2011年5月9日 15時4分 更新:5月9日 15時23分
厚生労働省は、患者の医療費負担を軽くする高額療養費制度について、年間の自己負担額に上限を設ける検討に入った。現在、月間の負担額に上限を設けているが、がんなどで長期の治療が必要な患者に配慮し、2段階で負担を軽減する。6月末にまとめる税と社会保障の一体改革案に盛り込むことを目指す。
高額療養費制度は、70歳未満の住民税非課税世帯の保険診療の負担額を月額約3万5000円以内としている。だが、年額には限度がないため、数十万円単位の投薬を要する外来患者にとって、経済的負担の重さが治療継続の壁になっていた。
そこで厚労省は、低所得者の月々の上限額を引き下げるとともに、年間総額にも上限が必要と判断。いったん窓口で支払いを求めるが、限度額を超過した分を後に払い戻す案を軸に関係省庁と調整を進めている。
ただ、制度拡充には数千億円かかるため、財務省は強く反発している。厚労省は、高所得者の限度額を現行(年収800万円以上で月額約15万円)より引き上げるなどの財源捻出策も同時に示し、理解を得たい考えだ。
高額療養費を巡っては昨年秋、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療保険部会で、年収300万円以下の世帯の負担を軽減し、年収800万円以上の世帯の負担を引き上げる案が検討されたが、2600億円にのぼる財源のメドが立たず、見送られた。【鈴木直】