安全よりも経済性優先 関電に原発運転の資格なし
死傷者11名 過去最悪の美浜原発事故

2004年8月9日午後3時22分、営業運転中の関電美浜原発3号機の2次系配管(直径56センチ) の一部がいきなり幅最大57センチもめくれる大きな破裂を起こした。

破裂箇所はタービンを回すのに使った2次冷却水を蒸気発生器に戻す復水管で、付近の2次冷却水は約 140度、10気圧。破裂により高温の蒸気と熱水が噴出し、5日後に迫った定期検査の準備作業をしていた「関電興業」の下請け企業「木内計測」の作業員11人が事故に巻き込まれ、5人が全身やけどで死亡、6人が重傷を負った。(9/16現在)

日本の原子力事業所の事故では過去最悪の犠牲者である。

事故の重大性…あと一歩で炉心溶融

原子力推進派は、2次系冷却水に放射能が含まれないことから「単なる労災事故」などと事故の過小評価を行っているが、885トンもの冷却水が噴出して漏出しており、この量は2次系冷却水全体の約8割に当たる。このため補助給水ポンプが稼動し冷却水の補充が行われたが、1次系と熱交換を行う蒸気発生器の水位は関電発表でも午後4時55分段階で約3分の1まで下がっていた。一時的にはもっと下がっていたようだ。

原子炉は事故発生6分後に自動で緊急停止したが、高温のままであり、冷却に失敗すれば炉心溶融による破滅的な事故にいたるところであった。あのスリーマイル事故も2次系冷却水の漏洩がきっかけで起きており、2次系といえども冷却材喪失事故を軽視することはできない。

点検漏れという単純な事故原因

配管の破裂部分は、通常10ミリある肉厚が、配管の交換が必要とされる 4.7ミリを大きく下回り、最小で 0.4ミリまで薄くなっていた。破裂部分の上流側約50センチに流量を測るための「オリフィス」と呼ばれる中央に直径約34センチの円形の穴が開いたステンレス製の板(厚さ約5ミリ)が差し込まれた構造になっており、その下流側は水流の乱れで管が摩耗し、管の厚さが薄くなる「減肉」を起こして破裂したとみられる。

破裂した復水管は炭素鋼でできており、ステンレスなどに比べて腐食が進みやすい。また、曲折部だけでなく直線部であってもオリフィス下流部などで「減肉」が発生しやすいことは知られている。1986年に米サリー原発(美浜と同じ加圧水型原発)のタービン建屋で、直径45センチの配管が一瞬のうちに破断、高温の水蒸気と熱水を浴びた作業員4人が死亡するという今回同様の事故が発生し、その後、配管に激しい腐食が見つかった。

この事故を受けて1990年に定められた加圧水型原発保有電力会社の共通の「2次系配管肉厚の管理指針」でも今回の破裂箇所は点検対象となるべきであったが、運転開始以来27年以上、検査をしていなかった。しかも、この箇所は検査用などの枝管ではなく主配管である。

気がつきながらなぜ止められなかったのか

美浜3号機の点検個所のリストは、三菱重工が1991年に作成したが、この時点で破裂個所が検査対象から漏れ、関電もこれを見逃していた。その後、1996年に関電の子会社・日本アームが三菱重工から点検を引き継いだが、三菱重工の点検リストをそのまま使用したため、検査対象漏れも引き継がれた。その後、リスト漏れに気がついた三菱重工は1999年と2000年の2回、日本アームに注意を促し、日本アームは2003年になって初めて問題の個所が未点検だと関電に報告したとされているが、関電も含めた3者の間で点検漏れの情報がいかに伝えられたかは刑事事件になり各社が責任逃れや情報隠しを行っていることもあり、現時点では正確にはわからない。

しかしながら、点検漏れに気がついた時点で、「2次系配管肉厚の管理指針」に基づいて計算すると、破裂箇所が10年以上前の1991年に寿命切れになり、現在の厚さが1ミリ強しか残っていないことが分かったはずで、直ちに運転を停止して点検を行っていれば事故は起こらなかった。破裂個所は8月14日に開始予定だった定期検査で初めて点検することになっていたが、遅すぎたといえよう。

実際、関電は何度も事故を防止するチャンスを逃している。今年7月、大飯原発1号機でも復水管4本のうちの3本で減肉が見つかっている。21ミリの配管の厚みが、基準の15.7ミリを下回る12.1〜14.5ミリまで薄くなっていた。ここでも三菱重工、日本アーム、関電間の連絡がうまく行かず、今年の定期検査まで11年間検査はされていなかった。関電は、検査データを再点検する、データの引き継ぎを社則に定めて定期的に監査する―などの改善策を県に示していた。このとおりの再点検を美浜3号でも直ちに行うべきであった。

