FN FAL 50.63 パラカービン KING ARMS | |
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FAL実銃(50.63パラカービン) Web上にアップしたオリジナル・テキストです。 <実銃について> 口径: 7,62mm NATO (7.62x51) 回転機構:ガス・オペレーテッド・システム 全長:1100 mm (空挺パラモデル 990 / 736 mm) 銃身長:533 mm (空挺パラモデル 431 mm) 重量:4.45 kg−マガジンなし (空挺パラモデル 3.77 kg) 装弾数:20発 (30発−ヘヴィ・バレル・SAWバージョン) 発射速度:650-700発/分 FAL分解図(クリックで拡大) <FALのバージョン> FAL プロトタイプ Cal.280ブリティッシュ (7x43mm) intermediate cartridge オリジナル FN FAL Light Automatic Rifle 7.62×51mm 西ドイツ G1 7.62×mm NATO オリジナル FN FAL プラスティック・ストック・タイプ 7.62×51mm FN FAL 50.00 7.62×51mm NATO FN FAL 50.61 パラトルーパー 21インチバレル 7.62×51mm NATO FN FAL 50.63 パラトルーパー 18インチバレル 7.62×51mm NATO FN FAL 50.63 パラトルーパー 16インチバレル 7.62×51mm NATO FN FAL 50.64 (レシーバー/アルミ) 7.62×51mm NATO オーストリア Steyr Stg.58 - license built FN FAL イスラエル FAL ロマット 7.62×51mm NATO 分隊支援火器 上:FN FAL 50-41 下:L2A1 7.62×51mm NATO 英連邦インチパターン L1A1 SLR(Self Loading Rifle) 7.62×51mm NATO (英国、ニュージーランド採用) カナダ C1A1(インチパターン) 7.62×51mm NATO オーストラリア L1A1(インチパターン) 7.62×51mm NATO DSAアームズ SA58 (FAL 50.63 16インチバレル・クローン) 7.62×51mm DSAアームズ SA58 OSW カービン 7.62×51mm 30連マガジン DSAアームズ SA58 OSW カービン 7.62×51mm <突撃銃前史> 第二次世界大戦末期、ナチスドイツは後世の小銃の世界で 不動のスタンダードとなる銃器を発明した。 それまでの用兵思想としての歩兵の銃器は、小銃と呼ばれる 単発ライフルが一般的で、半自動(セミオート)で作動する ライフルはドイツとソ連で一部採用していたが、全将兵にセミ オートで自動排きょうできる小銃を持たせているのは世界中で アメリカ軍だけだった。 第二次大戦初期における歩兵戦術の基本は、第一次世界大戦と 同じく、まず砲撃があり、その後単発ライフルによる狙撃風の 面制圧だった。 しかし、第一次大戦で趨勢となった塹壕戦では、新しく登場した 機関銃(マシンガン)が大いに威力を発揮した。 機関銃と砲撃の普及により、戦術としてはますます塹壕戦に頼ら ざるを得なくなり、各地において硬直した状況が発生した。 これを打開するために導入された兵器がふたつある。 ひとつは毒ガス等の化学兵器であり、もうひとつは敵陣の奥深く まで侵入して交戦するための近接戦闘兵器、すなわちサブマシン ガン(短機関銃)の登場だった。 第一次大戦ではサブマシンガンが大きな戦果をあげた。 サブマシンガンとは、拳銃弾をフルオートで連射できる銃器で、 マシンピストルとも呼ばれた。 第二次大戦でも第一次大戦で登場したサブマシンガンが大いに 活躍した。 市街戦や遭遇戦でサブマシンガンが果たした役割はかなり大きく、 一般小銃よりも頻繁に使用されたといっても過言ではない。 サブマシンガンは第一次大戦時に登場した「弾幕戦」に拍車をかける 銃器となった。 第一次大戦末期に登場したスイスSIG社のベルグマンMP18(1918) はその後のサブマシンガンに大きな影響を与えた携行弾幕銃の 元祖的存在だったといえる。 ベルグマン短機関銃MP18(1918年) 第一次大戦後、敗戦国ドイツにMP18の配備は禁止された MP18に倣いドイツはその後エルマ・ベルケMP38/MP40を登場させた。 これは米軍のトンプソンM1921/M1928やベルグマンMP18とは異なり、 当時最新のプラスティックを採り入れ、ボディもプレス鋼板で構成 されたコストダウンモデルで、戦時下における極めて効率的な小火器 となった。 サブマシンガンとしては第二世代とも呼べるドイツのMP38が示した 設計思想は各国に大きな影響を与え、英国ステンや米国M 3グリース ガンを生み出していくことになる。 ステン(イギリス) M3グリースガン(アメリカ) また、英国のステンSMGはジャミングが多いという欠点はあった ものの生産性がすこぶる良いため、鹵獲(ろかく)したドイツ軍 は英国のステンをコピーして自国軍に配備した。 英軍やレジスタンスから鹵獲したステンガンを参考に ドイツでもステンが作られた ワルシャワ蜂起で使用されたステン。 1944年8月1日、5万人のポーランド国内軍がドイツ軍に対して 敢然と蜂起した。武器はドイツ武装親衛隊の倉庫を襲って入手し 熾烈な攻防戦が繰り広げられた。敵味方双方が同じ制服、同じ 武器を使用したため、ポーランド国内軍は腕章を着けて識別した。 ドイツ側のカミンスキー旅団の目に余る残虐行為に対し、ドイツ側 のヒムラーはカミンスキーの処刑許可を司令部を通じて発する程 ドイツ側は混乱していたが、ワルシャワ蜂起はソ連の裏切りに よってドイツ軍に鎮圧され、22万人の市民が処刑された。抵抗を 続けるレジスタンスもいたが、45年に入りソ連軍がワルシャワに 侵攻し、かつての対独レジスタンスは今度はソ連軍に処刑された。 祖国のためにナチスに抵抗したレジスタンスや市民が、ナチス敗北 後に新たな侵略者ソ連によって殺戮される中、抵抗者たちが絶望的 状況下でテロリストとなってソ連共産党の傀儡であるポーランド 労働者党の幹部を殺害していく行動は、アンジェイ・ワイダ監督の 映画『灰とダイヤモンド』によって切なく描写されている。 一発必中主義だった日本では、弾幕戦を展開するだけの物資 も用兵思想もなかったらしく、サブマシンガンは一世代前の ベルグマンを参考に百式機関短銃を大戦末期に製作したのみ にとどまった。 日本軍から鹵獲した一〇〇式機関短銃を試射する米軍下士官 単発ボルトアクション小銃を主体とした日本兵は、セミ・フルで 撃ちまくる米軍の前ではなす術がなかった。 時代は英米独にあっては歩兵の一般小火器はフルオートで弾を ばらまける銃器へと移りつつあった。 ドイツが生んだシュマイザーMP38/MP40は、第二次大戦後の1970年 頃まで世界各地で使用された事実がある。それ程完成された信頼の 置けるシステムと構造だったのである。 そしてドイツは、大戦末期に連射ができる近接戦闘用のサブマシン ガンの長所を生かし、かつライフル(小銃)の遠射性も併せ持った とてつもない火器を開発した。 この小火器は前段としてまず、ドイツの「機関カービン化計画」に よって開発が進められ、Mkb42(H)(Maschinenkabiner 42)、MP43 (Machinepistole 43)、MP44といった短機関銃のプロトタイプが 作られた。MP43、MP44短機関銃(サブマシンガン)はわずかな改修 を経て名をStG44とされた。 StG44(ドイツ) StGとはStrum(突撃)Gewehr(銃)のことである。それまでの拳銃 弾を使用したサブマシンガンとは異なり、ドイツのライフル小銃弾 である7.92mm弾の発射薬を少なくし、薬きょうを短くした特殊弾を 使用した。シュテムゲーベル(シュッツェンゲヴェル)。ここに世界で 初めて「突撃銃」という名が生まれた。 突撃の際に単発式ではおぼつかない。第二次大戦前にソ連はトカ レフSV38/40などの自動小銃を配備しており、ドイツのKar98ボルト アクションでは面圧において弾数不足だった。 ドイツではKar98の7.92×57mmを使用する半自動小銃Gew41を開発 したが、反動が強すぎて操作性に難があり、量産できなかった。 ドイツの開発グループは1930年にすでに将来を見据えて短小弾の 開発実験を行い、軍部に提案していたが拒否され続けていた。 ドイツの新型弾薬として7.92×33mmの短小銃弾が採用されたのは、 ワルサー社とヘーネル社が競合開発したMkb42の開発提出指令が 軍から出される1942年まで待たねばならなかった。 