2011年5月9日 11時10分 更新:5月9日 12時16分
リビアでの北大西洋条約機構(NATO)主導の多国籍軍による誤爆で死亡した反体制派の遺族に対し、NATO側から直接の謝罪や補償が行われる見通しがないことが分かった。遺族は多国籍軍の空爆を支持しているが、夫と長男を同時に失い生活できなくなった女性もおり、戦況が行き詰まるにつれ、NATOへの不満が高まる可能性もある。【ベンガジ(リビア北東部)で斎藤義彦】
4月1日夜の誤爆で死亡した2遺族が証言した。遺族や報道などによると、誤爆は北東部マルサエルブレガとアジュダビア間で発生。救急車を含め車両3台が破壊され、計13人が死亡した。
救急車の運転手、イブラヒム・アダムスさん(当時36歳)も死亡した。兄のアデルさん(40)によると、誤爆から1カ月以上たってもNATO側から連絡はない。アデルさんは「NATOのミスでたった一人の弟をなくしてショックだ」と話す。
また、反体制側の車中で作戦会議中だった元陸軍大佐、ムハンマド・サミール・ナジャディさん(49)とその長男(21)、大佐の義理の弟(42)も死亡した。大佐一家にもNATO側から連絡はない。大佐の妻は夫、長男、弟をなくして生活できなくなり、夫の実家に身を寄せている。大佐の兄イブラヒムさん(51)は「彼女の悲しみは深い」と語る。
NATOの担当官は毎日新聞に、一般論として「いかなる市民の犠牲も遺憾」としたうえで「作戦上起こった損害や損失については直接補償しない」と回答した。
反体制派が支配するリビア東部は「国民評議会」が統制しているが、NATO加盟国でも英仏など一部しか公認しておらず事実上、政府がない状況だ。
一方、イブラヒムさんはNATOの「失敗」を非難しながらも、反体制派の勝利を願い、3人を「殉教者」として大型のポスターにして街頭で「カダフィ打倒」を訴えている。