菅首相と海江田経産相の間で亀裂深まる 中山政務官「菅さんがストレスを与えている」
原子力行政をめぐり、菅首相と海江田経産相の間で亀裂が深まっている。この現状に、閣僚や与野党から発言が相次いだ。
原発被害者への賠償を支援する原子力損害賠償支援機構法案が、8日から衆議院で審議入りした。
本会議場の壇上では、菅首相と海江田経産相が隣同士になった。
菅首相と海江田経産相の間では7日、海江田経産相が自らの辞任を示唆したことで亀裂が表面化した。
7日の参院予算委員会で、海江田経産相は「いずれ時期が来ましたら、それは私も責任を取らせていただきます」と述べた。
海江田経産相は6月29日、玄海原発の地元・佐賀県を訪れ、「安全宣言」をしたうえで、再稼働への道筋をつけた。
ところが、6日になって、菅首相が突如、「ストレステスト」と呼ばれる新たな安全試験を行う方針を示したことで、はしごを外された形になった。
海江田経産相は8日の会見でも、「私が玄海に行く時は、そういう話はありませんでした」、「再稼働について、この『ストレステスト』をからめようということをおっしゃったのは、菅総理だと、私は認識しています」と述べ、突然の方針転換に不満をにじませた。
海江田経産相は8日、今後の大きな焦点となる進退について、本会議場で「出処進退の時期は、私1人で決めさせていただきます」と述べた。
経済産業省で海江田経産相を支える中山義活経済産業政務官は、「後ろから鉄砲を撃ったりなんかして、菅さんがストレスを海江田大臣に与えてるわけですよ。ポッポッと思いつきみたいに出てきているという、今の菅さんのやり方について、わたしたちは、ちょっと憤りを感じると」と述べた。
また中山政務官は、そもそも2人に亀裂が入った原因は、菅首相が新たに設けた原発担当相にあると語った。
中山政務官は「海江田大臣も(原発の)安全のためにやってるわけですよ。なんで、それを分けてね、細野(原発担当相)の方は安全委員会を置くと、安全の方は細野さんがやっていくんだと。こういうことになると、海江田さんだって、『やっぱりおかしいぞ』となることは当たり前でね」と述べた。
さらに、それ以前に、菅首相と海江田経産相の間で不協和音が表面化したのが、5月のG8サミット(主要8カ国首脳会議)で菅首相が行った「約1,000万戸の家の屋根に、すべて太陽光パネルを設置することを目指してまいります」という発言だった。
「太陽光パネルをおよそ1,000万戸の屋根に取りつけたい」と話した菅首相だったが、海江田経産相は、「報道を通じて知りましたので。(相談されてない?)1,000万戸にソーラーパネルをつけるというお話は、聞いてはおりません」と述べ、所管大臣でありながら、事前に何も相談がなかったことを明かした。
今回、辞任を示唆した海江田経産相について、枝野幸男官房長官は8日午前、「(辞任を示唆した)海江田大臣とわたしは、気持ちは一緒だと思っています」と述べた。
また、野田佳彦財務相は「(辞任時期は)すべての閣僚が同じころだろうというふうに思います。会期末になるでしょうね」と述べた。
民主党の渡部恒三衆院議員は、「(首相と海江田経産相の)意見が食い違っているなという批判を受けることは、もう本当に、国民の皆さんに申し訳ない」と述べた。
また、野党からも発言が相次いだ。
自民党の小池 百合子総務会長は、「政府、与党、民主党というのは、『ノンガバメントオーガニゼーション』であると。政府でありながら政府でない」と批判した。
また、自民党の小泉 進次郎衆院議員は、「菅さんを選んだのは民主党。けりをつけるのは、民主党自身の手でやるべきじゃないですか」と述べた。
新党改革の舛添要一代表は「国民のストレスも世界のストレスも、テストに耐えかねるくらいにひどい状況になっているのが、今の現状だと思います」と述べた。
そして、みんなの党の渡辺喜美代表は「『勘違い解散』の可能性がある以上は、準備を加速していきたいと考えております」と述べた。
ますます広がる「菅離れ」の動き。
その菅首相が打ち出した「ストレステスト」が実施されれば、停止中の原発再稼働は大幅に遅れることになる。
さらに、現在稼働中の原発も、今後次々と点検に入り、新たな稼働がなければ、2012年春には、すべての原発が停止することになる。
この事態が改善されなければ、2011年冬の電力不足にも対応する必要が出てくる。
(07/08 18:52)