04年3月に東京都立板橋高校で行われた卒業式の直前、保護者に君が代斉唱時の不起立を呼びかけて式典の進行を妨げたとして、威力業務妨害罪に問われた同校元教諭、藤田勝久被告(70)に対し、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は7日、上告を棄却する判決を言い渡した。罰金20万円とした1、2審判決が確定する。
藤田被告側は上告審で「呼びかけ行為は表現の自由を保障する憲法で保護され、刑事罰の適用は許されない」と無罪を主張したが、小法廷は「表現の自由は絶対無制限に保障されたものではなく、卒業式の円滑な遂行に看過し得ない支障を生じさせた」と退けた。
弁護士出身の宮川光治裁判官は「呼びかけ行為が校門前の道路などで行われるのであれば表現の自由として保障されるが、会場で式直前に行うのは許されない」との補足意見を述べた。1、2審判決によると、来賓だった藤田被告は式の開始前、参列した保護者に「今日は異常な式で、国歌斉唱の時に教職員は立って歌わないと戒告処分になる。斉唱の時は、できたらご着席をお願いします」と大声で呼びかけるなどし、開始を2分間遅らせた。【伊藤一郎】
毎日新聞 2011年7月8日 東京朝刊