3者の責任はいずれ刑事事件として問われることになるが、少なくとも関電が点検個所のリストアップを下請け会社に丸投げしチェックできなかった責任は重い。関電が下請けに任せている作業は配管肉厚の測定だけではない。その全てが無責任体制だとしたら…。

関電原子力事業本部長の松村常務が、事故当日の記者会見で語った「きちんとした管理ができていればこのような事故は起こらなかった。」がすべてである。関電に原発を運転する資格はない。

美浜以外の原発でも点検漏れ

 関電は、8月18日、保有する原発全11基の配管について過去の点検実施状況を調べた結果を発表した。未点検箇所が高浜1、3、4号と大飯3、4号で計15か所見つかり、美浜3号の破裂した配管と、同原発の別ループの同一か所(当初の10ミリから1.8 ミリまで減肉が進んでいることが後日明らかになった)と合わせ計17か所となった。

この日の発表で、関電は、検査リストから漏れていた11か所について「同一仕様他原発の測定結果から健全性が確認できた」としたが、原子力安全・保安院は、「他原発のデータをそのまま引用できるとは限らず、関電の説明は不合理」と指摘している。なお、高浜3号では未点検箇所が主配管であったため、運転停止による検査が前倒しされた。

関電は、当初他の原発については記録の点検を行うのみの対応で済まそうとした。しかし、西川福井県知事が、8月13日、稼働中の全原発8基の運転を停止し、類似の配管を直接点検するよう要請した。これを受けて関電はようやく稼働中の原発を3グループに分けて停止し、順次点検を行うこととし、同日から開始した。

ただし、この点検は配管の全てを行うものではなくオリフィス下流部などに限られ、第1グループの高浜2、大飯4、美浜2号では計77か所のみであった。案の定、この計77か所の点検結果に問題はないと関電が発表した後に、点検箇所以外に問題があることが判明した。

管理指針逸脱が示す事故原因の真相

過去の検査データの検証のため6か所の点検を指示し検討した原子力安全・保安院は、美浜2号の1か所で基準を1ミリ下回り、別の1か所で余寿命が1年を切るにもかかわらず、使用を続けたことを不適切であると指摘した。管理指針は、余寿命が2年を切った段階で交換するよう定めているが、関電は火力発電用の特例を採用して算出した緩い基準を使用するという逸脱行為により、余寿命を長く算出し、交換を先延ばしにしていた。その後の調べで、同様の逸脱は美浜1号、3号、大飯2号などでも行われていた。

さらに大飯1号の今年6月の定期検査では肉厚が4ミリと3・8ミリで、余寿命が0.3年程度と判定されたのに、配管外側からの肉盛り溶接で7ミリにかさ上げする隠蔽まで行っていたことが発覚した。

配管の検査で余寿命が1年未満の結果が出た場合に、基準を緩和し、本来検査結果が出た定期検査の期間中に行わなければならない配管の交換を次回の定期検査まで先送りにするのだ。予定を変更して配管交換を行えば定期検査期間を延長せざるを得ないので、基準のほうを緩和する。このことほど、関電が安全よりも経済性を優先していたことを如実に示すものはない。

余寿命のない配管交換さえも次回定検まで先送りする方針の下では、点検漏れに気が付いても運転を止めず次回定検まで点検を先送りしてあたりまえではないか。確信犯である。

国の責任は?

関電は、2000年5月、資源エネ庁に提出した「定期安全レビュー報告書」の中で 「減肉が予想される配管については、計画的に厚みを測定しており、異常な減肉は認められていない」と説明し、エネ庁も、原子力安全委員会に問題なしと報告、了承されていた。電力会社の報告をそのまま認めるだけでは、今後も老朽原発が増加する中で、事故の防止はできないだろう。

総合資源エネルギー調査会に設けられた事故調査委員会は、9月27日に、「関電の品質保証、保守管理が機能していなかったことが事故の背景」とする中間報告書を取りまとめた。これを受けて経済産業省は美浜3号に技術基準違反で一時停止の命令を出した。しかし、「品質保証、保守管理が機能していない」のであれば、関電の全ての原発に停止命令を出すべきである。再処理工場で予定されているウラン試験のスケジュールに影響を与えないよう、拙速で事故の幕引きを図ろうとすることは決して許されない。

JCO臨界事故でも国の責任を不問にした杜撰な事故調査が行われたが、臨界事故では事故調査委員会は安全委員会に設置された。その後中央省庁の再編が行われ、今回、安全委員会は原子力事故・故障分析評価専門部会に事故検討分科会を設置しているが、すっかり影が薄くなっている。事故調査は本来第3者機関で行うべきで、規制行政庁である原子力安全・保安院がその諮問機関である総合資源エネルギー調査会に事故調査を担わせるのでは、規制行政庁の事故責任などますます問えないのではないかという疑問を禁じえない。事故調査のあり方自体が問われていることも指摘しておきたい。


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