2018年冬季五輪、3度目の正直で韓国・平昌に

招致成功に歓喜する大統領とサムスン会長だが…

2011.07.08(Fri)  野口 透

アジア

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サムスングループ会長、脱税と背任罪で在宅起訴

2008年4月に脱税と背任罪で在宅起訴された李健熙(イ・ゴンヒ)会長〔AFPBB News

 李健熙会長には、そうせざるを得ない事情があった。2007年、サムスングループの法務担当常務の告発で表面化したサムスングループとオーナー一族の機密資金問題で、李健熙会長は2008年春に会長職辞任に追い込まれた。2009年には背任と脱税などで有罪にもなった。

 窮地に追い込まれた李健熙会長を救ったのが、李明博大統領だった。2009年末に、「国家的な観点から」特別赦免・復権に踏み切ったのだ。国家的観点とは「国民の願いである五輪招致に全力を尽くせ」という意味だった。

 李健熙会長はIOC委員であり、サムスン電子は1998年の長野冬季五輪以降、無線通信分野での五輪公式スポンサーだ。「人脈と金力をフルに活用して五輪招致を成功させろ」という意味だった。

 特赦に対しては韓国内でも「李明博政権の財閥総帥に対するえこひいきは度が過ぎる」との批判もあった。

 特赦を受けた以上、李健熙会長には五輪招致に全力投球する以外に選択肢はなかった。

バンクーバー冬季五輪での韓国の大躍進を後押し

 まず足を運んだのが、2010年2月のバンクーバー冬季五輪だった。この大会で韓国人選手は金メダル6個、銀メダル6個、銅メダル2個を獲得した。メダル獲得競争で米国やカナダなどに次ぐ5位に入り、スポーツ強国ぶりをアピールした。

 この大会で大量のメダルを獲得したスピードスケートの選手を育成したのは、大韓氷上競技連盟という団体だった。

2018年冬季五輪 開催地は韓国・平昌に決定

招致活動の広報大使を務めた金妍児(キム・ヨナ)選手もバンクーバー冬季五輪の女子フィギュアスケートの金メダリスト〔AFPBB News

 実はIOC委員になったばかりの李健熙会長は1990年代後半に、「いずれ冬季五輪を招致するが、選手の強化も欠かせない」としてこの団体の会長に側近を送り込み、「10年計画でメダリストを養成せよ」と命じ、強化費の支援を続けた。

 バンクーバーでメダルを獲得したスピードスケートの選手は、この強化選手たちだった。

 「やはり李健熙会長はすごい」――こうした評価が出るや、バンクーバー冬季五輪直後に李健熙氏はサムスン電子会長に復帰を果たした。

 その後も「社業よりも五輪招致」の姿勢は変わらなかった。2010年初めから1年半で李健熙会長は11回、合わせて170日間外遊したが、そのほとんどが「五輪招致」のためだった。

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