2011年5月12日 11時9分 更新:5月12日 14時26分
警察庁の総合セキュリティ対策会議は12日、インターネットを利用して他人の個人情報をだまし取る「フィッシング」について、処罰規定の導入など防止策の検討を提言する報告書をまとめた。フィッシングはID、パスワードなどの識別符号を不正に入手する手口としてネット社会の安全を脅かしているが、それ自体を取り締まる法令はない。警察庁は不正アクセス禁止法の改正も視野に入れ検討を進める。
不正アクセスを巡っては、他人の識別符号を使ってネットショッピングなどを行い、商品や金銭をだまし取る犯罪が多発。こうした犯罪に、フィッシングで取得された識別符号が利用されている。昨年1年間に警察が検挙した不正アクセス行為は1598件。うち1411件はフィッシングの被害に遭った識別符号が使われていた。
99年に成立した不正アクセス禁止法は、他人の識別符号を利用してコンピューターにアクセスすることを禁じているが、識別符号を収集する行為については規定がない。法の制定当時はフィッシングが確認されていなかったことが背景にあり、報告書は「制定後の犯罪情勢への対応が必要」と提言した。警察庁は今後、総務省、経済産業省や民間事業者とともに設置する協議の場で対策を検討する。
総合セキュリティ会議は、ネット犯罪の防止のための警察の施策について意見交換を行う組織で、有識者や民間事業者が参加している。【鮎川耕史】
パスワード、ID、クレジットカード番号などの個人情報を不正に入手する手口。実在の企業を装ったメールを不特定多数に送信し、受信者に偽のホームページを閲覧するよう仕向け、そのページに個人情報を入力させる。「サービス継続のための本人確認手続き」などの名目をかたる例が多い。国内では05年に警察が摘発した不正アクセス事件で初めて確認された。