不正発見の仕組みなく
10年にわたって放置
では、日興はこうした不正を防げなかったのか。
10年5月には名古屋の東海東京証券で、同様に社員による私的流用が発覚。このときも、10年以上にわたって特定の顧客に対する損失補填や利回り保証等を継続的に行い、その後、その原資を賄うために他の顧客の資産を無断で売却、合計6億円あまりの現金を不正に出金していた。
この社員は今年1月になって詐欺容疑で逮捕され、東海東京も監督官庁である金融庁から業務改善命令を受けたばかりだったのだ。
確かに今回の日興のケースでは、社員個人の銀行口座を利用した簿外取引とあって、不正を見つけるのは容易ではなかっただろう。だが、それでも10年ものあいだ見抜くことができなかったというのはいかにもお粗末だ。
事態を重く見た日興は、不正が発覚した2月当初から、すぐさま金融庁や警察に報告。男性社員が過去に担当したすべての証券口座約300件をしらみつぶしに調査してはいる。
だが、他社で不正が発覚した時点で、対岸の火事ととらえてしまい、徹底した調査の実施や防止する仕組みの構築など対処策を講じていなかった責任は重い。金融庁もこうした点を重く見ており、「今後、処分も含め検討していく」(金融庁関係者)としている。