東日本大震災の復興を担う松本龍復興担当相が4日、被災地の岩手、宮城両県知事に対する乱暴な発言で陳謝に追い込まれた。6月28日の就任会見で「民主党も自民党も公明党も嫌い」と発言し、1日に陳謝したばかり。防災担当相として震災の政府対応を担ってきた強い自負が、被災県の知事や国会に対する不満につながったとみられるが、発言は知事を通り越し、被災者自身に不快感を与えてしまった。松本氏は菅直人首相の「延命」にも批判的で、周辺は「本音は復興相をやりたくないのでは」と、松本氏が投げやりになり、不満の矛先を菅首相に向けている可能性を指摘する。
「3月11日からずっとこの間、5月5日に丸一日休んだことを除いて、ずっと東北の問題にかかわってきた」。松本氏は4日、記者団に対し、被災者への陳謝とともに、震災後の自らの役割も強調した。松本氏は被災地を何回も訪ね、一部の市町村長とは携帯電話で連絡を取り合う関係を築いた。一方、政府内には、仮設住宅の整備などを巡り「県は自助努力をせず、国に責任を押しつけている」(内閣官房幹部)との不満が募っていた。
3日の村井嘉浩宮城県知事に対する「県でコンセンサスを得ろよ。そうしないと我々、何もしないぞ」という発言の背景には、村井知事が主張する漁港の集約や民間参入に、地元漁協が反対している現状への不満がある。松本氏は4日も「知事との話は真剣勝負」と強調した。
10年9月の入閣後、目立った発言のなかった松本氏だが、菅首相が震災と原発事故で「一定のめど」をつけた後の退陣を表明した翌日の6月3日の記者会見で「一日も早く退陣した方がいい」と6月中の退陣を要求。復興相就任も2回固辞していた。最終的には受け入れたが、6月28日の就任会見にはサングラス姿で現れるなど、物議を醸した。
就任会見での「民主も自民も公明も嫌い」との発言は、政局的な駆け引きばかりが目立つ国会への批判として評価する声もあったが、松本氏の周辺は「矛先は菅首相」と指摘する。自民党の谷垣禎一総裁は「松本さんはやる気を失っているのではないか。もう菅さんの下でやっているのは嫌だ、という表現だと思う」との認識を示した。【中井正裕】
毎日新聞 2011年7月4日 21時59分(最終更新 7月4日 22時38分)