メニューへジャンプ本文へジャンプ
大分県/Oita Prefecture 大分県トップページへ
くらし・環境福祉・保健・医療文化・スポーツ・交流産業・雇用社会基盤安全・安心のページ
キーワード検索 

文字拡大・音声読み上げ
トップページ >  行財政改革 >  大分県の緊急行財政改革

平 成16年度「大分県職員『プロジェクトO(オー)』」

作  品 名
 「大分しいたけ」ブランドを守れ!
  〜産地偽装根絶で実現した県産椎茸 の価格回復
職 員名(作者)
: 足立 紀彦
作 成時所属
: 林務管理課

クリックすると大きな画像が表示されます
クリックすると大きな画像が表示されます
信頼の印、「大分しいたけ」シンボルマーク 県 産椎茸は主婦に人気
クリックすると大きな画像が表示されます
クリックすると大きな画像が表示されます
原 木栽培の良質椎茸 林 間ほだ場での採取状況
(いずれの写真も、クリックすると大きな画像が表示されます)

1  危機

 平成14年の年明け、当時国産乾椎茸は中国産に市場を席巻 され、価格は2,500円/kgと長期低迷していた。生産経費を割る市況に、椎茸栽培を止めていく生産者も少なくなかった。「このままでは日本一の大分し いたけが危ない。大分ブランドを守れ!」使命感に燃えた「しいたけ特林係」(以下「係」)が立ち上がった。

 価格低迷は中国産の輸入増加が原因であり、価格回復は困難 と思われていた。しかし、係長の足立紀彦は、その要因は中国産の国産偽装商品の流通にあり、産地偽装の根絶こそが国産椎茸の唯一の生き残り戦略と考えた。 なぜなら、国内流通量の7割近くを占めるはずの中国産は、当時店頭ではほとんど見られなかったからだ。

 「犠牲者は生産者だけではない。多くの消費者がニセ大分産 を買わされている。」業界通の係員、児玉秀市が口を揃えた。

2  対応

 偽装追求は一歩間違えば、調査する大分県が風評被害で訴えられる。組織を上げた慎重な対応が求められた。

 「まず、徹底した実態調査だ。」本庁の担当係員と地方振興局の林業課職員ら70名余りが、JAS(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律) の立入検査員(「Gメン」という)として配置された。Gメンは、直ちに県内製造販売業者(130社)の事業所調査を開始した。2ヶ月に及ぶ一斉調査で、数 社から(供述による)産地偽装が確認された。
 平成14年5月、県はその旨を報道した。これまで噂に過ぎなかった乾椎茸産地偽装の事実が、国内で初めて明るみにされた瞬間だった。

 業界が反応を示した。「県は本気で調査を始めた。」
 3年も続いた2,500円/kg台の市況が、3,000円/kgの壁を超えた。「国産の仕入れ事実がなければ、国産表示商品は販売できない。国産を買お う。」という、偽装業者の防衛反応であった。
 データ解析に秀でた係員の山下和久が指摘した。「これで産地偽装と価格変動には、明確な相関があることが分かった。」

 しかし、これで業界に蔓延していた産地偽装が収まったわけではなかった。
 相次ぐ食肉偽装問題などを受け、県には乾椎茸の偽装業者の情報も寄せられた。Gメンが任意調査に入るが、偽装は現物で判断できず、調査は仕入と販売を数 量比較するしかなかった。しかし、業者には、取引伝票に産地名の記載もなく、産地表示の根拠となるデータが未整備のため、出入の比較は不可能であった。立 入調査は早くも行き詰まった。

3  知恵比べ

 「産地偽装をどう暴くか。業界をどう監視し牽制するか。知恵比べだ。」
 係は次々と対策を打った。

 まず、表示根拠資料の整備や産地名の伝票記載等を義務づける「適正表示指導要綱」を県独自で制定し、業界を集め研修会等で徹底
指 導した。また、業界自 らに疑惑情報の提供を要請し、情報収集と業者間の牽制を図った。さらに、広域流通する乾椎茸は県内の監視では不十分として、全国主要都市の主婦等に依頼し て「しいたけウオッチャー」を配置した。また、(財)日本きのこセンター(鳥取市)で開発された中国産椎茸の分析技術を行政調査に初めて取り入れ、疑惑商 品の特定を 図った(後に国もこの手法を採用することとなる。)。