ワルサー製よりもヘーネル製のMkb42(H)が優れていることが判明し、 軍はさらに改良を指示して、同社はこれに応え、1942年〜1943年に かけて11,833挺が実戦投入された。 しかし、ヒトラーの新型銃開発中止命令により、Mkb42(H)は生産が ストップした。 だが、開発陣と軍はヒトラーを欺罔(ぎもう)しつつ名称をMP43と 偽装することで開発を進めた。 ところがこれもヒトラーに露見したため、ヒトラーは再度中止命令を 下すが、1943年3月にはその優れた性能ゆえ渋々開発を認めるに 至った。 こうしてMkb42はMP43、MP44と名を変えながら生き残り、最終的に Sturmgeweher=突撃銃(嵐の銃)という名をヒトラーに認めさせて、 StG44として公式銃となったのである。 <世界初の突撃銃> 世界で初の「突撃銃」という名を冠したStG44は極めて実用的な銃 であり、戦後も東独をはじめ南米や東南アジアなど世界中で使われ た。アフリカの紛争地帯では1960年代の末期においてもStG44を見か けることがあった。 なお、構造がStG44と同じもので世界初の突撃銃は、ロシア革命 以前に帝政ロシアで実用化されたフェデロフM1916であるが、作動 不良が多く普及しなかった。 FEDEROV M1916(帝政ロシア) フェデロフM1916は当時の弱装弾である日本軍の6.5m×50SR(三十 年式実包)を使用してフルオート時の反動制御を容易にし、かつ、 兵の携帯弾数を増やすといった50年も時代を先取りした近代思想で 開発された世界初の革命的小銃だったが、ロシア革命で生産開発が 頓挫した。 だがフェデロフ大尉が作ったこの銃はドイツ国防軍に大きな影響を 与え、ヒトラーの反対を押し切ってまでもStGを誕生させている。 また、フェデロフ自身はロシア革命後のソ連軍部に採用され、多くの 銃器開発者を育成し、AK47がソ連の制式銃となる際にはフェデロフ が党に働きかけて重要な役割を果たしている。 現代軍用小銃でスタンダードとなっている突撃銃=アサルトライフ ルの最初のアダムは、実はロシアのフェデロフM1916だった。それ に影響を受けたナチスドイツがStG44で突撃銃をその名と共に完成 させ、更に戦後の1947年にソ連赤軍だったミハイル・カラシニコフ がAK47を作り出して現在までの歴史に続いているということになる。 世界初のアサルトライフルの実包は日本軍の実包を使用したという ところは大変興味深いエピソードだ。なぜならば、強力すぎる弾薬 は突撃銃のフルオートには銃の制御の点から向いていないという 見識が今から100年近く前の突撃銃開発当初から存在したからだ。 <戦後の突撃銃> 突撃銃は第一次大戦中に帝政ロシアで生まれ、第二次大戦にナチス ドイツがStG44で一般化させた。 戦後はソ連のカラシニコフがAK47(1949年採用)を作り上げ、AKは 60年以上にも渡り現在まで使われ続ける名銃となった。 AKは旧東側の銃だが、偶然、時を同じくして西側でも突撃銃の開発 を進めている者がいた。 それがベルギーFN社のDieudonne' J Saive(デュードネ・J・ザイーブ/ 1888〜1970)だった。ザイーブは1926年に急死したジョン・ブローニング の遺志を継いでブローニング・ハイパワー・ピストルを完成させた 技術者である。 ザイーブは、突撃銃設計構想として、ソ連のカラシニコフがドイツ StG44(7.92×33mm=43ピストル弾)の影響を受けて7.62×39mm の短小弾をAKに採用したように、自分が開発する突撃銃にもライフル 弾よりも薬きょうが短く口径も小さな英国の7×43mm(.280)弾を使用 しようと考えた。 話は少しさかのぼる。 1938年に第二次大戦が始まり、ナチスドイツにベルギーが占領され そうになった時、ザイーブは数名の社員と共にイギリスに亡命した。 そして、エンフィールドにあるロイヤル・スモール・アームズ・ファク トリーの設計開発部に勤務した。そこで開発した銃ABLを戦後ベルギー FN社に戻った1946年から改良に着手し、ABLはSAFN-49(口径30-06)と して完成され、SAFN M1949の呼称でベルギー軍に採用された。 SAFN M1949 SAFNで成功を納めたザイーブはSAFNをベースにドイツStG44の 7.92×33mmクルツ弾を使用する新型銃の開発に着手した。 その後、コンパクト化、軽量化を図るに従い、当初ロシアで発想さ れた突撃銃の設計思想を純化させて押し進めることにした。 それはブリティッシュ・ショートである7×43mm(.280)カートリッヂ の採用に帰結した。 こうしてザイーブによって開発された新型突撃銃は、StG44のように 箱型マガジンが前方に着いたタイプとブルパップという未来型が同時 進行で開発されることになった。 後にFALの後継機種となるFNCを作ったE.ベリエは、この頃に新型銃 FALの開発陣に加わっている。 <アメリカの強権−適性弾薬の誤認> ザイーブが考案した新型突撃銃は、突撃銃そのものが持つ本来ある べき姿を追求した。それは、 @短小弾、減装弾によるフルオート時のコントロール性向上 A小口径弾による携行弾数の増加 このコンセプトは、まさしく突撃銃(という呼び名はなかったが) の生みの親であるフェデロフ大尉が想定した突撃銃の基本だった。 ザイーブによって完成された新時代のアサルトライフルFALとイギ リスのEM-2ブルパップライフルは、1950年に米陸軍の時期制式小銃 トライアルに参加した。トライアルによってFALのプロトタイプは 米陸軍担当者には大きな感銘を与えたといわれている。 しかし、米軍はアサルトライフルの重要な基本コンセプトを十分に 理解するに至らず、1953年〜54年にNATO(北大西洋条約機構)の 標準弾をT65E3(7.62×51mm)にすることを強く主張した。 戦後の世界分割の西側陣営の雄である米国の発言力は極めて強く、 英国7×43mmは退けられ、FALはT65E3用に設計変更を余儀なくされ たのだった。 T65E3は米軍が大戦中に使用していたM1ガーランドの30-06弾の薬き ょうを多少短くした物だった。T65E3は米国の圧力で正式にNATO弾 となり、7.62mmNATOと呼称されるようになった。 FN社はやむなくFALをNATO弾用に設計し直し、トライアルに参加し た。米軍のM1ガーランドの後継機種の座を狙ってのことだったが、 軍需産業の利権まみれの米軍相手に事はすんなりとは進まない。 結局、米軍新小銃はT44(制式後M14)に決まり、FALは敗れた。 後年、米国CIAが動き、M14に継ぐ制式銃トライアルのためにとFN社 からのライセンスで米国内でFALが2000挺生産された。 しかし、これはすべて製造番号が打刻されておらず、CIAが操る 世界の反共組織に渡された。この刻印がないFALを俗にCIA-FAL と呼ぶ。 FN社は二度にわたり米国に煮え湯を飲まされた。 1953年段階で最初の7.62×51mm仕様のFALは完成した。米軍トライ アルには敗れたものの、ソ連が1949年から配備し始めた次世代突撃 銃AK47に対抗する西側の突撃銃が強く求められた当時の世界情勢を 背景に、FALを自国軍に採用しようとする多くの国がベルギーFN社 にFALの引き合いを出した。 ベルギー本国で1956年にFALが制式採用される以前の1955年に英連 邦カナダが世界で初めてFALを制式採用した。英連邦カナダに向け に改造されたFALはC1という制式名で、カナダのアーセナル工場で 生産が開始された。 小口径ブルパップを諦めた英国は、FALからフルオート機能を取り 除いたものをL1A1SLR(自動装てん式ライフル)として英軍制式銃と して1957年に採用した。 英国L1A1はセンチ寸をすべてインチ寸にするため、自国エンフィー ルドとBSA工場で生産を手がけた。 オーストリアはStG58として1958年にFALを採用。Steyr(ステアー /シュタイアー)社の工場で生産を手がけた。 他にも、ブラジル、トルコ、オーストラリア、西独(仮)、南ア、 イスラエルと多くの国でFALが連続して採用された。 ただし、西ドイツに限っては、FALはG1として制式化されかけたが、 制式採用はベルギーの意向により成立しなかった。 (西独軍トライアル時名称G1=FN FAL、G2=SIG 510、G3=セトメ M58) 戦後まだ10年少しという時間的な問題も絡み、ベルギー人は 元ナチスの国にFALを供給することを拒否した。結果として、ドイツ はスペインのCETMEのライセンスを購入してH&K(ヘッケラー・ウント・ コッホ)社が生産し、トライアル名称のG3をそのまま制式名として 軍が採用してG3というFALの強力なライバルを生み出すに至った。 いずれにせよ、FN FALは戦後の西側アサルトライフルの第一号と なり、西側陣営70カ国以上で制式採用され、名実共に東側陣営の AK47と対抗する西側陣営を代表する突撃銃となったのであった。 