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きょうの社説 2011年7月7日
◎全原発で安全評価 不信解消へ新たな基準を
海江田万里経済産業相が全原発での実施を表明した「ストレステスト」(安全評価)は
、地域住民の不安を解消する狙いがあるとはいえ、運転停止中の原発について自らが示した「安全宣言」との矛盾を感じないわけにはいかない。経産省が2度にわたり、北陸電力など電力各社に要請した緊急の原発安全対策は、津波 による全電源喪失や水素爆発など福島の事故を想定したもので、耐震性を含めた総合的な安全対策とは言い難かった。追加検査の実施はこれまでの対策が十分でなかったことを認めたことにならないか。九州電力玄海原発の再稼働に前向きだった佐賀県の古川康知事が追加検査の実施を受け、判断を先送りする考えを示したのは当然である。 玄海原発のように立地町が早々と再稼働容認を表明した地域から説得を試み、運転再開 の突破口にするやり方よりも、科学的な安全指標に基づいて判断する方が分かりやすい。ましてや首相が地元に足を運んで説明すれば安全性が高まるわけではない。 追加の安全検査は新たな基準づくりの一歩になる。実施を決めたからには、政府は再稼 働ありきの印象を持たれないよう、地震列島の潜在リスクを織り込んだ客観的な評価手法を検討してほしい。 ストレステストは地震や津波などに対する原発設備の強度を調べる耐性検査で、国際原 子力機関(IAEA)が提唱する安全指標である。福島の原発事故を受け、欧州連合の各国は6月から実施している。 原発の立地自治体からは、経産省の原子力安全・保安院が検査を主導することへの不信 感も見え隠れする。最も大事なのは、信頼が得られる評価の体制を構築することである。内閣府の原子力安全委員会も再稼働の判定に積極的に関与する姿勢がほしい。 検査を厳密に行おうとすれば、電力需給が逼迫する夏場に原発を再開させるのは一層困 難になる。だが、既存の原発を安全に動かすには新たなルールがいる。夏の再稼働を焦らず、次の電力需要ピーク期の冬に備えて環境を整えることも、長い目でみた原発の信頼回復につながるのではないか。
◎国会正常化 首相はけじめつける潮時
8月末までの会期延長が決まって以降、初めての衆院予算委員会が開催され、集中審議
が行われた。空転していた国会が2週間ぶりに正常化したのは喜ばしいが、この間の「政治空白」の責任の多くは首相自身にある。菅直人首相は、松本龍前復興対策担当相の辞任について「任命責任は私にある」と陳謝 する一方で、「これからもやらなければならないことは責任持って、全力を挙げて進めたい」と続投に意欲を示した。だが、後任人事を巡っては、仙谷由人官房副長官らに就任を拒否された上に、経済産業副大臣人事でも、中山義活政務官にいったん電話で就任を要請しながら後に撤回するなど迷走を重ねた。 民主党執行部や重鎮から「だらしのない内閣」「被災地のためにも、1分1秒でも早く 辞めた方がいい」などと批判が出るほど首相の求心力低下は甚だしい。レームダック(死に体)化した政権は何も決められず、空洞化に陥るのが常である。このままでは被災地の復旧・復興が前に進まない。菅首相は早急に出処進退のけじめをつけてほしい。 そもそも復興相ポストの新設は、被災自治体との風通しを良くし、遅れがちな復旧・復 興を加速することが目的だった。防災担当相として、めぼしい実績がほとんどない松本氏を起用せざるを得なかったのは、菅政権から人心が離れている証拠でもあった。その目玉閣僚が早々に辞任に追い込まれたのだから、任命責任を厳しく問われて当然である。 首相は、自民党の石破茂政調会長への答弁で、「(私は)辞めるという言葉を使ったこ とはない」と述べた。この期に及んでも言質を取らせない粘り腰には驚くばかりだが、四面楚歌の状況下で、やれることは限られている。 「辞めると言った首相の下で外交も内政も対応できなくなっている。一日長く続ければ 国益がそれだけ損なわれる。ここまできた以上、首相が冷静に判断すべきだ」。1年持たずに辞任した鳩山由紀夫前首相の苦言など聞く気はなさそうだが、大方の国民も似たような思いでいるのは確かである。
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