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南スーダン共和国:きょう独立 石油利権配分、北と合意ないまま

 【ジュバ(スーダン南部)高尾具成】アフリカのスーダンから9日、「南スーダン共和国」が分離独立する。アフリカ大陸での新国家誕生は93年のエリトリア独立以来で、54番目。首都となる中心都市ジュバの国際空港には8日、独立式典に参加する海外の要人が続々と到着。厳しい警備態勢が敷かれた。街の中心部では、悲願の独立達成に人々が歌い、踊り、歓喜していた。

 ジュバ市内では8日、国旗掲揚のためのポールがあちこちに設置された。真新しい国旗を誇らしげに車に掲げる人も少なくない。「新国家誕生の日」を待ちわびるように、通りを丁寧に清掃する住民の姿も目立った。

 独立式典ではキール新大統領が就任を宣誓し、暫定新憲法を発表する。大統領の任期は4年。海外からはアフリカ約30カ国の首脳や国連の潘基文(バンキムン)事務総長らが出席する。近く、193番目の国連加盟国となる見通し。日本からは、菊田真紀子外務政務官が参加する。

 スーダンは1899年、英国とエジプトの共同統治下に置かれ、1956年に独立した。83年、北部のアラブ系イスラム教徒主導の政府が、全土にイスラム法を導入。黒人キリスト教信者の多い南部が反発し、内戦に突入した。北部の正規軍に対し、南部はスーダン人民解放軍(SPLA)を結成してゲリラ戦を展開。20年以上におよぶ戦闘で、約200万人が死亡した。

 南北は05年1月、包括和平合意(CPA)に調印。今年1月、南部独立を問う住民投票で99%が賛成した。

 だが、南北に残された課題は多い。その一つが、石油利権の配分だ。南部には国内油田の7割があるが、精製施設や輸出港へのパイプラインは北部にしかない。今回の南北分離で北部はこれまで通りの利益折半を求めているが、南部は北部の「取り分」を最小限に抑えようと抵抗。折り合いがついていない。

 このため北部は経済の急激な悪化を警戒している。今年5月には、圧倒的な軍事力を駆使して南北境界に位置するアビエイ油田地帯を制圧。北部側の南コルドファンでも南部勢力を攻撃し、計15万人以上が避難民と化した。利益配分で今後も双方が合意に至らなければ、南北の紛争は再燃する可能性がある。

 南北は石油利益に依存する経済体質を改善する必要にも迫られている。原油の売却益は政府収入の5割、輸出収入の9割を占めてきた。北部は中国政府などの支援を受け、今後、農業や鉱物資源開発を進める方針だが、展望は見えていない。

 南部は今後、首都ジュバを中心にインフラ整備の拡充が急務となる。また、多民族を抱えながら、国家としてどう団結を図るかも難しい。南部には内戦時代、北部を支援した民族もいる。約100万人にものぼるディンカ人のほか、シルック人、ヌエル人など多数の民族の和解や団結をどう進めるかが問われている。

毎日新聞 2011年7月9日 東京朝刊

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