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県政の課題:’11埼玉知事選/1 医師不足 打開策見いだせず /埼玉

 庄和中央病院(春日部市上金崎)の待合室は、地元の高齢者でごった返していた。72病床に対し、常勤医師は8人。洞ノ口佳充副院長が抱える仕事は、本業の外科のほか、内科の手伝い、予防接種、学校医、往診、グループホームの主治医……と多岐にわたる。洞ノ口副院長は「高齢者は1人で多くの病を抱えており8人でも人員不足」と語る。

 人口10万人当たりの医師数が139・9人(08年)と全国最下位の埼玉県。打開策として県が着目したのは、出産や育児で離職した女性医師の活用だ。だが09年10月に復職支援のための研修施設「女性医師支援センター」(さいたま市)を開設したものの、寄せられた相談は累計37件。最新の医学知識に関する講習やシミュレーターなどを使った研修を用意したが、受講した女性医師はいまだおらず、復職した人数さえ把握していない。県医療整備課の吉田幸司課長は「研修を受けてくれれば追跡調査もできるのだが。実績の少なさは反省している。効果的な改善策を考えたい」と話す。

 上田清司知事は6月の会見で「私の任期に入ってから医師の増加率は全国2位。増やしてもまだ少ないということ」と説明する一方、小児や産科医療重視の考え方を示した。しかし、厚生労働省の調査では、小児科のある県内の病院は98年の179が08年には132に、産科・婦人科の看板を掲げる病院数も71が45に減少した。

 県は産科や小児科を目指す後期研修医を対象に月額20万円の資金貸与事業を09年度に創設。今年度は救急にも拡大し45枠のうち30人に貸与する。ただ同様の施策は他の自治体にもあり医師定着への効果は未知数だ。

 6月には「さいたま新都心8-1A街区」(さいたま市)に、2病院を移転させ、救急や周産期母子医療を拡充させる計画が公表された。上田知事は「通勤に便利で専門医を集めやすい。医師確保の効果も期待できる」と強調する。

 国は08年に医師数の抑制方針を転換したが、現行の医師確保策は、他地域との奪い合いともいえる。

 NPO法人「医療制度研究会」副理事長で県済生会栗橋病院の本田宏医師は「医師養成には最低8年かかる。すぐにでも医学部新設に取りかからなければ間に合わない」と警鐘を鳴らす。

 県外では、東北福祉大(仙台市)や、国際医療福祉大(栃木県大田原市)などで医学部新設に向けた動きが出ている。県内では私立の埼玉医科大が医師養成を担ってきたが、国公立大で医学部がないのは埼玉を含む3県のみ。県は医学部新設には、過去の例から建設費に700億円程度、運営費に年間65億円程度かかると試算する。加えて医師約300人を確保する必要があるとし、ハードルは高い。

 医師不足に明確な対策を見いだせない現状に、本田医師は「恐ろしい速度で進む高齢化に対応するため、行政は全力を挙げてほしい」と語る。

    ○

 知事選が14日に告示される。医療や雇用など、今後問われる県政の課題を探った。=つづく

毎日新聞 2011年7月7日 地方版

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