2011年5月10日 11時36分 更新:5月10日 13時6分
東京電力福島第1原発から半径20キロ圏内の警戒区域への住民の一時帰宅が10日午前、福島県内の対象9市町村のうち川内村から始まった。4月22日の警戒区域設定後、住民が自宅に戻るのは初めて。12日に葛尾村、他の7市町は準備が整い次第実施する見通しだが、対象は約2万7000世帯に上り、希望する世帯全てが一時帰宅を終えるまでには数カ月かかるとみられる。
川内村の一時帰宅は、警戒区域に含まれる東部の123世帯が対象。10、12日の2日間で実施し、10日は55世帯95人が申し込んだが、参加したのは54世帯92人だった。1世帯2人まで認められ、健康に不安がある高齢者世帯などでは、3世帯で代理人が参加した。
住民は午前9時過ぎ、警戒区域の約3キロ外側に設けられた中継基地の村民体育センターに集合。県の担当者がペットについて、11日に犬と猫に限って回収することを説明した。さらに、警戒区域内の前日の放射線量が最大で毎時6マイクロシーベルトだったことが報告された。
住民はその後、問診表に記入して軽食を取った後、防護服やマスクを着用して線量計を携帯。バス5台に分乗して出発し、正午前に警戒区域に入り、それぞれの自宅に着いた。
現地での滞在は2時間で、持ち出せる荷物は事前に配布された70センチ四方のビニール袋1枚に入る量に限られる。自宅立ち入り後はバスで同センターに戻り、身体と荷物の放射線検査を受け、必要に応じ除染を行う。ペットや家畜などについては、この日の持ち出しは禁止された。
対象世帯が約7300世帯と9市町村で最多の浪江町など、所在を確認できていない住民も多く対応に苦慮している自治体もある。このため、県は対象世帯が少ない川内、葛尾両村と田村市以外の6市町の住民について、13日に開設するコールセンターで希望者を募る。【佐々木洋、小畑英介】