東側はその後の機種はAK系のみだが、西側自由主義陣営ではFAL 以降FALが各国の銃器開発に大きな影響を与えて多くの派生を生み、 世界はアサルトライフルの時代に入っていった。 FALを採用した国家(深緑=製造・非公式含む採用国/黄緑=採用国) この図はごく一部。南米・アフリカ諸国の多くはFALを使用した。 細密に塗り潰すならば、アフリカはほぼ全土が黄緑色になるだろう。 FALを制式化もしくは使用した国家一覧(米国等の非公式は除く) また、FALの地球規模での普及は、かつて地球上の1/4の人口が大英帝国 臣民であったという世界の覇者イギリスの影響は見逃せない。 多くの英国植民地が独立した後、現在に至っても英国のコモンウェルス (連合王国の連邦)への影響力は強い。 <FALの欠点> 米軍制式銃とはならなかったものの、その後世界90カ国で使用され 東側のAK47とならんで東西両陣営を代表する一翼となったFN FAL。 日本でFALは馴染みが薄いが、世界では「AKの対抗馬はFAL」という 図式が定番だった。FALは見まごうことなく西側資本主義陣営を象徴 する銃だったのだ。 日本で馴染みが薄い分、日本では一種の「FAL神話」ともいえる現象 が発生した。 つまり「M16は泥地で動かなくなるがFALはどこでも快調に作動する」 という迷信。 そもそも、一般的にはどこででもノーメンテで快調に作動する自動小銃 など存在しない。 極寒から熱砂まで地球上のどの環境でも快調作動する銃などはAK くらいしかないのだ。出荷試験で折れ曲がったカートリッヂを弾倉に 押し込んでも発射できる銃などAKだけであり、AKのみが極めて特異な 存在なだけで、どの銃もがAK程のタフネスさと全環境適合性を備えて いる訳ではない。あえて挙げるとすればM1ガーランドだが、あれは 半自動小銃であり突撃銃ではない。 西側のほとんどの国で採用されたFALだったが、FALを美化するFAL 神話がある日本では情報不足ということと相まって、FALに決定的な ウィークポイントがあったことは日本ではあまり知られていない。 それをかいつまんで紹介しよう。 1.不適合弾薬 FALはもともと小口径用に開発していたところ、中途からの 急な設計変更により7.62×51mmのハイパワーなT65E3を NATO弾と決められたため、本来の設計思想とかけ離れて しまった。 このため、短小弾によって確保しようとしていた連射時 のコントロール性が著しく低下した。3連射以上は銃が 暴れて非常に命中精度が低くなり、英連邦系ではフルオ ート機能が削除省略された。これでは何のための突撃銃 なのか意味不明になってくる。取り得はピストルグリップ がついた半自動機能だけということだけになってしまう。 私は実銃FALについては射撃経験はないが、AK47よりも強い 反動というのを聞いただけで大体どのようなものかは想像 がつく。訓練によりフルオートで制御できないことはないが、 通常まず一般歩兵小銃としては「制御困難」な部類に入ると いえるだろう。 マイク・ホアー氏の著書『ザ・ワイルド・ギース』に紹介され ているが、ホアー氏が隊員を面接して使用武器について問答 した際、隊員がFALについて「威力が強すぎる。敵を倒すだけ なら、もっと小さい弾でよいのではないか」と述べているのは 興味深い。また、ホアー氏自身も「旧日本軍は扱いやすさから 小口径弾の採用に着手しており、先進性があった」と述べて いる。 FALやM14の弾薬不適合による制御困難性は、後年「バトル・ ライフル」という曖昧模糊としたカテゴリー呼称を米国人自ら が取ってつけたように創作することにより、現在、米国の専横 と一連の歴史的誤謬を煙に巻こうとする流れを生んでいる。 5.56×45mmと7.62×51mmのNATO弾。 見た目だけでなく、7.62mmは5.56mmに対し 1256ジュール以上も威力がある。7.62×51mm の.308弾は30-06弾の薬きょうを切り詰めた だけだが、発射薬の改良により、事実上30-06 と同程度の威力を有する。連射制御には無理 があり、7.62mm口径NATO弾の連射制御で成功 したのはAR-10とG3くらいという歴史的な事実 が存在する。「FALは突撃銃でなくバトルライ フルである」などというカテゴライズは、歴史的 同時代性を有せず、「未完成だった突撃銃」の 負の側面を隠ぺいする作用しか持ち得ない。 そうした為にする造語の安易な使用は、銃器の 欠点を冷徹に分析して開発と改良をなす道筋を 阻害する要因となる。スペインのセトメや日本が 7.62mmNATO弾については減装弾を採用したのは、 「突撃銃」としての本来の連射制御性確保のための 苦肉の策であった。 突撃銃という呼び名が普及したのがベトナム戦争 時代だからとはいえ、FALはあくまでStGから派生 したAKと同じ「突撃銃としての設計思想」の下に 開発製作された歴史的事実を忘れてはならない。 2.砂塵に弱い FN FALは削り出しレシーバー等にみられるように非常に キッチリとした精度で部品を構成している。これはソ連 のAK47とは設計思想が180度異なる。AK47は部品同士の クリアランスを0.3mmとしており、いわばスカスカのガタ ガタにあえてわざとした。ブローングが設計したピストル のコルト・ガバメントもそういう設計思想になっており、 隙間が大きい。 FALは0.1mmのクリアランスで、部品の精度も高く、常に ガタつきがなく部品がこすれ合う。 六日間戦争と呼ばれた第三次中東戦争でFALを使ったイス ラエル軍は、FALが砂塵に弱い事実を身をもって知り、 兵士の多くは敵のエジプト軍から鹵獲したAK47を使ったり した。砂漠にも強いAKはイスラエルに深刻な問題意識を 喚起し、後にイスラエルはAKのコピーであるガリルの開発 に着手していく。 また、ガルフ・ウォー(湾岸戦争)では、米軍のM16の作動 不良が続いたため、一部の米軍兵士は英軍のL1A1を使用し たが、ここでもM16よりはFAL(L1A1)の方がまだまし、と いった程度の評価だった。 さらに、私の知人の在軍中の経験によると、軍隊内で上官 の夜中の抜き打ち検査でFALを分解し、少しでも砂粒が付い ていたらその場で腕立て伏せ50回の懲罰が課せられたという。 また、FALは匍匐前進の時にかなり気を使うらしく、泥沼や ジャングルには強いようだが、乾燥した砂に対してFALは極 めてデリケートだったという。乾燥したたった数粒の砂に よって回転不良が起こってしまう可能性があるというのだ。 英軍L1A1は対策としてボルトにスリットを入れて強制的に 砂の噛み込みを排除するように工夫している。 3.価格 手作り工芸品のようなFALは生産性が悪く、1挺あたりの 価格がとても高い。相場でM16の3倍だったというから、 軍への卸値仕切り価格で1挺15〜17万円くらいだろう。 これは正規軍軍用銃としてはかなりのマイナス要素となるが、 FALはFN社の販売手腕により世界的規模でに売れに売れ、 軍需製品としては歴史的に成功を収めている。 逆にFALが登場当時優れていた点、現在再評価されている点に ついてみてみよう。 1.堅牢さ これは特筆ものだ。小口径弾用に開発されたにしてはオーバー スペックともいえる削り出しによる頑強なレシーバーにより、 強力な7.62mmNATO弾用への改良設計は比較的スムーズに進んだ。 ハンマリングピンの角度やチルトスライド方式のボルトに苦労の 跡がみうけられる。部品点数の低さもトラブル知らずに一役買っ ている。 FALのライバルであるG3は優れた性能を持つ小銃だが、FALに勝て ない決定的な点がある。それが堅牢性だ。プレスレシーバーのG3は 外圧に弱く、プレス部分がへこみ易い。へこんだままでは作動 不良を頻繁に起こす。そのため、G3にはレシーバー内部からへこみ を修正する工具が付属品として付けられている。 2.可変レギュレーター ガスピストンを作動させる際にガスの流量を調節でき、ライフル グレネードを発射することができた。 また、ガスシリンダーの汚れによるガス圧変調の際もガス圧を チョーク調整して適切作動させることができた。 M16はこれができない。グレネードも別途発射装置を搭載(下抱き) させる必要があった。 3.命中精度 セミオートの際には極めて良好。このため、光学サイトを搭載 してスナイパーライフルとしても利用できた。 4.泥水に強い 乾燥した砂のみがFALにとっての天敵であり、南アメリカの高地、 中東の砂漠地帯以外ではFALは極めて快調な作動を約束する。 これは強力なNATO弾と重いボルトの慣性重量と閉鎖力から来るもの であり、特段FALだけの特徴ではないが、ともすれば作動不良が つき物の突撃銃において、FALは西側第一号突撃銃としては発表当時 から現役引退までの数十年間基本設計が変更されない程完成度が 高いものだった。 