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2005年1月 6日 (木) 更新

[発言録] 人権の拡充へ、国会で活動強化めざす(対談 松本龍×松岡徹)

対談:松岡徹×松本龍 右:松本 龍(部落解放同盟中央副委員長・衆議院議員)
左:松岡 徹(部落解放同盟中央書記長・参議院議員)


責任かみしめて

*国会活動の印象はどうですか。

 

松岡  責任を感じている。参議院の法務委員会に所属し、「人権侵害救済法」や証拠開示について国会のなかで議論を巻き起こそうとしている。憲法調査会にも所属している。
 11月11日に、与党懇話会がひらかれて、「人権擁護法案」で法務省所管ははずせない、来年の通常国会に提案し、衆議院の法務委員会に付託するということが決まったと聞いている。

*松岡シフト、解放同盟対策ですね。

 

松岡 憲法調査会も1月でまる5年になり、終わる。わずかな時間でも憲法調査会で意見をいう機会をもらったけれども。意気込んで法務委員会や憲法調査会にはいったけれど、ちょっと肩すかしみたいな感じだった。

 

松本 私も松岡選挙を手伝った。重い責任を感じる、ということはよく理解できる。松岡書記長もまだ議員生活半年。最初の半年、1年というのは議会そのものの仕組みへのとまどいがあると思う。それと、党の手続きとか政策の優先課題とか。
 臨時国会では、年金、イラク、日歯連事件、沖縄の問題など政策課題があり、人権の問題が与野党問わず議論になりにくい、ということがあった。

*本会議での代表質問はどうでしたか。

 

松岡 刑法の重罰化の問題に証拠開示と救済法もいれたけれども、救済法も法務大臣の答弁だったら意味がないので、細田官房長官はいやがっていたけど、「人権委員会は内閣府が所管すべきでないか」と質問した。それでもあの程度の答弁だった。

*松本副委員長は。

 

松本 環境委員会と決算行政監視委員会に所属している。環境委員会は前に委員長をしていた関係で、この間、京都議定書問題、産業廃棄物の問題、自然破壊の問題など、環境省としっかりコンタクトを取るために残っている。
 決算行政監視委員会は筆頭理事で、決算にたいしてその吟味をしている。たとえば社会保険庁がムダが多いなど、いろんなムダを削っていく作業を重ねている。

地方分権の進展が

*松岡書記長は、議員になる前に要請行動をよく展開していましたが。

 

松岡 要請行動とかオルグをしてきたので、与野党ともに、僕は新人だけどよく知っていてくれている。これからは、要請とか正式な所ではなく、日常的なところで国会議員とそれぞれ深い話ができるような関係ができていけばおもしろいなと感じた。一度も会ったことのない議員から、「松岡さんのことはよく知っていますよ」といわれることがある。
 それと、国会内部でいろいろな法案を議論するときに、よく人権という言葉が入って来ている。人権というのは、いま一番大事だから、人権の基礎になるような法律をつくる、救済法をつくるのが、いまほど大事な時はない。だから問題はどこからかの一部の要求、マイノリティからの要求ということだけでなくて、日本の国で人権を論ずる時には基本となる法律としてこの救済法は提案されているんだという位置づけが必要だということです。

*たしかにそうですね。

 

松岡 2005年は、当面私たちの大事な課題である「人権侵害救済法」に決着をつける年だと思う。2001年に、人権擁護推進審議会から答申が出され、今年でまる4年を迎える。「人権擁護法案」が2002年に閣議決定され、提案されてからまる3年。廃案になって1年半になる。やはり、この救済法について今年は決着をつけなければならない。
 救済法を作るということは、差別禁止法の制定、人権確立のための施策をすすめるための整備がさらに必要だということだ。そのためには省庁の組織法とか人権施策をすすめるための具体的な、つぎなる施策が必要だ。
 この法律は、部落問題の救済法だけでなくて、すべてのジャンルで議論になっている人権問題のバックボーンになる法律であり、規範となる法律であるということだ。人権の定義と人権侵害の定義、差別の定義をしている。ここが大切だ。
 狭山の闘いも緊迫した状況だし、弁護団も2005年の1月で特別抗告をしてからまる3年になる。いつ判断がでてもおかしくない。大事な年だ。
 それと「三位一体改革」で、今年は相当混乱すると思う。地方の存在をかけた闘いになる。私たちの闘いで積み重ねてきた、人権行政、同和行政、部落解放運動のとりくみ成果が埋没しないように、地方で積み上げる年である。本当に節目の年だ。

 

松本 来年は、地方分権をもっとすすめることが課題だ。「三位一体改革」で、権限移譲、財源移譲を声高にいっているが、ひも付きの補助金はいらないと地方はいっている。補助金をカットした分の自由裁量がきくお金の使い道を地方に与えるべきだ、と十数年来私は主張している。国と地方で何を責任をもってみるのかの仕分けも必要。

*地方によってはもう予算が組めないというところもあると聞いていますが。

 

松岡 野党は地方分権推進派だから、地方6団体と同じことをいっている。そんなこといっても地方は崩れる。地方交付税の分配方式も決まっていない。税源委譲が決まっていないのだから・・・・。

地域自立支援こそ

*ようするに国の負担を軽くするということしか考えていない。全部切り捨てですね。

 

松岡 そうだ。もともと地方分権の論議は権限の移譲。当然、地方も合併して職員を削減したりしている。本当は中央もする必要がある。中央はぜんぜんそんなことは考えていない。官僚は絶対抵抗する。族議員はそこに張り付いている。いずれにしても地方分権というか、地方の権限というのは避けて通れない問題だ。そのときに国の官僚機構が、どれくらい縮小されるかだろう。

