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先行きは不透明 中国電力の電力供給体制

2011年07月02日

 福島第1原発事故を受け、今夏は全国的に電力不足が懸念されている。各地で定期検査(定検)を終えた原発の再稼働に見通しが立たないためだ。中国電力管内でも島根原発(松江市鹿島町)で稼働しているのは2号機(出力82万キロワット)のみ。同社は今夏の電力供給は確保したとするが、安全対策も抱え先行きは不透明。専門家は自然エネルギー普及と経済発展の両立は可能と、脱原発を説く。

中国電力が「経営の柱」と位置付ける島根原発1、2号機(右から)。同社は「運転再開が電力の安定供給の鍵」と説明している

 中電は今夏の状況について「安定供給ができる見込み」としている。今夏の最大電力(最大3日平均電力)の見通しは前年比2・2%減の1165万キロワット。対する供給力は7月に1295万キロワット、8月に1313万キロワットを確保。発電設備の故障や急激な需要増に備える供給予備率は、適正とされる8〜10%を上回っている。

 東京、中部電力から余剰電力を送る「電力融通」の要請があるとするものの、同社島根支社は「余力の範囲で行うが、当社のサービスエリアへの供給が前提」と強調。関西電力のように自主節電を求める計画もない。

■再開は未知数

 ただ島根原発の運転停止が長引けば、様相は異なってくる。安来市で6月に開かれた市議、市職員向けの研修会で、飯塚亮一島根支社長は「来年1月に定期点検で2号機が停止した後、1号機の運転を再開できなければ来夏はかなり厳しい」との見方を示した。

 同原発2号機では来年1月下旬から定検を開始。1号機(出力46万キロワット)は昨年3月に発覚した大量の点検漏れ問題で停止したまま。建設中の3号機は、制御棒駆動装置の不具合で運転開始の見通しが立たないからだ。

■地元の理解

 同社は記録的な猛暑だった昨夏、厳しい電力供給を強いられた。点検漏れ問題で1、2号機を自主停止する中、余剰電気を取引する「日本卸電力取引所」を活用して50万キロワットを購入。火力発電所の点検前倒しにより14万キロワットを確保した。負担増は、火力発電の原料費をはじめ約430億円に上った。それでも供給予備率は5・5%で危うい状態だったとする。

 島根原発1号機の再開について、地元の松浦正敬松江市長、溝口善兵衛島根県知事は依然として慎重な姿勢だ。津波対策の安全性に加え、福島第1原発1〜4号機と同型という問題もある。

 同支社は「他社からの電力融通、取引市場からの調達が一層難しく、燃料需給がひっ迫するような状態では非常に厳しい送電を迫られる」と説明。「地元の理解がないと、原発は稼働できない」としながらも、安定供給、経済性、環境性の観点から原発の優位性を強調する。

■持続可能社会

 これに対し、島根大学の上園昌武教授(環境経済論)は「中国電力は原発の依存度が低く、自然エネルギーに置き換えることは可能」と「持続可能社会」の実現を訴える。

 オール電化住宅などの導入は電力需要を増やす「矛盾」と指摘。一方、既存技術の活用で太陽光、風力など自然エネルギーの普及拡大、二酸化炭素削減は十分可能とする。また発電設備を分散させることで過疎地域の雇用対策にも結び付くとして「自然エネルギー開発の予算はコストでなく投資。国が政策主導すべきだ」と話している。



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