5.新機能 今では当たり前のピストルグリップと箱型弾倉を戦後初めて西側突撃銃 として標準化した。 これはボンネットタイプのトラックやバスが標準だった時代にキャブ オーバーのトラックやバスを発明するくらい画期的な事だった。 (私事で恐縮だが、日本で戦後初めてキャブオーバーを設計開発した のは私の父である) タッチの差で1949年に配備が開始されたAK47の方が早く世に出たが、 時期としてはまったく同じ時期にFALは設計が開始されていた。米国の M14はピストルグリップを採用していなかった。米国でピストルグリップ を標準とした突撃銃はM16の先祖にあたるAR10からだ。 6.遠射性能 7.62mmNATO弾に変更を余儀なくされ、連射時の保持性能が劣るFALだが、 国際紛争地域の変化に伴い、突撃銃がジャングル戦から砂漠での使用 頻度が増えるにつれ、5.56mm新NATO弾でさえその威力不足が指摘される ようになってきている。 大型弾に変更されたFALは、5.56mmが登場してもてはやされた時代には 欠点ばかりが目立ったが、紛争地帯が砂漠地帯に移ったことにより、 7.62mm旧NATO弾が再び注目を集めている。 理由は単純だ。「遠くまで弾が届くから」。 このため、M14をタクティカルカスタム化したタイプの7.62mm新型突撃銃 やFALに光学機器用外装レールを装着したタクティカルモデルが脚光を 浴びてきており、中東で多く使われ始めている。 FALが70カ国以上に及ぶ地球上の国々で制式銃に採用されたのは、単に ベルギーFN社の営業販売力が優れていたからだけではない。まず初めに 製品ありき、なのだ。共産圏を除く地球上の圧倒的多数の国がFALを採用 したのは、FALの良質な性能というごく当たり前の理由によるものだ。 そして、それよりも大きな要因として歴史的な政治力学、体制の構造が 関与するのであるが、それは後述する。 <FALの発音について> FALとはフランス語の「軽量自動ライフル銃」の略である。 英語ではLAR(Light Automatic Rifle) と呼ばれ、英語圏への輸出用 には銃にもそのようにマーキングされている。 私が直接会った各国の軍関係者、有識者から聞き及んだ限りでは、 FALは英語圏やスペイン語圏、フランス語圏では一般に「ファル」と 呼称され、英語圏でのかしこまった場面での呼び名は「エフエーエル」 と呼ばれている。 FALのフルネームの発音については、日本国内では誤った呼び名を 一部専門誌も記載したりしているが、フランス語での正式な読み方 と語学的解説は以下の通り。 (フォント変換できないため画像にしてあります) 【FALの発音について誤解しやすい点】 (日本国内誌のFAL解説や記事にも誤りが多い) フランス語の場合、単語単体だけで見ると、 母音 u がいつも「ゆ」という音なので最初の音節は「ふゅ」、 母音 i はいつも「い」なので、次の音節は「し」、 だから FUSIL は「ふゅし」と発音したくなる・・・ところだが、 フランス語の特徴として同じ単語でも前後の母音の配置に よる発音の変化があることを見落としてはいけない。 つまり、単語の中ほどで前後を母音にはさまれるとフランス語 では濁音にして発音しやすくする。そのため、 si の発音はここ では「じ」となる。 従って、FALについて個別発音をみると、 となる。 銃が男性名詞なので、その名詞にかかっていく形容詞も男性形に なるため、 最後の軽いという形容詞も に なる。 (ちなみに女性形は ) 更に、男性不定冠詞 un あん を付けたら、 という日本語読みになる。 フランス語はじめ海外の wikipedia のFAL解説ページでは最後の 形容詞を男性形の ときちんと表記しているが、日本語 wikipedia のFALのページに においては、何故か女性形の と記載されており、これは明らかに辞書で単語だけを引いた誤謬に 基づくものだろうと思われる。 また、多くの銃器関連の日本語文献にもレジェの文法とスペル表記に 誤りが見られる。 FALの発音は フュジ・オトマティック(オトマチキがより近い)・レジェ と発音するのが正しい。 2010年9月現在、現地人による発音再生サイトがあるので紹介する。 以下をクリック再生させてFALの正確な発音を確認されたい。 ↓ 【フランス人による発音再生】をクリックで音声再生 fusil mitrailleur・・・・「ふゅじ」の発音部分。 automatique・・・・「おとまてぃっく」の発音。 leger・・・・「れじぇ」の発音。 ベルギーで話される言語は正確にはフランス語ではなく、ワロン語 あり、ベルギー国内ではフランス語とワロン語は明確に区別され ているが、ここではフランス語の発音を参考に紹介した。 ちなみに現在のFN社の正式名称である Fabrique Nationale de Herstal は 「ファブリッキ・ナショナル・デ・エルスタル」と発音する。日本語訳では 「エルスタル国営製造所」となるが、FN社と略称で呼ばれることが多い。 <FALのバージョン> 戦後間もない時期に開発されたFALは、当初ストックやグリップは 木製だった。 その後、オーストリア、オランダ、西ドイツ向けにハンドガードを スチールプレスにしたタイプが開発され、1964年以降はプラスティック を多用したモデルとなっている。 また、空挺部隊の要請を受けて、早い時期から折り曲げ式のストック タイプがパラトルーパーモデルとして登場した。 ハンドガードに至っては世界各国でかなりの種類が存在し、FALが世界 のFALであることを物語っている。 英軍のL1A1 セミオートのみの機能を持つ FALには銃身長が異なるタイプが数種類存在し、また機種の弁別として は数字のコード番号で呼称するのが一般的だ。 【FALのコード番号】 50.00・・・・固定銃床と標準銃身 50.61・・・・折り曲げ銃床と標準銃身 50.63・・・・パラトルーパーモデル(空挺部隊モデル) 折り曲げ銃床、短銃身(458mm/438mm) 50.64・・・・50.61をベースに本体下部レシーバーをアルミ化 前述のように、米国の圧力によりT65E3がNATO制式弾とされ、FALは それに合わせて開発途中で設計変更を余儀なくされた経緯がある。 しかし、米軍は7.62×51mmNATO弾を使用するM14においてもコント ロール性に難ありとして自国のみレミントン.233(5.56×45mm)弾 を使用する突撃銃M16を採用した。 さらに米軍は1970年代に入り.223を新NATO弾とすることを強く推して 来た。 この流れを読んだベルギーFN社はFALの市場の代替製品としてFN CAL を1970年代中期までに開発したが、いくつかの不具合がみられたので、 FN CALの欠点を改良したFNC(FNK)を1976年に完成させた。 これは米軍が使用していた.223弾(M193)よりも威力がある専用弾 SS109弾を使用することを前提とした。 FN社SS109は1970年代半ばに5.56mmNATO弾として採用されている (NATO番号STANAG4172)。 5.56mm弾に拘泥していた米国は、この時ばかりはこのFN社が開発した 優秀な新弾薬を採用せざるを得ず、1985年にM16A1をSS109(米軍呼称 M855)用のツイスト銃身を持つM16A2に配備改変せざるを得なかった。 しかし、世界マーケットにおいて西側諸国70カ国以上が採用していた FALの代替品としてFNCをと考えていたFN社は、世界市場でFALの成功の 事例とは異なり、新式銃FNCのシェア確保には大きく失敗してしまう。 米国M16を採用する国は極端に少なかったが、FNCはそれにも増して ベルギー本国、スウェーデン、インドネシアで採用されたのみであった。 FNCはFALのように世界に普及することはなかった。 FALの後継機種FNC FALで成功したのにSS109弾用に開発されたFNC(SS109はFNC専用と 言っても過言ではない)が、なにゆえ世界各国で採用されなかったか。 この謎解きにはFAL成功のケースでの世界情勢の力学の歴史的段階の 遷移を考察することが外せない。 つまり、製品の良し悪しや製造メーカーの販売努力を超える世界規模 での国際政治力学がまたぞろ働いたと読み取るのが妥当である。 別段FN社がFALの売れ行きの上にアグラをかいたからとか、販売努力を 怠って漫然と構えていたからとかいう観念的な思い込みでは軍需産業を めぐる世界情勢は読み解けない。 ある「力学」、それも歴史的な政治力学によって国際兵器販売は意図的に 操作されているのが現実の常だからだ。 (銃器のことだけしか知らないGUNライター諸氏は、世界情勢や国際政治 力学に疎いため、大局からの解析能力に欠けるきらいがあり、FNCが普及 しなかった理由についても、観念的な思い込みによって「FN社の努力不足」 とする記述が多く見られる。