2011年3月初め、サムスングループで異例の社長人事があった。李健熙会長の二女の夫で、前年末にグループ企業である第一毛織の副社長に昇格したばかりの金載烈(キム・ジェヨル=42)氏が、それからわずか3カ月で社長に昇格したのだ。
金載烈氏は韓国の有力紙、東亜日報のオーナー家出身で、実兄は東亜日報社長だ。李健熙会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子社長とは中学時代からの友人だ。米ジョンズホプキンス大学大学院で国際政治学を学んだ後、スタンフォード大学経営大学院を修了した。
英語にも堪能で人脈も広く、イケメンぶりも有名で「将来、李在鎔社長を補佐する役割を担う」との声は多かったが、それにしても突然の昇格人事だった。
理由は、金載烈氏が大韓氷上競技連盟の会長に内定したため。他の有力競技団体のトップは、経済人の場合、オーナーか社長というのが慣例で、これに合わせて昇格させた。この人事ももちろん、金載烈氏を冬季五輪招致の最前線で働かせるのが狙いだった。金載烈氏は機会あるごとに義父の外遊に同行した。
招致成功でサムスングループ内で金載烈氏の影響力が高まるとの見方も浮上している。
李健熙会長には、今回、是が非でも招致を成功させたいというもう1つの切実な理由があった。
今年に入ってサムスングループを取り巻く「悪いニュース」が相次いでおり、招致成功でこうした雰囲気を一変させたいという思いが強かった。
主力のサムスン電子の業績が陰りを見せているうえ、アップルとは特許紛争が始まり、半導体などの売り込みに大きな支障が出る恐れも出ている。
系列の防衛関連メーカーが生産した自走砲に品質問題が起き、さらにグループ全体で下請け企業から禁止されていた供応を受けた例が相次いで明らかになるなど、ここ数カ月間「サムスンはどうなっているんだ」というニュースばかり続いているのだ。
何とかメンツを保った2人の「ミスター・リー」だが・・・
4年前に平昌の2度目の招致に失敗した際、韓国のネットの掲示板には「ソウル五輪もサッカーのワールドカップも、現代グループが主導して招致に成功した。こういうイベントはやはり現代に任せた方がいい」といった内容の書き込みが相次いだ。サムスン関係者にとって、これほど自尊心を傷つけられたことはない。
五輪招致活動を最前線で指揮した2人の「ミスター・リー」。平昌開催で何とかメンツを保ったが、期待通りの成果があるかは未知数だ。
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