「まあまあ」
今日は平日。有休を取れた俺は、同じく今日仕事が無い友人を誘って都心へ遊びに行く約束をしていた。いつもは朝のラッシュを避けているが、今日は嫌がる友人を無理やり説得して電車に乗り込んだ。もちろんあの車両だ。
いつものように終点のひとつ前の駅につくと、俺や、友人、そして他の乗客からも球体が浮かび上がる。
俺は友人の球体にぶつかり、とある人物の中に放り込む。そして俺もその人物の隣にいる人物の中に入った。
「うーん、何だか気を失って……って何だこれ!?」
甲高い声をあげる友人。俺はその様子をニヤニヤしながら見ていた。
「スカート穿いて…、細い足、小さい手…、長い髪……俺…女の子になってる!?」
友人の入った体。それは小学生くらいの小さな女の子だった。そして俺はその女の子の母親らしき女性に乗り移っている。
「お、女の子の…カラダ……フヘヘ…」
俺が友人を小さな女の子に乗り移らせたのにはわけがある。
「俺が、幼女に…、幼女そのものになっているんだ!!」
そう、友人はいわゆるロリコンというやつだ。とはいっても小さな女の子に何かするわけではない。友人いわく、幼女は見てるだけで癒される。幼女に手を出す男は最低最悪のクズだそうだ。
「ふふん…、へへ…」
うれしそうにポーズをとる友人。その姿は外見とも相まって非常に愛らしい。しかし中身は成人男性なのだが。
「どうだ、憧れの幼女になれてうれしいか?」
俺は友人に声をかけた
「え!? お母さ…、いやママ…? な、何でも無いよ…。俺…え、わたしは…」
「あはは…、俺だよ、俺」
「え、え!?」
俺は友人に今の状況を説明した。
「本当に……、俺が幼女に乗り移って、お前がその女性に乗り移ってるんだな?」
「ああ、今のお前の体を見ればわかるだろ」
「そ、そうだな…しかし、20分しかないのか…」
そうつぶやくと友人はおもむろに自分の体を弄りだした。
「ん…、ぷにぷにして、柔らかいな」
「おい、何やってる…」
「え、体の探索だけど…」
「おまえ、幼女に手を出す男は最低最悪のクズとか言ってなかったか」
「ああ、そのとおり。幼女に酷いことをする男はクズだ。だが、今の俺は幼女だ。自分の体をどうしようと俺の勝手だろ?」
こいつは実は結構危ないヤツだったのかもしれない。まあでもこれまで俺も女性に乗り移って好き勝手してきたから、人のことは言えないか。
「ふあん…、こうすると、何だかムズムズしてくる…」
友人は電車の手すりに股を挟み、上下に体を動かす。
「ん…、お股がキュンっとなって…、いいよぉ……」
幼い声に似合わない、切なそうな声をあげる友人。
「そうだ、ママ、だっこしてよ」
「え、俺が!?」
急に俺のほうに向かって声をかける友人。俺は言われたとおり友人を持ち上げだっこをする。小さなその体は、簡単に持ち上げることが出来た。
「で、どうするんだ」
「へへ、こうするの」
友人は俺の着ていたシャツの中にもぐりこみ、さらに下着を捲り上げた。
「ひゃあ!? くすぐったい!」
「うへへ、お母さんのおっぱい」
そういうと、友人は俺の乳首に吸い付いてきた。
「ああん! ちょ、ちょっと」
ちゅうちゅうと、そして時には舌を使って胸の先端を刺激してくる。
「えへへ、ママは左の乳首が弱いみたいだね。わたしがいつも吸っていたからかな」
「ん……、あああん」
服の中で友人がもぞもぞと動く。髪の毛が肌に当たってくすぐったい。小さな女の子に乳首を吸われている。それは倒錯的で、そして母性本能なのだろうか、そんな姿が愛おしく感じてきて、自分の中で感情がまとまらない。
「キモチイイの? ママ……って、んひゃう!?」
黙ってやられるのも癪にさわる。俺はだっこしている手を動かし、友人の股に触れた。さすがに指は入れられないだろう。女の子が穿いているパンツの上からゆっくりと指を這わせた。
「ひゃ、な、ひぅ……」
気持ちいいのだろうか、友人は足をもぞもぞさせる。
「このっ、仕返しだ」
「んぅ!?」
再度、友人は俺の胸を吸ってくる。
「ああん……、いい……」
「ひゃあん、せつないよぅ……」
俺たちは見た目は、美人な母親とかわいい娘だ。そんな母娘が、その外見からは想像つかないような情事に勤しんでいる。そう思うと俺は興奮し、体が火照ってくる。
そして――
「あん、もう…、だめ…、あああああん!!」