まったく国際政治を無視した妥当性を欠く 見識と言わざるを得ない) 戦争とは政治対立の解決手段としての武力行使の一形態である。 これは第一次、第二次世界大戦の帝国主義間戦争に限らず、革命戦争 においてもそうであり、古今東西、世界の戦争は「政治対立の解決」の 手段として遂行されてきた。 従って、味方には味方の「正義」があり、敵には敵の「正義」がある。 普遍的な正義などは存在しない。このことは対立する論理矛盾を戦争と いうものは抱えることを示し、言い換えると、戦争には絶対的な正義など 一切存在しない。 平時において殺人を犯すと犯罪とされるが、国家規模で人殺しをしたら 勲章をもらえるのだ。こんな矛盾を矛盾でなく「名誉」とするのが戦争 なのだ。 そして、戦争には莫大な「利権」が絡み、人殺しによって利益を得る軍需 産業が潤うシステムになっており、政治経済の利権追求のために戦争は 意図的に敢行されていくのは揺ぎ無い事実なのだ。 FALがマーケティングで成功したのに同じFN社のFNCが何故まったくもって 世界で普及しなかったのか。 それは、SS109弾の新NATO弾への採用認可と引き換えに、つまり、その 代わりFNCは世界各国に採用させないぞ、というある勢力の覇権主義的な 力が働いて政治決着をつけたからというのは、当時の国際情勢の歴史性を 読み解くと自ずと見えてくる。 戦後間もない頃にFALが普及したのは、戦後世界再編の中で東西冷戦の 始まりを背景として、米国が自国産の突撃銃の開発の遅れもあり、ドミノ 理論に基づいて世界地図の赤化防止にFALを利用しようとしたためである。 歴史は西側世界にドミノ理論の逆利用、つまり「西側社会の強固な統一化」 の逆ドミノを構築することを要求した。本来なら米国は米国製の銃器と弾薬 で世界を支配したかった筈である。 だが、米国の銃器開発の立ち遅れはそれを敢行できる段階ではなかった。 そこで、ニューディール政策の軍需産業版として制式銃トライアルに名を 借りて各国の優秀な銃器産業に開発を促して西側全体を活性化させ、結果 として自国軍隊の制式銃はとりあえず自国産としながらも西側世界には東側 に対抗する統一銃・統一規格弾薬をばら撒く絵を描いたのである。だから こそFALは90カ国にも及ぶという西側世界の殆どの国で採用されることが 可能だった。 歴史的な東西国際政治対立の黎明期の中で、「西側同盟内懐柔−統一策」 として絵は描かれていたのだ。換言すれば、FALはブレトン・ウッズ体制の 落とし子だったといえる。 その意味において、FALの突撃銃としての機構の物理的側面だけでなく、 登場した世界情勢の背景から、「FALは戦後西側世界を代表する銃」と規定 して間違いないだろう。 FNCのベースとなるFN CALは1966年までに設計を終え、その後何度も手直し を経て改修されたが、60年代後半に米国は再び強権を発動して70年代の次期 NATO弾を5.56mm口径弾薬とすることを決定する。 FN社のヴェルヴィエら開発陣はFN CALの熟成を急いだが、結実したCALの完成型 であるFNCには口径とサイズは同じだが米軍の5.56mm弾薬よりも強力な新開発の 弾薬を発射できるツイストと機構にした。それがSS109弾であり、比較テストに おいて成功を収め、米軍の旧5.56mmに引導を渡した。 米軍はM16A1ではSS109弾(新NATO弾)の発射に問題があるため、きついツイスト バレルを持つM16A2を開発・採用せざるを得なかった。 FNCとM16A2の両者の発売時期および採用時期とその時代背景を詳細に 比較すると、米国によるFNつぶしの意図はありありと浮き彫りになる。 決して「FN社が開発に立ち遅れた」とか「経営戦略を誤った」とかによる要因で FNCが普及しなかったのではない。そうした仮説では時間軸に劣後が生じる。 流れとしては、 1. 戦後冷戦体制の開始⇒西側の反共同盟組織化の必要 ↓ 2. NATOの結成⇒統一弾の必要⇔各国の突撃銃の開発=軍事同盟と軍事産業の強化 ↓ 3. 米国の専横でNATO弾は7.62mmに⇒西側各国は突撃銃をやむなく7.62×51仕様に ↓ 4. 米国だけ勝手に5.56mm小口径採用⇔この時点でNATO規格に不揃い発生 (同時期、旧帝国主義植民地で独立紛争頻発⇒西側主要国の危機) ↓ 5. FN社がFNCを完成⇔FNCはM16よりも完成度が高い ↓ 6. 新NATO弾はFNC用SS109に決定=西欧と米国の不協和音の表れ ↓ 7. 米軍M16A1は新NATO弾に対応できず、やむなくSS109用M16A2を開発 といった感じである。 大切なのは時間軸の推移だ。 新NATO弾が本格化する段階で「すでにM16を各国が採用していたから」「FN社は 出遅れた」ということは物理的にあり得ず、事実誤認である。 旧5.56mm弾が新NATO弾となるならその仮説が成り立つが、新NATO弾のSS109弾 がFNC用弾薬である以上、FN社の遅滞や怠慢によりFNCが普及できなかったので ないことは明らかである。 米国は相当ずる賢い。 巧みに同盟内他国の産業を利用し利益を得るが、肝心なところは外さずに アメとムチで締め付けて米国軍需産業と一体となった戦略的経済・政治攻勢で 地球儀に意図する絵を描く。いわゆる政治力学である。戦後から現在まで 日本もずっとこれをやられてきた。 このことは、西側に米国産でないFALを普及させた背景を利用して、ナンバ リングを施さない密造FALを米国が製造(いわゆるCIA FAL)して裏で反共 組織に流して世界のFALの海の中に潜って出所不明の銃によって傀儡的に 政治的軍事的テコ入れをしたことにも、その政治力学構造と政治謀略の 恣意性が顕著に現れている。 時代の流れと共に西側圏内での覇権再争いと再ブロック分割化、つまり 1960年に始まる「アフリカの年」に代表される西側先進国の植民地の独立 闘争による自分たちの勢力地図の縮小への対応が迫られたことが「公的」 には西側正規軍軍用銃採用基準に大きな転換をもたらし、FNCの時代には FAL時代とは異なる力学を構成するに至った。 有体にわかり易く言えば、「西側同盟国」もへったくれもない自国権益確保 に傾注しなければならない資本主義国家群の危機の時代が1960年代から 西側諸国に始まった、ということだ。 この西側先進国間の危機は、1971年のニクソンショックによるドル金兌換 停止により戦後再建金本位制の崩壊過程の中で更に加速された。 だから米国はベルギーなどは真の同盟などとはみなさず、利用できる海外 優秀銃器メーカーとしてFN社を利用しつくしたのがFALの普及とFNCを普及 させなかった真の裏側事情だったといえる。 西側先進国が帝国主義時代に築いた植民地での権益が独立運動によって 縮小するに伴い、1960年代から1970年代にかけて、西側先進国は共産圏 ドミノ化に対峙すると共に資本主義国家として自国の権益確保をいかに 保持していくかが命題だった。 つまり西側「同盟国」内部での世界権益の分捕り合いが1960年代より再び 第二次大戦直前の世界情勢のように開始されたのだった。 そして、そこでは強大な軍需産業の権益確保が大きな幹をなし、もはや 戦後直後の「世界の共産主義化を阻止」するための戦後西側同盟の蜜月と いう構造が崩壊し始めたのが1970年代。「FALは戦後世界再編に利用でき たが、もうその方式はいらない」という思惑がFNCの普及を阻止した。 1982年に起きた戦後初めての西側国家間での戦争=フォークランド紛争は、 西側資本主義国家間での領土を巡る自国権益確保のせめぎ合いの再開を 如実に象徴している。 この戦争では奇しくも英軍・アルゼンチン軍の両軍がFAL小銃を使用し、 その他の兵器も西側兵器が用いられた。 これは単にこの戦争を領土問題として矮小化して捉えるのでなく、国際的 な歴史の流れの変遷、変質の表出として読み解くのが妥当性を有する。 1960年代から開始された資本主義国家群の体制的危機は、1980年代に入り フォークランドでそれが具体的に表れ、冷戦による対東側よりも西側の主体 の危機として揺れる80年代後半に向かう。 そして、自滅によるソ連崩壊で東西の拮抗が崩れたことと、湾岸戦争により 国際連合を初めとする世界世論を無視した米国の軍事突出が連動し、21世紀 の現在は米国一国が一人勝ち状態となり、吹かしていた世界の憲兵風に追い風 が吹くようになった。 今や地球上では「正義」を振りかざした頭抜けた大国のやりたい放題状態と なっており、米国のみが「正義」で、それに逆らう国や勢力は「悪」「テロ リスト」と決め付けられる状況になっている。地球規模の米国覇権主義による 翼賛体制が完成しつつあるのが21世紀初頭現在の世界情勢だ。 