、戦いの「恩恵」にもよるが、そこには寂しさの裏返しもある。

彼女は寂しいのだ。一人は怖い。孤独は嫌。―――――ゆえに彼女は人の世話をやく。頼りにされたくて、寂しくないように。

聡明な彼女は気づいている。自分が寂しがり屋のことを
そして自分には勇気がないと、臆病者だと、一人ぼっちだと塞ぎこむ。

岡部も最初のころは気づかなかった。彼女はいつも明るく、余裕をもって、皆を安心させるように笑っていたから。でも何度も彼女と関わるたびに、何度も繰り返すたびに気づいた。彼女は自分で思っているより何倍も寂しがり屋だ。すこし突き放すとすぐに不安になる、気づいていないのか若干涙目だ。よくバイト戦士とからかった。――――そんな彼女を、すごく愛おしいと思う。
寂しがり屋のくせに、臆病者のくせに、誰かのために戦う彼女を―――。

彼女は守りたい人で、自分は彼女に守られていた。
彼女は助けたい人で、自分は彼女を助けきれなかった。


――――――――――会いに行こう。巴マミに。


相変わらず自分は彼女に頼りたいらしい、そして頼りにされたいらしい。君にいてほしいと伝えたいらしい。

(やれやれ、中学生相手にまるで惚れこんでるみたいだな。)

・・・・・・・あくまでも仲間として、友人としてだ。

しかし目の前で彼女の話題で盛り上がるクラスメイトを見ているとなんか悔しい。彼女はラボメン(まだ予定だが)、魔法少女のことも含め自分の方が彼女を知っている。なのに「超電磁鈴蘭なんたら」なる未来ガジェットの記憶を持たない自分は会話に参加できない。――――ゆえに。

「諸君。俺はこれで失礼する。――――エル」

『『『『『――プサイ――』』』』』

『『『『『『―――コングル―――』』』』』』


――――彼女に、巴マミに会いにいくため教室をあとにする。








巴マミはおそらく登校中に魔女の気配でも感じて街中をうろついているのだろう。ならば適当にうろついてれば彼女には会える。仮に会えなくても時間になれば彼女の住むアパートにいけばいい。不審がられるとおもうが魔法少女関連といえばなんとかなるだろう。

(とにかく一つでもグリーフシードを分けてもらわねば)

先ほどの騒動で忘れかけたが当初の目的を再確認。

グリーフシード。魔女が孕んでいる黒い宝石状の物質。魔法少女は魔法を使用するとソウルジェム、各魔法少女がもつ魔法少女の証にして魔法の源。これは魔法を使用すると(宝石状のソウルジェム内に)穢れがたまる。穢れがたまるほど魔法の効率がわるくなる。グリーフシードはソウルジェムに溜まった穢れをこれに移し替えることで、再び魔法を使えるようになる。

岡部が求めているのはこれだ。ソウルジェムを持たない岡部には必要ないと、魔法少女以外には無用の長物と思われるが岡部には必要だ。他の魔法少女への交渉用――――では無く。戦うために。

(しばらくは他の世界線での経験上必要ないと思うが、同じ世界線でない以上油断は禁物だ。あるにこしたことはないだろう。)

まずは学校からでるため玄関に向かう。

そこで

「・・・・ん?そこの生徒、授業はそろそろ始まるぞ。」

玄関に向かう途中に女子生徒を見かけ岡部は臨時(バイト)とはいえ一応教師として声をかける。

岡部の声に背をむけていた女子生徒は振り返る。左側につけたヘアピン。裾から覗くシャツ、リストバンド、靴下はみな左右バラバラ。

(・・・・・・・なんか不吉な予感が)

それらは決してだらしのない印象ではなく。

(・・・うん。逃げよう。俺の会いたい魔法少女は巴マミ。マミマミだ)

黒髪の―――どこか浮世離れした、美少女といってもいい彼女には似合っていた。

「?・・・・・・・・ああ、なんだオカリン先生じゃないか。私はこれから緒莉子に会いに―――って、なんで急に逃げるんだい?―――――――ッと、捕まえた。さあ正当な理由を述べよ。でないと私は腐って拗ねて織莉子にいいつける――――」

「うお、わ、わか、わかった。わかったから離れろ抱きつくな。あの距離を一瞬でつめるな哀戦士。」

彼女、「哀戦士・呉(くれ)キリカ」が振り向く直前には来た道を全力で逆走しはじめた(この時点で7メートルはあった)が、岡部が逆走していることに気づくと2秒もかからずに岡部の背後まで追いつき背中から彼を逃がさないように飛びついてきた。その際、岡部の背中にはやわらかい感触があったのだが、彼にはその感触に浸る時間も気づく余裕もなかった。

(しまった。この学校にはこいつが――、)

呉キリカ。見滝原中学にいるもう一人の魔法少女。彼女の戦闘能力は高い。魔法で創った足まで届く鋭い三本の爪。その一振りは並みの魔女なら一撃。元からの身体能力による素早さ、さらに相手の時間を遅滞させる独自の魔法。一対一の戦闘で彼女に勝つのは難しいだろう。パートナーの魔法少女と組まれたら勝算の――――。

「愛戦士。なんて嬉しい言葉だ。」

自分にしがみ付く少女。味方ならどんなに頼もしいだろうか。だが簡単にはそうはいかない。

数多の世界線で岡部は何度も彼女に殺されかけている。油断はできない。

「・・・哀戦士?」
「うむ、愛戦士だオカリン先生」

彼女はパートナーの少女を狂的なまでに溺愛している。彼女の障害になるものには一切の遠慮、加減、容赦をしない。彼女のためなら同じ魔法少女でも殺す。「愛」について独自の考えをもっていて「愛は無限に、有限だ。」を合言葉に呉キリカとの会話にはいつ戦闘に発展するかわからないので注意が必要だ。

(今戦いになれば何もできんぞ、―――――しかし何だ?これまでの世界線と様子が?)
「哀戦士よ、すこしいいか?」
「ん?なんだオカリン先生、・・・・ああなるほど、前からがいいのだな。心得た。君は大胆だな」
「ええい違うは馬鹿者め。」

いそいそと岡部の正面に回り込むキリカを岡部は引き剥がす。

(なんでこんなになれなれしいんだ?オカリンとか呼んでるし、)

あまりにも自然にくっ付いてくる。ようやくこの「魔法のある世界」に「元の世界」、この世界に因果の無い自分にもようやく因果というものが定着してきたと、時間の繰り返しの中べ漠然と感じてきたというのに、それが妙な方向に向かっているような気がする。

「なんだ、つれないではないか。私とオカリン先生の仲ではないか。」
「どんな仲だ。それに俺はオカリンではない、鳳凰院凶―――
「あの愛らしい生徒が『オカリン』と呼んでいるではないか。」
「・・・・・・・まどか、か。はあー」

この世界線の幼馴染は―――――

「ふう」。岡部はため息をつき冷静になる。どうやらこの世界線の彼女とは「まだ」敵対関係にはないらしい。
それでも油断はできない。どこか壊れている哀戦士はパートナーの彼女のためなら顔見知りでも殺す。殺せるのだ。いつかの世界線で彼女は学校の皆を巻き込んだ殺戮を行ったこともある。そう簡単に安心はできない。

「まあいい、授業のにはなるべくちゃんと出ろよ哀戦士、留年するぞ」
「それは困る。緒莉子と同じ高校に通いたい。」
「ならば少しは勉学に励むことだ。俺はもう講義がないのでな、これで失礼させてもらうぞ」

もう少し彼女との会話で情報を集めたいがグリーフシードが無くては何かあった時に対応できない。
ゆえに当初の目的、巴マミの探索にうつるべく会話をきる。―――それに。

「むう、もう少し会話のキャッチボールをしようよ、私は織莉子以外にあまり話し相手がいないのだ~よ」
「口調が変だぞ哀戦士。すまんが急ぎの用件があってな、また今度だ。」
「・・・・わかった。また今度、その時は『また』―――――

彼女、呉キリカも、パートナーの「美国織莉子」も本来はやさしい少女だ。ほとんど殺しあいの敵対者でしかなかったが、彼女達と協力した世界線もたしかにあったのだ。ならばきっと彼女たちとも

(彼女達と解りあえると信じて――――――

信じて。岡部は世界に――――裏切られる

「あの夜のようにお互いの愛を語り合おうオカリン先生。」
「ぴょッ?」










世界が凍った。世界は凍った。


岡部は気づいてなかったが二人のやりとりを眺めていた者は以外といた(岡部は何かと有名人だ)。聞き耳をたてていた生徒は固まり、近くを通りかかった職員は運んでいた教材を落とし、鐘が鳴る前に教室に戻ろうと走っていた生徒はそのまま壁に突っ込んだ。――――――岡部は思考が固まり社会性を落とし、今後の生活のための壁にぶつかった。

「うん。私の『愛は無限に有限』にという考え方は変わらないが、オカリン先生のいった愛の考え方には少なからず感銘をうけた。まさか私が愛について織莉子以外の他人とここまで話するとは――――――

その台詞に周りは状況を理解。

(((((((―――ああなんだ、いつものか、ああびっくりした。いやホントびっくりした!)))))))