 業界の協力や各地のウオッチャーの活躍により、多くの疑惑商品が県庁に寄せられた。北海道旭川市の主婦ウオッチャーから送られた大分産椎茸は(財)きの こセンターでの分析の結果、中国産と確認された。全国に流通する偽国産椎茸がこれらの監視網に次々とかかった。偽装業者は次第に追い込まれた。

4  立入検査

 平成15年1月、提供された情報をもとに、疑惑業者に対する初の本格的な立入検査が行われた。関係書類を持ち帰り、5,000件 を超える仕入・販売伝票の集計に入った。児玉、山下らは連日連夜の集計作業を続けた。1ヶ月に及ぶ集計の結果、ついにこの業者が国産椎茸を仕入以上に大量 に販売していたことが明らかとなった。

 JAS法は相次ぐ食品偽装問題で前年に罰則が強化され、違反業者名を公表することが可能であった。しかし「業者名の公表」については、内部 で判断が分かれた。「県内業者の公表は大分ブランドに傷を付ける!」、「いや、いま膿を出すことがブランドを守ることだ!」・・・幹部を交えての激論の 末、県は業者名を公表した。

 (その後、Gメンたちの執拗な追跡と地道な調査は実を結び、平成16年3月までに、県により公表された椎茸業者はさらに3社を数えた。)

 県の対応に業界は震撼した。「偽装表示はバレる。公表されれば倒産 だ。」

5 成果

 公表に合わせて、市場価格が再び高騰した。3,000円/kg台半ば の展開だった市況は、4,000円/kgの大台を超えた。実に5年ぶりの回復であった。
 価格が高騰したのは県内だけでなかった、国内最大の産地、大分県の動きは全国の市場に影響を与えた。生産者の増収益は、県内だけでも実に20億円を超え た。
 日本一の「大分しいたけ」を支える県内生産者の顔に明るさが戻った。原木のクヌギ林の伐採が進み、種駒を打ち、原木を伏せ込む農家が増えてきた。

 「乾椎茸の産地偽装は大分県だけではない。国や他県も監視に力を入れ て欲しい。」食品表示の全国会議で足立は再三訴えた。
 平成15年12月、農林水産省は事態を重く見て、乾椎茸業者を対象とした全国一斉の特別調査を開始した。大分県警も動いた。産地偽装は不正競争防止法に 禁止された犯罪行為である。公表された業者は次々と起訴され、刑事責任を問われた。
 平成16年1月、県の取組がNHKのテレビ番組で紹介された。

 一方、椎茸の産地表示の改善は急速に進んだ。スーパーの店頭にも大分 産椎茸の隣に中国産表示の商品が並んだ。そこには消費者が安心して乾椎茸を買う姿があった。福岡市でウオッチャーとして巡回調査を担当した県福岡事務所の 川島貴博はこの光景に胸を熱くした。
 これまで長く調査や監視活動に奮闘した、Gメンや各地のウオッチャーの汗が報われた瞬間だった。

 県は、生産者の理解も得て、価格低迷を背景に平成9年度から続けて きた種駒補助金を、平成17年度に打ち切ることとした。厳しい県財政の中で、大きな節減になった。

 平成17年3月、県は産地偽装で傷ついたブランドの信頼回復の ため、全国に先駆け、産地履歴が正確に辿れる「乾椎茸トレーサビリティシステム」の導入に向け、関係者の合意のもと、新たな管理機関が設置されることを発 表 した。
 「このシステムの立ち上げなくして産地の信頼回復は図れない。」業界の説得に奔走した清原誠二郎が拳を握りしめた。

 日本一の椎茸産地としての誇りを胸に、産地の生き残りをかけた熱血職員の挑戦は続く。

クリックすると大きな画像が表示されます
クリックすると大きな画像が表示されます
駒打ち作業に励む生産者 表 示改善が進む店頭の県産椎茸
(クリックすると大 きな画像が表示されます)




平 成16年度「大分県職員『プロジェクトO』」のトップページへ

総務部 行政企画課  電話:097-506-2241 E-mail:a11100@pref.oita.lg.jp
Copyright(c) Oita Prefecture All rights reserved