そして最早、旧西側の敵が「旧東側」ではなくイスラム圏であると標的を移して 中国とは経済取引関係を構築したがるのを見ても、米国が共産主義を防いで 「民主主義」というイデオロギーを守るためなのだとかつてドミノ理論で振り かざしていた「正義」というものがいかに欺瞞に満ちていたものだったかが 白日の下に明らかになっている。 対共産主義としての大義名分が本当のものであるなら、現在も中国とは対抗冷戦 緊張措置を採るべきところ、中国の市場が魅力的なため米国はそれをしない。 間もなく日本を抜いて中国がGDPで世界第二の経済大国になろうとしていても、 かつてのソ連を中心とする「東側」との冷戦のような対立構造は採ろうとしない。 なぜならば、中国は経済大国とはいってもそれは人口からくる数字のトリックで 現実的内実は発展途上国の状態であり、中国大陸には米国にとって「儲ける素地」 があるからだ。中国には冷たい戦争を仕掛けないでたとえ共産主義国家であろうとも 取引をする。 一方、石油権益確保のために中東を力で制圧する必要があるので、オイルマネー のために他人の国に軍を進めて戦争を継続している。 要は、作家でジャーナリストのフレデリック・フォーサイスが説明するように、 大国のエゴで遂行される戦争を米国は実行しており、イデオロギーなど関係なく、 「金儲けのため」に現在も戦争が利用され、遂行されているのである。 「対テロリスト」や「世界の平和と民主主義のため」などというのは、かつての スローガンの内実がまるで嘘まみれだったように、全くのウソである。 現在は情況がさらに進み、別な側面を見せ始めている。 つまり前述した米国の思惑は世界の軍用ライフルの流れにも顕著に表れて きている。 現在世界ではM16系のM4が軍用銃の中心となっているのが象徴的だ。多くの 欠陥を抱え、それを補修・改造しながらもなぜそれを使う必要があるのか。 それは、性能とは別な次元の「必要性」があるからだ。 イスラエルにおいては、優秀な自国産ガリルを制式銃から外すことをして までもM16系を米国から購入する米国寄りの高度な政治判断を駆使した 配備に切り替えた。 これなどは「性能」よりも「政治」が軍事兵器の採用において重要視される 典型的な例といえる。 良質な性能を持つもののみが正しい評価と共に採用の道が開かれる、という 構図は、残念ながら地球上の軍需産業には存在しない。軍需産業が工業・ 産業として歪んでいるのは、それが人殺しの道具の開発だからではなく、 それを利用して人間性や産業の健全性をも踏みにじる政治的暴虐が 当たり前のように行われることにこそある。 これも戦争がもたらす人間疎外のひとつの側面であるといえる。 FAL自体は突撃銃として世界中70カ国以上で採用されたという戦後第一 世代を担った役目を終え、2010年現在、日本も含めて各国は5.56mm 新NATO突撃銃に順次切り替えが完了しつつある。 そして、ベルギー本国のFN社では、近年FALの生産が打ち切られた。 現在FALを制式軍用銃としてライセンス生産している国は世界中で ブラジルのみである。 しかし、最近、アフガンやイラクの砂漠地帯での紛争現場において、 射程距離の長い旧NATO弾の効果が認められ、旧NATO弾を使用できる 軍用銃が再度望まれている。 現場では政治など関係ない。性能が第一に求められるのだ。戦争の 現場の人間は竹ヤリを求めてはいない。 そして、米国のカスタムメーカーがFN社のライセンスでFALのフレー ムから機関部まで一切を製造し、レール等近代タクティカルエクス テリアを装着させたFALをリリースし始めた。 また、FALのショートタイプである50.63パラモデルをフルコピーして リリースし、PMC(民間軍事会社)や軍関係者に人気を博している ようだ。 DSAのSA58。FAL 50.63の436mm短銃身パラショーティーのクローン。 オリジナルFALのパラモデルより4cm程短い。 DSA-58OSW。同じくDSアームズ社の法執行機関向け FALタクティカルモデル。 画像の個体は30連マガジンを装着している。 <DSA社FALのデモンストレーション動画> このデモを観る限り、DSA-FALは砂塵に対しても十分な対策が なされていることが判る。 また、近年、ピストル・カスタマーのジェフ・クーパーが銃に新しい カテゴライズの概念を導入し、それが一部で定着しつつある。 5.56mm等の小口径弾を使用する突撃銃を従来通りアサルト・ライフル と呼び、7.62mm等を使用する銃をバトル・ライフルというジャンル 分けしだしたのがそれである。 これは比較的新しい概念であり、このジャンル分けの概念の素地は 1960年代から存在した。AR15(M16)系のタクティカル・カービンである CAR15等はサブマシンガンというカテゴリーに入れる概念と同種のもの である。 近年、PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)という銃弾の火薬量 がライフルより少なく拳銃弾より多い特殊な弾薬を使う全長が短い火 器が発生し、これと時期を同じくして、従来のアサルト・ライフルという 概念がガン・カスタマーにより細分化されようとしている。 しかし、バトル・ライフルという呼び名は、魚をサカナと呼ぶかウオと 呼ぶかの違いくらいでしかない。日本語表現ではすべて「自動小銃」で あるし、英語の概念上も細分化することにさほど軍事的意味はない。 アサルト・ライフルは文字通り「突撃銃」であり、バトル・ライフルも 機構上の差異がない限りアサルト・ライフルの範疇であり、意図的な 小銃の細分化が用兵思想とは別次元で作り出される限り、意味のある ことではないといえる。 そのような曖昧模糊とした概念を導入するならば、自衛隊にみられる ように64式7.62mmと89式5.56mmを併用配備している軍隊は、64式配備隊 がバトル・ライフル隊で89式配備隊がアサルト・ライフル隊となり、 同じ歩兵なのに同一軍隊内部で別な火器を標準装備しているという訳の わからない概念となってしまう。 敷衍すれば、5.45mmのAK74がアサルト・ライフルで7.62mmのAK47はバトル ・ライフルなのかということにもなる。 本質は7.62mmだろうが5.56mmだろうが5.45mmだろうが、箱型弾倉とピス トルグリップ、自動連射機能がありライフル弾を発射できて着剣装置が ある銃は突撃銃=アサルト・ライフルなのである。 また、バトル・ライフルという呼び名は、アサルト・ライフルを単に 口径の違いによって区分けする限りにおいて、アサルト・ライフルが 生まれた軍事的歴史背景を無視するものとさえいえる。 分隊支援火器と歩兵用小銃というように、それが用兵思想と結びつか ない限り、口径や射程や連射制御性で銃を区分することが全く意味を なさないことは論を俟たない。 その点、部品名称などは覚えにくいが、日本式表現はスッキリしている。 サブマシンガンは機関短銃(若しくは短機関銃)であり、アサルトライフル は口径に関係なく自動小銃である。 <実銃FALの動画解説(youtubeリンク)> <トイガンについて> メーカー:KING ARMS(香港) 型 式:KA-AG-03-C(50.63パラをモデルアップ) 材 質:アルミニウム・メタル・ボディ 機関部:Reinforced gear box 機 能:アジャスタブル・ホップアップ 装弾数:90rd magazine 全 長:990mm 空重量: 3070g 装填重量:3700g(バッテリー+ノーマル90rdマガジン0.2gBBフルチャージ) 初 速:89m/s(0.2gBB) 定 価:91,400円(日本向け定価) キングアームズ公式サイト <KING ARMSというメーカー> さて、一方こちらは軍需産業ではなく、平和産業。玩具の世界。 パッと明るい話題に目を向けよう。 King Arms(以下KAと略す)は、新進気鋭の香港エアソフトガン メーカーだ。 もともとはエアソフトガンの外装パーツを製造販売していた会社だが、 そのパーツ製造で得た技術をもとに2007年に同社の初コンプリート 電動ガンとしてFALを発表した。 KA社の特徴としては、家内制手工業的なサードパーティが多い中、 同じく少数社員による運営という形態をとりつつも、その手がける 製品群において玩具製品を超えた工業製品としての基準を製造基準 に置いている点が挙げられる。 工業界では一般的なCADによってデザインされ、CNCマシンによって 製品が削り出されていく。 また、販売手法も日本の一部メーカーにみられるようなあたら時間 ばかりかける漫然として独善的な開発販売という方法ではなく、 マーケットニーズを的確に捉えて迅速に製品化する方法を旨として いる。 そのスピードと即応性を確保するためには、クレームや不具合が発生 しないという製品のクオリティの高さは絶対条件となってくる。 