「俺も何か、くる…、や…、あああああん!!」
母娘で同時に絶頂をむかえた。
「はあっ、はあっ…、苦し…」
「はあ、はあ……、どうだ、憧れの幼女の体になった感想は」
「あはは、最高……、キモチイイ」
真っ赤な顔をしながら友人がへたり込んで答えた。
そうこうしている間に、電車が終点に到着した。俺たちは元の体に戻っていた。
「ふう、やっと着いたな。まったくこれだからラッシュ時は嫌だぜ」
「ああ、ひょっとして覚えてないのか?」
「何を? あ、でも何だかとても良い体験をしたような……?」
「いや、何でもないんだ」
やはり覚えてないのか。なぜ俺だけが覚えているんだろうか。
満員の都心行き7:44発、第3車両。終点から一つ前の駅で乗客の体から球体が飛び出る。この球体を観察してみると、俺以外の球体は特に意思も無いようにふらふらと浮いていて、近くにいる別人の体に入ったり、元の自分の体にもどったりしているようだ。
そして今日、不思議な球体を発見した。まるで意思を持っているように動き、一直線に別の体に向かっている。その先には大学生くらいのカップルがいた。美男美女のカップルだ。その球体は男のほうに入っていった。それを見て、俺はカップルの女のほうに入った。
電車が動き出すと、男はおもむろに俺の体を引き寄せた。
「なに?」
「なあ、キスしようぜ」
カップルの男のフリをしているんだろうか。いまいち目の前の男の中に入っているやつの考えが読めない。
「いやよ、こんな電車の中で」
俺もとりあえず女のフリをする。どういう話し方かわからないが、まあ目の前の男も本来のこの女の話し方はわからないだろうし、ばれることはないだろう。
「いいだろ、ほら」
「ちょ……!?んちゅ」
強引に俺の唇を奪う。舌を入れて口の中を嘗め回してくる。その舌使いに頭がぼーっとしてくる。しかし、このままやられっぱなしではいけない。
「ちゅぷ…、ぷはっ! え、ちょっと!?」
俺は男の股間に手を這わせ、そこにある膨らみを、俺の細く白い手で円を描くように刺激する。その刺激に反応しムクムクと大きくなる。
「ん、お前、何やって…」
「え? だって、エッチしたいんでしょ。あんたの中身が誰かわからないけど」
「何を言って……まさか!?」
男が青ざめた表情を見せる。
「イケメン彼氏に乗り移って、美人な女とエッチしたいってところかな」
「お前…、知っているのか?」
「まあ、そんなことよりエッチしようぜ」
俺は男のズボンと下着を下げ、下半身を露出させた。すっかり大きくなったペニスがそそり立つ。
「うわ、この男、でかいな。どれどれ」
俺は着ている服を脱ぎ、胸を露出させた。
「ふむ、意外と胸がでかいな。それなら…」
俺は自分の胸を両手で持ち、男のペニスを挟んだ。
「ちょ、それは……」
「知ってるだろ、パイズリってやつだ」
俺はペニスを挟んだまま、ゆっくりと胸を動かす。
「うわ……、俺のが…柔らかい胸に挟まれて……」
「うーん、胸を動かすだけではうまくいかないな」
俺は、胸でペニスをはさんだまま、腰を動かす。
「んぅ…、あ、動いて……」
「うん、やはり体を動かすほうがペニスに刺激を与えられるな」
胸の中でビクビクと脈をうつ男のペニス。何だか男を征服しているみたいで気分が良い。
「気持ちいいみたいだな。じゃあこれはどうだ?」
胸の間から先端を出し、それを咥える。
「うわっ……」
ストローのようにペニスに吸い付く。その間も胸を動かし、ペニスの刺激を忘れない。
「俺、もう、出る!!」
「え!?」
咥えていたペニスの先端から白濁液が飛び出る。温かいそれを口の中に出され、俺はそれを飲み込んでしまう。
「うえ、げほっ…、飲み込んでしまったじゃないか…」
「いや、あまりに気持ちよかったからな…」
落ち着いたところで、男が口を開く
「あんた、知っているのか?」
「ああ、この電車で起こっていることだろ。知ってるよ。あんたも知ってるんだな」
話を聞いてみると目の前の男も、俺と同じように終点のひとつ前の駅で降りる男性がいることを知って、その席に座ろうとした際に、この現象に気づいたんだそうだ。
「まさか俺以外にも、気づいているやつがいるなんてな」
「俺も同じだよ……、そうだ、明日は二人で楽しまないか?」
俺は目の前の男に提案した。
「あ、明日はこの電車に乗らないんだ。明後日なら乗るぞ」