岡部の女性関係の誤解は彼の臨時講師のバイト開始のころからあとがたたない。よくも悪くも彼は有名人で何かと噂がたつ。いつもの厨二病の台詞も奇跡的のタイミングで生徒と職員の心をうち、勘違いさせてしまう。だから今回も「それ」だろうと考えそれぞれの向かうべき場所に向かう。
そして岡部は――――

「うんうん、時に愛は弱く、儚く、一時の幻のような存在かもしれない。だが確かに――――――ん?おーーーーい、オカリン先生どこにいくのだ。まだ話は――――――」



今度こそ運命石の扉{シュタインズ・ゲート}に辿りつくために―――――――――逃げた。




そおして、夕日が沈みかけた誰もいない公園で岡部は「まどか」から届いていたメールを読み終えて時間を確認する。

16;45

メールの内容は『なんかお昼頃オカリン関係の騒ぎで職員会議寸前だったみたいだけど「いつもの」誤解で解けたみたいだから怖がらずに早くラボに帰っておいで~~~~♪』

このメールに気づくまで岡部は走り続けていた。自分の明日からの社会的状況と後ろから「愛について」だの「織莉子に」だのと聴こえてくるキリカの追跡から逃げ切るためひたすら走り続けた。気づけば16;45.
学校を出たのがお昼頃だとすれば実に3時間近く走っている。

「・・・・・時間の進み方がおかしい。・・・なぜ俺は一人でこんな時間まで全力マラソンを」

キリカからの追跡を奇跡的に振り切り、まどかのメールから「いつもの」の単語が気になるが我が身の明日は刑務所ではないらしく、また3時間あまりの運動も可能と理解できた。だが――

「・・・・・結局マミには会えず足はパンパン、たった一つの出来事でビクビクするとは――。情けないな俺は」

『帰りは遅くなるから今日は家に戻れ』と簡単なメールをまどかに送信し、公園のベンチに横になる。

(今日は無駄に、・・・いや一応有意義に?疲れたな)






体力の限界か、慣れないことでの心労か、岡部は落ちてくるまぶたに抗うことができなっかた。
そして、岡部が寝息をつき始めた時、公園に彼女が現れた。

「あら、鳳凰院先生?」

魔女探索を終えてこれから帰宅しようと公園を通りかかった「巴マミ」は、学校で話題沸騰の臨時講師をみつけた。
――――?
どうしてこんな所で?まだ本格的に寒いというわけではないがこの時間帯は肌寒い。こんな所で寝ていては風邪をひいてしまう。

「えと、先生起きて・・・起きてください。風邪を引きますよ。鳳凰院先生」

ゆさゆさと体を揺らすと岡部は身を震わせゆっくりと体を起こす。まだ寝ぼけているのか視線が危うい。

「あ、あの、大丈夫で―――――



「・・・・やっと、・・・やっと会えた。」
「え?」

マミの言葉を目の前の青年の言葉が遮る。

「俺は―、・・・・君をずっと探していた。」

まだどこか眠たげな視線だったが、途切れ途切れの言葉だったが、私、巴マミは

「―――――――てほしくて」

そこには確かな意思と

「でも―――――――あって、何故か――――――で、」

今まさに全ての問題、障害を突破してきたような真剣な顔と

「だけどこうやって・・・・ッ。君に――――」

やさしい笑顔で

「巴マミ」
「は、はい?」

私の目をまっすぐ見詰めながら

「―――――――――――俺と一緒にいてほしい。」



友達とか告白をとばして生まれて初めて求愛されました。そして――――



「・・・ふ?ふにゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~う!!?」

ボシュウッ、顔どころか体中を真っ赤にして公園の真ん中で、いままで出したことのない奇声を大声で発していた。







「・・・・・・・はッ!?」
「ん?どうしたまどか」
「なんかオカリンがかつてない程の勘違いをさせているような?」
「・・・・・・あーうん。またかい、岡部の奴、次から次えと飽きもせず」
「まあキョ―マ君には自覚がないんでしょうけどね」
「・・・立ち悪いよな、相変わらず。しかし相変わらず感度いいな岡部レーダー。」
「幼馴染だもん。・・・・大丈夫かな~オカリン?」










[28390] 世界線x.091015 「巴マミ」②
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/07/02 00:00
世界線x.091015


見滝原中学校三年のとある教室は現在混沌と化していた。

「・・・・・うにゃぅ///」ポテッ
「わーーーマミさんしっかりーーー」
「なぜここでクロスカウンター?」
「これは・・・・もう、駄目だな」
「まさかのオーバーキル」
「無自覚でよくもここまで・・・・・」
「大丈夫かマ――――
「もうやめてオカリン先生、巴さんのライフはもう0よ」
「俺はオカリ―――
「それはいいから、衛生兵、衛生兵はいないのかーーー」
「・・・・・ちくしょう。巴が超可愛い・・・・鳳凰院の野郎、・・・・本当に・・・・ありがとう」
「「「ですよねーw」」」
「きゅ?・・・きゅきゅ・・ッ!うきゅう」シュウ~~~・・・
「あ、痙攣してきた。」
「くそ、いったい何がおこって―――――

『『『『『『いや、全部あんたのせいだから』』』』』』




昨日
岡部はヤンデレとの闘争(逃走)をのりきり、明日の我が身を手に入れ(刑務所回避)、ついに公園でマミと出会えた(というかむこうから来た)。
そこまではよかったのだが、岡部は――――全力で暴走した



「・・・・やっと、・・・やっと会えた。」

この世界線からの数々の試練に耐え

「俺は―、・・・・君をずっと探していた。」

巴マミ、俺の捜し人

「(話を聞い)てほしくて」

この世界で何度も助けられて助けられなかった人

「でも(ヤンデレ魔法少女に)あって、何故か(刑務所いきになりかけるわ)で、」

もう、会えない――――そう思っていたのに

「だけどこうやって・・・・ッ。君に――――」

やさしい君は

「巴マミ」
「は、はい?」

また俺のことを助けにきてくれた 会いにきてくれた 

「(君に、また一緒にいてほしい、俺達ラボメンと)俺と一緒にいてほしい。」

心からそう思う。

(何を言っているのか、今は解らないだろう、でも言わずにはいられない。俺は、俺達ラボメンには君が必要なのだから)

言い訳として、岡部は三時間近く走り続け、訳の解らない誤解からこの世界線の自分の性癖等を必死に悩んでいた、疲労は大きい。おまけに寝起きだった。が、数多の世界線を越え、数々の思い出を記憶している岡部の真剣の想いはたしかに巴マミに伝わった。

もう一度確認するが岡部の真剣な想いは伝わった。疲労困憊の身で起きかけの頭での言葉でも確かに伝わった。そんな状態だから言葉も不明瞭で声も本人が気付かないほど途切れ途切れで小さく、聞き取れない部分もあった、―――当然(   )の部分である。
確かに巴マミには伝わった。

「・・・ふ?ふにゃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~う!!?」

致命的な伝え方をしてしまった。


「マ、マミ?」
「ひゃッ、ひゃい?」

かみかみである。マミは本来こういう場面には強いとはいえない、告白こそ何度かされた経験こそあれど、ここまで真剣に告げられたことはない。豆腐のメンタルに数々の戦いを越えてきた男の真摯な言葉は絶大の衝撃を与える。悪い言い方だが、その辺の告白など最早漫画でいう背景である。
―――さらにこの男

「・・・・ッ、すまない巴マミ。突然こんなことを言われても困惑するだろう」
「―――あ、あの、その・・・・・////」

マミの奇声が自分の台詞のせいと察知し詫びる。その声、その態度は真剣そのもので、岡部が本気でマミの身を案じていることが伝わった。

「わ、わたし―――
「わかっている。返事は今すぐにとは言わん。だが大切なことだ、君にとって―――、いや、これは言い訳だな。巴マミ。」
「は、はい?」

一度言葉をきり、真剣な顔で

「これは俺の独善で我がままだ。俺の話をきいてくれないか?俺には君が必要なんだ。」

再度豆腐メンタルに衝撃をあたえた。







翌日

昨日は結局限界に達した巴マミの「あ、あし、あした明日・・・、明日返事します~~~!」という発言と共に走って逃げられたことにより今日に持ち越しになった。

(この世界線のマミは情緒不安定なのか?それとも突然すぎたか?―まあ本来魔法少女や魔女に男の俺が関わっていると知ったら驚くか、しかし前回までのマミならあそこまで――――?)

