「大相撲名古屋場所」(10日初日、愛知県体育館)
千代の富士(元横綱、九重親方)が残した角界記録の通算1045勝に挑む大関魁皇(38)=友綱=が、かかりつけの奈良県の接骨院で緊急治療を4日に受けていたことが5日、明らかになった。この日も朝稽古は続けており、目立った負傷はしていないが、日程的な問題で本場所初日までの出稽古を断念。バスでの移動を回避するため“特別許可”を得るなど、体と相談しながらの慎重な調整を余儀なくされている。
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いつも通りに稽古場に姿を見せ、いつも通りに汗をかいた。しかし、その裏では慎重な調整を行っていた。4日に日帰りで、名古屋入りする前にも約1週間診てもらったなじみの治療院で、腰などの集中的な治療を受けた。部屋関係者は「かなり強い力でマッサージするので、大関でも声を上げることがある」と漏らした。
負傷をしたわけではないが、魁皇が入念な治療を怠らない理由がある。「場所へ向けて休まないといけないよ。用事が多くて疲れちゃう」とぼやいた通り、7日午後には地元テレビ局による名古屋場所前夜祭の収録が、8日には伊勢神宮の参拝が控えている。場所直前の過密日程は38歳のベテランにはボディーブローのように響いてくる。
特に不安視するのが伊勢神宮参拝だ。腰に負担がかかるバス移動に加えて、当日の最高気温は34度という週間天気予報も出ている。例年に参拝する3月末から4月上旬とは気候が大きく違うため「紋付きを着て参拝するのがつらい。全部で4枚着ることになるから。しゃく熱になるわけだから」と疲労の蓄積を今から警戒している。
ここで、師匠の友綱親方(元関脇魁輝)がいてもたってもいられず助け舟を出した。協会側と交渉して、別行動を取る了承を得た。魁皇が希望すれば、バスではなく、ゆったりとしたワゴン車などでの移動も可能になる。活用するかどうかは未定だが、魁皇は「本当?それならありがたいな」と話し幾分、不安も和らいだ様子だった。
場所前に希望していた出稽古も「これから忙しくなるし」と断念。実戦的な稽古はせず、“ぶっつけ本番”となるが、今場所以上に悪い状態で本場所に臨んだことは過去、何度もあった。体調によらず「普段通りに稽古をする」というのが口癖になった。周囲のサポートを力に、1045勝、そして前人未到の1046勝へ、自分のペースで準備を進める。
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