菅直人首相は7日の参院予算委員会で、電力需給について「自家発電がどの程度、稼働可能なのかを、経済産業省に点検するよう指示している」と強調した。原発再稼働を取りやめても、使われていない既存発電所や企業が緊急時に備えて保有する自家発電設備をフル活用すれば「電力不足を補える」と首相周辺は期待をかける。
首相は10日ほど前から自家発電に急に強い関心を示し、4日には経産省の松永和夫次官ら幹部を呼んだ。分厚い資料を抱えて「全国から届け出があった6000万キロワットのうち、使えるのは180万キロワットしかありません」と説明した松永次官を、首相は「そんな話には納得できない。もう一度ちゃんと調べてこい」と追い返した。翌5日には国家戦略室の官僚にも精査を命じた。
6日、衆院予算委でみんなの党の渡辺喜美代表が自家発電の余剰分である「埋蔵電力」の活用を、と質問すると、首相は「埋蔵電力は魅力的な言葉だ」と呼応した。
だが「埋蔵電力」は、それほど簡単には使えない。
全国の自家発電設備の出力合計は2010年9月末時点で原発40~50基分に相当する6035万キロワット。5割が東北・関東地方に集中する。石油コンビナートや製鉄所など大量に電力を消費する施設では大型の発電設備を備えるケースが多い。
自家発電の多くは重油や石炭を燃料とする火力設備で、老朽化が進み安定運転が難しいものもある。00年以降は風力発電など環境負荷の小さい設備の建設が増えているが、十分に普及しているとはいえない。
一時的な電力不足を乗り切る目的なら効果はあるものの、石油価格が上昇する局面での長期利用は電力価格の高騰を招き、二酸化炭素(CO2)の排出量も増える。大手電力の送電網を自由に安価なコストで利用できる措置も欠かせない。
「埋蔵電力」に意欲を示す首相が代表を務める民主党は「『埋蔵金』を活用して約16.8兆円の財源を捻出できる」と公約したが、実現には程遠かった。
菅直人、松永和夫、阿久津幸彦、渡辺喜美、東京電力、日本製紙グループ本社、東北電力、三菱化学
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