今日もまどかと共に学校に向かいながら岡部は昨日の出来事を思い出す。
ちなみに岡部は昨日マミに自分が魔法の存在等の関係者であると伝えたと思いこんでいる。
実際は魔法の魔の字も出ていない。もちろん自分の問題発言にも気づいていない。

(出来れば昨日のうちがよかったが、昨日は俺も限界だったしな。)
「ねえオカリン、難しい顔してどうしたの?悩み事?」

隣りを歩いていたまどかが声をかける。その声に岡部は一度考えを切り替え―――告げる。

「ん?・・・なに大した事じゃない、それよりまどか」
「なにオカリン?」

岡部はまどかに告げる。今日から平穏は無くなるかもしれないことを、絶望との戦いが始まることを、「今回」も目指した未来を歩めないかもしれないことを、―――――だけどそれ以上に

「機密情報だが今日はお前のクラスに黒髪ロングストレートのクール少女が転校してくる。」


大切な友達との何度目かの「出会い」と「再開」があることを


「―――――その子と仲良くな、まどか」

まどかの柔らかな髪をポンポンやさしく触れるように叩きながら告げる。暁美ほむらの転校を――――。








「なんか巴さん変じゃね?」
「うん、なんかさっきから―――

クラスの視線が集まる中、巴マミは考えていた。

(昨日の岡部さ――鳳凰院先生の話ってやっぱり?・・・・ッ///、ううん、よくよく思いだしてみたら勘違いさせることに定評のある人だしきっと昨日のもそうだよね?そうよね?)

彼女は岡部のこの手の話題をいくつも知っている。岡部にその気がないことも含めて、その後自分の行いに迷惑をかけたと関係者全員に謝りにいっていたことも噂でしっている。きっと自分も勘違いしたのだと思い込む。

(あれだけ真剣な顔されたら誰だって・・・・・でもあの顔は本気で・・・・、でもいつもって、)
「むう~?」

あの時の岡部の真摯に自分に語っていた姿を、頬を染めながら首を傾げ腕を組む、その際中学生にしては大きめの胸がタユンと揺れる。

『『『『『『おお!』』』』』』

彼女は注目を集めていた。そして―

(だ、だけどもし、もし本気だったら?・・・・・ちがうちがうそうじゃない、・・・・だけどあの時のお、お・・岡部さんからは・・・私の事を思っていてくれるって伝わったな・・・・///。)
「う~~~?」

頭を抱えるマミ。さらに集まる視線。

(・・・ほ、本気だったら―?・・・ど、ど、どどどどどうしよう?私男の人と付き合ったことないし、まともに話せるのって・・・お父さんぐらいしか、クラスの男子とも恥ずかしくてあまり話せないし、・・・それにそれに、あ、あれ?付き合いだした男女は名前で呼び合うんだよね?・・・じゃ、じゃあ、えっとこう)

「きょ、きょーま・・・じゃなくて、りり、りん///、りんたろう・・・・さん///・・・・・って、―――――って、う、うきゅぅ~///」

ボヒュッ、一瞬でリンゴのように赤くなるり、何もない空間に手を振り邪念を振り払う。

(わたし――――なんてことを考えて~~~!)

机に赤くなった顔をクラスの皆から隠すため寝たふりをきめる。――――耳は完全に赤いしすでにクラス全員が自分に視線を向けていることに気づいていない。

「―――ブフォ、は、鼻血が」
「――ッ、な、なんなの、可愛いわ」
「く、くそ。なにか呟いているがきこえねー」
「もう我慢できない、抱きしめてくるわ」
「何をだよ。その手のワキワキを止めろ、・・・・・いいぞいけ」
「止めなさい馬鹿、あんたは背中にでもくっついてろ。・・・私は正面をいただくわ」
「させるかボケェー、そのアヴァロンは俺んだー」
「とりあえず写メ――
「ばか、それじゃ気づかれる」

ガシィ。全員で円陣を組む。作戦会議である。そして己の目の前で自分以外の人間が円陣を組む光景に気づかないままマミは冷静になる。

(落ち着きなさい巴マミ。あなたはベテランの魔法少女。冷静になるのよ。昨日のことはいったん忘れて今日改めて話をきけばいいじゃない!うんそう、キュウべえを数えておちつくのよ。)

彼女は顔を上げる。うん大丈夫、もうなにもこわくない。である。

「1きゅっぷい、2きゅっぷい、3きゅっぷい・・・・・・」

声に出ていたが彼女は気づいていない。所詮豆腐メンタルである。クラスの注目度が上がりゆく中




「フゥーーーーーハハハハハハハハ、鳳・凰・院・凶・真・降・臨。おはよう諸君、さあ授業の時間だ、さっさと――
「きゅっぷい///!?」

混沌降臨

「ゴフゥ、な、なんなんだいったい」
「へ、変よ?今日のマミ・・・あなた―」
「ち・・・鼻血が・・・」
「・・・・意味が、わかんね」
「なにが、・・おこってんだ?」
「なにしてんだよ」
「―ッ、しんじらんね」

(『『『『『『か、可愛すぎる?why?』』』』』』)

クラスの皆がマミの姿に感銘を受ける中、世界を混沌に導く鳳凰院凶真は―――

「・・・・・・どういう状況だ?」
「あ、あの・・・その・・・・・」

マミが奇声を発する中、彼女以外が彼女の前で円陣を組んでいる状況をどう勘違いしたのか―――

「落ち着けマミ、何があったか知らんが俺は君の味方だ(やはりこの世界線の彼女は情緒不安定なのか?)。」
「ひゃ、ひゃい!?」

何とも失礼なことを考えていた。

『『『な、なんだってーーー』』』

そのやりとりを聞いていた一部の生徒があることに気づく。

「うわ、なによいきなり?」
「馬鹿野郎気づかないのか?」
「え、え、なに?なにが?」
「・・・?ああ!そういえば」
「だからなんだよ?」
「オカリン先生が名前で呼んでる」
「なん・・・・だと?」

そう、これは驚くべきことだ。彼はこれまで数多くの誤解を生んできたが、彼は学校の教師と、二年にいる彼の幼馴染以外の名前をまともに呼ばないことで有名だ。その彼が「マミ」と呼ぶ。

「え、どういうこと?」
「まさか本気なのか今回は?」
「あの鳳凰院先生が?まさか・・・」
「でもこれは・・」
「あうあう・・・・」

周りの声にマミも思うことがあるのかさらに真っ赤になる。――――そこに

「先生、そのへんどうなんですか?」

生徒の一人が踏み込む。その言葉にマミを含む全員が注目する中、岡部は

「ん?マミはマミだろう?」

何を言っているんだお前たちは?と、当たり前のようにかえされた。

「「「「素で返されたーーーーーー?」」」」
「わた・・・わた・・・わたし・・・?」

もはやマミのライフは0に近い。

「なにが先生をそこまでさせるんだ?」
「二人にそんな接点あった?」
「ん~ないんじゃね?」
「巴さんは授業終わればすぐに帰るしー」
「岡部先生はいつもあの幼馴染と一緒だしな」
「有名すぎて女性関係ならすぐ噂になるのに」
「マミちゃんに関しては何も聞かなかったよね?」
「なして?」
「見た目だけで・・・・はないね、うん」
「他に先生がマミに興味をもつことってある?」
「ん~あるとはおも――――

「そんなことはない」

岡部の言葉がクラスに響く。

「聞くがいい諸君、貴様らが何を思おうと勝手だが、あえて言わせてもらおう。―――――彼女巴マミは――最高の女性だ」

マミ「にゅ!?」
クラス全員「「「「「Σ(゜口゜;)」」」」」」

生徒の言葉を遮りさらなる混沌へ向け全力で走りだした。彼はどの世界線でもラボメンのことになると視野が狭くなるようだ。

「彼女は弱い。意地っ張りで頑固でカッコつけで、頼りにされたくて他人にやさしく接っしながらも内心ビクビク怯えているような人間だ。」

それでいきなり演説を、それも相手をたたくかのように話し始める。皆は「なにいってんだ?」と思っていたが――
巴マミを想っていると解らせる。そう感じるほどに言葉には力があった。
岡部の言葉は続く。

「だが彼女は頑張っている。安心させるために笑い、誰かのために行動を起こせる、起こしている。義務や使命などでなく己の意思で。」

魔女と日々命がけの戦いに身を投じている。ほとんどの魔法少女は無視する戦っても実りの無い使い魔にも挑む。犠牲者を出させないために。
     
(たとえ情緒不安定という疾患をかかえていたとしても、誰かのために恐怖と戦えるのだから)

