トップ |佐賀県内ニュース | ||
「町民の理解進んでいる」 岸本町長、推進の立場一貫 | ||
停止中の玄海原発(東松浦郡玄海町)2、3号機について、岸本英雄町長は4日、全国の原発立地自治体で初めて再稼働に同意した。福島第1原第1発事故後、町には一昨年のプルサーマル導入時の3倍近い1200件を超える電話やメール、ファクスが殺到。大半は再稼働に反対する内容だったが、岸本町長は「県外からがほとんど。町民の理解は進んでいる」と一貫して原発推進の立場を変えず、町議会と同一歩調で再稼働への道筋をつけた。
住民説明会や住民投票については「議会制民主主義にそぐわない」と実施を否定。町長の意思は影響が大きく、議会は説明会を求める請願を不採択とした。先月29日には海江田万里経産相が来庁。以前から「原発は国が責任を持つべき」と主張していた岸本町長は「国がしっかりやると明言してほしい」と切り出し、大臣から“言質”を取った。
玄海町の人口は約6500人で、1割超の約660人が原発に従事している。岸本町長は「雇用への影響も考えざるを得ない」と安全性だけで再稼働の是非を判断できない立地町としての苦渋を語る。原発関連の交付金や税収は、年間予算の7割に当たる約40億円。年内には1、4号機も定期検査に入り、「すべて止まれば影響は計り知れない」と町財政も懸念していた。
岸本町長はこの日、議会の意向や区長会から反対意見がないことなどを踏まえ、「町民の一定の理解は得られた」とあらためて強調した。町内の無職男性(71)は「ここは災害もなく安全。何ら異論はない」。原発近くに住む唐津市鎮西町の会社員男性(48)も「ここも多くの住民が原発の下請けで働いている」と町長の判断に理解を示した。
ただ、福島の事故を受けて気持ちの変化をのぞかせる住民もいる。幼い子ども3人を育てる男性(30)は「原発があるのは仕方ないと思ってきたが、事故を見たら不安。でも、町長からは真摯(しんし)に住民の声を聞く姿勢が感じられない。万が一の時、子どもをどう守ればいいのか」とやりきれない表情を見せた。
「“村八分”になるのが怖くて意見が言えない」。胸中を明かす女性(62)は「不安を漏らす人が増えた。アンケートを取るなど、民意を受け止めて判断してほしかった」。農業男性(26)も「これからは見て見ぬふりはできないと問題に向き合ってきたが、もう手遅れだろうか…」と再稼働同意を受けて力なく語った。 |
||
2011年07月05日更新 |