まずは「戦う司書」、どういう話でしたか?
大川:最初に感じたのは、「司書」たちと「神溺教団」が殺し合うという、陰惨で殺伐とした話、すごい話だなと。
あと初めの1話を見て、この世界をすぐ理解してもらうのは難しいなぁ、たいへんだろうなと思いました。だけど、最後にはきっちりとひとつのところへ収束していくんですよね。そしてなんでこんなにやさしい終わり方ができるんだろう、と。アニメが終わったときの取材で、「これは結局愛の話でした」って言ったんですよね。最初は血と涙しかない、荒涼とした物語だと思っていたのに。
沢城:ずっと昔に書かれて忘れてしまっているような、名もない詩人が書いたような小さい詩、みたいな雰囲気で始まって、最終的には全米NO.1ハリウッド映画、みたいなスケールで終わった話ですよね。(私が演じた)ミレポックっていちばん普通な人だと思うんですが、彼女が出てきてやっと入っていけた感じで、最初はとっつきにくかった記憶があります。でも後半はもう嵐に飲み込まれていって、最後には「この話は『戦う司書』というタイトル以外考えられない話です」って言ったんですよね。
『人は死ぬと「本」になる』というメインキャッチがついてます。
大川:その設定も、アニメ1話を見ただけではなかなか理解してもらえないかな。小説だと1巻目の完成度がかなり高いので、ぜひとも続編を読みたいなと思えるのですが、そこをどれだけビジュアルで見せられるのか、と思っていました。最後の最後には、本に対する愛情で終わるんですけど。
沢城:ちょっとのロマンからはじまった発想というか、「本」の形状が石板だということもあるんですけど、たとえば、お墓に触れてその人の一生を知ることができたならと誰もが思ったことがあると思うんです。それを叶えてしまったというか。
大川:その意味では、人が死ぬと「本」になるって考えはわりとすんなりと納得できるんですよね、それが現実に出てくるっていうのが不思議なだけで。
ご自身が演じたキャラクターで魅力だと思った部分と、
反対に欠点だと思ったところは?
大川:ある意味、マットは欠点だらけなんです。人としても、男としても。だからこそ魅力的に見えてくる。これだけ多くのアニメーションが作られている中で、こんなに大人なキャラクターってあまりいないと思うんですよ。だから、マットアラストを演じるのが本当に楽しかった。毎週の現場が楽しみでしょうがなかったんです。マットアラストという役にものすごく惚れ込んでました。僕自身からはかなり遠い人なんですけど(笑)
編集:ハミュッツとの若かりし頃を書いた12話がありました。 大川:ハミュッツに対する絶望と希望。その両方を抱え込んでいるマットアラストを理解するには、あのエピソードは絶対に必要ですよ。それに、とてもアダルトなエピソードでもありましたが、シリーズ通してそうなんですけど、他のアニメと違うのは、登場人物のしゃべる台詞が非常に大人っぽい。いわゆる「アニメの台詞」ではないというか。何人もの先輩方と一緒にやっていたんですが、先輩方の台詞を聞いていると、まるで吹き替えの外国映画を見ているような、そんな印象でした。
沢城:だから、本来当然なんですけど、昨今少なくなった、大人は大人が演じて、子供は子供を演じるという誰も背伸びしていないキャスティングだったのも「司書」では印象的でした。わたしもミレポをやってて、5話で「記憶を消して」とハミュッツに言いに行くシーンがあるんですが、もう朴さんに向けて言っているというか…。私のまま体当たりしていくようなそんなスタンスでした。だから、イレイアさんに紅茶とか入れてもらうと、ホントに竹内さんとお茶しているみたいな(笑)
大川:そして最後に、(イレイアが若返るシーンで)田村(ゆかり)に変わるってね(一同爆笑)
他のキャラで印象的だったのは?
大川:(三宅)健太のミンス、あれははまってるなぁと思います。武骨なんだけど、実はとっても優しい、みたいな。そういうところは、まるで健太自身ですね。
編集:スタッフから嫌われたヴォルケンとかは?