「そうか、俺は○○駅から、だいたいいつもあそこに立っているから、また近くに来てくれよ。ほら、あの男が俺だ…」
指をさした先には、俺の体が痴態を演じていた。誰が入っているのかわからないが、ちょっと見たくない格好だ。
「あはは、酷い格好だな。わかった、俺の体は……」
「あ…」
全て言い終わる前に終点についてしまったようだ。元の体に戻っている。人が電車から一斉に出ようとする。結局あの男の中の人の体はわからなかったな。
「まあいいか」
明後日になったらまた会えるんだ。
明後日。
俺はいつものように電車に乗り込む。今日は俺と同じく、この現象を知っている、あいつが電車に乗り込んでくるはずだ。
「誰なんだろうか?」
俺はやつの顔を知らない。だから俺の近くに来ても俺は気づかないのだ。
「あのおじさんか?それともあっちの年配のおじいさんか。まさかあの高校生じゃないよな」
どの男がやつなのか、俺は乗客を注意してみていたが、よくわからない。そうこうしているうちに、終点の前の駅に着いてしまった。
「今日は来なかったのか?」
そう思っていると、いつものように体から球体が飛び出す。
(今日は誰にしようか……って、うわ!?)
横に立っていた女子中学生から出た球体が俺に近づいてくる。そして俺にぶつかり俺を弾き飛ばす。その先には女子中学生の体。俺はその体に吸い込まれていった。体に吸い込まれて行く間に、女子中学生から出た球体は俺の体へ入っていくのが見え、俺は意識を失った。
「うーん……」
幼さの残る声、それでいて小さな子供とも違う声。俺はセーラー服を着ていた。あの女子中学生が着ていたものだ。
「あの女の子になっているのか」
女子中学生から出た球体は明らかに意思を持って動いていた。まさか――
「あたっ!」
頭を叩かれた。叩いた人物は俺だった。その顔はにやにやとしていた。
「まさかとは思うが、一昨日の……」
「ああ、そうだ。驚いたか?」
「ひょっとしてこの体は……」
「俺の体だよ。かわいいだろ」
「女だったのか!?」
まさか一昨日あんなことをした相手が、年端も行かない中学生の女の子だったなんて。しゃべり口調からすっかり騙されていた。たいした演技力だ。
「全然わからなかったな……ひゃん!?」
突然、俺の体に抱きしめられる。成人男性と女子中学生では、体格差が歴然だ。抵抗できずにそのまま壁際へ押さえつけられる。
「おい、自分の体なんだろう?大切に扱えよ」
彼女が何をしようとしているかは、もう想像がついていた。しかし、相手が女子中学生と分かった以上、大人として、リードを取られるのはいただけない。
「あんたの考えていることは分かるよ。年下に情けない姿を見せたくないんだろ。そんな意地張ってないで、いいから体に正直になりなよ」
「うわっ、あ、あん」
首筋を舐められる。温かい舌の感触が首を這う。ゾクゾクとして、全身の毛がよだつようだ。
「ん…、ぴちゃ、ぴちゃ……」
生暖かい刺激と、唾液が蒸発したときの冷えた感触が交互に俺を襲う。
「あうん……、この体…、感度が良すぎ……」
中学生とは思えない、体の反応に俺はとまどう。
「俺の体、気に入ったかい? それならこれは……」
「ひゃ!? あうん……」
全身を弄ってくる。敏感なところはあえて触らずに、俺を焦らしてくる。ゆっくりと俺の体は反応していく。
「は、はあん……、も、もっと……」
「じゃあ、お望みどおり」
彼女は俺の胸の先端を指で摘む
「んっ!? ひぅんんん!!」
つままれた瞬間、俺は一瞬意識がとんだ。軽くイッてしまったようだ。
「良い反応じゃないか、俺の体、存分に味わってもらうよ」
「あん……、ひゃ、ああん…、ん…、あん……」
セーラー服の上から胸を揉まれる。体から湧き出てくる快感を、喘ぎ声で発散させるしかなかった。
「良い感じだな、それじゃあ……」
彼女が俺の体を持ち上げる。急な出来事に俺は彼女の体にしがみついた。
「お……、おい……まさか…」
「そう、この状態でやっちゃうよ」
そう言うと彼女は俺をおんぶした状態で、下着をずらし、ペニスを突き上げた。
「ああ!? ん…、んんぅ……」
体ががっしりと密着し、俺のアソコがペニスを包み込む。
「ほら、こうすると気持ちいいだろ?」
彼女は腰を突き上げる。ペニスが内壁を擦り、言いようの無い快感を俺に伝えてくる。
「あん…、あん……」
「俺の中、気持ちいいな……」
