市橋被告、突然の土下座謝罪も殺意は否認…英会話講師殺害事件初公判

　千葉県市川市で２００７年３月、英会話講師の英国人女性、リンゼイ・アン・ホーカーさん（当時２２歳）を殺害したなどとして殺人罪や強姦（ごうかん）致死などの罪に問われた無職・市橋達也被告（３２）の裁判員裁判の初公判が４日、千葉地裁（堀田真哉裁判長）で開かれた。市橋被告は入廷の際、土下座して被害者席に座る遺族に謝罪。罪状認否では、「死に対しては責任があります。本当に、本当に申し訳ありませんでした」と涙声で話したが、「殺意はありませんでした」と否認した。

　午後１時１５分。市橋被告は入廷の際、やや伏し目がちに被告席の前まで歩を進めた。検察官の後方に座っていたリンゼイさんの両親を確認すると、体の向きを変え、突然、両ひざをつくしぐさをしながら約１０秒間、頭を下げた。最後は土下座しようとしたが、両脇を抱えた刑務官から「立ちなさい」と言われ、腰を上げた。弁護人によると、法廷で謝罪の言葉を述べるよう市橋被告に促したが、「土下座の行為は突然だった」という。

　市橋被告はあごの下まで伸びた前髪、黒のシャツに、グレーのデニム姿。罪状認否では殺意を否認した上で、「リンゼイさんの死に対しては責任があります。本当に、本当に申し訳ありませんでした」と涙声で謝罪した。死亡時の状況については「事件のあった日に何があったのか知っているのは私とリンゼイさんしかいません。裁判で詳しく話します」と述べるにとどめた。両親は終始、にらみつけるような厳しい視線を向けていた。

　検察側は冒頭陳述で、リンゼイさんが０７年３月２５日に被告宅へ行った理由について、「（被告は）メールで英語を教えてもらう約束を取り付け、２５日午前９時から千葉県市川市の行徳駅前のコーヒーショップで、英語のレッスンを受けた。リンゼイさんを自宅へ連れ込むため『レッスン代を自宅に忘れた』と言って同９時５４分ごろ、被告の自宅マンションに２人で入った」と明かし、部屋に入って間もなく両手首を縛って強姦したと述べた。

　殺害目的は「強姦の発覚を防ぐという動機があった」と指摘。「粘着テープなどで手足を縛り、強姦した上で、被害者の首を少なくとも３分以上、相当な力で圧迫し続けており、粗暴で残酷な犯行。反省がない」などと強調し、「殺意があったのは明らか」と主張した。

　これに対し、弁護側は「殺意はなく傷害致死に当たる」と反論。市橋被告の部屋に入室した際の暴行やその後の強姦は認めたが、リンゼイさんが逃げようとした際、「大声を上げようとしたため、口を押さえ、誤って首を絞めた」とし、強姦致死罪の成立も否定した。

　公判は６回目の１２日に結審し、２１日に判決が言い渡される。

（2011年7月5日06時03分スポーツ報知）