浜岡原発:他原発と「切り離し」 安全強化を強調

2011年5月6日 20時58分 更新:5月7日 2時47分

浜岡原発で運転中の5号機(手前)と4号機(手前から2番目)その奥が3号機=静岡県御前崎市で2011年2月、本社ヘリから西本勝撮影
浜岡原発で運転中の5号機(手前)と4号機(手前から2番目)その奥が3号機=静岡県御前崎市で2011年2月、本社ヘリから西本勝撮影

 菅直人首相が6日、耐震性や津波への不安が指摘される浜岡原発の全基停止措置に踏み切った背景には、東京電力福島第1原発事故を受け、国が原発の安全体制を強化したことをアピールする狙いがある。政府が「他の原発には波及しない」(経産省幹部)と語るように、浜岡と他の原発を区別することで、電力供給の3割を原発が担うエネルギー政策の根幹自体は温存したい思惑がうかがえる。しかし、福島第1原発事故は今も収束せず、多数の住民が避難を余儀なくされる中、国民の原発不信は過去に例がないほど高まっている。浜岡停止をきっかけに他の地域でも原発稼働停止を求める声がドミノ的に広がる可能性がある。

 菅首相は6日の会見で「(大地震の発生確率が突出する)浜岡原発の特別な状況を考慮した」と、稼働中の4、5号機の停止という異例の要請をした理由を説明。東海地震の想定震源域に立地する同原発の特殊性を強調した。

 政府は従来、2030年までに原発を14基以上増設し、電源全体に占める比率を現行の3割から4割程度に高めるエネルギー基本計画を掲げてきた。発電効率が高く、二酸化炭素(CO2)排出量も少ない利点を強調。「温室効果ガスの排出量を1990年比25%削減する目標達成にも不可欠」(経済産業省幹部)としてきた。

 しかし、福島原発事故で一変。菅首相は原発依存を改めて太陽光や風力など自然エネルギー利用の促進を図る方針を示したが「原発が供給する電力を代替するには数十年単位の時間が必要」(アナリスト)。経済活動や国民生活に打撃を与える電力不足を避けつつ、脱原発を図るには石油火力発電に先祖返りするしかないが、それではCO2排出量が増えてしまう。

 このため、菅首相は最近「自然エネルギー促進と、原発の安全性向上の両方が必要」と、引き続き原発を基幹エネルギーに位置付ける姿勢を示していた。経産省幹部は6日夜「エネルギー政策の根幹を維持するには、政権として原発の安全対策を徹底する姿勢を見せることが不可欠だった」と解説した。

 しかし、浜岡原発4、5号機は国の原子力安全委員会などの安全審査で耐震性に「お墨付き」を得て運転されており、突然の停止要請はこれまでの原子力行政の妥当性を疑わせるものだ。また、浜岡以外でも、中国電力島根原発の周辺で活断層が見つかるなど、他の稼働中の原発でも地震への不安がくすぶる。政府は浜岡停止をテコに原発への不安に歯止めをかけたいが、思惑通りにはいきそうにない。【山本明彦、野原大輔】

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