岡部はマミに対し失礼な勘違いをしたまま駆け上がる。

「それでも彼女の内面は人並み以下かもしれない。臆病者かもしれない。だが、遠くない未来にはもっと魅力的な女性になっているだろう。」

「!#%‘*!!??」
「・・・・おい、なんかマミさんやばくね?」
「さっきから日本語じゃないわよ」
「・・あんだけベタ褒めされればねぇ?」
「俺、なんか聞いてるだけで顔赤くなってきた・・・・」
「安心しろ俺もだ」
「わたしも」
「ウチも」
「なぜ朝から生徒を本気で口説いているんだろーな」

その言葉に岡部は冷静になる。そして自分の発言で皆がいう「いつもの」誤解からマミに迷惑をかけてしまったのだろうと思い、普段皆には決して見せることの無い不安と後悔を浮かべながら謝罪する。

「・・・・熱くなりすぎた。・・・・聞いてくれ、誤解させるつもりはなかったんだが―――すまん。マミも悪かった、俺の考えもしない言葉で君にも迷惑をかけた。ほんとうにすまない。」

年下の自分達に頭を下げるその姿は本気で皆に迷惑をかけたと謝罪していた。それを見たマミと生徒達は

「い、いーよオカリン先生頭上げてって!」
「そう、そうだよ鳳凰院先生いつものことじゃん!」
「だ、だよな~。だから大丈夫だって」
「みんな先生のこと知ってるから大丈夫だよ」
「ね、マミもそうでしょ?」
「―――――はっ?う、うん。そうです。」

岡部の謝罪にいつもの誤解だと理解した生徒が次々と擁護する。混乱から回復したマミもやはり勘違いだったと安心したようなガッカリしたような複雑な感情で岡部に声を掛ける。

「大丈夫です、おか・・・・鳳凰院先生。私は大丈夫ですから顔をあげてください、確かにすこし・・・(すこし?)、驚きましたけど大丈夫です。・・・・・そ、それに、ぅ・・・・嬉しかったというか・・・・・わたしのこと見ててくれたんだなって、・・・いうか・・・なんというか・・・。・・・・・って!?あう、ちが、ちがくて?いやちがわなくて!?」

再び混乱するマミ。その姿に悦にはいるクラスメイト。その愛らしい真っ赤な顔に、つい目を逸らしてしまう岡部。

(妙な誤解は解けたみたいだな。よかった、彼女にいらん迷惑をかけずに済んだようだし、この様子なら彼女との関係に悪影響はないだろう)

安心する。彼女に嫌われることがなかったことに、彼女のやさしさに。―――そして

「マミ」
「あ、はい。なんですか鳳凰院先生?」

岡部は先ほどまで見せていた不安と後悔の顔をけし、まっすぐにマミを見詰める。
その顔はこの世界線では誰もまだ見たことの無い―――

「ありがとう。」

「ありがとう。君に嫌われたかと思うと、俺はもうどうしたらいいかわからなっかた。・・・・だから、ありがとう。」
(こんな迷惑しか掛けない、情けない俺をゆるしてくれて)

マミに嫌われなかったことに、許されたことに本気で安堵し、嬉しそうに微笑む、やさしい笑顔だった。





「・・・・・うにゃぅ///」ポテッ
「わーーーマミさんしっかりーーー」
「なぜここでクロスカウンター?」
「これは・・・・もう、駄目だな」
「まさかのオーバーキル」
「無自覚でよくもここまで・・・・・」
「大丈夫かマ――――
「もうやめてオカリン先生、巴さんのライフはもう0よ」
「俺はオカリ―――
「それはいいから、衛生兵、衛生兵はいないのかーーー」
「・・・・・ちくしょう。巴が超可愛い・・・・鳳凰院の野郎、・・・・本当に・・・・ありがとう」
「「「ですよねーw」」」
「きゅ?・・・きゅきゅ・・ッ!うきゅう」シュウ~~~・・・
「あ、痙攣してきた。」
「くそ、いったい何がおこって―――――

『『『『『『いや、全部あんたのせいだから』』』』』』






「転校生です。みなさん仲良くしてあげましょうね」

早乙女先生の声

三年生の教室の混乱の中、二年の、まどかのいる教室でも岡部の予想していなかった出来事が起こっていた。

(あれがオカリンの言っていた女の子かな?)

まどかの知っている岡部は、普段はおかしなことをよくいうが、時に予知のように様々なことを言い当てる。―が

(今回はハズレだねオカリン。この手の事には100発100中だったのに)

目の前の『おさげ』の女の子に視線を向けながら、岡部がしれば彼が驚く事も知らずに のほほんと考える。

(たしかに黒髪だけどストレートでもないし、クール系っぽいというか、どちらかといえば私よりおとなしめにみえるよね)

そこには






「ぁ、暁美・・・・・ほむら・・・です。・・・・よろしくおねがいします。」

長い黒髪を三つ網にし、赤いフレームをつけた。『魔法』も『魔女』も知らない内気な、どこまでも『普通の女の子』がいた。

岡部の知っている「再会」は    どこにもなかった。









あとがき

暁美ほむら転校  =  魔女の出現  =  ニトロプラス展開が近づいてきています





[28390] 世界線x.091015 「明美ほむら」
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/07/08 23:16
世界線0.091015→x.091015





―――――――――ノイズ

   ――――?   ――?
―ここは?  ―――――なんだっけ?   ―わたし? ―――・・・・まどか?
   ―――そうだ   ――わたしは   ―――?
 ―――あれ?   ―――こんなにちかくに?     ――手を
       ―――まどか?   ――――つたえなきゃ   ―――?
                               ―――――――なにを?

「ほむらちゃん?」

―――――まどか   ―――こんどこそ・・・・・・・?  ―――なに?

――――ノイズ 

   ――――わたしは   たしか?   ―警告      ―――まどかに ――?
――――魔女になんかさせない    ―――魔女?
                       ―魔法  キュウべえ   時間 ―――?
   ―――――なんだっけ?
                    ――――わたしー?

「大丈夫?気分悪くなっちゃった?すぐ保健室に案内するからね。」

『わたしの手を引いて前を歩いていた』まどかが焦った声をだしている。

――――――――あれ?     前を歩いていたのは――――わたしじゃ?    ―あれ?

「・・・・・まどか?」
「なに、ほむらちゃん?あ、歩くのはやかった?ごめんね、すこし休もうか?」
「ううん、大丈夫だよ。・・・・・・・?」

まどかに心配させたくない。まどかにはいつも笑っていてほしい。まどかの笑顔を無くさせない。そのためにわたしは――――。・・・・・・・・・あれ?

(わたし・・・今日転校してきたのに、鹿目さん―まどか――――のことを知っている?なんか記憶が?)
「――――?―――??」
「そう?よかったー、あ、今まどかって呼んでくれたね。―――――改めて、これからよろしくね ほむらちゃん。」
「う、うん。こちらこそよろしくおねがいします、かな・・・・・・・・ま、まどか?」
「うん!じゃあ行こうほむらちゃん、保健室まですぐそこだよ。」
「・・・・・ありがとう、まどか」
「いいよいいよ、『さっき』も言ったけど何かあったらすぐにいってね?『私は、ほむらちゃんをたすける』よ」

まどかがほむらの手を引いて保健室に歩きだす。



暁美ほむらは疑問に思う。

まどかが手を引いて笑顔を向けてくれる。この学校で初めて友達ができた。嬉しい。
まどかが、わたしの手を引いてくれる。嬉しい。
まどかが、わたしに笑顔を向けてくれる。嬉しい。
まどかが、わたしの友達に『また』なってくれた。嬉しい。   ―――?

嬉しい。当たり前だ。今までわたしの世界は病室だったんだ。初めて中学校に来て、困惑していたわたしを助けてくれたやさしい彼女が友達になってくれたんだ。嬉しいにきまっている。感動だ。きっとトロくさくて、勉強も運動も、はやりの服も、今時の遊び方も知らないわたしに友達なんてできないかもって思っていたのに、鹿目さん・・・まどかが友達になってくれた――なのに

――――なのになんで?   なんでわたしは―――












――――――――――――――――――――――こんなにも泣いているんだろう?