こういったことは工業製品を開発・製造・販売する業界においては ごく当たり前のこととして認識されているのだが、玩具業界には旧態然 とした体質が今でも残っており、タイムリーな市場のニーズに応え られないばかりか、製品化して販売する段階ではもうその製品の人気 が凋落して時代遅れになってしまっていることが往々にしてある。 KAはそうした冷徹な市場原理を十分に踏まえて、工業製品としての品質 を備えたものとしてエアソフトガンを開発製造しているメーカーだ。 そして、KAがエアソフトガン本体の製造を以って業界に殴り込みをかけ た第一弾がこのFALであるのだ。 <高い剛性、高い品質、高い?定価> KA FALの特徴としてまず第一に極めて高い剛性が挙げられる。 構造的には東京マルイの89式の高剛性の影響を強く受けてそれを 研究していることが伺える。 東京マルイ89式については、「かつて存在しない程の強度を目指す」 ということが第一の開発ビジョンだった。初めからメタルパーツを 多用し、ボディ剛性はかつてのマルイ製品群とは比較にならない程 頑強な構造・材質となっており、製品化後に自衛隊に「訓練銃」と して納入していることを鑑みるに、開発段階から極秘裏に何らかの 関係省庁の関与があったことは想像に難くない。 いずれにせよ、東京マルイ89式はメーカーが製造販売するコンプリート 電動ガンとしては群を抜いた剛性だった。 KA電動ガン第一弾のFALは、構造的にも設計思想も東京マルイ89式を 手本としていることはKA FALを手にとって分解してみるとよく判る。 KA FALはデザイン的には甘いディティールを残すとはいえ、機能面 での完成度の高さに私は驚嘆を隠せない。ネジ1本までもが実に 「考え抜かれて」製品化されているからだ。物作りの良心さえ感じ られる。 KA FALの開発にあたっては強力な外部ブレーンが存在した、と 某専門誌のレポートにあったが、外装パーツの開発・販売から始めて 最後に銃本体を製品化するという経路を採らずにいきなり銃本体の 製品化が成功した裏には、このブレーンの存在が大きかったようだ。 想像の粋を出ないが、私はKA FALの開発には日本人が関わって いたのではなかろうかと推測してる。 販売価格については、日本向け定価が\90,000代というのは、為替 レートを勘定に入れても、相対的には決して安い定価設定ではない。 しかし、KAはメーカー直販という形態は採らず、自動車販売等の 工業製品販売と同じマーケティング販売ルートに依拠している。 つまり、問屋もしくは中間業者に仕切値で卸売りして、販売業者 はその仕入値に応じて販売価格を設定しているのだ。 だから仕入値を割らない限りは、販売店においては他店と価格競争 になることは必至であり、末端価格は下落して行く構造になる。 資本主義経済におけるそうした構造は製造メーカー側は織り込み済み であり、問屋もしくは中間業者への仕切り価格を割らない限りメーカー が損失を蒙ることはない。仮に卸売業者への仕切り設定価格を割った としても、損益分岐点を割らなければマイナスにはならない。 もともと売れる製品であるので、仕切り値を割る問屋の要求について は、メーカーがそれに合意しなければよいのだ。 事実、定価は\90,000代であっても、小売店による販売実勢価格の相場 は凡そ1挺あたり3万円台〜4万円弱程度となっている。 オークション等で新品が3万円台で小売店により出品されることがあるが、 つまり小売店の仕入値はそれ以下であるのだ。製品を入手するエンド ユーザーにしても、表示定価の\90,000代でなく実勢価格として3万円強 ならば、このFALが具備する機能と性能からして決して高い買い物の 価格帯ではないと思う。 論理的に見るにKAは低価格の良心的卸値で販売業者に仕切っていると いえる。表示定価に惑わされてはいけない。 また、KAは独占代理店制で販売しておらず、あえて過当競争の競争 原理と法律を巧みに利用して販売経路とシェアを拡大している。 社会主義国家の経済特別区のメーカーとはいえ、マーケティングは 徹底的に資本主義原理に依拠しており、日本のメーカーも販売対策を 立てて将来を展望しないと、国際競争力の低い従来の日本国内だけに 目を向けた日本メーカーの今までのやり方では国際経済の中では淘汰 されてしまうだろう。 かろうじて現在展望がみられるのは世界市場で先行権益を確保した東京 マルイとウエスタンアームズだけではないだろうか。 開発・製造・販売が市場ニーズにまったく追いついていない国内の 個人的弱小メーカーは、向こう10年の間にまず生き残れないだろうと 私は予測している。 <外見いじり> トイガンというものはやたらと綺麗過ぎる感がある。 これが映画のステージガンとなると、「時代つけ」という特殊メイクが 施されて、程よい使用感をわざと出したりする。 特に西部劇などは新品キラキラののピースメーカーだったりしたら、 映像がしまらない。 戦争映画でもピッカピカの銃なんかだと、かなり嘘っぽくなる。特に 軍用銃の場合は、クタクタの方がリアル感がある。 私のFALは中古で使用感があるとはいえ、まだまだ新しい感じがする。 少し時代付けというウェザリング加工をしてみることにした。 これがFALの実物ハンドガード。 (クリックで拡大) 実銃ハンドガードはかなりクタクタだがが、本物とはこういうものだ。 実物ハンドガードの金属部分が電動ガンでは真っ黒のプラスティック だったので、銀パウダーをティッシュにつけてこすると・・・ こんな感じ。 キングアームズFALは全体的にディティールが甘い点があるが、一番「?」と 思うところがフロントサイト周りだ。 KA-FALはL1A1のスケルトンタイプのサイトガードなのだ。 今回、ウェザリングに併せて、フロントサイトも加工してみることにした。 完璧に実物と同じ造形ではないが、イギリスL1A1やドイツG1タイプのスケルトン のフロントサイトのサイドカバーではなく、ベルギーFALのタイプのイメージで プラ板で成型、取り付けてみる。 これは仮塗装の段階。下地には銀を塗り、その上からマットブラックを軽く 吹いているのだが、なにかしっくりこない。 本来なら実銃とおなじ造形にしたいところだが、観賞用ではなくゲーム主体 なので、一見「それ」らしく見える程度で十分だ。 フロント・リヤともにベルギーFALのサイトを再現している電動ガンは、現在 DSAアメリカン・クローンをモデル化したクラシック・アーミー社のSA-58しか 現在のところ存在しない。 (クラシック・アーミー製電動FALのSA58。かなり出来の良いサイトの造形だ) (実銃のフロントサイト) 第一弾で作った自作のフロントサイトのガードがどうも気に入らないので、 やり直し。 塗装をはがしてプラ板の周囲を再度パテ盛りして成形した。 パテは自動車修理用パテなので硬化開始が早すぎる感がある。20秒くらいで硬化する。 あまりにも早すぎるので、別パテを再度調合、硬化速度を1分にした。 20分程度で完全硬化する。これを水研ぎしていく。 タミヤカラーのマットブラック(TS-6)でスプレー塗装後、GSIクレオスの Mr.メタルカラー/ダークアイアン(MC214)を筆塗り。 フロントサイト周りはこんな感じに仕上がった。 こちらは手直し加工前。 キングアームズのノーマルサイトはブリティッシュL1A1タイプで、 ベルジャン・パラモデルと整合性がない。 どうにか金属っぽい感じは出せたと思う。 サイトのガードは2mmのプラ板折り曲げ接着。 ハンドガードの前部は実銃では金属だが電動ガンはプラ。 ここも再度塗装した。 やり方は、GSIクレオスのMr.カラーのメタリックシルバー(8)をティッシュに 少量つけて半乾きを見計らってそれでこする。 塗料が多すぎて失敗したら、シンナーですべてふき取り、また最初から行う。 実物89式やFNC等も実物はハンドガード前部が金属で、自衛隊の89式などは 塗装がはげて光っている。マルイ89式ユーザーもこの仕上げをすればリアル感 が増すと思う。 Before なぜか緑色に塗られていた金属アッパーレシーバーカバー。 After ここも実物FALのように黒鉄塗装にした。 ロアも軽く塗料をティッシュでブラッシュ。 乾いてから指でこすると重い金属風の艶が出る。 塗料はGSIクレオスMr.メタルカラー/ダークアイアン(MC214)。 全体的にはこんな感じ。 Before After その後、ボルトも塗装した。 しかし、まだ何か物足りない・・・。 そうなのである。 この電動ガンは中古で友人が譲ってくれた物で、キングアームズのオリジナルの フロント・スイベルを前オーナーが外していたのだ。 ローデシアの軍隊はスリングを使用しないのでコスプレの際には注意が必要だが、 ベルギーなど一般的な軍や傭兵たちはスリングを使用していた。 探してもらったが、引っ越しも重なり、膨大なパーツストックの山にうずもれて 行方不明のまま発見できず。 やむなく、日本の代理店にパーツ輸入依頼したが、売りっ放しのショップばかりで、 何店もメルマガは送り続けてくるがパーツ発注の結果についてはなしのつぶてで 非常に困惑した。