彼女に体を支えられている。落ちないように彼女の体に抱きつこうとすると、さらに身体が密着しペニスが中に入り込む。彼女に全ての主導権を握られているようで、恥ずかしい。
「ふあ……、や……、あ、ああん…」
「く…、もう……出すぞ」
「ん、出して……、あ、あ、あああああああん!」
膣の中に温かい物が入ってくるような感覚の後、俺は絶頂を迎えた。
「あ、あふぅ……」
俺はおんぶ状態から下ろされた。しかし気持ちよさで、立ち上がることが出来ない。
「おいおい、大丈夫か?」
「あぅ……、このカラダ、感じすぎ……」
俺は終点に着くまでの間、虚ろな顔をして床にへたりこんでいた。
「それじゃあね、お兄さん。あまりはまりすぎに気をつけて」
終点について、元の体に戻ると、彼女はそう言って電車を降りた。降りた先で、友達だろうか、同じ制服の女子中学生を見つけたかと思うと、楽しそうに話している。その姿からは、先ほどまでの行為をするようには見えない。
「まさか、あんな子が……」
外見と中身のギャップに驚きつつ、仲間が増えたことに喜びを感じていた。
その後も、俺は、いろんな人に乗り移っては遊んでいた。時にはあの女子中学生と一緒に。女子中学生は部活の朝錬があるときに限り、この電車を使うようで、毎日乗っているわけでは無いそうだ。
「今日は誰にしようかな」
今日はあの女子中学生がいない。だから一人で楽しむつもりだ。いつものように、終点のひとつ前の駅で球体になる。
(面白いことが出来そうな人物が良いんだけどな)
この非現実な現象にも慣れてきて、最近ではマンネリ化している。
(ん、あれは?)
ふと、ドア付近を見てみると、俺が最初に乗り移ることになった女子高生が立っていた。あの時と変わらず、灰色のカーディガンに白いブラウス。赤色のリボン、青色チェックのプリーツスカート姿だ。
(おお、懐かしいな。よく考えたら彼女から始まったんだ……よし)
俺は彼女の中に入り込んだ。
プシュー――
「え、あれっ!?」
乗り移って気が抜けていた。おそらく誰かが駆け込みで乗ろうとしたのだろう、俺はドアが再び開いたことに気がつかなかった。
「わ、わ……」
ドアに全体重を支えていたため、その拠りどころが無くなった俺の体は駅のホームに飛び出してしまった。そしてそのまま電車のドアが閉まり、俺をホームに残したまま、電車は出発してしまった。
「あ、ちょ、ちょっと…!?」
俺は女子高生の体のままだった。反対側のホームの乗客が俺の方をチラチラ見ている。よく見ると足を大きく開いて倒れていたようで、盛大に下着を反対側のホームの乗客に晒していた。
すぐに立ち上がり、恥ずかしさからその場を立ち去った。
「何でこうなったんだ?俺の体はどうなったんだ」
俺は彼女のカバンから携帯電話を取り出し、自分の携帯電話にかけてみた。
「……つながらない。そういや電車の中では電源を切っていたっけ」
どうしていいか頭を抱えていると
「あれ、今日は遅いね。いつもの電車じゃないんだ」
俺が着ている制服と同じ制服を来た女子高生が話しかけてきた。
「……どしたの? 変な顔して?」
「え、あ……、何でもないよ」
この体の友達なんだろうか
「それよりも、もう電車が来ちゃうよ、早くホームに行かなきゃ」
そう言うと彼女は俺の手を引き、ホームへ向かった。
「こ、こっち乗ろう」
俺は友達らしき女子高生を連れて、第3車両へ乗ってみた。一本後の急行も相変わらず混んでいる。
ドアが閉まる。しかし乗客が球体になることは無かった。俺は女子高生の体で、20分間満員電車に耐えていた。
「終点、終点です。お忘れ物のなさいませんようお降り下さい」
終点になれば、元に戻るかと期待していたが、それは叶わなかった。終点になり、ホームに下りても、俺はずっと女子高生のままだった。
「ご、ごめん。ちょっと先に行ってて」
「そう? わかった、学校遅れないようにね」
俺は友達と別れると、再び携帯を取り出し、俺の番号に連絡した。しばらく間があった後、
「もしもし……」
俺の声だ。
「あ、えっと、お前は誰なんだ」
「は? 君こそ誰なんだ」
「電車内で誰かが乗り移ってるんじゃないのか」
「……何変なことを言ってるんだ。……間違い電話かい。俺は今から仕事だから切るよ」
「あ、ちょっと……」
電話を切られてしまった。電話に出たのも俺のようだ。いったいどうなっているんだ?