ぽろぽろ  と大粒の涙が次から次に溢れてくる。

―――でも、なぜ涙がとまらないのか
―――なんとなくわかった

とまらない。涙はとまらない。でも決してこの涙は不快じゃない。
とまらない。涙はとまらない。でも解るこの涙は不安からくるものじゃない。
とまらない。涙はとまらない。だって感じるのだ、――――この涙は

「わわわ?ど、どうしたのほむらちゃん?やっぱりどこか体調が――――?」
「―――ッぐす、…だ、だいじょ・・ッく・・・大丈夫だよ・・・・ッ・・・・ひっく・・・・うぅ・・・・・」

右手から伝わる、自分以外のあたたかい感触が、まどかだから。
彼女とは今日初めて出会ったはずなのに

――――――彼女、鹿目まどか。右手から伝わる先にまどかがいる。まどかとこうしていられる。

それがどうしようもなく愛おしくて、この瞬間のために自分は頑張ってきたと、この瞬間を自分は望んできたと、この瞬間が自分の祈りだと―――  漠然とだが、感じた。―――だから

「・・・・ひっく・・・・・・・うっく・・・・ぐす・・まどか・・・・まどかぁーーーーーーーー」

涙はとまらない。湧き上がる感情に抗えない。抗う気すら起きない。ほむらは流れ続ける涙を拭うこともせず目の前の少女、まどかの胸に飛び込む。

「にゃ?――――とと、・・・・・・・・・・・えっと、・・・・うん、大丈夫。大丈夫だよ、ほむらちゃん。・・・ここにいるよ」

自分の胸に飛び込んできた少女をまどかは倒れそうになりながらもなんとか耐え、抱きしめる。

「よしよし、ほむらちゃん、今はい~~~~~っぱい泣いていいからね。」

まどかには何故ほむらが泣いてるのか解らない、でも――――
今なお、泣き続ける女の子の髪を撫でながら、まどかはやさしく、でも決して離れることがないように抱きしめ続けた。








世界線x.091015


「転校生大丈夫?無理しすぎだって。」
「・・・・ぜえ・・・ぜえ・・・ッ、ごめんなさい、何故か・・・いける気がして」
「暁美さん心臓の病気でしたっけ?なのにいきなり全力疾走は・・・・」
「・・・・・ぜえ・・・うく・・・・、べ・・・別の授業の・・・・・ぜえ・・はぁ・・時みたいに・・こうすればできるって気が・・・・・・・・うう」
「そういえばほむらちゃん、最初は解らなさそうだったのに、次の瞬間答えわかったようにスラスラ解け始めたよね?」
「う、うん。こうすれば・・・正解かもって、・・・何故か思って書いたら正解だったから、・・・・体育も同じようにすれば大丈夫かなって・・・・」

ほむらは今木影でのびている。心臓の手術が成功し、病気も治ったとはいえ、その身は長い病院暮らしで「もやしっこ」だ。急な運動に耐えられるわけがない。ほむらもそれは解っているが何故かいけると思ってしまった。

―――――友達ができて浮かれすぎていたのかな?

まどか、さやか、仁美に囲まれながら思う。
大泣きしてから教室に戻るとクラスの皆が駆け寄ってきた。
この学校はガラス張りの教室のため、双眼鏡であたりを探索(何故か双眼鏡を持っていた そしてパンツを探索)していた皆から「教授」と呼ばれている生徒が渡り廊下でまどかに泣きついているわたしを見つけ皆に知らせたらしい。その際

「ホントはすぐに駆けつけるつもりだったんだよ、でも」
「うん、まあなんか、ねえ?」
「あの距離で謎の固有結界が――な」
「あそこに突入は無理だろ常考」
「だから空気よんでみんなで静観することにしました」

「みんなで静観」とのこと。
そのあと恥ずかしさのあまりにパニックになったりもしたが、まどかからのフォローもありなんとか落ち着いた。
ほむらが無謀に挑戦した原因はそのあとからの授業からだ。

「では、この問題を暁美さん。」
「は、はい。」(どうしよう。全然わからないよ)

ボードの前まできたほむらは問題の答えが解らない。せっかくまどかや皆と仲良くなれたのに恥ずかしい。そう思ったほむらの脳裏に映像が浮かぶ。

(あ・・・・あれ?これかな?)
「・・・・ん、正解です。席に戻っていいですよ。」
「・・・・・え?あ・・・いえ、わかりました。」

授業が終わりさやかが話しかける。

「転校生さっきの問題解ったんだ、ねね、あたしにも教えてよ」
「えと、ごめんなさい美樹さん。わたしにもよくわからなくて。」
「へ?どういうこと?」
「なんかデジャブ?答えの書かれた画面が見えたって、今ほむらちゃんとその話してたの。」
「なにその特殊能力!あたしもほしい。」

というやりとりがあって、それ以外の時間でも似たようなことがあった。そして体育の時間。

(こうやって走れば体に負担も少なく早く走れる。・・・・うん、やってみよう)

結果

「うう、気持ち悪い。」
「・・・・はぁ、ほら転校生こっちおいで。」

そう言ってほむらのそばによって膝枕をするさやか。

「はい暁美さんこれタオル濡らしてきましたから使ってください。」
「あ・・・・ありがとう、美樹さん、志筑さん。」
「気にしない気にしない。」
「そうですわ、でも無理はもうダメですよ」
「そうだよほむらちゃん、急に倒れた時はホントにビックリしたんだから。」

ほむらの髪を撫でながらまどかは皆が心配してたことを伝える。

「うん、・・・・・・・ごめんね、まどか」

注意されているのに髪を撫でられる感触が気持ちよくてついつい頬が緩む。

(みんなやさしいな、こんな時間がずっと続いてほしいな)

願う 祈る 望む 心から

(他の何もいらない、だから、わたしからこの時間を奪わないで)








昼休み教室

岡部はまどかからほむらを紹介された。――――だが。

「・・・・・・・・・・・・君は誰だ?」
「え?ぁ・・・あの・・・・・・あ・・・・暁美・・ほむらです。」
「今紹介したばっかじゃん岡―――」
「――?貴様があの『ほむほむ』だと!?」
「ほむ!?」
「鳳凰院先生相変わらず飛ばし――――」
「わあ!それいい響きだよオカリン!」
「「「!?」」」

まどかの言葉に三人が驚愕する。

「ほむほむちゃん♪」
「ま、まどか?それは・・・それだけは・・・・でも・・・・・・うう、・・・・まどかが・・・そういうなら・・・」
「だめです暁美さん。」
「そうだぞ転校生。ここで折れたら未来永劫『ほむほむ』だぞ?」
「人生で一番輝く場面で『ほむほむ』ですよ?」



『ほむほむちゃん』 『大丈夫だよほむほむちゃん』 『ほむほむちゃんは最高の友達だよ』


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ギリで・・・・・いや・・・・・・・・・・・・意外と?」
「ほむほむちゃん♪」
「うん、まど――――」

ほむらが今後の人生のターニングポイントを決定しようとしたとき



「そんなことはどうでもいい!!」



岡部の怒気―――――普段の彼からは想像もできない焦りと戸惑った。これまで聞いたことの無い声に、ほむらはもちろん、さやかや仁美、まどかさえも体を硬直させた。

「暁美ほむら、俺の質問にこた――――「オ、――――オカリン!!」――――――――――――――ッ!」

岡部の台詞をまどかの、涙交じりの叫びが遮る。
――――ギリッ
拳を握り、唇を噛みしめ耐える。落ち着け。冷静になれと自分に言い聞かせる。まだ確かめる事がある。

「・・・すまない。怖がらせてしまったな、謝罪する。だが暁美ほむら、君に質問がある。正直に答えてほしい。」
「あ・・・あのねオカ―――」
「すまないが少し黙っていてくれまどか、すぐにすむ。・・・・・・いいか?」

まどかの問いかけを遮りほむらに確認をとる岡部。
固まるまどか。
その様子に息をのむさやか達と他のクラスメイト。
ビクビクしながらも頷くほむら。

「・・・・は・・・・・はい」
「・・・・・・・すまない、本当に怖がらせるつもりはなかったんだ。この質問もちょっとした確認だ、質問の意味が理解できなければそれでいい。・・・・・もし思い当たることがあれば俺はそれらの『関係者』だと理解してほしい。君の答えがどうあれ俺は君に危害を与えるつもりはない。・・・・・・・・・質問だ。君は『何度繰り返した?今回が初めてか?』。」

岡部の質問に少し悩み顔をしたほむらは怯えながら首を振る。

「あの、ご・・・・ごめんなさい、なんのことか・・・・わたし、わからないです。」
「・・・・・そうか、・・・・・・突然こんなことを聞いて悪かった。・・・君が俺の『知っている』少女かと思ってな。・・・俺はこれで失礼する。・・・・・・・・・ああ、そうだ、暁美ほむらよ。」
「はい!ななななんでしょうか?」

教室から出でいこうとした岡部が振り返り声を掛ける。

「まどかと、まどか達と仲良くな。君は何も心配することは無い、『あとのことはまかせろ』。彼女達は知ってのとおり良い子だ。」

その声にさっきまで感じていた恐怖は消えた、そしてその声はほむらを不思議と安心させる効果があった。

「まあ、さっきまで怯えさせた俺が言っても微妙だがな」
「い、いえ、そんなことないです。」

あわててお辞儀するほむらを、「ふっ」と、やさしく微笑みながら再び教室の外に向かう岡部。
そのやさしい顔を何故かほむらには寂しげに見えた。―――――そして彼女にも

「ねえ、オカリン。」

岡部の白衣の裾をちょん、と掴み顔を伏せながら岡部を引きとめる。

―――――――なにかあったの?

