放射性物質を含む汚泥を肥料に利用してもよいという農林水産省の方針が全国に波紋を呼んでいる。
そのことについても書きたいことは山ほどあるわけだが、今回は6月16日に政府の原子力災害対策本部が示した「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」という新たな基準について少し書かせて頂く。
ここで、「上下水処理等副次産物」などというわかりづらい言葉を使っているが、簡単に言ってしまえば上下水処理から出て来る「汚泥(ヘドロ)」のことである。
5月1日に福島県内の浄化センターで処理した下水汚泥と、汚泥を焼却して乾燥させた溶融スラグから高濃度の放射性物質が検出されて以来、東日本各地で汚泥から高濃度の放射性物質が検出され、各地の自治体がその処分に困っていた。
そこで、原子力災害対策本部は「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」を定めた。この考え方によれば次のように定められている。
- 汚泥や焼却灰1キロあたりの放射性セシウムが8千ベクレル以下の場合
- 防水対策をし、居住地や農地に使わなけれぱ埋め立て処分できる。
- 防水対策をし、居住地や農地に使わなけれぱ埋め立て処分できる。
- 8千ベクレルを超え、10万ベクレル以下の場合
- 住民の年間放射線量が10マイクロシーベルト以下になるよう対策を取れぱ埋め立て処分できる。
- 住民の年間放射線量が10マイクロシーベルト以下になるよう対策を取れぱ埋め立て処分できる。
- 10万ベクレルを超える場合
- 遮蔽できる施設で保管することが望ましい。
- 遮蔽できる施設で保管することが望ましい。
なお、埋立処分場と周囲の住宅地の距離については、下表のように定められている。
Cs-134及びCs-137の合計 | 敷地境界からの距離の目安 |
10万 Bq/kg 以下 | 70m |
7万 Bq/kg 以下 | 50m |
6万 Bq/kg 以下 | 40m |
4万 Bq/kg 以下 | 20m |
2万 Bq/kg 以下 | 6m |
8千 Bq/kg 以下 | 制限なし |
放射性セシウム(Cs)は、Cs-134とCs-137の合計値である。
汚泥から水分を取り除いた「脱水汚泥」、脱水汚泥を焼却した「汚泥焼却灰」、汚泥焼却灰を固めた「スラグ」というように形を変えていく。
脱水汚泥よりも汚泥焼却灰の方が放射性物質濃度は高くなる(東京都下水道局 注意書き)。
さて、今までに公表されている関東1都6県、及び福島県、宮城県、新潟県の下水汚泥の放射性物質濃度を図に表したものが下図である。
採取日は考慮せず、各都県でどれだけの放射性セシウム濃度の「脱水汚泥」が出ているかだけに着目している(「脱水汚泥」だということに注意)。
図中黒丸が、各自治体で検出された脱水汚泥の放射性セシウム濃度の分布となる。
原発事故が起きている福島県は非常に大きな値も出ており、図の中に入りきれない状態になっている。
皆様のお住まいの自治体の分布はいかがであろうか?
ところで1点だけ真っ赤に燃えるやや大きめの点(赤点)があるが、これは、実は下水汚泥の値ではない。
下水処理場には、流域に降った雨で運ばれた放射性物質が貯まるため、放射性物質濃度が高くなる傾向にあるのだが、福島県のデータを除くと、最も高い濃度を示しているのがこの赤い点である。
この赤い点は何の汚泥だか、みなさんにはおわかりになるだろうか?
(続く)
【参考】
- 河野太郎:放射性物質を含む汚泥の処理
- 原子力災害対策本部:放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方
- YOMIURI ONLINE:福島県の下水汚泥など、高濃度の放射性物質検出
- 東京都下水道局 下水道 放射線情報
- 茨城県 県内各施設の放射線濃度
- 群馬県 下水道汚泥の検査結果について
- 福島県 下水道の終末処理場等における環境放射線モニタリング調査結果について
- 栃木県 環境(空間・水)・下水汚泥等の安全性確認
- 埼玉県 下水汚泥等の放射性物質の測定結果
- 千葉県 放射線関連情報
- 神奈川県 県管理下水処理場における汚泥の放射性物質濃度等について
- 新潟県 放射線測定状況・原子力安全情報
- 宮城県 下水道被害情報
どこの自治体なのかも知りたい。
どうやら話の流れからすると福島県以外だな。
「続き」を期待