仕方なく、俺は彼女として、彼女の通っている女子高に向かった。いろいろおかしなところはあったが、何とか彼女として一日過ごすことができた。また高校生として高校に通い、周りは女子高生ばかり、さらに自分もその女子高生の一員になっていることなど、新鮮なことばかりで、俺の体の心配から、だんだんと今の状況を楽しむようになっていった。
そして次の日。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
俺は昨日初めて会った母親に見送られ、家を出た。彼女はごく普通の家に生まれて、ごく平凡に暮らしてきたようだ。
「しかし……」
昨日はこの体を探索しすぎて、寝不足だ。女子高生が自分の意思で動き、自分のしたいようにしてくれる。しかも20分という制限が無いのだ。そんな状況に興奮し、昨日はとても寝られる状態ではなかったのだ。
彼女がいつも乗車している、終点からひとつ前の駅。いつも俺が乗っていた電車の第3車両に俺は乗り込んだ。
電車に乗ると、俺を含めた乗客が球体になっていた。急いで自分の体を捜した。
(いたっ!)
俺の体はいつものところにいた。俺はその体に潜りこんだ。
俺は自分の体に戻っていた。
「おお、何だか懐かしいな」
1日しか経っていないのに随分懐かしい気がする。
「ふう、何だか今日はもういいや」
自分の体に戻れた安堵感から、俺は終点までの20分間、ぼーっと過ごしていた。
「終点、終点です。お忘れ物のなさいませんようお降り下さい」
いつものアナウンスが流れる。
「やっと着いたか、さて……え、ええ!?」
俺は女子高生の姿になっていた。昨日から乗り移っていた女の子だ。元の俺の体を見ると、何事も無かったかのように、電車から降りていく。いつも俺がそうしているように。
「……何で?」
呆然としていると。
「やっちゃったね」
女の子の声。振り向くとあの女子中学生がいた。
「乗り移ったまま電車の外に出ちゃったんだろ。もう、戻れないよ。あんたはその女子高生として固定されちゃったんだ」
「俺の元の体はどうなるんだ? 誰が入っているんだ?」
「この電車での20分間の出来事は終点に着いた時点でなかった事になる。あんたの元の体は抜け殻状態になっていたことが無かった事になって、修復されたんだろう。あんたとして」
「つまり俺が二人いることに……」
「そう、サラリーマンのあんたと、女子高生のあんた。電車内での20分間の出来事を覚えているのは女子高生のあんただけみたいだね」
「じゃあ、俺はずっとこの体で……」
「まあ、気にすんなって。女の生活もたのしいぞ、特にあんたは美人だからな」
「なあ、何でそんなに詳しいんだ。もしかして君も……」
「えへ、何のことかな? それじゃあね、お姉ちゃん」
そういうと彼女はその場から立ち去った。
その後、俺は女子高生として暮らしている。最初は戸惑いもあったが、あの女子中学生の言うとおり、慣れてくると楽しいものだ。
それに――
今日はあの女子中学生が電車に乗っている。俺たちはカップルに憑依しようとしていた。
「今日は俺が男な」
俺が先手をうって女子中学生に言った。
「えー、前回もそうだったじゃないか。たまには俺も肉棒の感覚を味あわせてくれよ」
「年功序列だから。お姉さんに譲りなさい」
「ちぇ、俺の元の体ならあんたなんて全然若造なのに……っと何でもない。しゃーない、高校生のお姉さんに譲りますよ」
7:44発の都心行き電車の第3車両、それに乗れば俺は誰にでもなれるんだ。女子高生になった今でも20分間だけなら、男に戻ることが出来る。女子高生の暮らしも楽しいし、今のままでも、良いのかなと思い始めていた。
おわり
今回のお話は、かなり好評をいただいて、ありがとうございました。
自分も書いていて楽しかったです。
いろんなシチュエーションを書きやすいというのもありますが。
とりあえず考えたシチュエーションは全て入れてみました。
主人公はうらやましいですね。
それでは!