売りっ放しの店は今でもとても多いようだ。 入荷が困難なら、せめてそのことだけでも知らせてくれると助かるのだが、問い 合わせ先の数店舗は接客対応が全滅。(苦笑) もし新品で購入するなら、小売店は十分に吟味したいところだ。 <スリング・スイベルの製作> これは実銃FALのスリング・スイベル。 FAL のフロント・スイベル一式。 こちらはキングアームズFALのスイベル。 私のFALはこの部分がアッセンブリで欠落している。 (画像提供wakoo氏) 電動ガンに着くとこういう状態。(ノーマル) 私のFALはこのような状態。 合衆国の実銃サイトに10ドルで本物のFALのスリング・スイベルが 売られていたが、たとえ輪っかひとつでも実銃パーツを直輸入する というのは限りなく違法性が高いおそれがあるので、危ないこと には手を出さないことにした。 結局、自作することにした。 「無ければ作れ。あるならあらゆるものを流用せよ」 傭兵の心得だ(笑) まず、FALの銃身寸法を基に、三面図と展開図を自分で 手描きで引いて、その図面に基づき材料をカットする。 今回は必要最小限の機能だけを念頭において形状出しをした。 極めて簡単な形状になっている。スイベル本体はマルイの 物を流用。 製作は、まず厚み1ミリの鉄板をシャーリング・マシンで 図面の寸法にカットすることから始める。 それに直径4mmの穴を二つ開け、プレスして成形。 これで機械加工工程は終了。(銀色の部品) 仮組み。ぴったり。 実銃のように銃身に沿ってクルクル回る。 あとは、ペーパー研磨でバリ取りと白皮を剥いて黒塗りすればフィニッシュだ。 固定はピンをEリングワッシャーで固定する方式。 完成。 塗りは専用塗料ではなく、サフェーサー⇒黒⇒つや消しクリアというもので、 可動部なのであくまで簡易実用本位の仕上げだ。 スチール材なので、スプリング材のようにガンブルー染めか専用塗料での 塗装が本来は好ましいだろう。 位置は座りが良いので、本来の取り付け位置よりも後ろ側のバイポッド装着の 位置に取り付けた。 実銃のFALパラでも、ここに装着しているタイプがある。 実銃FALパラモデル。軍用でなくコマーシャル・モデルのため、 着剣ラグとグレネード・キャッチの銃身リブが設置されていない <ブランク・アダプター> 実銃にはこんな物がある。 これは実銃FN FALの「ブランク・アダプター」というシロモノ。 どう使うかというと、こう使う。 実銃の訓練で空砲を撃つ場合、発射ガス圧を高める必要があり、銃口を この器具で塞がないと銃が作動しない。 この実銃器具はエアソフトガンにも使える。 どんな使い方をするかというと・・・ エアソフトのゲームでは、休憩時間などはマガジンを抜いて、安全装置 をかけ、さらに銃口にメーカー純正のキャップをかぶせて安全対策を 講じることが多い。 トイガンメーカー純正のマズルキャップでも十分なのだが、この実銃と 同じような形のキャップがあったらカッコいい(!)と閃いた。 FN FAL実銃の空包用ブランク・アダプターをキングアームズ電動FALの フラッシュ・ハイダーの内径に合うように絶縁テープで径を調整した。 こんな感じ。実銃みたいでよかたい! 中古でエアソフトガンを入手したり、マズル保護キャップが付属 しない玩具銃用のアタッチメントでこのような物があると本物ぽい 雰囲気も味わえる。 驚いたことに、キングアームズFALのハイダーの内側には、実銃と 同じようなネジ切りらしきモールドが施されていた。 ただし、径が合わず、実銃パーツは装着できない。 実銃用アダプターは数が流通していないので、他のトイガン用に 自作してみることにした。 これは直径32mmの鉄製の丸棒。 (切り出し加工の際の潤滑オイルが着いたままの状態) この無垢材を旋盤で削り出していく。 更に削る。 鉄製のラムネ栓抜きの出来上がり(笑) 一番右の芯の径が細いのはマルイ次世代電動ガンAKS74N用。 ブレーキクリーナーで脱脂後、サフェーサーで下塗りを施す。 出来上がりはこんな感じ。(FALのみ実銃アダプター) <スリング取り付け> 最近FALの実物スリングは品薄で、国内ではほとんど見かけなくなった。 もっとも、出回っているのはFAL用ではなく、英軍のL1A1用なのだが、 ベルギーのFAL用実物スリングはまず見たことがない。 ドイツの革製などは英軍用と共に時々見かけるが、エアガンが買える 位の値がついている。 英軍連邦のL1A1スリングは市場価格が5,000円程度のようだ。 私のFALには、別の実銃スリングを着けてみた。 色はマッチしているようだ。 このスリングは・・・なぜか大昔から私が持ってた実物AKのスリング。 それの一端を切って専用革製ラップと金具を外してFAL用にした。 コンゴは、いや今後はこれで行く。 残骸。。。 これはこれで取っておくことにする。 何かの時に、はっ!と使える部品になるかも知れない。 <メンテナンス> 1シーズンをノーメンテで使ってみて、多少気になる点が出てきた。 よく言われる「中国・香港・台湾製はゴムとバネの質が悪い」というもの。 私のFALでいうと、メカボックスは入手した際にオーバーホールしており、 メカトラブルは一切ないのだが、やはりホップが不安定になってきた。 ということで、排気ユニット周りをばらしてメンテナンスをする。 問題はここ。 (ピンボケ失礼) どうやら、ホップパッキンがきちんと機能していないようだ。 ホップを最強にしてもパッキンが十分に押されていない。 パッキンを外してみたらこんな感じ。 上が外したパッキン。ホップで押される部分がへこんだままで弾力性が なくなってる。また、ロール形の小さな押しゴムが寿命となってダブルで ホップ機能不全を併発していた。 上:キングアームズパッキン 下:マルイノーマルパッキン新品 マルイに交換後。最大これくらいは出ていないとスピンはかけられない。 パッキンの押しゴムはシリコンチューブを小さく切って使った。 この後、BB弾を入れて抜弾抵抗をチェック、問題なし。 ついでに、バレルを念入りに掃除し、組み込み完了。 試射。 シャッター位置から法面上部に群生しているウルシ の樹木(高さ1.8〜2.7m)までが距離34m。 黄★までが38m、赤★までが40m。 ホップも任意にかけられ、弾道直進性も安定している。 10発試射し、1発のみ88m/s、9発が89m/s。(SIIS-0.2gバイオ弾) 0.8J-初速90m/s(0.2gBB)以下のレギュレーションに合わせてある。 キングアームズFALは、現在、私のエアソフト・ゲームのメイン 銃となっており、何というか「心の支え」のようなもので、 「己を託す腰に帯びた一刀」に似た信頼と思い入れがある。 世界90ヶ国で使用された西側世界を代表する戦後第一世代の 突撃銃FAL(右)と戦後第二世代突撃銃のAKS74(左)。 この画像のFALは50.63パラトルーパーのショートバレル・ モデルで、小ぶりなAKS74と長さがほとんど変わらない。 FN FAL 50.63パラモデル16インチバレルはFALのほぼ最終型であり、 この画像の両者は同時代に現役で活躍していたことになる。 FALの現代進化型は米国DSA社のSA58シリーズで、タクティカル・ カービン仕様のそのFALは現実世界で傭兵たちに愛用されており、 2010年公開のアメリカ映画『エクスペンダブルズ』の中でも傭兵の 愛銃として登場していた。 最近は何かとタクティコーな外装エクステリアごてごてが流行って いるが、「外装品は何も着けない銃本隊のみ」という戦後から 1990年代前半までのスタイルの銃も、何ともいえない深い味わい がある。 私は光学機器を搭載したタクティカル・アサルトもいくつか 所有しているが、気がつくと、行き着くところはやはりシンプル なスタイルで外装なしの銃になる。 その中でも、このキングアームズFALは、エアソフト・ゲームでの 仕様頻度と、「愛用している」という意識において所有トイガンの 中心的な存在となっている。 「君はFALを使えるか」 これがアフリカ傭兵の面接官が応募者に投げかける第一声だ。 そう、私は使える。オモチャだけど(笑) 「いや〜、このFAL、結構イイよ」 キングアームズ FN FAL 50.63。 剛性抜群、弾道特性も良好。 こいつは、かなりイケる! 気に入ったぜ! <King Arms FALを使用したエアソフト動画> (ファイア・アンド・ムーブメント) (本隊行動。FALで5人討ち取るも、私は敵フラッグ目前でヒット。 直後に向こう別方面からの別働アタック班が敵フラッグをゲット) (writing:Feb,28.2010/correction:Jan,10.2011 by元木正太) |
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ガンモ所有のトイガン |