菅直人首相の資金管理団体が、北朝鮮による日本人拉致事件の容疑者親族の政治団体に6250万円もの政治献金をしていた問題が、国会で徹底追及され始めた。こうしたなか、菅政権は、北朝鮮国籍者の入国禁止という制裁を緩め、張雄・国際オリンピック委員会(IOC)委員の日本入国を「特例措置」として認める方針に傾きつつあるという。
これは、14日に都内で開かれるアジア・オリンピック評議会(OCA)総会に合わせ、北朝鮮側が出席を希望していることを踏まえたもの。
7日の自民党拉致問題対策特別委員会で、文科省は、入国受け入れの判断基準として五輪憲章に触れ「人種や政治などの理由に基づく差別を認めておらず、罰則規定も設けている」と指摘した。
日本は2006年10月、北朝鮮の2度にわたる核実験や誠意のない拉致事件解明への制裁措置として、「北朝鮮国籍を有する者の原則入国禁止」を発動しており、今回入国が認められれば制裁後初となる。
このため、拉致問題対策特別委員会では、出席議員から「工作員がまぎれて入国する恐れがある。入国を申請する人物をしっかり特定すべき」「朝鮮総連との接触や金銭授受の排除、特定の政治活動をさせないなど公安当局が監視すべきだ」といった意見が続出。
「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)の西岡力会長は「入国には反対だ。政府として『ダメだ』と言ってほしい」と言ったうえで、菅首相の巨額献金問題についても「そういう団体に寄付することは大変不明朗だ」と指摘した。
民主党に政権交代して以来、拉致問題はほぼ進展していない。内閣官房は、張委員の滞在中の具体的な日程を確認して最終決定するとした。