2011年5月10日 0時39分 更新:5月10日 1時40分
【ニューデリー杉尾直哉】パキスタンのギラニ首相は9日夜、同国議会で演説し、首都イスラマバード近郊で米国が実施した国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害作戦について「我々の同意を受けず、ユニラテラル(単独行動主義的)な行為だった。主権侵害だ」と述べ、厳しく批判した。また、「ビンラディン容疑者をかくまっていた」との疑惑については「ばかげている」と一蹴した。
同容疑者の殺害について、ギラニ首相が国民向けに説明するのは初めて。対米強硬姿勢を示すことで「テロリストを隠した」などとする国際的な批判をけん制するとともに、「主権侵害の作戦を許したギラニ首相とザルダリ大統領は辞任すべきだ」とする国内の批判をかわす狙いがあるとみられる。
ビンラディン容疑者がイスラマバードに近いパキスタン軍駐屯地アボタバードに潜伏していたことについて、ギラニ首相は「(パキスタンの)情報機関の失敗があった」と述べ、同国軍情報機関(ISI)は関知していなかったとの立場を表明した。
その一方で、ISIを「我々の財産だ」と高く評価した。米軍の急襲作戦を許したパキスタン軍への不信感が国内で広がっているのを意識した発言だ。軍は外交・安保政策の決定権を握っており、軍への信頼を強調することが国政安定のために必要と判断したとみられる。
首相はさらに、80年代当時、アフガニスタン駐留ソ連軍を撃退する目的で米国が「ジハード」(イスラム義勇兵による聖戦)を支持したことを挙げ、「パキスタンだけに(今日のテロ組織の存在の)責任があるわけではない」と指摘した。ビンラディン容疑者の殺害については「正義の裁きが下された」と評価した。
また、首相はパキスタンの友好国として「中国」を名指しで挙げる一方、「米国との戦略的パートナー関係は、相互信頼に基づかねばならない」と述べた。