<ケース1>ボーナスに関するトラブル
株式会社S社では、就業規則は作っていませんでしたが、慣例的に6月と12月の2回、ボーナスを支払っています。
なお、6月のボーナスは前年12月〜5月、12月のボーナスは6月〜11月の勤務に対して支払われています。
ここで、11月に退社した社員Aさんが以下のような主張をしたら、どうなるでしょうか?
Aさん:「12月のボーナスは、6月から11月の勤務に対して払われるので、私にも12月のボーナスを払ってください」
社長:「ふざけるな!支給日にいない人にボーナスを払うわけないだろう!」
社長はこう言いましたが、この場合、就業規則がないと、ボーナスを支払わなければならなくなります。仮に裁判になっても、会社に勝ち目はありません。
なぜなら、慣例的に12月のボーナスは6月〜11月の勤務に対して支払われている以上、「この人は11月退社だから払わない」という理屈は通用しないのです。
このような事態を防ぐには就業規則または賃金規程などに「ボーナスは、支給日に在籍しない者に対しては支給しない」と定めておく必要があります。
<ケース2>試用期間中の解雇に関するトラブル
S社は新たに社員Bさんを採用することになりました。インターネット上で「モデル就業規則」を見つけました。
就業規則には、「採用日から3ヵ月を試用期間とする」と定めてあります。就業規則のとおり、Bさんも3ヵ月間の試用期間をとることにしました。
ところが、このBさん、とんだ問題社員です。先輩社員の言うことをきかない、遅刻ばかりする、顧客とのトラブルを引き起こす・・・。周囲に迷惑ばかりかけてしまいます。 しかも仕事中に、ゲームサイトばかりチェックしています。
たまらず、社長はBさんを試用期間中に解雇しようとしました。
しかし、インターネットで見つけた就業規則では、試用期間中の解雇については「従業員として不適当な場合は解雇する」という、実にあいまいな記載しかありません。
※補足:試用期間中であっても、会社は社員を自由に解雇できるわけではありません。雇い入れから14日を過ぎると、解雇するにしても所定の手続きが必要になります。
社長「試用期間中だが、君はとても正社員として採用できないから、解雇するよ!」
Bさん「いや、納得いきません!」
このようになった場合、就業規則の試用期間中の解雇について、
「従業員として不適当な場合は解雇する」というあいまいな記載しかないと、解雇を行うことはできなくなります。
行政による仲介が入りましたが、結局、社長はBさんを解雇することはできませんでした。
このようなケースでは、就業規則に「試用期間中の解雇」について、「こんな場合は試用期間中に解雇します」という形で解雇事由を具体的に定めておけば、Bさんを解雇できた可能性があります。
<ケース3>残業代請求に関するトラブル
送り主は、1ヶ月前まで勤務していたCさんからでした。
社長が中を読んでみると、そこには以下のようなことが書かれていました。
「在職中に毎日残業を行っていたにも関わらず、手当が適正に支払われていません。
タイムカードに打刻した時間に従って、退職日前2年に遡って残業手当の支給をお願いします。」
S社では社長の方針で時間外手当の支給は行っておらず、暗黙の了解でいわゆるサービス残業になっていたのです。
タイムカードを計算してみると、金額は200万円以上。社長はパニックになってしまいました。
S社は設立後10年経ちますがこれまで、このようなトラブルはありませんでしたので、
慌てて創業当初に作成した就業規則を見直しました。
就業規則は社長が創業時に、インターネットからダウンロードしたもので、
いわゆる雛型の就業規則でした。
従ってそこには、詳しい時間外手当の支給方法についても規程がありませんでした。
結局その後
※結局全額支払いは免れたものの、80万円近い金額を支払うことで和解
※労基署より是正指導があり、従業員への時間外手当も遡って支払うことに
サービス残業の問題は非常に多いですが、この問題に関しては今後行政側の指導もより一層厳しくなることが
予想されますので、注意が必要です。
本事例では、根本的な姿勢が問われるところでもありますが、社長自身が就業規則の内容を把握していないと
大きなトラブルが起きるリスクがあります。
・残業を行った分だけ支給するのではなく、事前に上長から許可をもらいその分に関してのみ支給する。
・上長への確認がとれない場合は、後日速やかに業務報告書を得て事後承認を得る。
・時間外手当の支給に関しては(上記のような)適正な手続きを経ない場合は支給しない。
以上のような規程を就業規則等で明文化しておくことが大切です。