一同:ああーー(爆笑)
大川:イベントでもそうだったよね!どうせ俺は…みたいな。でもねぇ、ヴォルケンみたいに言ってたら、今の世の中でごはん食べらんないんだよってね(笑)
沢城:それに、思わせぶりなことをいうからね、ミレポはだまされるんですよね(笑)。
キャラクターが持っている魔法権利について。
マットは2秒先を予知できる能力、ミレポは思考共有の能力を持ってます。
大川:最初は2秒先ってのがピンとこなくてね。何の役に立つんだろうって思ってました。でもアフレコ現場で映像を見たときに「あ、これか」って分かったんです。2秒先をわかってて動いてるっていうね。やっぱりすごい能力なんですよ。
沢城:ガンマンの世界で2秒ってかなり生死を分けますよね・
大川:自分で「俺は撃てない」ってのがわかるシーンもありましたね。
沢城:ぎりぎりSFの要素に入るというか(笑)
沢城:ミレポの思考共有も、そういうSFすぎないというか…ポケベルかっていうくらいの一方通行で。ハミュッツとは直接会話はできないですから。
でも、物語のラスト、世界に呼びかけて「誰か、誰でもいいから」っていうシーンがあって。世界中に呼びかけているのに応答がないっていう、あれはドラマがあるなぁと。この能力があってこそのドラマでした。
印象に残っている台詞はありますか?覚えてるとか、
もしくは言いたくなかったとか。
大川:いや、僕は全部なんですよ。マットやってて幸せだったから(笑)
沢城:予告ナレーションは(聞いているほうも)幸せでしたよ。
大川:そう、予告!いつもかっこつけてね。
沢城:女子から歓声があがる予告って、そんなにないですよ〜。
大川:めちゃめちゃかっこつけているときもあるし、どうでもいいことをいうときもあるし(笑)。マットの台詞はみんな好きなんですよ。
沢城:私はさっきも言った、最後の世界中の人に呼びかけるところなんですが…あれはスケールが大きくて。先ほども挙げた5話のシーンで、ハミュッツに「仕事になりません」っていう台詞。ヴォルケンのことを忘れたい、忘れたくないっていう葛藤があって…。
大川:だから、最初から最後まで、ミレポだけは超人じゃなくて普通の子。永遠の少女なんだなって。
沢城:彼女はちゃんと隙があるんですよね。キャラとしてもそこで愛せるというか。
大川:あたりまえの感覚をもっているから、マットはあえてミレポを武装司書にしたんでしょうね
沢城:私、皆に「ミレポ」って呼ばれるのすごく好きでした。“愛称”なんですよね。気持がこもってるのがわかるんです。それと、ミレポがはじめて人を手にかけるところも、一般人の肩書から一線を越えて、ハミュッツ側に足を踏みいれてしまった衝撃をとてもよく覚えています。
ラストシーン、お二人でした。
大川:あれだけ壮大な話だから逆にすごく人間的なところで終わらないとね、と思うし、世界が終わる話じゃないしね。世界をこれからも紡いでいく代表がミレポなんだろうし、オモテにいないけどウラで動いている人もいて、その代表がマットだってことなんだろうし。それと最後は、本に対する愛情にあふれてました。僕も子供の頃から本が好きなので、こんなにストレートに書かれちゃうと逆に照れちゃうくらいにね。だからこそ、何度も言いましたけどこれは愛の物語です。本に対する愛情、人に対する愛情。最後のシーン、小説よりもアニメのほうが台詞が短いので、その思いをどれだけ込められるかっていうので緊張しました。でもあのシーンがやれて本当によかったです。
沢城:ラストシーンでマットさんも去ってしまって、ミレポは一人バントーラで生きていく、という姿が描かれましたが、孤独を感じなかったのが印象的でした。大好きな人たちが作った未来、彼らの思いを全部抱いて生きていく、という温かい、愛に満ちたラストだったように記憶しています。
「戦う司書」を今後再び漫画化する企画もあるのですが、
マットやミレポを中心にしたお話を作るとしたらどんなものが読みたいですか?
大川:マットはやっぱり、色っぽい話がいいですよね。色気を感じさせるようなお話が。
編集:ハミュッツと絡まなくてもいいのですか?
大川:うん。(即答)
一同爆笑
沢城:ミレポは、ありきたりですけど、お母さんになった彼女は見てみたいですね。奮闘している姿も浮かぶけど、・・・あれだけバラエティーに富んだ人たちと出会ってきたわけだし、しっかりいいお母さんしているような気もします。
大川:まがりなりにも武装司書だからね。
沢城:そうですよね、実はエリートなんですよね(笑)。あの中では普通なだけで。
DVD―BOX発売と、TV再放送が決まりました!
大川:本放送は衛星だったので、TOKYO MXでの放送だったりDVDも安くなるのなら、見てもらえるチャンスも増えますね。とにかく見てもらわないことにははじまらないですから!一筋縄ではいかない、食べてすぐおいしい、というかんじではないですが、作品の中で登場人物たちが、何を考えて、何を求めて生きているのか、それが分かったときには、あなたも幸せになれますよ。
沢城:この作品に出会えてなかったら何か、「危なかった!!」というくらい、影響を受けた物語です。導入はかなり手こずるんですけど、終わり方はとてもシンプル。小説でもアニメでも、どこから入っていただいてもいいのですが、これに触れずにいるのは危ないですよ(笑) |