日本の政治には困ったものだ。東北の被災者の、世界が驚いた我慢強さに言及するまでもない。国民の辛抱と諦めが菅政権を支えている。なかなか辞めない首相が任命した復興相が放言してすぐ辞めた。ひどい話だ。日本が壊れる音を聞く思いだ。事ここに至れば、菅直人首相には一日も早くお辞めいただきたい。
菅首相の感覚には首をかしげてきた。昨年11月、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)のホストぶりはお粗末で、尖閣事件後の日中首脳会談なのに、メモを見ながら自信なさそうに胡錦濤国家主席と話す姿には驚いた。就任から日が浅くても、こんな首脳外交はありえない。
衆院での不信任案採決(6月2日)以降の状況も「ありえない」と思う。民間会社で言えば、懲戒解雇は勘弁してというから諭旨退職にしたら「じゃあ辞める時期は自分で決める」と開き直った感じか。子供のようだ。首相周辺の道徳観の崩壊が日本中に伝染しないことを祈りたい。
だが、こんな意見もある。「誰が首相になっても国会のねじれは残る。政治状況はそう変わるまい。70日の会期延長の間、菅さんが続投した方が被災地対策も進むだろう。自民、公明も審議に協力すべきだ」
一面では現実的で合理的な考え方だが、「どうせ変わらない」と思えばニヒリズムを呼び込み、政治の進化を望む民意を軽視することにもなりかねまい。09年秋の政権交代から、まだ2年足らず。今後どの党が政権を握ろうと政治の進化には試練も試行錯誤も必要だ。局面の変化をことさら恐れることはないと私は思う。
それにしても、被災地の苦しみをよそに、政治のこの体たらく。「政治は国民のレベル以上にはなりえない」という名言にも例外があると信じたい。
毎日新聞 2011年7月7日 2時14分
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