 

松本 孔子の言葉に「近きもの喜び、遠きものきたる」というものがある。そこに住んでいる人が住んで良かったと思って、その噂を聞きつけて人がやってくる、という意味だ。ところが、これまでの政権は遠くのものを喜ばすことばかりをやってきた。
 たとえばリゾート法。ゴルフ場とか自然破壊するものを優遇する。宮崎のシーガイアなど近くの人は海があり利用しない、しかもホテルは高すぎて利用できない。バブルがはじけてほとんどがだめになり、外国の資本だけが喜んでいる。
 村おこし、地方おこしをバックアップしていくこと、隣町からも人が来るという地域自立支援の仕組みを作ることが大事だ。

 *たしかにそうですね。「三位一体改革」は、そうなっていない。もう一つ問題になってくるのは、「箱もの」にたいする管理者の問題。民間活用といいながら・・・・。

 

松岡 指定管理者制度の問題は、実施時期は決まっている。タイムテーブルはきまっている。どう対応するかだ。あそこでいっているのは、ひとつにはコストの削減だ。しかし、その前にあるのは民間の活力を導入して多様な市民のニーズに応えるということだ。青少年会館、老人センター、隣保館もふくめてそうだが、部落の関連施設の多様なニーズに応える市民とは誰のことか。人権のまちづくりで提起している部落を含めた周辺のニーズに応えるために、こうしていきましょうというのなら、その理念は賛成する。あとは具体的にどういう中身にするかという論議になるから。そのときに部落問題解決に資するという設置条例を後退させないことが問われてくる。
 同和問題の解決に資するという設置条例を人権問題の解決に資するという条例に変えたとしても、そのなかにきちっといままでの実績をちゃんとふまえてひきつづき、同和問題の解決の使命を担っているということを入れろという設置条例制定の闘いが必要だ。

 

松本 それぞれ個別の闘いをどう展開するのかが大切だ。

変えていくのは政治

*政治を通じてなにをするのか、聞かせてください。

 

松岡 部落問題が部落の問題だとか、同和行政が同和地区の行政だとか、そういうふうになっていること事態が問題。部落問題は日本社会の問題なんだ。日本の国の問題だ。そこを問題提起したのが部落解放基本法制定要求運動の20年前のスタートだった。
 ところが実際、国がやっている手だてといえば、地区と地区住民を対象としてしか施策をしていない。やはり、部落問題がこの国の問題であり、この社会の問題であるならば、それを変えていくのはまさに政治だと。そこに大きな責任がある。だからこそ政治のなかに、しっかりわれわれの要求や思いが伝わるようにする。
 そのときに、差別にたいする怒りとか、差別がいかに人間性を侵害するものなのかということを、まさに水平社からの魂の叫びというか、そこに伝わるようにしていかなくてはならない。そういうことが、しっかり政治のなかで議論されていく必要があるということだ。そのためには、政治のなかに、当事者がはいってそのことが伝わっていく議論をしなかったら、政治自身がおうおうにして、対症療法になってしまう。

 

松本 全国水平社の時代に同じ思いで日本で初めて部落民だとみずから名のり衆議院に立候補し、全国の兄弟姉妹の注視を浴びるなかで松本治一郎は当選した。私たちはなぜ、兄弟姉妹という絆で結ばれているのか。その原点に戻って考える必要がある。
 バブルを経験し、豊かさを経験し、「隣は何をやっているのかわからない」という現状にある。共同性の崩壊だ。そうしたなかで子どもの犯罪やドメスティックバイオレンスが出てくる。そういうものをなくすためにも、地域の絆、新しい共同性というものを創りあげていくことが重要だ。人間は一人では生きることができない。人は助け合わなければ生きていけない、ということだ。だからこそ、全国水平社は結成されたのだし、一致団結して前にすすむ、ということを再度確認する必要がある。

*部落解放というのは、実は部落だけではなく、幅広い人権というものを包括したものになっていかなくてはならない。いま、そのことが現実になってきつつあるといえます。だからこそ、二人の国会議員としての責任は重いでしょうが、がんばってください。

 

松岡 議員になってまだ半年だ。選挙戦は全国の兄弟姉妹にしんどい思いをさせた。選挙戦の最後に思ったのは、最初は中央本部が組織内候補者をだすんだというところからのスタートだったが、それが自分らの候補者だというようになった。あれは、良かった。そして、「人権立国ニッポン」ということでやったからこそ、ひろがった。選挙後にお願いにいった所をまわりたい。定期的に国会報告とかをやりたい。

 

松本 最近は党務が多く、この間も福岡での補選候補を選び立候補の準備をすることに忙殺された。しかし、30年前に父・英一の選挙で全国を回ったときの感激、自分が知らない地域で自分を待っていてくれる人がいる、ということを忘れない。小選挙区制になって、自分が福岡1区で立候補・当選していても、全国の兄弟姉妹に支えられている、という思いは常にある。あのときの、一人ひとりの顔を思い浮かべながら、闘っている。
 それと松岡書記長にいいたいのは、参議院は6年間じっくりと腰を据える期間がある、ということだ。衆議院というのは、いつ解散・総選挙があるかわからない、という違いがある。だから、テーマを組み立ててじっくりやってほしいということです。

(おわり)

(この文章は、「解放新聞」中央版 新春対談で掲載されたものです)

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