・・・・ポンッ

「・・・・・・・そうだ!まどか、おまえにも聞きたいことがある、というかこの場にいる全員にな。」

まどかのやわらかい髪をワシャワシャと撫でながら岡部は出来るだけ不自然にならないよう意識しながら声をかける。
その声に今まで聞き耳を立てていた生徒も岡部に注目する。

「なに?なにオカリン、私なんでも答えるよ?」
「ありがとな、まどか。」

まどかは伏せていた顔を上げ岡部に詰め寄る。両手で岡部の胸元を掴み見上げる彼女は、どこか子犬が必死に親に縋りついているように見えた。親に甘えるように、そして子供ながら親を守るように、安心させるように。

(・・・・・・心配をかけさせたな、相変わらずこういうときはどの世界でも鋭いな。)

やさしい気持ちが生まれる。
岡部はそんなまどかを抱きしめるように、今度はやさしく両手で髪を撫でていく。
その感触に安心したようにまどかは微笑む。

「それで?なに?なにオカリン?」
「・・・・・・・・むっ」
「「ほッ」」

両手を背中にまわしはやくはやく と、まどかがせかす。険悪なムードから脱したと安堵するさやかと仁美、まどかを盗られた気がしてなんかむくれるほむら、―――ガッテムと唸るクラスメイト。

「なに、この中に――――――グリーフシードを知っている奴はいるか?」

瞬間――ザッ!と視線をはしらせる。

(とくに怪しい奴はいないな・・・・・・ほむらもまどかもシロか。)

以前まどかには探りをいれたが念のための確認だ。彼女はまだ魔法少女では無い。ほむらも、さやかも何のことか解らないようだ。

「どうやらいないようだな。ではまた明日だ。」

まどかと岡部は最後にお互いをギュウゥ~~~~ッと抱きしめ離れる。そして岡部は右手をまっすぐ向け、左手の人差し指を額に付けポーズをきめる。

「エル」
『『『『『『プサイ』』』』』 ほむら除く生徒一同
「え?え?」
『『『『『『コングルゥ』』』』』』 岡部 ほむら除く生徒一同
「な、なんなのーー?」

戸惑うほむら、当たり前だ。彼女はまだ転校初日で岡部の授業を受けたことが無い。

「フゥーーーーハハハハハハハ。今まで病院でパソコンしか相手がいなかったお前にこの鳳凰院凶真がチャンスを与えよう。我が言葉に続くがよい。―――――いくぞ!」
「――え?―――え?」

あまりにも突然の振りに戸惑うほむら。

「がんばってほむらちゃん!」
「転校生、あんたならできる!」
「暁美さんファイトですわ!」
『『『『『ガンバ』』』』』

そこにまどかの応援、それにクラスメイト達からの声援に応えるため決意をかためる。

「ど、どうぞ!」

そして―













「ぬるぽ!」
「がっ!」
『『『『『『・・・・・・・・・・・』』』』』』


―――――病院生活の彼女は@ちゃんねらーだった。









必死に言い訳をしている彼女を放置し教室をでる岡部は気づかなかった。
今までの会話を聞き、今岡部の背後から近づいてくるどこか浮世離れした女子生徒がいることに。
情報を整理する岡部は気づいていなかった。








[28390] 世界線x.091015 「休み時間」
Name: かっこう◆7172c748 ID:3f6e4993
Date: 2011/07/08 23:41
世界線x.091015




「いや~、さっきの岡部さんはビックリだね。」

さやかの言葉に教室にいた生徒達が頷く。

「確かにな~、今まであんな先生見たことないよな?」
「そだね、いつも自信満々のオカ・・・・・鳳凰院先生らしくないっていうか」
「なんかこう~」
「不安というか焦ってたというか・・・・・」

クラスの皆が先ほどの岡部の言動について次々にあげる。

岡部倫太郎。鳳凰院凶真。
年上の男性。細身の長身。黒髪の短髪。いつも白衣。臨時講師。おもしろおかしな言動。未来ガジェット。鹿目まどかの幼馴染。無自覚の女性問題騒動。自信に満ちた姿。楽しい授業。時折見せるやさしい笑顔。―――――寂しそうな笑顔。


「・・・・・・・わ、わたし・・・・その・・・・」

周りの反応にほむらは戸惑う。最初まどか達に岡部を紹介された時は怖かった。いきなり怒鳴られた。男の人に。初めて。

(―――――でも)

『君は何も心配することは無い、あとのことはまかせろ』

その言葉にほむらは安心した。岡部に抱いていた恐怖も忘れて安心したのだ。肩の荷がおりたというか、もう、皆と一緒にいていいんだと、一人でいなくていいんだと   ―――――――なぜそう感じたかも、意味も解らず、ただ漠然とそう感じ、安心した。

「ん?大丈夫だよ転校生。皆気にしてないって」
「そうですわ暁美さん」
「う、うん。ありがとう」

安心して――――――――――――――――――このままでは








――――まどかが■んでしまう。

「~~~~~ッ!?」

体が震える。悪寒が止まらない。

(・・・・・なに?・・・・わたし今何をかんがえたの?)

岡部が怖い人ではないと解った、それはいい。彼の言葉とやさしい笑顔、それに安心できたのは嘘じゃ無い。寂しそうに見えた横顔は疑問に思ったが、確かに安心できる何かを感じた。なのに―――
頭をよぎったこの不安は?この身を震わす悪寒は?
ほむらは頭に浮かんだ不安を打ち消すように頭を振りまどかを探す。

「・・・・・・・・・まどか?」
「・・・・・・・・」

まどかは岡部が出て行った扉を見詰めていた。今まで会話に参加していなかった。彼をオカリンと呼ぶほど慕っている彼女が。そのことに周りで雑談していた生徒も気づきまどかに視線が注目する。

「・・・・・・大丈夫だよ、ほむらちゃん」
「え?」

まどかは視線を扉に向けたまま話す。

「私には何のことか解らない」

彼が、いったいなにに焦っているのか解らない。

「でもオカリンは本当に怒ってないし怖くないんだよ?」

自分が見たことの無い岡部のあの取り乱しよう。

「それにさ、・・・・『まかせろ』って言ってた」

岡部はいつも自信満々で、出来ることと出来ないことを混同させる。

「なら、きっと大丈夫だよ」

でも、彼のあのやさしい声と笑顔は信じられる。

「・・・・まあ、何のことか解らないけどね。・・・・・なんせオカリンだし」

それが自分ではなく、初対面のほむらに向けられたものでも

「でも大丈夫、きっと大丈夫だよ」

それでもいい、彼は笑ってくれたから、髪を撫でてくれた時の笑顔は決して無理をして笑ったのではなく、心から笑ってくれた。

「知ってるんだ。オカリンは―」

そう、知っている。私は知っている。彼は、岡部倫太郎は、オカリンは、いつだって、どんなときだって。

「オカリンは『―――――』なんだから」

まどかは振り返る。
戸惑うほむらを安心させるように。
自信に満ちた笑顔で、見る者全員を見惚れさせるよな笑顔で。
――――そして


「・・・・・・・あれ?なんかわたし牽制された?」







オカリンのことを知っているんだぞ。と自慢するように。


うむ。と皆は頷く。そしてほむらから距離をとる。『巻き込まれないように』

「あ、あれ?なんでわたしから離れるんですか?・・・・美樹さん?志筑さん・・・・みんな?」

クラスの皆が自分から離れていく、ほむらはまどかの笑顔に、先ほどの不安は幾分紛れた。
・・・・・・紛れたが、しかし新たな不安が襲う。

「オカリンはねぇ、ほんとうにやさしいんだよ。」

まどかがほむらに詰め寄る。岡部のことを教えてあげようと、笑顔で。

「う、うん。そうなんだ・・・・でもなんとなく解るか・・・な?・・・最初は怖かったけどやさしそう―――だよね?」

その笑顔になぜかプレッシャーを感じ、まどかからほむらは一歩下がる。

「うん?そうだよほむらちゃん、オカリンはやさしいんだよ。今日初めて会ったのにオカリンの事を解るなんてほむらちゃんはホントに良い子だね、やさしいね、かわいいね。」
「え?え?ま、まどか?」

まどかはほむらの肩に手を乗せる、やさしく、しかしそこには絶対に離さない意思を感じる。

――――――あちゃー、やっちまったよ転校生。
――――――暁美さん、お気の毒に。
―――――あれ長いのよねー。
―――――あれさえなければなー。

周りから不安を掻き立てる声が聴こえる。しかしまどかは聴こえてないのかまるで気にしない。

「そんなほむらちゃんにはオカリンの事教えてあげるね、オカリンは私の幼馴染でいつも――――」

―――――休み時間もうないけど売店行ってくる。
―――――あ、俺もいく。
―――――わたしもー。
―――――私も行く。・・・・鹿目さん案外もてるのに。
―――――あれだもんな。告白するまえに撃沈だぜ。

「オカリンね、私の作った(失敗した)朝ごはん全部食べてくれてね。あ、オカリンとは毎日一緒に―――――」

クラスの皆が教室から出ていく。逃げていく。ここにいたらたまらんと言うように。

(みんなどこにいくの?お、おいていかないで。ていうかこの状況はなに?)

