「前回の招致争いでは、ウラジーミル・プーチン露大統領(当時)が英語と仏語を駆使して情熱的な演説をして大逆転を果たした。2016年の夏季五輪招致争いでは、ブラジルのルラ・ダ・シルバ大統領(当時)の積極的な活動が大きな効果を上げた。五輪招致は、開催地の競争であるとともに、開催国の指導者間の競争でもある」
ある韓国政府関係者は、李明博大統領の意気込みをこう説明してくれた。
「経済の2極化」で分裂した国民意識をまとめたい大統領
李明博大統領はもともと「大型プロジェクト好き」だ。だが、もちろん、それだけでこれほどまでに五輪招致に入れ込むはずがない。五輪を招致した大統領という実績がぜひとも必要なのだ。
李明博大統領は2008年2月に就任した。現行憲法では大統領の再選は禁止されており、任期は5年間。来年末には大統領選挙がある。つまり任期はあと1年半しかない。
韓国の大統領は任期後半に急速に影響力がなくなる。李明博政権は今のところ比較的高い支持率を維持しているが、最近は公務員の相次ぐスキャンダル発覚などで徐々に人気を落としている。
韓国の平昌での冬季五輪開催決定に喜ぶ人々〔AFPBB News〕
野党や進歩派勢力の攻勢が強まっているほか、政権与党内部でも李明博系議員が代表選挙で敗れるなど、ここにきてレームダック化の兆しがあちこちで見られている。
その背景にあるのが、財閥だけが大きくなって庶民の生活が苦しくなるという「経済の2極化」による国民意識の分裂だ。
国民意識をまとめるにはスポーツが一番。五輪招致で一気に人気挽回を図りたいという目論みだ。
この大統領以上に平昌招致に必死だったのが、李健熙会長だった。
「社業よりも五輪招致」のサムスン会長
IOC委員でもある李健熙会長は、昨年から「五輪招致活動を最優先させてきた」(サムスングループ幹部)。IOCの会合はもちろん、五輪招致に関連する会合に頻繁に出席しただけでなく、投票に影響力を持つ海外の有力者とどんどん面会した。
投票直前に「会うべき人にはみんな会った」と語るほど精力的な日程だった。
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