まどかがいる。目の前に、それはとても嬉しい。保健室に案内されていた時に感じた感動はまだこの胸に残っている。
――――が

「あ、あの・・・・あのね、まどか?」
「それでオカリンったらー――――ん?なにかな、ほむらちゃん?」

正直キツイ。大切な友達からなぜか惚気話のようなものをいきなり聞かされて、おまけにまどかは自覚していないだろうが確実に牽制に入っている。誤解ですまどかさん。

「そろそろ休み時間も終わっちゃうし、話はまた今度に―――」
「大丈夫だよほむらちゃん。まだ五分も残っているよ?ラーメンが作れるよ?あ、ラーメンといえばオカリンの家にはね、ラーメンばっかりでたまにチェックしとかないと――――」

ほむらの提案をまどかは突破する。そこからさらに話題を広げる。それに若干頬を引きつかせながらも、ほむらはなんとか耐える。

(あ、あと五分・・・・・あと五分でみんなが帰ってくる、中学校の授業が始まる。・・・・・・・たのしみだな~)

初めての中学生生活に想いをはせながら思う。

(岡部倫太郎・・・・さん。)
「それでね・・・・・・・・・。聞いてるのほむらちゃん!」
「あぅ、も、もちろん聞いてるよまどか」

初めての友達を盗られたような気がして、おまけにその友達から無自覚とはいえ牽制されるなんて散々だ。と




ちなみに、
午後の授業は担当の先生が病欠のため自習になった。そのためほむらは岡部の話をまどかから自習時間を含め次の休み時間をくわえてさらに教室にくるのが遅れてきた早乙女先生が来るまで涙目で聞かされ続けた。

・・・・・・・・クラスメイトはその間帰ってこなかった。


(・・・・・・岡部倫太郎・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・許さない。絶っっっっっっっっ対にだ!)

また、早乙女先生から岡部が「三年生の女子生徒を『また』勘違いさせて保健室行きにした」と、クラスメイトから岡部が「さっき(逃げた時)鳳凰院先生が階段の所で女子生徒と抱き合っていた」という情報を与えた。与えてしまった。

「フフフ、オカリンったら『また』。ねぇほむらちゃん。」
「ひっ、な、なにまどか?」

それを聞き、「フフフ」の部分で若干教室の温度を下げたまどかは

「オカリンはね~、じょせいをかんちがいさせることがおおいからきをつけてね~」
「うん!気をつけるよまどか、大丈夫だから!」

ほむらは宣伝する。大丈夫だと。しかし

「ほむらちゃんも騙されないように、帰りながらオカリンのこともっと教えてあげるね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」

周りを見ればクラスの皆はやっぱりいなかった。












(魔法少女になっていない「まどか」と「ほむら」。・・・・・・・予想していなかった訳では「無い」。それは十分にありえた可能性だ)

まどか達のクラスを後にして岡部は思考する。

そう、二人が魔法少女にならないで出会う可能性はあった。
かつて暁美ほむらはいった。『最初私は魔法少女のまどかに助けられた』と。その後何度も時間逆行、タイムリープしていく中でまどかの、キュウべえに騙される前の自分を止めて(助けて)という約束から『転校してきた時点では魔法少女になっていないまどか』に出会ったと言っていた。

(おそらくそのとき、ほむらはタイムリープだけでなく、世界線も越えたんだろう。)

最初の、転校時すでに『まどかが魔法少女になっている』世界を世界線Aとする。
転校時まだ『まどかが魔法少女になっていない』世界を世界線Bとする。

暁美ほむらが何度もループしてきた世界線A,Bで共通していること、それは『鹿目まどかの死』である。
まどかの魔法少女化の時期は含まれてはいない。

(つまり今回の世界線は、『世界線Aで魔法少女になった暁美ほむら』が世界線Bにタイムリープ(世界線の移動)する前の状態ということか?)

それはつまり、魔法少女になっていない二人が出会う世界線。
暁美ほむらのタイムリープは見滝原中学校入学前、退院日にしかタイムリープしない。
ほむらが意識せず世界線を越え、幾度も繰り返してきた世界線B。いままでは岡部が介入してきたのはそこに酷似してきた世界線付近であって、こういう可能性が0であったわけではない。
もっとも、このままでは未来、魔法少女になったほむらがタイムリープしてくる、または世界線Aからタイムリープしてくる可能性が高いが。

(しかしこうなると状況はプラマイ0・・・・・・いや、マイナスか?)

マイナスの状況、もちろん暁美ほむらの協力が得られない。これまでの世界線全てで岡部とほむらは途中意見の違いによる対立はあった。あったが最終的には協力関係は築けた。彼女はその繰り返しから魔女の弱点や特性、主な出現場所に詳しく、岡部や他のメンバーも助けられてきた。戦闘では悪い言い方かもしれないが魔女に慣れている。巴マミのようにベテランというわけでなく(そうとも言えるが)、何度も戦っている相手なので攻撃パターンが身に染みている感じだ。それはいかに相手の情報を持っていても、やはり実践との違いは大きい。

(それに、彼女の協力なくして『キュウべえが救えるか』が解らないのが痛いな。)

そう、暁美ほむらの協力なくしてキュウべえを助けきれるか、これが解らない。

(『メタルうーぱ』の開発にはその特性状、主にキュウべえとほむらが関わっていたからな。・・・・う~む)

岡部は頭を悩ます。こんなことならもっと他のメンバーでもためしておくんだったと。
未来ガジェットM01号『メタルうーぱ』
岡部がこの世界、『魔法のある世界』にきたとき、『とある女神』から魔改造されたあの未来ガジェットではなく、正真正銘岡部達ラボメンが創り上げたこの世界の未来ガジェットである。

(ほむらでなくともバイト戦士やマミでもできなくはないが・・・・・・・・・・恐らく期待の性能は無理だな)

だからこそキュウべえ、インキュベーターを諸悪の根源と思い込んでいるほむらを苦労してまであんなにも説得したのだ。他の者で出来るならあんな苦労はご免だ。

(ラボメンが内部分裂しかけたからな・・・・・・まあ、おかげである程度歩み寄ることもできたし、それは良しとするか)

それに――――――――結局岡部達は誰一人未来を――――――――

「―――――――ッ、ええい、こんなことでは世界と戦えまい!」

岡部は自分を鼓舞する。『結局』なんて言葉はいらない。彼は知っている。
失敗した未来、守れなかった未来、歩めなかった未来。そのすべての世界で、世界線での経験は、決して無駄ではないことを岡部は知っている。

(あの涙も。あの痛みも。あの記憶も。決して、頭を伏せるものではなかったと信じている。)

歩んできた世界線を、変えてきた世界を、変えてしまった世界での思い出を
世界線漂流を。
無かった事にしてはいけない。
否定してはいけない。
そう

(全て、意味があったんだ!)

誰にも否定させない。その大切さを岡部は知っている。その想いが、かつてのラボメンを救った。
大切な人を
数多の世界線での思い出が、その想いがあったから、だから戦って戦って戦って戦い続けた。だから辿りつけた。 『辿りつけさせることができた。』 シュタインズ・ゲートに。『岡部倫太郎』を。












(さて、少々ネガティブになってしまったが、今の状況にもプラスはある)

岡部は一度頭を冷やし再び状況を確認する。暁美ほむらがまだループしていない状況。
つまり鹿目まどかには現在『あの』デタラメな力は無い。
キュウべえは言っていた。『鹿目まどかの才能は暁美ほむらの繰り返す時間逆行によって因果が彼女に集中した結果』
簡単にいえばそういっていたはずだ。ほむらがタイムリープをしていないこの世界線ではまどかは「最高」の魔法少女にはなれない。しかし、「最悪」の存在にならずに済む。
つまり未来視の魔眼をもつ美国織莉子。白の魔法少女にして白巫女{ホワイト・サーチャー}オリコ(命名;岡部倫太郎)と争わずに済む。哀戦士・呉キリカとも。
彼女達との敵対関係はまどかが最高の魔法少女から「最悪」の存在に堕ちることによる世界の滅びを回避するためであり、それが無ければ見滝原にやってくる『ワルプルギスの夜』討伐のため、敵対どころかむしろ協力してくれるだろう。

(・・・・・・とりあえずこんなところか?)

一応の状況確認を終えた岡部は階段の一番下についた。―――――そして

「オーカリンセンッセ!」

突然ギュッ!と抱きつかれる。
女生徒のどこか甘い声と共に、顔の横から伸びてきた手を首に巻かれ、後ろから抱きしめられる。
―――その声には聞き覚えがあった。
岡部は長身だ。だから後ろから抱きついてきた女生徒は階段の上からとはいえ、ある程度腰を曲げて岡部に体重を預けている。
―――見えた両腕は左右非対象のリストバンドをつけていた。
岡部の肩に顔を乗せる女生徒。
―――彼女の体の感触を感じる、猫のように自信の頬に髪を擦りつけながら喋る少女。
その彼女に、呉キリカに

「―――――――――――――――――――――――――――――――君は何者?」



―――――ゾッ!!


死んだ。
間違い無く今岡部倫太郎は死んだ。
岡部倫太郎は殺された。
そうおもわせるほどの気配を岡部は感じた。
周りから見れば恋人に甘えるような仕草をしている彼女から己の死を感じた。

「ねぇオカリン先生」
「ッ!」

キリカの綺麗な指が岡部の首筋をやさしく撫でる。
耳元から聴こえるキリカの声と指の感触に体を震わす。
一瞬の恐怖と快楽に震える。それを――無駄だろうが誤魔化すように岡部は問う。恐怖を振り払うように。

「いきなりだな哀戦士。だが、あえて言わせてもらおう、俺は俺だ!」
「わかっているよね?そういう意味じゃ「違わない、そういう意味だ!」―――――。」

それでも、それでも岡部は強気にでる。その圧倒的に不利の状況で岡部はキリカの言葉を遮る。岡部の命はキリカが握っている。ここが学校の階段でも構わない。キリカは殺せるなら殺す。それは互いに理解している。キリカはもちろん、その彼女から甘い声の中に隠しようの無い殺意をぶつけられている岡部も。

「・・・・・・オカリン先生は馬鹿なのかな?それともすごいのかな?」

キリカは岡部の首に抱きついたままグルッと岡部の正面にまわる。

「そんなことも解らないのか?それとも理解したくないのか?」

階段の高さを失った彼女は岡部を見上げる。彼の不遜の態度に口元を三日月に変える。彼は気づいてる。自分が「彼女」のためなら人を殺せることを。その現場を見たわけでも聞いたわけでもないのに理解している。その顔、震える体でわかる、彼は理解している。その上でこの態度。やはり彼は『織莉子の云う通りだ』。

「もう一度聞くよ、君は誰?」

挑発するように岡部の首に抱きつけたままの腕に力を入れる。
私はお前が震えているのを知っているぞ?というように、視線で岡部にくぎを刺す。返答次第で殺す、と。
それに対し岡部は

「フッ、俺を誰だと思っている?」
「んん?」

キリカの背と腰に手を回し抱きしめる。逆に彼女を引きよせる。恐怖を祓うように、怯えに付け込まれぬように、あえて踏み込む。効果は・・・・・・・あった。

「ん?ん?」
「どうした哀戦士、いきなり様子が変わったぞ?」
「なっ?そんなこと――――」
「ならばこのまま続けよう、質問に答えるぞ。俺は俺だ。」

いかに哀戦士といえど所詮は中学生。どこか壊れているとはいえ、さすがに年上の男性から抱きしめられれば思考は一瞬とはいえ停止するはず、そう考えた岡部はすかさず抱きしめる腕に力を入れる。視線はキリカから外さない。

「俺は岡部倫太郎、そして狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真だ。それ以外の誰でも無い唯一にして無二の存在だ。」
「・・・・・・・・・・・」

岡部とキリカは目を互いに逸らさず見つめあい続ける。目を逸らしたら負けだというように。これ以上弱みを見せないように。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

数秒したうちキリカの方が折れた。

「あきた」
「・・・・・・・そうか・・・・・・・・なによりだ」

キリカは飽きっぽい。それを思い出してホッと息を吐く。彼女からプレッシャーが無くなったのを感じキリカから両腕を離す。あきたというなら本当に飽きたのだろう。彼女の言動は危険だがその分解りやすい。もう自分をどうこうしようとは今のところ無いだろう。
岡部の腕の中から解放されたキリカも両手を岡部の首から離す。

「時間をとらせてすまないオカリン先生。私は織莉子・・・・・親友がらみだといてもたってもいれなくてね。」
「理解しているつもりだ。・・・・・これからはほどほどにな」
「それは無理だ、有限の私には限りがある。彼女に無限の愛を捧げるためには全力を尽くす」
「・・・・・まあ、お前らしいな。そんななか俺を・・・・・・・・・・・・いや、何でもない」

余計な事を云って先ほどの再戦を繰り返さないために言葉を詰まらせる。そんな岡部の言葉に笑みを浮かべるキリカ。

「くふ、なに、私はオカリン先生が気にいっているからね。」
「それは光栄だ。・・・・・いや、この鳳凰院凶真のカリスマをついに哀戦士も理解したか!フハ、フゥハハハハハ―――」
「フゥハハハハハーーーーーーーー」

階段の下で声を荒げる二人。キリカは岡部を真似て素で、岡部は先ほどまで感じていた緊張感を拭うため。

「ではさらばだ哀戦士。エル」

ビシィッ!!いつものポーズを決める岡部。

「プサイ」

ビシィッ!!両手を広げ片足を上げるキリカ。

「「コングルゥ」」

岡部は白衣を大袈裟に翻しながら職員室に向かう(今朝の件について教頭からのありがたい説教のため)。

「オカリン先生、時間をとらせたお詫びだ。」
「む?」

キリカが投げ渡してくる物を慌てて振り返り受け取る。それは――――

「!おい哀戦士『これは』!!」
「昨日織莉子と散歩中に先生を見かけた公園でGETしたんだ。さっき教室での会話を聞いていてね。『それ』のことを知っているようだし、ただの興味本位で探している訳では無いんだろう?」
「・・・・・・そうだ」
「必要?オカリン先生になら譲ってもいいよ、ほしい?」

岡部は手の中の品を見詰める。

「いいのか?これは『お前達』にとって貴重な――――――」
「余分に持ってるから大丈夫だよ。」

魔法少女にとってとても重要な『それ』をこともなくキリカは岡部に譲った。

「・・・・・すまない、助かる」
「くふ、私とオカリン先生の仲だから気にしないで、それじゃねオカリン先生。今度は織莉子も一緒に三人でお茶でも飲もうね」
「ああ――、必ず」

学校から出ていくキリカを止めることなく岡部はキリカから譲り受けた『グリーフシード』を白衣のポケットに納める。
そして深紅の携帯を代わりに取り出し呟く。

「俺だ、ようやくこの世界での最低限の戦力を手に入れた。」

岡部のこの世界にきてから再び行うようになったいつもの癖、照れ隠しや話の節目節目に使う癖。
それはどこにも電話は繋がっていない。
しかし

―――未来ガジェット0号『―――――――――』起動
―――デヴァイザ―『バージニア』確認
―――展開率34%
―――消耗率

そこには本来返事のない携帯から返答があった。











あとがき
魔女が出てきてから出す予定のネタを出してしまいました
第一話の{だから戦って戦って戦って戦い続けた。だから辿りつけた。辿りつけさせることができた。『シュタインズ・ゲート』に}の

『辿りつけさせることができた。』と

今回の{数多の世界線での思い出が、その想いがあったから、だから戦って戦って戦って戦い続けた。だから辿りつけた。 『辿りつけさせることができた。』 シュタインズ・ゲートに。『岡部倫太郎』を。}から

この世界の岡部倫太郎は正確にはシュタインズ・ゲートには到達していません。
次回にはこの世界の岡部倫太郎のことについてと、やっと魔女を出す予定です。
ニトロ+な展開を書けるよう最大限努力します。


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